酸素減損装置及び赤血球から酸素を除去する方法
酸素減損装置。この装置は、カートリッジと、カートリッジ内でカートリッジの入口から出口まで延在する複数の中空ファイバと、カートリッジ内に詰め込まれ、複数の中空ファイバに接触し、複数の中空ファイバの間にある脱酸素剤とを含む。中空ファイバは、赤血球を受け入れ、運搬するのに適している。赤血球から酸素を除去する酸素減損装置及び方法の別の実施形態が存在する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存期間を延ばすために赤血球から酸素を減損させる装置に関する。本発明は、赤血球から酸素を減損させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
適切な血液供給と血液の保存とは、世界中のあらゆる大きな病院及び保健機関が直面する問題である。よくあることだが、保存されている血液の供給の量は、血液供給の必要量よりかなり不足している。これは、多くの場合に血液供給がほとんど使い尽くされる危険性が高くなる天災、戦争などのような危機的な期間において特に当てはまる。まさにこれらのような危機的な時期に、より多くの新鮮血の提供が要求されていることをしばしば聞く。しかし、残念ながら、危機的な期間が存在しないときでさえ、保存血液は、血液の長期保存性を維持しないので、血液供給及び保存血液は、常に監視され、補充されるべきである。
【0003】
保存血液は、ヘモグロビンの酸化及び劣化と、アデノシン三リン酸(ATP)及び2−3,ビスホスホグリセリン酸(DPG)の欠損とによって部分的に引き起こされる着実な劣化を被る。酸素は、赤血球(RBCs)によって運搬されるヘモグロビン(Hb)をメトヘモグロビンに変換させ、このメトヘモグロビンの破壊は、ヘミクロム、ヘミン及び遊離Fe3+のような有毒生成物を生成する。酸素と一体となって、これらの生成物は、ヒドロキシルラジカル(OH.cndot.)の形成を触媒し、ヒドロキシルラジカル及びメトヘモグロビン破壊生成物は、赤血球脂質膜と、膜骨格と、細胞含有物とを破損する。したがって、保存血液は、輸血受血者の循環中に存続する赤血球の相対的低下によって決定されるように、6週間後には使用できないと考えられる。DPGの欠損により、組織への酸素の適切な運搬を妨げるので、投与直後の輸血の効き目(8〜48時間後の受容者における一旦回復するDPGレベル)を低下させる。その上、これらの悪影響は、使用期限前であるが、おそらく2週間より古い保存血液が用いられた場合、全体的な効き目の低下と、輸血治療の副作用の増大とを更に生じさせる。
【0004】
したがって、保存血液が酸素とヘモグロビンとの相互作用によって引き起こされる悪影響を受けることなく、長期間の基準での保存前に赤血球中の酸素レベルを減損させる能力が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
その結果、本開示は、赤血球から酸素を除去することができる使い捨て装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、酸素減損装置を提供する。この装置は、カートリッジと、カートリッジ内でカートリッジの入口から出口まで延在する複数の中空ファイバと、カートリッジ内に詰め込まれ、複数の中空ファイバに接触し、複数の中空ファイバの間にある脱酸素剤とを含む。中空ファイバは、赤血球を受け入れ、運搬するのに適している。
【0007】
本開示は、酸素減損装置を提供する。この装置は、フラッシングガスを受け入れ、放出するのに適している吸気口及び排気口を有している固形物質の容器と、容器内で容器の入口から出口まで延在する複数の中空ファイバとを有している。中空ファイバは、赤血球を受け入れ、運搬するのに適している。
【0008】
本開示は、赤血球から酸素を除去する方法を提供する。この方法は、酸素装置の中に赤血球を通過させるステップを有している。この酸素装置は、カートリッジと、カートリッジ内でカートリッジの入口から出口まで延在する複数の中空ファイバと、カートリッジ内に詰め込まれ、複数の中空ファイバに接触し、複数の中空ファイバの間にある脱酸素剤とを含む。中空ファイバは、赤血球を受け入れ、運搬するのに適している。
【0009】
本開示は、赤血球から酸素を除去する方法を提供する。この方法は、酸素装置の中に赤血球を通過させるステップを有している。この酸素装置は、フラッシングガスを受け入れ、放出するのに適している吸気口及び排気口を有している固形物質の容器と、容器内で容器の入口から出口まで延在する複数の中空ファイバ膜とを有している。中空ファイバは、赤血球を受け入れ、運搬するのに適している。
【0010】
本開示と、本開示の特徴及び利点とは、添付図面を参照して以下の詳細な説明からより明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の保存前酸素減損装置を示した図である。
【図2A】保存前に組立体内部の中空ファイバの周りでフラッシング用不活性ガスにより赤血球から酸素を減損させる減損装置の実施形態を示した図である。
【図2B】保存前に組立体内部の中空ファイバの周りでフラッシング用不活性ガスにより赤血球から酸素を減損させる減損装置の実施形態を示した図である。
【図2C】保存前に組立体内部の中空ファイバの周りでフラッシング用不活性ガスにより赤血球から酸素を減損させる減損装置の実施形態を示した図である。
【図3A】保存前に赤血球から酸素を減損させる減損装置の別の実施形態を示した図である。
【図3B】保存前に赤血球から酸素を減損させる減損装置の別の実施形態を示した図である。
【図3C】保存前に赤血球から酸素を減損させる減損装置の別の実施形態を示した図である。
【図4A】酸素が中空ファイバによって取り囲まれたシリンダのコア内の捕捉物質によって捕捉される、保存前に赤血球から酸素を減損させる減損装置の別の実施形態を示した図である。
【図4B】酸素が中空ファイバによって取り囲まれたシリンダのコア内の捕捉物質によって捕捉される、保存前に赤血球から酸素を減損させる減損装置の別の実施形態を示した図である。
【図4C】酸素が中空ファイバによって取り囲まれたシリンダのコア内の捕捉物質によって捕捉される、保存前に赤血球から酸素を減損させる減損装置の別の実施形態を示した図である。
【図5A】酸素が中空ファイバのシリンダを取り囲む捕捉物質によって捕捉される赤血球から酸素を減損させる減損装置の別の実施形態を示した図である。
【図5B】酸素が中空ファイバのシリンダを取り囲む捕捉物質によって捕捉される赤血球から酸素を減損させる減損装置の別の実施形態を示した図である。
【図5C】酸素が中空ファイバのシリンダを取り囲む捕捉物質によって捕捉される赤血球から酸素を減損させる減損装置の別の実施形態を示した図である。
【図6】図2Aから図2C、図3Aから図3C、図4Aから図4C及び図5Aから図5Cの減損装置に関する酸素分圧に対する1分間当たりのRBC懸濁液の流速のグラフを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図2を参照すると、酸素減損装置(ODD)101は、酸素吸収剤110を収容する。ODD101は、酸素吸収剤110と一連の中空ファイバ115とを収容する使い捨てカートリッジ105である。酸素吸収剤110は、無毒性の無機塩及び/又は有機塩と、酸素への高反応性をもつ第一鉄又は他の物質との混合物である。酸素吸収剤110は、O2に対する(1g当たり5mlO2/gを超える)かなりの吸収度を有する粒子で作られ、カートリッジ105の内側を、0.08mmHg未満のPO2に対応する、0.01%未満に保つことができる。酸素吸収剤110は、遊離しているか、又は、酸素浸透性外被に収容されている。本開示のODD101は、1単位の血液からおよそ100mLの酸素を減損させることができる。
【0013】
RBCsは、中空多孔質ファイバ115を通過する。多孔質ファイバは、高い酸素浸透率をもつことができる。多孔質ファイバのための適当な物質は、ポリオレフィン、Teflon(登録商標)、ポリエステル、PVDF、ポリスルホン、及び、他の疎水性ポリマーと、無機物質(セラミック)とを含む。酸素減損は、RBCsが膜115を通過するときに起こる。ODDは、酸素を除去し、中を通る血液の一定流を維持するために大きい表面積を有している単純な構造を提供する。酸素減損又は除去は、酸化鉄を形成するために、酸素吸収剤110の中の第一鉄と、周囲酸素との不可逆反応によって実現される。ODD101は、酸素除去のための撹拌を必要とせず、必要に応じて採血システムの一部としての遠心分離に耐えるために容易に製造することができる。
【0014】
図2Aから図2C及び図3Aから図3Cを参照すると、フラッシング減損装置の例が開示されている。減損装置は、適切なフラッシングガスの組成物を供給することによりO2を減損させるために機能する。減損装置のため適したガスは、例えば、Ar、He、CO2、N2を含む。
【0015】
図4Aから図4C及び図5Aから図5Cは、捕捉減損装置を更に開示する。減損は、捕捉物質又は吸収剤を使用し、そして、外部ガスを使用せずに行われる。しかし、両方の型式の減損装置において、酸素減損は、血液保存袋に保存する前に、それぞれDPG及びATPを高めるために有効である。
【0016】
図2Aから図2Cを参照すると、減損装置20が示されている。減損装置20は、赤血球が中を流れるおよそ5000本の複数のファイバ25を含む。複数のファイバ25は、プラスチック製シリンダ30によって取り囲まれている。プラスチック製シリンダ30は、血液から酸素を除去するために前述されているようなフラッシングガス又はフラッシングガスの組み合わせが中を通って供給されるガス吸気口35及びガス排気口40を含んでいる。減損装置20の仕様は、以下の表1に示される。
【0017】
【表1】
【0018】
図3Aから図3Cを参照すると、減損装置45が示されている。減損装置45は、図2Aから図2Cの装置20と同様に、赤血球が中を流れるおよそ5000本の複数のファイバ50を含む。複数のファイバ50は、プラスチック製シリンダ55によって取り囲まれている。プラスチック製シリンダ55は、血液から酸素を除去するために前述されているようなガス又はガスの組み合わせが中を通って供給されるガス吸気口60及びガス排気口65を含んでいる。減損装置45の仕様は、以下の表2に示される。装置45の減損の有効表面積は、装置45が装置20の2倍の長さをもつので、装置20の有効表面積の2倍である。
【0019】
【表2】
【0020】
図4Aから図4Cは、O2の捕捉物質を収容しているコア75を有している減損装置70を開示する。コア75は、非常に低い液体浸透率をもつガス浸透膜によって充填されている。中空ファイバ80は、コア75の周りに巻き付けられ、プラスチック製シリンダ82は、中空ファイバ80を収容し、包囲する。この特殊な実施形態では、減損のための有効表面積は、以下の表3に示されるようにおよそ0.8796m2である。
【0021】
【表3】
【0022】
図5Aから図5Cは、非常に低い液体浸透率をもつガス浸透性膜に包囲されたファイバ束87を含んでいる減損装置85を開示する。ファイバ束87は、O2のための捕捉物質89によって取り囲まれている。ファイバ束87及び捕捉物質89は、プラスチック製シリンダ90内に収容されている。減損のための有効表面積は、以下の表4に示されるようにおよそ0.8796m2である。
【0023】
【表4】
【0024】
図6は、フラッシング減損装置20及び45と、捕捉減損装置70及び85との性能のグラフである。図6のデータは、種々の流速を生じさせるために様々な頭耳高で、以下の条件:ヘマトクリット62%(プールされた濃厚赤血球3単位)及び21℃を使用してプロットされた。脱酸素剤(Multisorb Technologies、ニューヨーク州バッファロー)が装置79及び装置85に対してそれぞれ5%w/w及び12%w/wの水蒸気を添加することにより活性化された。データは、流速(1分間当たりの赤血球懸濁液重量g)に対し酸素分圧(mmHg)でプロットされた。
【0025】
ここに開示された酸素減損装置では、中空ファイバは、赤血球を受け入れ、運搬することができる限り、直線状もしくは縦方向、螺旋状、又はコイル状のような適当な構成でカートリッジ内に詰め込まれることがある。
【0026】
図6は、最低酸素飽和度が装置45及び85を使用して達成されることを示す。装置45は、より広い有効表面積がファイバ50の長さに沿ってガスに晒されることを示す。装置85は、捕捉物質への長い露出表面積を更に有している。装置85は、捕捉物質89によって取り囲まれた束87を有している。束87の間で捕捉物質89によって占められた空間は、ファイバ束87の中に収容されている赤血球からの酸素の分散を促進し、よって、赤血球からの酸素の捕捉を助ける。
【0027】
減損装置の更なる使用は、純酸素又は空気をフラッシングすることによって輸血の前に酸素を追加輸注することである。この使用は、大量輸血のような、輸血された血液に再酸素負荷する肺の容量が十分ではないか、又は、鎌状赤血球貧血である特別な場合を対象にする。
【0028】
同様に、減損装置は、患者の要求に依存して輸血された血液の最適なレベルを取得するために、患者の酸素依存性要求の減損の中間レベル又は状態を取得するために使用できる。
【0029】
保存袋に保存する前に赤血球から酸素を除去すること、又は、血液から酸素を奪うことは、本発明の範囲に含まれる。脱酸素剤は、血液袋に保存する前に赤血球から酸素を除去するために使用できる。ここで使用されるように、「脱酸素剤」は、使用の条件の下で、酸素と不可逆的に結び付くか、又は、結合する物質である。例えば、酸素は、物質のある成分と化学反応することができ、別の組成物に変換することができる。結び付けられた酸素の解離速度がゼロである物質は、脱酸素剤としての機能を果たすことができる。脱酸素剤の例は、鉄粉及び有機化合物を含む。用語「酸素吸収剤」は、ここでは、脱酸素剤と互換的に使用されることがある。例えば、脱酸素剤は、Mutisorb Technologies(ニューヨーク州バッファロー)によって提供される。このような物質は、望ましい結果を達成するために望ましい割合で混ぜ合わせることができる。
【0030】
捕捉物質は、サック、切り張り、被覆、ポケット、及び包みの形のようなどのような公知の形でも保存容器及び袋に組み込むことができることが認められることになる。
【0031】
本発明は、ある一定の実施形態を詳細に説明するが、発明の範囲に含まれ、当業者に知られている変更及び変形が存在することが理解される。その結果、本発明は、開示の中に記載されているような発明の範囲内にあるこのような代替物、変更物及び変形物のすべてを包含することが意図されている。
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存期間を延ばすために赤血球から酸素を減損させる装置に関する。本発明は、赤血球から酸素を減損させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
適切な血液供給と血液の保存とは、世界中のあらゆる大きな病院及び保健機関が直面する問題である。よくあることだが、保存されている血液の供給の量は、血液供給の必要量よりかなり不足している。これは、多くの場合に血液供給がほとんど使い尽くされる危険性が高くなる天災、戦争などのような危機的な期間において特に当てはまる。まさにこれらのような危機的な時期に、より多くの新鮮血の提供が要求されていることをしばしば聞く。しかし、残念ながら、危機的な期間が存在しないときでさえ、保存血液は、血液の長期保存性を維持しないので、血液供給及び保存血液は、常に監視され、補充されるべきである。
【0003】
保存血液は、ヘモグロビンの酸化及び劣化と、アデノシン三リン酸(ATP)及び2−3,ビスホスホグリセリン酸(DPG)の欠損とによって部分的に引き起こされる着実な劣化を被る。酸素は、赤血球(RBCs)によって運搬されるヘモグロビン(Hb)をメトヘモグロビンに変換させ、このメトヘモグロビンの破壊は、ヘミクロム、ヘミン及び遊離Fe3+のような有毒生成物を生成する。酸素と一体となって、これらの生成物は、ヒドロキシルラジカル(OH.cndot.)の形成を触媒し、ヒドロキシルラジカル及びメトヘモグロビン破壊生成物は、赤血球脂質膜と、膜骨格と、細胞含有物とを破損する。したがって、保存血液は、輸血受血者の循環中に存続する赤血球の相対的低下によって決定されるように、6週間後には使用できないと考えられる。DPGの欠損により、組織への酸素の適切な運搬を妨げるので、投与直後の輸血の効き目(8〜48時間後の受容者における一旦回復するDPGレベル)を低下させる。その上、これらの悪影響は、使用期限前であるが、おそらく2週間より古い保存血液が用いられた場合、全体的な効き目の低下と、輸血治療の副作用の増大とを更に生じさせる。
【0004】
したがって、保存血液が酸素とヘモグロビンとの相互作用によって引き起こされる悪影響を受けることなく、長期間の基準での保存前に赤血球中の酸素レベルを減損させる能力が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
その結果、本開示は、赤血球から酸素を除去することができる使い捨て装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、酸素減損装置を提供する。この装置は、カートリッジと、カートリッジ内でカートリッジの入口から出口まで延在する複数の中空ファイバと、カートリッジ内に詰め込まれ、複数の中空ファイバに接触し、複数の中空ファイバの間にある脱酸素剤とを含む。中空ファイバは、赤血球を受け入れ、運搬するのに適している。
【0007】
本開示は、酸素減損装置を提供する。この装置は、フラッシングガスを受け入れ、放出するのに適している吸気口及び排気口を有している固形物質の容器と、容器内で容器の入口から出口まで延在する複数の中空ファイバとを有している。中空ファイバは、赤血球を受け入れ、運搬するのに適している。
【0008】
本開示は、赤血球から酸素を除去する方法を提供する。この方法は、酸素装置の中に赤血球を通過させるステップを有している。この酸素装置は、カートリッジと、カートリッジ内でカートリッジの入口から出口まで延在する複数の中空ファイバと、カートリッジ内に詰め込まれ、複数の中空ファイバに接触し、複数の中空ファイバの間にある脱酸素剤とを含む。中空ファイバは、赤血球を受け入れ、運搬するのに適している。
【0009】
本開示は、赤血球から酸素を除去する方法を提供する。この方法は、酸素装置の中に赤血球を通過させるステップを有している。この酸素装置は、フラッシングガスを受け入れ、放出するのに適している吸気口及び排気口を有している固形物質の容器と、容器内で容器の入口から出口まで延在する複数の中空ファイバ膜とを有している。中空ファイバは、赤血球を受け入れ、運搬するのに適している。
【0010】
本開示と、本開示の特徴及び利点とは、添付図面を参照して以下の詳細な説明からより明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の保存前酸素減損装置を示した図である。
【図2A】保存前に組立体内部の中空ファイバの周りでフラッシング用不活性ガスにより赤血球から酸素を減損させる減損装置の実施形態を示した図である。
【図2B】保存前に組立体内部の中空ファイバの周りでフラッシング用不活性ガスにより赤血球から酸素を減損させる減損装置の実施形態を示した図である。
【図2C】保存前に組立体内部の中空ファイバの周りでフラッシング用不活性ガスにより赤血球から酸素を減損させる減損装置の実施形態を示した図である。
【図3A】保存前に赤血球から酸素を減損させる減損装置の別の実施形態を示した図である。
【図3B】保存前に赤血球から酸素を減損させる減損装置の別の実施形態を示した図である。
【図3C】保存前に赤血球から酸素を減損させる減損装置の別の実施形態を示した図である。
【図4A】酸素が中空ファイバによって取り囲まれたシリンダのコア内の捕捉物質によって捕捉される、保存前に赤血球から酸素を減損させる減損装置の別の実施形態を示した図である。
【図4B】酸素が中空ファイバによって取り囲まれたシリンダのコア内の捕捉物質によって捕捉される、保存前に赤血球から酸素を減損させる減損装置の別の実施形態を示した図である。
【図4C】酸素が中空ファイバによって取り囲まれたシリンダのコア内の捕捉物質によって捕捉される、保存前に赤血球から酸素を減損させる減損装置の別の実施形態を示した図である。
【図5A】酸素が中空ファイバのシリンダを取り囲む捕捉物質によって捕捉される赤血球から酸素を減損させる減損装置の別の実施形態を示した図である。
【図5B】酸素が中空ファイバのシリンダを取り囲む捕捉物質によって捕捉される赤血球から酸素を減損させる減損装置の別の実施形態を示した図である。
【図5C】酸素が中空ファイバのシリンダを取り囲む捕捉物質によって捕捉される赤血球から酸素を減損させる減損装置の別の実施形態を示した図である。
【図6】図2Aから図2C、図3Aから図3C、図4Aから図4C及び図5Aから図5Cの減損装置に関する酸素分圧に対する1分間当たりのRBC懸濁液の流速のグラフを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図2を参照すると、酸素減損装置(ODD)101は、酸素吸収剤110を収容する。ODD101は、酸素吸収剤110と一連の中空ファイバ115とを収容する使い捨てカートリッジ105である。酸素吸収剤110は、無毒性の無機塩及び/又は有機塩と、酸素への高反応性をもつ第一鉄又は他の物質との混合物である。酸素吸収剤110は、O2に対する(1g当たり5mlO2/gを超える)かなりの吸収度を有する粒子で作られ、カートリッジ105の内側を、0.08mmHg未満のPO2に対応する、0.01%未満に保つことができる。酸素吸収剤110は、遊離しているか、又は、酸素浸透性外被に収容されている。本開示のODD101は、1単位の血液からおよそ100mLの酸素を減損させることができる。
【0013】
RBCsは、中空多孔質ファイバ115を通過する。多孔質ファイバは、高い酸素浸透率をもつことができる。多孔質ファイバのための適当な物質は、ポリオレフィン、Teflon(登録商標)、ポリエステル、PVDF、ポリスルホン、及び、他の疎水性ポリマーと、無機物質(セラミック)とを含む。酸素減損は、RBCsが膜115を通過するときに起こる。ODDは、酸素を除去し、中を通る血液の一定流を維持するために大きい表面積を有している単純な構造を提供する。酸素減損又は除去は、酸化鉄を形成するために、酸素吸収剤110の中の第一鉄と、周囲酸素との不可逆反応によって実現される。ODD101は、酸素除去のための撹拌を必要とせず、必要に応じて採血システムの一部としての遠心分離に耐えるために容易に製造することができる。
【0014】
図2Aから図2C及び図3Aから図3Cを参照すると、フラッシング減損装置の例が開示されている。減損装置は、適切なフラッシングガスの組成物を供給することによりO2を減損させるために機能する。減損装置のため適したガスは、例えば、Ar、He、CO2、N2を含む。
【0015】
図4Aから図4C及び図5Aから図5Cは、捕捉減損装置を更に開示する。減損は、捕捉物質又は吸収剤を使用し、そして、外部ガスを使用せずに行われる。しかし、両方の型式の減損装置において、酸素減損は、血液保存袋に保存する前に、それぞれDPG及びATPを高めるために有効である。
【0016】
図2Aから図2Cを参照すると、減損装置20が示されている。減損装置20は、赤血球が中を流れるおよそ5000本の複数のファイバ25を含む。複数のファイバ25は、プラスチック製シリンダ30によって取り囲まれている。プラスチック製シリンダ30は、血液から酸素を除去するために前述されているようなフラッシングガス又はフラッシングガスの組み合わせが中を通って供給されるガス吸気口35及びガス排気口40を含んでいる。減損装置20の仕様は、以下の表1に示される。
【0017】
【表1】
【0018】
図3Aから図3Cを参照すると、減損装置45が示されている。減損装置45は、図2Aから図2Cの装置20と同様に、赤血球が中を流れるおよそ5000本の複数のファイバ50を含む。複数のファイバ50は、プラスチック製シリンダ55によって取り囲まれている。プラスチック製シリンダ55は、血液から酸素を除去するために前述されているようなガス又はガスの組み合わせが中を通って供給されるガス吸気口60及びガス排気口65を含んでいる。減損装置45の仕様は、以下の表2に示される。装置45の減損の有効表面積は、装置45が装置20の2倍の長さをもつので、装置20の有効表面積の2倍である。
【0019】
【表2】
【0020】
図4Aから図4Cは、O2の捕捉物質を収容しているコア75を有している減損装置70を開示する。コア75は、非常に低い液体浸透率をもつガス浸透膜によって充填されている。中空ファイバ80は、コア75の周りに巻き付けられ、プラスチック製シリンダ82は、中空ファイバ80を収容し、包囲する。この特殊な実施形態では、減損のための有効表面積は、以下の表3に示されるようにおよそ0.8796m2である。
【0021】
【表3】
【0022】
図5Aから図5Cは、非常に低い液体浸透率をもつガス浸透性膜に包囲されたファイバ束87を含んでいる減損装置85を開示する。ファイバ束87は、O2のための捕捉物質89によって取り囲まれている。ファイバ束87及び捕捉物質89は、プラスチック製シリンダ90内に収容されている。減損のための有効表面積は、以下の表4に示されるようにおよそ0.8796m2である。
【0023】
【表4】
【0024】
図6は、フラッシング減損装置20及び45と、捕捉減損装置70及び85との性能のグラフである。図6のデータは、種々の流速を生じさせるために様々な頭耳高で、以下の条件:ヘマトクリット62%(プールされた濃厚赤血球3単位)及び21℃を使用してプロットされた。脱酸素剤(Multisorb Technologies、ニューヨーク州バッファロー)が装置79及び装置85に対してそれぞれ5%w/w及び12%w/wの水蒸気を添加することにより活性化された。データは、流速(1分間当たりの赤血球懸濁液重量g)に対し酸素分圧(mmHg)でプロットされた。
【0025】
ここに開示された酸素減損装置では、中空ファイバは、赤血球を受け入れ、運搬することができる限り、直線状もしくは縦方向、螺旋状、又はコイル状のような適当な構成でカートリッジ内に詰め込まれることがある。
【0026】
図6は、最低酸素飽和度が装置45及び85を使用して達成されることを示す。装置45は、より広い有効表面積がファイバ50の長さに沿ってガスに晒されることを示す。装置85は、捕捉物質への長い露出表面積を更に有している。装置85は、捕捉物質89によって取り囲まれた束87を有している。束87の間で捕捉物質89によって占められた空間は、ファイバ束87の中に収容されている赤血球からの酸素の分散を促進し、よって、赤血球からの酸素の捕捉を助ける。
【0027】
減損装置の更なる使用は、純酸素又は空気をフラッシングすることによって輸血の前に酸素を追加輸注することである。この使用は、大量輸血のような、輸血された血液に再酸素負荷する肺の容量が十分ではないか、又は、鎌状赤血球貧血である特別な場合を対象にする。
【0028】
同様に、減損装置は、患者の要求に依存して輸血された血液の最適なレベルを取得するために、患者の酸素依存性要求の減損の中間レベル又は状態を取得するために使用できる。
【0029】
保存袋に保存する前に赤血球から酸素を除去すること、又は、血液から酸素を奪うことは、本発明の範囲に含まれる。脱酸素剤は、血液袋に保存する前に赤血球から酸素を除去するために使用できる。ここで使用されるように、「脱酸素剤」は、使用の条件の下で、酸素と不可逆的に結び付くか、又は、結合する物質である。例えば、酸素は、物質のある成分と化学反応することができ、別の組成物に変換することができる。結び付けられた酸素の解離速度がゼロである物質は、脱酸素剤としての機能を果たすことができる。脱酸素剤の例は、鉄粉及び有機化合物を含む。用語「酸素吸収剤」は、ここでは、脱酸素剤と互換的に使用されることがある。例えば、脱酸素剤は、Mutisorb Technologies(ニューヨーク州バッファロー)によって提供される。このような物質は、望ましい結果を達成するために望ましい割合で混ぜ合わせることができる。
【0030】
捕捉物質は、サック、切り張り、被覆、ポケット、及び包みの形のようなどのような公知の形でも保存容器及び袋に組み込むことができることが認められることになる。
【0031】
本発明は、ある一定の実施形態を詳細に説明するが、発明の範囲に含まれ、当業者に知られている変更及び変形が存在することが理解される。その結果、本発明は、開示の中に記載されているような発明の範囲内にあるこのような代替物、変更物及び変形物のすべてを包含することが意図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カートリッジと、
前記カートリッジ内で前記カートリッジの入口から出口まで延在し、酸素浸透性膜で形成され、赤血球を受け入れ、運搬するのに適している複数の中空ファイバと、
前記カートリッジ内に詰め込まれ、前記複数の中空ファイバに接触し、前記複数の中空ファイバの間にある脱酸素剤と、
を備える酸素減損装置。
【請求項2】
前記中空ファイバは、実質的に平行であり、前記カートリッジ内で前記入口から前記出口まで縦方向に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
フラッシングガスを受け入れ、放出するのに適している吸気口及び排気口を有している固形物質の容器と、
前記容器内で前記容器の入口から出口まで延在し、赤血球を受け入れ、運搬するのに適している複数の中空ファイバと、
を備える酸素減損装置。
【請求項4】
前記中空ファイバは、実質的に平行であり、前記カートリッジ内で前記入口から前記出口まで縦方向に配置されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記容器の前記入口と連通しているフラッシングガスの供給源を更に含む、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
酸素装置の中に赤血球を通過させることを備え、
前記装置は、
カートリッジと、
前記カートリッジ内で前記カートリッジの入口から出口まで延在し、前記赤血球を受け入れ、運搬するのに適している複数の中空ファイバと、
前記カートリッジ内に詰め込まれ、前記複数の中空ファイバに接触し、前記複数の中空ファイバの間にある脱酸素剤と、
を含む、赤血球から酸素を除去する方法。
【請求項7】
酸素減損装置の中に赤血球を通過させることを備え、
前記装置は、
フラッシングガスを受け入れ、放出するのに適している吸気口及び排気口を有している固形物質の容器と、
前記容器内で前記容器の入口から出口ま延在し、赤血球を受け入れ、運搬するのに適している複数の中空ファイバと、
を含む、赤血球から酸素を除去する方法。
【請求項1】
カートリッジと、
前記カートリッジ内で前記カートリッジの入口から出口まで延在し、酸素浸透性膜で形成され、赤血球を受け入れ、運搬するのに適している複数の中空ファイバと、
前記カートリッジ内に詰め込まれ、前記複数の中空ファイバに接触し、前記複数の中空ファイバの間にある脱酸素剤と、
を備える酸素減損装置。
【請求項2】
前記中空ファイバは、実質的に平行であり、前記カートリッジ内で前記入口から前記出口まで縦方向に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
フラッシングガスを受け入れ、放出するのに適している吸気口及び排気口を有している固形物質の容器と、
前記容器内で前記容器の入口から出口まで延在し、赤血球を受け入れ、運搬するのに適している複数の中空ファイバと、
を備える酸素減損装置。
【請求項4】
前記中空ファイバは、実質的に平行であり、前記カートリッジ内で前記入口から前記出口まで縦方向に配置されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記容器の前記入口と連通しているフラッシングガスの供給源を更に含む、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
酸素装置の中に赤血球を通過させることを備え、
前記装置は、
カートリッジと、
前記カートリッジ内で前記カートリッジの入口から出口まで延在し、前記赤血球を受け入れ、運搬するのに適している複数の中空ファイバと、
前記カートリッジ内に詰め込まれ、前記複数の中空ファイバに接触し、前記複数の中空ファイバの間にある脱酸素剤と、
を含む、赤血球から酸素を除去する方法。
【請求項7】
酸素減損装置の中に赤血球を通過させることを備え、
前記装置は、
フラッシングガスを受け入れ、放出するのに適している吸気口及び排気口を有している固形物質の容器と、
前記容器内で前記容器の入口から出口ま延在し、赤血球を受け入れ、運搬するのに適している複数の中空ファイバと、
を含む、赤血球から酸素を除去する方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【公表番号】特表2013−507447(P2013−507447A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534293(P2012−534293)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/052376
【国際公開番号】WO2011/046963
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(512025768)ニュー ヘルス サイエンシーズ、インク. (3)
【氏名又は名称原語表記】NEW HEALTH SCIENCES, INC.
【住所又は居所原語表記】6903 Rockledge Drive,Suite 230, Bethesda, Maryland 20817−1818 USA
【出願人】(505315328)ユニバーシティ オブ ピッツバーグ (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/052376
【国際公開番号】WO2011/046963
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(512025768)ニュー ヘルス サイエンシーズ、インク. (3)
【氏名又は名称原語表記】NEW HEALTH SCIENCES, INC.
【住所又は居所原語表記】6903 Rockledge Drive,Suite 230, Bethesda, Maryland 20817−1818 USA
【出願人】(505315328)ユニバーシティ オブ ピッツバーグ (2)
【Fターム(参考)】
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