説明

酸素熱交換器

本発明は、酸素又は少なくとも50%の酸素から構成される気体混合物を供給するための熱交換器であって、酸素又は気体混合物の温度が熱交換器の出口において300℃以上であり、好ましくは400℃より高く、酸素又は酸素富含気体がガラス溶融炉の一つ以上のバーナーに供給され、燃焼気体の熱が熱交換器中の酸素又は酸素富含気体を加熱するために直接的に又は間接的に使用され、熱交換器の出力が20〜300kw、好ましくは40〜250kw、特に好ましくは80〜170kwの範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス溶融炉のバーナーに供給する目的のために酸素又は酸素富含気体を加熱することを意図される熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
最高の製造能力を持つものを含むガラス溶融炉、例えば平板ガラスを製造する「フロート」を供給する炉はほとんど、化石燃料及び空気で操作するバーナーを備えている。このタイプのエネルギーの選択はエネルギー消費の重要性を考慮して経済的な理由によってなされる。指標として、一日あたり600〜900トンのガラスを製造する通常の溶融炉は50〜80メガワットのオーダの利用可能な電力を必要とする。
【0003】
これらの炉の使用はかなりのエネルギー消費を生じるだけでなく、多量の燃焼気体の放出も生じる。これらの理由のため、これらの燃焼気体を処理するためのコスト及びエネルギーコストをできるだけ減少させる努力が絶えずなされている。
【0004】
燃焼気体として空気を使用する現在最も広く行きわたった慣習は最も少ない可能なエネルギー消費に導かない。なぜなら、空気中の窒素はまた、高い温度にもたらされ、結果として燃焼によって放出されるエネルギーのかなりの部分を吸収し、このエネルギーの一部は煙霧が回収操作を受けたとしても失われるからである。さらに、良く知られているように、窒素の存在はいわゆる酸性雨の原因である酸化物の形成に導く。
【0005】
これらの理由のため、空気だけでなく酸素又は酸素富含気体を使用する解決策が開発され、幾つかの用途において既に使用されている。
【0006】
しかしながら、酸素の系統的な使用は実際的かつ経済的な困難性に遭遇する。必要な酸素のコストは経済的な問題の第一のものである。エネルギーバランスの利益は酸素の追加のコストより多く補償しなければならない。特定の材料の投資はまた、それがバーナーに関係するか、供給するか、又は以下で検討するように熱交換器に関係するかによってシステムの経済性において重要性を持つ。実際には、これらの大規模な装置への酸素の連続供給はガスパイプラインを介する部位又は供給源に対して製造設備を必要とし、そのいずれもかなりの投資がかかる。
【0007】
満足のいく経済的なバランスを達成するためにこれらのガラス溶融炉における酸素又は酸素富含気体の使用によって課せられた負荷を考えると、なされる選択を最適化することが必要である。
【0008】
最良のエネルギーバランスは、バーナーが酸素を使用して実行され、燃料を予熱し、燃焼気体の少なくとも一部がこの予熱操作のために使用されることを要求することであるように思える。
【0009】
熱い酸素の使用が大いに推奨されるが、これを実施すると、これらの設備の構成及びそれらの操作の両方に対して解決策を必要とする。従って、伝統的には、バーナーのために使用される空気は再生装置で予熱される。これらは、耐火材料でライニングを施された搭であり、その中に燃焼気体が渡されて第一相において耐火材料を加熱し、その中に燃焼に使用される空気が渡されて第二相において再加熱する。これらの相の交替の反復は極めて特有の炉構造をもたらす。従って、バーナーは、能動的なバーナーの反対側に一般に位置されるそれらと関連する再生装置のように溶融浴のいずれかの側にある。
【0010】
酸素を再加熱するために再生装置を使用することはできない。再生装置は一般に、燃焼気体によって運ばれる粒子の堆積物を受ける。たとえこれらが前もってダスト除去操作を受けたとしてもそうである。熱い酸素とこれらの堆積物の接触は危険がないわけではない。さらに、これらの再生装置の完全なシールを保証することは難しい。空気の通過及び可能な漏出は危険でないが、これは酸素に対して当てはまらない。
【0011】
熱交換器の使用はまた、熱い酸素と接触する材料の耐性の敏感な問題を起こす。これらの問題に鑑み、経済的な制約を考慮すると、熱い酸素の使用は大規模なガラス溶融炉に対するもののような大きな設備において有意な用途を見出せない。
【発明の概要】
【0012】
それゆえ、本発明の目的は、ガラス溶融炉、特に大容量の炉のバーナーにおける酸素又は酸素富含気体の使用を促進する解決策を提供することである。本発明はまた、高温での酸素の使用に関連した特定の技術的条件にかかわらずこの使用を十分に安全にさせる解決策を提供することである。
【0013】
酸素の使用と関連した危険が温度の増加の瞬間から設備において起こるので、本発明者はこの熱い酸素と接触する装置、特に熱交換器に対して全ての注意を向けている。熱交換器は有意な量のこの酸素を含み、この構成はメンテナンス又は修理のための何らかの介在によって生じる困難性のため、極めて長い期間、失敗なしで操作可能にしなければならない。
【0014】
熱い酸素の使用に関する上記の考慮事項はまた、特に空気との気体混合物に当てはまり、そこでは酸素含有量は十分に高い。実際には、これらの気体混合物が使用に有利であるためには、それらの酸素含有量は50%以上であるべきである。この条件は以下に与えられる本発明は当てはまる。本発明は少なくとも80%の酸素含有量を有する気体混合物に適用することが好ましい。
【0015】
本発明によれば、炉のバーナーに供給するための酸素又は酸素富含気体の加熱は熱交換器で実施され、そこでは熱交換出力は酸素又は酸素富含気体がもたらされる温度を最小にすることなく意図的に減少される。
【0016】
エネルギーバランスに対する利点を十分に得るために、熱交換器の出口における酸素又は酸素富含気体の温度は300℃以下、好ましくは400℃以下であり、本発明によるこれらの温度に酸素をもたらすために熱交換器において熱交換される出力は20〜300kw、好ましくは40〜250kw、特に好ましくは80〜170kwである。
【0017】
推奨されるものより低い出力レベルは経済的ではなく、システムの競争力を損なう。高い出力レベルは便利性に関する困難性に導き、とりわけこれらの熱交換器の使用の安全性に関する困難性に導きやすい。
【0018】
伝統的なガラス溶融炉、少なくとも大容量のものでは、使用されるバーナーは1〜6MWのオーダーの有意な出力レベルを発生し、1時間あたり200〜1200Nmのオーダーの酸素の酸素消費をもたらす
【0019】
出力、従ってこれらの炉に典型的に使用されるバーナーの各々の消費に照らして、本発明による熱交換器は少数のバーナーと関連しているにすぎない。各熱交換器は有利には、熱い酸素又は酸素富含気体と同時に最大三つの別個のバーナーに供給するにすぎず、各バーナーは例えばEP 1194719で与えられているもののように仕様に依存して幾つかの注入ノズルを持つことができる。
【0020】
熱交換器の数の増加に導くこの配置は、各熱交換器の寸法及び能力を制限することによって、しかしバーナーに導く熱交換器の下流のダクトの長さを有意に制限することによって設備の改良された安全性を確保する。
【0021】
経済的な観点から有利に維持するために、本発明による熱交換器の使用は制限された寸法をもたらすに違いなく、それは極めて特別な方式の操作を伴い、特に熱交換面積をできるだけ小さく保ちながら必要な出力を発生させることを可能にする。
【0022】
本発明によれば、酸素又は酸素富含気体を加熱するための熱交換器は5〜15kw/m、好ましくは7〜12kw/mの範囲の熱交換壁と酸素の接触の単位面積あたりの出力を有することが有利である。問題の面積は熱伝導気体から酸素又は酸素富含気体を分離する壁のそれである。
【0023】
本発明に従って使用される熱交換器の構成は、使用される材料の方への熱い酸素の攻撃性の結果として腐食及び漏出の危険を防止するためにできるだけ簡単な構造を与えなければならない。便宜のため、本発明による熱交換器は管状であることが好ましく、酸素又は酸素富含気体は管の列において循環し、熱伝導気体はこれらの外側で循環する。
【0024】
これらの面積をできるだけ小さく保ちながら、上で示した出力レベル、特に単位面積あたりの出力を保証するために、熱交換条件を最適化することが必要である。
【0025】
この熱交換を有利にするための第一の方法は、気体、特に酸素又は酸素富含気体の循環速度を増加することからなる。しかしながら、この観点から、循環速度の増加は危険なファクターであることをもう一度考慮することが必要である。この危険は、熱い酸素が酸素と反応しうる粒子を連行しやすいとき及び/又は壁上のその衝撃が酸素自体の摩擦から生じるものに加えて迅速な腐食を促進するときにさらに一層有意である。
【0026】
この危険を考慮するために、本発明によれば、熱交換器の要素の寸法は、必要な出力レベルを得るために、酸素又は酸素富含気体が熱交換器のいかなる点においても120m/s以下、好ましくは100m/s以下であるように規定されることが有利である。
【0027】
酸素の循環速度及び温度に加えて、特に発火の危険がまた、圧力に依存することが知られている。もし圧力の増加が体積の減少、従って熱交換器の循環速度の減少に導くなら、このタイプの変更はまた、問題の炉で使用されることができるバーナーの操作特徴に依存する。実際には、熱交換器内への受け渡し後及びそれがバーナーに達する前に熱い酸素の圧力減少の方に進めることは極めてデリケートなことである。その性質のため、それは圧力減少手段内への受け渡しを確実に可能にはせず、この操作を行なうためのダイヤフラムの使用であってもその攻撃性の結果として推奨されない。適切な送出速度を維持するためにバーナーの注入ノズルのレベルでの高い圧力はこの又はこれらのノズルの開口の減少をもたらすだろう。これは、これらのノズルの摩耗及び/又は付着物の危険のために望ましくなく、それは不完全な操作にすぐ導くだろう。
【0028】
これらのファクターを考慮するために、本発明による熱交換器はまた、求められる出力レベルに対して、熱交換器内の酸素又は酸素富含気体の圧力が3barを越えない、好ましくは2barを越えない、特に1.5barを越えないように寸法決定される。
【0029】
これらの設備の操作仕様の研究は、最良のエネルギーバランスが燃料及び酸素キャリアが高温をもたらすことを要求することを示す。気体がもたらされなければならない温度は、使用される設備が許容されるのと同等まで高められる。
【0030】
バーナーの効率の観点から酸素を最も高い温度にもたらすことは有利であるが、これらは実際には、熱交換に関与する熱伝導流体の温度によって並びに酸素と接触する材料の腐食又は発火の危険を制限する必要性によって制限される。
【0031】
酸素又は酸素富含気体を加熱するためのエネルギー供給は、熱交換器における循環によって直接的に又は好ましくは燃焼気体との熱交換によって前もってそれ自体再加熱された流体によって間接的に燃焼気体から来る。
【0032】
この後者の方法は酸素の循環における気密性の欠陥の場合に追加の安全性を与える。熱交換器の急速な汚れもまた、結果として防止される。なぜなら、燃焼気体が完全に分離することが難しいそれらとダストの有意な量を連行するからである。
【0033】
中間気体は、かかる二重熱交換が起こるなら、酸素に対して不活性であることが有利である。これは好ましくは空気、窒素、CO、蒸気又はこれらの気体の混合物である。
【0034】
もし必要なら、中間気体は上で示した不活性気体と前もってダスト分離を受けた燃焼気体の一部の混合物から形成されることができる。
【0035】
煙霧の温度は1550℃に増加することができ、最も多くは1250〜1450℃であり、それが接触する壁の材料を深刻に劣化させずに酸素がもたらされうる温度より高い。
【0036】
熱伝導流体が空気から形成される二重熱交換からなる設備の場合には、燃焼気体によって再加熱された後のこの後者の温度は450〜1000℃の範囲であることが好ましく、600〜800℃の範囲であることが特に好ましい。
【0037】
以下に説明される試験の対象を形成する本発明者の研究から明らかなように、熱交換器を形成する材料の腐食は温度とともに急速に増加するため、過剰な腐食に対して安全な条件で酸素を保つことが好ましい。
【0038】
実際には、熱交換の結果として熱い酸素又は酸素富含気体の温度は、本発明に従って作られた材料の選択が設備の過剰な腐食を防止できる限界内にある。この温度は通常900℃を越えず、好ましくは700℃以下である。
【0039】
熱交換器を形成する材料、主に熱い酸素と接触するものはこれらの温度条件で気体、特に酸素による酸化に対する良好な耐性を確保するように選択されなければならない。
【0040】
最も一般に使用される鋼は十分な耐性がない。結果として、設備の長い寿命を保証するために特に注意深い選択を行なうことが必要である。
【0041】
材料の選択は、これらの設備で達成される最高の温度に対する耐性の考慮だけでなく、可能な劣化に対して特に敏感にさせる材料の状態に変化を起こすことが知られている低い温度に対する良好な耐性の考慮も含む。温度の増加中、鋼は特に、金属の脆化を起こす転移温度領域を通過することがある。
【0042】
所望の耐性に対して幾つかの側面がある。それは燃焼の形の材料の強い酸化を防止することだけでなく、酸素と接触する表面の変性を防止する側面も持つ。表面の変性は究極的には壁のせん孔に導きうる。ある場合には、この熱い酸素で維持される燃焼によって製造された製品を汚染したりかつ/または続く反応を妨げたりしやすい粒子の脱離を防止することが望まれる。
【0043】
全ての場合において、酸素富含気体が循環する設備は、本来特に攻撃的であるこれらの気体に対して所望の耐性を自然に与える材料から作られなければならず、温度、循環速度、及び圧力がさらに高いときは一層そうである。
【0044】
酸素又は酸素富含気体を加熱するために使用される熱交換器が永続的な方法で上で説明した使用の条件に合致できるように、本発明者は、それらを形成する材料が合致しなければならない特性を確立した。
【0045】
一般に、300℃以上の温度で少なくとも50%の酸素を含有する気体を受けなければならない熱交換器は、少なくともこれらの気体と直接接触する壁の場合には、以下の試験手順に従う金属合金から作られる。
【0046】
設備で遭遇される最高の温度で設備で循環しなければならない酸素富含気体に対応する雰囲気において配置される本発明による金属合金の試料は、1000サイクル後に露出される表面1cmあたり0.1mgより多い重量増加を示さない。各サイクルは想定される最大温度を一時間維持することを含み、この温度での各相の後、周囲温度に戻される。
【0047】
繰り返しの高温の通過、続いての周囲温度への戻りの選択は特に必要とされる。金属の構造は、特に最も高い応力、従って高い劣化の危険を生じる繰り返しの相変態に遭遇しうる。実際には、この試験は、工業用熱交換器自体の使用時に耐えるもの自体より有意な試験に金属を受けさせるようなものであり、それは連続的に操作することを意図され、この操作は最も長い可能な時間間隔でのメンテナンス操作のために時折中断されるだけである。
【0048】
上で示したように、ガラス炉のバーナーは、好ましくは80%より高く100%に到達しうる酸素含有量を有する気体で供給されることが好ましいので、上で示した試験は有利にはこれらの酸素含有量に対して合格されなければならない。
【0049】
熱交換器の長い寿命を最も良好に確保するために、選択された金属合金は同じ試験を経験するが、ここでは制御温度は少なくとも500℃であり、考えられる極端な条件に合致するために、合金は最高試験温度が少なくとも600℃である試験を経験し、800℃の温度であってもこの試験を合格することができる。
【0050】
さらに、標準規格ASTM G−124に従った酸化雰囲気における自然発火のための試験では、本発明による熱交換器を形成するために最も好適な合金は少なくとも3barの圧力まで、好ましくは少なくとも10barの圧力までこの発火に抵抗する。
【0051】
550℃以上の範囲の温度で使用されるときに腐食試験に対してプラスの反応を持ちかつ有利に使用されるそれらの合金は、フェライト型非酸化合金を含み、そこではCr含有量は12〜30重量%の範囲であり、それは1〜8重量%の割合のAlを同時に含有する。
【0052】
フェライト合金は400〜500℃の範囲の温度のときに脆化を受ける。これらの理由のため、これらの合金の使用は、考慮されるファクター及び条件、特に熱交換器において一般的な温度条件を考慮しなければならない。
【0053】
熱い酸素に露出される熱交換器の部分はまた、Ni及びCrに富む合金から作られることができ、その合金は25重量%より多いNi含有量を有し、同時に10〜30重量%のCrを含有する。Ni含有量は75重量%又はそれより多くに増大することができる。
【0054】
これらの合金は特にそれらの機械特性の点で互いに異なる。さらに、それらの選択はおそらく、考えられる用途に特有の制限を考慮しなければならない。高いNi含有量の合金は平板ガラス製造設備において良好に作用するが、Niの存在によって起こされる危険を考慮することが重要である。なぜならNiによる粒子のいかなる連行も硫化ニッケルが割れを発生するガラスシートにおいて形成する危険のために注意深く避けなければならないからである。
【0055】
これらの合金は酸化クロム又はアルミニウムの保護フィルムの形成による高温での腐食に対して良好な耐性を持つ。合金のクロム含有量は、急速に増加する酸化ニッケルの瘤塊の形成を防止するために十分に高くなければならず、もし連行されるなら割れを発生するガラスシートにおいて硫化ニッケルを形成することができるだろう。
【0056】
500℃より高い範囲、特に500〜700℃の範囲の酸素温度では、クロム含有量が10〜20%、特に好ましくは10〜16%である合金を使用することが好ましい。その特定された条件に合致するNiに富む合金は特に、Inconel 600H,600L,Incoloy 800Hの名称によって通常言及されるものである。
【0057】
100℃より高い範囲、特に100〜600℃の範囲の酸素温度では、クロム含有量が16%より高い、特に好ましくは20〜30%である合金を使用することが好ましい。その特定された条件に合致するNiに富む合金は特に、Inconel 600H,600L,601,617,625,Incoloy 800H及び800HTの名称によって通常言及されるものである。
【0058】
ステンレス鋼316L及び310のような合金を使用することもできる。それは加工することが容易であるが、達成可能な寿命が短い。
【0059】
高温の高い酸化性気体の循環速度は腐食に対して危険なファクターであるが、これはこれらの気体によって運ばれる粒子によって増大されることができる。最初に、気体は固体粒子を実質的に含有しないが、これらは設備自体から来ることがある。これらの気体によって腐食にさらされる熱交換器及びダクトの壁は実際には粒子を放出することができ、それらは下流の要素に衝突するときに腐食を発生し、気体の流速が増加するとその程度が一層増加する。
【0060】
熱交換器の壁の表面状態は耐腐食性に影響しうる。表面の不整が顕著であればあるほど、合金は他が同一条件であれば腐食されやすい。この理由のため、酸素富含気体と接触する本発明による熱交換器の壁の表面は研磨され、6マイクロメートル(μ)以下の粗さを持つにすぎない。粗さは好ましくは4μm未満であり、最も有利には最大2μである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
本発明の実際の詳細の例は図面を参照して以下の記載に与えられる。
【図1】酸素又は酸素富含気体を再加熱するために本発明に従って使用可能な気体熱交換器の概略断面図である。
【図2】図1に示された熱交換器の端部の部分拡大図である。
【図3】図2からとった部分断面Aの詳細を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
熱交換器の一般的な構造は気体熱交換器のための通常のタイプのものである。それは管2の列を包囲するチャンバー1を含む。管はプレート3,4によってチャンバーの内側に固定される。
【0063】
プレートはチャンバー1の領域を画定するシール壁を形成し、そこでは熱伝導気体が循環する。
【0064】
チャンバーは二つのカバー5,6によってその端で閉じられている。これらのカバーはフランジ7,8,9,10及びシールによってチャンバーに気密的に固定される。これらのフランジは必要により管2の端へのアクセスを与えるために除去されることができる。
【0065】
最も良好な可能な熱交換を得るために、熱伝導気体及び酸素又は酸素富含気体の循環は逆流で行なわれることが有利である、熱い熱伝導気体は導管11を通ってチャンバー内に入り、チャンバー内のそらせ板13,14,15によって作られる循環路を通過した後に導管12を通って出る。
【0066】
酸素又は酸素富含気体は実質的に直線のコースに沿って管2内を循環する。それは端16を冷たく通過し、端17からバーナーに伝導するために熱く出る。
【0067】
循環速度が高いとき、熱交換は一層効果的である。それでもなお、酸素の流速及び圧力は、装置の操作安全性を確保する限界内に保持されなければならない。酸素の循環は、それが接触する壁の過度の腐食を生じることを防止されなければならない。それはまた、酸素が壁に衝突しないことを確実にすべきである。従って、直線状の管の使用は腐食を制限する。
【0068】
管2の端の配置は図2に詳細に示されている。
【0069】
管が最も多くは好適な溶接によってプレート4に接続する点での腐食の危険の増大が伴う管の端における乱流を防止するために、これらの管は広げられた断面で終わる。この配置は酸素の流れ及びその膨張及び続く減速を容易にする。この断面の広がりは図では開口角度αを有する切頭円錐の形状である。
【0070】
同じ理由のため、カバー、特に酸素出口に配置された全てのカバー6は管2の端から離れて設けられる。このようにして、カバーの壁に沿った酸素の流速は管の出口のそれに対して実質的に低下される。
【0071】
このカバー6の一般的な形状はまた、熱い酸素の前進が低い入射角でカバーの壁に出会い、衝撃を最小にするように選択される。例えば、カバーの壁は管2の方向に対して約20〜30度の角度である。カバーの外形は出口ダクトとの接続まで段々と減少する。
【0072】
この区域において鋭い角部又は溶接がないことを確実にすることも有利である。
【0073】
管の寸法決定及びそれらの分布は、上で示した流速及び圧力条件が実施される送出速度に合致されるようなものである。
【0074】
熱交換器は極めて長い期間にわたって連続的に操作しなければならないので、熱交換器の要素の摩耗を防止するためにとられる予防措置にかかわらず管は必要な気密性をもはや持たない結果を招くかもしれない。熱交換器の集成体は、欠陥のある管がこれらの二つの端でブロックされることができるようなものである。操作はカバーが除去されることを要求する。欠陥のある管が使用中止にされた後、熱交換器はもう一度、残っている活動管に比例して少し変化した効率で使用可能である。
【0075】
熱交換器のカバー9,10のフランジのレベルでの又は酸素入口又は出口ダクトとこれらのカバーの接続部での気密性は、酸素に対して耐性を持つ材料19,20でライニングされた環状の金属シール18によって得られることが有利である。問題の材料は例えばマイカ又は圧縮可能な無機材料である。このタイプのシールは特に、「Vitaflex」というブランド名の下でGarlockによって製造されている。
【0076】
本発明の実施条件に従う合金を決定するために、本発明者は、以下の記載で議論される試験を行なった。
【0077】
これらの試験のため、試料は20×20mmの大きさの金属合金の2mm厚のプレートから形成される。
【0078】
試料の表面の状態は、酸化に対する感受性に関して明らかに重要であることを示す。この理由のため、これらのプレートの各々の一方の面はSiCの研磨シートで粒子サイズ1200まで研磨される。他方の面は工業的圧延法によって生成されるように元の状態のままにしておく。
【0079】
試験された合金の試料の重量組成は以下の表で特定される:

【0080】
試料の酸化の測定は1000サイクルにわたる試験後にそれらの質量の増加によって評価される。異なる相温度に対する結果は以下の表に示される:

【0081】
これらの試験から相温度が高いときに酸化がより有意になることが明らかである。550℃では、全ての場合において質量増加は0.1mg/cmに留まっている。650℃では、一つの試料だけがこの値に達する。800℃では、最も耐性のある試料は合金IV及びVのものである。
【0082】
試料の金属組織学的観察は、試料の研磨された面の酸化傾向がずっと低いことを示す。
【0083】
上記測定は同時に試料の二つの面の酸化を含む。一方の面だけが研磨されるので、得られる酸化の測定値は、酸素と接触する表面が研磨されるときに実際に観察されるものより高い。
【0084】
試験は静的な方法で行なわれるので、換言すれば試料に対する雰囲気の循環がないので、表面から「スケール」は脱離しなかったようであった。
【0085】
表面の組成の変性、特にCr含有量の減少の分析は、脱離可能な粒子を形成する危険を評価する手段である。7%以上の含有量のCrの存在は、スケールの形成を防止する保護層の形成を保証する。
【0086】
下記表にまとめられた測定は、Cr含有量がこれらの値より十分に上であることを示す。相が示された最大温度である1000サイクルにわたる試験の後、生成物の表面(S)及び芯(C)の試料の重量%分析は、下記表に示した結果に導く。

【0087】
想定される雰囲気の性質を考えると、材料の使用は厳しい安全条件に従わなければならない。従って、純粋な酸素の存在下で高温にもたらされる材料の発火の危険は、標準規格ASTM G124の手順に従って評価される。
【0088】
これらの試験では、圧力下の酸素の雰囲気に置かれた材料の標本は発火試験に供される。これらの試験の結果は、550℃及び3barの圧力で試料のいずれにも発火が起こらないことを示す。
【0089】
圧力又は温度が増大するとき、発火傾向が増加する。合金IIIはこの試験に対して最も感受性があることを見出した。
【0090】
一般に、上で考えられた温度では、どのような合金が選択されようと、圧力は10barを越えてはいけない。この条件では、標準規格に従った試験は、酸素富含気体のための供給設備の使用がいかなる発火の危険も起こさないことを示す。
【0091】
熱い酸素に対する耐性のこれらの試験の結果に基づいて、特に重要な点は、本発明による熱交換器では壁の厚さが従来技術から想定するものより相対的に薄くすることができることにあるようである。これらの結果に基づく寿命のシミュレーションは、3mm以下であることができる厚さを持つ本発明による熱交換器の管のための壁に導く。この厚さは2.5mmに等しいか又はそれより薄くすることができる。
【0092】
熱交換器の管の壁の相対的に薄い厚さは熱伝導のためになり、従って同じ熱交換面積に対して利用可能な出力を増大する。
【0093】
例示的実施態様として、本発明による熱交換器は以下のように構成される。それはInconel 600の40管の列によって形成される。管の外側直径は17.2mmであり、壁の厚さは2.3mmである。管は4000mmの長さを持つ。
【0094】
それゆえ、酸素と接触する熱交換面積は8.4mである。
【0095】
第一熱交換器から来て、熱伝導気体(抽出されたダストを持つ空気)は650℃の温度で熱交換器に入る。熱伝導気体の送出速度は750Nm/hに設定される。酸素の送出速度は400 Nm/hである。それが周囲温度で入るとき、酸素は550℃に加熱される。
【0096】
ダクト中の酸素の流速は67m/sであり、熱交換器の負荷損失は0.15bar未満である。圧力制御装置を含む安全システムは熱交換器中の圧力を1bar未満に維持する。
【0097】
熱交換器の公称出力は84kWであり、単位面積あたりのそれは9.7kW/mに設定される。
【0098】
熱交換器は酸素を2MWの出力を有するガラス溶融炉のバーナーに供給する。
【0099】
完全な炉は10個の同様の寸法の熱交換器によって酸素を供給される。これらの熱交換器の各々の出力は、炉を操作するために必要な全出力を良好に分配するように調整される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素又は少なくとも50%の酸素から構成される気体混合物を供給するための熱交換器であって、酸素又は気体混合物の温度が熱交換器の出口において300℃以上であり、好ましくは400℃より高く、酸素又は酸素富含気体がガラス溶融炉の一つ以上のバーナーに供給され、燃焼気体の熱が熱交換器中の酸素又は酸素富含気体を加熱するために直接的に又は間接的に使用され、熱交換器の出力が20〜300kw、好ましくは40〜250kw、特に好ましくは80〜170kwの範囲であることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
酸素又は酸素富含気体と接触する熱交換器の単位面積あたりの出力が5〜15kw/m、好ましくは7〜12kw/mの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
炉の最大三つのバーナーに供給されることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
酸素又は酸素富含気体が管内で循環し、管の内壁が熱伝導気体と接触することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項5】
酸素又は酸素富含気体を運ぶ管の全横断面積が、これらの管内の最高循環速度が120m/sを越えない、好ましくは100m/sを越えないようなものであることを特徴とする請求項4に記載の熱交換器。
【請求項6】
酸素又は酸素富含気体の圧力が3bar以下、好ましくは2bar以下、特に好ましくは1.5bar以下に保たれることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項7】
酸素又は酸素富含気体と接触する表面が、それらの粗さが6μを越えない、好ましくは4μを越えない、特に好ましくは2μを越えないように研磨されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項8】
酸素又は酸素富含気体が循環する管が実質的に直線状であり、それらの壁が3mm以下、好ましくは2.5mm以下の厚さを有することを特徴とする請求項7に記載の熱交換器。
【請求項9】
管を包囲するチャンバーがフランジによって接合される複数の要素から形成され、気密性が複合シールによってこれらのフランジで確保され、そのシール要素が酸素に対して不活性の材料から作られることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項10】
シール要素が圧縮可能な無機材料から構成されるリングであることを特徴とする請求項9に記載の熱交換器。
【請求項11】
酸素又は酸素富含気体が燃焼気体によって間接的に加熱され、これらの間の第一交換が中間熱伝導気体で実施され、それは次いで熱交換器に渡されて、酸素又は酸素富含気体を加熱し、熱伝導気体が酸素に対して不活性な気体によって形成されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項12】
熱伝導気体が空気、窒素、CO又は蒸気であることを特徴とする請求項11に記載の熱交換器。
【請求項13】
熱伝導気体が空気、窒素、CO及び蒸気の少なくとも一つによって希釈された燃焼気体から形成されることを特徴とする請求項11に記載の熱交換器。
【請求項14】
熱伝導気体が最初に復熱装置で加熱され、復熱装置は前もって燃焼気体によって加熱されることを特徴とする請求項11に記載の熱交換器。
【請求項15】
酸素又は酸素富含気体と接触する表面の材料が、熱い気体に露出された試料が1000サイクルの露出後に0.1mg/cmより大きい重量増加を示さないように金属合金から作られ、各サイクルが、温度を400℃に等しいか又はそれより高い値に増加し、この相温度を一時間維持し、周囲温度に戻すことを含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項16】
相温度が酸化雰囲気中の試験で少なくとも500℃であるときに金属合金が0.1mg/cm未満の露出表面の重量増加の条件に従っていることを特徴とする請求項15に記載の熱交換器。
【請求項17】
酸素又は酸素ベースの気体混合物と接触する金属合金が少なくとも3barの圧力まで、好ましくは少なくとも10barの圧力まで標準規格ASTM G124による自然発火試験に耐えることを特徴とする請求項15又は16に記載の熱交換器。
【請求項18】
酸素又は酸素ベースの気体混合物と接触する金属合金が、12〜30重量%のCr及び1〜8重量%のAlを含有するフェライト鋼合金であることを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項19】
酸素又は酸素ベースの気体混合物と接触する金属合金が、500℃を越えない酸素温度に対して、10〜20重量%、好ましくは10〜16重量%の範囲のクロムを含有する合金であることを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項20】
金属合金が25重量%より高いNi含有量及び10〜30重量%のCr含有量を有することを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項21】
金属合金が、「Inconel 600H」,「600L」,「601」,「617」,「625」,「Incoloy 800H」又は「800HT」の名称の下で商業的に入手可能なものの一つであることを特徴とする請求項20に記載の熱交換器。
【請求項22】
酸素又は酸素ベース混合物と接触する要素が300℃〜900℃、好ましくは400℃〜700℃の範囲の温度にもたらされることを特徴とする請求項1〜21のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項23】
酸素検出装置が熱伝導気体と接触して配置され、それは酸素含有量が熱伝導気体のそれより1%高くなるときに警報装置に接続されることを特徴とする請求項1〜22のいずれかに記載の熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−526979(P2010−526979A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506926(P2010−506926)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055615
【国際公開番号】WO2008/141939
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(507303620)エージーシー フラット グラス ユーロップ エスエー (21)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】