説明

重ね葺きスレート屋根材及び重ね葺きスレート屋根の施工方法

【課題】遮熱・断熱効果の高い重ね葺きスレート屋根材を提供すること及び既存のスレート屋根を有する建物を重ね葺きスレート屋根とするための施工方法を提供する。
【解決手段】使用中のスレート屋根材22が波形であるため、板状の断熱板26を頂面に固定した場合には、使用中のスレート屋根材22と断熱板26とが当接する部分と当接しない部分とが生じる。また、新しいスレート屋根材24と断熱板26との間にも、同様の部分が生じる。こうすることにより、熱伝導はそれぞれのスレート屋根材と断熱板とが当接する部分のみ生じることになるため、全面が当接している場合と比較して、熱伝導を低減させることができる。加えて、新しいスレート屋根材24と断熱板26との間には空間を有するため、新しいスレート屋根材24の熱が空間の空気に伝わった場合であっても、断熱板26によって使用中のスレート屋根材22に伝わる熱量を低減させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ね葺きスレート屋根材及び重ね葺きスレート屋根の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スレート屋根を二重とし、スレート屋根とスレート屋根との間に断熱材を挟むことにより、断熱する方法が知られている。例えば、特許文献1には、下面を建物の既設屋根材の上面の形状に係合するように形成し、上面を葺設する新屋根材の仮面底部の形状に係合するように形成した断熱板の上下両面を薄いアルミ箔により密着被覆して、前記既設屋根材と新屋根材との間に介在させ、係合葺設してなることを特徴とするリフォーム用屋根葺き断熱材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−3521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした断熱材では、確かに一定の断熱効果を得ることができるが、スレート屋根とスレート屋根との間を断熱材で密着しているため、一方のスレート屋根が直射日光等によって熱を持った場合には、この熱が密接された断熱材を介して他方のスレート屋根に熱伝導を起こす。このとき、断熱材によって一部の熱は断熱されるが、近年の温暖化に伴い、夏の暑さを防ぐには十分とはいえない。特に、スレート屋根材を屋根として使用した場合には、長年の使用によってスレート屋根材自身が薄くなるに伴い、日光が照射されたスレート屋根材表面の熱が断熱板に伝導されやすくなり、結果として、屋内が高温になるという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、二重の波形のスレート屋根材の間に板状の断熱材を挟むことにより、それぞれのスレート屋根材と断熱板とが接する領域を少なくし、スレート屋根材から断熱材への熱伝導を低減することができる重ね葺きスレート屋根材を提供すること及びこの重ね葺きスレート屋根材を用いた重ね葺き屋根の施工方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の目的の少なくとも一つを達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の重ね葺きスレート屋根材は、
波形に形成された第一波形スレート屋根材と、
前記第一波形スレート屋根材の頂面に固定された板状の断熱板と、
前記断熱板の上面に固定された波形の第二波形スレート屋根材と、
を備えている。
【0008】
この重ね葺きスレート屋根材は、第一波形スレート屋根材が波形であるため、板状の断熱板を第一波形スレート屋根材の頂面に固定した場合には、第一波形スレート屋根材と断熱板との間に空気層が生まれる。また、第二波形スレート屋根材と断熱板との間にも、同様に空間が生まれる。こうすることにより、直射日光等によって第二波形スレート屋根材が高温になった場合でも、この熱が第二波形スレート屋根材に伝わるためには、空気層と断熱板とを通過する必要がある。このため、第一波形スレート屋根材と第二波形スレート屋根材との間に空気層又は断熱板のいずれかのみがある場合と比較して、熱伝導を低減させることができる。
【0009】
本発明の重ね葺きスレート屋根材において、前記第一波形スレート屋根材と前記第二波形スレート屋根材とは、前記断熱板を貫通する貫通固定部材により、前記第一波形スレート屋根材の頂面と前記第二波形スレート屋根材の頂面とが固定されていてもよい。言い換えると、第一波形スレート屋根材と第二波形スレート屋根材との間に必ず空気層と断熱板とが存在することになる。このため、第一波形スレート屋根材の底面と第二波形スレート屋根材の頂面とを断熱板と固定した場合と比較して、より熱の伝導を低減させることができる。この態様を採用した本発明の重ね葺きスレート屋根材において、前記第一波形スレート屋根材の波形と前記第二波形スレート屋根材の波形とは、同一の波形であってもよい。こうすれば、一方のスレート屋根材の頂面と他方のスレート屋根材の底面とが近接せず、第一波形スレート屋根材と第二波形スレート屋根材との間隔が略同一の間隔に保たれることになる。言い換えると、場所によらず同一の幅の空気層が保たれるため、均一な遮熱効果が得られる。
【0010】
本発明の重ね葺きスレート屋根材において、前記第一波形スレート屋根材は、前記第一波形スレート屋根材が固定されたC型鋼と略平行方向に波形の山と谷が交互に並ぶ向きで固定されてもよい。こうすれば、それぞれの波形スレート屋根材と断熱板との間に生じる空気層は、波形スレート屋根材が固定されているC型鋼と略平行に位置する。このため、第二波形スレート屋根材から空気層に熱放射が起きた場合には、C型鋼の長手方向に沿って暖められた空気が上昇し、下方からより冷たい空気が移動する。このため、空気層から断熱材に伝わる熱量を低減することができる。なお、断熱板と第一波形スレート屋根材についても同様の効果が得られる。
【0011】
本発明の重ね葺きスレート屋根材において、前記断熱板は、前記固定部材の頭頂部の一部が前記断熱板の下面に埋没することで前記断熱板を位置決めしてもよい。こうすれば、断熱板を第一波形スレート屋根材に押圧するという簡単な操作により、固定部材の頭頂部の一部を固定部材に埋没させ、固定部材を位置決めすることができる。言い換えると、第一波形スレート屋根材の上部に積置した断熱板が移動する可能性を未然に低減することができる。
【0012】
本発明の重ね葺きスレート屋根材において、前記断熱板は、押出発泡ポリスチレン板であってもよい。押出発泡ポリスチレンは、ビーズ法発泡スチロールと比較して堅いため、断熱材が破損する可能性を未然に低減することができる。特に、第一波形スレート屋根材は波形であるため、断熱板の上に施工者が乗っても破損しない強度を有している押出発泡ポリスチレン板を使用する利点が大きい。
【0013】
本発明の重ね葺きスレートにおいて、前記第一波形スレート屋根材は、使用後の波形スレート屋根材であってもよい。このような波形スレート屋根材は、使用による経年劣化により薄くなっており、塗装による断熱・遮熱効果が低いため、本発明を適用する効果が大きい。
【0014】
本発明の重ね葺きスレート屋根の施工方法は、
波形に形成された第一波形スレート屋根材と、前記第一波形スレート屋根材の頂面に固定された板状の断熱板と、前記断熱板の上面に固定された波形に形成された第二波形スレート屋根材と、を備えた、重ね葺きスレート屋根材を用いた重ね葺きスレート屋根の施工方法であって、
a)母屋に固定された前記第一波形スレート屋根材の上面に前記断熱板を固定する断熱板固定ステップと、
b)前記断熱板の上面に前記第二波形スレート屋根材を固定するスレート固定ステップと、
を含む、ものである。
【0015】
この重ね葺きスレート屋根の施工方法では、波形を有する第一波形スレート屋根材の上面に板状の断熱材を固定しているため、板状の断熱板を第一波形スレート屋根材の頂面に固定した場合には、第一波形スレート屋根材と断熱板との間に空気層が生まれる。また、第二波形スレート屋根材と断熱板との間にも、同様に空間が生まれる。こうすることにより、直射日光等によって第二波形スレート屋根材が高温になった場合でも、この熱が第二波形スレート屋根材に伝わるためには、空気層と断熱板とを通過する必要がある。このため、第一波形スレート屋根材と第二波形スレート屋根材との間に空気層又は断熱板のいずれかのみがある場合と比較して、熱伝導を低減させることができる。また、第一波形スレート屋根材が母屋に固定された状態でも、本発明の重ね葺き屋根材を屋根に施工することができるため、施工中に母屋が使用できなくなる施工方法と比較して、本発明を適用する効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】重ね葺きスレート屋根材20の構成の概略を示す斜視図。
【図2】重ね葺きスレート屋根材20の構成の概略を示す断面図。
【図3】重ね葺きスレート屋根材20を施工する方法を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで、上記簡単に説明した図面に基づいて、本発明を実施するための形態を説明するにあたり、本実施の形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施の形態の重ね葺きスレート屋根材20が重ね葺きスレート屋根材に相当し、使用中のスレート屋根材22が第一波形スレート屋根材に相当し、断熱板26が断熱板に相当し、新しいスレート屋根材24が第二波形スレート屋根材に相当し、フックボルト28が固定部材に相当し、丸笠釘30が貫通固定部材に、Cチャンネル32がC型鋼にそれぞれ相当する。なお、重ね葺きスレート屋根材20の施工方法を説明することにより、本発明の重ね葺き屋根の施工方法の一例も明らかにしている。
【0018】
次に、図1を用いて、本発明の実施の形態の一例である重ね葺きスレート屋根材20の構成を詳しく説明する。ここで、図1は、本発明の実施の形態の一例である重ね葺きスレート屋根材20の構成の概略を示す斜視図であり、図2(A)は、図1中のA−A断面で切断した断面図であり、図2(B)は、図1中のB−B断面で切断した断面図である。図1に示すように、重ね葺きスレート屋根材20は、使用中のスレート屋根材22と新しいスレート屋根材24との間に断熱板26を挟み込んで固定されている。
【0019】
使用中のスレート屋根材22は、無機繊維とセメントとを主原料とし、圧搾成形により波形に成形したものであり、波形の頂面を貫通するフックボルト28(図2(A)参照)により、Cチャンネル32に固定されている。このフックボルト28は、Cチャンネル32に設けられた図示しない穴に挿入されており、一端側がCチャンネル32と係合し、他端側のナット29により使用中のスレート屋根材22を固定している。このとき、ナット29はネジ部の頭頂部よりも下側に位置しており、ナット29よりもネジ部が突出した状態(図2(A)参照)となっている。
【0020】
断熱板26は、押出発泡ポリスチレン製の板であり、使用中のスレート屋根材22と新しいスレート屋根材24との間に固定されている。この断熱板26は、図2(A)に示すように、フックボルト28の頭頂部の一部が埋め込まれることによって使用中のスレート屋根材24に位置決めされる。また、断熱板26は、図2(B)に示すように、使用中のスレート屋根材22と新しいスレート屋根材24とを固定する丸笠釘30が貫通しており、使用中のスレート屋根材22と新しいスレート屋根材24とに固定されている。このとき、使用中のスレート屋根材22の頂面と接する位置で固定されているため、波状の使用中のスレート屋根材22と断熱板26との間には空間が生まれることになる。また、断熱板26は、新しいスレート屋根材24の底面と接する位置で固定されているため、同様に新しいスレート屋根材24と断熱板26との間には空間が生まれることになる。また、断熱板26は、使用中のスレート屋根材22の頂面の位置と新しいスレート屋根材24の頂面の位置とが重なる位置に互いに配置されているため、それぞれのスレート屋根材は、断面を基準として考えると、それぞれのスレート屋根材が交互に断熱板26に当接することになる。このため、新しいスレート屋根材24から熱が伝導する際には、断熱板26の厚さ方向だけでなく、水平方向にも伝導しなければ使用中のスレート屋根材22まで熱が伝導しないため、断熱板26中の熱の移動距離が長くなる。また、新しいスレート屋根材24に何らかの力が加えられた場合には、新しいスレート屋根材24によって断熱板26が押圧される位置と使用中のスレート屋根材22によって断熱板26が支えられる位置とが異なるため、断熱板26がつぶされる可能性を未然に低減することができる。
【0021】
新しいスレート屋根材22は、石綿を含まないセメントを主原料とする波形に成形した板であり、使用中のスレート屋根材22と略同一の波形を有する。この新しいスレート屋根材22は、波形の底面を貫通する丸笠釘30により、断熱板26を介して使用中のスレート屋根材22に固定されている。
【0022】
次に、こうして構成された本実施の形態の重ね葺きスレート屋根材20の施工方法について、図3を用いて詳しく説明する。ここで、図3は、重ね葺きスレート屋根材20の施工方法の一例を示す説明図であり、図3(A)は、重ね葺きスレート屋根材20の施工前の状態、つまり、Cチャンネル32に使用中のスレート屋根材22が固定された状態を示し、図3(B)は、使用中のスレート屋根材22の上面に断熱板26を位置決めした状態を示し、図3(C)は、新しいスレート屋根材22を固定し、重ね葺きスレート屋根材20の施工が終了した状態を、それぞれ示している。
【0023】
施工前の状態では、図3(A)に示すように、使用中のスレート屋根材22がCチャンネル32にフックボルト28により固定されている。この使用中のスレート屋根材22は、長年の使用により経年劣化をおこしており、古いものには現在使用することのできないアスベスト等の人体に有害な物質が含まれていることもある。また、一般的なスレート屋根材は経年劣化によって、10年ごとに約1ミリメートル薄くなると考えられている。このため、長年使用して経年劣化したスレート屋根材については、早急な対策が求められるが、屋根材の交換を行う際には母屋が使用できなくなるため、何ら対策が行われていない場合が多い。
【0024】
このような状態の使用中のスレート屋根材22の上面に、断熱板26を配設する。このとき、断熱板26を上方から押圧することにより、使用中のスレート屋根材22を固定しているフックボルト28のネジ部の一部が断熱板26に埋没し、断熱板26を位置決めする(図2(A)参照)。こうすることにより、傾斜を有する屋根の上でも、断熱板26が使用中のスレート屋根材22の表面から滑落する可能性を低減することができる。また、断熱板26は高い硬度を有する押出ポリスチレン製であるため、ビーズ法発泡スチロール製と比較して、施工時に施工者が断熱板26の上に乗った際に断熱板26が破損する可能性を未然に低減することができる。
【0025】
続いて、新しいスレート屋根材24を断熱板26の上方に配設し、丸笠釘30を打設して使用中のスレート屋根材22を固定する。この丸笠釘30は、断熱板26を貫通して、使用中のスレート屋根材22に新しいスレート屋根材24を固定する。こうすることにより、使用中のスレート屋根材24をCチャンネル32から取り外すことなく、新しいスレート屋根材24を配設することができ、優れた遮熱・断熱効果を得ることができる。
【0026】
ここで、重ね葺きスレート屋根材20を用いた遮熱・断熱効果について、下の表1を用いて説明する。ここで、表1は、夏季のある日の屋根材の種類と屋内の温度とを比較した表であり、気象庁の発表したこの日の最高気温は、35.1℃であった。測定条件としては、サンプル1の結果は、通常のスレート屋根材(1重の屋根材)を用いた建物で、天井付近の温度、床面から1.5m地点の温度、土間付近の温度をそれぞれ計測した結果である。また、サンプル2は、重ね葺きスレート屋根材20を用いた建物で、サンプル1と同様に温度を測定した結果である。
【0027】
【表1】

【0028】
表1から分かるように、重ね葺きスレート屋根材20を用いた場合には、サンプル1を用いた場合と比較して、天井付近で約30%、床面から1.5m付近で約15%の温度低下が起きている。この結果から、スレート屋根材を重ね葺き屋根材に変更することにより、優れた断熱・遮熱効果が得られることが分かる。
【0029】
このような優れた断熱・遮熱効果が得られた主な理由として、発明者は、それぞれのスレート屋根材と断熱板26との接点の位置及びそれぞれのスレート屋根材と断熱板26との間に設けられた空気層が大きな役割を果たしていると考えている。真夏の強い直射日光を照射された新しいスレート屋根材24は、太陽による放射熱により高温になる。この高い熱は、主に熱伝導及び熱伝達により屋内に伝えられることになるが、新しいスレート屋根材24と断熱板26との接点が小さいため、新しいスレート屋根材24と断熱板26とが密接している場合と比較して、より熱伝導による熱の移動は少ない。この点は、新しいスレート屋根材24と断熱板26との間でも同様である。加えて、新しいスレート屋根材24と断熱板26との間には空間を有するため、新しいスレート屋根材24の熱が空間の空気に伝わった場合であっても、断熱板26によって使用中のスレート屋根材22に伝わる熱量を低減させている。
【0030】
加えて、断熱板26とそれぞれのスレート屋根材との間に位置する空気が暖められると、暖められた空気は冷たい空気よりも相対的に軽いため、屋根の上方に移動する。このため、暖められた空気が留まる場合と比較して、空気を介して使用中のスレート屋根材22に伝達される熱量を低減することができる。このことは、同時に高温の新しいスレート屋根材24の裏面側を空気が流れることになり、新しいスレート屋根材24の空冷効果も同時に得ることができる。このため、断熱効果と空冷効果により、屋内の温度の上昇をより低減させることができる。
【0031】
以上詳述した本実施の形態の重ね葺きスレート屋根材20によれば、使用中のスレート屋根材22が波形であるため、板状の断熱板26を頂面に固定した場合には、使用中のスレート屋根材22と断熱板26とが当接する部分と当接しない部分とが生じる。また、新しいスレート屋根材24と断熱板26との間にも、同様の部分が生じる。こうすることにより、熱伝導はそれぞれのスレート屋根材と断熱板とが当接する部分のみ生じることになるため、全面が当接している場合と比較して、熱伝導を低減させることができる。
【0032】
また、使用中のスレート屋根材22の頂面と新しいスレート屋根材24の底面とが断熱板26を貫通する丸笠釘30によって固定されているため、使用中のスレート屋根材22及び新しいスレート屋根材24と断熱板26との当接位置が断熱板の水平方向にずれ、それぞれのスレート屋根材と断熱板26とが一点で接することがない。このため、新しいスレート屋根材24から熱が伝導する際には、断熱材26の厚さ方向だけでなく、水平方向にも伝導しなければ使用中のスレート屋根材22まで熱が伝導しないため、断熱材26中の熱の移動距離が長くなる。言い換えると、新しいスレート屋根材24の底面と使用中のスレート屋根材22の頂面とを断熱板26と固定した場合と比較して、より熱の伝導を低減させることができる。
【0033】
更に、使用中のスレート屋根材22の波形と新しいスレート屋根材24の波形とが同一の波形であるため、使用中のスレート屋根材22と新しいスレート屋根材24との間隔が略同一の間隔に保たれることになる。このため、場所によらず均一の幅の空気層が保たれるため、均一な遮熱効果が得られる。
【0034】
更にまた、使用中のスレート屋根材22及び新しいスレート屋根材24の破断面の高さがそれぞれ異なる位置に固定されているため、それぞれのスレート屋根材と断熱板26との間に生じる空気層が上下方向に長く生じる。このため、新しいスレート屋根材24から空気層へ熱が移動すると、暖められた空気が上方に移動し、下方からより冷たい空気が移動する。このため、空気層から断熱材26に伝わる熱量を低減することができる。なお、断熱板26から使用中のスレート屋根材22への熱伝導についても同様の効果が得られる。
【0035】
そして、断熱板26にフックボルト28のネジ部の一部が埋没しているため、使用中のスレート屋根材22が傾斜を有していたとしても、断熱板26が滑り落ちる可能性を未然に低減することができる。
【0036】
そしてまた、断熱板26は、押出ポリスチレン板であり、ビーズ法発泡スチロール板よりも強度が高いため、施工時に、波形の使用中のスレート屋根材22の上面に配設し、施工者が断熱板26の上に乗って作業をしても、破損する可能性を低減することができる。
【0037】
そして更に、使用中のスレート屋根材22は、母屋に固定されて使用されている経年劣化したものであり、このような屋根材には、断熱塗装等の方法では断熱効果が低いため、本発明を適用する効果が大きい。また、このような使用中のスレート屋根材22のうち、平成16年10月以前に施工されたスレート屋根材にはアスベストが使用されているが、表面を断熱板26及び新しいスレート屋根材24で覆うことにより、アスベストが飛散して健康被害が生じる可能性を未然に低減することができる。
【0038】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0039】
例えば、上述した実施の形態では、断熱板26として押出発泡ポリスチレン製の板を用いたが、押出発泡ポリスチレン製の板としては、例えば、スタイロフォーム(ザ ダウ ケミカル カンパニ−社の登録商標)を用いても良い。こうすれば、施工時に破損する可能性を低減しつつ、より加工時の労力を低減することができる。
【0040】
上述した実施の形態では、使用中のスレート屋根材22と新しいスレート屋根材24とをそれぞれの波形の頂面が重なる位置に配置することとしたが、それぞれの波形の頂面と底面とが重なる位置に配置しても良い。
【0041】
上述した実施の形態では、使用中のスレート屋根材22としてCチャンネルに固定されて使用されている経年劣化したものであるとしたが、予め取り外されたものであってもよいし、未使用のものであってもよい。いずれの場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0042】
上述した実施の形態では、フックボルト28を用いて使用中のスレート屋根材22を固定し、丸笠釘30を用いて新しいスレート屋根材24を固定するものとしたが、固定手段はフックボルト28や丸笠釘30に限定されるものではなく、種々の釘や種々のボルト等を使用しても良い。いずれの場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
上述した実施の形態で示すように、建築分野、特にスレート屋根の改修として利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
20…重ね葺きスレート屋根材、22…使用中のスレート屋根材、24…新しいスレート屋根材、26…断熱板、28…フックボルト、29…ナット、30…丸笠釘、32…Cチャンネル。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
波形に形成された第一波形スレート屋根材と、
前記第一波形スレート屋根材の頂面に固定された板状の断熱板と、
前記断熱板の上面に固定され、波形に形成された第二波形スレート屋根材と、
を備えた、
重ね葺きスレート屋根材。
【請求項2】
前記第一波形スレート屋根材と前記第二波形スレート屋根材とは、前記断熱板を貫通する貫通固定部材により、前記第一波形スレート屋根材の頂面と前記第二波形スレート屋根材の頂面とが固定されている、
請求項1に記載の重ね葺きスレート屋根材。
【請求項3】
前記第一波形スレート屋根材の波形と前記第二波形スレート屋根材の波形とは、同一の波形である、
請求項1又は2に記載の重ね葺きスレート屋根材。
【請求項4】
前記第一波形スレート屋根材は、前記第一波形スレート屋根材が固定されたC型鋼と略平行方向に波形の山と谷が交互に並ぶ向きで固定されている、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の重ね葺きスレート屋根材。
【請求項5】
前記断熱板は、前記固定部材の頭頂部の一部が前記断熱板の下面に埋没することで前記断熱板を位置決めする、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の重ね葺きスレート屋根材。
【請求項6】
前記断熱板は、押出発泡ポリスチレン板である、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の重ね葺きスレート屋根材。
【請求項7】
前記第一波形スレート屋根材は、使用済みの波形スレート屋根材である、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の重ね葺きスレート屋根材。
【請求項8】
波形に形成された第一波形スレート屋根材と、前記第一波形スレート屋根材の頂面に固定された板状の断熱板と、前記断熱板の上面に固定された波形に形成された第二波形スレート屋根材と、を備えた、重ね葺きスレート屋根材を用いた重ね葺きスレート屋根の施工方法であって、
a)前記第一波形スレート屋根材の頂面に前記断熱板を固定する断熱板固定ステップと、
b)前記断熱板の上面に前記第二波形スレート屋根材を固定するスレート固定ステップと、
を含む、
重ね葺きスレート屋根の施工方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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