説明

酸素発生剤組成物

【課題】 超酸化カリウムまたは過酸化ナトリウムを日常生活で使用するために腐食性と反応性を緩和して安定化させ、加工性を高める方法を提供する
【解決手段】(1)超酸化カリウム及び過酸化ナトリウムの反応性と酸化力を安定化させる物質を添加する。(2)一酸化炭素を酸化する触媒を添加する。(3)また、酸素発生剤組成物の成形及び加工性を改善するべく、ガラス粉末、ガラス繊維、セラミック繊維、スチールウール、ベントナイト、カオリナイト、ケイ酸ナトリウム、及びケイ酸カリウムの中から選択される物質をバインダーとして用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ金属の超酸化物または過酸化物を利用した酸素発生剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素を発生する物質は、通常、機内の圧力が落ちる非常状況に陥った飛行機において乗客への酸素供給の目的で使用されたり、正常の酸素供給システムの作動が止まった潜水艦などにおいて酸素を供給する目的で使用されたりする。その他にも、酸素発生物質は、消防署員や鉱夫が使用する酸素供給装置など個人携帯装備にも使用することができる。
【0003】
酸素を発生する物質には種々のものがあり、アルカリ金属の塩素酸塩と過塩素酸塩に属するものとして、過塩素酸リチウム(LiClO)、塩素酸リチウム(LiClO3)、過塩素酸ナトリウム(NaClO)、塩素酸ナトリウム(NaClO3)、過塩素酸カリウム(KClO)、塩素酸カリウム(KClO3)などが挙げられる。
【0004】
上記の塩素酸塩または過塩素酸塩は、電気的な方法や化学的な方法で熱を加えると分解しつつ塩(salt)と酸素を発生する。
【0005】
同様に、過酸化物や超酸化物も酸素発生物質に利用されるが、過酸化物に属するものとして過酸化ナトリウム(Na2O2)、過酸化カリウム(K2O2)、過酸化カルシウム(CaO2)、過酸化リチウム(Li2O2)があり、超酸化物に属するものとして超酸化ナトリウム(NaO2)と超酸化カリウム(KO2)がある。
【0006】
上記した種々の酸素発生物質の中でも超酸化カリウムと過酸化ナトリウムは、空気再生物質として用いられてきたが、これは、これら物質が下記の式1ないし4に示す反応から空気中の二酸化炭素を固定し酸素を発生するためである。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【0007】
勿論、空気中に含まれた二酸化炭素を除去する空気浄化剤には、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)と水酸化ナトリウムとの混合物であるソーダライムがあるし、この他にも水酸化リチウムが広く使用されてはいるものの、これら物質は、酸素を生じさせることはできす、単に二酸化炭素を除去するだけなので、過酸化ナトリウムや超酸化カリウムに比べて空気浄化効率が劣っている。
【0008】
したがって、通常、自給式呼吸装置(SCBA)では、過酸化ナトリウムや超酸化カリウムのように酸素発生能力のある物質を使用する方が、単なる二酸化炭素吸収剤を使用する場合に比べて有利とされている。
【0009】
例えば、米国特許第4,490,274号には、過酸化ナトリウム、超酸化カリウム、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、二酸化マンガン(MnO2)、アルミニウム粉末から組成される酸素発生剤組成物が開示されており、当該組成物は、低い温度でも酸素を安定的に生じさせるほか、発生した酸素中の湿度を維持させる機能も持つことが記載されている。
【0010】
上記米国特許第4,490,274号において、過酸化ナトリウムと超酸化カリウムとが混合使用されたが、超酸化カリウムは、安定で且つ酸素発生効率が高いことから、大部分の技術においても空気再生物質として使用されてきたものである。
【0011】
しかしながら、超酸化カリウムは、酸素発生過程で過度な熱が発生し、ペレットとペレットが互いに融合する現象が起こる点、そして、酸素発生が始まるまで時間遅れ現象が起こる点、強い酸化力と腐食性を持つ点などが、実用上の問題点とされてきた。
【0012】
そこで、上記の問題点を解決するべく、超酸化カリウムに少量の添加剤を加えた技術が提示されてきた。
【0013】
例えば、米国特許第4,113,646号には、無水硫酸カルシウム(CaSO4)、二酸化ケイ素(SiO2)、一酸化リチウム(Li2O)、メタホウ酸リチウム(LiBO2)などを添加することによって超酸化カリウムが融合する問題点を解決できることはもとより、酸素発生性能を改善できることが開示されている。
【0014】
米国特許第4,238,464号は、ジルコニウム、チタニウム、及びホウ素から選ばれた少なくとも1種の元素を含有する塩、及び超酸化カリウムを含む組成物が、上記の融合現象を緩和させることを開示している。
【0015】
特に、超酸化カリウムの充填された層内で上述した融合現象が起こってしまうと、この層を通る空気の流れに相当量の圧力降下が生じるが、米国特許第4,490,272号は、CaOのようなアルカリ土金属の酸化物を2〜30重量%添加すると、熱融合による圧力降下の問題点を相当改善できることを開示している。
【0016】
米国特許第5,690,099号は、超酸化カリウムの充填された層の次に水分の添加された活性炭層をさらに設けることによって、作動初期に酸素発生が遅れる問題点を解決できることを開示している。
【0017】
作動初期に酸素発生が遅れる問題点は、超酸化カリウムペレットに少量の触媒を添加する方法でも解決できるが、ドイツ特許第320810号は、二酸化マンガン(MnO2)を使用した例を開示しており、米国特許第4,731,197号は、オキシ塩化銅を超酸化カリウムペレットの表面に加えることによって、酸素発生が遅れる問題を解決できることはもとより、酸素発生速度を安定的に維持できることを報告している。
【0018】
これらの従来技術により、超酸化カリウムを空気浄化物質として使用する際に伴う多くの技術的難題、すなわち酸素発生時に生じる過度な熱の発生による融合の問題、作動初期に酸素発生が遅れる問題などが解決されてきたが、未だ超酸化カリウムの強い酸化力と腐食性(causticity)及び過度な反応性を緩和させ得る技術は提示されていない。
【0019】
また、強い酸化力と腐食性及び反応性は、過酸化ナトリウムにも共通する問題点であり、これら酸素発生物質を生活用品とする上での障害となる。
【0020】
過酸化ナトリウムと超酸化カリウムが、二酸化炭素、SOx及びNOxのような各種室内大気汚染源を除去するのに有用に応用されるという点は明らかであるが、強い反応性と酸化力、腐食性などの危険要素を除去しない限り、エアコンのフィルタなどの日常生活用品には活用し難い。
【0021】
腐食性と反応性を安定化させる問題の他に、超酸化カリウムと過酸化ナトリウムの加工性も改善しなければならない。これらの物質は無機固体化合物であり、ペレットのように小さく単純な形状以外はその加工が非常に困難であるが、これは、単なる粉末圧縮の他に特別な加工方法がないためである。
【0022】
しかも、これら物質の加工時に混合できるバインダーの種類は極めて限定的であるが、これは、超酸化カリウムと過酸化ナトリウムが強力な酸化剤であることに起因するものであり、これら物質を平板型フィルタなどの様々な形状にする上で克服しなくてはならない問題である。
【0023】
したがって、上記の超酸化カリウムと過酸化ナトリウムを日常生活で使用するためには、前述した腐食性と反応性を緩和して安定化させ、加工性を高め得る方法が望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
したがって、本発明の第1の目的は、超酸化カリウムと過酸化ナトリウムが有する酸化力と反応性を緩和させ、より安定した酸素発生剤組成物を提供することにある。
【0025】
本発明の第2の目的は、一酸化炭素を吸収できる酸素発生剤組成物を提供することにある。
【0026】
本発明の第3の目的は、加工性が改善され、より自由な形状に加工できる酸素発生剤組成物を提供することにある。
【0027】
本発明の第4の目的は、初期二酸化炭素吸収速度が極めて早い酸素発生剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記の目的は、超酸化カリウムまたは過酸化ナトリウムに反応性及び酸化力を安定化させる物質を添加し、ここに、一酸化炭素の酸化のための触媒、成形及び加工性を改善する物質、及び初期二酸化炭素吸収速度を早める物質のうちの少なくとも1種を選択的に添加することによって達成できる。
【0029】
前述した反応性と酸化力を安定化させる物質は、アルカリ土金属の水酸化物や、無機充填剤の中からいずれか1種以上を選択して使用する。
【0030】
例えば、アルカリ土金属の水酸化物には、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化バリウム(Ba(OH)2)などがあり、無機充填剤には、炭酸カルシウム(CaCO3)、タルク、クレイなどが挙げられる。
【0031】
一酸化炭素を酸化するための触媒としては、酸化銅(CuO)、酸化マンガン(MnO)、及び酸化銅と酸化マンガンとの混合物であるホプカライト(hopcalite)の中からいずれか1種以上を選択して使用することができる。
【0032】
酸素発生剤組成物の成形及び加工性を改善する物質としては、無機結合剤であるガラス粉末、ガラス繊維、セラミック繊維、スチールウール、ベントナイト、カオリナイト、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムの中からいずれか1種以上を選択して使用することができる。
【0033】
初期二酸化炭素吸収速度を早める物質として、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムの中から選択されるいずれか1種以上の塩基を添加することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る酸素発生剤組成物は、反応性と酸化力が安定化しているため、日常生活用品にも利用することができる。
【0035】
また、本発明に係る酸素発生剤組成物は、バインダーを用いて従来の技術に開示された超酸化カリウム組成物よりも格段に強い圧縮強度を有するため、様々な形状に加工することができる。
【0036】
また、本発明に係る酸素発生剤組成物は、一酸化炭素を酸化させる触媒を含有するため、空気中に含まれた一酸化炭素を、純粋な超酸化カリウムまたは過酸化ナトリウムに比べて格段に速い速度で吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、下記の実施例で説明するそれぞれの組成物を用いて、より詳細に説明する。
【0038】
本発明で開示する酸素発生剤組成物は、超酸化カリウムまたは過酸化ナトリウム20〜90重量%に、反応性及び酸化力を安定化させるアルカリ土金属の水酸化物や無機充填剤を10〜80重量%の割合で混合することによって得られ、より好ましくは、前記アルカリ土金属の水酸化物や無機充填剤の比率を40〜70重量%とする。
【0039】
このとき、アルカリ土金属の水酸化物には、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化バリウム(Ba(OH)2)などが使用され、無機充填剤には、炭酸カルシウム(CaCO3)、タルク、クレイなどが使用され、これらの物質は単独でまたは2種以上を混合して使用できる。
【0040】
本発明の酸素発生剤組成物が一酸化炭素を酸化させて吸収できるようにする場合には、酸化銅(CuO)、酸化マンガン(MnO)、または酸化銅と酸化マンガンとの混合物であるホプカライトを触媒として全体組成物に対して0.01〜5重量%となるように添加し、より好ましくは1〜3重量%にする。
【0041】
酸素発生剤の成形及び加工性の改善のためには、バインダーを全体組成物に対して0.01〜10重量%となるように使用し、より好ましくは2〜7重量%にする。このバインダーは、成形及び加工が不要な粉末形態で使用される場合には、組成物から排除してもいい。
【0042】
本発明で使用するバインダーには、ガラス粉末、ガラス繊維、セラミック繊維、スチールウール、ベントナイト、カオリナイト、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムが含まれ、これらは単独でまたは2種以上を混合して使用できる。
【0043】
本発明で初期二酸化炭素吸収速度を高めるためには、超酸化カリウムや過酸化ナトリウムに基づく酸素発生剤組成物に、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化カリウム(KOH)の中から選択されたいずれか1種以上の塩基を、0.01〜10重量%程度添加する。
【0044】
前述した組成物において、反応性及び酸化力を安定させる物質は必ず使用しなければならないが、その他の添加剤成分、すなわち一酸化炭素酸化触媒、バインダー、初期二酸化炭素吸収速度を高めるための塩基などは、目的に応じて選択的に使用しても良い。
【0045】
本発明で使用した物質はいずれもCP(chemically pure)グレードのものであり、窒素雰囲気下のデシケーターで48時間以上乾燥した後に使用した。各成分は、乾燥した窒素で充填されたグローブボックス中で混合し、可能な限り均一な混合物とした。それぞれの成分を含む混合物は、金型とプレスを用いて10tonの圧力でシリンダー形状を持つペレットに加工した。
【0046】
下記の実施例において、前述した方法で製造した酸素発生剤組成物の反応性、一酸化炭素除去性能、そしてペレットの強度を試験した。
【実施例1】
【0047】
下記の組成を持つ酸素発生剤組成物を、ペレット製造機を用いて直径1.0cm、高さ1.0cmのペレット形態に加工した。ペレットに加工する際、大気を乾燥状態に保ち、水分の影響を遮断した。
【0048】

試料 A−1:
超酸化カリウム(KO2): 30.00重量%
水酸化カルシウム(Ca(OH)2): 70.00重量%

試料 A−2:
超酸化カリウム(KO2): 35.00重量%
水酸化カルシウム(Ca(OH)2): 60.00重量%
ホプカライト: 2.00重量%
ケイ酸ナトリウム: 3.00重量%

試料 A−3:
超酸化カリウム(KO2): 35.00重量%
水酸化アルミニウム(Al(OH)3): 60.00重量%
ホプカライト: 2.00重量%
ケイ酸ナトリウム: 3.00重量%

試料 A−4:
超酸化カリウム(KO2): 35.00重量%
水酸化マグネシウム(Mg(OH)2): 60.00重量%
ホプカライト: 2.00重量%
ケイ酸ナトリウム: 3.00重量%

試料 A−5:
超酸化カリウム(KO2): 35.00重量%
水酸化カルシウム(Ca(OH)2): 60.00重量%
ホプカライト: 2.00重量%
ガラス繊維: 3.00重量%

試料 A−6:
超酸化カリウム(KO2): 35.00重量%
水酸化カルシウム(Ca(OH)2): 60.00重量%
ホプカライト: 2.00重量%
ベントナイト: 3.00重量%

試料 A−7:
超酸化カリウム(KO2): 35.00重量%
水酸化カルシウム(Ca(OH)2): 60.00重量%
ホプカライト: 2.00重量%
カオリナイト: 3.00重量%

試料 B−1:
過酸化ナトリウム(Na2O2): 30.00重量%
水酸化カルシウム(Ca(OH)2): 70.00重量%

試料 B−2:
過酸化ナトリウム(Na2O2): 35.00重量%
水酸化カルシウム(Ca(OH)2): 60.00重量%
ホプカライト: 2.00重量%
ケイ酸ナトリウム: 3.00重量%

試料 B−3:
過酸化ナトリウム(Na2O2): 35.00重量%
水酸化アルミニウム(Al(OH)3): 60.00重量%
ホプカライト: 2.00重量%
ケイ酸ナトリウム: 3.00重量%

試料 B−4:
過酸化ナトリウム(Na2O2): 35.00重量%
水酸化マグネシウム(Mg(OH)2): 60.00重量%
ホプカライト: 2.00重量%
ケイ酸ナトリウム: 3.00重量%

試料 B−5:
過酸化ナトリウム(Na2O2): 35.00重量%
水酸化カルシウム(Ca(OH)2): 60.00重量%
ホプカライト: 2.00重量%
ガラス繊維: 3.00重量%

試料 B−6:
過酸化ナトリウム(Na2O2): 35.00重量%
水酸化カルシウム(Ca(OH)2): 60.00重量%
ホプカライト: 2.00重量%
ベントナイト: 3.00重量%

試料 B−7:
過酸化ナトリウム(Na2O2): 35.00重量%
水酸化カルシウム(Ca(OH)2): 60.00重量%
ホプカライト: 2.00重量%
カオリナイト: 3.00重量%

【実施例2】
【0049】
本実施例では、上記の実施例1で製造した酸素発生剤組成物の反応性を試験するべく、前記組成物10gと綿5gをガラス容器に一緒に充填した後、容器を1℃/分の速度で加熱しつつ点火する温度を測定した。
【0050】
実験時初期温度は25℃であり、各実施例で製造した酸素発生剤組成物に対して10回の実験を実施し、その平均点火温度を表1及び表2に記載する。
【表1】

【表2】

【0051】
表1及び表2に示す点火実験結果によれば、純粋な超酸化カリウムは、常温に近い28℃で、純粋な過酸化ナトリウムは31℃でそれぞれ綿を点火させたのに対し、本発明に係る方法で安定化させた試料の場合、点火温度が200℃を上回っており、超酸化カリウム及び過酸化ナトリウムの酸化力が大きく安定化していることが分かる。
【実施例3】
【0052】
本実施例では、酸素発生剤組成物の加工性を試験するべく、実施例1で製造したペレット形態の酸素発生剤組成物に対する圧縮強度を測定した。
【表3】

【0053】
表3に示す実験結果によれば、本発明によってバインダーを添加した酸素発生剤組成物の圧縮強度が、バインダーを使用しない組成物に比べて非常に大きくなることが分かる。
【0054】
この結果は、バインダーを使用した組成物が、純粋な超酸化カリウムや過酸化ナトリウムに比べて非常に堅固で、より様々な形状に成形可能であるということを意味する。
【実施例4】
【0055】
実施例1で製造した酸素発生剤組成物100gをそれぞれ、2Lのフラスコに入れた後、二酸化炭素(CO2)5000ppmを含有する窒素ガスを充填し、二酸化炭素濃度の変化を時間別に測定した。
【0056】
図1は、超酸化カリウムに基づく酸素発生剤の二酸化炭素吸収実験結果を示すグラフである。図1によると、水酸化アルミニウムを含有する組成物(A−3)や水酸化マグネシウムを含有する組成物(A−4)が、水酸化カルシウムを含有する組成物に比べて二酸化炭素吸収速度が格段に遅いことが分かる。
【0057】
図2は、過酸化ナトリウムに基づく酸素発生剤の二酸化炭素吸収実験結果を示すグラフである。図2によると、過酸化ナトリウムに基づく酸素発生剤組成物においても、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムを含有する組成物が、水酸化カルシウムを含有する組成物に比べて二酸化炭素吸収速度が格段に遅いことが分かる。
【実施例5】
【0058】
実施例1で製造した酸素発生剤組成物1000gを、2Lのフラスコに入れた後、一酸化炭素5000ppmを含有する窒素ガスを充填し、一酸化炭素(CO)の濃度変化を時間別に測定した。
【0059】
図3は、超酸化カリウムを用いた酸素発生剤組成物の一酸化炭素吸収実験結果を示すグラフである。図3によると、ホプカライト無添加の純粋な超酸化カリウムや、超酸化カリウムに水酸化カルシウムだけを混合した酸素発生剤組成物は、一酸化炭素吸収速度が格段に遅いことが分かる。
【0060】
図4は、過酸化ナトリウムを用いた酸素発生剤組成物の一酸化炭素吸収実験結果を示すグラフである。図4によると、超酸化カリウムの場合のように、ホプカライト無添加の酸素発生剤組成物の一酸化炭素吸収速度は格段に遅いことがよく分かる。
【実施例6】
【0061】
水酸化ナトリウムを含む酸素発生剤組成物を、実施例1と同様にして製造した。
【0062】

試料 C−1
超酸化カリウム(KO2): 35.00重量%
水酸化カルシウム(Ca(OH)2): 55.00重量%
ホプカライト: 2.00重量%
ケイ酸ナトリウム: 3.00重量%
水酸化ナトリウム: 5.00重量%

試料 C−2
過酸化ナトリウム(Na2O2): 35.00重量%
水酸化カルシウム(Ca(OH)2): 55.00重量%
ホプカライト: 2.00重量%
ケイ酸ナトリウム: 3.00重量%
水酸化ナトリウム: 5.00重量%
【実施例7】
【0063】
上記の実施例6で製造した酸素発生剤組成物(試料番号C−1、C−2)と純粋な超酸化カリウム、純粋な過酸化ナトリウム1000gをそれぞれ、2Lのフラスコに入れた後、二酸化炭素(CO2)5000ppmを含有する窒素ガスを充填し、二酸化炭素の濃度変化を時間別に測定した。
【0064】
この実験結果は図5に示されており、水酸化ナトリウムを添加した酸素発生剤組成物の二酸化炭素吸収速度が、その他の組成物に比べて格段に早くなることが分かる。もちろん、二酸化炭素吸収速度が早くなったことは、組成物の初期反応速度、すなわち、初期二酸化炭素吸収速度が増加したことを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によって製造された酸素発生剤組成物は、二酸化炭素、一酸化炭素、SOx、NOxを吸収して酸素に転換させる機能を持っているため、種々の空気浄化剤に利用可能である。
【0066】
特に、本発明に係る酸素発生剤組成物は、純粋な超酸化カリウムに比べて圧縮強度が格段に高いため、エアコンと空気清浄機のような装置に取り付けられる平板型フィルタの形態に製造でき、結果として多様な産業的応用性を持つ。
【0067】
一方、本発明は、上記の実施例に開示した形態に限定されるのではなく、請求範囲の技術思想の範囲内で種々の応用が可能であることは自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】超酸化カリウムを用いた酸素発生剤組成物についての二酸化炭素吸収速度を、純粋な超酸化カリウムに対比して示すグラフである。
【図2】過酸化ナトリウムを用いた酸素発生剤組成物についての二酸化炭素吸収速度を、純粋な過酸化ナトリウムに対比して示すグラフである。
【図3】超酸化カリウムにホプカライトを添加した酸素発生剤組成物についての一酸化炭素吸収速度を、純粋な超酸化カリウムに対比して示すグラフである。
【図4】過酸化ナトリウムにホプカライトを添加した酸素発生剤組成物についての一酸化炭素吸収速度を、純粋な過酸化ナトリウムに対比して示すグラフである。
【図5】酸素発生剤組成物に水酸化ナトリウムを添加した時の二酸化炭素吸収速度を、純粋な超酸化カリウムと過酸化ナトリウムに対比して示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超酸化カリウム20〜90重量%と、当該超酸化カリウムの反応性及び酸化力を安定化させる物質10〜80重量%とを含むことを特徴とする酸素発生剤組成物。
【請求項2】
過酸化ナトリウム20〜90重量%と、当該過酸化ナトリウムの反応性及び酸化力を安定化させる物質10〜80重量%とを含むことを特徴とする酸素発生剤組成物。
【請求項3】
前記反応性及び酸化力を安定化させる物質が、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化バリウム(Ba(OH)2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、タルク、クレイよりなる群から選択されるいずれか1種以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の酸素発生剤組成物。
【請求項4】
請求項1または2の酸素発生剤組成物95〜99.99重量%と、一酸化炭素を酸化させる触媒0.01〜5重量%とを含むことを特徴とする酸素発生剤組成物。
【請求項5】
前記一酸化炭素を酸化させる触媒が、酸化銅(CuO)、酸化マンガン(MnO)、及び酸化銅と酸化マンガンとの混合物であるホプカライトよりなる群から選択されるいずれか1種以上であることを特徴とする、請求項4に記載の酸素発生剤組成物。
【請求項6】
請求項1または2の酸素発生剤組成物90〜99.99重量%と、成形及び加工性を改善する物質0.01〜10重量%とを含むことを特徴とする酸素発生剤組成物。
【請求項7】
前記成形及び加工性を改善する物質が、ガラス粉末、ガラス繊維、セラミック繊維、スチールウール、ベントナイト、カオリナイト、及びケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムよりなる群から選択されるいずれか1種以上であることを特徴とする、請求項6に記載の酸素発生剤組成物。
【請求項8】
請求項1または2の酸素発生剤組成物90〜99.99重量%と、初期二酸化炭素吸収速度を早めるための塩基0.01〜10重量%とを含むことを特徴とする酸素発生剤組成物。
【請求項9】
前記塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、及び水酸化カリウムよりなる群から選択されるいずれか1種以上であることを特徴とする、請求項8に記載の酸素発生剤組成物。
【請求項10】
請求項1または2の酸素発生剤組成物85〜99.98重量%、前記一酸化炭素を酸化させる触媒0.01〜5重量%、及び、前記成形及び加工性を改善する物質0.01〜10重量%を含むことを特徴とする、超酸化カリウムを用いる酸素発生剤組成物。
【請求項11】
請求項1または2の酸素発生剤組成物80〜99.98重量%、前記成形及び加工性を改善させる物質0.01〜10重量%、及び、前記初期二酸化炭素吸収速度を早くするための塩基0.01〜10重量%を含むことを特徴とする酸素発生剤組成物。
【請求項12】
請求項1または2の酸素発生剤組成物85〜99.98重量%、前記一酸化炭素を酸化させる触媒0.01〜5重量%、及び、前記初期二酸化炭素吸収速度を早くするための塩基0.01〜10重量%を含むことを特徴とする酸素発生剤組成物。
【請求項13】
請求項1または2の酸素発生剤組成物75〜99.97重量%、前記一酸化炭素を酸化させる触媒0.01〜5重量%、前記成形及び加工性を改善する物質0.01〜10重量%、及び、前記初期二酸化炭素吸収速度を早めるための塩基0.01〜10重量%を含むことを特徴とする酸素発生剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−8492(P2006−8492A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254464(P2004−254464)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(504239869)ジェイ・シー・テクノロジーズ・インク (1)
【Fターム(参考)】