説明

酸転写性樹脂組成物、バイオチップ及びバイオチップの製造方法

【課題】酸の拡散の選択性に優れる樹脂組成物層を形成できる酸転写性樹脂組成物及びこれを用いたバイオチップの製造方法、並びにこのバイオチップの製造方法により形成されたバイオチップを提供する。
【解決手段】本酸転写性樹脂組成物は、(A)重合体と、(B)イミノスルホネート系感放射線性酸発生剤と、(C)N−t−ブトキシカルボニル基含有化合物とを含有する。また、本方法は、(a)酸に不安定な保護基を有する第1化合物からなる第1化合物層を基板上に結合させる工程、(b)前記第1化合物層上に本樹脂組成物をコーティングして樹脂組成物層を形成する工程、(c)前記樹脂組成物層を露光及び熱処理して、露光された部分に対応する前記第1化合物層を構成する前記第1化合物から前記保護基を除去する工程、(d)前記樹脂組成物層を除去する工程、及び(e)前記保護基が除去された第1化合物に第2化合物を結合させる工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸転写性樹脂組成物、及びこれを用いたバイオチップの製造方法、並びにそのバイオチップの製造方法により形成されたバイオチップに関する。更に詳しくは、酸の拡散の選択性に優れる酸転写性樹脂組成物及びこれを用いたバイオチップの製造方法、並びにそのバイオチップの製造方法により形成されたバイオチップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上で生体高分子等の高分子を合成する方法が注目され、特にヌクレオチド等をモノマーとして用いて異なる配列及び長さを有するプローブを1つの基板上にアレイ化して配列したチップ及びこれを製造する方法が広く検討されている。
基板上で高分子を合成する方法として、光に対して不安定な保護基を有するヌクレオチドモノマー等を配列し、マスクを介した露光により特定部分からこの保護基を解離させた後に、他のヌクレオチドモノマーを結合させる操作を繰り返す方法が下記特許文献1〜2に開示されている。
更に、半導体製造分野において、フォトリソ法を用いた微細パターン形成に際して利用される光酸発生剤やこれが含まれたレジストを高分子の合成に利用しようとする技術が下記特許文献3〜5に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5445934号明細書
【特許文献2】米国特許第5744305号明細書
【特許文献3】米国特許第5658734号明細書
【特許文献4】特開2005−099005号公報
【特許文献5】特表2003−501640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1〜5の方法によれば、基板上で高分子を種々合成することができるものの、より多くの種類の高分子をより高密度且つ正確に基板上に形成できる技術が更に求められている。
本発明は前記実情に鑑みてなされたものであり、酸の拡散の選択性に優れる酸転写性樹脂組成物及びこれを用いたバイオチップの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のとおりである。
1.(A)重合体と、
(B)イミノスルホネート系感放射線性酸発生剤と、
(C)N−t−ブトキシカルボニル基含有化合物と、
を含有することを特徴とする酸転写性樹脂組成物。
2.前記(B)イミノスルホネート系感放射線性酸発生剤の含有量が、前記(A)重合体100質量部に対して、10〜200質量部である上記1.に記載の酸転写性樹脂組成物。
3.前記(C)N−t−ブトキシカルボニル基含有化合物の含有割合が、前記(B)イミノスルホネート系感放射線性酸発生剤100質量部に対して、10〜200質量部である上記1.又は上記2.に記載の酸転写性樹脂組成物。
4.前記(A)重合体が、水酸基を有さない重合体である上記1.乃至3.のうちのいずれかに記載の酸転写性樹脂組成物。
5.前記重合体(A)が、酸により解離する基を有さない重合体である上記1.乃至4.のうちのいずれかに記載の酸転写性樹脂組成物。
6.前記重合体(A)が、側鎖に含窒素基を有する重合体である上記1.乃至5.のうちのいずれかに記載の酸転写性樹脂組成物。
7.前記重合体(A)は、下記式(1)に示す構成単位を含む上記1.乃至6.に記載の酸転写性樹脂組成物。
【化1】

〔式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基、炭素数3〜10の環状の炭化水素基を表す。また、R及びRは、互いに結合して3〜10員環の単環式ヘテロ環、又は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子の群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を介して結合して4〜10員環の単環式ヘテロ環を形成してもよい。〕
8.前記酸転写性樹脂組成物が、バイオチップ製造用である上記1.乃至7.のいずれかに記載の酸転写性樹脂組成物。
9.(a)酸に不安定な保護基を有する第1化合物からなる第1化合物層を基板上に結合させる第1化合物層形成工程、
(b)前記第1化合物層上に、上記8.に記載の酸転写性樹脂組成物の層をコーティングして酸転写性樹脂組成物層を形成する樹脂組成物層形成工程、
(c)前記酸転写性樹脂組成物層を露光及び熱処理して、露光された部分に対応する前記第1化合物層を構成する第1化合物から前記保護基を除去する保護基除去工程、
(d)前記酸転写性樹脂組成物層を除去する樹脂組成物層除去工程、及び
(e)前記保護基が除去された第1化合物に第2化合物を結合させる第2化合物結合工程、を含むことを特徴とするバイオチップの製造方法。
10.前記基板が、シリコン、二酸化ケイ素、ガラス、ポリプロピレン又はポリアクリルアミドからなる上記9.に記載のバイオチップの製造方法。
11.前記第2化合物が、ヌクレオチド、アミノ酸、単糖類又はこれから選択される2以上の化合物が結合された結合体である上記9.又は上記10.に記載のバイオチップの製造方法。
12.前記第2化合物は、酸に不安定な保護基を有する上記9.乃至11.のうちのいずれかに記載のバイオチップの製造方法。
13.上記9.乃至12.うちのいずれかに記載のバイオチップの製造方法により形成されたことを特徴とするバイオチップ。
【発明の効果】
【0006】
本発明の酸転写性樹脂組成物によれば、酸の拡散の選択性に優れる酸転写性樹脂組成物層を得ることができる。このため、この酸転写性樹脂組成物を用いることで、酸転写性樹脂組成物層内で発生された酸は、横方向への酸の拡散を抑制でき、他層(第1化合物層等)に対する意図しない酸の拡散を防止できる。その結果、得られるパターンの解像度を向上させることができ、バイオチップの製造に用いた場合、プローブを正確且つ精密に形成できる。
イミノスルホネート系感放射線性酸発生剤(B)の含有量が、重合体(A)100質量部に対して、10〜200質量部である場合は、酸転写性樹脂組成物層内で発生された酸の拡散をより良くコントロールすることができ、より優れた酸の拡散の選択性が得られる。
N−t−ブトキシカルボニル基含有化合物(C)の含有割合が、イミノスルホネート系感放射線性酸発生剤(B)100質量部に対して、10〜200質量部である場合は、酸転写性樹脂組成物層内で発生された酸の拡散をより良くコントロールすることができ、より優れた酸の拡散の選択性が得られる。
重合体(A)が、水酸基を有さない重合体である場合は、第1化合物等に対する変性等を防止することができる。
重合体(A)が、酸により解離する基を有さない重合体である場合は、酸転写性樹脂組成物層内で発生された酸の拡散をより良くコントロールすることができ、更に優れた酸の拡散の選択性が得られる。
重合体(A)が、側鎖に含窒素基を有する重合体である場合は、酸転写性樹脂組成物層内で発生された酸の拡散をより良くコントロールすることができ、更に優れた酸の拡散の選択性が得られる。
重合体Aが、上記式(1)に示す構成単位を含む場合は、樹脂組成物層内で発生された酸の拡散をより良くコントロールすることができ、更に優れた酸の拡散の選択性が得られる。
酸転写性樹脂組成物が、バイオチップ製造用である場合、プローブをより正確且つ精密に形成したバイオチップを得ることができる。
【0007】
本発明のバイオチップの製造方法によれば、酸の拡散の選択性に優れ、他層(第1化合物層等)に対する意図しない酸の拡散を防止でき、従来に比べて、プローブをより正確且つ精密に形成したバイオチップを得ることができる。加えて、プローブの集積率を従来に比べてより向上させたバイオチップを得ることができる。
基板の少なくとも表面がシリコン、二酸化ケイ素、ガラス、ポリプロピレン又はポリアクリルアミドからなる場合は、プローブをより正確且つ精密に形成したバイオチップを得ることができる。
第2化合物がヌクレオチド、アミノ酸、単糖類又はこれらから選択される2以上の化合物が結合された結合体である場合は、医薬分野で有用に活用できるバイオチップを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のバイオチップの製造方法を模式的に説明する説明図である。
【図2】本発明のバイオチップの製造方法を模式的に説明する説明図である。
【図3】本発明のバイオチップの製造方法を模式的に説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
【0010】
[1]バイオチップを製造するための樹脂組成物
本発明の酸転写性樹脂組成物は、(A)重合体と、(B)イミノスルホネート系感放射線性酸発生剤と、(C)N−t−ブトキシカルボニル基含有化合物と、を含有することを特徴とする。
【0011】
<1−1>重合体(A)
重合体(A)は、膜を形成することができる重合体である。この重合体(A)は、膜を形成できるものであれば、特に限定されない。重合体(A)としては、例えば、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、メタクリル酸メチル単量体単位を30質量%以上含むメタクリル酸メチル・スチレン共重合体等のスチレン系(共)重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリエチレン等のオレフィン系(共)重合体;ポリ塩化ビニル、エチレン・塩化ビニル重合体、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系(共)重合体;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、メタクリル酸メチル単量体単位を30質量%以上含む共重合体等のアクリル系(共)重合体;ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,12等のポリアミド系重合体(PA);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系重合体;ポリアセタール系(共)重合体;ポリカーボネート系(共)重合体;ポリアリレート系(共)重合体;ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンサルファイド;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系(共)重合体;ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のイミド系重合体;ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等のケトン系(共)重合体;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のスルホン系(共)重合体、更に、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール等が挙げられる。これらの重合体は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
また、重合体(A)は、水酸基を有さない重合体であることが好ましい。水酸基を有さない重合体とは、実質的に水酸基を有さない重合体である。前記「実質的に水酸基を有さない」とは、JIS K1557のプラスチック−ポリウレタン原料ポリオールの近赤外(NIR)分光法による水酸基価の求め方に準じて、波長2000〜2300nmのR−OH結合音、及び、1380〜1500nmのR−OH第1倍音の2つの波長域を用いて測定される重合体(A)についての水酸基価{重合体(A)1g中の水酸基と当量の水酸化カリウムの質量(mg)}が1以下であることを意味する。
【0013】
同様に、重合体(A)は、酸解離性基〔酸により解離する基(後述する「酸に不安定な保護基」)〕を有さない重合体が好ましい。酸解離性基を有さない重合体とは、実質的に酸解離性基を有さない重合体である。前記「酸解離性基を有さない重合体」とは、重合体の合成に用いる全単量体中、酸解離性基を有さない単量体が、95重量%以上用いて得られる重合体のことである。
【0014】
更に、重合体(A)は、側鎖に含窒素基を有する重合体(以下、「含窒素基含有重合体」ともいう。)であることが好ましい。重合体(A)が側鎖に含窒素基を有する重合体であることにより、酸発生剤(B)から酸が発生された際に、酸転写性樹脂組成物から形成された酸転写性樹脂組成物層(以下、「酸転写樹脂層」ともいう。)内における不要な酸の拡散を防止することができる(即ち、酸拡散防止樹脂として機能する)。このため、他層(第1化合物層等)に対する意図しない酸転写(酸の拡散)も防止できる。その結果、得られるパターンの解像度を向上させることができ、バイオチップの製造に用いた場合、プローブを正確且つ精密に形成できる。
【0015】
含窒素基含有重合体が有する含窒素基は、窒素原子を基内に含む置換基を意味する。この含窒素基としては、−NRの構造を有する基(以下、単に「アミン基」という)、アシド基、イミド基、ウレア基、ウレタン基、ピリジン基等が挙げられる。
これらのなかでは、アミン基が好ましい。前記アミン基のR及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基、炭素数3〜10の環状の炭化水素基を表す。また、前記アミン基のR及びRは互いに結合して、3〜10員環の単環式ヘテロ環、又は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子の群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を介して結合して4〜10員環の単環式ヘテロ環を形成してもよい。
【0016】
即ち、前記アミン基のR及びRが炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基である場合の前記アミン基のR及びRとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0017】
また、前記アミン基のR及びRが炭素数3〜10の環状の炭化水素基である場合の前記アミン基のR及びRがとしては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の脂環式基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、4−t−ブチルフェニル基、1−ナフチル基、ベンジル基等の芳香族基が挙げられる。
【0018】
更に、前記アミン基のR及びRが互いに結合して3〜10員環の単環式ヘテロ環(不飽和環であってもよく、飽和環であってもよい)を形成している場合、前記アミン基としては、アジリジノ基、アゼチノ基、ピロリジノ基、ピロール基、ピペリジノ基、ピリジノ基等が挙げられる。
【0019】
また、前記アミン基のR及びRが窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子の群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を介して結合して4〜10員環の単環式ヘテロ環(不飽和環であってもよく、飽和環であってもよい)を形成している場合、前記アミン基としては、モルホリノ基、チオモルホリノ基、セレノモルホリノ基、イソオキサゾリジノ基、イソオキサゾール基、イソチアゾリジノ基、イソチアゾール基、イミダゾリジノ基、ピペラジノ基、トリアジノ基等が挙げられる。
【0020】
前記アミノ基は、どのような形態で含窒素基含有重合体の側鎖に含まれてもよいが、特に下記式(1)で示す構成単位として、含窒素基含有重合体に含まれることが好ましい。
【化2】

〔式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基、炭素数3〜10の環状の炭化水素基を表す。また、R及びRは、互いに結合して3〜10員環の単環式ヘテロ環、又は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子の群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を介して結合して4〜10員環の単環式ヘテロ環を形成してもよい。〕
【0021】
前記式(1)に示す構成単位は、通常、下記式(2)で表される単量体(Am1)を用いて含窒素基含有重合体を重合することにより得ることができる。
【0022】
【化3】

〔式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基、炭素数3〜10の環状の炭化水素基を表す。また、R及びRは、互いに結合して3〜10員環の単環式ヘテロ環、又は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子の群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を介して結合して4〜10員環の単環式ヘテロ環を形成してもよい。〕
【0023】
前記式(2)におけるR及び/又はRとなる炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
即ち、前記式(2)においてR及び/又はRが炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基となる単量体(Am1)としては、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0024】
また、前記式(2)におけるR及び/又はRとなる炭素数3〜10の環状の炭化水素基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の脂環式基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、4−t−ブチルフェニル基、1−ナフチル基、ベンジル基等の芳香族基が挙げられる。
更に、前記式(2)におけるRとRとが、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子の群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を介して結合して4〜10員環の単環式ヘテロ環を形成している単量体(Am1)としては、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0025】
単量体(Am1)としては、前記各種単量体のなかでも、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−メタクリロイルモルホリンが好ましい。これらの好ましい単量体を用いて得られた含窒素基含有重合体は、酸発生剤(B)から発生された酸の酸転写樹脂層内における不要な拡散をより効果的に防止でき、他層に対する意図しない酸転写(酸の拡散)を防止できる。その結果、得られるパターンの解像度を向上させることができ、バイオチップの製造に用いた場合、プローブを正確且つ精密に形成できる。
【0026】
含窒素基が前記式(1)で表される構成単位として含窒素基含有重合体に含まれる場合、含窒素基含有重合体に占める式(1)で表される構成単位の割合は特に限定されないが、含窒素基含有重合体の全構成単位を100モル%とした場合に1〜50モル%であることが好ましく、3〜40モル%であることがより好ましく、5〜30モル%であることが特に好ましい。含窒素基含有重合体に占める前記式(1)で表される構成単位の割合が前記範囲内では、酸発生剤(B)から発生された酸の酸転写樹脂層内における不要な拡散をより効果的に防止でき、他層に対する意図しない酸転写(酸の拡散)を防止できる。その結果、得られるパターンの解像度を向上させることができ、バイオチップの製造に用いた場合、プローブを正確且つ精密に形成できる。
【0027】
含窒素基含有重合体は、前記式(1)で示される構成単位以外に他の構成単位を含むことができる。他の構成単位としては、下記式(3)に示す構成単位が好ましい。
【化4】

〔式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは1価の有機基を表す。〕
【0028】
前記式(3)に示す構成単位は、通常、下記式(4)で表される単量体(Am2)を用いることにより、前記式(3)に示す構成単位を含む重合体(A)を得ることができる。
【0029】
【化5】

〔式(4)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは1価の有機基を表す。〕
【0030】
前記式(4)におけるRの1価の有機基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基;
【0031】
フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,4−キシリル基、2,6−キシリル基、3,5−キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基;
【0032】
ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシシクロペンチル基、4−ヒドロキシシクロヘキシル基等の炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基;
【0033】
シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、1−シアノプロピル基、2−シアノプロピル基、3−シアノプロピル基、1−シアノブチル基、2−シアノブチル基、3−シアノブチル基、4−シアノブチル基、3−シアノシクロペンチル基、4−シアノシクロヘキシル基等の炭素数2〜9のシアノアルキル基及びシアノ基等の窒素原子含有有機基;
【0034】
シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状炭化水素基;
ボルニル基、イソボルニル基等の橋かけ環式炭化水素基等の脂環式基;が挙げられる。
【0035】
単量体(Am2)としては、(メタ)アクリレート化合物が好ましく、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレート化合物は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらの(メタ)アクリレート化合物のなかでは、メチルメタクリレートが特に好ましい。
【0036】
含窒素基含有重合体中に占める前記式(3)で表される構成単位の割合は、特に限定されないが、含窒素基含有重合体の全構成単位を100モル%とした場合に5〜99モル%であることが好ましく、10〜97モル%であることがより好ましく、15〜95モル%であることが特に好ましい。含窒素基含有重合体に占める前記式(3)で表される構成単位の割合が前記範囲内では、酸発生剤(B)から発生された酸の酸転写樹脂層内における不要な酸の拡散を防止でき、他層に対する意図しない酸転写(酸の拡散)を防止できる。その結果、得られるパターンの解像度を向上させることができ、バイオチップの製造に用いた場合、プローブを正確且つ精密に形成できる。
【0037】
含窒素基含有重合体は、前記式(1)に示す構成単位、及び、前記式(3)に示す構成単位以外の他の構成単位を含むことができる。他の構成単位の種類は特に限定されず本発明の目的を阻害しない範囲であればよい。この他の構成単位を含む場合、その割合は、特に限定されないが、含窒素基含有重合体の全構成単位を100モル%とした場合に30モル%以下であることが好ましく、1〜10モル%であることがより好ましい。この範囲内では本発明の目的を阻害することがない。
【0038】
また、前記式(1)に示す構成単位、及び、前記式(3)に示す構成単位、の両方が含まれる場合であって、且つ、他の構成単位が含有される場合、前記式(1)に示す構成単位、及び、前記式(3)に示す構成単位、の各々の含有割合は、前記式(1)に示す構成単位と前記式(3)に示す構成単位との合計を100モル%とした場合に、前記式(1)に示す構成単位は1〜50モル%であることが好ましく、3〜40モル%であることがより好ましく、5〜30モル%であることが特に好ましい。この範囲では、酸発生剤(B)から発生された酸の酸転写樹脂層内における不要な拡散をより効果的に防止でき、他層に対する意図しない酸転写(酸の拡散)を防止できる。その結果、得られるパターンの解像度を向上させることができ、バイオチップの製造に用いた場合、プローブを正確且つ精密に形成できる。
【0039】
尚、含窒素基含有重合体の重合については、側鎖に含窒素基を有する重合体が得られればよく特に限定されず、例えば、塊状重合、溶液重合、沈澱重合、乳化重合、懸濁重合、塊状−懸濁重合等の適宜の重合形態で実施できる。
【0040】
また、重合体(A)の分子量については特に限定はなく、適宜選定することができるが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量分子量(以下、「Mw」という。)は、通常、1,000〜500,000であり、好ましくは2,000〜400,000であり、更に好ましくは3,000〜300,000である。
更に、重合体(A)の前記Mwと、GPCで測定したポリスチレン換算数分子量(以下、「Mn」という。)との比(Mw/Mn)についても特に限定はなく、適宜選定できるが、通常、1〜10であり、好ましくは1〜8であり、更に好ましくは1〜3である。
【0041】
<1−2>イミノスルホネート系感放射線性酸発生剤(B)
上記「(B)イミノスルホネート系感放射性酸発生剤」(以下、単に「酸発生剤(B)」ともいう)は、下記式(5)で表される構造を有し、且つ露光により酸を発生する感放射性能を有する化合物である。
【化6】

〔式(5)中、Rは1価の有機基であり、Rは2価の有機基である。このR及びRは、各々、炭素原子以外の原子を有することができる。炭素原子以外の原子としては、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)、セレン原子等が挙げられる。〕
【0042】
更に、このイミノスルホネート系感放射線性酸発生剤(B)における前記Rの構造は特に限定されないものの、前記式(5)内の窒素原子と直接結合されたチオフェン環構造を有する基であることが好ましい。即ち、下記式(6)で表される化合物が好ましい。
【0043】
【化7】

〔式(6)中、Rは1価の有機基であり、Rは2価の有機基である。このR及びRは、各々、炭素原子以外の原子を有することができる。炭素原子以外の原子としては、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)、セレン原子等が挙げられる。〕
更に、前記式(6)におけるRの構造は2価の有機基であること以外特に限定されないが、ベンゼン環構造及びニトリル基を有することがより好ましく、酸発生剤(B)として下記式(7)で表される化合物が特に好ましい。
【化8】

〔式(7)中、Rは1価の有機基である。Rは炭素原子以外の原子を有することができる。炭素原子以外の原子としては、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)、セレン原子等が挙げられる。〕
【0044】
更に、前記式(7)におけるRとしての1価の有機基は、特に限定されないが、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数6〜20の芳香族基、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基、又は、これらの基の少なくとも一つの水素原子が、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基若しくは炭化水素基以外の極性基に置換された有機基である。
【0045】
このうち、前記式(7)におけるRとしての炭素数1〜14のアルキル基は、置換基を有してもよく、有さなくてもよいが、これらのうちでは置換基を有さないことが好ましい。
尚、置換基を有する場合、その置換基としては、例えば、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、ヒドロキシ基、カルボキシル基、オキソ基(=O)、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルキルオキシカルボニル基等が挙げられ、2つの以上の置換基を有する場合にあっては、各置換基は同じであってもよく異なっていてもよい。
【0046】
更に、前記式(7)におけるRとしての炭素数1〜14のアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分枝アルキル基であってもよいが、直鎖アルキル基であることがより好ましい。また、前記炭素数は1〜14であればよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n−,i−)、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基等が挙げられる。これらのなかでも、炭素数は3〜12が好ましく、4〜10がより好ましく、特にn−プロピル基及びn−オクチル基が好ましい。
前記式(7)におけるRとしてn−プロピル基を有する酸発生剤(B)は、下記式(8)で示される。
【化9】

前記式(7)におけるRとしてn−オクチル基を有する酸発生剤(B)は、下記式(9)で示される。
【化10】

【0047】
前記式(7)におけるRとしての炭素数6〜20の芳香族基は、1つ又は2つ以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前記式(7)のRの説明で挙げた置換基をそのまま適用できる他、加えて、炭素数1〜5のアルキル基が挙げられる。即ち、例えば、前記式(7)におけるRとしての炭素数6〜20の芳香族基には、トリル基(p−、m−、o−)、キシリル基(−2,4、−3,5等)、メシチル基(−2,4,6等)、ベンジル基、クメニル基(p−、m−、o−)、メトキシフェニル基(p−、m−、o−)等が挙げられる。これらのなかでも、p−トリル基、2,4−キシリル基及びベンジルが好ましく、特にp−トリル基が好ましい。
前記式(7)におけるRとしてp−トリル基を有する酸発生剤(B)は、下記式(10)で示される。
【化11】

【0048】
上記式(7)におけるRとしての上記炭素数4〜20の脂環式基は、不飽和結合を含んでいてもよく含まなくてもよい。更に、置換基を有してもよく有さなくてもよい。置換基を有する場合の置換基としては、前記炭素数1〜14のアルキル基に関する置換基及びメチル基及びエチル基等が挙げられる。
更に、この脂環式基の脂環部は、単環であってもよく多環であってもよく、更に、多環にあっては縮合環であってもよく非縮合環であってもよい。また、この脂環部は、有橋式であってもよく非有橋式であってもよい。
この脂環式基としては、ノルボルナン骨格を有する脂環式基、ノルボルネン骨格を有する脂環式基、トリシクロデカン骨格を有する脂環式基、テトラシクロドデカン骨格を有する脂環式基、アダマンタン骨格を有する脂環式基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基等が挙げられる。
これらのなかでも、ノルボルナン骨格を有する脂環式基が好ましく、更には、ノルボルナノン骨格を有する脂環式基がより好ましく、特にカンファー骨格を有する脂環式基が好ましい。
【0049】
これまでに述べた酸発生剤(B)は、放射線に対して露光することにより酸を発生させることができるものであるが、感放射性が発現される放射線種は特に限定されず、例えば、紫外線、遠紫外線(KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー等を含む)、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等を適宜利用できる。
【0050】
また、酸発生剤(B)の含有量は特に限定されないが、通常、前記重合体(A)100質量部に対して10〜200質量部が含有される。更に、酸発生剤(B)と、後述のN−t−ブトキシカルボニル基含有化合物(C)との組合せによる優れた酸転写の選択性(特に、露光された部分以外の樹脂膜内での横方向への酸拡散の抑制)及び優れた除去特性が得られるために、この含有量は10〜100質量部であることが好ましく、10〜80質量部であることがより好ましく、10〜50質量部であることが特に好ましい。
【0051】
本発明の酸転写性樹脂組成物には、上記酸発生剤(B)以外にも他の酸発生剤を含むことができる。他の酸発生剤としては、イミドスルホネート基含有化合物、オニウム塩化合物(チオフェニウム塩化合物を含む)、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、ジアゾメタン化合物、スルホンイミド化合物等を用いることができる。この酸発生剤(B)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
上記イミドスルホネート基含有化合物は、下記式(11)に示す化合物である。
【化12】

〔式(11)中、Rは炭素数1〜14のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数4〜20の脂環式基を表し、R及びRは、互いに結合して環構造をなすか、又は、各々独立して、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、もしくは炭素数4〜20の脂環式基を表す。〕
【0053】
前記式(11)におけるR及びRは、互いに結合してナフタレン環構造をなすことが好ましい。更に、前記式(11)におけるRとしての炭素数1〜14のアルキル基、及び炭素数4〜20の脂環式基、の各々には、前記式(7)におけるRとしての各々の説明をそのまま適用できる。また、前記式(11)におけるRとしての炭素数6〜20のアリール基には、トリル基(p−、m−、o−)、キシリル基(−2,4、−3,5等)、メシチル基(−2,4,6等)、ベンジル基、クメニル基(p−、m−、o−)等が挙げられる。これらのなかでも、Rとしての炭素数1〜14のアルキル基にはメチル基が好ましく、Rとしての炭素数6〜20のアリール基にはトリル基(特にp−トリル基)が好ましく、Rとしての炭素数4〜20の脂環式基にはカンファー骨格を有する脂環式基が好ましい。
【0054】
前記オニウム塩化合物としては、4,7−ジ−n−ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウム塩化合物、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム塩化合物、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム塩化合物、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム塩化合物等のチオフェニウム塩化合物;ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩化合物、ジフェニルヨードニウム塩化合物等のヨードニウム塩化合物;トリフェニルスルホニウム塩化合物、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム塩化合物、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム塩化合物、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム塩化合物等のスルホニウム塩化合物;ホスホニウム塩化合物;ジアゾニウム塩化合物;ピリジニウム塩化合物;等が挙げられる。
【0055】
前記ハロゲン含有化合物としては、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有複素環式化合物等が挙げられる。具体的には(トリクロロメチル)−s−トリアジン誘導体等が挙げられる。
前記ジアゾケトン化合物としては、1,3−ジケト−2−ジアゾ化合物、ジアゾベンゾキノン化合物、ジアゾナフトキノン化合物等が挙げられる。
前記スルホン化物としては、β−ケトスルホン、β−スルホニルスルホンや、これらの化合物のα−ジアゾ化合物等が挙げられる。
前記スルホン酸化合物としては、アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネート等が挙げられる。
前記ジアゾメタン化合物としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル−p−トルエンスルホニルジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル−1,1−ジメチルエチルスルホニルジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
【0056】
前記スルホンイミド化合物としては、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−5,6−オキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)−5,6−オキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)−5,6−オキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.1.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)−5,6−オキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(10−カンファ−スルホニルオキシ)ナフチルイミド等が挙げられる。
【0057】
これらの酸発生剤(B)以外の他の酸発生剤を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、前記重合体(A)100質量部に対して200質量部以下であることが好ましく、0.1〜100質量部がより好ましく、0.1〜50質量部が更に好ましい。
【0058】
<1−3>N−t−ブトキシカルボニル基含有化合物(C)
上記「(C)N−t−ブトキシカルボニル基含有化合物」(以下、単に「酸拡散制御剤(C)」ともいう)は、紫外線等の露光により、酸発生剤(B)から生じる酸の不要な拡散を抑制する成分である。
このような酸拡散制御剤(C)を配合することにより、酸発生剤(B)から発生された酸の酸転写樹脂層内における不要な酸の拡散をより効果的に防止でき、他層に対する意図しない酸転写(酸の拡散)を防止できる。その結果、得られるパターンの解像度を向上させることができ、バイオチップの製造に用いた場合、プローブを正確且つ精密に形成できる。
【0059】
前記N−t−ブトキシカルボニル基含有化合物としては、例えば、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、(S)−(−)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N−t−ブトキシカルボニルピペラジン、N−t−ブトキシカルボニルピペリジン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’N’−テトラ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール等のN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物のほか、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−アセチル−1−アダマンチルアミン、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)等が挙げられる。これらのN−t−ブトキシカルボニル基含有化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0060】
この酸拡散制御剤(C)の配合量は、酸発生剤(B)100質量部に対して、10〜200質量部であることが好ましく、より好ましくは20〜180質量、更に好ましくは30〜150質量部である。この酸拡散制御剤の配合量が前記範囲内にあると、酸発生剤(B)から発生された酸の酸転写樹脂層内における不要な拡散を防止でき、他層に対する意図しない酸転写(酸の拡散)を防止して得られるパターンの解像度を向上させることができる。
【0061】
また、本発明の酸転写性樹脂組成物には、前記重合体(A)、前記酸発生剤(B)及び前記酸拡散制御剤(C)以外に他の成分を含有できる。他の成分としては、溶剤(D)が挙げられる。溶剤(D)が含有されることで酸転写性樹脂組成物全体の状態を自在に制御することができ、特に任意の粘度を有する液状の酸転写性樹脂組成物とすることができる。
【0062】
前記溶剤(D)の種類は特に限定されないが、例えば、水及び/又は有機溶剤等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記有機溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ブチルプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、tert−ブチル−メチルエーテル、tert−ブチルエチルエーテル、tert−ブチルプロピルエーテル、ジ−tert−ブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソアミルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、シクロペンチルエチルエーテル、シクロヘキシルエチルエーテル、シクロペンチルプロピルエーテル、シクロペンチル−2−プロピルエーテル、シクロヘキシルプロピルエーテル、シクロヘキシル−2−プロピルエーテル、シクロペンチルブチルエーテル、シクロペンチル−tert−ブチルエーテル、シクロヘキシルブチルエーテル、シクロヘキシル−tert−ブチルエーテル等のアルキルエーテル類;
【0063】
1−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−プロパノール、ネオペンチルアルコール、tert−アミルアルコール、イソアミルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルキルアルコール類;
デカン、ドデカン、ウンデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類等が挙げられる。
【0064】
この溶剤(D)は、本発明の酸転写性樹脂組成物において、前記重合体(A)を100質量部とした場合に、通常、10〜10000質量部含有され、20〜8000質量部が好ましく、30〜6000質量部がより好ましく、40〜4000質量部が更に好ましい。
更に、溶剤(D)を含む場合の本酸転写性樹脂組成物全体の粘度(B型粘度計及びNo.5ローターを用いてJIS Z8803に準拠)は特に限定されず、酸転写樹脂層を形成する各種方法に適宜の粘度とすればよいが、例えば、温度25℃おける粘度を1〜100mPa・sとすることができる。この粘度は2〜80mPa・sが好ましく、3〜50mPa・sがより好ましい。
【0065】
また、本発明の酸転写性樹脂組成物には、上記溶剤(D)以外にも他の成分を含有できる。他の成分としては、界面活性剤(E)が挙げられる。界面活性剤(E)としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、含フッ素界面活性剤等が挙げられる。
【0066】
具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等の他、NBX−7、NBX−8、NBX−15(商品名、ネオス社製)、SH8400 FLUID(商品名、Toray Dow Corning Silicone Co.製)、KP341(商品名、信越化学工業株式会社製)、ポリフローNo.75,同No.95(商品名、共栄社化学株式会社製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(商品名、トーケムプロダクツ株式会社製)、メガファックスF171、F172、F173、F471、R−07、R−08(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)、フロラードFC430、FC431(商品名、住友スリーエム株式会社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC−101、SC−102、SC−103、SC−104、SC−105、SC−106(商品名、旭硝子株式会社製)等を挙げることができる。尚、これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
界面活性剤(E)を用いる場合、その量は特に限定されないが、通常、前記重合体(A)の全量100質量部に対して0.01〜0.5質量部であり、好ましくは0.02〜0.1質量部である。
更に、その他、本発明の酸転写性樹脂組成物には、増感剤、架橋剤、ハレーション防止剤、保存安定化剤、着色剤、可塑剤、消泡剤等を適宜配合することができる。
【0067】
本発明の酸転写性樹脂組成物の用途は、特に限定されない。具体的には、バイオチップ及び集積回路素子等の製造用の酸転写性樹脂組成物として用いることができる。本発明の酸転写性樹脂組成物は、酸の拡散選択性に優れる酸転写樹脂層を形成できることから、バイオチップ製造用の樹脂組成物として好適に用いることができる。本発明の酸転写性樹脂組成物をバイオチップ製造用の樹脂組成物とした場合、バイオチップのプローブを正確且つ精密に形成することができる。
【0068】
[2]バイオチップの製造方法
本発明のバイオチップの製造方法は、
(a)酸に不安定な保護基を有する第1化合物からなる第1化合物層を基板上に結合させる第1化合物層形成工程、
(b)前記第1化合物層上に、前記の酸転写性樹脂組成物の層をコーティングして酸転写性樹脂組成物層を形成する樹脂組成物層形成工程、
(c)前記酸転写性樹脂組成物層を露光及び熱処理して、露光された部分に対応する前記第1化合物層を構成する第1化合物から前記保護基を除去する保護基除去工程、
(d)前記酸転写性樹脂組成物層を除去する樹脂組成物層除去工程、及び
(e)前記保護基が除去された第1化合物に第2化合物を結合させる第2化合物結合工程、を含むことを特徴とする。
【0069】
前記「(a)第1化合物層形成工程」は、図1に例示されるように、酸に不安定な保護基Pを有する第1化合物からなる第1化合物層20を基板10上に直接的又は間接的に結合させる工程PR1である。
【0070】
前記「第1化合物」は、酸に不安定な保護基(以下、単に「保護基」ともいう)を有する化合物である。第1化合物は保護基を有すればよく、他の構成は特に限定されず、例えば、下記(1)〜(3)に例示される化合物が挙げられる。即ち、
(1)基板表面と第2化合物とを結合させるためのカップリング化合物。より具体的には、保護基で保護された第2化合物との結合手及び基板表面との結合手を有する化合物、即ち例えば、保護基とシリル基とを有する化合物等。
(2)保護基を導入するための保護基導入化合物。より具体的には、アミノ基やヒドロキシル基を保護する保護基を導入するための化合物、即ち例えば、アミノ基にペプチド結合できる基と保護基とを有する化合物等。
(3)第2化合物を基板表面から離間させるためのスペーサ化合物。即ち例えば、アルキル鎖によって離間されたアミノ基にペプチド結合できる基及び保護基を有する化合物等。
【0071】
前記例示した第1化合物のうち、(1)カップリング化合物は、通常、基板表面に対して直接的に結合されるが、他の化合物を介して基板表面に間接的に結合させてもよい。また、(2)保護基導入化合物及び(3)スペーサ化合物は、通常、他の化合物を介して基板表面と間接的に結合される。これらの(2)保護基導入化合物及び(3)スペーサ化合物と基板表面との間にはどのような化合物を介してもよいが、例えば、カップリング剤(カップリング化合物)を介することができる。
【0072】
このうち(2)保護基導入化合物としては、保護基として有するオメガ−アミノカプロン酸系化合物のようなアミノアルキルカルボン酸等が挙げられる。このような化合物としては、6−N−t−ブトキシカルボニルアミノカプロン酸、4−N−t−ブトキシカルボニルアミノブタン酸、5−N−t−ブトキシカルボニルアミノペンタン酸、7−N−t−ブトキシカルボニルアミノヘプタン酸等のt−ブトキシカルボニル基を保護基として有するカルボン酸誘導体類等が挙げられる。
また、第1化合物として前記(2)保護基導入化合物を用いる際に、基板と第1化合物(保護基導入化合物)とを接続するカップンリグ剤(カップリング化合物)としては、アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基及びシリル基を有するカップリング剤や、ヒドロキシル基とシリル基とを有するカップリング剤が挙げられる。
【0073】
その他、第1化合物としては、後述する第2化合物として挙げた各種化合物のうちの保護基を有する化合物や、後述する第2化合物として挙げた各種化合物に保護基が導入された誘導体などを用いることもできる。
また、第1化合物の大きさは特に限定されないものの、通常、分子量において10〜1000が好ましい。
【0074】
前記「酸に不安定な保護基」は、酸の存在下で解離する基(酸解離性基)であり、より具体的には酸性の基であり、更に詳しくは、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、酸性を有する水酸基等の酸性基中の水素原子を置換する基を意味する。この保護基としては、下記式(12)で表される基、t−ブトキシカルボニル基、ジメトキシトリチル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、(チオテトラヒドロピラニルスルファニル)メチル基、(チオテトラヒドロフラニルスルファニル)メチル基、アルコキシ置換メチル基、アルキルスルファニル置換メチル基、アセタール基、及び、ヘミアセタール基等を挙げることができる。
【0075】
【化13】

〔式(12)中、R〜Rは、各々独立に、炭素数1〜14の直鎖状のアルキル基、炭素数1〜14の分岐状のアルキル基、炭素数3〜20の非有橋式の1価の脂環式炭化水素基、炭素数3〜20の有橋式の1価の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜20の1価の芳香族基を示すか、或いは、R〜Rのうちの何れか2つが結合して、炭素数3〜20の非有橋式の2価の脂環式炭化水素基、又は炭素数3〜20の有橋式の2価の脂環式炭化水素基を形成すると共に、R〜Rのうちの残りの1つが、炭素数1〜14の直鎖状のアルキル基、炭素数1〜14の分岐状のアルキル基、炭素数3〜20の非有橋式の1価の脂環式炭化水素基、炭素数3〜20の有橋式の1価の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜20の1価の芳香族基を示し、これらの各基は置換されていてもよい。〕
【0076】
式(12)で表される基について説明する。R〜Rの炭素数1〜14の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、I-プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基等を挙げることができる。
【0077】
式(12)において、R〜Rの炭素数3〜20の非有橋式若しくは有橋式の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基;ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、テトラシクロ[4.2.0.12,5.17,10]ドデシル基、アダマンチル基等を挙げることができる。
【0078】
式(12)において、R〜Rの炭素数6〜20の1価の芳香族基は、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0079】
式(12)において、R〜Rを形成する前記基は、各々独立に、置換基により置換されていてもよい。この置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、オキソ基(=O)、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子等)、炭素数1〜14の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等)、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等)、炭素数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシアルキル基(例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、t−ブトキシメチル基等)、炭素数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシアルコキシル基(例えば、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、t−ブトキシメトキシ基等)、炭素数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキルカルボニルオキシ基(例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基等)、炭素数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等)、炭素数2〜14の直鎖状若しくは分岐状のシアノアルキル基(例えば、シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、4−シアノブチル基等)、炭素数1〜14の直鎖状若しくは分岐状のフルオロアルキル基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等)等の1個以上或いは1種以上を挙げることができる。
【0080】
式(12)に示される保護基としては、下記式(13)で示される基を挙げることができる。
【化14】

〔式(13)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、オキソ基(=O)、シアノ基、炭素数1〜14の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシアルキル基、炭素数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシアルコキシル基、炭素数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜14の直鎖状若しくは分岐状のシアノアルキル基、又は、炭素数1〜14の直鎖状若しくは分岐状のフルオロアルキル基を示す。〕
尚、式(13)におけるR〜Rの説明としては、式(12)における置換基の説明をそのまま適用できる。
【0081】
また、前記アルコキシ置換メチル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、n−ペンチルオキシメチル基、n−ヘキシルオキシメチル基、ベンジルオキシメチル基等を挙げることができる。
【0082】
前記アルキルスルファニル置換メチル基としては、例えば、メチルスルファニルメチル基、エチルスルファニルメチル基、メトキシエチルスルファニルメチル基、n−プロピルスルファニルメチル基、n−ブチルスルファニルメチル基、n−ペンチルスルファニルメチル基、n−ヘキシルスルファニルメチル基、ベンジルスルファニルメチル基等を挙げることができる。
【0083】
また、前記保護基は、どのような形態で第1化合物内に含まれてもよいが、保護基は第1化合物内において、酸素原子に結合されて存在することが好ましい。即ち、第1化合物は、酸素原子を有すると共に、この酸素原子を介して結合された保護基を有することが好ましい。この場合、酸転写樹脂膜から発生した酸の作用により、円滑に第1化合物等から保護基を除去できる。
【0084】
前記「基板」の種類は特に限定されず、無機材料からなってもよく、有機材料からなってもよく、これらの複合材料からなってもよい。また、基板は、その表面側と他面側とが異なる材料からなってもよい。この基板材料としては、例えば、シリコン、二酸化ケイ素及びガラス(ホウケイ酸ガラス、表面改質ガラス、石英ガラス等を含む)等のケイ素を主成分とする無機材料が挙げられる。また、ポリプロピレン及びポリアクリルアミド(アクリルアミドによって表面が活性化されたポリアクリルアミドを含む)等の有機材料が挙げられる。この他、不安定な保護基を有する分子の層を固定化するのに適した反応性部位を有する表面を有する当該分野において既知の他の基板を適宜用いることができる。
【0085】
前記第1化合物層は、どのようにして基板上に結合させてもよいが、通常、第1化合物を含む液体を基板(表面処理されていない基板及び表面処理された基板を含む)表面に塗布して、第1化合物と基板表面とを反応させて結合させる。この際の塗布方法等は特に限定されず、従来公知の回転塗布、流延塗布、ロール塗布及び印刷等の種々の方法を用いることができる。
【0086】
前記「(b)樹脂組成物層形成工程」は、図1に例示されるように、第1化合物層20上に前記本発明の酸転写性樹脂組成物をコーティングして酸転写性樹脂組成物層(即ち、酸転写樹脂層)30を形成する工程PR2である。
【0087】
この酸転写性樹脂組成物のコーティング手段は、特に限定されないが、例えば、回転塗布、流延塗布、ロール塗布及び印刷等の適宜の塗布手段が挙げられる。
更に、この酸転写性樹脂組成物を塗布した後、必要に応じて、プレベーク(PB)することによって塗膜中の溶剤を揮発させることで酸転写樹脂層を形成してもよい。このプレベークの加熱条件は、酸転写性樹脂組成物の配合組成によって適宜選択されるが、加熱温度は、通常、30〜150℃程度、好ましくは50〜130℃である。更に、加熱時間は、通常、30〜300秒間、好ましくは60〜180秒間である。
また、酸転写樹脂層の厚みは特に限定されないが、通常、1〜10000nmとすることが好ましく、5〜800nmとすることがより好ましく、10〜500nmとすることが更に好ましい。
【0088】
前記「(c)保護基除去工程」は、図1及び図2に例示されるように、酸転写樹脂層30を露光及び熱処理して、露光された部分に対応する第1化合物層30を構成する第1化合物から保護基Pを除去する工程PR3及びPR4である。この保護基除去工程には、通常、酸転写樹脂層30に対して放射線を露光する露光工程PR3と、露光により酸転写樹脂層30内に生じた酸を第1化合物層20へと転写(拡散)する転写工程PR4とを備える。
【0089】
このうち露光工程PR3は、マスク50を介して酸転写樹脂層30に露光し、酸転写樹脂層30内で酸を発生させる工程である。これにより図1に例示するように、酸転写樹脂層30の露光された部位が酸発生部位31となる。
露光に使用される放射線の種類は特に限定されず、酸転写樹脂層30に含まれる酸発生剤(B)の種類に応じて、紫外線、遠紫外線(KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー等を含む)、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択される。更に、露光量等も酸転写樹脂層30に含まれる酸発生剤(B)の種類に応じて適宜選択される。
【0090】
また、酸転写工程PR4は、酸転写樹脂層30に発生した酸を第1化合物層20へ転写する工程である。これにより図2に例示するように、酸発生部位31に対応した第1化合物層20の一部が酸転写部位21(保護基が解離された第1化合物の残基からなる部位)となる。
この酸を転写する方法は特に限定されないが、具体的には、(1)加熱により転写する方法、(2)常温において放置することによって転写する方法、(3)浸透圧を利用して転写する方法等が挙げられる。これらの方法は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよいが、これらの中でも(1)加熱により転写する方法が転写効率に優れるため好ましい。
加熱により転写を行う場合の加熱条件は、特に限定されないが、加熱温度は、50〜200℃が好ましく、70〜150℃が更に好ましい。更に、加熱時間は、30〜300秒間が好ましく、60〜180秒間が更に好ましい。
また、加熱により転写を行う場合は、上記加熱条件により1回の加熱で完了してもよいが、結果的に上記加熱条件と同様の結果となるように、2回以上の加熱を行うこともできる。
【0091】
尚、前記(2)常温において放置することによって転写する方法とは、加熱を行わず、通常、温度20〜30℃の常温の環境に放置することで、酸転写樹脂層30内に発生された酸を自然に第1化合物層20へと拡散させて転写する方法である。
更に、前記(3)浸透圧を利用して転写する方法とは、酸の濃度差を利用することによって、酸転写樹脂層30と第1化合物層20との間に酸成分の浸透圧差を生じさせることで、自然拡散よりも高い拡散速度で酸転写樹脂層30内の酸を第1化合物層20へと拡散させる転写する方法である。
【0092】
前記「(d)樹脂組成物層除去工程」は、図2に例示されるように樹脂組成物層30を除去する工程PR5である。即ち、酸転写樹脂層30を除去すると共に、その層下に酸が転写された第1化合物層20を露出させる工程である。
酸転写樹脂層30の除去はどのような方法で行ってもよいが、通常、酸転写樹脂層30を有機溶剤により溶解させて行う。この有機溶剤は、酸転写樹脂層30を溶解させるものの、酸が転写された第1化合物層20を溶解させないものである。
【0093】
このような有機溶剤は、酸転写樹脂層30及び第1化合物層20の各樹脂組成によって適宜選択することが好ましく、第1化合物層20が溶解されず且つ酸転写樹脂層30が溶解される有機溶剤であれば限定されないが、具体的には、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン及びピリジン等が挙げられる。これらの有機溶剤は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0094】
前記「(e)第2化合物結合工程」は、図2に例示されるように、保護基Pが除去された第1化合物(基板10に結合されており且つ保護基Pが除去された第1化合物の残基)に第2化合物を結合させる工程PR6である。即ち、第1化合物層20のうち酸転写されて第1化合物の保護基Pが解離された部位21上に、第2化合物からなる部位41を積層する工程である。
【0095】
前記「第2化合物」の種類は特に限定されず種々の化合物を用いることができる。この第2化合物としては、例えば、(1)ヌクレオチド{ヌクレオチド、デオキシヌクレオチド及びこれらを除く類似体(合成ヌクレオチド類似体、合成デオキシヌクレオチド類似体等)を含む}、(2)アミノ酸、(3)単糖類、又は(4)これらヌクレオチド、アミノ酸及び単糖類から選択される2以上の化合物が結合された結合体、(5)ペプチド核酸(PNA)を合成するためのペプチド核酸形成用化合物(ペプチド核酸モノマー)、(6)各種の端部形成用化合物等が挙げられる。これらの第2化合物は保護基及び活性基を有していてもよい。また、これらの第2化合物は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0096】
前記(1)ヌクレオチドとしては、ヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、合成ヌクレオチド類似体が挙げられる。
このうちヌクレオチドとしては、アデノシンホスフェート、グアノシンホスフェート、シチジンホスフェート、ウリジンホスフェート等が挙げられる。
また、デオキシヌクレオチドとしては、デオキシアデノシンホスフェート、デオキシグアノシンホスフェート、デオキシチジンホスフェート及びデオキシチミジンホスフェート等が挙げられる。
更に、合成ヌクレオチド類似体としては、2’−4’架橋ヌクレオチド類似体、3’−4’架橋ヌクレオチド類似体、5’−アミノ−3’,5’架橋ヌクレオチド類似体等の架橋型ヌクレオチド類似体等が挙げられる。
【0097】
前記(2)アミノ酸(L体及びD体を含む)としては、アルキル鎖を持つグリシン・アラニン・バリン・ロイシン・イソロイシン、ヒドロキシ基を持つセリン・トレオニン、硫黄を含むシステイン・メチオニン、アミド基を持つアスパラギン・グルタミン、イミノ基を持つプロリン、芳香族基を持つフェニルアラニン・チロシン・トリプトファン等が挙げられる。
前記(3)単糖類としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン等が挙げられる。
前記(4)の結合体としては、ヌクレオチド同士の結合体であるオリゴヌクレオチド、アミノ酸同士の結合体であるペプチド及び蛋白質、等が挙げられる。
【0098】
前記ペプチド核酸形成用化合物としては、N−(2−t−ブチルオキシカルボニル−アミノエチル)−N−チミン−1−イルアセチル)グリシン、N−(N−4−(ベンジルオキシカルボニル)シトシン−1−イル)アセチル−N−(2−t−ブチルオキシカルボニル−アミノエチル)グリシン、N−(N−6−(ベンジルオキシカルボニル)アデニン−9−イル)アセチル−N−(2−t−ブチルオキシカルボニル−アミノエチル)グリシン及びN−(N−4−(ベンジルオキシカルボニル)グアニン−1−イル)アセチル−N−(2−t−ブチルオキシカルボニル−アミノエチル)グリシン等が挙げられる。
【0099】
前記(5)端部形成用化合物としては、分子鎖末端を形成する化合物であり、各種保護基を有する保護基形成用化合物、各種キャッピング用化合物及び標識用化合物等が含まれる。このうち標識用化合物としては、各種蛍光標識用化合物(フロレシンイソチオシアネート等のフルオレセイン誘導体等)及び放射性同位体標識用化合物が含まれる。
【0100】
更に、前記第2化合物が有することができる保護基としては、前記第1化合物における酸に不安定な保護基がそのまま適用できる他、光に不安定な保護基を用いることもできる。
また、前記第2化合物が有することができる活性基としては、ホスホルアミダイト基、H−ホスホネート、ホスホジエステル、ホスホトリエステル及びリン酸トリエステル等の遊離の水酸基と反応し得るリン含有基が挙げられる。即ち、例えば、活性化されたヌクレオチドとしては、ホスホルアミダイトヌクレオチド化合物が挙げられる。その他、光化学的活性基及び熱化学的活性基としては、アミノ基、チオール基、マレイミド基、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル基、ホルミル基、カルボキシル基、アクリルアミド基、エポキシ基等が挙げられる。
【0101】
そして、図3に例示されるように、前述の第1化合物から保護基を解離させる操作と同様の操作(樹脂組成物層形成工程PR7、露光工程PR8、酸転写工程PR9、樹脂組成物層除去工程PR10)を施すことにより、残存された(第2化合物が結合されていない)第1化合物から保護基を解離させ、その後、第3化合物結合工程PR11を施すことによって、第1化合物の残基に対して第3化合物を結合させて、第3化合物の残基からなる部位42を形成することができる。
【0102】
更に、図2の最下図に例示するように、前記第2化合物が酸に不安定な保護基Pを有する場合には、前記と同様の操作を施すことで、第2化合物の残基からなる部位41上に他の化合物(第4化合物、第5化合物等)を結合させることができる。このように同様の操作を繰り返すことによって、基板上で高い自由度をもって高分子を合成できる。
尚、第2化合物に関する説明は、前記第3化合物、前記第4化合物及び前記第5化合物にそのまま適用できる。また、第1化合物、第2化合物、第3化合物、第4化合物及び第5化合物等は各々同じであってもよく異なっていてもよい。
【0103】
本発明の製造方法によれば、基板上で高い自由度で高分子を設計することができる。この方法により合成される高分子は特に限定されないが、生体高分子及び擬似生体高分子の合成に特に好適である。このような高分子としては、核酸及び蛋白質が挙げられる。核酸としては、DNA、RNA及びPNA(Peptide Nucleic Acid)の他、架橋型ヌクレオチド類似体を一部又は全部に用いて合成された人工核酸〔LNA{Locked Nucleic Acid(Proligo LLC社商標)}及びBNA等〕が挙げられる。このうちPNAは、DNA及びRNAがリン酸結合骨格を有するのに対して、ペプチド結合骨格を有する擬似生体高分子である。このPNAは、通常、アミノエチルグリシン誘導体を単量体とする高分子である。
【0104】
[3]バイオチップ
本発明のバイオチップは、本発明のバイオチップの製造方法により形成されたことを特徴とする。このバイオチップは、1〜10mm四方の基板の上に、数千〜数万種類のプローブが形成されたものであり、検体となるDNA等の発現パターンを同時に解析できる基板である。
プローブとしては、DNA、RNA、PNA、BNA、人工核酸、プロテイン(ペプチド)、糖鎖、及びこれらを組み合わせたプローブ等が挙げられる。基板は、上述のバイオチップの製造方法に記載の内容をそのまま適用できる。バイオチップは、DNAチップ、RNAチップ、プロテインチップ、及び糖鎖チップ等のいずれでも構わない。
また、このバイオチップは、遺伝子発現のパターンニグ、新規遺伝子のスクーリング、遺伝子多型、及び遺伝子変異等の検出に好適に用いることができる。
【実施例】
【0105】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、この実施例に何ら制約されるものではない。尚、実施例の記載における「部」及び「%」は、特記しない限り質量基準である。
【0106】
[1]酸解離性基含有樹脂組成物の調製
酸に不安定な保護基を有する第1化合物からなる第1化合物層を形成するものに相当する組成物として、下記の酸解離性基含有樹脂組成物を以下のとおり調製した。この酸解離性基含有樹脂組成物を用いることにより、酸転写性樹脂組成物における酸の拡散の選択性の評価をすることができる。
酸解離性基含有樹脂を形成する単量体として、酸解離性基(酸に不安定な保護基)を有する単量体にビス−(4−メトキシフェニル)−ベンジルアクリレート、フェノール性水酸基を有する単量体にp−イソプロペニルフェノール、その他の単量体にp−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート及びフェノキシポリエチレングリコールアクリレートを用いた。尚、前記酸解離性基は、第1化合物が有する保護基に相当し、下記式(14)で表される。
【化15】

【0107】
そして、各単量体のビス−(4−メトキシフェニル)−ベンジルアクリレート20g、p−イソプロペニルフェノール30g、p−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド20g、ヒドロキシエチルアクリレート20g、及びフェノキシポリエチレングリコールアクリレート10gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)120gと、を混合して攪拌し、均一な溶液に調製した。その後、得られた溶液を30分間窒素ガスによりバブリングした。次いで、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)4g添加し、窒素ガスによるバブリングを継続しながら、反応温度を70℃に維持して3時間重合を行った。次いで、更にAIBN1gを添加して3時間反応した後、100℃で1時間反応させて、重合を終了した。その後、得られた反応溶液と多量のヘキサンと混合し、反応溶液内の生成物を凝固させた。次いで、凝固された生成物をテトラヒドロフランに再溶解した後、再度ヘキサンにより凝固させる操作を数回繰り返して未反応モノマーを除去し、減圧下50℃で乾燥して酸解離性基含有樹脂を得た。
得られた酸解離性基含有樹脂の収率は95%であり、Mwは15,000であり、Mw/Mnは2.5であった。
【0108】
その後、得られた酸解離性基含有樹脂(100質量部)、界面活性剤としてNBX−15〔ネオス社製〕(0.05質量部)、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(2000質量部)を混合し、攪拌により均一な溶液とした後、この溶液を孔径0.5μmのカプセルフィルターでろ過して酸解離性基含有樹脂組成物を得た。
【0109】
尚、上記合成における測定及び評価は下記の要領で行った。更に、後述する各合成においても同様である。
東ソー(株)製GPCカラム(G2000HXL2本、G3000HXL1本、4000HXL1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。また、分散度Mw/Mnは測定結果より算出した。
【0110】
[2]酸転写性樹脂組成物の調製(実施例1〜4及び比較例1〜2)
(1)重合体(A)の合成
<重合体A1>
本合成例1は、前記式(1)で表される構造単位を導入するための単量体(Am1)として下記式(15)で表されるN,N−ジメチルアクリルアミドを用い、前記式(3)で表される構造単位を導入するための単量体(Am2)としてメチルメタクリレートを用いた例である。
【化16】

【0111】
500mLビーカー中にN,N−ジメチルアクリルアミド(単量体Am1、株式会社興人製)5g(Am1とAm2との合計を100モル%とした場合に5モル%)、メチルメタクリレート(Am2、三菱マテリアル株式会社製)95g(Am1とAm2との合計を100モル%とした場合に95モル%)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)5.0gを仕込み、重合開始剤が溶解するまで攪拌し均一な溶液を得た。別途、窒素置換したドライアイス/メタノール還流器の付いたフラスコ中に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)150gを仕込み、ゆるやかに攪拌を開始し80℃まで昇温した。その後、80℃にて、上記溶液を2時間かけて少量ずつ連続滴下した。滴下後、更に80℃にて3時間重合を行い、その後、100℃に昇温して1時間攪拌を行って重合を終了した。その後、得られた反応溶液を多量のシクロヘキサン中に滴下して生成物を凝固させた。次いで、得られた凝固物を水洗後、凝固物と同質量のテトラヒドロフランに再溶解し、多量のシクロヘキサンに滴下して再度凝固させた。この再溶解及び凝固を行うサイクルを計3回行った後、得られた凝固物を40℃で48時間真空乾燥して重合体A1を得た。
得られた重合体A1の収率は90%であり、Mwは11,000であり、Mw/Mnは2.3であった。尚、重合体A1は、前記式(1)に示す構造単位、及び前記式(3)に示す構造単位を有する重合体である。
【0112】
<重合体A2>
本合成例2は、前記合成例1におけるN,N−ジメチルアクリルアミド5gに代えて、スチレン30gとし、メチルメタクリレートの使用量を70gとした以外は、前記合成例1と同様に行って重合体A2を得た。
得られた重合体A2のMwは30,000であり、Mw/Mnは3.0であった。
【0113】
重合体A1及びA2における各単量体の配合等は以下の通りである。
【表1】

【0114】
(2)他成分との混合
酸発生剤(B)として、下記酸発生剤B1及びB2、更に、比較例の酸発生剤として下記BR1を用いた。
酸発生剤B1〔下記式(8)〕;チバ・ジャパン株式会社製、品名「PAG103」
【化17】

酸発生剤B2〔下記式(10)〕;チバ・ジャパン株式会社製、品名「PAG121」
【化18】

酸発生剤BR1〔下記式(11)〕;アルドリッチ株式会社製、
【化19】

【0115】
酸拡散抑制剤(C)として、下記酸拡散抑制剤C1及びC2、更に、比較例の酸拡散抑制剤としてCR1を用いた。
酸拡散抑制剤C1:N−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン
酸拡散抑制剤C2:N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン
酸拡散抑制剤CR1:トリエチルアミン
【0116】
溶剤(D)として、下記溶剤D1及びD2の混合物を用いた。尚、下記溶剤D1及びD2の混合割合は、質量基準で、80:20とした。
溶剤D1;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
溶剤D2;γ−ブチロラクトン
また、界面活性剤(E)として、JSR株式会社製の商品名「ダイナフロー」を用いた。
【0117】
これらの5成分を表2に示す配合となるように、上記(1)で得られた重合体A1〜A2の各重合体(A)100部、酸発生剤B1〜B3の各酸発生剤(B)20部又は30部、酸拡散抑制剤C1〜C3の各酸拡散抑制剤(C)5〜40部、溶剤(D)500〜1500部、及び、界面活性剤(E)0.05部を混合し、攪拌により均一な溶液(固形分濃度10.0%)とした。この溶液を孔径0.5μmのカプセルフィルターでろ過して6種類の各酸転写性樹脂組成物(実施例1〜4及び比較例1〜2)を得た。
【0118】
【表2】

【0119】
[3]酸転写性樹脂組成物の評価
前記[2]で得られた各酸転写性樹脂組成物の特性を評価するために各々の樹脂組成物を用いて、酸の拡散選択性の評価として、酸転写性樹脂組成物により形成されるパターン形成の感度評価及び寸法評価を行った。この評価において、第1化合物層としては、前記[1]で得られた酸解離性基含有樹脂から形成された酸解離性基含有樹脂層を用いた。また、この感度評価及び寸法評価により、酸転写性樹脂組成物における酸の拡散の選択性の評価をすることができる。
【0120】
(1)酸解離性基含有樹脂層(膜)形成工程
シリコン基板の表面にスピンコーターを用いて、前記[1]で得られた酸解離性基含有樹脂組成物を塗布した。その後、ホットプレート上で110℃で1分間加熱して、厚さ200nmの酸解離性基含有樹脂層を形成した。尚、この酸解離性基含有樹脂層は第1化合物層に相当する。
【0121】
(2)樹脂組成物層形成工程
前記(1)で得られた酸解離性基含有樹脂層の表面にスピンコーターを用いて、前記[2]で得られた実施例1〜4及び比較例1〜2のいずれかの酸転写性樹脂組成物を塗布した。その後、ホットプレート上にて110℃で1分間加熱して、厚さ150nmの各酸転写性樹脂組成物層を形成し、積層体を得た。
【0122】
(3)露光工程(保護基除去工程)
パターンマスクを介して、前記(2)で得られた酸転写性樹脂組成物層の表面に、超高圧水銀灯(OSRAM社製、形式「HBO」、出力1,000W)を用いて100〜1000mJ/cmの紫外光を照射し、酸転写性樹脂組成物層内で酸を発生させた。露光量は、照度計〔株式会社オーク製作所製、形式「UV−M10」(照度計)に、形式「プローブUV−35」(受光器)をつないだ装置〕により確認した。
更に、露光された積層体をホットプレート上にて、110℃で1分間加熱処理を行った。
【0123】
(4)酸転写性樹脂組成物層除去工程
前記(4)までに得られた積層体をアセトニトリルに30秒間浸漬して、前記酸転写性樹脂組成物層のみを除去した。
【0124】
(5)現像工程
前記(4)までに得られた積層体を、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に室温で1分間浸漬して現像を行った。その後、流水洗浄し、窒素ブローを行ってパターンを得た。
尚、以下、このパターンが形成された基板を「パターニング基板」という。
【0125】
[4]感度評価
前記パターニング基板を光学顕微鏡で観察し、感度評価を行った。ここで、感度とはライン/スペース=50/50μmのパターンが残渣なく解像する最小露光量を指し、その露光量を「最適露光量」とした。その結果を表3に示した。
【0126】
[5]寸法評価
前記最適露光量で処理したパターニング基板を走査型電子顕微鏡で観察し、ライン/スペース=50/50μmのパターンの寸法を測定した。ここで、寸法評価とは、測定寸法のマスク寸法からのズレで評価され、0〜5μmを「○」、5μm以上を「×」として評価した。その結果を表3に示した。
【0127】
【表3】

【0128】
尚、本発明においては、上記の具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
【符号の説明】
【0129】
10;基板、
20;第1化合物層、21;保護基が解離された部位、P;保護基、
30;酸転写性樹脂組成物層(酸転写樹脂層)、31;酸発生部位、
41;第2化合物の残基からなる部位、42;第3化合物(他の第2化合物)の残基からなる部位、50;マスク、
PR1;第1化合物層形成工程、PR2;酸転写性樹脂組成物層(酸転写樹脂層)形成工程、PR3;露光工程(保護基除去工程の一部)、PR4;酸転写工程(保護基除去工程の一部)、PR5;酸転写性樹脂組成物層(酸転写樹脂層)除去工程、PR6;第2化合物結合工程、
PR7;酸転写性樹脂組成物層(酸転写樹脂層)形成工程、PR8;露光工程、PR9;酸転写工程、PR10;酸転写性樹脂組成物層(酸転写樹脂層)除去工程、PR11;第3化合物結合工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合体と、
(B)イミノスルホネート系感放射線性酸発生剤と、
(C)N−t−ブトキシカルボニル基含有化合物と、
を含有することを特徴とする酸転写性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)イミノスルホネート系感放射線性酸発生剤の含有量が、前記(A)重合体100質量部に対して、10〜200質量部である請求項1に記載の酸転写性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)N−t−ブトキシカルボニル基含有化合物の含有割合が、前記(B)イミノスルホネート系感放射線性酸発生剤100質量部に対して、10〜200質量部である請求項1又は2に記載の酸転写性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)重合体が、水酸基を有さない重合体である請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の酸転写性樹脂組成物。
【請求項5】
前記重合体(A)が、酸により解離する基を有さない重合体である請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の酸転写性樹脂組成物。
【請求項6】
前記重合体(A)が、側鎖に含窒素基を有する重合体である請求項1乃至5のうちのいずれかに記載の酸転写性樹脂組成物。
【請求項7】
前記重合体(A)は、下記式(1)に示す構成単位を含む請求項1乃至6に記載の酸転写性樹脂組成物。
【化1】

〔式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基、炭素数3〜10の環状の炭化水素基を表す。また、R及びRは、互いに結合して3〜10員環の単環式ヘテロ環、又は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子の群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を介して結合して4〜10員環の単環式ヘテロ環を形成してもよい。〕
【請求項8】
前記酸転写性樹脂組成物が、バイオチップ製造用である請求項1乃至7のいずれかに記載の酸転写性樹脂組成物。
【請求項9】
(a)酸に不安定な保護基を有する第1化合物からなる第1化合物層を基板上に結合させる第1化合物層形成工程、
(b)前記第1化合物層上に、請求項8に記載の酸転写性樹脂組成物の層をコーティングして酸転写性樹脂組成物層を形成する樹脂組成物層形成工程、
(c)前記酸転写性樹脂組成物層を露光及び熱処理して、露光された部分に対応する前記第1化合物層を構成する第1化合物から前記保護基を除去する保護基除去工程、
(d)前記酸転写性樹脂組成物層を除去する樹脂組成物層除去工程、及び
(e)前記保護基が除去された第1化合物に第2化合物を結合させる第2化合物結合工程、を含むことを特徴とするバイオチップの製造方法。
【請求項10】
前記基板が、シリコン、二酸化ケイ素、ガラス、ポリプロピレン又はポリアクリルアミドからなる請求項9に記載のバイオチップの製造方法。
【請求項11】
前記第2化合物が、ヌクレオチド、アミノ酸、単糖類又はこれから選択される2以上の化合物が結合された結合体である請求項9又は10に記載のバイオチップの製造方法。
【請求項12】
前記第2化合物は、酸に不安定な保護基を有する請求項9乃至11のうちのいずれかに記載のバイオチップの製造方法。
【請求項13】
請求項9乃至12うちのいずれかに記載のバイオチップの製造方法により形成されたことを特徴とするバイオチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−13118(P2011−13118A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158209(P2009−158209)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】