説明

酸性成分発生装置

【課題】アーク放電が生じることを抑制しつつ多量の酸性成分を生成でき、しかも安全性に優れ、コストを抑えた酸性成分発生装置を提供する。
【解決手段】放電電極1を備える。放電電極1に対向する対向電極2を備える。放電電極1と対向電極2の夫々に位相のずれた高周波電圧を印加することで、放電を生じさせて酸性成分を発生させる電圧印加手段3を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電により酸性成分を発生させる酸性成分発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、放電により硝酸イオン、窒素酸化物等の酸性成分を発生させる装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−196959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記放電により多量の酸性成分を発生させるには、電極に印加される電圧を大きくすることが考えられるが、この場合、アーク放電が生じる恐れがある。そして、このようにアーク放電が生じると、エネルギーが無駄に消費されて酸性成分を多量に発生させることができず、また、放電の制御が不能になったり、音鳴りが生じたりすることも懸念される。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、アーク放電が生じることを抑制しつつ多量の酸性成分を生成でき、しかも安全性に優れ、コストを抑えた酸性成分発生装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の酸性成分発生装置は、放電電極と、この放電電極に対向する対向電極と、前記放電電極と前記対向電極の夫々に位相のずれた高周波電圧を印加することで、放電を生じさせて酸性成分を発生させる電圧印加手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、前記電圧印加手段によって前記放電電極と前記対向電極の夫々に印加される電圧の位相を135度〜225度ずらすことが好ましい。
【0008】
また、前記電圧印加手段によって前記放電電極と前記対向電極の夫々に印加される電圧の位相を逆位相とすることが好ましい。
【0009】
また、前記電圧印加手段によって前記放電電極と前記対向電極の夫々に印加される電圧を50kHz〜250kHzとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明にあっては、アーク放電が生じることを抑制しつつ多量の酸性成分を生成でき、安全性を高め、コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の酸性成分発生装置を示す説明図である。
【図2】(a)は第一電圧印加部から放電電極に印加される電圧波形を示すグラフであり、(b)は第二電圧印加部から対向電極に印加される電圧波形を示すグラフである。
【図3】第一電圧印加部から放電電極に印加すると共に第二電圧印加部から対向電極に印加したときの放電電極及び対向電極間の電位差の変化を示すグラフである。
【図4】他例の電圧波形を示すグラフである。
【図5】さらに他例の電圧波形を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。図1に示す本実施形態の酸性成分発生装置は、放電電極1と、放電電極1に対向する対向電極2と、放電電極1及び対向電極2の夫々に個別に電圧を印加する電圧印加手段3を備えている。
【0013】
放電電極1は金属製であり、先端部が円錐状に尖った棒状に形成されている。対向電極2は円環状に形成され、放電電極1の先端に対向する位置に設けられている。
【0014】
電圧印加手段3は、放電電極1に接続された第一電圧印加部4と、対向電極2に接続された第二電圧印加部5とで構成され、各電圧印加部4、5は、例えば圧電素子を用いた発振回路等で構成される。
【0015】
第一電圧印加部4は、放電電極1に図2(a)に示す高周波電圧(以下、第一電圧)を印加し、第二電圧印加部5は、対向電極2に図2(b)に示す高周波電圧(以下、第二電圧)を印加する。
【0016】
第一電圧及び第二電圧は、周波数が50kHz〜250kHzの範囲内で設定され、中心値を0Vとする交流電圧であり、その周波数及び振幅aは同じである。ただし、第一電圧と第二電圧は位相を180度ずらして対応する電極1、2に印加される。このため、第一電圧と第二電圧の合成波は、図3に示すように、第一電圧及び第二電圧と同様に中心値が0Vで且つ第一電圧及び第二電圧と周波数が同じであるが、振幅aが2倍となる高周波電圧となる。
【0017】
前記電圧印加手段3によって放電電極1及び対向電極2の夫々に前記高周波電圧を印加して放電を生じさせることにより、二酸化窒素等の窒素酸化物や硝酸イオンといった酸性成分を発生させることができる。
【0018】
生成された二酸化窒素や硝酸イオン等の酸性成分は、例えば毛髪、肌、頭皮等に供給して好適に用いることができる。健康な毛髪、肌、頭皮等がアルカリ性になると細菌等に対する抵抗力が弱くなることが知られており、前記生成された酸性成分を毛髪、肌、頭皮等に供給することで毛髪、肌、頭皮等を弱酸性化することができるからである。
【0019】
本実施形態では、前記放電を生じさせるにあたって、放電電極1と対向電極2の間に高周波の電圧を印加するため、放電がアーク放電に移行することを抑制できる。すなわち、放電電極1及び対向電極2間に印加される電圧が、図3に示されるように高周波で且つ交流電圧であると、大気中に生成された窒素イオンや酸素イオン等の空気イオンが前記高周波で且つ正負が交互に入れ替わる交流電圧の影響により空間に補足される。このため、多くのエネルギーを安定して酸性成分の発生に投入することができ、アーク放電が生じに難くなり、また、多量の酸性成分を発生させることが可能になる。また、放電電極1と対向電極2の間に印加される電圧が放電開始電圧を一時的に下回らせることができ、この点でもアーク放電が継続して生じることを防止できる。
【0020】
ところで、前記アーク放電を抑制するには、例えば放電電極1にだけ高周波電圧を印加することが考えられる。しかし、このようにすると、多量の酸性成分を発生させるには、昇圧して放電電極1に高電圧を印加する必要があり、この場合、感電の危険性が増し、また、回路のコストが増すことが懸念される。この点、本実施形態の電圧印加手段3は、放電電極1及び対向電極2の夫々に位相をずらした高周波電圧を印加して放電を生じさせることで、放電電極1と対向電極2の間に第一電圧及び第二電圧よりも振幅の大きな高電圧を印加することができる。このため、電圧を感電の危険が伴うレベルまで上昇させる必要がなく、安全性を確保すると共にコストを抑えながら、多量の酸性成分を生成できる。
【0021】
また、本実施形態では、電圧印加手段3によって放電電極1と対向電極2の夫々に印加される電圧の位相を逆位相としている。このため、放電電極1と対向電極2の間には、より大きな電位差を生じさせることができ、酸性成分をより多く生成できる。
【0022】
また、本実施形態では、電圧印加手段3によって放電電極1及び対向電極2の夫々に印加される電圧の周波数が50kHz〜250kHzであるので、電圧印加手段3のコストとサイズを抑えたまま、多量の酸性成分を生成することができる。
【0023】
本実施形態では、電圧印加手段3によって放電電極1と対向電極2の夫々に印加される電圧の位相差を180度としたが、放電電極1と対向電極2の間に印加される電圧の振幅が第一電圧及び第二電圧よりも大きくなるものであれば、これに限定されるものではない。例えば本実施形態においては、前記位相差を60度超300度未満(−60度超)の範囲内、より好ましくは前記位相差を135度超225度未満(−135度超)の範囲内に収めることが好ましい。
【0024】
また、本実施形態では、放電電極1と対向電極2の間に印加される電圧を中心値が0Vとなる交流電圧としたが、図4に示すように中心値が負となる交流電圧としてもよい。また、図5に示すように電圧が常時負となるものであってもよい。なお、図5においては、印加電圧が放電開始電圧よりも大きくなる場合も考えられるが、この場合も以下の理由によりアーク放電が継続して生じ難くなる。すなわち、印加電圧が直流電圧であると、放電電極1において電極間距離の最も小さなところの1点のみで放電が生じる。これに対して、印加電圧が高周波電圧であると、両電極1、2間の抵抗値だけでなくコンデンサー容量等も考慮されて、電極間距離の多少の違いではインピーダンス(抵抗)に違いが現れず多数の点で放電が生じる。このため、アーク放電に移行し難くなると考えられる。また、前記放電電極1と対向電極2の間に印加される電圧の振幅や周波数も限定されるものではなく、また、その波形も正弦波に限定されるものではない。
【0025】
また、本実施形態では、第一電圧及び第二電圧を中心値が0Vとなる交流電圧としたが、図4に示すように中心値が正又は負となる交流電圧としてもよい。また、図5に示すように電圧が常時正又は負となるものとしてもよい。また、これら第一電圧及び第二電圧の夫々の振幅や周波数も限定されるものではなく、また、その波形も正弦波に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0026】
1 放電電極
2 対向電極
3 電圧印加手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極と、この放電電極に対向する対向電極と、前記放電電極と前記対向電極の夫々に位相のずれた高周波電圧を印加することで、放電を生じさせて酸性成分を発生させる電圧印加手段を備えたことを特徴とする酸性成分発生装置。
【請求項2】
前記電圧印加手段によって前記放電電極と前記対向電極の夫々に印加される電圧の位相を135度〜225度ずらしたことを特徴とする請求項1に記載の酸性成分発生装置。
【請求項3】
前記電圧印加手段によって前記放電電極と前記対向電極の夫々に印加される電圧の位相を逆位相としたことを特徴とする請求項2に記載の酸性成分発生装置。
【請求項4】
前記電圧印加手段によって前記放電電極と前記対向電極の夫々に印加される電圧を50kHz〜250kHzとしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の酸性成分発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−111494(P2013−111494A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257785(P2011−257785)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】