説明

酸素吸収剤成形体およびその製造法

【課題】 酸素吸収速度および酸素吸収容量が高く、耐衝撃性が高く、酸素吸収剤粉末の脱落が無い酸素吸収剤成形体を提供する。
【解決手段】 酸素吸収剤粉末と結合剤からなり、前記結合剤が繊維状樹脂および有機バインダーであることを特徴とする酸素吸収剤成形体並びにこれら構成原料などを混練して、酸素吸収剤粉末が繊維状樹脂に捕捉されかつ有機バインダーにて結合された組成物を得、成形することからなる酸素吸収剤成形体の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸素吸収剤に関する。
なお、本明細書において「酸素吸収剤」とは、酸素を化学反応により吸収する酸素吸収成分を含む常温で固体または液体の酸素吸収組成物である。「酸素吸収剤粉末」とは、常温で固体である酸素吸収成分を含む粉末状の酸素吸収組成物、及び、常温で固体または液体である酸素吸収成分を含む酸素吸収組成物を担体粉末に担持または含浸させた粉末状の酸素吸収組成物を意味する。また「脱酸素剤」は、酸素吸収剤の包装体を意味する。また「結合剤」とは、粉末同士を物理的又は化学的な力、又は両者で結合させ、成形し易くするために添加される物質を意味する。
【背景技術】
【0002】
脱酸素剤は、食品などの酸素の影響を受けやすい物品の保存に広く使用されている。現在市販されている主な脱酸素剤は、粒状あるいは粉末状の酸素吸収剤が通気性の小袋に収納された小袋入り脱酸素剤である。
【0003】
上記小袋入り脱酸素剤とは形態が異なり、酸素吸収剤を熱可塑性樹脂中に分散させてシート化したシート状脱酸素剤が種々提案されている。例えば、特許文献1には酸素吸収剤を熱可塑性樹脂にブレンドしたものをシート状に成形したもの、特許文献2には酸素吸収剤を発泡性樹脂にブレンドしシート化した後、発泡させたもの、特許文献3には酸素吸収剤と熱可塑性樹脂からなるシートを延伸して多孔質化したもの等が提案されている。さらに、シート状脱酸素剤を食品の台紙として使用することや、錠剤状にして瓶キャップ内側に固定して使用することも提案されている。
【0004】
さらに、特許文献4において鉄粉をポリエチレン、ポリプロピレン等の粉末からなるバインダー(結合剤)を用いて成形した錠剤状の酸素吸収剤成形体が本出願人より提案されている。
【0005】
また、本発明者らは先に、繊維状樹脂を結合剤に用いて成形した酸素吸収剤粉末の成形体が、上記従来の脱酸素剤の問題点を解消することを見出し、提案した(特願2004−375347)。
【0006】
【特許文献1】特開昭55−44344号公報
【特許文献2】特開昭56−26524号公報
【特許文献3】特開平2−229840号公報
【特許文献4】特開平4−244228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1〜3に記載されている酸素吸収剤を樹脂中に分散させてシート状に成形した脱酸素剤は、シート中に含まれる樹脂の量(重量基準または体積基準)が酸素吸収剤の量より多く、かつ酸素吸収剤粒子表面の樹脂で被覆される部分が大きく、酸素吸収剤と空気あるいは酸素含有ガスとの接触が制限されるため、小袋入り脱酸素剤に比べると、酸素吸収容量(単位重量または単位体積あたりの最大酸素吸収量)が少なく、かつ酸素吸収速度が遅いという欠点を有していた。
【0008】
また、前記特許文献4において、鉄粉をポリエチレン、ポリプロピレン等の粉末からなるバインダー(結合剤)を用いて成形した錠剤状の酸素吸収剤成形体が公知であるが、この酸素吸収剤成形体は、強い衝撃を受けると破砕し易く、耐衝撃性に劣るという問題を有していた。本発明者らがこの問題に着目して検討したところ、粉末成形機構が主として酸素吸収剤粒子と結合剤粒子との間の付着力によって酸素吸収剤粒子の成形体を得るというものであり、該付着力によって発現する成形体の機械的強度には限界があることをつきとめ、特願2004−375347において、酸素吸収剤粉末を繊維状樹脂を結合剤に用いて成形した耐衝撃性が改善された酸素吸収剤成形体を提案した。
【0009】
しかしながら、上記酸素吸収剤成形体は、酸素吸収剤粉末が繊維状樹脂の物理的な絡まりによって結合された構造体であるため、強い衝撃や摩擦を受けると繊維状樹脂によって形成された網目から酸素吸収剤粉末が僅かに脱落するという問題点を有していることが判明した。また、上記酸素吸収剤成形体の形状がシート状の場合、高い可撓性(柔軟性)を有するものの、酸素吸収剤を熱可塑性樹脂中に分散させてシート化したシート状脱酸素剤に比べ、引張強度が低くかつ引張伸び率が高いため、所望の大きさと形状のシート状脱酸素剤とするためのスリット加工や打ち抜き加工において、シートの破断や厚みの変動が起き易く、加工時の取り扱い性に劣るという欠点を有していることが判明した。
【0010】
本発明の目的は、上記従来の酸素吸収剤成形体の問題点に対して、酸素吸収速度および酸素吸収容量が高く、耐衝撃性が高く、酸素吸収剤粉末の脱落が無い酸素吸収剤成形体を提供することである。また、シート状に成形した場合、可撓性を有し、引張強度が高くかつ引張伸び率が低く、加工時の取り扱い性が良好な酸素吸収剤成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、繊維状樹脂と有機バインダーを結合剤に用いて成形した酸素吸収剤粉末の成形体が、目的を達成できることを見出し本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明は、酸素吸収剤粉末と結合剤からなり、前記結合剤が繊維状樹脂および有機バインダーであることを特徴とする酸素吸収剤成形体に関する。
また、本発明は、酸素吸収剤粉末と剪断力を受けることによって繊維化可能な樹脂を、該樹脂が繊維化する大きさ以上の剪断力の作用下、樹脂の融点未満で混練して酸素吸収剤粉末が繊維状樹脂によって結合されている凝集体を得た後、該凝集体に有機バインダーおよびその溶剤を添加して樹脂の融点未満かつ溶剤の沸点未満で混練し、得られた組成物を成形し、溶剤を揮発させる酸素吸収剤成形体の製造法に関する。
【0013】
本発明は、酸素吸収剤粉末、剪断力を受けることによって繊維化可能な樹脂、有機バインダーおよびその溶剤を、前記樹脂が繊維化する大きさ以上の剪断力の作用下、樹脂の融点未満かつ溶剤の沸点未満で混練して酸素吸収剤粉末が繊維状樹脂および有機バインダーによって結合されている組成物を得た後、該組成物を成形し、溶剤を乾燥させる酸素吸収剤成形体の製造法に関する。
【0014】
あるいは、本発明は、担体粉末と剪断力を受けることによって繊維化可能な樹脂を、該樹脂が繊維化する大きさ以上の剪断力の作用下、樹脂の融点未満で混練して担体粉末が繊維状樹脂によって結合されている凝集体を得た後、該凝集体に酸素吸収剤、有機バインダーおよびその溶剤を添加して樹脂の融点未満かつ溶剤の沸点未満で混練し、得られた組成物を成形し、溶剤を揮発させる酸素吸収剤成形体の製造法に関する。
【0015】
本発明の酸素吸収剤成形体は、酸素吸収剤粉末が繊維状樹脂によって物理的に結束され一体化した構造体が、さらに有機バインダーの化学的接着力によって強固に一体化した構造体である。酸素吸収剤成形体がこのような構造をとることにより、従来の酸素吸収剤を熱可塑性樹脂中に分散させた成形体とは異なり、成形体中の酸素吸収剤含有率を高くすることができる。また、繊維状樹脂のみで結束された成形体とは異なり、強い摩擦や衝撃を受けても成形体から酸素吸収剤粉末の脱落が生じず、またシート状に成形した場合、引張強度が高くかつ引張伸び率が低い酸素吸収剤成形体が得られるという利点を有している。
【0016】
繊維状樹脂としては、成形体の製造に供する前から繊維状の樹脂を用いることもできるが、剪断力を与えることによって繊維状になる樹脂が、取り扱い性および性能の点から好ましい。繊維状樹脂としては、フッ素樹脂を用いることができる。
【0017】
有機バインダーとしては、各種のセラミック粉末や金属粉末成形用の有機バインダーが使用できるが、水及び/又は有機溶媒に可溶な有機物が、酸素吸収剤粉末、繊維状樹脂、有機バインダーおよびその溶媒を常温で混練することにより可塑性を有する組成物が得られ、常温で成形後、溶剤を揮発させることにより、高い機械的強度を有する酸素吸収剤成形体が得られることから好ましい。特に好ましい有機バインダーとしては、セルロース誘導体を用いることができる。
【0018】
本発明の酸素吸収剤成形体中の繊維状樹脂含有量は酸素吸収剤粉末100重量部に対して1〜50重量部、有機バインダー含有量は0.5〜30重量部である。繊維状樹脂および有機バインダーが結合剤として少量で有効に働くため、従来の酸素吸収剤を熱可塑性樹脂中に分散させた成形体に比べ、酸素吸収剤成形体中の酸素吸収剤含有量を多くすることができ、酸素吸収容量を高くすることができる。
【0019】
本発明で用いられる酸素吸収剤粉末は、鉄粉の表面にハロゲン化金属が被覆されている粉末または酸素吸収性樹脂粉末を酸化反応主剤とすることができる。
【0020】
本発明で用いられる酸素吸収剤粉末はまた、アスコルビン酸およびその塩、多価アルコール、還元糖、不飽和脂肪酸化合物、不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物から選ばれる少なくとも一種の酸素吸収剤が担体粉末に担持または含浸されたものを酸化反応主剤とすることができる。本発明の酸素吸収剤成形体は、著しい加熱を必要としないで製造できるため、従来の酸素吸収剤粉末と溶融状態の樹脂との混練により製造される成形体とは異なり、耐熱性の低い化合物を酸化反応主剤に用いた酸素吸収剤を使用することができる。
【0021】
本発明の酸素吸収剤成形体は、酸素吸収剤粉末と剪断力を受けることによって繊維化可能な樹脂を、前記樹脂が繊維化する大きさ以上の剪断力の作用下、樹脂の融点未満で混練して酸素吸収剤粉末が繊維状樹脂によって結合されている凝集体を得た後、該凝集体に有機バインダーおよびその溶剤を添加して溶剤の沸点未満で混練し、得られた組成物を成形し、溶剤を揮発させることにより製造できる。
【0022】
本発明の酸素吸収剤成形体はまた、担体粉末が繊維状樹脂と有機バインダーによって結合されている担体粉末成形体に、酸素吸収剤を担持または含浸させることによっても製造できる。「担持」には、酸素吸収剤を担体粉末成形体に添着又は被覆することが含まれる。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、酸素吸収性能と機械的特性がともに優れた酸素吸収剤成形体が提供される。すなわち、酸素吸収速度および酸素吸収容量がきわめて高い酸素吸収剤成形体を提供することができる。また、任意の形状に成形でき、耐衝撃性が高く、酸素吸収剤粉末の脱落が無い酸素吸収剤成形体を提供することができる。さらに、可撓性を有し、引張強度が高くかつ引張伸び率が低く、加工時の取り扱い性が良好なシート状酸素吸収剤成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の酸素吸収剤成形体の製造方法について、具体的に説明する。
【0025】
本発明の酸素吸収剤成形体の製造においては、結合剤として繊維状樹脂と有機バインダーを用いる点が最も重要である。
【0026】
繊維状樹脂(単に、樹脂と記載することがある)としては、酸素吸収剤成形体(単に、成形体と記載することがある)の製造に供する前から繊維状の樹脂を用いることもできるが、剪断力を与えることにより繊維状になる樹脂が、酸素吸収剤粉末と樹脂粉末の混練過程で樹脂が繊維化し、酸素吸収剤粉末を絡めて粉末同士を結合し、成形体を与えるため好ましい。このような樹脂の例としてはフッ素樹脂が挙げられ、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等が例示され、好ましくは、PTFEである。特に、乳化重合で作られた平均粒子径0.1〜1μmのPTFEファインパウダーは、20℃以上、樹脂の融点未満の温度では小さな剪断力により容易に分子鎖の折りたたみが解け、柔らかく、よく塑性変形する繊維状となる性質があり好適である。なお、ここで言う繊維とは、断面積の形状(円形、楕円形、不定形等)を問わず、総じて細長い糸状の形態を有している物を意味する。また、直径とは繊維の断面の周囲上の最も離れた二点間の距離を意味する。
【0027】
本発明の酸素吸収剤成形体中の繊維状樹脂含有量は、用いる酸素吸収剤の種類、成形体に求められる酸素吸収能力及び機械的特性によって好適範囲は異なるが、酸素吸収剤粉末100重量部に対して好ましくは1〜50重量部、より好ましくは2〜30重量部の範囲とすることができる。繊維状樹脂の含有量が1重量部より少ないと、繊維状樹脂の絡まりが少なくなり、酸素吸収剤粉末の成形体を得ることができない。繊維状樹脂の含有率が50重量部より多いと、酸素吸収剤成形体中の酸素吸収剤の含有量が少なくなり酸素吸収能力が低下するため好ましくない。
【0028】
本発明の酸素吸収剤成形体中の繊維状樹脂の直径は、樹脂が受ける剪断力及び圧縮力の大きさ、用いられる酸素吸収剤粉末の粒径等によって変化し、0.01〜100μmである。一般的に、樹脂が受ける剪断力が大きいほど、また用いられる酸素吸収剤粉末の粒径が小さいほど、繊維状樹脂の直径は小さくなる。また、該樹脂は加圧によって凝着し易く、酸素吸収剤粉末と樹脂の混練過程において受ける圧縮力が大きいほど、繊維状樹脂同士が凝着して直径が増大する。直径は、好ましくは5μm以下である。直径0.01〜5μmの繊維状樹脂は、特に、本発明で用いられる酸素吸収剤粉末の結合剤として良好に機能する。繊維状樹脂の直径が5μmを超えて大きくなればなるほど、酸素吸収剤成形体中の繊維状樹脂の本数が減少して成形体を得るために必要な樹脂の重量が増加する傾向にある。
【0029】
有機バインダーとしては、各種のセラミック粉末や金属粉末成形用の有機バインダーが使用できるが、水及び/又は有機溶媒に可溶な有機物が、常温で可塑性を有する酸素吸収剤を主成分とする組成物が得られることから好ましい。このような有機バインダーの例としては、でんぷん、セルロース誘導体、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリマー及びその誘導体が挙げられる。これらのうち、特に、酸素吸収剤成形体の酸素吸収性能に大きな影響を及ぼさないことから、セルロース誘導体が好ましく、具体的には、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルエチルセルロース(HPEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース等の水又は有機溶剤に可溶なセルロース誘導体が例示される。中でも、CMCおよびHPCが好適である。セルロース誘導体の重合度は500以上で高い方が、少量でより大きな効果を発揮することから好ましい。
【0030】
本発明の酸素吸収剤成形体中の有機バインダー含有量は、用いる酸素吸収剤の種類、成形体に求められる酸素吸収能力及び機械的特性によって好適範囲は異なるが、酸素吸収剤粉末100重量部に対して好ましくは0.5〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部である。有機バインダー含有量が0.5重量部未満であると、有機バインター添加による酸素吸収剤成形体の粉末脱落の防止、引張強度及び引張伸び率の改善効果が発現せず、30重量部より多いと、酸素吸収剤成形体中の酸素吸収剤の含有量が少なくなり酸素吸収能力が低下するため好ましくない。また、酸素吸収剤成形体がシート状の場合、シートの可撓性が失われ曲げ応力に対して割れ易くなるため好ましくない。
【0031】
有機バインダーの溶剤としては、水、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、芳香族炭化水素等が用いられるが、安全性、経済性、溶剤除去のし易さから、水又はアルコール、あるいは水とアルコールの混合物が好ましい。
有機バインダーの溶剤は、該ポリマーを溶解または膨潤させ液体またはゲル状の糊料とすると同時に、酸素吸収剤粉末、剪断力を受けることによって繊維化可能な樹脂、有機バインダーおよびその溶剤を混練して得られる組成物に可塑性と形状保持能力を与える働きを持つ。前記組成物中の溶剤含有率は、用いる酸素吸収剤の種類や組成物に求められる可塑性によって好適範囲は異なるが、好ましくは10〜70体積%、より好ましくは20〜60体積%の範囲とすることができる。
酸素吸収剤成形体がシート状の場合は、有機バインダーの可塑剤を添加することによりシートの可撓性(柔軟性)を増加させることができる。可塑剤としては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、クエン酸トリエチル等が例示される。
【0032】
酸素吸収剤成形体中の繊維状樹脂と有機バインダーの好適比率は、用いる酸素吸収剤粉末の粒径および比重、酸素吸収剤成形体の形状等により異なるが、通常、繊維状樹脂1重量部に対して有機バインダー0.1〜3重量部である。例えば、平均粒径80μm、嵩密度3.3g/cmの還元鉄粉を酸化反応主剤とする酸素吸収剤粉末のシート状成形体の場合、繊維状樹脂と有機バインダーの好適比率は、繊維状樹脂1重量部に対して有機バインダー0.2〜0.8重量部である。また、アスコルビン酸を平均粒径10μm、嵩密度0.55g/cmの活性炭に担持させた組成物を主剤とする酸素吸収剤粉末のシート状成形体の場合、繊維状樹脂と有機バインダーの好適比率は、繊維状樹脂1重量部に対して有機バインダー0.4〜2.0重量部である。有機バインダーが前記好適範囲の下限値より少ないと、有機バインター添加による酸素吸収剤成形体の粉末脱落の防止、引張強度及び引張伸び率の改善効果が発現しないため好ましくない。前記好適範囲の上限値より多いと、酸素吸収剤成形体がシート状の場合、シートの可撓性が失われ曲げ応力に対して割れ易くなるため好ましくない。
【0033】
酸素吸収剤は、酸素吸収剤成形体中で、繊維状樹脂が形成する網目の隙間、及び有機バインダーが形成する膜の隙間及び膜自体を通して到達する雰囲気中の酸素と化学反応して吸収する。酸素吸収剤の粒径は、細かい方が繊維状樹脂によって形成された網目中に保持され易く好ましい。具体的には、平均粒子径0.05〜100μmが好ましく、0.1〜50μmがより好ましい。
酸素吸収剤成形体中の酸素吸収剤含有率は、好ましくは60〜98重量%、より好ましくは80〜96重量%である。60重量%より少ないと、従来の酸素吸収剤を樹脂中に分散させてシート状に成形した脱酸素剤と酸素吸収能力が同等以下となるため好ましくない。98重量%より多いと、結合剤の繊維状樹脂及び有機バインダーが不足し、酸素吸収剤粉末の成形体を得ることができないため好ましくない。
【0034】
酸素吸収剤の第一の例としては、鉄、鉄合金、アルミニウム、マグネシウム等の還元性金属粉が挙げられる。入手の容易さ、安全性等から純鉄粉、鋳鉄粉、鋼粉、および鉄合金粉等の鉄粉が好ましい。酸素吸収能力増大のために、表面にハロゲン化金属を被覆処理した鉄粉が好適に使用できる。
【0035】
酸素吸収剤の第二の例としては、酸素吸収性樹脂が挙げられる。具体的には、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等のジエン系ポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリル酸、エチレンアクリル酸メチル共重合体及びそのシクロヘキセニルメチルアルコール交換体、水添スチレンブタジエンゴム等の第三級炭素原子に結合した水素原子を有する熱可塑性樹脂に、遷移金属塩触媒を添加した粉末状の樹脂組成物が使用される。
【0036】
また、酸素吸収剤の第三の例としては、アスコルビン酸およびその塩、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール、グルコース、フルクトース、ソルビトール、キシロース等の還元糖、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、没食子酸、ピロガロールおよびトコフェロールなどのフェノール化合物を用いることができる。さらに、リノール酸、リノレン酸、アマニ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸等の不飽和脂肪酸化合物、液状ブタジエンオリゴマー、液状イソプレンオリゴマー、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状スチレンブタジエンゴム等の不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物等を用いることができる。これらの酸素吸収剤は遷移金属塩触媒とともに担体粉末に担持または含浸させることにより、酸素吸収剤粉末として成形体の製造に供される。担体としては、比表面積が大きく酸素吸収剤と酸素の接触面積を広げるものであれば特に限定するものではないが、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、珪酸カルシウム、活性炭、ゼオライト、珪藻土、粘土鉱物等が例示される。
【0037】
本発明で用いられる酸素吸収剤成形体には、さらに必要に応じて乾燥剤、ガス吸着剤を添加することができる。
乾燥剤としては、水分吸着後も固体状態を保持できるものが好ましい。例えば、シリカゲル、アルミナ、各種ゼオライト、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム等のアルカリ土類金属酸化物、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属等が挙げられる。
ガス吸着剤としては、ゼオライト5A、Y、13X等の合成ゼオライト、モルデナイト、エリオナイト、フォージャサイト等の天然ゼオライト、各種原料から製造された活性炭等が使用できる。
【0038】
乾燥剤および吸着剤の粒径は、細かい方が繊維状樹脂によって形成された網目中に保持され易く好ましい。具体的には、平均粒子径0.05〜100μmが好ましく、0.1〜50μmがより好ましい。
【0039】
本発明の酸素吸収剤成形体の製造においては、まず、酸素吸収剤粉末と剪断力を受けることによって繊維化可能な樹脂を、樹脂の融点未満の温度において、樹脂が繊維化する大きさ以上の剪断力の作用下、混練する。次いで、該混練物に有機バインダーおよびその溶剤を添加して溶剤の沸点未満で混練する。あるいは、酸素吸収剤粉末、剪断力を受けることによって繊維化可能な樹脂、有機バインダーを樹脂の融点未満の温度において、樹脂が繊維化する大きさ以上の剪断力の作用下、混練し、該混練物に有機バインダーの溶剤を添加して溶剤の沸点未満で混練しても良い。さらに、酸素吸収剤粉末、剪断力を受けることによって繊維化可能な樹脂、有機バインダーおよびその溶剤を、前記樹脂が繊維化する大きさ以上の剪断力の作用下、混練しても良い。どの方法が最適かは、用いる酸素吸収剤、繊維状樹脂、有機バインダーおよびその溶剤の種類、混練方法によって異なる。
【0040】
混練方法は、剪断力によって繊維状になる樹脂が繊維化する強さの剪断力が作用する方法および酸素吸収剤粉末、繊維状樹脂および有機バインダーが均一に混合できる方法であれば特に限定されないが、例えば、乳鉢を使用することができる。工業的規模で混練を行うために適した装置には、らいかい機(自動乳鉢)、ボールミル、ロールミル、スクリューニーダー、遊星式ミキサー、バンバリーミキサー、押出機等が挙げられる。用いる酸素吸収剤の種類は限定されない。混練温度は、樹脂の融点未満であることが重要である。好ましくは、樹脂の融点、有機バインダーの融点、溶剤の沸点、酸素吸収剤の沸点又は分解・変質温度のうち、最も低い温度未満であって、使用する酸素吸収剤、剪断力によって繊維状になる樹脂、有機バインダー、溶剤の種類、混練方法に応じ、最良の温度が選択される。前記温度内に保たれるならば、温度調節器なしに混練できるが、好ましくは、加温装置または冷却装置を取り付けて混練温度を調節する。
【0041】
上記酸素吸収剤粉末と樹脂との混練工程において、樹脂が繊維化する大きさ以上の剪断力が作用すると樹脂が繊維状となり、酸素吸収剤粉末に絡まることによって酸素吸収剤粉末同士を結束する。樹脂に作用する剪断力は、弱すぎると繊維化が不十分となり好ましくないが、強すぎても繊維が細く短くなり、酸素吸収剤粉末を結束する力が弱くなるため好ましくない。
【0042】
本発明の酸素吸収剤成形体は、上記製造方法において酸素吸収剤粉末の代わりに担体粉末を用い、担体粉末が繊維状樹脂および有機バインダーによって結合されている担体粉末成形体を作製した後、酸素吸収剤を担持または含浸することによっても製造できる。このような方法を採ることにより、混練物の可塑性が低い等の理由で成形体が得難い酸素吸収剤や、酸素と反応し易く混練工程および成形工程において酸素吸収が進行する酸素吸収剤であっても、成形体を作製することができる。また、担持または含浸させる酸素吸収剤の種類を変えるだけであるため、製造品種の切り替えが容易になるという利点もある。
【0043】
本発明の酸素吸収剤成形体の形状は特に限定されず、シート状、錠剤状、棒状、紐状、筒状(中空円柱状)等、好みの形状に成形できる。上記製造方法で得られた酸素吸収剤粉末、繊維状樹脂、有機バインダーおよびその溶剤からなる混練物が、押出成形が可能な程度に可塑性を有する場合は、目的とする形状に成形可能なダイを備え付けた押出成形機により、成形することができる。押出成形に際しては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸又はその塩等の滑剤を添加することもできる。シート状に成形する場合は、上記混練物を所望の厚みまでローラー圧延することにより、成形することができる。また、上記混練物の粘度が低い場合は、ドクターブレード法によってシート状に成形することもできる。
【0044】
上記方法によって混練物を成形した後、成形体中の溶剤を揮発させる。溶剤を揮発させることにより、成形体中の有機バインダーが膜状に固化する。揮発が不十分、すなわち有機バインダーの固化が不十分であると膜の強度が低くなり、酸素吸収剤成形体の引張強度が低くなる。しかし、担体に担持させて用いられる酸素吸収剤においては、完全に乾燥させると期待する酸素吸収能力が得られない場合がある。このような場合においては、成形体の引張強度と酸素吸収能力が許容範囲となるような半揮発状態に留めることもできる。また、混練物のローラー圧延によってシート状酸素吸収剤成形体を製造する場合には、加熱ローラーにより、圧延と乾燥を同時に行うこともできる。
【0045】
乾燥温度は、溶剤が揮発する温度であり、酸素吸収剤の沸点または分解・変質温度未満であれば特に限定されない。乾燥雰囲気は、特に問題がなければ空気中で行うことができるが、酸素との反応性が高い酸素吸収剤の成形体においては、窒素下または減圧下で乾燥させる。
【実施例】
【0046】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
実施例1
平均粒径80μmの還元鉄粉1000gに50wt%塩化カルシウム水溶液40gを混合し、乾燥した後、篩い分けして粗粒を除き、酸素吸収剤粉末を得た。
この酸素吸収剤粉末60g、PTFE粉末(商品名「6−J」、三井・デュポンフロロケミカル(株)製)3.0g、HPC粉末(商品名「日曹HPC−H」、日本曹達(株)製)1.2g、エタノール12g(酸素吸収剤粉末:PTFE:HPC:エタノール重量部=100:5:2:20)をローラーミキサー(商品名「R60」、(株)東洋精機製)を用いて27℃,15分混練した。得られた混練物をローラー圧延後、減圧下70℃で乾燥し、平均厚み580μmのシート状酸素吸収剤成形体Aを得た。酸素吸収剤成形体Aの電子顕微鏡(SEM)写真を図1および図2(高倍率写真)に示す。図1において、還元鉄粉を主剤とした酸素吸収剤粉末が繊維状樹脂により結束されて一体化した構造体が観察され、図2において、この構造体が薄いセルロース誘導体の膜で覆われている様子が観察される。
【0047】
酸素吸収剤成形体Aを15mm×50mmの短冊状に切り取り、引張試験機(商品名「オートグラフ」、(株)島津製作所製)を用い、引張強度および引張伸び率を測定した。測定条件は、チャック間隔30mm、引張速度10mm/minとした。また、同じく15mm×50mmの短冊状に切り取った酸素吸収剤成形体Aを、直径80mmの金属製丸棒の円周方向に巻きつけ、目視で亀裂の有無を調べた。亀裂が発生しない場合を可撓性有り、亀裂が発生した場合又は破断した場合を可撓性無しとして評価した。
酸素吸収剤成形体Aを20mm×20mmの大きさに切り取り、空気1800mlおよび調湿材(10gの水で湿らせた脱脂綿)と共に酸素非透過性袋に入れて密封し、25℃で保管した。袋内の酸素濃度をガスクロマトグラフで測定することにより求め、酸素吸収剤成形体の体積基準の初期酸素吸収速度および最大酸素吸収量を求めた。なお、「体積基準の初期酸素吸収速度」とは、酸素吸収開始から1日経過後の、成形体1cm3当りの酸素吸収量(ml/cm3−成形体/d)を指し、「体積量基準の最大酸素吸収量」とは、酸素の吸収が最早進まなくなった時点での成形体1cm3当りの酸素吸収量(ml/cm3−成形体)を指す。
引張試験結果、可撓性の評価結果、酸素吸収能力の測定結果を表1に示す。
【0048】
比較例1
実施例1と同様の方法で調製した酸素吸収剤粉末12.0gとPTFE粉末0.6g(酸素吸収剤粉末:PTFE重量部=100:5)を乳鉢を用いて室温(25℃)で良く混合した。得られた凝集体をローラー圧延し、平均厚み558μmのシート状酸素吸収剤成形体Bを得た。
実施例1と同様の方法で、酸素吸収剤成形体Bの引張強度、引張伸び率、可撓性の有無、体積基準の初期酸素吸収速度および最大酸素吸収量を求めた。結果を表1に示す。
実施例1の酸素吸収剤成形体Aの引張強度は酸素吸収剤成形体Bの約6倍、引張伸び率は約1/13であり、第二の結合剤としてセルロース誘導体を用いることにより、引張強度および伸び率が大幅に改善されていることが分かる。
【0049】
比較例2
PTFE粉末を用いない以外は実施例1と同様にして、平均厚み680μmの酸素吸収剤成形体Cを得た。実施例1と同様の方法で、酸素吸収剤成形体Cの引張強度、引張伸び率、可撓性の有無、体積基準の初期酸素吸収速度および最大酸素吸収量を求めた。結果を表1に示す。
酸素吸収剤成形体Cは可撓性が無かったことから、第一の結合剤として繊維状のPTFEを用いることにより、可撓性が発生していることが分かる。
【0050】
比較例3
実施例1で調製した酸素吸収剤粉末700gとポリエチレン300gとを混合し、押出機を用い190℃で加熱溶融混練した後、Tダイを通してシート状に押出成形し、平均厚み2.0mmのシートを得た。このシートを延伸機により60℃で縦方向に延伸し、平均厚み570μmのシート状酸素吸収剤成形体Dを得た。
酸素吸収剤成形体Dを横方向15mm×縦方向50mmの短冊状に切り取り、実施例1と同様の方法で引張強度および引張伸び率の測定、可撓性の有無の評価を行った。酸素吸収剤成形体Dを3cm×3cmの大きさに切り取り、空気500mlおよび調湿材と共に酸素非透過性袋に入れて密封し、実施例1と同様の方法で、体積基準の初期酸素吸収速度および最大酸素吸収量を求めた。結果を表1に示す。
実施例1の酸素吸収剤成形体Aの体積基準の初期酸素吸収速度は酸素吸収剤成形体Dの4.5倍、最大酸素吸収量は約5倍であった。また、実施例1の酸素吸収剤成形体Aの引張強度は酸素吸収剤成形体Dと同等であった。
【0051】
実施例2
平均粒径80μmの還元鉄粉200g、PTFE粉末8.0g、CMC粉末(商品名「CMCダイセル2260」、ダイセル化学工業(株)製)4.0g、10wt%塩化カルシウム水溶液40g(鉄粉:PTFE:CMC:塩化カルシウム:水 重量部=100:4:2:2:18)を二軸スクリュー型連続式ニーダー(商品名「S1 KRCニーダ」、(株)栗本鐵工所製)を用いて26℃で混練した。得られた混練物をローラー圧延後、減圧下70℃で乾燥し、平均厚み590μmのシート状酸素吸収剤成形体Eを得た。
実施例1と同様の方法で、酸素吸収剤成形体Eの引張強度、引張伸び率、可撓性の有無、体積基準の初期酸素吸収速度および最大酸素吸収量を求めた。結果を表1に示す。
【0052】
実施例3
平均粒径80μmの還元鉄粉1000g、PTFE粉末40g、CMC粉末30g、9.1wt%塩化カルシウム水溶液220g(鉄粉:PTFE:CMC:塩化カルシウム:水重量部=100:4:3:2:20)を二軸押出機を用い室温(27℃)で混練した後、シートダイを通してシート状に押出成形し、厚み3.5mmのシートを得た。このシートをローラー圧延後、減圧下70℃で乾燥し、平均厚み640μmのシート状酸素吸収剤成形体Fを得た。
実施例1と同様の方法で、酸素吸収剤成形体Fの引張強度、引張伸び率、可撓性の有無、体積基準の初期酸素吸収速度および最大酸素吸収量を求めた。結果を表1に示す。
【0053】
実施例4
平均粒径80μmの還元鉄粉1000g、PTFE粉末40gを二軸遊星式ミキサー(商品名「ACM−5LVTJ」、(株)愛工舎製作所製)を用いて公転速度110rpm、自転速度350rpmで24℃、15分混合し、凝集粉末を得た。この凝集粉末にCMC粉末20g、7.7wt%塩化カルシウム水溶液260g(鉄粉:PTFE:CMC:塩化カルシウム:水重量部=100:4:2:2:24)を添加し、公転速度70rpm、自転速度220rpmで24℃、30分混練した。得られた混練物をローラー圧延後、減圧下70℃で乾燥し、平均厚み660μmのシート状酸素吸収剤成形体Gを得た。実施例1と同様の方法で、酸素吸収剤成形体Gの引張強度、引張伸び率、可撓性の有無、体積基準の初期酸素吸収速度および最大酸素吸収量を求めた。結果を表1に示す。
【0054】
実施例5
実施例1と同様の方法で調製した酸素吸収剤粉末1000g、PTFE粉末50g、HPC粉末20g、エタノール200g(酸素吸収剤粉末:PTFE:HPC:エタノール重量部=100:5:2:20)を二軸押出機を用い室温(28℃)で混練した後、直径10mmの円形口金を通して押出成形し、直径10mmの棒状成形体を得た。この棒状成形体を8mm間隔で切断後、減圧下70℃で乾燥し、直径9mm×高さ7.5mm(1.43g)の錠剤状酸素吸収剤成形体を得た。この錠剤状酸素吸収剤成形体2個を容量50mlのサンプル瓶に入れ、縦型振盪機を用いて200回/分の速度で10分間上下に激しく振った。サンプル瓶から成形体を取り出し、サンプル瓶内部を観察した結果、酸素吸収剤粉末の脱落は認められなかった。
【0055】
比較例4
実施例1で調製した酸素吸収剤粉末12.0gとPTFE粉末0.60g(酸素吸収剤粉末:PTFE重量部=100:5)を乳鉢を用いて室温(25℃)で良く混合した。得られた凝集体1.5gを直径9mmの錠剤成形器に充填し、1t/cm2の圧力で圧縮成形し、直径9mm、高さ7.6mmの錠剤状酸素吸収剤成形体を得た。同様の方法で作製した錠剤状酸素吸収剤成形体2個を容量50mlのサンプル瓶に入れ、実施例5と同様の方法で10分間上下に激しく振った。サンプル瓶から成形体を取り出し、サンプル瓶内部を観察した結果、酸素吸収剤粉末の脱落が認められた。
【0056】
実施例6
45wt%L-アスコルビン酸ナトリウム水溶液1000gに、硫酸第一鉄七水和物130gおよび炭酸ナトリウム120gを溶解させ、酸素吸収剤溶液を調製した。
珪藻土(平均粒径20μm)12.0g、活性炭(平均粒径10μm)8.0g、PTFE粉末2.0g、CMC粉末1.8gをミルシェイカー(商品名「8000M」、SPEX Certiprep社製)を用いて26℃、60分混合し、凝集粉末を得た。この凝集粉末20.0gに前記酸素吸収剤溶液32.8g(珪藻土:活性炭:PTFE:CMC:酸素吸収剤溶液重量部=60:40:10:9:200)を添加し、双腕型ニーダーで26℃、30分混練した。得られた混練物をローラー圧延後、減圧下50℃で乾燥し、平均厚み630μmのシート状酸素吸収剤成形体Hを得た。
酸素吸収剤成形体Hを15mm×50mmの短冊状に切り取り、実施例1と同様の方法で引張強度および引張伸び率の測定、可撓性の有無の評価を行った。
酸素吸収剤成形体Hを3cm×3cmの大きさに切り取り、空気800mlと共に酸素非透過性袋に入れて密封し、25℃、60%RHの雰囲気で保管し、実施例1と同様の方法で、体積基準の初期酸素吸収速度および最大酸素吸収量を求めた。結果を表1に示す。
【0057】
実施例7
CMC粉末使用量を2.4gとし、珪藻土:活性炭:PTFE:CMC:酸素吸収剤溶液重量部=60:40:10:12:200とした以外は実施例6と同様にして、厚み520μmのシート状酸素吸収剤成形体Iを得た。実施例6と同様の方法で、酸素吸収剤成形体Iの引張強度、引張伸び率、可撓性の有無、体積基準の初期酸素吸収速度および最大酸素吸収量を求めた。結果を表1に示す。
【0058】
実施例8
CMC粉末使用量を3.0gとし、珪藻土:活性炭:PTFE:CMC:酸素吸収剤溶液重量部=60:40:10:15:200とした以外は実施例6と同様にして、厚み610μmのシート状酸素吸収剤成形体Jを得た。実施例6と同様の方法で、酸素吸収剤成形体Jの引張強度、引張伸び率、可撓性の有無、体積基準の初期酸素吸収速度および最大酸素吸収量を求めた。結果を表1に示す。
比較例5
CMCを用いない以外は実施例6と同様にして、平均厚み642μmの酸素吸収剤成形Iを得た。実施例6と同様の方法で、酸素吸収剤成形体Kの引張強度、引張伸び率、可撓性の有無、体積基準の初期酸素吸収速度および最大酸素吸収量を求めた。結果を表1に示す。
酸素吸収剤成形体Kは、引張強度が低く、可撓性が無かった。
【0059】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例1で得られた酸素吸収剤成形体の破断面の電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図2】実施例1で得られた酸素吸収剤成形体の破断面の電子顕微鏡(SEM)写真であり、図1より観察倍率の高い写真である。
【符号の説明】
【0061】
1.酸素吸収剤粉末
2.繊維状樹脂
3.セルロース誘導体膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素吸収剤粉末と結合剤からなり、前記結合剤が繊維状樹脂および有機バインダーを含むことを特徴とする酸素吸収剤成形体。
【請求項2】
繊維状樹脂が剪断力を受けることによって繊維状にされた樹脂であることを特徴とする請求項1記載の酸素吸収剤成形体。
【請求項3】
繊維状樹脂がフッ素樹脂であることを特徴とする請求項1〜2いずれか一項記載の酸素吸収剤成形体。
【請求項4】
有機バインダーが水及び/又は有機溶媒に可溶な樹脂であることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項記載の酸素吸収剤成形体。
【請求項5】
有機バインダーがセルロース誘導体であることを特徴とする請求項1〜4いずれか一項記載の酸素吸収剤成形体。
【請求項6】
酸素吸収剤成形体中の繊維状樹脂含有量が酸素吸収剤粉末100重量部に対して1〜50重量部、有機バインダー含有量が0.5〜30重量部であることを特徴とする請求項1〜5いずれか一項記載の酸素吸収剤成形体。
【請求項7】
酸素吸収剤粉末が、表面にハロゲン化金属が被覆されている鉄粉を含むことを特徴とする請求項1〜6いずれか一項記載の酸素吸収剤成形体。
【請求項8】
酸素吸収剤粉末が、酸素吸収性樹脂粉末及び遷移金属塩触媒を含むことを特徴とする請求項1〜6いずれか一項記載の酸素吸収剤成形体。
【請求項9】
酸素吸収剤粉末が、アスコルビン酸およびその塩、多価アルコール、還元糖、不飽和脂肪酸化合物、不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物から選ばれる少なくとも一種の有機物及び遷移金属塩触媒が担体粉末に担持または含浸されたものを含む請求項1〜6いずれか一項記載の酸素吸収剤成形体。
【請求項10】
酸素吸収剤粉末と剪断力を受けることによって繊維化可能な樹脂を、該樹脂が繊維化する大きさ以上の剪断力の作用下、樹脂の融点未満で混練して酸素吸収剤粉末が繊維状樹脂によって結合されている凝集体を得た後、該凝集体に有機バインダーおよびその溶剤を添加して樹脂の融点未満かつ溶剤の沸点未満で混練し、得られた組成物を成形し、溶剤を揮発させる酸素吸収剤成形体の製造法。
【請求項11】
酸素吸収剤粉末、剪断力を受けることによって繊維化可能な樹脂、有機バインダーおよびその溶剤を、前記樹脂が繊維化する大きさ以上の剪断力の作用下、樹脂の融点未満かつ溶剤の沸点未満で混練して酸素吸収剤粉末が繊維状樹脂および有機バインダーによって結合されている組成物を得た後、該組成物を成形し、溶剤を揮発させる酸素吸収剤成形体の製造法。
【請求項12】
担体粉末と剪断力を受けることによって繊維化可能な樹脂を、該樹脂が繊維化する大きさ以上の剪断力の作用下、樹脂の融点未満で混練して担体粉末が繊維状樹脂によって結合されている凝集体を得た後、該凝集体に酸素吸収剤、有機バインダーおよびその溶剤を添加して樹脂の融点未満かつ溶剤の沸点未満で混練し、得られた組成物を成形し、溶剤を揮発させる酸素吸収剤成形体の製造法。
【請求項13】
担体粉末、剪断力を受けることによって繊維化可能な樹脂、酸素吸収剤、有機バインダーおよびその溶剤を、前記樹脂が繊維化する大きさ以上の剪断力の作用下、樹脂の融点未満かつ溶剤の沸点未満で混練して酸素吸収剤粉末が繊維状樹脂および有機バインダーによって結合されている組成物を得た後、該組成物を成形し、溶剤を揮発させる酸素吸収剤成形体の製造法。
【請求項14】
担体粉末と剪断力を受けることによって繊維化可能な樹脂を、該樹脂が繊維化する大きさ以上の剪断力の作用下、樹脂の融点未満で混練して担体粉末が繊維状樹脂によって結合されている凝集体を得た後、該凝集体に有機バインダーおよびその溶剤を添加して溶剤の沸点未満で混練し、得られた組成物を成形し、溶剤を揮発させた後、前記担体粉末に酸素吸収剤を担持または含浸させる酸素吸収剤成形体の製造法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−724(P2007−724A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181603(P2005−181603)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】