説明

重亜硫酸塩中間体を使用した6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン化合物の調製方法

本発明は、(1R,2S,5S)−メチル6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボン酸ならびにそのエステルおよび塩の効率的な調製に有用な中間体の6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−スルホネートを調製する方法、そのスルホン酸塩中間体から(1R,2S,5S)−メチル6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボン酸ならびにそのエステルおよび塩を調製する方法、および6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−スルホネートを調製する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、カロン酸からのラセミ体メチル6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボキシレート(遊離塩基)の調製方法に関する。本発明は、メチル6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボキシレート遊離塩基を調製するのに有用な重亜硫酸塩付加体中間物6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−スルホネートナトリウム、およびその重亜硫酸塩付加体中間物の調製方法にも関する。これらの方法で得られる化合物は、例えば薬理効果を有する化合物の合成における中間体として有用である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本節または本出願のいずれかの節における任意の出版物を特定することは、そうした出版物が本発明の従来技術であるということを認めるものではない。
【0003】
6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボン酸のエステルは、例えば医薬品としの有用性をもつ化合物の合成における中間体として有用である。例えば、(1R,2S,5S)−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]−ヘキサン−2−カルボン酸メチルエステル塩酸塩が、特許文献1に開示されている。これを参照により本明細書に組み込む。この化合物は、以下の式Zの構造式
【0004】
【化1】

【0005】
を有するC型肝炎ウイルス(「HCV」)プロテアーゼ阻害剤の調製において使用される重要な中間体である。
【0006】
式Zの化合物はC型肝炎および関連する障害を治療するのに有用である。具体的には、式Zの化合物はHCV NS3/NS4aセリンプロテアーゼの阻害剤である。
【0007】
次式:
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、Rは例えばアルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキルおよびシクロアルキルアルキルである)
を有する6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボン酸のエステルを作製するための様々な方法が当業界で知られている。例えば、特許文献1は、ジョーンズ(Jones)酸化を行い、次いでメタノール性HClで窒素保護基を開裂させることによる、式1の化合物を、
【0010】
【化3】

【0011】
式2の対応するアルコール
【0012】
【化4】

【0013】
から調製する方法を開示している。この手順は、非特許文献1に開示されている手順を改変したものである。
【0014】
特許文献2(これを参照により本明細書に組み込む)は、化合物Zの合成における中間体である3−(アミノ)−3−シクロブチルメチル−2−ヒドロキシ−プロピオンアミドまたはその塩の作製方法を開示している。この公報は、その合成法で調製されるいくつかの中間体についても特許請求している。
【0015】
特許文献3(これを参照により本明細書に組み込む)は、出発原料としてメチル6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボン酸を使用することを含む式Zの化合物を調製するための代替の方法を特許請求している。
【0016】
特許文献4(これを参照により本明細書に組み込む)は、スキーム1で要約される方法で6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボン酸のエステルを調製している。
【0017】
【化5】

【0018】
特許文献5(‘799公報)は、ニトリル中間体を介して、対応するイミンから次式の酸化合物
【0019】
【化6】

【0020】
(式中、Rは水素またはアルキルであり、R〜Rは、例えばアルキルである)
を調製する方法を開示している。したがって、そのイミンをシアン化剤と反応させて対応するニトリルを生成し、続いて、これを加水分解して酸誘導体を生成させる。イミン誘導体は、次式のビシクロ−ピロリジン化合物
【0021】
【化7】

【0022】
の直接酸化か、またはビシクロ−ピロリジンの対応するハロ−ピロリジン誘導体の脱ハロゲン化水素化によって生成させる。上記文献は、ニトリルを生成するシアン化ステップは、通常トランス幾何異性体の生成のみをもたらし、この立体配置は加水分解ステップにおいても維持されることを示している。
【0023】
特許文献6は、対応するニトリルから、次式の酸またはエステル誘導体
【0024】
【化8】

【0025】
(式中、Rは水素またはアルキルであり、RおよびRは、例えば二環式環系を形成することができる)
を調製する方法を開示している。この方法は、銀塩の存在下で、酸化剤を用いて、ピロリジン誘導体を対応するΔ−ピロリジン誘導体に転換させ、続いてそのピロリジン誘導体を、HCN(これは鉱酸の存在下で反応混合物に金属シアン化物を加えることによって生成させることが好ましい)と反応してニトリルを生成させることを含む。得られたニトリルに加溶媒分解を施すことによって上記生成物を調製する。この特許は、鏡像異性体が大過剰なこれらの化合物の特定の異性体を作製する方法は開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0216325号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0020689号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0059800号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0059684号明細書
【特許文献5】欧州特許第0010799号明細書
【特許文献6】米国特許第4,691,022号明細書
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】R.ZhangおよびJ.S.MadalengoitiaによるJ,Org.Chem.、64巻、330〜31頁(1999年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
目的
上記を考慮すると、必要なのは、高価で時間のかかる分割法、例えばキラルカラムクロマトグラフィーを必要とすることなく、式ZのHCVプロテアーゼ阻害剤化合物への中間体として用いられるビシクロ−ピロリジン化合物のある特定の鏡像異性体を高い収率と高い鏡像異性体純度で提供する方法である。さらに、必要なのは、中間体を高い鏡像異性体純度で、工業規模で製造するのに好都合な式Zの化合物を作製するのに有用な中間体化合物を提供する方法である。したがって、C型肝炎の1つまたは複数の症状を治療、予防または改善するのに有用な化合物の工業規模での合成に有用な中間体を提供する方法が依然として必要である。本発明は、上記およびその他の目的および/または利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0029】
発明の要旨
一態様では、本発明は、主にトランス構造で、式Va−SとVb−Sの6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−ナトリウムスルホネート付加体化合物のラセミ混合物を作製する方法を提供する。化合物Va−SおよびVb−Sは式Zの化合物の作製における有用な中間体である。
【0030】
【化9】

【0031】
この方法は、化合物式VaとVbの化合物のイミン混合物
【0032】
【化10】

【0033】
を、式VaとVbの化合物のイミン混合物のC−6炭素とトランスの関係にあるC−2炭素への重亜硫酸塩部分の付加を促進させる条件下で、重硫酸ナトリウムと反応させることを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、式VaとVbの化合物のイミン混合物を、重亜硫酸水溶液と混合した有機溶液として反応させることが好ましい。
【0035】
いくつかの実施形態では、対応するピロリジン(6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン)化合物を酸化させることによって調製されるスルホン酸塩付加体から調製されるイミン(6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−2−エン)を、提供することが好ましい。いくつかの実施形態では、過硫酸カリウムおよび硝酸銀を用いてピロリジン化合物混合物の酸化を実施することが好ましい。
【0036】
本発明の他の態様は、
(i)式IIbの2,4ジオン
【0037】
【化11】

【0038】
を生成させるのに好都合な条件下で、無水カロン酸をベンジルアミンと反応させるステップと、

(ii)式IIBのジオンを還元して式IICの3−アザ−ベンジル−ビシクロヘキサン化合物にするステップと、
【0039】
【化12】

【0040】
(iii)式IICの化合物を還元して6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンにするステップと、
(iv)還元ステップ(iii)からのヘキサン生成物を酸化して、式VaとVbのイミンを含む混合物を提供するステップと、
【0041】
【化13】

【0042】
(v)式Va−SおよびVb−Sのトランス−重亜硫酸塩付加体化合物を提供する条件下で、酸化ステップ(iv)で生成した化合物の混合物を、重亜硫酸ナトリウムと反応させるステップと、
【0043】
【化14】

【0044】
(vi)ステップ(v)で生成した重亜硫酸塩付加体化合物の混合物を、シアン化物供給源と反応させて、式VIaとVIbのニトリル化合物の対応する混合物
【0045】
【化15】

【0046】
を生成させるステップと、
(vii)任意選択で、式R−OHのアルコールの存在下で、ステップ(vi)で生成したニトリル化合物のラセミ混合物を加水分解させて式IとIaの対応するアルキルエステル化合物の混合物
【0047】
【化16】

【0048】
(式中、Rは、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、置換アラルキル、シクロアルキルまたは置換シクロアルキルである)
を提供するステップと、
(viii)任意選択で、ステップ(vii)で生成したエステル化合物の混合物の溶液を、キラル酒石酸誘導体で処理して、前記混合物の溶液から、式Iの化合物かまたは式Iaの化合物の酒石酸誘導体塩を、高い鏡像異性体過剰率で沈澱させるステップと
を含む方法によって、式VIaの化合物、すなわち、(1R,2S,5S)−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−ニトリルと、VIbの化合物、すなわち、(1S,2R,5R)−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−ニトリルとの混合物を提供することである。
【0049】
いくつかの実施形態では、ジオンを金属水素化物、好ましくは水素化アルミニウムリチウム、Red−Al(登録商標)およびボラン、より好ましくは水素化アルミニウムリチウムで処理することによって、ステップ(ii)のジオン還元ステップを実施することが好ましい。いくつかの実施形態では、金属媒介による水素化分解で、好ましくはPd/炭素および水素を用いて化合物を水素化することによって、ステップ(iii)の式IICの化合物を還元することが好ましい。いくつかの実施形態では、ステップ(iv)において、ステップ(iii)で生成したピロリジンを、過硫酸ナトリウムおよび硝酸銀を含む酸化剤と反応させることによって、ステップ(iii)からの還元化合物を酸化してイミンにすることが好ましい。いくつかの実施形態では、例えば、代理人整理番号CD06756L01USのもとでの2007年11月28日出願の米国仮出願に記載されている、次亜塩素酸ナトリウム法またはN−クロロスクシンイミド法によって、ステップ(iii)で生成したピロリジンをハロアミンに転換させ、続いて、ハロアミンを脱ハロゲン化水素化してイミンにすることによってイミンを生成させることが好ましい。
【0050】
いくつかの実施形態では、ステップ(v)の重亜硫酸塩を反応させるステップにおいて、式VaとVbの化合物のイミン混合物を、重亜硫酸塩水溶液と混合した有機溶液として反応させることが好ましい。いくつかの実施形態では、ステップ(vi)のシアノ−付加体ステップにおいて、シアノ付加体を調製するシアン化物の供給源として、シアン化ナトリウムを使用することが好ましい。いくつかの実施形態では、任意選択の加水分解ステップ(vii)を用いて、HClおよびメタノールで加水分解を実施することが好ましい。
【0051】
任意選択の沈澱化ステップ(viii)を用いるいくつかの実施形態では、式Iの所望の鏡像異性体を、ジ−p−トルオイル−D−酒石酸(「D−DTTA」)およびジベンゾイル−D−酒石酸(「D−DBTA」)から選択されるキラル酒石酸誘導体で沈澱させ、(1R,2S,5S)−メチル6,6−ジメチル−3−アザビシクロ−[3.1.0]ヘキサン−2−カルボキシレート鏡像異性体の塩を沈澱させることが好ましい。任意選択の沈澱化ステップ(viii)を用いるいくつかの実施形態では、溶液を、l−ジ−p−トルオイル−L−酒石酸(「L−DTTA」)およびl−ジベンゾイル−L−酒石酸塩(「L−DBTA」)から選択されるキラル酒石酸誘導体で処理することによって、鏡像異性体を過剰で、式Iaの望まない鏡像異性体を沈澱させて、(1S,2R,5R)−メチル6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボキシレートの酒石酸誘導体塩を沈澱させ、望まない鏡像異性体の沈澱塩をろ別した後、上澄み溶液から所望の塩を単離することが好ましい。
【0052】
本発明の他の態様は、式Va−SおよびVb−Sの中間体化合物を提供することである。
【0053】
【化17】

【発明を実施するための形態】
【0054】
発明の説明
上記および本明細書を通して用いるように、別段の指定のない限り、以下の用語は以下の意味を有するものとする。
【0055】
「アルキル」という用語は、その鎖の中に約1〜約20個の炭素原子を含む、直鎖であっても分枝鎖であってもよい脂肪族炭化水素基を意味する。好ましいアルキル基は、その鎖の中に約1〜約12個の炭素原子を含む。より好ましいアルキル基は、その鎖の中に約1〜約6個の炭素原子を含む。分枝鎖ということは、メチル、エチルまたはプロピルなどの1つまたは複数の低級アルキル基が直鎖のアルキル鎖に結合していることを意味する。「低級アルキル」という用語は、その鎖の中に約1〜約6個の炭素原子を有する直鎖であっても分枝鎖であってもよい基を意味する。「置換アルキル」という用語は、アルキル基が、同じであっても異なっていてもよい1つまたは複数の置換基で置換されていてよいことを意味し、その各置換基は、ハロ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、−NH(アルキル)、−NH(シクロアルキル)、−N(アルキル)、カルボキシおよび−C(O)O−アルキルからなる群から独立に選択される。適切なアルキル基の非限定的例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、ヘプチル、ノニル、デシル、フルオロメチル、トリフルオロメチルおよびシクロプロピルメチルが含まれる。
【0056】
「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含み、その鎖の中に約2〜約15個の炭素原子を含む、直鎖であっても分枝鎖であってもよい脂肪族炭化水素基を意味する。好ましいアルケニル基は、その鎖の中に約2〜約12個の炭素原子、より好ましくはその鎖の中に約2〜約6個の炭素原子を有する。分枝鎖ということは、メチル、エチルまたはプロピルなどの1つまたは複数の低級アルキル基が直鎖のアルケニル鎖に結合していることを意味する。「低級アルケニル」という用語は、直鎖であっても分枝鎖であってもよい、その鎖の中の約2〜約6個の炭素原子を意味する。「置換アルケニル」という用語は、アルケニル基が、同じであっても異なっていてもよい1つまたは複数の置換基で置換されていてよいことを意味し、その各置換基は、ハロ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノおよびアルコキシからなる群から独立に選択される。適切なアルケニル基の非限定的例には、エテニル、プロペニル、n−ブテニル、3−メチルブタ−2−エニル、n−ペンテニル、オクテニルおよびデセニルが含まれる。
【0057】
「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含み、その鎖の中に約2〜約15個の炭素原子を含む、直鎖であっても分枝鎖であってもよい脂肪族炭化水素基を意味する。好ましいアルキニル基は、その鎖の中に約2〜約12個の炭素原子、より好ましくはその鎖の中に約2〜約4個の炭素原子を有する。分枝鎖ということは、メチル、エチルまたはプロピルなどの1つまたは複数の低級アルキル基が直鎖のアルキニル鎖に結合していることを意味する。「低級アルキニル」という用語は、直鎖であっても分枝鎖であってもよい、その鎖の中の約2〜約6個の炭素原子を意味する。適切なアルキニル基の非限定的例には、エチニル、プロピニル、2−ブチニル、3−メチルブチニル、n−ペンチニルおよびデシニルが含まれる。「置換アルキニル」という用語は、アルキニル基が、同じであっても異なっていてもよい1つまたは複数の置換基で置換されていてよいことを意味し、その各置換基は、アルキル、アリールおよびシクロアルキルからなる群から独立に選択される。
【0058】
「アリール」という用語は、約6〜約14個の炭素原子、好ましくは約6〜約10個の炭素原子を含む芳香族の単環式または多環式環系を意味する。アリール基は、本明細書で定義される、同じであっても異なっていてもよい1つまたは複数の「環系置換基」で任意選択で置換されていてよい。適切なアリール基の非限定的例には、フェニルおよびナフチルが含まれる。
【0059】
「ヘテロアリール」という用語は、約5〜約14個の環原子、好ましくは約5〜約10個の環原子を含む芳香族の単環式または多環式環系を意味し、その環原子のうちの1つまたは複数は、単独かまたは組み合わされた、炭素以外の元素、例えば窒素、酸素または硫黄である。好ましいヘテロアリールは約5〜約6個の環原子を含む。「ヘテロアリール」は、本明細書で定義される、同じであっても異なっていてもよい1つまたは複数の「環系置換基」で任意選択で置換されていてよい。ヘテロアリール基幹名(rootname)の前の接頭語のアザ、オキサまたはチアは、少なくとも窒素、酸素または硫黄原子がそれぞれ環原子として存在することを意味する。ヘテロアリールの窒素原子は任意選択で酸化されて対応するN−オキシドになっていてもよい。適切なヘテロアリールの非限定的例には、ピリジル、ピラジニル、フラニル、チエニル、ピリミジニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、フラザニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、キノキサリニル、フタラジニル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、イミダゾ[2,1−b]チアゾリル、ベンゾフラザニル、インドリル、アザインドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、イミダゾリル、チエノピリジル、キナゾリニル、チエノピリミジル、ピロロピリジル、イミダゾピリジル、イソキノリニル、ベンゾアザインドリル、1,2,4−トリアジニル、ベンゾチアゾリルなどが含まれる。
【0060】
「アラルキル」という用語は、アリールおよびアルキルが上記した通りであるアリール−アルキル基を意味する。好ましいアラルキルは低級アルキル基を含む。適切なアラルキル基の非限定的例には、ベンジル、2−フェネチルおよびナフタレニルメチルが含まれる。親部分との結合はアルキルを介している。
【0061】
「アルキルアリール」という用語は、アルキルおよびアリールが上記した通りであるアルキル−アリール基を意味する。好ましいアルキルアリールは低級アルキル基を含む。適切なアルキルアリール基の非限定的例には、o−トリル、p−トリルおよびキシリルが含まれる。親部分との結合はアリールを介している。
【0062】
「シクロアルキル」という用語は、約3〜約10個の炭素原子、好ましくは約5〜約10個の炭素原子を含む非芳香族の単環式または多環式環系を意味する。好ましいシクロアルキル環は約5〜約7個の環原子を含む。シクロアルキルは、同じであっても異なっていてもよい上記定義のような1つまたは複数の「環系置換基」で任意選択で置換されていてよい。適切な単環式シクロアルキルの非限定的例には、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが含まれる。適切な多環式シクロアルキルの非限定的例には、1−デカリン、ノルボルニル、アダマンチルなどが含まれる。
【0063】
「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード基を意味する。好ましくはフルオロ、クロロまたはブロモであり、より好ましくはフルオロおよびクロロである。
【0064】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。好ましくはフッ素、塩素または臭素であり、より好ましくはフッ素および塩素である。
【0065】
「環系置換基」という用語は、例えば環系上の利用できる水素を置き換える、芳香族または非芳香族環系と結合した置換基を意味する。環系置換基は同じであっても異なっていてもよく、それぞれは、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルキルアリール、アラルケニル、ヘテロアラルキル、アルキルヘテロアリール、ヘテロアラルケニル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、アシル、アロイル、ハロ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオ、ヘテロアラルキルチオ、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクレニル、YN−、YN−アルキル−、YNC(O)−およびYNSO−(YおよびYは同じであっても異なっていてもよく、水素、アルキル、アリールおよびアラルキルからなる群から独立に選択される)からなる群から独立に選択される。
【0066】
「シクロアルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む約3〜約10個の炭素原子、好ましくは約5〜約10個の炭素原子を含む非芳香族の単環式または多環式環系を意味する。好ましいシクロアルケニル環は約5〜約7個の環原子を含む。シクロアルケニルは、同じであっても異なっていてもよい上記定義のような1つまたは複数の「環系置換基」で任意選択で置換されていてよい。適切な単環式シクロアルケニルの非限定的例には、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニルなどが含まれる。適切な多環式シクロアルケニルの非限定的例はノルボルニレニルである。
【0067】
「ヘテロシクレニル」という用語は、その環系の原子のうちの1つまたは複数が、単独かまたは組み合わされた炭素以外の元素、例えば窒素、酸素または硫黄であり、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合または炭素−窒素二重結合を含む、約3〜約10個の環原子、好ましくは約5〜約10個の環原子を含む非芳香族の単環式または多環式環系を意味する。環系の中には隣接した酸素および/または硫黄原子は存在しない。好ましいヘテロシクレニル環は約5〜約6個の環原子を含む。ヘテロシクレニル基幹名の前の接頭語のアザ、オキサまたはチアは、少なくとも窒素、酸素または硫黄原子がそれぞれ環原子として存在することを意味する。ヘテロシクレニルは、上記に定義の1つまたは複数の「環系置換基」で任意選択で置換されていてよい。ヘテロシクレニルの窒素または硫黄原子は、任意選択で酸化されて対応するN−オキシド、S−オキシドまたはS,S−ジオキシドになっていてよい。適切な単環式アザヘテロシクレニル基の非限定的例には、1,2,3,4−テトラヒドロピリジン、1,2−ジヒドロピリジル、1,4−ジヒドロピリジル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジン、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、2−ピロリニル、3−ピロリニル、2−イミダゾリニル、2−ピラゾリニルなどが含まれる。適切なオキサヘテロシクレニル基の非限定的例には、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、ジヒドロフラニル、フルオロジヒドロフラニルなどが含まれる。適切な多環式オキサヘテロシクレニル基の非限定的例は7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプテニルである。適切な単環式チアヘテロシクレニル環の非限定的例には、ジヒドロチオフェニル、ジヒドロチオピラニルなどが含まれる。
【0068】
「ヘテロシクリル」という用語は、約3〜約10個の環原子、好ましくは約5〜約10個の環原子を含む非芳香族の飽和単環式または多環式環系を意味し、その環系中の原子のうちの1つまたは複数は、単独かまたは組み合わされた炭素以外の元素、例えば窒素、酸素または硫黄である。環系の中には隣接した酸素および/または硫黄原子は存在しない。好ましいヘテロシクリルは約5〜約6個の環原子を含む。ヘテロシクリル基幹名の前の接頭語のアザ、オキサまたはチアは、少なくとも窒素、酸素または硫黄原子がそれぞれ環原子として存在することを意味する。ヘテロシクリルは、本明細書で定義される、同じであっても異なっていてもよい1つまたは複数の「環系置換基」で任意選択で置換されていてよい。ヘテロシクリルの窒素または硫黄原子は任意選択で酸化されて対応するN−オキシド、S−オキシドまたはS,S−ジオキシドになっていてもよい。適切な単環式ヘテロシクリル環の非限定的例には、ピペリジル、ピロリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアゾリジニル、1,3−ジオキソラニル、1,4−ジオキサニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニルなどが含まれる。
【0069】
「アラルケニル」という用語は、アリールおよびアルケニルが上記した通りであるアリール−アルケニル基を意味する。好ましいアラルケニルは低級アルケニル基を含む。適切なアラルケニル基の非限定的例には、2−フェネテニルおよび2−ナフチルエテニルが含まれる。親部分との結合はアルケニルを介している。
【0070】
「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリールおよびアルキルが上記した通りであるヘテロアリール−アルキル基を意味する。好ましいヘテロアラルキルは低級アルキル基を含む。適切なアラルキル基の非限定的例には、ピリジルメチル、2−(フラン−3−イル)エチルおよびキノリン−3−イルメチルが含まれる。親部分との結合はアルキルを介している。
【0071】
「ヘテロアラルケニル」という用語は、ヘテロアリールおよびアルケニルが上記した通りであるヘテロアリール−アルケニル基を意味する。好ましいヘテロアラルケニルは低級アルケニル基を含む。適切なヘテロアラルケニル基の非限定的例には、2−(ピリダ−3−イル)エテニルおよび2−(キノリン−3−イル)エテニルが含まれる。親部分との結合はアルケニルを介している。
【0072】
「ヒドロキシアルキル」という用語は、アルキルが上記に定義した通りであるHO−アルキル基を意味する。好ましいヒドロキシアルキルは低級アルキルを含む。適切なヒドロキシアルキル基の非限定的例には、ヒドロキシメチルおよび2−ヒドロキシエチルが含まれる。
【0073】
「アシル」という用語は、カルボキシル基の−OHが、上記に定義したものなどのいくつかの他の置換基で置換されている有機酸基を意味する。適切で非限定的な例には、その種々の基が上記した通りであるH−C(O)−、アルキル−C(O)−、アルケニル−C(O)−、アルキニル−C(O)−、シクロアルキル−C(O)−、シクロアルケニル−C(O)−またはシクロアルキニル−C(O)−基が含まれる。親部分との結合はカルボニル炭素原子を介している。好ましいアシル基は低級アルキルを含む。適切なアシル基の非限定的例には、ホルミル、アセチル、プロパノイル、2−メチルプロパノイル、ブタノイルおよびシクロヘキサノイルが含まれる。
【0074】
「アロイル」という用語は、アリール基が上記に定義した通りであるアリール−C(O)−基を意味する。親部分との結合はカルボニルを介している。適切な基の非限定的例には、ベンゾイル、1−ナフトイルおよび2−ナフトイルが含まれる。
【0075】
「アルコキシ」という用語は、アルキル基が上記に定義した通りであるアルキル−O−基を意味する。適切なアルコキシ基の非限定的例には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシおよびヘプトキシが含まれる。親部分との結合はエーテル酸素を介している。
【0076】
「アリールオキシ」という用語は、アリール基が上記に定義した通りであるアリール−O−基を意味する。適切なアリールオキシ基の非限定的例には、フェノキシおよびナフトキシが含まれる。親部分との結合はエーテル酸素を介している。
【0077】
「アラルキルオキシ」という用語は、アラルキル基が上記に定義した通りであるアラルキル−O−基を意味する。適切なアラルキルオキシ基の非限定的例には、ベンジルオキシおよび1−または2−ナフタレンメトキシが含まれる。親部分との結合はエーテル酸素を介している。
【0078】
「アルキルアミノ」という用語は、窒素上の水素原子の1つもしくは複数が上記定義のアルキル基で置換されている−NHまたは−NH基を意味する。
【0079】
「アリールアミノ」という用語は、窒素上の水素原子の1つもしくは複数が上記定義のアリール基で置換されている−NHまたは−NH基を意味する。
【0080】
「アルキルチオ」という用語は、アルキル基が上記に定義した通りであるアルキル−S−基を意味する。適切なアルキルチオ基の非限定的例には、メチルチオ、エチルチオ、i−プロピルチオおよびヘプチルチオが含まれる。親部分との結合は硫黄を介している。
【0081】
「アリールチオ」という用語は、アリール基が上記に定義した通りであるアリール−S−基を意味する。適切なアリールチオ基の非限定的例には、フェニルチオおよびナフチルチオが含まれる。親部分との結合は硫黄を介している。
【0082】
「アラルキルチオ」という用語は、アラルキル基が上記に定義した通りであるアラルキル−S−基を意味する。適切なアラルキルチオ基の非限定的例はベンジルチオである。親部分との結合は硫黄を介している。
【0083】
「アルコキシカルボニル」という用語は、アルキル−O−CO−基を意味する。適切なアルコキシカルボニル基の非限定的例には、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが含まれる。親部分との結合はカルボニルを介している。
【0084】
「アリールオキシカルボニル」という用語は、アリール−O−C(O)−基を意味する。適切なアリールオキシカルボニル基の非限定的例には、フェノキシカルボニルおよびナフトキシカルボニルが含まれる。親部分との結合はカルボニルを介している。
【0085】
「アラルコキシカルボニル」という用語は、アラルキル−O−C(O)−基を意味する。適切なアラルコキシカルボニル基の非限定的例はベンジルオキシカルボニルである。親部分との結合はカルボニルを介している。
【0086】
「アルキルスルホニル」という用語は、アルキル−S(O)−基を意味する。好ましい基は、アルキル基が低級アルキルであるものである。親部分との結合はスルホニルを介している。
【0087】
「アルキルスルフィニル」という用語は、アルキル−S(O)−基である。好ましい基はアルキル基が低級アルキルであるものである。親部分との結合はスルフィニルを介している。
【0088】
「アリールスルホニル」という用語は、アリール−S(O)−基を意味する。親部分との結合はスルホニルを介している。
【0089】
「アリールスルフィニル」という用語は、アリール−S(O)−基を意味する。親部分との結合はスルフィニルを介している。
【0090】
「任意選択で置換された」という用語は、特定の基、ラジカルまたは部分での任意選択の置換を意味する。
【0091】
鏡像異性体過剰率(「e.e,」)は、1つの鏡像異性体(例えば、R−鏡像異性体)が、他方(例えば、S−鏡像異性体)よりどの程度多く生成されたか表す割合であり、生成した各鏡像異性体の合計量で、生成した各鏡像異性体の量の差を除することによって算出される。
【0092】
一実施形態では、本発明は、式Zの化合物を調製する方法において有用な、スキーム2による、中間体化合物のスルホン酸塩付加体を提供する。6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3,1.0]−ヘキサンからの対応するスルホン酸塩付加体の調製を、スキーム2のステップ1および2に概略示す。
【0093】
【化18】

【0094】
スキーム2のステップ2によって調製されるスルホン酸塩中間体はニトリル中間体の調製において有用であり、式Zの化合物におけるその使用は、先の出願および参照により本明細書に組み込む代理人整理番号CD06583L01USのもとで出願されている同時係属出願に記載されている。いくつかの実施形態では、スキーム3のステップ4および5により、ニトリル中間体をエステルに転換させる。いくつかの実施形態では、所望の鏡像異性体、(1R、2S,5S)6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3,1.0]−ヘキサン−2−アルキルエステルである式SIの化合物を、スキーム3のステップ5により、そのエステルの塩として単離する。
【0095】
【化19】

【0096】
ただし、Rは、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、置換アラルキル、シクロアルキルまたは置換シクロアルキル基であり、D−酸はジ−p−トルオイル−D−酒石酸(D−DTTA)およびジベンゾイル−D−酒石酸(D−DBTA)から選択され、D−塩は、選択されたD−酸に対応するアニオン、すなわち、ジ−p−トルオイル−D−酒石酸塩またはジベンゾイル−D−酒石酸塩であり、L−酸はジ−p−トルオイル−L−酒石酸(L−DTTA)およびジベンゾイル−L−酒石酸(L−DBTA)から選択され、L−塩は、選択されたL−酸に対応するアニオン、すなわち、ジ−p−トルオイル−L−酒石酸塩かまたはジベンゾイル−L−酒石酸塩である。いくつかの実施形態では、所望のエステルを沈澱させ、ろ過により単離する。いくつかの実施形態では、L−酸を用いて望まないエステルを沈澱させ、望まないエステル沈殿物をろ別した後、所望のエステルを上澄みから単離する。
【0097】
無水カロン酸から、出発ピロリジンの6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]−ヘキサン(式IVの化合物)を作製する方法は知られており、上記特許および特許出願に記載されている。そのすべてを参照により本明細書に組み込む。これらの方法のいくつかをスキーム4に概略的にまとめる。
【0098】
【化20】

【0099】
無水カロン酸(式IIの化合物)を調製する方法は当業界で周知である。式IIの化合物は、米国特許出願公開第2005/0059648A1号に開示されている合成法により調製することができる。その実施例1には、公開されている手順による菊酸エチル(ethyl chrysanthemumate)からの無水物の調製方法が詳細に記載されている。
【0100】
【化21】

【0101】
例えば、スキーム5に示すように、ラセミ体3,3ジメチル−シクロプロパン−1,2−ジカルボン酸(IIa)を反応溶媒中に溶解/懸濁し、硫酸の存在下、無水酢酸で処理してラセミ体無水カロン酸(式II)を生成させる。この反応で調製した無水カロン酸は、スキーム4で示すプロセスのいずれかで使用するために単離することができる。
【0102】
手順A
無水カロン酸(式II)を、適切な溶媒中、触媒作用により、式IIIの化合物に転換させて式IIIのイミドを得ることができる。続くステップで、イミドを還元して、本明細書で述べるように使用するための式IVのピロリジン化合物にする。本発明のいくつかの実施形態では、水、テトラヒドロフラン、メタノール、イソプロパノール、メチルイソブチルケトン、キシレンおよびホルムアミドから選択される溶媒を使用することが好ましい。この転換を実施するのに適した触媒には、例えば4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)およびルチジンが含まれる。触媒は窒素供給源の存在下で使用する。適切な窒素供給試薬には、これらに限定されないが、NH、NHOH、HNC(O)NH、HNC(O)H、NHCHおよびNHCCHが含まれる。いくつかの実施形態では、反応は約10℃〜約200℃の温度で実施するのが好ましい。
【0103】
手順B(2ステップ法)、
無水カロン酸(式II)から式IVの化合物を得るための第2の方法は、連続した3段階により式IICのイミドを得、これを還元して式IVの化合物にする方法である。
【0104】
ステップBi:
式IIBの中間体ジオンは無水カロン酸から、溶媒の存在下で、アラルキル、置換アラルキルまたはアルケニルアミンから選択される試薬と反応させて調製する。本発明のいくつかの実施形態では、アリールCHNHおよびアリルNHから選択されるアミンを使用することが好ましい。本発明のいくつかの実施形態では、t−ブチルメチルエーテル(TBME)、テトラヒドロフラン、メタノール、トルエン、キシレンおよびその2つ以上の混合物から選択される溶媒を使用することが好ましい。本発明のいくつかの実施形態では、約0℃〜約200℃の温度で反応を行うことが好ましい。
【0105】
ステップBii:
適切な溶媒中で、金属水素化物、例えば水素化ホウ素ナトリウムおよび水素化アルミニウムリチウムでカルボニル基を還元することによって、式IIBの中間体ジオンをピロリジン化合物IICに転換させることができる。いくつかの実施形態では、水素化アルミニウムリチウム(「LiAlH」)、ナトリウムビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムジヒドリド(「Red−Al(登録商標)」)およびボランから選択される試薬を用いてこの還元を実施することが好ましい。本発明のいくつかの実施形態では、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、トルエンおよびその2つ以上の混合物から選択される溶媒中で還元反応を実施することが好ましい。いくつかの実施形態では、その生成物を、溶媒を留去させることによって単離することが好ましい。本発明のいくつかの実施形態では、約−20℃〜約80℃で還元反応を実施することが好ましい。
【0106】
ステップBii:
式IICの中間体化合物は、金属媒介による水素化分解反応条件を用いて、還元して式IVの化合物にすることができる。いくつかの実施形態では、水素ガスの存在下で、パラジウム担持炭素(Pd/C)を含む触媒を用いることが好ましい。適切な反応条件の一例は、以下の文献:R.C.Bernotas and R.V.Cube、Synthetic Communication、1990年、20巻、1209頁に見ることができる。
【0107】
任意選択で、式IVの化合物は、化合物の単離を助けるために、酸で処理することによって、対応する塩に転換させることができる。適切な酸には、これらに限定されないが、鉱酸、例えばHCl、HBr、HI、HNOまたはHSOが含まれる。いくつかの実施形態では、この処理のための鉱酸溶液を提供する適切な有機溶媒、例えばアルコール溶媒、例えばメタノールおよびイソプロパノールを使用することが好ましい。
【0108】
次に、スキーム2で示したステップのそれぞれを詳細に論じる。
【0109】
ステップ1−式VaおよびVbのイミン化合物を生成させるための酸化;
式IVのビシクロ−化合物中のピロリジン環を酸化して対応するイミンを得る。ピロリジン環中に導入される多重結合は、環上の2つの位置のどちらにも導入可能なので、このステップによって、式VaとVbの異性体化合物の混合物が得られる。
【0110】
いくつかの実施形態では、式IVの化合物を、過硫酸ナトリウムまたは過硫酸カリウム、および触媒としての触媒量の硝酸銀、好ましくは約0.01〜約0.10モル当量の硝酸銀で処理することによって酸化を行うことが好ましい。これらの実施形態では、水を含む溶媒、または水/溶媒混合物、例えばアセトニトリルおよびその混合物から選択される溶媒と混合した水を使用することが好ましい。
【0111】
いくつかの実施形態では、アルカリ金属シアン化物、好ましくはシアン化カリウムの存在下で、硝酸銀と共に過硫酸カリウムを用いることが好ましい。この酸化法を用いるいくつかの実施形態では、反応媒体として水を使い、ピロリジン基質を懸濁させてそこで酸化を受けるようにすることが好ましい。さらに、水、過硫酸カリウムおよび硝酸銀を含む反応混合物を提供し、式IVの化合物を反応混合物に加えることが好ましい。ステップ1での過硫酸カリウム/硝酸銀酸化を用いるいくつかの実施形態では、存在する基質の量に対して、例えば約2モル%〜約10モル%、より好ましくは約5〜約7.5モル%の触媒量の硝酸銀を用いることが好ましい。いくつかの実施形態では、約10容積〜約15容積の水に溶解した約2.3当量〜約3.0当量の水酸化ナトリウムと共に、酸化されるピロリジン基質の量に対して少なくとも約1.1当量の過硫酸カリウムを用いることが好ましい。過硫酸塩/硝酸銀酸化手順を用いるいくつかの実施形態では、反応混合物中に少なくとも2当量のアルカリ金属シアン化物、好ましくはシアン化カリウムを用いることが好ましい。ステップ1での過硫酸塩による酸化を用いるいくつかの実施形態では、約−5℃〜約+5℃、より好ましくは約−5℃〜約0℃の温度で反応を実施することが好ましい。ステップ3での過硫酸カリウム酸化を用いるいくつかの実施形態では、チオ硫酸ナトリウム水溶液でクエンチし、生成物をメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)中に抽出し、その抽出物を濃縮し、溶液にメタノールを加えMTBEを留去してMTBEをメタノールで置き換えることによって反応の後処理を行うことが好ましい。この後処理を用いるいくつかの実施形態では、後処理によって得られた生成イミンのメタノール溶液を、本発明の方法の後続のステップで直接使用することが好ましい。
【0112】
いくつかの実施形態では、ピロリジン、例えば式IVまたは式IICの化合物(本明細書で記載の)を、ハロアミンに転換させ、続いてハロアミンを脱ハロゲン化水素化してイミンにすることによって、イミンを形成させることが好ましい。この方法を用いるプロセスの例、例えば、次亜塩素酸ナトリウムまたはN−クロロスクシンアミドを用いてピロリジンをハロゲン化することによってクロラミンを調製する例が、代理人整理番号CD06756L01USのもとでの2007年11月28日出願の米国仮出願に記載されている。その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0113】
ステップ2−イミンのスルホン酸塩付加体への転換
式VaとVbのイミンの混合物は、化合物の混合物を重亜硫酸ナトリウムの供給源で処理することによって、式Va1およびVb2の対応するスルホン酸塩付加体化合物に転換させる。重亜硫酸ナトリウムの供給源は、メタ重亜硫酸ナトリウムを水に溶解させて調製することが好ましい。いくつかの実施形態では、メタ重亜硫酸ナトリウムが約1当量〜約1.5当量である溶液を提供するような重量のメタ重亜硫酸ナトリウムを用いることが好ましい。いくつかの実施形態では、約10重量%のメタ重亜硫酸ナトリウムの溶液を用いることが好ましい。重亜硫酸ナトリウム供給源の水溶液を、式VaとVbの化合物の混合物の有機溶液、好ましくは、メチル−tert−ブチルエーテル(MTBE)中に約8重量%の化合物の混合物〜約32重量%の化合物の混合物、より好ましくはMTBE中に約16重量%の式VaとVbの化合物の混合物を含む溶液と接触させることによって、反応を実施することが好ましい。反応は、温度を好ましくは約20℃〜約35℃、より好ましくは約20℃〜約25℃に維持しながら、非混和性の有機溶液と水溶液を撹拌することによって、各相にまたがって行うことができる。反応混合物の有機層と水層が分離した後に単離することなく、反応混合物の水性部分中にin situで生成した6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]−ヘキサン−2−スルホネートナトリウムを使用することが好ましい。驚くべきことに、この付加体は温和な条件下で形成される。ここで、式VaおよびVbのアザシクロヘキセン化合物のC−2位へのスルホン酸塩付加体のトランス付加が大部分を占める。
【0114】
ステップ3−式Va1およびVb2の2−スルホネート付加体のシアノ基による官能化と、ステップ4−得られた2−シアノ基の加水分解:
スキーム2のステップ3では、式Va1とVb2のスルホン酸塩付加体化合物の混合物を、シアン化物供給源で処理して、式VIaおよびVIbの対応するニトリル化合物に転換させる。シアノ基の付加は、ビシクロ化合物のシクロプロピル環を形成するメチレン基が突きでているイミン環の反対面で優先的に攻撃されて、炭素位置2で起こる。したがって、シアノ基の付加によって、スキーム2の括弧内に化合物VIaおよびVIbとして示されているように、2つの鏡像異性体のうちの1つが優先的に生成される。この反応は、ステップ2で調製された重亜硫酸塩付加体の水溶液を固体シアン化ナトリウムで処理して実施することが好ましい。反応温度は、約25℃未満、好ましくは約20℃〜約25℃の範囲の温度に保持することが好ましい。いくつかの実施形態では、反応混合物水溶液を類似容量のMTBEと撹拌して、ニトリル化合物を、それを調製した水媒体から有機溶媒、好ましくはMTBE中に抽出することが好ましい。いくつかの実施形態では、このステップでMTBE溶液中に抽出されたニトリル化合物を、上記スキーム3のプロセスステップ4および5にしたがって、得られた化合物をMTBE溶液から単離することなく、転換させることが好ましい。
【0115】
したがって、いくつかの実施形態では、スキーム3のステップ4を参照して、ニトリル化合物の抽出に続いて、式VIaおよびVIbの化合物のMTBE溶液についてin situで加溶媒分解を実施して、対応するエステル化合物VIIaおよびVIIbにする。好ましくは、過剰モルの鉱酸、例えばHClの存在下で、アルコール、ROH(Rは上記定義通りである)を加えて加溶媒分解を実施し、続いてモル過剰の塩基、例えば重炭酸ナトリウムまたはアンモニアで処理して過剰な酸を中和する。好ましくは、R−OHのRはメチルおよびt−ブチルから選択される。鉱酸はHClであり、HClガスを、アルコール反応溶媒中に通し、続いて過剰モルの塩基、例えば重炭酸ナトリウムまたはアンモニアで処理して過剰な酸を中和することによって得ることが好ましい。いくつかの実施形態では、加溶媒分解反応を約−30℃〜約25℃の温度で実施することが好ましく、加溶媒分解反応を約−10℃以下の温度で実施することがより好ましい。
【0116】
メタノールを使用するいくつかの実施形態では、所望量のHClを反応混合物中にバブリングさせた後、反応混合物を室温に加温してメタノリシス反応を完結させ、式VIIaおよびVIIbの化合物をメチルエステルとして提供する。この後処理を用いるいくつかの実施形態では、高温、例えば約50℃〜約60℃でメタノリシスを完結させることが好ましい。この後処理を用いるいくつかの実施形態では、メタノリシス反応を完結させた後、反応混合物を濃縮してスラリーにし、このスラリーを約4容積〜約8容積のMTBEおよび約4容積の水で希釈し、その混合物を約−5℃〜約+5℃の温度に冷却し、その冷却混合物に、追加的な2容積の水に溶解させた約0.2当量の三塩基性リン酸カリウムを加えることが好ましい。
【0117】
この後処理手順を用いるいくつかの実施形態では、混合物の温度を約0℃〜約+5℃に保持しながら、塩基水溶液でpH約9〜pH約9.5のpHに調節することが好ましい。この後処理を用いるいくつかの実施形態では、MTBE層を分離し、それを洗浄し、その容積を約1/2〜約1/3の容積に濃縮し、メタノールを添加した後、MTBEを留去することによって、濃縮物中のMTBEをメタノールで置き換えることが好ましい。この後処理を用いるいくつかの実施形態では、得られた式VIIラセミ化合物含有メタノール溶液をステップ6で使用する。
【0118】
ステップ5−鏡像異性体塩の生成:
スキーム3のステップ5を参照して、式VIIaとVIIbの化合物の混合物に、示したような、(a)(1R,2S,5S)鏡像異性体を沈澱させるためのD−DTTA(ジ−p−トルオイル−D−酒石酸)もしくはD−DBTA(ジベンゾイル−D−酒石酸);または(b)(1S,2R,5R)鏡像異性体を沈澱させるためのL−DTTA(ジ−p−トルオイル−L−酒石酸)もしくはL−DBTA(ジベンゾイル−L−酒石酸)のいずれかを加えることによって、選択された鏡像異性体塩の形成を完遂させる。これらのキラル酸のそれぞれは市販されている試薬である。上記したように、D−DTTAは、式VIIaとVIIbの化合物の混合物中に存在する(1R,2S,5S)鏡像異性体と反応し、L−DTTAは、式VIIaとVIIbの化合物の混合物中に存在する(1S,2R,5R)鏡像異性体と反応し、少なくとも約90%鏡像異性体過剰で対応するジ−p−トルオイル−酒石酸塩が沈澱してくる。同様に、D−DBTAは、式VIIaとVIIbの化合物の混合物中に存在する(1R,2S,5S)鏡像異性体と反応し、L−DTTAは、式VIIaとVIIbの化合物の混合物中に存在する(1S,2R,5R)鏡像異性体と反応し、少なくとも約85%鏡像異性体過剰で対応するジベンゾイル−酒石酸塩が沈澱してくる。いくつかの実施形態では、このステップで、メタノール、TBMEおよびその混合物から選択される溶媒を使用することが好ましい。混合溶媒を用いる場合、約2:1〜約4:1のTBME:MeOHの比で用いることが好ましい。本発明のいくつかの実施形態では、沈澱化反応を、約15℃〜約50℃の温度で実施することが好ましい。
【0119】
本発明のいくつかの実施形態では、ステップ5で沈澱した鏡像異性体塩、例えば式SIおよびSIaの塩、例えば式SIのDTTA塩を、HCVプロテアーゼ阻害剤化合物の合成において後で使用するために、以下の方法によってHCl塩に転換させる。いくつかの実施形態では、単離した鏡像異性塩を、好ましくは約1:7〜約1:8のi−プロパノール:MTBEの体積比のイソプロピルアルコールとMTBEの混合液中に懸濁させる。この懸濁液を、好ましくは5M以下の濃度を有する、イソプロパノール溶液中の約1.18〜約1.20当量(使用する塩の量に対して)の塩酸で処理する。任意選択のHCl塩転換ステップを用いるいくつかの実施形態では、その転換が進行して、それが完結したら、反応混合物を冷却して塩酸塩を確実に沈澱させる。沈澱が完了したら、ろ過により沈殿物を単離し、真空乾燥する。
【0120】
本発明をさらに説明するために、以下の非限定的実施例を提供する。当業者には、本発明の開示、材料と方法および反応条件の両方に対する多くの修正、変更および改変を行うことができることは明らかであろう。すべてのそうした修正、変更および改変は、本発明の趣旨および範囲内にあるものとする。
【実施例】
【0121】
別段の指定のない限り、すべての溶媒および試薬は市販品であり、購入したままで使用する。別段の指定のない限り、以下の実施例において、以下の略号は記載した意味を有する。
mL=ミリリットル
g=グラム
eq=当量
THF=テトラヒドロフラン
MeOH=メタノール
Me=メチル
TBME=メチルtert−ブチルエーテル
ACN=アセトニトリル
Ph=フェニル。
【0122】
(実施例1) 6,6−ジメチル−3−N−ベンジル−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,4−ジオン(IIB)の調製
【0123】
【化22】

【0124】
ステップ1:IからIIB
51.32gの化合物II(0.37モル、1当量)および50mLのTBMEをフラスコにチャージした。撹拌しながら、混合物を0〜10℃に冷却した。40.0mLのベンジルアミン(39.24g、0.37モル、1当量)を約30分間かけて滴下した。その添加が完了したら、60〜70℃で蒸留してTBMEを除去し、170〜180℃の内温まで混合物を徐々に加熱した。溶液を170〜180℃で約3〜5時間保持して環化を完結させた。得られた溶液を60〜70℃に冷却し、イソプロパノール中5%水の100mLの溶液を加え、混合物を室温に冷却した。0〜10℃にさらに冷却した後、生成物をろ過により単離し、清浄な冷イソプロパノールで濯ぎ、真空オーブン中で乾燥して70.99gのベンジルイミドIIBを得た(85%)。
【0125】
【化23】

【0126】
ステップ2:IIBからIIC
ステップ2において、以下の手順にしたがって、LiAlHを用いてベンジルイミド(IIb)を還元して対応するピロリジンにする。LiAlH(THF中に2.4M、1.3モル)を、温度プローブ、冷却管およびメカニカルスターラーを備えた丸底フラスコに入れた。混合物を加温し、50℃で保持した。メカニカルスターラーを備えた別の丸底フラスコにイミド(化合物IIB、229g、1.0モル)およびTHF(750mL)を加えた。得られた混合物を5分間撹拌し、添加漏斗を用いて、THFが穏やかに還流させる速さでLiAlH溶液に加えた。添加漏斗をTHF(50mL)で濯ぎ、この液を混合物に加えた。得られた懸濁液を2時間還流させた。混合物を室温まで冷却した。メカニカルスターラーを備えた別の大きな丸底フラスコに、酒石酸カリウムナトリウム四水和物(734g、2.6モル)、水(1.4L)およびNaOH(208g、5.2モル)を加えた。溶液を20℃で15分間撹拌した。この水溶液に、イミド懸濁液を1時間半かけて徐々にチャージした。得られた二相混合物を40〜45℃に加熱し、15分間撹拌した。混合物を40〜45℃で15分間沈降させた。水層から有機物を分離した。水相をMTBE(460mL)で抽出した。一緒にした有機相を真空下で濃縮してベンジル化アミン(IIC、191g、95%)をオレンジ色の油状物として得た。
【0127】
ステップ3:IICからIII
丸底フラスコにベンジル化アミン(179.5g、0.89モル)、MeOH(360mL)および活性炭(5g)をチャージした。懸濁液をろ過し、ケーキを追加のMeOH(50mL)で洗浄した。ろ液に酢酸(90mL)を加え、この溶液をビュッヒ(Buchi)型水素化器にチャージした。別のフラスコに5%Pd/C(17.9g、10%重量/重量)およびMeOH(30mL)を加えた。この混合物を水素化器に加えた。水素化器にH(3×3バール)をチャージし、得られた懸濁液を20〜25℃で6時間撹拌した。触媒をろ過し、水素化器をMeOH(2×100mL)で洗浄した。一緒にした溶媒を真空下、40℃で溶液が粘性になるまで濃縮した。この溶液に水(120mL)を加え、得られた混合物を20℃に冷却した。この混合物に10N NaOH(180mL)およびMTBE(450mL)を加えた。この二相混合物を10分間撹拌し、さらに10分間沈降させた。有機相を90℃に加熱し、常圧で濃縮した。得られた粗残留物を130mmHgで蒸留して式IIIの化合物(72.8g、97.8%)を無色液体として得た。
【0128】
(実施例2) 6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−2−エン(V)の調製
【0129】
【化24】

【0130】
フラスコに、−5℃で41.4gのNaOH(1.04モル、2.3当量)、134gのK、750mLの水および100mLのアセトニトリルをチャージした。50gの化合物IV(0.45モル、1.0当量)を加え、この反応混合物を再度−5℃に冷却した。反応温度を−5〜0℃に維持しながら、1〜2時間かけて20mLのAgNO水溶液(3.9g、0.0225モル、0.05当量)を反応混合物に加えた。反応混合物を0〜2℃に加温し、反応を完結させた。反応が完結したら混合物を室温に加温し、360mLのTBMEで希釈した。層を分離し、水層をTBMEで抽出した。一緒にした有機層を無水NaSOで乾燥し、ろ過した。溶液を分別蒸留で精製してVを無色油状物として得た。これを静置すると固化して白色の結晶性の固体化合物V(65〜75%収率)が生成した。
【0131】
【化25】

【0132】
(実施例3) ステップ2、スキーム2−式Va1およびVa2のスルホン酸塩付加体化合物の調製
1L丸底フラスコに、周囲温度で300mLの水および34.2gのメタ重亜硫酸ナトリウム(市販品をそのまま使用した)を加えた。反応混合物を周囲温度で10分間撹拌して確実に均一溶液にした。この重硫酸塩溶液に、実施例2、手順Bにしたがって調整されたMTBE溶液の形態の208gの式Vのイミン化合物を、反応混合物を35℃未満の温度に保持しながら1時間かけて加えた。添加漏斗を追加の10mLのMTBEで濯ぎ、これを反応混合物に加え、室温に保持しながら、一緒にした反応混合物を1時間撹拌した。1時間後、反応混合物の有機相と水相を分離した。水相を50mLのMTBEで洗浄した。
【0133】
(実施例4) ステップ3、スキーム2−式VIaおよびVIbのニトリル化合物の調製
実施例3で調製した水相全量を1L丸底フラスコに入れた。このフラスコに、反応混合物の温度が25℃未満に保持される速度で、17.6gのシアン化ナトリウム(市販品をそのまま使用した)を10分間かけて加えた。20℃〜25℃の温度に保持しながら、反応混合物を1時間撹拌した。1時間たった時点で、130mLのMTBEを一括して反応混合物に加え、周囲温度に保持しながら5分間撹拌した。有機層と水層を分離した。有機層を33mLの分量の20重量%NaCl水溶液で2回洗浄し、実施例5で使用した。
【0134】
(実施例5) ステップ4、スキーム3:式VIIaおよびVIIbのエステル化合物の調製
1L丸底フラスコに168gのHClを28重量%メタノール溶液として入れた。実施例4で調製したニトリルを含むMTBE溶液全量を、その反応混合物を30℃以下の温度に保持しながら、メタノール性HClに45分間かけて加えた。添加した後、反応混合物を加熱させ(約50℃)、5時間還流させた。5時間後、反応フラスコに部分真空をかけ、反応混合物が50℃を超えないようにしてペースト状になるまでMTBE/メタノール/HCl混合物を蒸留した。この温かいペースト状物に130mLのMTBEを一括して加え、懸濁液を得た。懸濁液を0℃〜5℃の温度に冷却した。撹拌しながら懸濁液に130mLの水を加え、透明な二相混合物を得た。66mLの水に13.8gリン酸三カリウム一水和物を加えた溶液の全量を、5℃未満の温度に保持しながら、反応混合物に10分間かけて加えた。36mLの10N NaOH水溶液を加えて、反応混合物のpHを9.3に調節した。0℃〜5℃の温度に保持しながら、反応混合物をさらに15分間撹拌した。撹拌を停止し、層を分離させた。水層を66mLのMTBEで抽出し、これを有機層に加えた。式VIIaおよびVIIbのエステル化合物を含む一緒にした有機相を66mLの分量の20%塩溶液で洗浄し、保持した。出発ニトリルの量に対して、75%のHPLC収率を得た。
【0135】
(実施例6) ステップ5、スキーム3−式SIのD−塩エステル化合物の沈澱化
1L丸底フラスコに、50℃に加熱しながら、175mLのメタノールおよび69.5gのD−DTTAをチャージして溶液を得た。フラスコに、実施例5で調製した175.0gの式VIIaとVIIbの化合物の混合物を含むMTBE溶液の全量を1時間かけて加えた。溶液を加えるのに用いた添加漏斗を10mLのMTBEで濯ぎ、これを反応混合物に加えた。加熱還流しながら(約50℃〜55℃)、反応混合物を3時間撹拌した。反応混合物を40℃に冷却し、沈殿物をろ過により単離した。固形物を40℃で、60mLの分量のメタノールで3回洗浄し、常圧下、40℃で乾燥して58.6gのDTTA塩を得た。用いたメチルエステルの量に対する収率は50%と算出された。(1R,2S,5S)鏡像異性体の鏡像異性体過剰率は97.5%であった。
【0136】
本発明を、上記した具体的な実施形態とともに説明してきたが、これらの実施例は説明のためのものであり、これらに限定されるものではない。当業者には、多くのその代替形態、修正形態および他の様々な変更形態が明らかであろう。そうしたすべての代替形態、修正形態および変更形態は、本発明の趣旨および範囲内に包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Va−SとVb−Sの6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−スルホネートナトリウム付加体化合物の混合物
【化26】

の調製方法であって、式VaとVbの化合物のイミン混合物
【化27】

の有機溶液を重亜硫酸ナトリウムの供給源と反応させることを含む方法。
【請求項2】
イミンの有機溶液と反応させる前記重亜硫酸ナトリウム供給源が、前記有機イミン溶液と混合された重亜硫酸ナトリウムの供給源の水溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イミンの有機溶液がメチルtertブチルエーテルを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記重亜硫酸ナトリウム供給源が、水とメタ重亜硫酸ナトリウムを含む水溶液である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
式IVaのピロリド化合物:
【化28】

(式中、「R」は、H、アルキルおよびアルキル−アリールから選択される)
を酸化させるステップを含む方法によって、反応のためのイミンを提供することをさらに含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
「R」がHであり、過硫酸カリウムおよび硝酸銀を含む試薬を用いて前記ピロリジン化合物が酸化されている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1当量の過硫酸カリウムおよび約0.01〜約0.10当量の硝酸銀を含むMTBE/水の溶液に前記ピロリジン化合物を加えることによって、前記酸化を実施する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
式VIaとVIbのニトリル化合物の混合物
【化29】

を提供する方法であって、
(i)無水カロン酸をベンジルアミンと反応させて式IIBの2,4ジオン
【化30】

を生成させるステップと、
(ii)前記式IIBのジオンを還元して式IICの3−アザ−ベンジル−ビシクロヘキサン化合物
【化31】

にするステップと、
(iii)前記式IICの化合物を還元して6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンにするステップと、
(iv)還元ステップ(iii)からの前記ヘキサン生成物を酸化して、式VaとVbのイミンを含む混合物
【化32】

を提供するステップと、
(v)酸化ステップ(iv)で生成した化合物の混合物を、重亜硫酸ナトリウムと反応させて、式Va−SおよびVb−Sのトランス−重亜硫酸塩付加体化合物
【化33】

を提供するステップと、
(vi)ステップ(v)で生成した重亜硫酸塩付加体化合物の混合物を、シアノ付加体の供給源と反応させて、対応する前記式VIaとVIbのニトリル化合物の混合物を生成させるステップと
を含む方法。
【請求項9】
前記ジオン還元ステップ(ii)を、前記ジオンをLiAlHと反応させることによって実施する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記式IICの化合物の還元ステップ(iii)を、Pd/C触媒を用いた水素化によって実施する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化ステップ(iv)を、ステップ(iii)で生成した前記6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンを過硫酸カリウムおよび硝酸銀触媒を含む酸化剤で処理するステップを含む方法で実施する、請求項8から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
式IとIaのアルキルエステル化合物の対応する混合物
【化34】

(式中、Rは、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、置換アラルキル、シクロアルキルまたは置換シクロアルキルである)
を提供するために、式R−OHのアルコールの存在下、鉱酸で処理することによって、ステップ(vi)で生成した式VIaとVIbのニトリル化合物の混合物を加水分解するステップをさらに含む、請求項8から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
式IとIaのエステル化合物の混合物の溶液をキラル酒石酸誘導体で処理して、前記混合物の溶液から式Iの化合物かまたは式Iaの化合物の酒石酸誘導体塩を高い鏡像異性体過剰率で沈澱させるステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記酒石酸誘導体が、ジ−p−トルオイル−D−酒石酸(「D−DTTA」)およびジベンゾイル−D−酒石酸(「D−DBTA」)から選択され、それによって、(1R,2S,5S)−メチル6,6−ジメチル−3−アザビシクロ−[3.1.0]ヘキサン−2−カルボキシレート鏡像異性体の塩が沈澱する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記酒石酸誘導体が、l−ジ−p−トルオイル−L−酒石酸(「L−DTTA」)およびl−ジベンゾイル−L−酒石酸塩(「L−DBTA」)から選択され、それによって、(1S,2R,5R)−メチル6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボキシレート鏡像異性体の塩が沈澱する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
式Va−S
【化35】

の化合物。
【請求項17】
式Vb−S
【化36】

の化合物。

【公表番号】特表2010−513501(P2010−513501A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542868(P2009−542868)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/025809
【国際公開番号】WO2008/082508
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】