説明

酸素富化装置

【課題】良好な搭載性を有するとともに車種により異なる不定形で狭隘なスペースにも設置が可能な酸素富化装置を提供する。
【解決手段】この車載用酸素富化装置は、酸素を富化させる酸素富化手段21と、この酸素富化手段21から酸素富化された空気を吸引する減圧機37とを有し、酸素富化された空気を供給する車載用酸素富化装置において、酸素富化手段21を有する酸素富化手段側コンポーネント13と減圧機37を有する減圧手段側コンポーネント15とを別体に構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素を富化した空気を車室に供給する酸素富化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、酸素富化装置は、空気を通過させることによって酸素を富化させる酸素富化手段と、この酸素富化手段に空気を供給する送風機と、この酸素富化手段から酸素富化された空気を吸引する減圧手段と、この酸素富化手段から吸引された酸素富化空気を一時的に貯留するチャンバとを有し、これらを1つのコンポーネントに一体化しもので、例えば特許文献1に開示されているように、車両のコンソールボックス、トランクルーム、ガソリンタンク近傍等に設置されて、酸素富化空気を車室内に送気するようになっている。
【0003】
このような酸素富化装置は、その構成部品をコンポーネントに一体化しているため、車両等に搭載する際は装着が容易である。しかしながら、一体化された形態を変えることができないため、コンポーネントを収納できる設置場所や装着箇所が制限されてしまうという問題点があった。特に、車室内の狭隘で不定形の空き空間に収納設置することができず、不必要に大きな設置スペースを必要とするという問題点があった。一方、その構成部品を個別に車室内の空きスペースに配置する方法もあるが、そのようにすると、これらの構成部品を一つ一つ装着しなければならず搭載性が悪化する。
【0004】
【特許文献1】特開2005−112215
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点を解決することをその課題とし、良好な搭載性を有するとともに、車種により異なる不定形で狭隘なスペースにも設置が可能な酸素富化装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、酸素を富化させる酸素富化手段(21)と、この酸素富化手段(21)から酸素富化された空気を吸引する減圧手段(37)とを有し、酸素富化された空気を供給する酸素富化装置(11)において、酸素富化手段(21)を有する酸素富化手段側コンポーネント(13)と減圧手段(37)を有する減圧手段側コンポーネント(15)とを別体に構成した手段を採用することができる。
【0007】
この手段によると、狭隘なスペースしかない車両であっても、それぞれのコンポーネントを別々のスペースに設置することができる。また、酸素富化装置を一体として構成することもできるから、設置スペースに余裕のある車両にも搭載が可能となる。したがって、1つの製品を異なるタイプの種々の車両に対して適応可能となり、製品コストを低減することができる。
【0008】
また、上記課題を解決するため、減圧手段側コンポーネント(15)は、フレーム(33)と、減圧手段(37)と、減圧手段(37)とフレーム(33)との間に介装された防振装置(35)とをさらに有している手段を採用することができる。したがって、防振装置(35)は減圧手段側にのみ設ければよいから、装置全体に防振装置材を取り付ける場合に比して防振装置にかかる負荷を削減することができる。したがって、防振装置を不必要に大型化する必要がなく、コストの削減を図ることができる。
【0009】
また、上記課題を解決するため、減圧手段側コンポーネント(15)は、減圧手段(37)で吸引された酸素富化空気を貯留するチャンバ(43)をさらに有している手段を採用することができる。したがって、減圧手段(37)から吐出された酸素富化空気を一時的に貯留して圧力脈動を小さくし吐出脈動音を低減させることができる。
【0010】
また、上記課題を解決するため、酸素富化手段側コンポーネント(13)は、酸素富化手段(21)に空気を送り込む送風機(19)をさらに有している手段を採用することができる。したがって、空気を強制的に酸素富化手段に送ることができ、効率的な酸素富化をおこなうことができる。
【0011】
また、上記課題を解決するため、チャンバ(43)は、減圧手段(37)の近傍に配設されている手段を採用することができ、また、減圧手段(37)に取り付けられている手段を採用することもできる。したがって、減圧手段(37)からの熱でチャンバ(43)を加温することができる。したがって、チャンバ(43)内における結露を防止し、結露水の貯留を防止することができる。
【0012】
また、上記課題を解決するため、それぞれ別体に構成された前記減圧手段側コンポーネント(15)と前記酸素富化手段側コンポーネント(13)とを一体に構成した手段を採用することもできる。したがって、設置スペースに余裕のある車両に搭載する場合は搭載性を向上させることができる。
【0013】
また、上記課題を解決するため、酸素を富化させる酸素富化手段(21)と、この酸素富化手段(21)から酸素富化された空気を吸引する減圧手段(37)とを有し、酸素富化された空気を供給する酸素富化装置(11)において、減圧手段(37)そのものもしくはその近傍に、吐出脈動を低減する吐出脈動低減チャンバ(43)を取り付けた手段を採用することができる。したがって、吐出された酸素富化空気を一時的に貯留して圧力脈動を小さくし脈動音を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図1ないし図3を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明の実施の形態である車載用酸素富化装置11を示す。この車載用酸素富化装置11は、酸素富化手段側コンポーネント13と減圧手段側コンポーネント15とを有している。酸素富化手段側コンポーネント13は、図2に示すように、富化手段側ケース17を有している。この富化手段側ケース17には、送風機19が取り付けられており、空気を富化手段側ケース17内に供給するようになっている。この富化手段側ケース17内には、酸素富化膜からなる酸素富化手段21が収納装着されている。そして、この酸素富化手段21を空気が通過することで上流側と下流側に圧力差を生じさせ下流側に酸素富化空気を生成するようになっている。この富化手段側ケース17には、酸素富化された空気を吐出して後述する減圧手段に吸引させる吸引ポート23が設けられている。また、富化手段側ケース17には、固定部25,27,29が設けられており、富化手段側ケース17を減圧手段側コンポーネント15に固定できるようになっている。
【0016】
一方、減圧手段側コンポーネント15は、図3に示すように、減圧手段側ケース33を有している。この減圧手段側ケース33には、防振部材35を介して減圧機37が取り付けられており、減圧機から発生する振動を減衰できるようになっている。この減圧機37は、吸気ポート39と吐出ポート41とを有しており、富化手段側ケース17から吸気ポート39を通して酸素富化空気を吸引するとともに酸素富化空気を吐出ポート41を通して後述するチャンバ43へ供給するようになっている。
【0017】
また、減圧手段側ケース33にはチャンバ43が固定されている。このチャンバ43は、減圧機37近傍に配設されており、減圧機37からの熱によって所定温度以上に維持され、チャンバ43内の結露を防止するようになっている。このチャンバ43には、酸素富化空気が供給される供給口45と酸素富化空気を吐出される吐出口47が設けられており、前記供給口45と減圧機37の吐出ポート41との間には第1のホース49が接続されている。そして、チャンバ43は、減圧機37から吐出された酸素富化空気を一時的に貯留して圧力脈動を小さくし吐出脈動音を低減させるようになっている。
【0018】
なお、減圧手段側ケース33には、富化手段側ケース17の固定部25,27,29に対応して固定部51,53,55が設けられており、ボルト等を使用して富化手段側ケース17を減圧手段側ケース33に固定できるようになっている。
【0019】
このように構成された酸素富化手段側コンポーネント13と減圧手段側コンポーネント15とは、酸素富化手段側コンポーネント13の吸引ポート23と減圧手段側コンポーネント15の吸気ポート39とを第2のホース57で接続するとともに、富化手段側ケース17の固定部25,27,29を減圧機側ケース33の固定部51,53,55に締結することによって一体として構成することができる。
【0020】
また、これら酸素富化手段側コンポーネント13と減圧手段側コンポーネント15とを別体として使用することもできる。すなわち、それぞれのコンポーネント13,15を車室内の別々のスペースに設置し、これらを第2のホース57で接続することによって、車載用酸素富化装置として機能させることもできる。
【0021】
以上説明したように、この車載用酸素富化装置11にあっては、酸素富化手段21を有する酸素富化手段側コンポーネント13と減圧機37を有する減圧手段側コンポーネント15とを別体に構成するとともに、酸素富化手段側コンポーネント13の吸引ポート23と減圧手段側コンポーネント15の吸気ポート39とを第2のホース57で接続しうるようにしているから、狭隘なスペースしかない車両であっても、それぞれのコンポーネントを別々のスペースに設置することができる。また、富化手段側ケース17の固定部25,27,29を減圧機側ケース33の固定部51,53,55と締結することによって、酸素富化装置を一体として構成することもできるから、設置スペースに余裕のある車両にも搭載が可能となる。したがって、1つの製品を異なるタイプの種々の車両に対して適応可能となり、製品コストを低減することができる。
【0022】
また、防振部材35は減圧手段側にのみ設ければよいから、装置全体に防振部材を取り付ける場合に比して防振部材にかかる負荷を削減することができる。したがって、防振部材を不必要に大型化する必要がなく、コストの削減を図ることができる。
【0023】
ところで、酸素富化手段21は、空気中の水分も濃縮する傾向があり、酸素富化空気の吐出経路が冷やされると経路内側に結露水が付着する。特にチャンバのような大きな容積を持った容器の場合、内部に結露水が溜まってしまうという問題があった。
【0024】
これに対して、この車載用酸素富化装置にあっては、チャンバ43を減圧機37の近傍に配設しているから、減圧機37からの熱でチャンバ43を加温することができる。したがって、チャンバ43内における結露を防止し、結露水の貯留を防止することができる。
【0025】
なお、上記実施の形態にあっては、第2のホース57は、減圧機側に予め装着されているが、これに限る必要はなく、酸素富化手段側に装着されていてもよい。
【0026】
また、上記実施の形態にあっては、送風機19は酸素富化手段側コンポーネント13に装着されているが、酸素富化手段がエアコンからの風が通る場所に設置されている場合には、送風機19を省略してもかまわない。
【0027】
また、上記実施の形態においては、チャンバ43は減圧機37の近傍に配設されているが、これに限る必要はなく、吐出ホースの経路中であればどこでも設置することができる。
【0028】
また、上記実施の形態においては、ケース17,33を採用しているが、部品を固定または収納できるものであれば、フレーム構造でもよい。
【0029】
さらに、コンポーネント同士の固定は、ボルトによらず爪等を使用した脱着可能構造でもよく、また減圧手段には防振構造はなくてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態である車載用酸素富化装置の概略構成を示す断面図。
【図2】図1に示す車載用酸素富化装置の酸素富化手段側コンポーネントの概略構成を示す図であって、(a)はその正面図、(b)はその側面図。
【図3】図1に示す車載用酸素富化装置の減圧手段側コンポーネントの概略構成を示す図であって、(a)はその正面図、(b)はその側面図、(c)は(b)において、手前側のケースを外して内部構造が見える状態にした図。
【符号の説明】
【0031】
11 車載用酸素富化装置
13 酸素富化手段側コンポーネント
15 減圧手段側コンポーネント
19 送風機
21 酸素富化手段
33 減圧手段側ケース
35 防振部材
37 減圧機
43 チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を富化させる酸素富化手段(21)と、この酸素富化手段(21)から酸素富化された空気を吸引する減圧手段(37)とを有し、酸素富化された空気を供給する酸素富化装置(11)において、
前記酸素富化手段(21)を有する酸素富化手段側コンポーネント(13)と前記減圧手段(37)を有する減圧手段側コンポーネント(15)とを別体に構成したことを特徴とする酸素富化装置(11)。
【請求項2】
前記減圧手段側コンポーネント(15)は、フレーム(33)と、前記減圧手段(37)と、前記減圧手段(37)と前記フレーム(33)との間に介装された防振装置(35)とを、さらに有していることを特徴とする請求項1に記載の酸素富化装置(11)。
【請求項3】
前記減圧手段側コンポーネント(15)は、前記減圧手段(37)で吸引された酸素富化空気を貯留するチャンバ(43)を、さらに有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の酸素富化装置(11)。
【請求項4】
前記酸素富化手段側コンポーネント(13)は、前記酸素富化手段(21)に空気を送り込む送風機(19)を、さらに有していることを特徴とする請求項1に記載の酸素富化装置(11)。
【請求項5】
前記チャンバ(43)は、前記減圧手段(37)の近傍に配設されていることを特徴とする請求項3に記載の酸素富化装置(11)。
【請求項6】
前記チャンバ(43)は、前記減圧手段(37)に取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載の酸素富化装置(11)。
【請求項7】
それぞれ別体に構成された前記減圧手段側コンポーネント(15)と前記酸素富化手段側コンポーネント(13)とを一体に構成したことを特徴とする請求項1に記載の酸素富化装置(11)。
【請求項8】
酸素を富化させる酸素富化手段(21)と、この酸素富化手段(21)から酸素富化された空気を吸引する減圧手段(37)とを有し、酸素富化された空気を供給する酸素富化装置(11)において、
前記減圧手段(37)そのものもしくはその近傍に、吐出脈動を低減する吐出脈動低減チャンバ(43)を取り付けたことを特徴とする酸素富化装置(11)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−44815(P2008−44815A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221892(P2006−221892)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】