説明

重合体ビグアニド及び共重合体を含有する抗菌組成物及びその使用

本発明は、(i)抗菌剤、及び(ii)式(1)の塩基性共重合体を含む組成物に関し、前記式中、[A]は式(9)を有し、[B]は式(10)を有し、そして[D]は式(12)を有し、式(13)Xは式(11)を有し、然も、[A]、[B]、及び[D]は、どのような順序で存在していてもよく、Tは場合により置換された置換基であり;L及びZは、夫々独立に、場合により置換された結合基であり;R、R、及びRは、夫々独立に、H、場合により置換されたC1−20−アルキル、又は場合により置換されたC3−20−シクロアルキルであり;R及びRは、夫々独立に、H又はC1−4−アルキルであり;Eは塩基性置換基であり;qは15〜1000であり;mは0〜350であり;nは1〜75であり、yは1〜100であり;sは0又は1であり;pは3〜50であり;但しR及びRの少なくとも一つはHであり、R、R、R、T、L、Zは、[D]のEをプロトン化することができる酸性基を含まないものとする。






【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面上の微生物の増殖を、塩基性ビニル櫛型共重合体及び抗菌剤を含む組成物により阻止する方法に関する。抗菌剤は、時間と共に調節された仕方で塩基性共重合体から遊離されることにより、効果的な抗菌性防除を与える。
【背景技術】
【0002】
多くの無生物及び生物の表面上に微生物を見出すことができる。そのような微生物の存在は、病院及び医療環境、台所、浴室、トイレ、及び食品の調製及び包装で非衛生的状態を与え、健康上の危険や汚染を起こす結果になることがある。
【0003】
食品及び健康保護環境中で見出される多くのビルレント(virulent)型微生物に対し有効である幾つかの抗菌剤が存在する。残念ながら、そのような薬剤の活性度は、持続した表面衛生効果を与えることに関しては不充分である。このことは、表面上の抗菌剤の大きな水溶性及び/又は永続性が欠如していることによるものであろうが、そのことは抗菌剤が容易に移動してしまうことを意味している。従って、抗菌剤、又は持続した時間に亙って高度の抗菌殺菌性を与える送出システムと組合せた抗菌剤に対する必要性が存在する。
【0004】
文献には、微生物、特にバクテリアによる汚染が、例えば、水泳プール、工業的配管、建築構造物、船体、病院、劇場、歯及び台所の表面を含めた表面の損傷又は汚染を起こす種々の場合があることが記載されている。実際、特に無生物及び生物表面上のバクテリア増殖を伴う微生物学的問題を解決するために、多くの試み及び方法が行われてきた。
【0005】
欧州特許0182523には、或る重合体組成物が、歯の表面上に口内バクテリアが集落化を起こさないようにするのに如何に有効であるかが記載されている。英国特許2213721には、抗菌剤と共に重合体を含む抗汚染組成物が、口内環境中で見出されるバクテリアに対し効果的であることが示されている。
【0006】
欧州特許0232006には、海洋環境中で用いるためのスルホン化重合体及び殺微生物剤を含む被覆組成物が、加水分解不安定性を有することが示されている。この場合、殺微生物剤を含むか又はそれを含まない水性環境中で、その重合体の被覆の実質的な侵食が可能になり、それにより自己研磨効果により作用して、保護すべき表面でバクテリアの集落化能力を減少していた。
【0007】
WO/02449には、高分子量グラフト重合体を含む表面の殺生物処理法が記載されている。
【0008】
しかし、上記文献のいずれにも、微生物を効果的に除去する能力を有し、持続した表面衛生効果を有する抗菌システムは記載されていない。
【0009】
今後用いられる用語「持続(sustained)」は、薬剤が適用されてきた表面を、例えば、その表面を拭うか、濯ぐか、又は洗浄することにより清浄にした後でも、依然として活性である抗菌剤を指す。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
我々は、或る抗菌剤と、塩基性ビニル櫛形共重合体(今後塩基性共重合体と呼ぶ)との組合せが、表面での微生物の増殖を阻止するために用いた場合、効果的で持続性のある抗菌力(anti-microbial activity)を与えることを今度思いがけなく見出した。本発明は、抗菌剤、特に殺生物剤と組合せた、主鎖及び側鎖の両方に種々の官能性を有する塩基性共重合体に基づく表面処理のための組成物を与える。
【0011】
従って、本発明の第一の態様によれば、
(i) 重合体ビグアニドを単独で、又は第四級アンモニウム化合物、モノ第四級複素環アミン塩、尿素誘導体、アミノ化合物、イミダゾール誘導体、ニトリル化合物、錫化合物又は錯体、イソチアゾリン−3−オン、チアゾール誘導体、ニトロ化合物、沃素化合物、アルデヒド遊離剤、チオン、トリアジン誘導体、オキサゾリジン及びその誘導体、フラン及びその誘導体、カルボン酸及びその塩及びエステル、フェノール及びその誘導体、スルホン誘導体、イミド、チオアミド、2−メルカプト−ピリジン−N−オキシド、アゾール殺真菌剤、ストロビルリン(strobilurin)、アミド、カルバメート、ピリジン誘導体、活性ハロゲン基を有する化合物、及び有機金属化合物からなる群から選択された少なくとも一種類の他の微生物学的に活性な成分と組合せて含む抗菌剤;及び
(ii) 式(1):
【0012】
【化1】

【0013】
〔式中、
[A]は、式(9)を有し、
【0014】
【化2】

【0015】
[B]は、式(10)を有し、
【0016】
【化3】

【0017】
そして、[D]は、式(12)を有し、
【0018】
【化4】

【0019】
ここで、
Xは、式(11)を有し、
【0020】
【化5】

【0021】
式中、[A]、[B]、及び[D]は、どのような順序で存在していてもよく;
Tは、場合により置換された置換基であり;
L及びZは、夫々独立に、場合により置換された結合基であり;
、R、及びRは、夫々独立に、H、場合により置換されたC1−20−アルキル又は場合により置換されたC3−20−シクロアルキルであり;
及びRは、夫々独立に、H、又はC1−4−アルキルであり;
Eは、塩基性置換基であり;
qは、15〜1000であり;
mは、0〜350であり;
nは、1〜75であり;
yは、1〜100であり;
sは、0又は1であり;
pは、3〜50であり;
但し、R及びRの少なくとも一方はHであり、R、R、R、T、L、及びZは、[D]のEをプロトン化することができる酸性基を含まないものとする。〕
を有する塩基性共重合体;
を含む組成物が与えられる。
【0022】
本発明の第一の態様による組成物に用いるのに好ましい抗菌剤は、抗バクテリア剤、一層好ましくは重合体ビグアニドである。
【0023】
重合体ビグアニド
好ましくは、重合体ビグアニドは、少なくとも一つのメチレン基を含む架橋基により結合された、少なくとも二つの式(2)のビグアニド単位を含む:
【0024】
【化6】

【0025】
架橋基は、酸素、硫黄、又は窒素のような一つ以上のヘテロ原子により置換された、又は場合によりそれを組込んだ、ポリメチレン鎖を含むのが好ましい。架橋基は、一つ以上の環式部分を含んでいてもよく、それは飽和していてもいなくてもよい。架橋基は、二つの隣接する式(2)のビグアニド単位の間に、少なくとも三つ、特に少なくとも四つの炭素原子が直接挿入されるような架橋基であるのが好ましい。二つの隣接する式(2)のビグアニド単位の間に介在する炭素原子は、10個以下であり、特に8個以下であるのが好ましい。
【0026】
重合体ビグアニドは、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、又はアミン基、又は式(3)のシアノグアニジン基のような適当な基によって末端封鎖されていてもよい:
【0027】
【化7】

【0028】
末端基がヒドロカルビルである場合、それは、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキルであるのが好ましい。ヒドロカルビル基がアルキルである場合、それは、直鎖又は分岐鎖でもよいが、直鎖であるのが好ましい。
【0029】
好ましいアルキル基には、C1−8−アルキルが含まれる。好ましいアルキル基の例には、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ペンチル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、及びn−オクチルが含まれる。
【0030】
ヒドロカルビル基がシクロアルキルである場合、それは、シクロプロピル、シクロフェニル、又はシクロヘキシルであるのが好ましい。ヒドロカルビル基がアラルキルである場合、それは、アリール基をビグアニドへ結合しているアルキレン基中に好ましくは1〜6、一層好ましくは1又は2個の炭素原子を含む。好ましいアラルキル基には、ベンジル及び2−フェニルエチル基が含まれる。
【0031】
好ましいアリール基にはフェニル基が含まれる。末端基が置換ヒドロカルビルである場合、置換基は、重合体ビグアニドの微生物学的性質に望ましくない悪影響を示さないどのような置換基でもよい。そのような置換基の例は、アリールオキシ、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、ハロゲン、及びニトリルである。
【0032】
重合体ビグアニドが、二つの式(2)のビグアニド基を含む場合、そのビグアニドはビスビグアニドである。二つのビグアニド基は、ポリメチレン基、特にヘキサメチレン基によって結合されているのが好ましい。
【0033】
重合体ビグアニドは、二つより多くの式(1)のビグアニド単位を含むのが好ましく、式(4)によって表される反復重合体鎖を有する線状重合体ビグアニド、又はその塩であるのが好ましい:
【0034】
【化8】

【0035】
式中、d及びeは、架橋基を表し、それは同じでも異なっていてもよく、それらを一緒にして、dにより結合された窒素原子対の間に直接介在する炭素原子数と、eにより結合された窒素原子対の間に直接介在する炭素原子数との合計は、9より大きく、17より小さい。
【0036】
架橋基d及びeは、ポリメチレン鎖からなるのが好ましく、場合によりヘテロ原子、例えば、酸素、硫黄、又は窒素によって中断されている。d及びeは、飽和又は不飽和でもよい部分が組込まれていてもよく、その場合、d及びeにより結合された窒素原子対の間に直接介在する炭素原子数は、環式基(単数又は複数)の最も短いセグメントを含むものとして数える。例えば、基:
【0037】
【化9】

【0038】
の中の窒素原子の間に直接介在する炭素原子数は、4であり、8ではない。
【0039】
式(4)の反復重合体単位を有する線状重合体ビグアニドは、重合体鎖が異なる長さを有する場合の重合体混合物として得られるのが典型的である。好ましくは、式(5a)及び(5b):
【0040】
【化10】

【0041】
の個々のビグアニド単位の数は、一緒にして3〜約80である。
【0042】
好ましい線状重合体ビグアニドは、d及びeが同じである重合体鎖の混合物であり、末端基を除いた個々の重合体鎖は、式(6)を有するか、又はその塩である:
【0043】
【化11】

【0044】
式中、nは、4〜20であり、特に4〜18である。nの平均値が約16であるのが特に好ましい。遊離塩基型の重合体の平均分子量は、1100〜4000であるのが好ましい。
【0045】
線状重合体ビグアニドは、式(7):
【0046】
【化12】

【0047】
を有するビスジシアンジアミドと、ジアミン、HN−e−NHとの反応によって製造することができ、この場合、d及びeは、上に定義した意味を有し、或は式(8):
【0048】
【化13】

【0049】
を有するジシアンアミドのジアミン塩と、ジアミンHN−e−NHとの反応により製造してもよく、この場合d及びeは、上に定義した意味を有する。これらの製造方法は、英国特許第702,268号及び第1,152,243号明細書に夫々記載されており、そこに記載された重合体ビグアニドは、いずれも本発明で用いることができる。
【0050】
前に述べたように、線状重合体ビグアニドの重合体鎖は、アミノ基、又は式(9)のシアノグアニジン基により末端封鎖されていてもよい:
【0051】
【化14】

【0052】
このシアノグアニジン基は、線状重合体ビグアニドの製造中、加水分解し、グアニジン末端基を生ずることがある。末端基は、夫々の重合体鎖で、同じでも異なっていてもよい。
【0053】
Rが、1〜18個の炭素原子を有するアルキル基を表す場合、第一級アミンR−NHを僅かな割合で、上に記載したような重合体ビグアニドの製造中にジアミンHN−e−NHと共に含ませてもよい。第一級アミンは末端封鎖剤として働き、従って、重合体ビグアニド重合体鎖の一方又は両方の末端が−NHR基によって封鎖されていてもよい。これらの−NHR末端封鎖重合体ビグアニドも用いることができる。
【0054】
重合体ビグアニドは、無機酸及び有機酸の両方と容易に塩を形成する。重合体ビグアニドの好ましい塩は、水溶性である。
【0055】
本発明に従って用いられる重合体ビグアニドは、線状重合体の混合物であるのが特に好ましく、それらの個々の重合体鎖は、末端基を除いて、式(6)により、塩酸塩の形で表される。このポリ(ヘキサメチレンビグアニド)化合物は、アベシア社(Avecia Limited)から、商標名バントシル(Vantocil)、コスモシル(Cosmocil)、及びレピューテックス(Reputex)として市販されている。
【0056】
塩基性共重合体
本発明の塩基性共重合体は、次の実験構造式で例示されるのが好ましい。
【0057】
【化15】

【0058】
ここで言及する用語、塩基性共重合体は、二種類以上のオレフィン系不飽和単量体の付加重合反応(即ち、水性又は非水性媒体中で行うことができる遊離ラジカル開始法)から誘導することができる共重合体を記述するのに用いる。
【0059】
本発明で用いるための塩基性共重合体を形成するために用いることができるビニル単量体の例には、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジルメタクリレート、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、エチレン又はプロピレンオキシドのビニルポリエーテル、例えば、ヒドロキシポリエトキシ(5)ポリプロポキシ(5)モノアリルエーテル〔ビマックス・ケミカルズ社(Bimax Chemicals Ltd)から入手できるBX−AA−E5P5〕、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノメチルスチレン、4−アミノスチレン、N,N−ジメチルアミノスチレン、及びアミノメチルスチレンが含まれるが、それらに限定されるものではない。塩基性アミン含有単量体は、遊離アミン、プロトン化塩、又は四級化アミン塩として重合することができる。例えば、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル第四級塩〔チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)からエージフレックス(AGEFLEX)FA1Q80MCとして、又は三菱レーヨン社(Mitsubishi Rayon Co. Ltd)からDMCMAとして入手することができる〕、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化ベンジル第四級塩(チバ・スペシャルティー・ケミカルズからエージフレックスFM1Q80BCとして入手することができる)、及びN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート塩化ベンジル第四級塩(チバ・スペシャルティー・ケミカルズからエージフレックスFA1Q80BCとして入手することができる)である。ビニルエステルも用いることができ、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、及びバーサティック・アシッド(versatic acid)のビニルエステル〔レゾリューション・パーフォーマンス・プロダクツ(Resolution Performance Products)から商標名ベオバ(VeoVa)として入手できる〕を用いることができる。複素環ビニル化合物のビニルエーテル、モノオレフィン系不飽和ジカルボン酸のアルキルエステル(例えば、マレイン酸ジ−n−ブチル及びフマール酸ジ−n−ブチル)、特にアクリル酸及びメタクリル酸のエステル、フイルムを後で架橋するための付加的官能性を有するビニル単量体、例えば、ジアセトンアクリルアミド、グリシジルメタクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び2−(トリメチルシロキシ)エチルメタクリレートも用いることができる。
【0060】
本発明による塩基性共重合体の特に好ましい形態は、アクリル酸又はメタクリル酸のエステルから誘導されたアクリル共重合体である。
【0061】
本発明の塩基性共重合体は、式(1):
【0062】
【化16】

【0063】
〔式中、
[A]は、式(9)を有し、
【0064】
【化17】

【0065】
[B]は、式(10)を有し、
【0066】
【化18】

【0067】
そして、[D]は、式(12)を有し、
【0068】
【化19】

【0069】
ここで、
Xは、式(11)を有し、
【0070】
【化20】

【0071】
式中、[A]、[B]、及び[D]は、どのような順序で存在していてもよく;
Tは、場合により置換された置換基であり;
L及びZは、夫々独立に、場合により置換された結合基であり;
、R、及びRは、夫々独立に、H、場合により置換されたC1−20−アルキル又は場合により置換されたC3−20−シクロアルキルであり;
及びRは、夫々独立に、H、又はC1−4−アルキルであり;
Eは、塩基性置換基であり;
qは、15〜1000であり;
mは、0〜350であり;
nは、1〜75であり;
yは、1〜100であり;
sは、0又は1であり;
pは、3〜50であり;
但し、R及びRの少なくとも一方はHであり、R、R、R、T、L、及びZは、[D]のEをプロトン化することができる酸性基を含まないものとする。〕
の一つ以上の反復単位を含む少なくとも一種類の重合体を含む。
【0072】
ここで言及する用語、酸性基とは、[D]の塩基性基Eをプロトン化することができるどのような基でも、例えば、カルボン酸又はスルホン酸基を記述するのに用いられている。
【0073】
式(1)において、[A]は、イオン化可能又はイオン化された官能基を含まないオレフィン系不飽和重合可能な単量体から誘導されたものである。[B]は、塩基性共重合体の懸垂ポリエーテル櫛型官能基を与え、[C]は、遊離アミン、プロトン化アミン塩、又は四級化アミン塩の形の塩基性官能基を与える。
【0074】
式(1)の塩基性共重合体は、懸垂ポリアルキレンオキシド及び塩基性官能基を有する主鎖を含み、この場合[D]が誘導される単量体中の塩基性置換基[E]のpKaは、5.5〜13.5の範囲にある。一層好ましくは、[D]が誘導される単量体中の塩基性置換基[E]のpKa値は、8〜12の範囲にある。
【0075】
塩基性成分[E]についてのpKaは、塩基性基[E]の共役酸[EH]の酸性強度の尺度である。ここで、Kaは次のように定義される:
【0076】
【数1】

【0077】
式中、pKa=−logKaであり、Keqは、平衡定数である。
【0078】
本発明の塩基性共重合体は、一般に10〜95重量%、一層好ましくは20〜80重量%、最も好ましくは30〜70重量%の範囲の[B]を含む。
【0079】
[A]は、0〜25重量%の範囲で存在するのが好ましい。
[D]は、好ましくは1〜80重量%、一層好ましくは1〜60重量%、最も好ましくは5〜50重量%の範囲で存在する。
【0080】
[A]対[B]対[D]のモル比(m:n:v)は、夫々、塩基性共重合体の曇り点が0℃より高く、一層好ましくは15℃より高く、最も好ましくは25℃より高くなるように選択する。
【0081】
本発明の塩基性共重合体は、必要な曇り点を達成するためには、好ましくは[B]により導入されたポリエチレンオキシドを20〜80重量%、一層好ましくは[B]により導入されたポリエチレンオキシドを30〜70重量%含む。
【0082】
曇り点値は、重合体の水に対する溶解度に関係し、二種類以上の成分の混合物中で光を散乱する凝集物の形成により溶液が曇ることによって示される液・液相分離が行われる境界を指す。蒸留水に入れた重合体の1重量%溶液が曇るようになる温度が、曇り点温度である。
【0083】
本発明で好ましい範囲の曇り点を達成するのに必要な[B]中に存在するポリエチレンオキシドの正確なレベルは、数多くの因子に依存する。それらの中には、次のものが含まれる:
(i) 共重合体中の[A]のレベル及び疎水性;
(ii) [D]のレベル及び疎水性、及び[E]が、共重合体中遊離塩基として存在するか、又は塩として存在するか;
(iii) R、R、X、及びpの値〔式(11)中〕により定められる[B]の組成;及び
(iv) 溶液中に有機物又は電解質が存在するか否か。
【0084】
本発明の抗菌剤/塩基性共重合体組成物は、透明な溶液を形成するのが好ましい。即ち、抗菌剤、例えば、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)(PHMB)が存在する中での塩基性共重合体の曇り点が、15℃より高く、一層好ましくは25℃より高いのが好ましい。
【0085】
qの値は、15〜1000の範囲にあるのが好ましいが、qは、20〜400の範囲にあるのが最も好ましい。
【0086】
、R、及びRは、夫々独立に、H、C1−20−アルキル、又はC3−20−シクロアルキルである。好ましくはR、R、及びRは、好ましくはH、C1−10−アルキル、又はC3−8−シクロアルキルである。最も好ましくはRは、H又はCHであり、Rは、H又はCHであり、Rは、H又はC1−6−アルキル、特にH又はCHである。
【0087】
式(11)中のXの反復単量体単位中のR及びRは、同じか又は異なっていてもよく、R及びRの少なくとも一方がHである限り、夫々独立に、H、又はC1−4−アルキルである。好ましくは、R及びRの一方がHであり、他方が−CH、又は−Cであり、その結果、Xはオキシエチレン単位を含むか、又はオキシエチレン、オキシプロピレン、及び/又はオキシブチレン単位の混合物を含む。最も好ましくはR及びRは、両方共Hであり、従って、Xはオキシエチレン単位を含む。
【0088】
式(10)中のpの値は、好ましくは3〜50であり、一層好ましくは3〜40であり、最も好ましくは3〜25である。
【0089】
Tは、場合により置換された置換基であり、その例には、CN、OH、F、Cl、Br、−OR、−C(O)R、−OC(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、及び場合により−OC(O)R、F、Cl、Br、C1−6−アルキル、−CHCl、又は−C(O)ORにより置換されたアリールが含まれる。
【0090】
は、C1−10−アルキルであり、一層好ましくはC1−8−アルキルであり、例えば、場合によりケトン、エーテル、エポキシド、シラン、又はケトエステル基により置換された、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、又はt−ブチルである。
【0091】
及びRは、夫々独立に、H、場合により−OH、ケトン、又はアルキルエーテル基により置換された、C1−8−アルキル又はC3−8−シクロアルキルであり、最も好ましくは、R及びRは、H、−CH、又はCである。
【0092】
Tは、式、C(O)OR、−C(O)NR、又は−OC(O)Rを有するのが好ましく、最も好ましくは、Tは、C(O)ORであり、ここでR、R、及びRは、前に記載した通りである。
【0093】
Lは、夫々、Xを[B]のヒドロカルビル主鎖に結合する、場合により置換された結合基である。Lは、種々の結合基にすることができ、同じでも異なっていてもよい。Lの例は、一つ以上の炭素及び/又はヘテロ原子、例えば、窒素又は酸素を含むのが好ましい。Lにより表される好ましい結合基の例には、次のものが含まれる:
【0094】
【化21】

【0095】
式中、結合基の右手側はXに結合し、結合基の左手側はヒドロカルビル主鎖に結合している。
【0096】
各Lは、次の式を有するのが特に好ましい:
【0097】
【化22】

【0098】
[E]は、塩基性置換基であり、各[E]は、[D]のヒドロカルビル成分に直接結合しているか、又は場合により置換された結合基[Z]によりそれに結合している。
【0099】
[Z]が、原子の、一つ以上の基を表す場合、[Z]は、原子の結合鎖を与える。その鎖は、通常一つ以上の炭素原子(アルキル又はアリール基の形の)を含み、それは場合により、−N、−O、−S、又はPのようなヘテロ原子、好ましくはN又はOによって置換されていてもよい。
【0100】
[Z]によって表される([E]に関連して示される)結合基の例には、次のものが含まれる:
【0101】
【化23】

【0102】
式中、R及び[E]は、前に記載した通りである。
【0103】
[E]は、式:
【0104】
【化24】

【0105】
の結合基[Z]により[D]のヒドロカルビル主鎖に結合しているのが好ましい。
[E]は、式:
【0106】
【化25】

【0107】
によって表される結合基[Z]により[D]のヒドロカルビル鎖に結合しているのが特に好ましい。従って、単量体[D]の中のsは、1であるのが好ましい。[D]の式(12)中の塩基性基[E]の例には、場合により置換された第一級、第二級、及び第三級脂肪族及び芳香族アミン、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、ピリミジン、ピラジン、ピリミダジン、テトラゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、ピラゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、ピロール、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、ピラジン、ピリダジン、インダゾール、インドール、及びベンゾチアゾール基、及びそれらの四級化及びプロトン化塩が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0108】
[E]([Z]に関連して示されている)は、第二級又は第三級脂肪族アミン、又はそれらのプロトン化又は四級化塩、例えば:次のようなものであるのが好ましい:
【0109】
【化26】

【0110】
[E]は、第三級脂肪族アミン、又はそのプロトン化又は四級化塩、例えば、下記のものを含むのが特に好ましい:
【0111】
【化27】

【0112】
m、n、及びvの値は、夫々式(1)の塩基性共重合体中の反復単位[A][B]、及び[D]のモル組成を表す。mの値は、好ましくは0〜350 一層好ましくは0〜100、最も好ましくは0〜50の範囲にある。nの値は、好ましくは1〜75、一層好ましくは1〜40、最も好ましくは1〜10の範囲にある。vの値は、好ましくは1〜100、一層好ましくは1〜50、最も好ましくは1〜40の範囲にある。
【0113】
式(1)中の[A]のために用いるのに適したオレフィン系不飽和単量体の例には、スチレン、α−メチルスチレン;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル;ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル;バーサティック・アシッドのビニルエステル、例えば、ベオバ9、及びべオバ10(レゾリューション・パーフォーマンス・プロダクツから入手できる)、複素環ビニル化合物のビニルエーテル、特にアクリル酸及びメタクリル酸のエステルが含まれるが、それらに限定されるものではない。後の架橋及び/又は接着を促進するための付加的官能性を有するオレフィン系不飽和単量体も本発明で用いてもよい。そのような単量体の例には、ジアセトンアクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシステアリル(メタ)アクリレート、及び2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0114】
式(1)中の[B]のために用いるのに適したオレフィン系不飽和単量体の例には、エチレン又はプロピレンオキシドのビニルポリエーテル、例えば、ヒドロキシポリエトキシ(5)ポリプロポキシ(5)モノアリルエーテル(ビマックス・ケミカルズ社から入手できるBX−AA−E5P5)、メトキシポリエチレングリコール350メタクリレート〔ラポルテ(Laporte)からの商標名で入手することができる〕、メトキシポリエチレングリコール550メタクリレート〔ラポルテからビスオマー(Bisomer)MPEG350MA及びビスオマーMPEG550MAの商標名で入手することができる〕、メトキシポリエチレングリコール350アクリレート、ポリエチレングリコール(6)メタクリレートPEM6、及びポリエチレングリコール(6)アクリレートPEA6が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0115】
式(1)中の[D]単量体のために用いるのに適したオレフィン系不飽和単量体の例には、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノメチルスチレン、4−アミノスチレン、N,N−ジメチルアミノスチレン、及びアミノメチルスチレンが含まれるが、それらに限定されるものではない。[D]のために適した塩基性アミン含有単量体は、遊離アミン、プロトン化塩、又は四級化アミン塩として重合することができ、例えば、塩基性第四級アンモニウム単量体には、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メチル)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノメチルスチレン、4−アミノスチレン、N,N−ジメチルアミノスチレン、及びアミノメチルスチレン、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル第四級塩(チバ・スペシャルティー・ケミカルズからエージフレックスFM1Q80BCとして入手することができる)、及びN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート塩化ベンジル第四級塩(チバ・スペシャルティー・ケミカルズからエージフレックスFA1Q80BCとして入手することができる)が含まれる。
【0116】
本発明で用いるのに適した好ましい塩基性共重合体は、アクリル又はメタクリルエステルに基づく共重合体であるアクリル共重合体に基づいている。
【0117】
式(1)中の[A]、[B]、及び[D]は、式(13)、(14)、及び(15)を夫々有するのが好ましく、ここで:
[A]は、式(13)を有し、
【0118】
【化28】

【0119】
[B]は、式(14)を有し、
【0120】
【化29】

【0121】
そして、[D]は、式(15)を有し、
【0122】
【化30】

【0123】
式中:
は、場合によりケトン、エーテル、−OH、エポキシド、シラン、又はケトエステル基により置換された、C1−10−アルキルであり、一層好ましくはC2−4−アルキルであり;
及びR10は、同じか又は異なり、夫々独立に、H、場合により置換されたC1−10−アルキル、又はC3−8−シクロアルキルであり;そして
、R、R、m、n、y、p、s、[Z]、及び[X]は、前に定義した通りである。
【0124】
最も好ましくは、R及びR10は、H又は非置換C1−6−アルキルであり、特に非置換CH又はCである。
【0125】
[D]が四級化塩として存在する場合、それは式(16)を有するのが好ましい:
【0126】
【化31】

【0127】
、R10、Z、R、及びsは、既に上に記載されており、
11は、場合により置換された、C1−10−アルキル、C3−8−シクロアルキルである。最も好ましくは、R11は、非置換C1−10−アルキル又はC1−5−アルキルである。
【0128】
式(13)の[A]のために用いることができる好ましいオレフィン系不飽和単量体には、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソボロニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、及び対応するアクリレートが含まれる。例えば、エポキシド、アルキルエーテル及びアリールエーテル基、ヒドロキシアルキル基、例えば、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、又はヒドロキシブチルのような置換基を、場合によりRに有するメタクリレート又はアクリレートを、式(13)の[A]の一部として用いてもよい。ヒドロキシアルキルアクリレートのアセトアセトキシエステルのようなケト官能性単量体、及びアセトアセトキシエチルメタクリレートのようなメタクリレートのみならず、2−(トリメチルシロキシ)エチルメタクリレートのようなシラン官能性単量体も用いることができる。官能性化単量体を用いる利点は、得られる塩基性共重合体に、後で架橋性又は接着促進性を与えることにある。
【0129】
式(14)中の[B]のために用いることができる好ましいアクリル単量体の例には、メトキシポリエチレングリコール350メタクリレート、メトキシポリエチレングリコール550メタクリレート(ラポルテからビスオマーMPEG350MA及びビスオマーMPEG550MAの商標名で入手することができる)、メトキシポリエチレングリコール350アクリレート、及びポリエチレングリコール(6)メタクリレートPEM6、及びポリエチレングリコール(6)アクリレートPEA6が含まれる。
【0130】
式(15)中の[D]のために用いることができる好ましいアクリル単量体の例には、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びそれらの四級化又はプロトン化塩が含まれる。
【0131】
図(1)に例示したように、本発明の塩基性共重合体は、懸垂側鎖を有するビニル主鎖を含む。塩基性共重合体は、0重量%〜25重量%の[A]、30重量%〜70重量%の[B]、5重量%〜50重量%の[D]を含むのが好ましい。
【0132】
本発明で用いられる塩基性共重合体は、当分野で既知のどのような共重合法によって製造してもよい。共重合は、遊離ラジカル開始剤を用いて、水、有機溶媒、又は水と有機溶媒との混合物中で行うのが好ましい。適当な遊離ラジカル生成開始剤には、過硫酸カリウム、ナトリウム、又はアンモニウム、過酸化水素、又は過炭酸塩のような無機過酸化物;過酸化ベンゾイルを含めた有機過酸化物、例えば、過酸化アシル、アルキルヒドロペルオキシド、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、及びクメンヒドロペルオキシド;過酸化ジ−t−ブチルのようなジアルキル過酸化物;過安息香酸t−ブチルのようなペルオキシエステル;が含まれるが、それらの混合物も用いることができる。ペルオキシ化合物は、或る場合には、ピロ亜硫酸又は亜硫酸水素ナトリウム又はカリウム、及びイソアスコルビン酸のような適当な還元剤(レドックス系)と組合せて用いるのが有利である。アゾイソブチロニトリル、又はジメチル2,2−アゾビス−イソブチレートのようなアゾ化合物も用いることができる。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)鉄のような金属化合物も、レドックス開始剤系の一部分として用いるのに有用であろう。他の遊離ラジカル開始剤には、コバルトキレート錯体、特にポルフィリンのCo(II)及びCo(III)錯体、ジオキシム及びベンジルジオキシム二硼素化合物が含まれる。水性相と有機相との間で分配される開始剤系、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、イソアスコロビン酸、及びエチレンジアミン四酢酸鉄の組合せを用いることもできる。好ましい開始剤は、アゾ化合物、例えば、アゾ−イソブチロニトリル、又はジメチル2,2′−アゾビス−イソブチレート及び過酸化水素又は過酸化ベンゾイルのような過酸化物を含む。用いるのに便利な開始剤又は開始剤系の量は、例えば、用いるビニル単量体の全量に基づき、0.05〜6重量%、一層好ましくは0.1〜3重量%、最も好ましくは0.5〜2重量%の範囲内にある。
【0133】
有機溶媒は極性有機溶媒であるのが好ましく、ケトン、アルコール、又はエーテルでもよい。適当な極性溶媒の例には、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、酢酸エトキシエチル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、アミルアルコール、ジエチルグリコール、モノ−n−ブチルエーテル、及びブトキシエタノールが含まれる。別法として、極性有機溶媒を、非極性有機液体と共に用いてもよい。
【0134】
適当な非極性有機溶媒には、トルエン・キシレン混合物、及び塩化メチレン・ジメチルホルムアミド混合物が含まれる。共重合反応は、水性アルコール溶媒、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、アミルアルコール、ジエチルグリコール、又はブトキシエタノール中で行うのが一層好ましく、最も好ましくは水性エタノール混合物である。
【0135】
溶液重合で製造した場合、重合体の数平均分子量(Mn)は、5,000〜200,000の範囲にあるのが典型的であり、一層好ましくは10,000〜50,000の範囲にある。
【0136】
本発明の塩基性共重合体は、水性エマルジョン又は懸濁重合により製造することもでき〔「重合の原理」(Principles of Polymerisation)、G.オジアン(Odian)、ウィリー(Wiley)、インターサイエンス(Interscience)第3版、1991に記載されている〕、その場合Mnの値は、20,000〜500,000の範囲にあるであろう。
【0137】
本発明によれば、前に記載したような塩基性共重合体を含む組成物に用いるのに好ましい抗菌剤は、抗バクテリア剤、一層好ましくは末端基を除いた個々の重合体鎖が、前に記載したように式(6)のものであるか、又はその塩である重合体鎖の混合物である線状重合体ビグアニドを含む。本発明で用いるのに好ましい線状重合体ビグアニドは、アベシア社(Avecia Limited)から商標名バントシルIBとして入手することができるポリ(ヘキサメチレンビグアニド)塩酸塩(PHMB)である。
【0138】
塩基性共重合体の量に対する、本発明の組成物で用いられる重合体ビグアニドの量は、その組成物の最終用途、それが保存される条件、その組成物が適用される表面の性質に依存する。組成物中の塩基性共重合体に対する線状重合体ビグアニドの重量比は、広い範囲、例えば、100:1〜1:1000、一層好ましくは20:1〜1:500の広い限界に亙って変化させることができる。
【0139】
抗菌組成物中の塩基性共重合体に対する線状重合体ビグアニド基の比は、1:100〜1:200であるのが特に好ましい。
【0140】
本発明の組成物で用いられる線状重合体ビグアニド、例えば、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)(PHMB)の濃度は、0.001重量%〜25重量%、好ましくは0.005重量%〜10重量%、特に0.01重量%〜5重量%の範囲にある。組成物のpHは、特定の用途に最も適切になるように選択されるのが典型的であるが、pH1〜12の範囲にあるのが好ましく、最も好ましくはpH3〜9の範囲にある。
【0141】
本発明の組成物は、その組成物の目的とする特定の用途により他の添加剤を含んでいてもよい。組成物中に場合により含有される付加的成分は、例えば、付加的重合体材料、洗剤、植物抽出物、香料、芳香剤、濃化剤、湿気付与剤、防腐剤、表面活性剤、着色剤、キレート剤、緩衝剤、酸性度及びアルカリ性度調節剤、湿潤剤、金属イオン封鎖剤、ヒドロトロピー剤、助剤、汚染防止剤、及び酵素でもよい。
【0142】
取扱い及び投与をし易くするため、一般に線状重合体ビグアニドと塩基性共重合体とを、適当なキャリヤーを用いて配合物として一緒にするのが便利である。キャリヤーは固体でもよいが、液体であるのが好ましく、配合物は、抗菌組成物を液体に入れた溶液、懸濁物、又はエマルジョンであるのが好ましい。
【0143】
組成物のための好ましいキャリヤーは水であるが、水混和性有機溶媒のような他の溶媒も組成物中に存在させることができる。適当な水混和性有機溶媒の例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールのようなグリコール;メタノール、エタノール、プロパン−1−オール、プロパン−2−オール、C1−6−アルキルエステル、例えば、酢酸ブチルエチル、酢酸ペンチル、N−メチル−2−ピロリドン、及び低級C1−4−アルキルカルビトール、例えば、メチルカルビトールが含まれる。好ましい水混和性有機溶媒は、2〜6個の炭素原子を有するグリコール、4〜9個の炭素原子を有するポリアルキレングリコール、又は3〜13個の炭素原子を有するグリコールのモノC1−4−アルキルエーテルである。最も好ましい水混和性有機溶媒は、プロピレングリコール、エチルヘキシルグリコール、エタノール、酢酸ブチルエチル、又は酢酸ペンチルである。
【0144】
従って、本発明の第二の態様によれば:
(i) 線状重合体ビグアニド;
(ii) 塩基性共重合体;及び
(iii) キャリヤー;
を含む配合物が与えられる。
【0145】
本発明の第二の態様に従う最終的に希釈された適用液体の好ましい配合物は、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)塩酸塩(PHMB)の形の線状重合体ビグアニドを0.01〜5重量%、一層好ましくは線状重合体ビグアニドを0.1〜1重量%含有する。配合物中の塩基性共重合体の量は、0.01〜50重量%であるのが好ましく、特に0.1〜25重量%である。好ましいキャリヤーは、水又は水/アルコール混合物である。配合物のpHは、用途に対し最も適切になるように選択されるのが典型的であり、pH1〜12の範囲にあるのが好ましい。最も好ましくは、配合物のpHは、3〜9の範囲にある。本発明の第二態様に従って特に好ましい配合物は、水溶液の形で、0.5重量%のポリ(ヘキサメチレンビグアニド)塩酸塩(PHMB)及び2〜15重量%の塩基性共重合体を含有する希釈した適用溶液を含む。
【0146】
配合物は、その組成物が目的とする特定の用途により、他の添加剤を含んでいてもよい。場合により配合物中に含有される付加的添加剤は、例えば、本発明の第一の態様による組成物で使用されるものとして記載されたものである。
【0147】
本発明の研究過程中に、抗菌剤、例えば、線状重合体ビグアニド及び塩基性共重合体を含む組成物を表面に適用した場合、グラム陽性菌、グラム陰性菌、病原菌、酵母、真菌、及び藻を含めた広い範囲の微生物に対して持続した抗菌効果が達成されることが判明した。従って、本発明の更に別の態様によれば、本発明の第一及び第二の態様に関して前に記載してきたような組成物又は配合物で表面を処理することを含む表面処理方法が与えられる。
【0148】
好ましい抗菌剤、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)塩酸塩が、組成物又は配合物中に存在する唯一の微生物学的に活性な化合物になっていてもよい。別法として、重合体ビグアニドと組合せて、他の微生物学的に活性な化合物が存在していてもよい。他の微生物学的に活性な化合物の例には、例えば:第四級アンモニウム化合物、例えば、塩化N,N−ジエチル−N−ドデシル−N−ベンジルアンモニウム、塩化N,N−ジメチル−N−オクタデシル−N−(ジメチルベンジル)アンモニウム、塩化N,N−ジメチル−N,N−ジデシルアンモニウム、塩化N,N−ジメチル−N,N−ジドデシルアンモニウム;塩化N,N,N−トリメチル−N−テトラデシルアンモニウム、塩化N−ベンジル−N,N−ジメチル−N−(C12−C18アルキル)アンモニウム、塩化N−(ジクロロベンジル)−N,N−ジメチル−N−ドデシルアンモニウム、塩化N−ヘキサデシルピリジニウム、臭化N−ヘキサデシルピリジニウム、臭化N−ヘキサデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウム、塩化N−ドデシルピリジニウム、硫酸水素N−ドデシルピリジニウム、塩化N−ベンジル−N−ドデシル−N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)アンモニウム、塩化N−ドデシル−N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム、塩化N−ベンジル−N,N−ジメチル−N−(C12−C18アルキル)アンモニウム、エチル硫酸N−ドデシル−N,N−ジメチル−N−エチルアンモニウム、塩化N−ドデシル−N,N−ジメチル−N−(1−ナフチルメチル)アンモニウム、塩化N−ヘキサデシル−N,N−ジメチル−N−ベンジルアンモニウム、塩化N−ドデシル−N,N−ジメチル−N−ベンジルアンモニウム、又は塩化1−(3−クロロアリル)−3,5,7−トリアザ−1−アゾニア−アダマンタン、ココアルキルベンジル−ジメチルアンモニウム、塩化テトラデシルベンジルジメチルアンモニウム、ミリスチルトリメチルアンモニウム又はセチルトリメチルアンモニウムの臭化物、モノ第四級複素環アミン塩、例えば、ラウリルピリジニウム、セチルピリジニウム、又は(C12−C14)アルキルベンジルイミダゾリウムの塩化物;
【0149】
尿素誘導体、例えば、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−5,5−ジメチルヒダントイン、ビス(ヒドロキシメチル)尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素〔ジウロン(Diuron)〕、3−(4−イソプロピルフェニル)−1,1−ジメチル尿素、テトラキス(ヒドロキシメチル)−アセチレンジ尿素、1−(ヒドロキシメチル)−5,5−ジメチルヒダントイン、又はイミダゾリジニル尿素;アミノ化合物、例えば、1,3−ビス(2−エチル−ヘキシル)−5−メチル−5−アミノヘキサヒドロ−ピリミジン、ヘキサメチレンテトラミン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、ドデシルアミン又は2−[(ヒドロキシメチル)−アミノ]エタノール;イミダゾール誘導体、例えば、1[2−(2,4−ジクロロ−フェニル)−2−(2−プロペニルオキシ)エチル]−1H−イミダゾール、又は2−(メトキシカルボニル−アミノ)−ベンズイミダゾール〔カルベンダジム(Carbendazim)〕;ニトリル化合物、例えば、2−ブロモ−2−ブロモメチル−グルタロニトリル、2−クロロ−2−クロロ−メチルグルタロ−ニトリル、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、又は2,4,5,6−テトラクロロ−1,3−ベンゼンジカルボニトリル〔クロロタロニル(Chlorothalonil)〕;チオシアネート誘導体、例えば、メチレン(ビス)チオシアネート、又は2−(チオシアノメチルチオ)−ベンゾチアゾール;錫化合物又は錯体、例えば、トリブチル錫オキシドクロリド、ナフトエート、ベンゾエート、又は2−ヒドロキシベンゾエート;
【0150】
イソチアゾリン−3−オン、例えば、4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(CMIT)、2−オクチルイソチアゾリン−3−オン(OIT)、又は4,5−ジクロロ−2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(DCOIT);ベンズイソチアゾリン−3−オン化合物、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(BIT)、2−メチルベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−ブチルベンズイソチアゾリン−3−オン、N−エチル、N−n−プロピル、N−n−ペンチル、N−シクロプロピル、N−イソブチル、N−n−ヘキシル、N−n−オクチル、N−n−デシル、及びN−t−ブチル1,2−ベンズイソチアゾリノン;チアゾール誘導体、例えば、2−(チオシアノメチルチオ)−ベンズチアゾール、又はメルカプトベンズチアゾール;ニトロ化合物、例えば、トリ(ヒドロキシメチル)ニトロメタン、5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサン、又は2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール〔ブロノポル(Bronopol)〕;沃素化合物、例えば、トリ−ヨードアリルアルコール;アルデヒド(一種類以上の)遊離剤、例えば、グルタルアルデヒド(ペンタンジアル)、ホルムアルデヒド、又はグリオキサル;アミド、例えば、クロルアセトアミド、N,N−ビス(ヒドロキシメチル)クロルアセトアミド、N−ヒドロキシメチル−クロルアセトアミド、又はジチオ−2,2−ビス(ベンズメチルアミド);
【0151】
グアニジン誘導体、例えば、1,6−ヘキサメチレン−ビス[5−(4−クロロフェニル)ビグアニド]、1,6−ヘキサメチレン−ビス[5−(4−クロロフェニル)グアニド]、ビス(グアニジノオクチル)アミントリアセテート、1,6−D−(4′−クロロフェニルジグアニド)−ヘキサン〔クロルヘキシジン(Chlorhexidine)〕、ポリオキシアルキレン−グアニジン塩酸塩、ポリヘキサメチレングアニジン塩酸塩(PHMG)、ポリ−(2−(2−エトキシ)エトキシエチルグアニジウムクロリド(PEEG)、又はドデシルグアニジン塩酸塩;チオン、例えば、3,5−ジメチルテトラヒドロ−1,3,5−2H−チオジアジン−2−チオン;スルファミド、例えば、N−ジメチル−N′−フェニル−(フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド〔プレベントール(Preventol)A4〕;チアジン誘導体、例えば、ヘキサヒドロトリアジン、1,3,5−トリ−(ヒドロキシエチル)−1,3,5−ヘキサヒドロトリアジン、6−クロロ−2,4−ジエチル−アミノ−s−トリアジン、又は4−シクロプロピルアミノ−2−メチルチオ−6−t−ブチルアミノ−s−トリアジン〔イルガロール(Irgarol)〕;オキサゾリジン及びそれらの誘導体、例えば、ビス−オキサゾリジン;フラン及びその誘導体、例えば、2,5−ジヒドロ−2,5−ジアルコキシ−2,5−ジアルキルフラン;カルボン酸及びその塩及びエステル、例えば、ソルビン酸、及び4−ヒドロキシ安息香酸;フェノール及びその誘導体、例えば、5−クロロ−2−(2,4−ジクロロ−フェノキシ)フェノール、チオ−ビス(4−クロロフェノール)、2−フェニルフェノール、2,4,5−トリクロロ−2′−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル〔トリクロサン(Triclosan)〕、及び4−クロロ−3,5−ジメチル−フェノール(PCMX);スルホン誘導体、例えば、ジヨードメチル−パラトリルスルホン、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、又はヘキサクロロジメチルスルホン;
【0152】
イミド、例えば、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド(プレベントールA3)、N−(トリクロロメチルチオ)フタルイミド〔フォルペット(Folpet)〕、又はN−(トリクロロメチル)チオ−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシイミド〔キャプタン(Captan)〕;チオアミド、その金属錯体及び塩、例えば、ジメチルジチオカルバメート、エチレンビスジチオカルバメート、2−メルカプト−ピリジン−N−オキシド(特に2:1亜鉛錯体及びナトリウム塩);アゾール殺真菌剤、例えば、ヘキサコナゾール、テブコナゾール(tebuconazole)、プロピコナゾール、エタコナゾール(etaconazole)、又はテトラコナゾール;ストロビルリン(strobilurin)、例えば、メチル−()−2−[2−(6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ)フェニル]−3−メトキシアクリレート〔アゾキシストロビン(Azoxystrobin)〕、メチル−()−メトキシイミノ[α−(o−トリルオキシ)−o−トリル]アセテート、N−メチル−()−メトキシイミノ[2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)フェニル]アセトアミド、N−メチル−()−2−メトキシイミノ−2−(2−フェノキシフェニル)アセトアミド〔メトミノストロビン(Metominostrobin)〕、又はトリフロキシストロビン(Trifloxystrobin);アミド、例えば、ジチオ−2,2′−ビス(ベンズメチルアミド)〔デンシル(Densil)P〕、又は3,4,4′−トリクロロカルバニリド〔トリクロカルバン(Triclocarban)〕;カルバメート、例えば、3−ヨードプロパルギル−N−ブチルカルバメート(IPBC)、3−ヨードプロパルギル−N−フェニルカルバメート(IPPC)、又はビス−(ジメチルチオカルバモイル)−ジスルフィド〔チラム(Thiram)〕;ピリジン誘導体、例えば、2−メルカプトピリジン−N−オキシドのナトリウム又は亜鉛塩(ナトリウム又は亜鉛ピリチオン);活性化ハロゲン基を有する化合物、例えば、テトラクロロイソフタロジニトリル〔クロルタロニル(Chlorthalonil)〕、1,2−ジブロモ−2,4−ジチアノブタン〔テクタメール(Tektamer)38〕;有機金属化合物、例えば、10,10′−オキシビスフェノキシアルシン(OBPA);
が含まれる。
【0153】
組成物中の付加的抗菌化合物(一種又は多種)の量は、その付加的抗菌化合物の性質及び細菌による劣化に対し保護すべき表面の性質に依存するであろう。
【0154】
本発明の組成物又は配合物について前に記載したように、抗菌剤と組合せて、前に記載したような式(1)の二種類以上の塩基性共重合体の組合せを、例えば、家庭、工業的又は施設領域中で見出される表面を殺菌するために使用することも更に可能である。その処理は、次のような例示する多種類の表面に適用することができるが、それらに限定されるものではない。表面への適用には、例えば、壁、床、作業表面、家庭、工業、食品処理、衛生、健康、及び医学的環境中で見出される設備、皮膚、合成及び天然組織及び繊維、ステンレス鋼、重合体、及び重合体被覆、例えば、ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン及びポリエチレン、木材、ガラス、ゴム、ペイント表面、石、大理石、グラウト、包装、及びフイルムが含まれる。
【0155】
前に記載したように、本発明の第一及び第二の態様に従う抗菌組成物及び配合物は、活性度が長い期間に亙って維持される抗菌組成物で処理した表面の微生物のレベルを著しく減少する。
【0156】
従って、本発明の第四の態様に従い、表面を処理するために、本発明の第一の態様による組成物の使用、又は本発明の第二の態様による配合物の使用が与えられる。
【0157】
本発明の第一の態様に関連して上に記載した塩基性共重合体は、殺真菌剤化合物と組合せて用いることができることも判明している。驚いたことに、殺真菌剤化合物も、制御された仕方で塩基性共重合体から時間と共に放出され、それにより持続した効果的抗真菌防除が与えられることが判明している。
【0158】
殺真菌剤
極めて多種類の殺真菌剤を、上に記載した塩基性共重合体と組合せて用いることができる。そのような殺真菌剤の例には:メトキシアクリレート、例えば、メチル(E)−2,2,6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシフェニル−3−メトキシアクリレート;カルボキサミド及びアセトアミド、例えば、5,6−ジヒドロ−2−メチル−N−フェニル−1,4−オキサチイン−3−カルボキサミド、及び2−シアノ−N−[(エチルアミノ)カルボニル]−2−(メトキシアミノ)アセトアミド;アルデヒド、例えば、シンナムアルデヒド、及び3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド;ピリミジン、例えば、4−シクロプロピル−6−メチル−N−フェニル−2−ピリミジンアミン、及び5−ブチル−2−エチルアミノ−6−メチルピリミジン−4−オール;モルホリン、例えば、(E,Z)−4−[3−(4−クロロフェニル)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)アクリロイル]モルホリン、及びC11−14−アルキル−2,6−ジメチルモルホリン同族体、例えば、トリデモルフ(Tridemorph)、及び(±)−シス−4−[3−t−ブチルフェニル)−2−メチルプロピル]−2,6−ジメチルモルホリン〔フェンプロピモルフ(Fenpropimorph)〕;グアニジン、例えば、1−ドデシルグアニジンアセテート;ピロール、例えば、4−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル)−1Hピロール−3−カルボニトリル;イミダゾール及びベンズイミダゾール、例えば、1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(2−プロペニルオキシ)エチル]−1H−イミダゾール、3−(3,5−ジクロロフェニル)−N−(1−メチルエチル)−2,4−ジオキソ−1−イミダゾリジンカルボキサミド、カルベンダジム(Carbendazim)(MBC)、ベノミル(Benomyl)、フベリダゾール(Fuberidazole)、チアベンダゾール(Thiabendazole)、1−[N−プロピル−N−(2−(2,4,6−トリクロロフェノキシ)−エチル)−カルバモイル]−イミダゾール〔プロクロラズ(prochlorz)〕、及びそれらの塩;アラニン誘導体、例えば、N−(2,6−ジメチルフェニル)−N−(メトキシアセチル)−D−アラニンメチルエステル、及びN−(2,6−ジメチルフェニル)−N−(メトキシアセチル)−DL−アラニンメチルエステル;
【0159】
トリアゾール、例えば、1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール、H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール−α−[2−(4−クロロフェニル)−エチル]−α−(1,1−ジメチルエチル)、1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−1,3−ジオキソラン−2−イル−メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール〔アザコナゾール(azaconazole)〕、1−(4−クロロフェノキシ)−3,3−ジメチル−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−2−ブタノン〔トリアジメフォン(triadimefone)〕、β−(4−クロロフェノキシ)−α−(1,1−ジメチル−エチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール〔トリアジメノール(triadimenol)〕、α−[2−(4−クロロフェニル)−エチル]−α−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール〔テブコナゾール(tebuconazole)〕、(RS)−2−(2,4−ジクロロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−2−イル)−ヘキサン−2−オール〔ヘキサコナゾール(hexaconazole)〕、1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イル]−メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール〔プロピコナゾール(propiconazole)〕。トリアゾール殺真菌剤は、遊離塩基の形態で存在するのみならず、それらの金属塩錯体の形態として、又は酸付加塩、例えば、元素周期表の第II〜IV族及び亜族I及びII及びIV〜VIIの金属の塩として存在することができ、それら金属の例には、銅、亜鉛、マンガン、マグネシウム、錫、鉄、カルシウム、アルミニウム、鉛、クロム、コバルト、及びニッケルを含めることができる。それら塩の可能な陰イオンは、好ましくは次の酸:ハロゲン化水素酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、燐酸、硝酸、及び硫酸;から誘導されているものである。化合物が非対称性炭素原子を有する場合には、異性体及び異性体混合物も可能である。
【0160】
殺真菌剤の更に別の例には次のものが含まれる:オキサゾリジン、例えば、3−(3,5−ジクロロフェニル)−5−メチル−5−ビニル−1,3−オキサゾリジン−2,4−ジオン;p−ヒドロキシベンゾエート、例えば、安息香酸、パラメチル安息香酸、サリチル酸、デヒドロアセト酸、及びそれらの塩;イソチアゾリノン、例えば、2−メチルイソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチルイソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−N−オクチル−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、シクロペンテンイソチアゾリノン;ベンズイソチアゾリン−3−オン化合物、例えば、2−メチルベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−ブチルベンズイソチアゾリン−3−オン N−エチル、N−n−プロピル、N−n−ペンチル、N−n−ヘキシル、N−シクロプロピル、及びN−イソブチル ベンズイソチアゾリン−3−オン;
【0161】
第四級アンモニウム化合物、例えば、ココアルキルベンジル−ジメチルアンモニウム、塩化テトラデシルベンジルジメチルアンモニウム、ミリスチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、モノ第四級複素環アミン塩、ラウリルピリジニウム、セチルピリジニウム、又は(C12−C14)アルキルベンジルイミダゾリウムクロリド、塩化ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウム、塩化ベンジル−ジメチル−ドデシルアンモニウム、塩化ジデシル−ジメチル−アンモニウム、アルキルアンモニウムハロゲン化物、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、及び塩化ジラウリルジメチルアンモニウム、アルキルアリールアンモニウムハロゲン化物、例えば、臭化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化エチルジメチルステアリルアンモニウム、塩化トリメチルステアリルアンモニウム、塩化トリメチルセチルアンモニウム、塩化ジメチルエチルラウリルアンモニウム、塩化ジメチルプロピルミリスチルアンモニウム、塩化ジノニルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジウンデシルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジノニルエチルアンモニウム、塩化ジメチルエチルベンジルアンモニウム、3−(トリメトキシシリル)プロピルジデシルメチルアンモニウム、塩化3−(トリメトキシシリル)プロピルオクタデシルメチルアンモニウム、塩化ジメチルジオクチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジドデシルジメチルアンモニウム、塩化ジメチルジテトラデシルアンモニウム、塩化ジヘキサデシルジメチルアンモニウム、塩化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、塩化デシルジメチルオクチルアンモニウム、塩化ジメチルドデシルオクチルアンモニウム、塩化ベンジルデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、塩化ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウム、塩化デシルジメチル(エチルベンジル)アンモニウム、塩化デシルジメチル(ジメチルベンジル)−アンモニウム、塩化(クロロベンジル)−デシルジメチルアンモニウム、塩化デシル−(デシル−(ジクロロベンジル)−ジメチルアンモニウム、塩化ベンジルジデシルメチルアンモニウム、塩化ベンジルジドシルメチルアンモニウム、塩化ベンジルジテトラデシルメチルアンモニウム、及び塩化ベンジルドデシルエチルアンモニウム;
【0162】
ヨードプロパルギル誘導体、例えば、3−ヨード−2−プロピニル−N−n−ブチルカルバメート(IPBC)、プロピル3−(ジメチルアミノ)プロピルカルバメート塩酸塩、3−ヨード−2−プロピニル−N−n−プロピルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニル−N−n−ヘキシルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニル−N−シクロヘキシルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニル−N−フェニルカルバメート、及びチオカルバメート、例えば、S−エチルシクロヘキシル(エチル)チオカルバメート;スルフェンアミド、例えば、ジクロフルアニド(Dichlofluand)〔ユーパレン(Euparen)〕、トリルフルアリド(Tolylfluarid)〔メチルユーパレン(Methyleuparen)〕、フォルペット(Folpet)、フルオルフォルペット(Fluorfolpet)、テトラメチルジウラムジスルフィド(TMTD)、及び2−メチルベンズアミド−1,1′ジスルフィド〔アベシア社からデンシル(Densil)Pとして入手することができる〕;チオシアネート、例えば、チオシアナトメチルチオベンゾチアゾール(TCMTB)、及びメチレンビスチオシアネート(MBT);フェノール、例えば、o−フェニルフェノール、トリブロムフェノール、テトラクロルフェノール、ペンタクロルフェノール、2−フェノキシエタノール、3−メチル−4−クロルフェノール、ジクロロフェン、及びクロロフェン;ヨード誘導体、例えば、ジヨードメチル−p−アリールスルホン、及びジヨードメチル−p−トリルスルホン;ブロモ誘導体、例えば、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール〔ブロノポール(Bronopol)〕、及び1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン〔テクタマー(Tektamer)(商標名)38〕;ピリジン、例えば、1−ヒドロキシ−2−ピリジンチオン、又はピリジン−2−チオール−1−オキシド〔アーク・ケミカルズ(Arch Chemicals)から商標名ソディアム・オマジン(Sodium Omadine)として市販されているナトリウム、鉄、マンガン、又は亜鉛の塩〕、テトラクロル−4−メチルスルホニルピリジン、2,3,5,6−テトラクロロ−4(メチルスルホニル)ピリジン(アベシア社からデンシルSとして入手することができる);金属石鹸、例えば、錫、銅、亜鉛のナフテン酸塩、オクト酸塩(octoate)、2−エチルヘキサン酸塩、オレイン酸塩、燐酸塩、安息香酸塩、又は酸化物、例えば、TBTO、CuO、CuO、及びZnO;有機錫誘導体、例えば、トリブチル錫ナフテン酸塩、又はトリブチル酸化錫;ジアルキルジチオカルバメート、例えば、ジアルキルジチオカルバミン酸のナトリウム及び亜鉛塩;ニトリル、例えば、2,4,5,6−テトラクロルイソフタロニトリル〔クロルタロニル(Chlorthalonil)〕;ベンズチアゾール、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール;ダゾメット(Dazomet);
【0163】
キノリン、例えば、8−ヒドロキシキノリン;トリス−N−(シクロヘキシルジアゼニウムジオキシ)−アルミニウム、N−(シクロヘキシルジアゼニウムジオキシ)−トリブチル錫又はカリウム塩、及びビス−(N−シクロヘキシル)ジアジニウム(−ジオキシ−銅又はアルミニウム);パラヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル、特にメチル、エチル、プロピル エステル、及び;2,4,4′−トリクロロ−2−ヒドロキシジフェニルエーテル〔商標名トリクロサン(Triclosan)として入手することができる〕、又は4,4′−トリクロロ−2−ヒドロキシジフェニルエーテル〔商標名ジクロサン(Diclosan)として入手することができる〕;ホルムアルデヒド遊離化合物、例えば、ヒダントイン、N,N″−メチレンビス[N′−(ヒドロキシメチル)−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル]尿素、クオーターニウム(Quaternium)−15、及び1,3−ジメチロール−5,5−ジメチルヒダントイン(DMDMH)、N−(ヒドロキシメチル)−N−(1,3−ジヒドロキシメチル−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル)−N′−(ヒドロキシメチル);尿素及び塩化1−(3−クロロアリル)−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタンのシス異性体;ベンジルアルコールモノ(ポリ)ヘミホルマル、オキサゾリジン、ヘキサヒドロ−s−トリアジン、及びN−メチロールクロルアセトアミド;環式チオヒドロキサム酸化合物、例えば、イミダゾリジン−2−チオン、ピロリンチオン、ピロリジンチオン、イソインドリンチオン、3−ヒドロキシ−4−メチルチアゾール−2(3H)−チオン、3−ヒドロキシ−4−フェニルチアゾール−2(3H)−チオン、3−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロベンゾチアゾール−2(3H)−チオン、5,5−ジメチル−1−ヒドロキシ−4−イミノ−3−フェニルイミダゾリジン−2−チオン、1−ヒドロキシ−4−イミノ−3−フェニル−2−チオノ−1,3−ジアザスピロ[4,5]−デカン、1−ヒドロキシ−5−メチル−4−フェニルイミダゾリン−2−チオン、4,5−ジメチル−3−ヒドロキシチアゾール−2(3H)−チオン、4−エチル−3−ヒドロキシ−5−メチルチアゾール−2(3H)−チオン、4−(4−クロロフェニル)−3−ヒドロキシチアゾール−2(3H)−チオン、3−ヒドロキシ−5−メチル−4−フェニルチアゾール−2(3H)−チオン、1−ヒドロキシピロリジン−2−チオン、5,5−ジメチル−1−ヒドロキシピロリジン−2−チオン、及び2−ヒドロキシ−2,3−ジヒロ−1H−イソインドール−1−チオン。
【0164】
好ましい抗真菌化合物には、第四級アンモニウム化合物、イソチアゾリオン及びベンズイソチアゾリノン化合物、カルバメート及びピリジン化合物が含まれる。
【0165】
従って、本発明の第5の態様によれば:
(i) 殺真菌剤;及び
(ii) 式(1)の塩基性共重合体
【0166】
【化32】

【0167】
〔式中、
[A]は、式(9)を有し、
【0168】
【化33】

【0169】
[B]は、式(10)を有し、
【0170】
【化34】

【0171】
そして、[D]は、式(12)を有し、
【0172】
【化35】

【0173】
ここで、
Xは、式(11)を有し、
【0174】
【化36】

【0175】
式中、[A]、[B]、及び[D]は、どのような順序で存在していてもよく;
Tは、場合により置換された置換基であり;
L及びZは、夫々独立に、場合により置換された結合基であり;
、R、及びRは、夫々独立に、H、C1−20−アルキル又はC3−20−シクロアルキルであり;
及びRは、夫々独立に、H、又はC1−4−アルキルであり;
Eは、塩基性置換基であり;
qは、15〜1000であり;
mは、0〜350であり;
nは、1〜75であり;
yは、1〜100であり;
sは、0又は1であり;
pは、3〜50であり;
但し、R及びRの少なくとも一方はHであり、R、R、R、T、L、及びZは、[D]のEをプロトン化することができる酸性基を含まないものとする。〕
の塩基性共重合体;
を含む組成物が与えられる。
【0176】
本発明の第五の態様において、[A]、[B]、[D]、m、n、y、q、T、L、X、Z、E、p、S、R、R、R、R、及びRについて好ましいものは、本発明の第一の態様に関連して前に記述した通りである。
【0177】
本発明を、更に次の実施例により例示するが、それら実施例において、別に述べない限り、全ての部は重量による。
【0178】
実験の詳細
塩基性共重合体例1(表1)の製造
撹拌器、窒素ブリード(bleed)、熱電対及び凝縮器を取付けたガラス反応器を清浄にし、乾燥した後使用した。
【0179】
溶媒(97.3g)(エタノール600gと蒸留水600gとの50/50混合物)中に溶解したジメチル2,2′アゾビスイソブチレート(2.3g)(0.01モル)を用いて開始剤溶液を調製した。溶媒(307.2g)、ジメチルアミンエチルアクリレート(125.8g、0.8モル)及びメトキシ(ポリエチレングリコール550)モノメタクリレート(127g、0.2モル)を含む単量体溶液を調製した。反応器中へ溶媒(515g)を入れ、次に単量体溶液(560g)を添加した。単量体溶液を溶媒(100g)で反応器中へ洗浄して入れた。ハーケ(Haake)循環水浴を用いて反応器を75℃に加熱し、窒素ブランケットの中で180rpmで撹拌した。時間0で、開始剤溶液(25g)を反応器へ添加し、次に30分後に一層多くの開始剤溶液(50g)を添加した。溶液を3時間30分放置した後、反応温度を80℃へ上昇させた。必要な温度に到達した時、開始剤溶液(12.5g)を反応器へ添加し、更に2時間重合させた後、開始剤溶液の最終部分(12.5g)を添加した。2時間後、塩基性ビニル共重合体溶液を冷却し、反応器から取り出した。
【0180】
全重合時間は8時間であった。最終溶液はウォーターホワイトであり、粒状物質を含まなかった。(単量体及び開始剤は、100%濃縮されていた)。塩基性ビニル櫛型共重合体が、99%より大きな収率で形成された。
【0181】
塩基性共重合体の分子量を、ポリエチレンオキシド標準物を用いてGPCカラムを用いて決定した。単量体単位[A]、[B]、及び[D]の比率をNMR分析を用いて確認し、DMTA(動的機械的熱的分析)を用いてビニル塩基性共重合体のTgを決定した。
【0182】
同様な手順を用いて、重合体2〜11を製造した。但し単量体[A]、[B]、及び[D]を、表1に示したように、異なったレベルで用い、モル比又は用いた単量体を変化させた。
【0183】
【表1】

【0184】
PEG550Ma 12〜13のエチレンオキシド単位を有するメトキシポリエチレン
グリコールモノメタクリレート、
MMA メチルメタクリレート
DMAEMA 2−ジメチルアミノエチルメタクリレート
DMAEMAquat 塩化2−ジメチルアミノエチルメタクリレートメチル第四級塩
p−アミノSTY p−アミノスチレン、
PPG5MA 5つのプロピレンオキシド単位を有するメトキシポリプロピレング
リコールモノメタクリレート
−IUPACの名称は、塩化[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム、
【0185】
塩基性共重合体曇り点の決定
共重合体(表1の1〜11)の曇り点を、蒸留水中にそれら重合体を入れて1重量%の溶液を調製することにより決定した。各重合体溶液を加熱し、それが曇るまで撹拌した。次にその撹拌した溶液を、温度を監視しながら冷却させた。溶液が透明になる温度が曇り点である。この方法で決定した重合体5の曇り点は55℃であった(PEG550Ma含有量は38%)。
【0186】
グラフ1は、重合体4、5、及び7中のMPEG550Ma含有量の関数としてどのように曇り点が変化するかを示している。
【0187】
【表2】

【0188】
グラフ1から、これらの塩基性共重合体について、MPEG550含有量が増大するに従って、曇り点が上昇することを結論付けることができる。
【0189】
塩基性共重合体/抗菌剤組成物の調製
表2に記載したように、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)塩酸塩(PHMB)(5g)(アベシア社からバントシルIBとして入手することができる)の20%水溶液を、(水/エタノール1:1中に入れた)20%溶液として表1の重合体1〜5の各々に、種々の量で混合することにより、組成物1〜25を調製した。それら組成物を24時間放置した後、ガラス又はセラミックタイルのような基体に適用した。全ての組成物が、沈澱物を含まない低粘度無色透明の溶液で、優れた保存安定性を持っていた。保存安定性は、組成物を2カ月間52℃で保存することにより試験し、組成物の粘度が未変化のままになっていて、沈澱物又はゲル粒子が形成されない場合には優れていると考えられた。
【0190】
種々の殺生物剤を含む塩酸塩共重合体組成物の調製及び例5の重合体を用いた抗真菌性の観察
種々の殺生物剤と共に混合することにより組成物26〜33を調製した。重合体溶液の試料に、溶液の全重量に基づき0.1%〜0.5%wt/wtの範囲の濃度で殺生物剤を添加した。組成物を24時間回転混合器上に乗せ、均質な組成物を形成し、次にガラス又はセラミックタイルのような基体に適用した。それら組成物は粘度が低く、沈澱物を含まなかった。
【0191】
【表3】

【0192】
殺生物剤A n−ブチル1,2ベンズイソチアゾリン
殺生物剤B 臭化ドデシルエチルジメチルアンモニウム
殺生物剤C 3−ヨードプロパルギルブチルカルバメート
殺生物剤D 2−オクチルイソチアゾリン−3−オン
【0193】
塩基性共重合体PHMB/組成物のフイルムから抗菌剤(PHMB)の遊離の測定
ポリ(ヘキサメチレン)ビグアニド(PHMB)濃度のUV分光測定による較正
最初に、水中に溶解したポリ(ヘキサメチレンビグアニド)(PHMB)の既知の濃度の236nmでのUV吸光度を測定した(パーキン・エルマー・ラムダ900UV/Vis/NIR分光光度計)。同様なやり方で、元のPHMB水溶液の既知の希釈物から調製した一連の試料について236nmでのUV吸光度を測定した。PHMB濃度に対しUV吸光度をプロットすることにより、水溶液中のPHMB濃度についての較正曲線(グラフ2)を作成した。
【0194】
更に、塩基性共重合体組成物9を存在させた場合のPHMBについて、同様なUV較正曲線(グラフ2)を作成した。グラフ2は、塩基性共重合体の存在が、この方法によるPHMB濃度の決定を著しく妨害することはなかったことを示している。
【0195】
【表4】

【0196】
UV分析を用いた共重合体/PHMB組成物1〜25のフイルムからのポリ(ヘキサメチレンビグアニド)(PHMB)遊離速度を測定するための一般的方法
塩基性共重合体/PHMB組成物1〜25(表2)を、清浄なガラスパネル(150mm×100mm)に別々に適用し、シーン(Sheen)250μm塗布棒(draw down bar)を用いて塗布した。それらフイルムを乾燥し、被覆重量を書きとめた。
各被覆ガラスパネルを2リットルビーカー中の蒸留水(1リットル)中に別々に浸漬し、磁気撹拌器を用いて一定速度で撹拌した。
水の試料(約5cm)を、1時間に亙り一定の間隔で繰り返しビーカーから取った。
水の試料をUV分光光度計を用いて分析し、各試料の吸光度を、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)(PHMB)の最大λに相当する特定のピークの所で測定した。測定した吸光度は、ビーカー中のPHMBの濃度に直接関係していた。
上に記載した方法を用いて、次の遊離プロファイル(グラフ3及び4)が得られた。
【0197】
【表5】

【0198】
【表6】

【0199】
グラフ4から、16.7重量%のPHMBを含有する組成物2のフイルムは、10分以内にそのPHMB全てを遊離したのに対し、丁度5重量%のPHMBを含む組成物1は、そのPHMB全てを完全に遊離するのに20分かかることを結論付けることができる。
【0200】
従って、本発明によれば、塩基性共重合体からのポリ(ヘキサメチレンビグアニド)の解離速度を、塩基性共重合体の構造及び塩基性共重合体対ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)の比率により調節することができることが判明した。更に、上のことは、水及び水/エタノール混合物の両方の中で安定な塩基性共重合体溶液を、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)塩酸塩のような重合体ビグアニドを用いて製造することができることを例示している。
【0201】
PHMB/塩基性ビニル共重合体組成物の抑制最低濃度の決定
種々のPHMBレベルを有する重合体1(表1)の組成物の内在性抗菌力(intrinsic antimicrobial activity)を、抑制最低濃度(MIC)を測定することにより評価した。
1. 普通寒天上で、バクテリア(Pseudomonas aeruginosa ATCC 15442)を37℃で16〜24時間増殖させた(約10細胞/mlを与えた)。
2. 0.1%(体積)接種材料を用いて、新しい培地に接種し、次にマイクロプレートの各々のウエルに100μl入れた。但し、第一ウエルには200μl入れた。
3. 倍加希釈法を用いて、研究中の化合物の濃度を、縦軸に沿った各ウエルで変化させた。
4. 37℃で24時間培養した後、目で検査することにより、増殖の有無を決定した。
MICは、バクテリアの増殖を抑制するのに必要な試料の最低濃度である。
【0202】
【表7】

【0203】
塩基性共重合体/PHMB配合物の残留抗菌力の実験的決定
前に記載したようにして、塩基性共重合体/PHMB組成物を調製した(表2)。
試料の残留抗菌力を、次の方法により決定した:
1. 全ての組成物を、活性成分(PHMB)0.5%へ希釈した。各試料の50μl分をセラミックタイルのウエル中に入れ、約1時間乾燥させた。
2. 普通ブロス中でバクテリア(Ps. aeruginosa ATCC 15442)を37℃で16〜20時間増殖した。
3. 約10有機体/mlの接種材料を、生理食塩水(NaCl 0.85%)に入れて調製した。
4. バクテリア接種材料の150μl分を、予めPHMB/重合体組成物で被覆したセラミックタイルのウエル中へピペットで入れ、室温で培養した。
5. 5分の接触時間後、ピペットで接種材料を取り出し、生存、生存可能有機体の数を数えた(試料を連続的にCEN中和剤で10ずつ希釈し、1ml分を9mlのインピーダンス・ブロスに添加し、RABIT(商標名)を用いてバクテリア細胞数を数えた)。
6. 次に、PHMB/重合体被覆セラミックウエルを、殺菌蒸留水の5ml分で5回まで洗浄した。
7. 各洗浄工程後、試料をバクテリア接種材料の150μl分で再び接種した。
8. 上で述べたように、5分後、接種材料を取り出し、生存可能有機体の数を、上に記載した方法により数えた。
【0204】
RABIT〔高速自動バクテリア・インピーダンス法(Rapid Automated Bacterial Impedance Technique)〕(商標名)で、バクテリア懸濁物のコンダクタンスの変化を時間と共に測定する。活発に増殖するバクテリアが、規定された媒体中の非帯電又は弱く帯電した分子に分解し、高度に帯電した最終生成物を与える。得られたコンダクタンスの増大は、較正曲線を使用することによりバクテリア濃度へ直接関連付けることができる。〔この既知の方法に関連した更に詳細な背景については、英国ウエストヨークシャ、BD177SE、シプレイ、オトレイロード14、ドン・ホワイトレイ・サイエンティフィック(Don Whitley Scientific)、技術参考書類(Technical Reference Paper)−RAB−03に見出すことができる〕。
【0205】
表4は、上記方法を用いて得られた塩基性共重合体/PHMB配合物の持続殺菌力を要約したものである。
【0206】
【表8】

【0207】
表4は、PHMB及び塩基性共重合体を含有する組成物について、次の結論を引き出すことができることを例示している:
(i) 全ての塩基性共重合体/PHMB配合物が、1回及び2回洗浄後、塩基性共重合体が存在していない対照に対し、向上した持続殺生物効果を示している。
(iii) 塩基性共重合体が存在しないと、PHMBは、2回洗浄サイクル後、有用な殺生物力をもたない。
【0208】
種々の殺生物剤と塩基性共重合体との持続殺菌力
塩基性共重合体/殺生物剤配合物の残留殺菌力の実験的決定
前に記載したように、塩基性共重合体/殺生物剤組成物を調製した(表2)。
試料の残留抗真菌力を、次の方法により決定した:
1. `0'K−棒(Bar)を用いて顕微鏡ガラス・スライドの上に各組成物のフイルムを作り、24時間以上乾燥させた。
2. 真菌(Aspergillus niger ATCC 16404)を、麦芽寒天プレートの上で25℃で約7日間増殖させた。
3. 約10胞子/mlの接種材料を、生理食塩水(NaCl 0.85%)を用いて調製した。
4. 真菌接種材料の150μl分を、組成物の表面に添加し、室温で24時間培養した。
5. 次に生存、生存可能有機体の数を数えた(試料を中和媒体中へ洗浄して入れ、生理食塩水で連続的に希釈し、麦芽寒天上に塗布した)。
6. 次に、各組成物を殺菌蒸留水を噴霧することにより、10回洗浄した。
7. 各組成物を、次に再び接種し、24時間後、上に記載した方法により生存有機体の数を数えた。
【0209】
表5は、上記方法を用いて得られた塩基性共重合体/殺生物剤配合物の持続殺真菌力を要約したものである。
【0210】
【表9】

【0211】
種々の殺生物剤を用いて安定な配合物を調製することができるのみならず、噴霧洗浄プロトコルを用いて持続効果を維持できたことを結論付けることができる。表5の結果は、三つの配合物が、優れた持続殺真菌力を与えたことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) 重合体ビグアニドを単独で、又は第四級アンモニウム化合物、モノ第四級複素環アミン塩、尿素誘導体、アミノ化合物、イミダゾール誘導体、ニトリル化合物、錫化合物又は錯体、イソチアゾリン−3−オン、チアゾール誘導体、ニトロ化合物、沃素化合物、アルデヒド遊離剤、チオン、トリアジン誘導体、オキサゾリジン及びその誘導体、フラン及びその誘導体、カルボン酸及びその塩及びエステル、フェノール及びその誘導体、スルホン誘導体、イミド、チオアミド、2−メルカプト−ピリジン−N−オキシド、アゾール殺真菌剤、ストロビルリン、アミド、カルバメート、ピリジン誘導体、活性ハロゲン基を有する化合物、及び有機金属化合物からなる群から選択された少なくとも一種類の他の微生物学的に活性な成分と組合せて含む抗菌剤;及び
(ii) 式(1):
【化1】


〔式中、
[A]は、式(9)を有し、
【化2】


[B]は、式(10)を有し、
【化3】


そして、[D]は、式(12)を有し、
【化4】


ここで、
Xは、式(11)を有し、
【化5】


式中、[A]、[B]、及び[D]は、どのような順序で存在していてもよく;
Tは、場合により置換された置換基であり;
L及びZは、夫々独立に、場合により置換された結合基であり;
、R、及びRは、夫々独立に、H、場合により置換されたC1−20−アルキル又は場合により置換されたC3−20−シクロアルキルであり;
及びRは、夫々独立に、H、又はC1−4−アルキルであり;
Eは、塩基性置換基であり;
qは、15〜1000であり;
mは、0〜350であり;
nは、1〜75であり;
yは、1〜100であり;
sは、0又は1であり;
pは、3〜50であり;
但し、R及びRの少なくとも一方はHであり、R、R、R、T、L、及びZは、[D]のEをプロトン化することができる酸性基を含まないものとする。〕
を有する塩基性共重合体;
を含む組成物。
【請求項2】
抗菌剤が、線状重合体ビグアニドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
重合体ビグアニドが、重合体鎖の混合物を含む線状重合体ビグアニドであり、然も、末端基を除いた個々の重合体鎖が、式(4):
【化6】


(式中、d及びeは、架橋基を表し、それは同じでも異なっていてもよく、それらを一緒にして、dにより結合された窒素原子対の間に直接介在する炭素原子数と、eにより結合した窒素原子対の間に直接介在する炭素原子数との合計が、9より大きく、17より小さい。)
の二つのビグアニド基を有する少なくとも一つの反復単位を含んでいる、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
重合体ビグアニドが、式(6):
【化7】


(式中、nは、4〜20である。)
を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
塩基性共重合体が、15℃より高く、好ましくは25℃より高い曇り点を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
塩基性共重合体が、10〜95重量%の[B]、0〜25重量%の[A]、及び1〜80重量%の[D]を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
、R、及びRが、夫々独立に、H又は−CHである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
及びRが、夫々独立に、Hである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
Tが、式、−C(O)OR(ここで、Rは、C1−10−アルキルを含む)の基を含み、そしてLが、式:
【化8】


の基を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
[D]中の塩基性置換基[E]に結合して示されている[Z]が、式:
【化9】


(式中、[E]は、第二級又は第三級脂肪族アミン、又はそれらのプロトン化又は四級化塩を含み、Rは、請求項1〜9のいずれか1項に記載されている通りである。)
を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
式(1)の塩基性共重合体が:
式(14)の[A]、
【化10】


式(15)の[B]、
【化11】


及び式(16)の[D]、
【化12】


(式中:
、R、及びRは、H又はCHであり;
は、場合によりケトン、エーテル、−OH、エポキシド、シラン、又はケトエステル基により置換された、C1−108アルキルであり;
及びR10は、夫々独立に、H、場合により置換されたC1−10−アルキル、又はC3−8−シクロアルキルであり;そして
m、n、y、p、s、[X]、及び[Z]は、請求項1〜10に定義されている通りである。)
を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
重合体ビグアニド対塩基性共重合体の重量比が、100:1〜1:1000重量%、一層好ましくは20:1〜1:500重量%である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
1〜12、好ましくは3〜9のpHを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
抗菌剤が、殺真菌剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
(i)線状重合体ビグアニド;
(ii)塩基性共重合体;及び
(iii)キャリヤー;
を含み、然も、前記重合体ビグアニド及び塩基性共重合体が、請求項1〜13のいずれか1項に定義されている通りである、配合物。
【請求項16】
キャリヤーが、水、又は、水及び(又は)水混和性有機溶媒の混合物である、請求項15に記載の配合物。
【請求項17】
0.01〜5重量%の重合体ビグアニド、及び0.01〜50重量%の塩基性共重合体を含む、請求項15又は16に記載の配合物。
【請求項18】
1〜12、好ましくは3〜9の範囲のpHを含む、請求項15〜17のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項19】
表面を、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物、又は請求項15〜18のいずれか1項に記載の配合物と接触させることを含む、表面上の微生物のレベルを実質的に減少し、それを持続する方法。

【公表番号】特表2007−502320(P2007−502320A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530487(P2006−530487)
【出願日】平成16年5月11日(2004.5.11)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002037
【国際公開番号】WO2004/100665
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(505421696)アーチ ユーケイ バイオサイドズ リミテッド (5)
【Fターム(参考)】