説明

酸素系粉末洗浄剤組成物

【課題】 組成物を60℃の密閉状態に7日間おいた時に、6℃以上の温度上昇を起こさない酸素系粉末洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】 (A)酸素系漂白剤を5〜60質量%、(B)キレート剤を1〜20質量%、(C)界面活性剤を1〜40質量%、(D)炭酸塩および/または硫酸塩を20〜80質量%を含有し、且つ、前記(C)成分の界面活性剤が、炭素数12〜18の脂肪酸、炭素数12〜18のアルキル硫酸、炭素数12〜18のアルキルスルホン酸、炭素数12〜18のα−オレフィンスルホン酸、炭素数18〜24のアルキルベンゼンスルホン酸、およびこれらの塩、並びに炭素数が10〜18のアルコール1モルに対し、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドが1〜18モル付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる群から選ばれることを特徴とする酸素系粉末洗浄剤組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素系粉末洗浄剤組成物に関する。更に詳しくは、組成物を60℃の密閉状態に7日間おいた時に、6℃以上の温度上昇(以下、「自己加速分解」という)を起こさない酸素系粉末洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品製造設備または衣料の洗浄等、幅広い分野において酸素系粉末洗浄剤が使用されている。例えば、特開2004−2734号公報には、麺類調理装置洗浄用として酸素系粉末洗浄剤組成物が開示されている(特許文献1を参照)。また、特開2005−187743号公報には衣料の洗浄用として酸素系粉末洗浄剤組成物が開示されている(特許文献2を参照)。
【0003】
しかしながら、これらの組成物は有機物の加熱変性した汚れ(以下、「加熱変性汚れ」という)および油脂汚れに対し良好な洗浄性を示すものの、60℃以上の密閉状態で放置しておくと自己加速分解が起こることがあり、洗浄剤としての能力を失うばかりでなく、発火して火災の原因となることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−2734号公報
【特許文献2】特開2005−187743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情を鑑みなされたもので、加熱変性汚れおよび油脂汚れの洗浄性に優れるとともに、60℃以上の密閉状態で放置したときに自己加速分解を起こさない酸素系粉末洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討をおこなった結果、(A)酸素系漂白剤を5〜60質量%、(B)キレート剤を1〜20質量%、(C)界面活性剤を1〜40質量%、および(D)炭酸塩および/または硫酸塩を20〜80質量%含有し、60℃の密閉状態に7日間おいた時に、自己加速分解を起こさないことを特徴とする酸素系粉末洗浄剤組成物を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、(A)酸素系漂白剤を5〜60質量%、(B)キレート剤を1〜20質量%、(C)界面活性剤を1〜40質量%、(D)炭酸塩および/または硫酸塩を20〜80質量%含有し、且つ、前記(C)成分の界面活性剤が、炭素数12〜18の脂肪酸、炭素数12〜18のアルキル硫酸、炭素数12〜18のアルキルスルホン酸、炭素数12〜18のα−オレフィンスルホン酸、炭素数18〜24のアルキルベンゼンスルホン酸、およびこれらの塩、並びに炭素数が10〜18のアルコール1モルに対し、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドが1〜18モル付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする酸素系粉末洗浄剤組成物を要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、洗浄剤組成物を60℃の密閉状態に7日間おいた時に、6℃以上の温度上昇を起こさない酸素系粉末洗浄剤組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
つぎに、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0010】
本発明の粉末酸素系洗浄剤組成物(以下、「本洗浄剤組成物」という)に用いられる(A)成分の酸素系漂白剤としては、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素付加体などの過酸化物が挙げられる。これらは単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、経済性の点から過炭酸ナトリウムが好ましく用いられる。
【0011】
上記(A)成分の酸素系漂白剤は、本洗浄剤組成物中において、5〜60質量%、好ましくは10〜40質量%の範囲で配合される。5質量%未満では加熱変性汚れに対する洗浄性が乏しくなり、また、60質量%を超えると経済性の点から好ましくない。なお、酸素系漂白剤は、有機系汚れを良好に分解除去するとともに、除菌性および漂白性を目的に配合される。
【0012】
本発明の本洗浄剤組成物に用いられる(B)成分のキレート剤としては、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸カリウム、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸カリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸カリウム、L−グルタミン酸二酢酸ナトリウム、L−グルタミン酸二酢酸カリウム、L−アスパラギン酸−N,N−二酢酸ナトリウム、L−アスパラギン酸−N,N−二酢酸カリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸カリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸カリウム、メチルグリシン二酢酸三ナトリウム、およびメチルグリシン二酢酸三カリウム等が挙げられる。これらは単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、加熱変性汚れに対する洗浄性の点からニトリロ三酢酸ナトリウムおよび/またはエチレンジアミン四酢酸ナトリウムが好ましく用いられる。
【0013】
上記(B)成分のキレート剤は、本洗浄剤組成物中において、1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%の範囲で配合され、1質量%未満では加熱変性汚れに対する洗浄性に乏しく、また、20質量%を超えると有効酸素濃度安定性が乏しいものとなる。
【0014】
本発明の本洗浄剤組成物に用いられる(C)成分の界面活性剤としては、炭素数12〜18の脂肪酸、炭素数12〜18の脂肪酸ナトリウム、炭素数12〜18の脂肪酸カリウム、炭素数12〜18のアルキル硫酸、炭素数12〜18のアルキル硫酸ナトリウム、炭素数12〜18のアルキル硫酸カリウム、炭素数12〜18のアルキルスルホン酸、炭素数12〜18のアルキルスルホン酸ナトリウム、炭素数12〜18のアルキルスルホン酸カリウム、炭素数12〜18のα−オレフィンスルホン酸、炭素数12〜18のα−オレフィンスルホン酸ナトリウム、炭素数12〜18のα−オレフィンスルホン酸カリウム、炭素数18〜24のアルキルベンゼンスルホン酸、炭素数18〜24のアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、炭素数18〜24のアルキルベンゼンスルホン酸カリウム、炭素数が10〜18のアルコール1モルに対し、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドが1〜18モル付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテル等が挙げられ、これらは単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、油脂汚れに対する洗浄性の点から炭素数12〜18のアルキル硫酸、炭素数12〜18のアルキル硫酸ナトリウム、炭素数12〜18のアルキル硫酸カリウム、炭素数12〜18のアルキルスルホン酸、炭素数12〜18のアルキルスルホン酸ナトリウム、炭素数12〜18のアルキルスルホン酸カリウム、炭素数12〜18のα−オレフィンスルホン酸、炭素数12〜18のα−オレフィンスルホン酸ナトリウム、炭素数12〜18のα−オレフィンスルホン酸カリウム、炭素数18〜24のアルキルベンゼンスルホン酸、炭素数18〜24のアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、炭素数18〜24のアルキルベンゼンスルホン酸カリウム、炭素数が10〜18のアルコール1モルに対し、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドが1〜18モル付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましい。
【0015】
上記(C)成分の界面活性剤は、本洗浄剤組成物中において、1〜40質量%、好ましくは1〜30質量%の範囲で配合される。1%質量未満では油脂汚れに対する洗浄性に乏しく、また、40質量%を超えると有効酸素濃度安定性が乏しいものとなる。
【0016】
本発明の本洗浄剤組成物に用いられる(D)成分の炭酸塩および/または硫酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等が挙げられる。これらは単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、経済性の点から炭酸ナトリウムおよび/または硫酸ナトリウムが好ましい。
【0017】
上記(D)成分の炭酸塩および/または硫酸塩は、本洗浄剤組成物中において、20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%の範囲で配合される。20質量%未満では有効酸素濃度安定性が乏しくなり、また、80質量%を超えると使用時に本洗浄剤組成物自体が飛散しやすいものとなり、安全性の点から好ましくない。
【実施例】
【0018】
つぎに、実施例について比較例と併せて記載し説明する。なお、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0019】
後記表1〜3に示す実施例1〜15および比較例1〜8の組成(各表の数値の単位は、質量%である。)の供試洗浄剤組成物を調製し、加熱変性汚れの洗浄性、油脂汚れの洗浄性、蓄熱性および有効酸素の安定性の4項目について試験し、評価した。表中における各成分の配合量は有り姿で示すとともに、各成分の有効成分量(質量%。以下、%と略して示す。)について後記のとおり示した。また、各種試験の結果を後記表1〜3に併せて示した。なお、上記各試験項目の試験方法および評価基準は、以下に示すとおりである。
【0020】
〔(A)成分〕
・過炭酸ナトリウム
商品名「PC−M」、(日本パーオキサイド社製、有効成分量 99%)
【0021】
〔(B)成分〕
・エチレンジアミン四酢酸ナトリウム
商品名「ゾノンNO」、(三菱レイヨン社製、有効成分量 97%)
・ニトリロ三酢酸ナトリウム
商品名「トリロンA92R」、(BASF社製、有効成分量 92%)
【0022】
〔(C)成分〕
・脂肪酸ナトリウム(炭素数18)
商品名「ノンサールSN−1」、(日本油脂社製、有効成分量 98%)
・アルキル硫酸ナトリウム(炭素数12)
商品名「エマール10P HD」、(花王社製、有効成分量 90%)
・アルキルスルホン酸ナトリウム(炭素数13〜17)
商品名「ホスタプアSAS60」、(クラリアント社製、有効成分量 60%)
・直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(炭素数18)
商品名「ライポンPS−260」、(ライオン社製、有効成分量 60%)
・α−オレフィンスルホン酸ナトリウム(炭素数14〜18)
商品名「リポランPB800」、(ライオン社製、有効成分量 95%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(炭素数12のアルコール1モル/エチレンオキサイド10モル付加物)
商品名「ノイゲンLP100」、(第一工業製薬社製、有効成分量 100%)
【0023】
〔(D)成分〕
・炭酸ナトリウム
商品名「ソーダ灰ライト」、(トクヤマ社製、有効成分量 99%)
・硫酸ナトリウム
商品名「無水硫酸ナトリウム」、(東ソー社製、有効成分量 99%)
【0024】
〔その他の成分〕
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸ナトリウム
商品名「ビューライトECA」、(三洋化成社製、有効成分量 98%)
・リン酸エステル
商品名「プライサーフA219B」、(第一工業製薬社製、有効成分量 99%)
・脂肪酸ジエタノールアマイド
商品名「アデカソールCO」、(ADEKA社製、有効成分量 75%)
【0025】
1.加熱変性汚れの洗浄性
〔試験方法〕
(1)テストピースの調整
清浄なステンレス板(SUS304製:縦8cm×横5cm)の表面中央部分(縦3cm×横1.7cm)に、飲料(コーヒー飲料:商品名:「メイトーコーヒー」、協同乳業社製)を0.1g/枚相当量を楕円状に塗布し、125℃で8時間加熱して調整した。
(2)操作方法
各供試洗浄剤組成物を水道水で0.5質量%に希釈した洗浄剤希釈液(30℃に加温)に、加熱変性汚れテストピースを30分間浸漬し、洗浄後、該テストピースを水道水ですすぎ、室温で自然乾燥させた。このときの洗浄前後におけるテストピースの重量変化を測定し、以下の式にて洗浄率を算出して、加熱変性汚れの洗浄性を以下の評価基準で判定した。
洗浄率(%)=((洗浄前のテストピースの重量−洗浄後のテストピースの重量)/(洗浄前のテストピースの重量−清浄なテストピースの重量))×100
〔評価基準〕
○:洗浄率80〜100%、
△:洗浄率60〜80%未満、
×:洗浄率60%未満、
とし、○および△を実用性ありと判定した。
【0026】
2.油脂汚れの洗浄性
〔試験方法〕
(1)テストピースの調整
清浄なステンレス板(SUS304製:縦8cm×横5cm)の下半面(縦4cm×横5cm)に、油脂汚れ(牛脂:大豆油=1:1)を0.01g/枚相当量を塗布し、常温にて24時間、乾燥させた。
(2)操作方法
各供試洗浄剤組成物を水道水で0.1質量%に希釈した洗浄剤希釈液(30℃に加温)に、上記テストピースを5分間浸漬し、攪拌洗浄をおこなった。このときの洗浄前後におけるテストピースの重量変化を測定し、以下の式にて洗浄率を算出して、油脂汚れの洗浄性を以下の評価基準で判定した。
洗浄率(%)=((洗浄前のテストピースの重量−洗浄後のテストピースの重量)/(洗浄前のテストピースの重量−清浄なテストピースの重量))×100
〔評価基準〕
○:洗浄率80〜100%、
△:洗浄率60〜80%未満、
×:洗浄率60%未満、
とし、○および△を実用性ありと判定した。
【0027】
3.蓄熱性
〔試験方法〕
各種供試洗浄剤組成物を、500ml容量のデュワー瓶に400ml入れて密閉し、60℃で7日間配置した時の供試洗浄剤組成物の最高温度を測定し、以下の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
○:66℃未満
×:66℃以上
とし、○を実用性ありと判定した。
【0028】
4.有効酸素の安定性
各種供試洗浄剤組成物を、200ml容量のポリエチレン容器に100gを入れて密封し、室温で1ヶ月間貯蔵した後、洗浄剤組成物の有効酸素の残存率(%)を測定して、以下の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
○:残存率が90%以上、
×:残存率が90%未満、
とし、○を実用性ありと判定した。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
表1〜3の結果より、実施例1〜15の酸素系粉末洗浄剤組成物は、加熱変性汚れの洗浄性、油脂汚れの洗浄性、蓄熱性および有効酸素の安定性の全ての評価項目において、優れた性能を有していることがわかる。
【0033】
比較例6〜8は、組成物を60℃の密閉状態に7日間おいた時に、自己加速分解を起こす例であり、組成物が60℃の密閉状態で自己加速分解が始まることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、洗浄剤組成物を60℃の密閉状態に7日間おいた時に、6℃以上の温度上昇を起こさない酸素系粉末洗浄剤組成物を提供できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸素系漂白剤を5〜60質量%、
(B)キレート剤を1〜20質量%、
(C)界面活性剤を1〜40質量%、
(D)炭酸塩および/または硫酸塩を20〜80質量%を含有し、
且つ、前記(C)成分の界面活性剤が、炭素数12〜18の脂肪酸、炭素数12〜18のアルキル硫酸、炭素数12〜18のアルキルスルホン酸、炭素数12〜18のα−オレフィンスルホン酸、炭素数18〜24のアルキルベンゼンスルホン酸、およびこれらの塩、並びに炭素数が10〜18のアルコール1モルに対し、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドが1〜18モル付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする酸素系粉末洗浄剤組成物。


【公開番号】特開2011−26456(P2011−26456A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173793(P2009−173793)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(598028648)ディバーシー株式会社 (30)
【Fターム(参考)】