説明

酸素捕捉性ポリマーの製造方法及びその組成物

【課題】 高度の加工性、及び包装材料を形成する際に使用される一般的ポリマーへの十分な相溶性を示し、酸素感受性製品を包装するために使用されるフィルムまたは物品の一部でありながら有意な脱酸素能力を有する(共)重合体組成物を提供する。
【解決手段】(i)非共役ジエンの重合体または少なくとも1つの非共役ジエンと炭素数2〜20のα−オレフィンの共重合体、(ii)遷移金属触媒、(iii)任意に光開始剤、及び(iv)任意にポリマー希釈剤を含む脱酸素(共)重合体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(i)酸素捕捉性を有する非共役ジエンの重合体、または酸素捕捉性を有する少なくとも1つの非共役ジエンと炭素数2〜20のα−オレフィンの共重合体、(ii)遷移金属触媒、(iii)任意に光開始剤、及び(iv)任意にポリマー希釈剤を含む脱酸素組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素感受性製品の酸素への暴露を制限すると、多くの製品の品質及び貯蔵寿命は維持、向上される。例えば、包装システムにおいて酸素感受性食品の酸素への暴露を制限することにより、該食品の品質を維持し、腐敗を遅らすことができる。更に、該包装により、製品はより長く貯蔵され、よって廃棄および補充にかかるコストが低減される。
食品包装業界では、酸素暴露を制限するために幾つかの方法が開発されている。一般的方法には、被包装物品または包装材料以外の何らかの手段、例えば、脱酸素サッシェを使用することにより包装環境内の酸素を消費する方法;例えば、改質大気包装(MAP)及び/又は真空包装などによりパッケージ内に低酸素環境を作成する方法;及び、例えば、酸素バリヤーフィルムを用いることにより酸素が包装環境に進入するのを防止する方法;が含まれる。
【0003】
脱酸素組成物を収容しているサッシェは、第二鉄状態に酸化する第一鉄組成物、吸収剤上に不飽和脂肪酸塩及び/又は金属−ポリアミド複合体を含有し得るものである。このサッシェの欠点は、パッケージにサッシェを挿入するために、追加の包装ステップを必要とすること、サッシェが破れたときに被包装品が汚染される可能性があること、及び消費者が食べる危険性があることなどが挙げられる。
脱酸素材料を包装構造体に直接配合することも行われてきた。この方法(以下、「酸素活性バリアー」と呼ぶ)は包装中一定の脱酸素効果を発揮し得るもので、パッケージの壁を介して通過した酸素を捕捉、捕集し、それよってパッケージ中の酸素レベルをできるだけ最低レベルに維持する手段を提供し得るものである。酸素活性バリアーは、パッケージの一部として無機粉末及び/又は塩を配合すると包装材料の透明性及び機械的特性、例えば、引裂強さ、を劣化する恐れがあり、薄いフィルムを所望するときには特に加工が複雑となる。また、前記化合物及びその酸化生成物は容器中の食品により吸収され、その結果食品は人の消費に関する政府標準規格を満たさなくなることがあり得る。
【0004】
従来、脱酸素化合物の脱酸素性には、酸素とある種のエチレン不飽和炭化水素中の炭素−炭素二重結合との反応が利用されてきた。遷移金属触媒及びポリマー100gあたり0.01〜10当量のエチレン二重結合を有するエチレン不飽和炭化水素ポリマーを含有する脱酸素組成物が、例えば、特許文献1、特許文献2に開示されている如く公知である。例えば、1,4−ブタジエンの重合物であるポリブタジエンは、炭素−炭素二重結合を末端(1,2−結合より生成)に持つほか、主鎖中(1,4−結合により生成)にも保有している。しかしながら、主鎖中に炭素−炭素二重結合を保有する多くの場合は、官能的に重要な副生成物が反応の際に生成するという問題を有していた。さらに該ポリマーは、非晶質であるために可撓性包装材料を作成するために通常使用されているフィルム形成性半結晶性ポリマーとブレンドすること、加工することが困難である。
【0005】
遷移金属と共にエチレン不飽和化合物の有効な脱酸素活性の開始を促進するために光開始剤を使用することも、例えば、特許文献3に開示されている如く公知である。しかしながら、脱酸素ポリマーとフィルム形成性ポリマーとの相容性が悪いために、ブレンド中の脱酸素ポリマーの量を制限しなければならず、生じた組成物は加工することが困難である。
優れた脱酸素性を与えるために、遷移金属触媒と共にエチレンと少なくとも1つのビニル不飽和脂環式モノマー(好ましくは、ビニルシクロヘキセン)の共重合体を使用することは、例えば、特許文献4に開示されている如く公知である。しかしながら、重合前に、ビニルシクロヘキセンモノマーは特有な臭気を有し取り扱いにくいうえ、共重合体からの残未反応モノマーの完全除去が困難である。
【0006】
近年、前記炭素−炭素二重結合の代わりに大気酸素と反応し得る構成単位として歪んだ環状アルキレン骨格を利用する方法が報告された。詳しくは、遷移金属触媒と共にエチレンと少なくとも1つの歪んだ環状アルキレンモノマー、好ましくはシクロペンテン、の共重合体を使用することが、例えば、特許文献5に開示されている如く公知である。エチレン/シクロペンテン共重合体は官能的に重要な副生成物を生成することなく有意な脱酸素性を示す。しかし、脱酸素性は十分ではなく、脱酸素性を向上させるためには、例えば臭気のあるビニルシクロヘキセン等の炭素−炭素二重結合を側鎖中に含むモノマーを同時に共重合してエチレン/シクロペンテン/ビニルシクロヘキセン3元共重合体とすること等が必要である。
理想的には、脱酸素組成物中に使用するためのポリマー材料は良好な加工特性を示し、直接有用な包装材料に形成され得るか、または包装材料を作成するために通常使用されているポリマーと高い相容性を有していなければならず、被包装品の色、味または臭いを損ねる副生成物を生成してはならない。最適には、前記組成物から形成される包装材料は十分に脱酸素した後もその物理的特性を維持し得る。
【0007】
【特許文献1】特開平05−115776号公報
【特許文献2】米国特許第5,399,289号明細書
【特許文献3】米国特許第5,211,875号明細書
【特許文献4】国際公開第99/16799号パンフレット
【特許文献5】国際公開第01/03521号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高度の加工性、及び包装材料を形成する際に使用される一般的ポリマーへの十分な相容性を示し、酸素感受性製品を包装するために使用されるフィルムまたは物品の一部でありながら有意な脱酸素能力を有する組成物を見出すことを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ある特定の遷移金属触媒を用いて、非共役ジエンを重合すると歪んだ環状アルキレン骨格と末端炭素−炭素二重結合を任意の割合で含む重合体を与える(Maclomolecules, 37, 1693(2004))という知見に基づき検討した結果、特定の遷移金属触媒を用いて(共)重合して得られる(i)非共役ジエンの重合体または少なくとも1つの非共役ジエンと炭素数2〜20のα−オレフィンの共重合体が、(ii)遷移金属触媒、(iii)任意に光開始剤、及び(iv)任意にポリマー希釈剤と組み合わせることにより、高度の加工性、包装材料を形成する際に使用される一般的ポリマーへの十分な相容性をもち、かつ酸素感受性製品を包装するために使用されるフィルムまたは物品の一部でありながら有意な脱酸素能力を示す脱酸素組成物を提供するという驚くべき事実に基づいてなされたものである。
即ち、本発明は、(i)非共役ジエンの重合体または少なくとも1つの非共役ジエンと炭素数2〜20のα−オレフィンの共重合体、(ii)遷移金属触媒、(iii)任意に光開始剤、及び(iv)任意にポリマー希釈剤を含む脱酸素組成物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、高度の加工性、及び包装材料を形成する際に使用される一般的ポリマーへの十分な相容性と酸素感受性製品を包装するために使用されるフィルムまたは物品の一部でありながら有意な脱酸素能力を示す工業的に有用な脱酸素組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に関わる脱酸素組成物について詳細に説明する。
本発明は、ある特定の遷移金属触媒を用いて得られた下記一般式(1)で表される構造的特徴を有する(i)非共役ジエンの重合体、または非共役ジエン及び炭素数2〜20のα−オレフィンとの共重合体が、(ii)遷移金属触媒、(iii)任意に光開始剤、及び(iv)任意にポリマー希釈剤と組み合わせることにより、高度の加工性、包装材料を形成する際に使用される一般的ポリマーへの十分な相容性を有し、かつ酸素感受性製品を包装するために使用されるフィルムまたは物品の一部でありながら有意な脱酸素能力を示す脱酸素組成物を提供するという驚くべき事実に基づいてなされたものである。
【化1】

式中、末端二重結合を含むユニット(x)の含量は0.1モル%から99.8モル%、環状構造を含むユニット(y)の含量は0.1モル%から99.8モル%であり、鎖状ユニットの含量は0モル%から99.8モル%である。好ましくは、末端二重結合を含むユニット(x)の含量は0.1モル%から20モル%、環状構造を含むユニット(y)の含量は0.1モル%から80モル%であり、鎖状ユニットの含量は0モル%から99.8モル%の範囲であるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0012】
本発明で用いる非共役ジエンとしては特に制限はないが、α,ω−ジエンが好ましい。具体的には1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン等の直鎖状あるいは分岐鎖状の非共役ジエン、ノルボルナジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、4−ビニルシクロヘキセン、1,4−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘプタジエン、1,4−シクロオクタジエン等の環状の非共役ジエンが挙げられる。これらのうち好ましくは直鎖状の非共役ジエンであり、特に好ましくは1,5−ヘキサジエンである。
また、本発明で用いるα−オレフィンとしては特に制限はないが、炭素数2〜20のα−オレフィンが好ましい。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。
【0013】
本発明の脱酸素性を示す(共)重合体は、下記式(2)で表される特定の遷移金属化合物(A)および有機アルミニウムオキシ化合物または有機ホウ素化合物から選ばれる1種以上の活性化剤(B)からなる重合触媒の存在下に、非共役ジエンの単独重合または非共役ジエン及び炭素数2〜20のα−オレフィンの共重合を行なうことで得られる。
【化2】

式(2)中、MはTi,ZrまたはHfを表す。最も好ましくはTiである。Xは、Xが複数である場合、複数のXはそれぞれ同じでも異なっていても良く、水素、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリロキシ基またはハロゲンから選ばれる基である。好ましくは炭素数1〜20のアルキル基またはハロゲンからなる。nは1〜3の整数である。R1 〜R8 はそれぞれ同じでも異なっていても良く、水素、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリロキシ基またはハロゲンから選ばれる基であり、任意の2つまたは3つが結合し環を形成していても良い。環には共役2重結合を含んだ芳香族性を有するものも含む。好ましくは水素または炭素数1〜20のアルキル基からなる。mは0〜3の整数である。なかでも1〜3置換のシクロペンタジエン環を有する場合は、さらに好適である。
【0014】
前記式(2)におけるX及びR1〜R8のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリロキシ基のアルキル、アリール部分の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、ネオペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、1−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチル、1,1−エチルメチルプロピル、2−エチルブチル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、イソヘプチル、4−メチルヘキシル、1,2−ジメチルペンチル、2−エチルペンチル、2,4−ジメチルペンチル、1−エチル−3−メチルブチル、3−メチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、1,1,3−トリメチルブチル、1,1,2,2−テトラメチルプロピル、n−オクチル、1−メチルヘプチル、イソオクチル、4−エチルヘキシル、4,4−ジメチルヘキシル、1,3−ジメチルヘキシル、2,3−ジメチルヘキシル、1−エチル−3−メチルペンチル、2,2−エチルメチルペンチル、1,1−ジエチルブチル、2−メチル−1−プロピルブチル、4−エチルシクロヘキシル、3,4−ジメチルシクロヘキシル、1,1,2−トリメチルペンチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、n−ノニル、イソノニル、1−メチルオクチル、4−エチルヘプチル、1,4−ジメチルヘプチル、1,1,3−トリメチルヘキシル、2,2−エチルメチルヘキシル、1,1−ジエチルペンチル、2,2−メチルプロピルペンチル、n−デシル、イソデシル、1−メチルノニル、2−エチルオクチル、2,2−ジメチルオクチル、1,2−ジメチルオクチル、n−ウンデシル、n−ドデシル、フェニル、ベンジル、p−トリル、m−トリル、キシリル、メシチリル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,6−ジメトキシフェニル、2,4,6−トリメトキシフェニル、2,6−ジイソプロピルフェニル、2,4,6−トリイソプロピルフェニル、ナフチル、2−メトキシフェニル、2−イソプロポキシフェニル、2−(t−)ブトキシフェニル、2,6−(ジ−t−)ブチルフェニル、2−メチルフェニル、2−イソプロピルフェニル、2−(t−)ブチルフェニル、2−メチル−6−イソプロピルフェニル、2−メチル−6−(t−)ブチルフェニルなどが挙げられる。これらの炭化水素基は水素原子を任意にハロゲン原子で置換していてもよい。ハロゲン原子で置換した炭化水素基の例としては、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、ジクロロメチル、クロロメチル、o−クロロフェニル、ペンタフルオロフェニルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0015】
前記式(2)で表される具体的な金属錯体として、例えば、CpTi(O−2,6− iPr263)Cl2 、Cp* Ti(O−2,6− iPr263)Cl2 、MeCpTi(O−2,6− iPr263)Cl2、1,3−Me2CpTi(O−2,6− iPr263)Cl2、1,2,3−Me3CpTi(O−2,6− iPr263)Cl2、1,2,4−Me3CpTi(O−2,6− iPr263)Cl2、n−BuCpTi(O−2,6− iPr263)Cl2、t−BuCpTi(O−2,6− iPr263)Cl2、1,3−n−Bu2CpTi(O−2,6− iPr263)Cl2、1,3−t−Bu2CpTi(O−2,6− iPr263)Cl2、CpZr(O−2,6− iPr263)Cl2、Cp* Zr(O−2,6− iPr263)Cl2、MeCpZr(O−2,6− iPr263)Cl2、1,3−Me2CpZr(O−2,6− iPr263)Cl2、1,2,3−Me3CpZr(O−2,6− iPr263)Cl2、1,2,4−Me3CpZr(O−2,6− iPr263)Cl2、n−BuCpZr(O−2,6− iPr263)Cl2、t−BuCpZr(O−2,6− iPr263)Cl2、1,3−n−Bu2CpZr(O−2,6− iPr263)Cl2、1,3−t−Bu2CpZr(O−2,6− iPr263)Cl2、CpHf(O−2,6− iPr263)Cl2、Cp* Hf(O−2,6− iPr263)Cl2、MeCpHf(O−2,6− iPr263)Cl2、1,3−Me2CpHf(O−2,6− iPr263)Cl2、1,2,3−Me3CpHf(O−2,6− iPr263)Cl2、1,2,4−Me3CpHf(O−2,6− iPr263)Cl2、n−BuCpHf(O−2,6− iPr263)Cl2、t−BuCpHf(O−2,6− iPr263)Cl2、1,3−n−Bu2CpHf(O−2,6− iPr263)Cl2、1,3−t−Bu2CpHf(O−2,6− iPr263)Cl2(前記構造式中、Cpはシクロペンタジエニル基を、Cp* はペンタメチルシクロペンタジエニル基を、 iPrはイソプロピル基を表す。)等を例示することが出来る。これらは単独で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。
【0016】
本発明で用いることのできる有機アルミニウムオキシ化合物としては下記一般式(3)、(4)、(5)および(6)で示される有機アルミニウムオキシ化合物のうち少なくとも1つの化合物が挙げられる。
【化3】

(式中、R9〜R11はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜8の炭化水素基、nは1〜50までの整数を表す。)
【0017】
【化4】

(式中、R12〜R14はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜8の炭化水素基、nは1〜50までの整数を表す。)
【0018】
【化5】

(式中、R15は炭素数1〜8の炭化水素基、nは1〜50までの整数を表す。)
【0019】
【化6】

(式中、R16〜R19はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜8の炭化水素基、nは1〜50までの整数を表す。)
【0020】
これら有機アルミニウムオキシ化合物の具体例としては、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、プロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、メチルエチルアルミノキサン、メチルブチルアルミノキサン、メチルイソブチルアルミノキサン等が挙げられる。特に、メチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、メチルイソブチルアルミノキサンが好適に使用できる。これらは2種以上組み合わせて用いてもよい。また、これら有機アルミニウムオキシ化合物には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物を含んでいてもよい。
【0021】
また、本発明で用いることのできる有機ホウ素化合物としては、下記一般式(7)または(8)で示される有機ホウ素化合物のうち少なくとも1つの化合物があげられる。
(BR202122n ・・・(7)
(式中、R20〜R22はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜14のハロゲン化アリール基またはハロゲン化アリロキシ基を含む炭化水素基、nは1〜4までの整数を表す。)
Q(BR23242526n ・・・(8)
(式中、Qは4級アミンまたは4級アンモニウム塩またはカルボカチオンまたは価数+1〜+4の金属カチオンであり、R23〜R26はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜14のハロゲン化アリール基またはハロゲン化アリロキシ基を含む炭化水素基、nは1〜4までの整数を表す。)
【0022】
前記一般式(7)および(8)の炭化水素基の具体例としてはフェニル、ベンジル、p−トリル、m−トリル、キシリル、メシチリル、2,6−ジメチルフェニル,2,4,6−トリメチルフェニル,2,6−ジメトキシフェニル,2,4,6−トリメトキシフェニル,2,6−ジイソプロピルフェニル,2,4,6−トリイソプロピルフェニル、ナフチル、o−イソプロポキシフェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンタフルオロベンジル、テトラフルオロフェニル、テトラフルオロトリル等が挙げられる。
また、前記一般式(8)のQの具体例としてはピリジニウム、2,4−ジニトロ−N,N−ジエチルアニリニウム、p−ニトロアニリニウム、2,5−ジクロロアニリン、p−ニトロ−N,N−ジメチルアニリニウム,キノリニウム、N,N−ジメチルアニリニウム,メチルジフェニルアンモニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、8−クロロキノリニウム、トリメチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリフェニルホスホニウム、アンモニウム、トリフェニルメチル、ナトリウム、リチウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
【0023】
これら有機ホウ素化合物の具体例としては、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。これらは2種以上組み合わせて用いてもよい。最も好ましくはトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
本発明の脱酸素性を示す(共)重合体を製造するのに好適な触媒は(A)遷移金属化合物および(B)アルキルアルミニウムオキシ化合物または有機ホウ素化合物から選ばれる1種以上の活性化剤を任意の順序でかつ任意の好適な方法で組み合わせることによって得られる。
前記(A)成分と(B)成分の触媒組成比(モル比)は、好ましくは(A):(B)=1:0.01〜1:10000であり、更に好ましくは1:100〜1:3000である。
【0024】
触媒調製はあらかじめ、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、好適な溶媒中で混合することにより行ってもよいし、(A)、(B)それぞれの成分を別々にモノマーが共存するリアクター内に導入して、リアクター内において調製してもよい。触媒調製に好適な溶媒はヘキサン、シクロヘキサン等のアルカンをはじめとする炭化水素系溶媒とトルエン、ベンゼン、エチルベンゼン等の芳香族系の溶媒が挙げられる。またこれらの溶媒は前処理において水分等を除去しておくことが好ましい。触媒の調製温度としては、−20℃〜150℃が最適である。
本発明の範囲には、本発明のポリマー成分の末端二重結合を含むユニット(x)、環状構造を含むユニット(y)及び他のソースから誘導される脱酸素性の組合せも含まれる。これらの組合せは、本発明のポリマー成分を以下に詳記するように脱酸素性を有する1つ以上の追加のポリマー成分とブレンドすることにより、または本発明のポリマー成分に脱酸素性を与える追加のモノマー単位を配合することにより達成され得る。
【0025】
ポリマー成分は、フィルムまたは他の好適な包装材料(例えば、バッグまたはパウチ)に形成され得る。前記ポリマー成分はフィルム(すなわち、このフィルムは、例えば、ガスバリヤー層、シール層等を有する多層フィルムであり得る)の1つ以上の層を形成するための単一ポリマー材料として使用され得、他の脱酸素性ポリマー物質(例えば、ポリブタジエン)とブレンドされ得、または包装フィルム材料の形成に有用であるとして公知であり且つしばしば得られたフィルムをより可撓性及び/又は加工性とし得る1つ以上の希釈剤ポリマーとブレンドされ得る。好適な希釈剤ポリマーには、ポリエチレン(例えば、低密度ポリエチレン、極低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及び線状低密度ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレンコポリマー(例えば、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマー)、アイオノマーが含まれるが、これらに限定されない。異なる希釈剤ポリマーのブレンドも使用し得る。
【0026】
通常、前記希釈剤ポリマーは半結晶性材料である。有利には、本発明の組成物のポリマー成分は環状構造を含むユニット(y)の含量に依存して結晶性から非結晶性であり得、前記希釈剤ポリマーと十分に相容性であり得る。式(1)中の環状構造を含むユニット(y)の含量は少なくとも0.1モル%であるが99.8モル%未満であり、好ましくは80モル%未満の範囲であるが、必ずしもこれらに限定されない。特定の希釈剤ポリマーの選択は製造しようとする物品及びその最終用途にかなり依存する。例えば、製造した物品の透明性、清浄性、バリヤー性、機械的特性及び/又はテキスチャーを与えるようなある種のポリマーは当業者に公知である。
【0027】
ポリマー成分と一緒に、本発明の脱酸素組成物は脱酸素剤触媒として遷移金属化合物を含む。遷移金属触媒は、周期表の第1、第2または第3遷移元素系列から選択される金属を含む塩であり得る。金属は好ましくはRh、Ru、またはSc−Cu系列(すなわち、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni及びCu)元素の1つであり、より好ましくはMn、Fe、Co、Ni及びCuの少なくとも1つ、最も好ましくはCoである。前記塩に対する好適なアニオンには、塩素、酢酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸及びナフテン酸アニオンが含まれるが、これらに限定されない。代表的な塩には2−エチルヘキサン酸コバルト(II)、オレイン酸コバルト及びネオデカン酸コバルト(II)が含まれる。(金属塩はアイオノマーであってもよく、この場合ポリマー対イオンが使用される。)包装物品を形成する際に使用する場合、本発明の脱酸素組成物は上記ポリマー及び遷移金属触媒のみを含み得る。
しかしながら、更に脱酸素性の開始を促進し、コントロールするために光開始剤を添加することができる。脱酸素組成物に光開始剤またはそのブレンドを添加することが好ましく、酸化防止剤が加工及び貯蔵中の組成物の早期酸化を防止するために添加されているときには特に好ましい。光開始材を含有する脱酸素組成物に所望の時期に光を照射することにより、酸素との反応の開始が促進されて、脱酸素組成物の酸素掃去の誘導期が減少または消失し、その結果、脱酸素組成物の酸素掃去機能を速やかに発現することが可能となる。
【0028】
好適な光開始剤は当業者に公知である。好適な光開始剤としては、ベンゾフェノン及びその誘導体、例えば、メトキシベンゾフェノン、ジメトキシベンゾフェノン、ジメチルベンゾフェノン、ジフェノキシベンゾフェノン、アリルオキシベンゾフェノン、ジアリルオキシベンゾフェノン、ドデシルオキシベンゾフェノン、ジベンゾスベロン、4,4’−ビス(4−イソプロピルフェノキシ)ベンゾフェノン、4−モルホリノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、トリベンゾイルトリフェニルベンゼン、トリトルオイルトリフェニルベンゼン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン;アセトフェノン及びその誘導体、例えば、o−メチルアセトフェノン、4’−メトキシアセトフェノン、バレロフェノン、ヘキサノフェノン、α−フェニル−ブチロフェノン、p−モルホリノプロピオフェノン;ベンゾイン及びその誘導体、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾインテトラヒドロピラニルエーテル、4−o−モルホリノデオキシベンゾイン;
【0029】
置換及び未置換アントラキノン、α−テトラロン、アセナフテンキノン、9−アセチルフェナントレン、2−アセチルフェナントレン、10−チオキサンテノン、3−アセチルフェナントレン、3−アセチルインドール、9−フルオレノン、1−インダノン、1,3,5−トリアセチルベンゼン、チオキサンテン−9−オン、イソプロピルチオキサンテン−9−オン、キサンテン−9−オン、7−H−ベンゾ[de]アントラセン−7−オン、1’−アセトナフトン、2’−アセトナフトン、アセトナフトン、ベンゾ[a]アントラセン−7,12−ジオン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、α,α−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジブトキシアセトフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル(ジフェニルスルフィド)等が含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
一重項酸素発生性光増感剤、例えば、ローズベンガル、メチレンブルー及びテトラフェニルポルフィン、及びポリマー開始剤、例えば、ポリ(エチレン−一酸化炭素)、及びオリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]も使用し得る。しかしながら、光開始剤は通常より迅速且つより効率的な開始を与えるので好ましい。化学線を使用するときにはより長い波長で開始し得る。なぜならば、長波長は発生させるのにより安価であり且つ短い波長よりも有害な副作用が少ないからである。
光開始剤を存在させるときには、光開始剤は放射線に曝したときに本発明の組成物による脱酸素の開始を強化及び/又は促進し得る。使用する光開始剤の最適量は式(1)に示したポリマー骨格中に存在する末端二重結合を含むユニット(x)の含量、環状構造を含むユニット(y)の含量、及び残部である鎖状ユニットの含量、使用する放射線の波長及び強度、使用する酸化防止剤の種類及び量、並びに使用する光開始剤の種類に依存する。光開始剤の量は脱酸素組成物の使用方法にも依存し得る。例えば、光開始剤含有組成物が使用する放射線に対してやや不透過性である他の層をその下に含むフィルム層中に存在するならば、より多くの開始剤が必要とされる。しかしながら、多くの用途のために使用される光開始剤の量は組成物の全量の0.01〜10重量%である。脱酸素は、下記するように本発明の組成物を含む物品を化学線または電子ビーム線に曝すことにより開始され得る。
【0031】
配合及びフィルム形成中の成分の劣化を遅らすために1つ以上の酸化防止剤を本発明の脱酸素組成物に配合し得る。前記酸化防止剤は照射の非存在下で脱酸素活性が発揮される誘導期間を延長させるが、脱酸素性が要求されるときに層または物品(及び配合した光開始剤)に放射線を暴露させることができる。好適な酸化防止剤には、2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレン−ビス(6−t−ブチル−p−クレゾール)、トリフェニルホスファイト、トリス−(ノニルフェニル)ホスファイト、ジラウリルチオジプロピンネート等が含まれる。
酸化防止剤を本発明の組成物の一部として配合するとき、前記酸化防止剤は好ましくは脱酸素組成物の成分及び生じたブレンド中に存在する他の物質が配合及び加工中に酸化されるのを防止する量で存在する。しかしながら、その量は脱酸素が開始した後生じた層、フィルムまたは物品の脱酸素活性を妨害する量未満であることが好ましい。所与の組成物での必要量は該組成物中に存在する成分、使用する特定酸化防止剤、成形物品を形成するために使用される熱加工の程度及び量、並びに脱酸素を開始するために適用される放射線の量及び波長に依存し得る。通常、酸化防止剤は組成物の全量の0.01〜1重量%の量で使用される。
【0032】
本発明の脱酸素組成物中に配合され得る他の添加剤には、充填剤、顔料、染料、安定剤、加工助剤、可塑剤、難燃剤、防曇剤、粘着防止剤等が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。
本発明の脱酸素組成物中に使用される成分の量により、該組成物の用途及び有効性が影響され得る。すなわち、ポリマー、遷移金属触媒、並びに任意の光開始剤、酸化防止剤、ポリマー希釈剤、添加剤等の量は所望の物品及びその最終用途に応じて変更し得る。例えば、上記ポリマーの主な機能の1つは脱酸素中酸素と不可逆的に反応することであり、遷移金属触媒の主な機能はこのプロセスを促進することである。よって、存在するポリマーの量は組成物の脱酸素能力(すなわち、組成物が消費し得る酸素の量)にかなり影響を及ぼし、遷移金属触媒の量は酸素消費率及び誘導期間に影響を及ぼす。
【0033】
本発明の組成物は、慣用されているエチレン不飽和ポリマーを含む組成物に比して良好な加工性及び相容性を有していながら、所望の率及び能力で脱酸素性を示すことができる。よって、本発明の組成物は、それ自体または希釈剤フィルム形成性ポリマー(例えば、ポリオレフィン等)とのブレンドとして容易に製造、加工され得る包装材料またはフィルムを形成するために使用することができる。更に、本発明の脱酸素組成物は、パッケージに収容されている製品の色、味及び/又は臭いを実質的に損なうことなくパッケージキャビティ内の酸素を消費、欠乏させると考えられる。
本発明の組成物中に含有されるポリマー成分の量は、組成物または該組成物から形成される層の1〜100重量%、好ましくは5〜97.5重量%、より好ましくは10〜95重量%、一層好ましくは15〜92.5重量%、更に好ましくは20〜90重量%の範囲であり得る。典型的には、遷移金属触媒の量は金属含量のみ(リガンド、対イオン等を除く)に基づいて脱酸素組成物の0.001〜1重量%であり得る。1つ以上の他の脱酸素化合物及び/又は希釈剤ポリマーを組成物の一部として使用するときには、前記した他の材料は脱酸素組成物の99重量%くらい多くの量、好ましくは最高75重量%を占め得る。通常使用される他の添加剤は脱酸素組成物の10重量%以下、好ましくは5重量%以下しか占めない。
【0034】
本発明の脱酸素組成物は、通常の脱酸素組成物では達成し得ない優れた性質を有し得る。包装用途に好適なフィルムは、ポリマー/遷移金属組成物から直接形成され得る。更に、本発明の組成物は、該組成物が希釈剤ポリマーを含んでいるときでも高い量のポリマー脱酸素成分を含み得る。上記したように、前記ポリマーは公知のフィルム形成性ポリマー、例えば、ポリオレフィン、特にフィルム包装物品を形成する際に通常使用されている半結晶性ポリマーと十分に相容性である。この高い相容性のために、ポリマー及び他の希釈剤ポリマーは任意の比で容易にブレンドされ得る。対照的に、従来使用されている非晶質エチレン不飽和ポリマーではフィルム等に加工、例えば、押出し加工、するのに適した高含量ブレンドが容易に得られない。
本発明の組成物は高速で所望の特性、例えば高い透明性、高い押出量でも少ない表面欠陥等を有するフィルムまたはフィルム層に容易に加工、例えば、押出し加工、される。
【0035】
上記したように、本発明の組成物は、脱酸素単層フィルム、多層フィルムの脱酸素層または各種包装用途の他の物品を作成するために使用される。単層物品は押出し加工により容易に製造され得る。多層フィルムは、共押出し、コーティング、ラミネーションまたは押出し/ラミネーションを用いて製造される。多層物品の追加層の少なくとも1つは、25℃で5.8×10-8cm3/m2・s・Pa(500cm3/m2・24時間・atm)以下の酸素透過率を有する材料を含み得る。前記酸素バリヤー層に通常使用されるポリマーには、ポリ(エチレン/ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリロニトリル、PVC、PVDC、PET、高バリヤーシリコーンまたは酸化アルミニウム層(例えば、SiOx)、及びポリアミド、例えば、ナイロン6、MXD6、ナイロン66及び各種アミドコポリマー、が含まれる。金属ホイル層も酸素バリヤー性を与え得る。
【0036】
他の追加の層には、1つ以上の酸素透過性層が含まれる。1つの好ましい包装構造、特に食品用可撓性パッケージでは、層はパッケージの外側からパッケージの最内層に向かって、(a)酸素バリヤー層、(b)脱酸素層、すなわち上記した脱酸素組成物を含む層、及び任意に(c)酸素透過性層を含む。層(a)の酸素バリヤー性をコントロールすると、脱酸素層(b)への酸素進入率を制限して脱酸素能力の消耗率を抑えることによりパッケージの脱酸素寿命が調節される。層(c)の酸素透過率をコントロールすると、脱酸素層(b)の組成に関係なく全構造についての脱酸素率の上限が設定される。
これは、パッケージをシールする前の空気の存在下でのフィルムの取り扱い寿命を延長させるのに役立ち得る。更に、層(c)は脱酸素層の各成分または副生成物のパッケージの内部への移行に対するバリヤーとなり得る。「内部への露出」は、酸素感受性製品が収容されている内部キャビティに直接、またはO2透過性である層を介して間接的に接する脱酸素組成物を含む包装物品の一部を指す。更に、層(c)はまた多層フィルムのヒートシール性、透明性及び/又は粘着防止性を改善し得る。結合(tie)層のような追加の層を使用することができる。この結合層に通常使用されるポリマーには、例えば、酸無水物官能化ポリオレフィンが含まれる。
【0037】
本発明は、各種製品、化合物、組成物、コーティング等を作成するために使用される。2つの好ましい形態は、いずれも食品または非食品を包装するのに有用であるシーリング化合物及び可撓性フィルムである。
上記した応用のすべてにおいて、(a)非共役ジエンの重合体または(b)少なくとも1つの非共役ジエンと炭素数2〜20のα−オレフィンの共重合体及び遷移金属触媒を使用することにより、脱酸素反応の望ましくない副生成物を抑制しながら容器の内部環境から酸素を効果的に除去し得る。
本発明の方法は、酸素感受性製品を収容しているパッケージキャビティに上記組成物を接することを含む。好ましい実施態様は、本発明組成物の一部として光開始剤を含み、脱酸素を所望の速度で開始させるように前記組成物を含むフィルム、層または物品に放射線を当てることを含む。包装フィルムに通常使用されているポリマーを加熱、加工する際に生ずる放射線(例えば、100〜250℃)が脱酸素を誘発しないことが有利である。
【0038】
初期放射線は好ましくは化学線、例えば200〜750nm、好ましくは200〜600nm、最も好ましくは200〜400nmの波長を有するUVまたは可視光である。
少なくとも1J/gの放射線、より好ましくは10〜2000J/gの放射線を受容するまで脱酸素組成物を含む層、フィルム等を前記放射線に暴露させることが好ましい。放射線は少なくとも2キログレイ(kG)、好ましくは10〜100kGの線量の電子ビーム線であってもよい。他の可能性ある放射線ソースにはイオン化放射線、例えばγ線、X線及びコロナ放電が含まれる。照射期間は複数の因子に依存するが、これらの因子には存在する光開始剤の量及び種類、照射する層の厚さ、介在する層の厚さ及び不透明度、存在する酸化防止剤の量、放射線ソースの波長及び強度が含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
脱酸素層または物品を使用するとき、その層または物品の製造中またはその後に照射を実施し得る。作成した層または物品を酸素感受性製品を包装するために使用するならば、包装の直前、その間またはその後に照射する。均一に照射するために、層または物品が平らなシートの形態にある加工段階で照射することが好ましい。
特定用途のための所与の脱酸素組成物の脱酸素率及び能力を測定することが有利である。脱酸素率を測定するために、脱酸素剤が密封した容器から特定量の酸素を奪うまでに要した時間を測定する。幾つかの例では、所望の脱酸素組成物を含有するフィルムを酸素含有雰囲気、例えば、通常20.6容量%のO2を含有する空気、の気密性密封容器中に置くことにより十分測定することができる。経時的に、容器内の雰囲気のサンプルを抜き取って酸素の残存率(%)を測定する。通常、測定した脱酸素率は温度及び雰囲気条件により異なる。低い初期酸素含量を有する及び/又は低温条件に維持されている雰囲気では、組成物の脱酸素能力及び脱酸素率がより厳密に試験される。特記しない限り、以下の脱酸素率は室温及び1つの空気雰囲気での値である。
【0040】
活性酸素バリヤーが必要な場合、有用な脱酸素率は空気中25℃、1atmで0.05cm3−酸素/脱酸素組成物中のポリマーのg/日くらい低くてよい。しかしながら、多くの場合、本発明の組成物は5.8×10-6cm3/g・s(0.5cm3/g・日)以上、5.8×10-5cm3/g・s(5cm3/g・日)以上の脱酸素率を有する。更に、本発明の組成物を含むフィルムまたは層は1.2×10-4cm3/m2・s(10cm3/m2・日)、場合により2.3×10-4cm3/m2・s(20cm3/m2・日)を越える脱酸素率を有し得る。通常、空気中25℃、101kPa(1atm)で測定したとき、活性酸素バリヤーとして使用するのに好適であると通常見られるフィルムまたは層は1.2×10-5cm3/m2・s(1cm3/m2・日)くらい低い脱酸素率を有し得る。前記脱酸素率により、前記層はパッケージ内から脱酸素するのに好適となり、活性酸素バリヤー用途のために好適となる。
【0041】
本発明の方法を活性酸素バリヤー用途に使用しようとするときには、初期脱酸素活性及び酸素バリヤーにより25℃で1.1×10-10 cm3/m2・s・Pa(1.0cm3/m2・日・atm)未満の全酸素透過率を与えることが好ましい。前記値が少なくとも2日間超えないような脱酸素能力が好ましい。
脱酸素が開始したら、脱酸素組成物、該組成物から形成した層または物品は好ましくはその能力、すなわち脱酸素剤が無効になるまで該脱酸素剤が消費し得る酸素の量まで脱酸素し得る。実際使用する場合には、所与の用途のために必要な能力はパッケージ中に元々存在する酸素の量、脱酸素性の非存在下でのパッケージへの酸素の進入率及びパッケージの所期の貯蔵寿命に依存する。本発明の組成物を含む脱酸素剤を使用する場合、その能力は1cm3/gくらい低くてもよいが、50cm3/g以上にも達し得る。前記脱酸素剤がフィルムの層中に存在するとき、その層は好ましくは少なくとも9.8cm3/m2/μm厚(250cm3/m2/ミル)、より好ましくは少なくとも47cm3/m2/μm厚(1,200cm3/m2/ミル)の酸素能力を有する。
本発明の組成物は、たとえ大量の脱酸素が生じた後でもその物理的特性を実質的に維持するフィルム、層または物品を提供し得ることが判明した。更に、本発明の組成物は、被包装品に望ましくない味、色及び/又は臭いを与える恐れがある副生成物及び/又は流出物を有意な量生成しない。
【実施例】
【0042】
以下、実施例などを用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例などにより何ら限定されるものではない。
[金属錯体−1]
重合触媒として用いた金属錯体は、Cp*Ti(O−2,6− iPr263)Cl2(以下、金属錯体−1)であり、Maclomolecules, 31, 7588(1998)等記載の方法で合成した。
[参考例1]
1,5−ヘキサジエン重合体の調製
内部を真空脱気、窒素置換した2000mlのオートクレーブ型反応器に白色固体MAO(メチルアルミノキサン)(Al換算で150mmol、東ソーアクゾ社製:PMAO−Sから溶媒のトルエンとAlMe3を真空下で除いて使用した。)を導入した。次いで、活性アルミナカラムを通し脱水、窒素置換により脱酸素処理を施した1,5−ヘキサジエンの4Mトルエン溶液600ml(1,5−ヘキサジエンとして196g)を仕込んだ。オートクレーブの内温を室温に保ち、金属錯体−1を10μmol含む精製トルエン溶液100mlを反応器内に導入し60分間重合した。次いで1N−HCl/MeOH溶液100mlを反応器内に導入し反応を停止した。
1,5−ヘキサジエン重合体:収量100g、ガラス転移温度Tg=10℃。 1H−NMR:5.8、4.9ppm(側鎖末端二重結合)、13C−NMR:45、41、39、38、34、31(シクロペンテン環)。
【0043】
〔参考例2〕
エチレン/1,5−ヘキサジエン共重合体の調製
内部を真空脱気、窒素置換した2000mlのオートクレーブ型反応器に白色固体MAO(メチルアルミノキサン)(Al換算で1mol、東ソーアクゾ社製:PMAO−Sから溶媒のトルエンとAlMe3を真空下で除いて使用した。)を導入した。次いで、活性アルミナカラムを通し脱水、窒素置換により脱酸素処理を施した1,5−ヘキサジエンの4Mトルエン溶液600ml(1,5−ヘキサジエンとして196g)を反応器に導入した後、エチレンガスで0.8MPaに加圧した。オートクレーブの内温を室温に保ち、金属錯体−1を1mmol含む精製トルエン溶液100mlを反応器内に加え重合反応を開始した。反応器の内温およびエチレン圧を保ちつつ、攪拌しながら60分間重合した。次いで1N−HCl/MeOH溶液100mlを反応器内に導入し反応を停止した。
エチレン/1,5−ヘキサジエン重合体:収量90g。ガラス転移温度Tg=−20℃、融点Tm=70℃。 1H−NMR:5.8、4.9ppm(側鎖末端二重結合)、13C−NMR:45、41、39、38、34、31(シクロペンテン環)。
【0044】
[金属錯体−2]
ラセミ体エチレンビス(インデニル)二塩化ジルコニウム(IV)(以下、金属錯体−2)
アヅマックス(株)から購入し、そのまま使用した。
〔参考例3〕
エチレン−シクロペンテン共重合体の調製
内部を真空脱気、窒素置換した2000mlのオートクレーブ型反応器に、精製したシクロペンテンの4.5Mトルエン溶液600ml(シクロペンテンとして184g)を導入した。ついでMMAO3A(東ソー・ファインケム社製メチルアルミノキサン)10mmolを含む精製トルエン溶液100mlを反応器に導入した後、エチレンガスで0.1MPaに加圧した。反応器の内温を50℃に保ち、遷移金属錯体として錯体−2を5μmol含む精製トルエン溶液100mlを反応器に加え重合反応を開始した。反応器の内温およびエチレン圧を保ちつつ、撹拌しながら120分間重合した。反応器内圧力を大気圧まで落圧し、次いで1N−HCl/MeOH溶液100mlを反応器内に導入し反応を停止した。
エチレン−シクロペンテン共重合体:収量117g、シクロペンテン含量10mol%、分子量Mn=3.5×103、ガラス転移温度Tg=−14℃、融点Tm=68℃。
【0045】
〔実施例1〜2、比較例1〕
参考例1〜3のポリマーを、1000ppmのオレイン酸コバルト(II)塩及び1000ppmの4、4'−ジメチルベンゾフェノン(DMBP)とを窒素パージ下に溶融混合した。圧縮成型によって120mm×120mm×0.5mmtの平板を作成した。100mm角に裁断し総表面積が20000mm2(100mm×100mm=10000mm2/面)の試験片とした。酸素補足性ポリマーを活性化するためにUVA(1170mJ/cm2)及びUVC(800mJ/cm2)を90秒間照射した。試験片はアルミニウム箔多層シート製の四方パウチに収め、パウチ内の酸素濃度の経時変化を冷却ヘッドスペース捕集試験(refrigerated headspace scavenging test)及び平行室温試験(parallel room temperature test)を用いて調べた。冷却ヘッドスペース試験(4℃)では、試験片を窒素99%及び酸素1%の混合物の雰囲気300cm3を収容しているパウチ内に入れた。室温試験(20℃)では、試験片を空気(窒素中20.6%酸素)300cm3を収容しているパウチ内に入れた。パウチ内の酸素含量%をMOCON(商標)LC700F酸素アナライザーを用いて分析した。結果を表1、表2に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

本発明を好ましい実施態様に関連して説明してきたが、当業者が容易に理解されるように本発明の原理及び範囲を逸脱することなく改変及び変更を実施し得ることを理解すべきである。従って、前記改変は本発明の範囲内で実施され得る。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の(共)重合体組成物によって、優れた脱酸素能力を有した酸素感受性製品を包装するために使用されうるフィルムまたは物品材料を提供することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素捕捉性を有する非共役ジエンの重合体、または酸素捕捉性を有する少なくとも1つの非共役ジエンと炭素数2〜20のα−オレフィンの共重合体を含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
遷移金属化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの光開始剤化合物を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの希釈剤ポリマーを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
非共役ジエンの重合体または少なくとも1つの非共役ジエンと炭素数2〜20のα−オレフィンの共重合体が下記構造式(1)で表されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【化1】

(式中、末端二重結合を含むユニット(x)の含量は0.1モル%から50モル%、環状構造を含むユニット(y)の含量は0.1モル%から50モル%であり、鎖状ユニットの含量は0モル%から99.8モル%である。nは2〜20の整数である。)
【請求項6】
下記式(2)で表される遷移金属化合物(A)および有機アルミニウムオキシ化合物または有機ホウ素化合物から選ばれる1種以上の活性化剤(B)からなる重合触媒の存在下、非共役ジエンの重合または非共役ジエンと炭素数2〜20のα−オレフィンの共重合で製造されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【化2】

(式中、MはTi、ZrまたはHfを表す。Xは、Xが複数である場合、複数のXはそれぞれ同じでも異なっていても良く、水素、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリロキシ基またはハロゲンから選ばれる基である。nは1〜3の整数である。R1 〜R8 はそれぞれ同じでも異なっていても良く、水素、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリロキシ基またはハロゲンから選ばれる基であり、任意の2つまたは3つが結合し環を形成していても良い。環には共役2重結合を含んだ芳香族性を有するものも含む。mは0〜3の整数である。)
【請求項7】
非共役ジエンが1,5−ヘキサジエンであることを特徴とする請求項1〜6に記載の組成物。
【請求項8】
希釈剤ポリマーがポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜8に記載の組成物からなることを特徴とするフィルム又はシート。
【請求項10】
請求項9に記載のフィルム又はシートからなることを特徴とする包装材料。

【公開番号】特開2006−206742(P2006−206742A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−20944(P2005−20944)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】