説明

醤油漬けイクラの歩留り向上方法。

【課題】醤油漬けイクラの歩留りを向上させること。
【解決手段】
醤油漬けイクラにおいて、調味液に、溶解濃度1.5%でのゼリー強度が10〜250g/cmの範囲の寒天を0.1〜1.0%の質量で添加し、この寒天添加調味液にイクラを所定時間浸漬すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、醤油漬けイクラの歩留りを向上させる加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本では従来から、サケ、マス、スケトウダラ、ニシン等から採取した魚卵を塩蔵又は味付けした魚卵加工品が製造されている。特に、サケ科魚類の卵から分離、製造されるイクラは、高級品として食され、その中でも醤油漬けイクラの需要は目覚しい。しかし、昨今の漁獲量の減少による価格高騰で、原卵の確保が困難になってきている。
【0003】
通常、醤油付けイクラは次の方法により製造される。まず、鮮度の良い原料卵又は冷凍卵を海水と同濃度の3%の食塩水で洗浄し、表面に付着している血液や異物を取り除く。その原料卵を卵粒分離機の網目に乗せ、圧力をかけて卵粒を分離し、原卵を回収する。こうして集めたられた原卵は、血液を除くために再度海水と同濃度の食塩水で短時間洗浄した後、水切りする。そして、得られた分離卵を、醤油、酒、みりん、グルタミン酸ナトリウム等のアミノ酸の混合された調味液で醤油漬けする。漬け込みは2時間〜一晩かけて行われ、その後液切りを行い、容器に詰められ、10℃以下の冷蔵又は冷凍された状態で販売される。
【0004】
なお、魚卵加工に関する先行技術を以下に示す。
【特許文献1】 特開2006−245163「食品処理剤及び魚卵食品」
【特許文献2】 特開平10−084917「魚卵加工品の製造法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記加工法によるイクラの醤油漬けでは、卵粒内の調味液を含む卵液が薄い卵膜から浸み出してこの分がドリップとなるために卵粒重量が減少し、イクラ自体の歩留りの悪化を招いて品質の低下が問題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、イクラ卵粒内の液分の浸み出しを防ぐ食品素材を模索していたところ、寒 天の特定の性状に着目するに至り、これが卵膜表面をコーティングし調味液を含む卵液 を卵膜内に閉じ込める働きがあることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち本発明は、醤油漬けイクラにおいて、調味液に、溶解濃度1.5%でのゼリー強度が10〜250g/cmの範囲の寒天を0.1〜1.0%の質量で添加し、この寒天添加調味液にイクラを所定時間浸漬することを特徴とする醤油漬けイクラの歩留り向上方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明方法によると、特定の性状での寒天が卵膜を保護して、卵膜内の調味液を含む卵液を十分に抱えることが可能となり、醤油漬けイクラの歩留りを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
使用する寒天の基本物性として1.5%溶解濃度(日寒水式)のゼリー強度が10〜250g/cmの範囲の寒天の使用が好ましい。調味液は、醤油、酒、みりん、アミノ酸及び水を所定の割合で調合したものが用いられ、その配合量は、イクラ100重量部に対して10〜40重量部とする。また、この配合量での調味液中の寒天は、その質量が、0.1〜1.0%、好ましくは0.2〜0.6%の範囲で使用される。
【実施例】
【0010】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明の技術的範囲はこれによって限定されるものではない。
【0011】
イクラの冷凍分離卵を解凍後、3%の食塩水で洗浄し、表面に付着している破卵の卵膜や異物を取り除き、十分に水切りを行った。予め溶解濃度が1.5%に調整された寒天を、調味液中に0.35%添加し、80℃で15分加熱溶解して、8℃まで冷却し、寒天添加調味液を得た。寒天は、そのゼリー強度が、30g/cm(添加調味液区1)、200g/cm(添加調味液区2)及び630g/cm(添加調味液区3)のものをそれぞれ用いた。調味液は、醤油30重量部、酒0.5重量部、みりん2重量部、アミノ酸等41.5重量部及び水26重量部により調整されている。そして、イクラの水切り卵100重量部に対し、寒天添加調味液25重量部となるように調整して混ぜ合わせ、2時間浸漬後一晩液切りを行い、それぞれの試験区でのイクラの重量を測定し、歩留りの比較と評価を行った。
なお、評価基準は、1:ハリがあり、食感も良好。
2:ややハリがあり、食感もやや良好。
3:ややシワがあり、イクラ特有の食感がやや悪い。
4:シワがあり、イクラ特有の食感もない。
とした。
【0012】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
醤油漬けイクラにおいて、調味液に、溶解濃度1.5%でゼリー強度が10〜250g/cmの範囲の寒天を0.1〜1.0%の質量で添加し、この寒天添加調味液にイクラを所定時間浸漬することを特徴とする醤油漬けイクラの歩留り向上方法。