説明

酸性染毛剤組成物

【課題】優れた染毛性を発揮する酸性染毛剤組成物を提供する。
【解決手段】酸性染料、アルカンジオールおよび酸を配合する酸性染毛剤組成物であり、洗い流さない場合にベンジルアルコールのように髪の毛がぱさつくという欠点がなく、また従来染毛剤として知られている芳香族アルコールより顕著に染毛効果の良い酸性毛髪用組成物。具体的には、酸性染料、アルカンジオール及び酸を含有し、pHが1.5〜4.0であり、1,2−オクタンジオールの含有量が0.2〜5.0重量%である酸性染毛剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカンジオールを含有する優れた染毛性を発揮する酸性染毛剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、パラフェニレンジアミン等の酸化染料を用いた酸化染毛剤が主流であったが、これらは、強いアルカリ条件下で施術する必要があり、毛髪または皮膚に損傷を生じる等の安全性上の問題、臭気の問題、あるいは染毛後の毛髪の風合等の使用感上の問題があった。このために、これらの問題が少ない酸性染料を用いた染毛剤の開発がなされている。このような例としては、特開昭61−53211号、特開昭62−164612号、特開昭63−239209号、特開平5−221840号、特開平6−107529号等が挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、これらの酸性染料を用いた染毛剤の場合ベンジルアルコールを配合しないと満足な染毛効果は得られないのが現状である。しかしベンジルアルコールは洗い流しタイプの染毛剤の場合は問題ないが洗い流さない、即ち髪の毛に付けっぱなしの、いわゆるリーブオンタイプの染毛剤の場合には長時間髪に付着するため、髪がぱさつくという欠点があった。一方ベンジルアルコール代替成分として芳香族アルコールであるフェニルエチルアルコールやフェノキシエタノールが挙げられるがその効果は充分ではない。
【非特許文献1】フレグランスジャーナル 2004−10 56〜62頁 「直接染料の浸透技術の開発動向」
【非特許文献2】第5回SCCJセミナー要旨 1997年9月2日 64〜80頁 「ヘアカラーの製品評価技術」
【0004】
本発明で用いるアルカンジオールは殺菌効果を有することが知られており、従来から防腐殺菌剤として化粧料に配合する試みがなされている。またべたつきのない整髪効果も発見されているが、優れた染毛効果については全く知られていない。(特許文献1〜4)
【特許文献1】特開2004−182611号公報
【特許文献2】特開2004−189636号公報
【特許文献3】特開2004−155724号公報
【特許文献4】特開2004−115383号公報
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、かかる酸性染毛剤組成物を得るため、鋭意検討を重ねた結果、酸性染料、アルカンジオールおよび酸を配合することにより所望の性質を有する組成物が得られ、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、酸性染料、アルカンジオールおよび酸を配合する酸性染毛剤組成物を提供するものである。即ち本発明の酸性毛髪用組成物は、ベンジルアルコールのように髪の毛がぱさつくという欠点がなく、また従来染毛剤として知られている芳香族アルコールより顕著に染毛効果の良い酸性毛髪用組成物である。
【0006】
以下、本発明の構成について詳述する。
【0007】
本発明で用いる酸性染料は特に限定されるものでなく、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色201号、赤色227号、赤色230号、赤色232号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色402号、黄色406号、青色1号、青色2号、青色202号、青色203号、青色205号、橙色205号、橙色207号、橙色402号、緑色3号、緑色204号、緑色205号、緑色401号、緑色402号、褐色201号、紫色401号、黒色401号等を挙げることができる。
【0008】
該酸性染料の配合量は、特に限定されないが組成物全量に対して0.0001〜0.2重量%の範囲が好ましく、0.001〜0.1重量%が特に好ましい。0.0001重量%未満では何日も洗髪せず放置する場合でないと染毛性が十分に発揮できず本発明の目的が達成できない。一方、0.2重量%を超えて配合しても構わないが、色が濃いので帽子をかぶったり、手で髪の毛を触ったりした際に色が移ることがあるので好ましくない場合がある。また、所望の色合を提供するために、これらの1種または2種以上を任意に組み合わせて用いることもできる。
【0009】
本発明のアルカンジオールはペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール等アルカンジオールであれば採用できるが、好ましくは1,2−オクタンジオールである。該アルカンジオールの配合量は、特に限定されないが好ましくは0.01〜10重量%である。さらに好ましくは0.2〜5重量%である。0.01重量%以下では本発明の目的が達成できない場合があり、10重量%以上では染毛効果は良好であるが、製剤が不安定になる場合がある。
【0010】
本発明の酸性染毛剤組成物のpHは、1.5〜4.0、好ましくは2.0〜3.5であり、該pHが1.5未満であると皮膚刺激などの安全性より、4.0を超えると染毛性が低下するので好ましくない。該組成物を好適なpHに調整するには酸を用いる。この酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等の無機酸、あるいは、酢酸、クエン酸、酒石酸、プロピオン酸、乳酸、サリチル酸、グリコール酸、コハク酸、リンゴ酸、酪酸等の有機酸等が挙げられ、このうちの1種または2種以上を任意に用いることができ、中でも塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、サリチル酸、グリコール酸、コハク酸が好ましく、特に、リン酸、クエン酸、グリコール酸は染毛性を顕著に向上させるため好ましい。また、これらの酸のアルカリ金属塩等、例えばクエン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化カリウム等を組合せることにより、好適なpHの範囲内にpH緩衝能をもたせることもできる。
【0011】
本発明の組成物は、ジェル状、ペースト状、クリーム状など種々の形態にすることができる。
【0012】
本発明の酸性染毛剤組成物を製造するには、例えば、酸性染料等を溶解した多量の精製水に迅速に添加して均一溶解する。均一溶解したのを確認してから、徐冷して40℃とし、予めアルカンジオールを溶解した揮発性溶剤および酸等を適量添加して所望のpHに調整する。
【0013】
本発明の酸性染毛剤組成物を使用するには、例えばジェル状にして櫛等で髪の毛に塗布しヘヤージェルのように放置する方法である。特に、本発明の組成物は、その適用前、適用時または適用後のいずれかで、毛髪に加温処理を施すと、その染毛性がより向上するので好ましい。この加温処理は、本発明の組成物を毛髪に塗布した後、例えば、スチーマー、蒸しタオルなどの蒸気、ドライヤーの温風、遠赤外線などの熱で塗布部を加温し、ついで、余分な組成物を洗い流してもよい。
【0014】
本発明の酸性染毛剤組成物は上記必須成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種成分、例えば他の界面活性剤、油性成分、保湿剤、増粘剤、キレート剤、薬効成分、防腐剤、色素、顔料、粉体、pH調整剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、香料等を適宜配合することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の酸性染毛剤組成物は、ベンジルアルコールのように髪の毛がぱさつくという欠点がなく、また従来染毛剤として知られている芳香族アルコールより顕著に染毛効果が良いものである。以下に本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に実験例および実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、実施例中の「%」は特に断わらない限り重量%を意味する。
【実施例1】
【0017】
表1に示す実験例および比較例の成分から定法に従ってジェル状の酸性毛髪用組成物を製造し、クエン酸でpHを2.5に調製した。そして以下の方法で種々評価した。実験例6は染毛効果は申し分ないが、粘度が他の実施例より若干低かった。
【0018】
【表1】

【0019】
<酸性染毛剤組成物の染毛効果の評価>
予め洗浄し風乾した白髪まじりの毛束(日本人)約2gに、実験例1〜6および比較例1の組成物1gを塗布し、その後8時間室温下に放置した後、流水ですすぎ、ついで、10%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液で2回洗浄し乾燥した。その後、目視で染毛効果を評価した。評価基準を以下に示す。
◎:染毛効果がありと認めた。
○:染毛効果が若干ありと認めた。
×:染毛効果がほとんど無いと認めた。
【実施例2】
【0020】
表2に示す実験例および比較例の成分から前記した方法に従ってジェル状の酸性染毛剤組成物を製造し、グリコール酸でpHを2.0に調製した。そして実施例1と同様の方法で染毛見本を作製し、さらに以下の方法で種々評価した。尚実験例7の処方において1,2−オクタンジオールをベンジルアルコールに変えて同様の実験を行ったが、染毛効果は実験例7以上であったものの髪のぱさつきが激しく商品価値がないものであった。
【0021】
【表2】

【0022】
○:実施例7より染毛効果があり、または髪の毛のぱさつきがないと認めた。
△:実施例7と染毛効果が同等、または髪の毛のぱさつきが同等と認めた。
×:実施例7より染毛効果が弱い、または髪の毛のぱさつきがあると認めた。
【実施例3】
【0023】
<pHの差による染毛効果>
実験例4の処方においてクエン酸量でpHを変えてベースを調製し、染毛効果を評価した。尚pHはグリコール酸の量を調整して所望のpHにした。尚pH1.5は40℃、1ヶ月後に粘度が下がっていた。
【0024】
【表3】

【0025】
◎:染毛効果がありと認めた。
○:染毛効果がややありと認めた。
×:染毛効果があまり無いと認めた。
【0026】
以下に本発明を、詳細に説明するための実施例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例4】
【0027】
染毛クリーム1
配合成分 配合量(重量%)
(1) 1,3−ブチレングリコール 5
(2) ベントナイト 3
(3) 水 残余
(4) 1,2−オクタンジオール 5
(5) ミネラルオイル 2
(6) メトキシケイヒ酸オクチル 0.001
(7) (アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10−30))コポリマー
0.2
(8) 香料 0.3
(9) グリコール酸 0.5
(10) 紫色401号 0.0005
(11) 黒色401号 0.001
(12) 橙色205号 0.0015
【0028】
〔製法〕
よく混合した(1)、(2)にホモミキサーで均一分散させた(3)〜(7)を添加してホモミキサーで均一分散させる。(9)〜(12)はあらかじめ(3)の一部に溶解させておく。(8)〜(12)を順番に添加し、ホモミキサーで均一分散させる。
【実施例5】
【0029】
染毛クリーム2
配合成分 配合量(重量%)
(1) 1,3−ブチレングリコール 10
(2) ベントナイト 2
(3) キサンタンガム 2
(4) 水 残余
(5) 1,2−オクタンジオール 3
(6) ミネラルオイル 1
(7) (アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10−30))コポリマー
0.2
(8) リン酸 1.3
(9) 橙色205号 0.2
(10)赤色106号 0.0015
(11)黒色401号 0.001
(12)黄色406号 0.0005
【0030】
〔製法〕
よく混合した(1)〜(3)にホモミキサーで均一分散させた(4)〜(7)を添加してホモミキサーで均一分散させる。(8)〜(12)はあらかじめ(4)の一部に溶解させておく。(8)〜(12)を順番に添加し、ホモミキサーで均一分散させる。
【実施例6】
【0031】
染毛ジェル
配合成分 配合量(重量%)
(1) 水 残余
(2) ヒドロキシプロピルメチルセルロース 3
(3) クエン酸 0.2
(4) エタノール 20
(5) 1,2−オクタンジオール 2
(6) 橙色205号 0.015
(7) 紫色401号 0.01
(8) 黒色401号 0.01
(9) 黄色4号 0.003
【0032】
〔製法〕(1)〜(3)を85℃で分散した後に冷却し、(4)〜(9)を45℃で添加し、30℃まで冷却する。(6)〜(9)は(1)の一部にあらかじめ溶解させておく。
【0033】
実施例4〜6についても良好な染毛効果があった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、アルカンジオールを含有する優れた染毛性を発揮する酸性染毛剤組成物に関する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性染料、アルカンジオールを含有しpHが1.5〜4.5であることを特徴とする洗い流さないタイプの酸性染毛剤組成物。
【請求項2】
アルカンジオールの含有量が0.01〜10.0重量%である請求項1に記載の酸性染毛剤組成物。
【請求項3】
アルカンジオールの含有量が0.2〜5.0重量%でありpHが3.0〜4.0である請求項1乃至請求項2に記載の酸性染毛剤組成物。
【請求項4】
アルカンジオールが1,2−オクタンジオールである請求項1乃至請求項3に記載の酸性染毛剤組成物。

【公開番号】特開2009−191040(P2009−191040A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35386(P2008−35386)
【出願日】平成20年2月16日(2008.2.16)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】