説明

重合体結合抗菌剤およびその使用

【課題】従来技術の課題が解決された抗菌剤を提供すること。
【解決手段】反応性基を有する2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン誘導体と、該反応性基と反応する基を有する重合体とを反応させて得られた、重合体が結合した2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン誘導体からなることを特徴とする重合体結合抗菌剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体結合抗菌剤、抗菌性組成物、その製造方法、それらの使用方法およびそれらを使用した物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、抗菌剤は無機系と有機系のものに大別される。無機系の抗菌剤は、樹脂合成繊維或いは塗料などに添加して使用した場合、得られる製品の耐熱性および耐候性が良好ではあるが、得られる製品の透明性および機械的強度などの物性を劣化させるという問題点がある。また、無機系の抗菌剤の安全性については、該抗菌剤が銀などの金属イオンを含有しているので、今後の大量消費による銀などの金属の蓄積に起因する生態系への影響が問題となっている。
【0003】
有機系の抗菌剤は、樹脂、合成繊維或いは塗料などに添加して使用する場合、得られる製品の機械的強度は良好であるが、該製品の耐熱性や耐候性に欠点があり、使用する抗菌剤の種類によっては得られる製品に透明性の問題が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に有機系の抗菌剤は低分子量化合物であるため、これらを使用するに当たって種々の不都合が生じている。例えば、比較的沸点の低い抗菌剤や昇華性の抗菌剤では成形加工時や加熱硬化時などの熱加工時、加温状態での保存時や使用時などに昇華、揮発などを起こしたり、温水や酸性、アルカリ性などの水溶液、アルコール、油などの有機溶剤などと接触することによって、合成樹脂や塗膜中から抽出されることがあり、抗菌剤の効果を長期にわたって持続することができない場合があった。
【0005】
また、抗菌剤を樹脂と混合する場合、抗菌剤と樹脂との相溶性が悪い場合には長期使用中に成型加工品表面や塗装表面に抗菌剤がブリードアウト(ブルーミング現象)を起こし、有効添加量の減少をもたらすほか、表面にべたつきを起こしたり、接着性や印刷適性が低下したり、他の物品を汚染するなどの問題点が発生することもある。さらに抗菌剤を多量に添加すると、相分離を起こして合成樹脂の透明性や機械的強度を低下させることになるため、添加量に制限があり、改善が要求されていた。さらに、抗菌剤は低分子であることから抗菌剤により皮膚や粘膜に対する刺激性が見られ、また、粉体の場合には粉塵の発生など、安全性や衛生性についても注意が必要のものがある。
【0006】
そこで、抗菌剤を高分子量化し、抗菌剤の揮散、溶出などを防止しようとする試みが為されている。しかしながら、上記高分子量化抗菌剤は、主要な樹脂であるポリエチレン系、ポリプロピレン系などのポリオレフィン系樹脂、各種ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂など、合成樹脂の種類によっては相溶性が充分でないなどの使用範囲に限界があり、広範な汎用合成樹脂用の抗菌剤としては依然問題点は解決されていない。従って本発明の目的は、上記従来技術の課題が解決された抗菌剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、反応性基を有する2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン誘導体と、該反応性基と反応する基を有する重合体とを反応させて得られた、重合体が結合した2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン誘導体からなることを特徴とする重合体結合抗菌剤(以下単に「重合体結合抗菌剤」と云う場合がある。)を提供する。
【0008】
上記本発明においては、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン誘導体が、カルボン酸アルキルエステル基、カルボン酸ハロゲナイド基、水酸基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の基を有する4−ヒドロキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチル−ピペリジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン、1−オクチルオキシ−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジンおよびそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種であり、上記重合体が、水酸基、アミノ基、カルボン酸アルキルエステル基およびカルボン酸ハロゲナイド基から選ばれる少なくとも1種の基を有する重合体であることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、前記本発明の、抗菌剤残基の含有量が5〜95質量%である前記本発明の重合体結合抗菌剤を分散媒体に分散させてなることを特徴とする抗菌性組成物を提供する。該組成物においては、分散媒体が、樹脂、樹脂の溶液或は水系分散体であること;樹脂が、熱可塑性重合体または熱硬化性樹脂の少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、前記本発明の重合体結合抗菌剤を、混練機、混合機または分散機により、分散媒体に分散させることを特徴とする抗菌性組成物の製造方法を提供する。該方法で得られる組成物は、分散媒体が樹脂であり、前記製造方法で得られた、重合体結合抗菌剤を高濃度で含有することが好ましい。
【0011】
また、本発明は、分散媒体が樹脂である前記本発明の抗菌性組成物を成形加工することを特徴とする抗菌性樹脂加工物品の製造方法を提供する。該加工物品としては、容器、フィルム、シート、パイプ、ホース、チューブ、ビーズ、繊維、自動車部品、電気機器部品、文具、家具または日用品が挙げられる。
【0012】
また、本発明は、前記本発明の重合体結合抗菌剤を、樹脂の溶液或は水系分散体に分散させてなる抗菌性組成物を、物品に塗布、含浸または印刷で付与することを特徴とする抗菌性加工物品の製造方法、および該方法で得られた抗菌性組成物を含有する抗菌性加工物品を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明者らは、前記問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、縮合反応性基を有する特定の抗菌剤を、上記反応性基と反応する基を有する重合体に縮合反応により結合させて得られた重合体結合抗菌剤によって、前記の問題点を解決できることを見出した。本発明はこの知見に基づいて完成されたものであり、重合体結合抗菌剤の製造に当たり、互いに反応させる抗菌剤と重合体とを選択することにより、得られる重合体結合抗菌剤を、この重合体結合抗菌剤を添加する合成樹脂類などに対して適正な重合体結合抗菌剤とすることができ、従来の抗菌剤に比べて各種合成樹脂類などとの相溶性が良く、加工性に優れ、物性的にも熱安定性、耐ブリード性などに優れた重合体結合抗菌剤が得られ、これを分散媒体に分散し、加工することにより実用上極めて有用な抗菌性組成物および物品を提供することができる。
【0014】
本発明の抗菌性組成物は、これに用いる重合体結合抗菌剤が従来の抗菌剤に比べて各種合成樹脂類などとの相溶性が良く、加工性に優れ、物性的にも熱安定性、耐ブリード性などに優れているため、各種合成樹脂、分散媒体の抗菌性組成物が得られ、その加工物品の加工性および熱安定性、耐ブリード性などの物性も優れている。
【0015】
本発明の抗菌性組成物の特長は、抗菌剤として、使用される合成樹脂や被覆材料などに対し相溶性に優れ、また、成形物品に使用した場合における成形加工時やコーティング剤、塗料、インキなどの加熱硬化時などでも蒸発や昇華による揮散はなく、水、有機溶媒などへの溶出もなく、成型品表面や被覆材表面へのブリードアウトを起こさないなどの優れた性質を有するとともに、抗菌剤が高分子量の重合体に結合していることから、安全性、衛生性にも優れているものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の重合体結合抗菌剤は、反応性基を有する特定の抗菌剤と、上記反応性基と縮合反応する基を有する重合体とを縮合反応させることによって得られる。また、本発明の重合体結合抗菌剤は、場合により反応性基を有する抗菌剤の代わりに、或は同時に反応性基を有する紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤或は帯電防止剤などの少なくとも1種の機能剤を上記反応性基を有する重合体とを縮合反応させて得られる重合体結合機能剤の少なくとも1種とを併用することもできる。
【0017】
抗菌剤または重合体の有する反応性基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、アルキル(C1〜C12)エステル基、エポキシ基、アミノ基、クロルトリアジン基およびイソシアネート基などの公知の縮合反応性基からなる群から、例えば、反応によりエステル結合をもたらす水酸基とカルボキシル基やその誘導基の組み合わせ、ウレタン結合をもたらす水酸基とイソシアネート基の組み合わせの如く、互いに縮合反応する基の組み合わせとして選択される。
【0018】
反応性基を有する抗菌剤としては、公知の機能剤に上記の反応性基を導入させた誘導体が使用される。例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール、1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールなどおよびそれらのジカルボン酸ハーフエステル誘導体およびそれらの酸クロライド化合物などのヒンダードアミン系光安定剤の誘導体が挙げられる。
【0019】
上記した重合体結合抗菌剤と併用してもよいその他の重合体結合機能剤に使用する反応性を有する機能剤として、例えば、紫外線吸収剤としては、3−[3’−(2”H−ベンゾトリアゾール−2”−イル)−4’−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸、3−[3’−(2”H−ベンゾトリアゾール−2”−イル)−5’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸、3−[3’−(2”H−ベンゾトリアゾール−2”−イル)−5’−エチル−4’−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸、3−[3−(2”H−ベンゾトリアゾール−2”−イル)−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸、3−[3’−(5”−クロロ−2”H−ベンゾトリアゾール−2”−イル)−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸、3−[3”−(2”’H−ベンゾトリアゾール−2”’−イル)−4”−ヒドロキシ−5”−(1’,1’−ジメチルベンジル)フェニル]プロピオン酸、3−[3”−(2”’H−ベンゾトリアゾール−2”’−イル)−4”−ヒドロキシ−5”−(1”,1”,3”,3”−テトラメチルブチル)フェニル」プロピオン酸、4−[3’−(2”’H−ベンゾトリアゾール−2”−イル)−3’−ヒドロキシフェニキシ]酪酸、または2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)2H−ベンゾトリアゾール系化合物、例えば2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)2H−ベンゾトリアゾール、ハロゲン原子が置換した5’−クロロ−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)2H−ベンゾトリアゾール、5’−ブロモ−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)2H−ベンゾトリアゾールなど、またはベンゾトリアゾール基にC1〜C5までのアルキル基が1つまたは2つ置換した5’−メチル2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)2H−ベンゾトリアゾール、5’−tブチル−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)2H−ベンゾトリアゾール、5’,6’−ジメチル−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)2H−ベンゾトリアゾールなど、またはベンゾトリアゾール基にC1〜C5までのアルコキシ基が置換した5’−メトキシ−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)2H−ベンゾトリアゾール、および5’−n−ブトキシ−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)2H−ベンゾトリアゾールなどに、環状エステル化合物、例えばβ−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトンおよびγ−バレロラクトンなどを開環反応させた化合物または開環縮合させた化合物、具体的には3−[4’−(2”H−ベンゾトリアゾール−2”−イル)−3’−ヒドロキシフェノキシ]プロピオン酸、4−[4’−(2”H−ベンゾトリアゾール−2”−イル)−3’−ヒドロキシフェノキシ]ブタン酸、6−[4’−(2”H−ベンゾトリアゾール−2”−イル)−3’−ヒドロキシフェノキシ]ヘキサン酸などの開環反応物、または末端に[4’−(2”H−ベンゾトリアゾール−2”−イル)−3’−ヒドロキシフェノキシ]が結合したポリブチロラクトンやカプロラクトンなどおよびそれらの酸クロライド化物などのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の誘導体が挙げられる。
【0020】
また、別の紫外線吸収剤としては、例えば、2−[4’−[(2”−ヒドロキシ−3”−メチルオキシプロピル)オキシ]−2’−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2’,4’−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4’−[(2”−ヒドロキシ−3”−イソプロピルオキシプロピル)オキシ]−2’−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2’,4’−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4’−[(2”−ヒドロキシ−3”−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2’−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2’,4’−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、または2−[4’−[(2”−ヒドロキシ−3”−テトラデシルオキシプロピル)オキシ]−2’−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2’,4’−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4’−[(2”−ヒドロキシ−3”−オクチロイルオキシプロピル)オキシ]−2’−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2’,4’−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4’−[(2”−ヒドロキシ−3”−プロピロイルオキシプロピル)オキシ]−2’−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2’,4’−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4’−[(2”−カルボキシプロピオキシ−3”−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2’−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2’,4’−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4’−[(2’−フタリロキシ−3’−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2’−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2’,4’−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなど、それらのジカルボン酸ハーフエステル誘導体、それらの酸クロライド化物などのトリアジン系紫外線吸収剤の誘導体、
【0021】
2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−nオクトキシベンゾフェノン、4,4’−ジ−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4,4’−ジ−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸などの安息香酸系、ケイヒ酸、p−メトキシケイヒ酸などのケイヒ酸系、サリチル酸などおよびそれらの酸クロライド化物などの紫外線吸収剤が挙げられる。
【0022】
上記した重合体結合抗菌剤と併用してもよいその他の重合体結合機能剤に使用する反応性を有する機能剤として、例えば、酸化防止剤としては、3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸などおよびそれらの酸クロライド化合物などのヒンダードフェノール系酸化防止剤の誘導体;3,3’−チオビスプロピオン酸モノドデシルエステル、3,3’−チオビスプロピオン酸モノオクタデシルエステルなどおよびそれらの酸クロライド化物などの硫黄系酸化防止剤の誘導体が挙げられる。
【0023】
また、赤外線吸収体としては、例えば、トリス(t−オクチル−ナフタロ)(カルボキシル−フタロ)シアニン・酸化バナジウムコンプレックス、N−(o−カルボキシル−p−ジブチルアミノフェニル)−N,N’,N’−トリス(p−ジブチルアミノフェニル)−p−フェニレンジアミン・6フッ化リン酸塩などの赤外線吸収剤の誘導体が挙げられる。
【0024】
また、帯電防止剤としては、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリ(エチレングリコール−co−プロピレングリコール)モノメチルエーテル、ポリ(エチレングリコール−co−プロピレングリコール)モノブチルエーテル、N,N−ジエチルアミノエタノール、N,N−ジエチルアミノプロパノール、N,N−ジエチルアミノエトキシ−ポリエチレングリコールなどおよびそれらのジカルボン酸ハーフエステル誘導体およびそれらの酸クロライド化物など、3−ジエチルアミノプロピオン酸、2,3−エポキシプロピル−ジメチルアミン、2,3−エポキシプロピル−トリメチルアンモニウムクロライドなどの帯電防止剤の誘導体などが挙げられる。
【0025】
上記の反応性基を有する紫外線吸収剤やそれ以外の機能剤と縮合または付加反応する反応性基を有する重合体としては、重合体結合抗菌剤やその他の重合体結合機能剤が添加される分散媒体(重合体)と相溶性(親和性)のある重合体を選択すればよく、特に限定されるものではない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレン−co−プロピレン)、ポリ(エチレン−co−プロピレン−co−α−オレフィン)などのポリオレフィン系重合体、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール−co−プロピレングリコール)、(ポリエチレングリコール)−(ポリプロピレングリコール)ブロック共重合体、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテル系重合体、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンセバケートなどの脂肪族ポリエステル、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリネオペンチルテレフタレートなどの芳香族ポリエステルなどのポリエステル系重合体、6−ナイロン系、6,6−ナイロン系などのポリアミド系重合体、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリビニルブチラールなどのポリビニル系重合体、アクリル酸エステル(共)重合体、メタクリル酸エステル(共)重合体、アクリル−スチレン共重合体などの(メタ)アクリル系(共)重合体、ポリシリコーン系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリ尿素系重合体、エポキシ樹脂、メラミン系樹脂、セルロース系重合体、キトサン系重合体などから選ばれた単独重合体或いは上記の2種またはそれ以上の単量体からなる共重合体或いは上記の重合体からなるブロック共重合体が挙げられる。
【0026】
前記抗菌剤と反応する重合体としては、平均分子量の範囲で示すと約3,000〜200,000程度、好ましくは約5,000〜100,000程度の重合物である。前記抗菌剤と重合体との反応によって生成した重合体結合抗菌剤が、比較的分子量の低い高分子ないし高分子の重合体であることから、通常の低分子量の抗菌剤に比べて、安全性および衛生性に優れ、物品の加工処理工程、保存時或いは使用時において加熱しても揮散せず、ブルーミング現象も起こさず、被加工物品との相溶性に優れていることから、被加工物品に対して必要量の抗菌剤が添加でき、また、添加された物品の物性を阻害しないことが特長である。
【0027】
前記抗菌剤と反応する重合体の反応性基としては、水酸基、カルボキシル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、アルキル(C1〜C12)エステル基、エポキシ基、アミノ基、クロルトリアジン基およびイソシアネート基など、公知の反応性基からなる群から、上記抗菌剤の有する反応性基と縮合または付加反応する組み合わせで選ばれる。反応性基の組み合わせとしては、特に水酸基とカルボキシル基またはカルボキシクロリドとの組み合わせが好ましい。
【0028】
上記の反応性基を有する重合体としては、例えば、ポリオレフィン系の反応性重合体としては、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)共重合体、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール−co−酢酸ビニル)共重合体、ポリ(エチレン−co−アクリル酸)共重合体、ポリ(エチレン−co−アクリル酸メチル)共重合体、ポリ(エチレン−co−メタアクリル酸)共重合体、ポリ(エチレン−co−メタアクリル酸メチル)共重合体、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール−co−メタアクリル酸)共重合体、ポリ(エチレン−co−エチルアクリレート−co−無水マレイン酸)共重合体、ポリ(エチレン−co−ブチルアクリレート−co−無水マレイン酸)共重合体、ポリエチレン−無水マレイン酸グラフト共重合体、ポリ(エチレン−co−グリシジルメタアクリレート)共重合体、ポリエチレンモノアルコール、ポリエチレンモノカルボン酸などが挙げられる。
【0029】
ビニルポリマー系、(メタ)アクリルポリマー系などでは、重合体の製造時に反応性を有する単量体を共重合するか、重合後に後処理を行うことによって重合体の反応性基を導入できる。
【0030】
本発明の重合体結合抗菌剤中の抗菌剤残基の含有量は、結合量が少なければ、重合体結合抗菌剤の使用量は増加し、結合量が多ければ、重合体結合抗菌剤の使用量は少なくて済む。結合量は、該残基が結合した重合体の平均分子量によっても異なり、一概に規定することはできないが、好ましい結合量は、上記重合体100質量部当たり10〜50質量部程度である。ここで、抗菌剤残基とは、前記例示の反応性基を有する抗菌剤から反応性基を除いた残りの部分をいう。
【0031】
本発明で使用する重合体結合抗菌剤は、抗菌剤および重合体中の反応性基同士を反応させることで得られ、製造方法は特に限定されない。例えば、上記の重合体および抗菌剤を、それらを溶解する溶剤に溶解し、必要により縮合触媒を用いて、150〜250℃程度の温度で反応させる方法、押出機などの混練機中で上記重合体と上記抗菌剤を溶融下に、必要により縮合触媒を共存させて、或は高圧二酸化炭素雰囲気中で反応させる方法が挙げられる。他の重合体結合機能剤の製造方法も上記と同様である。
【0032】
本発明は重合体結合抗菌剤を用途に応じて分散媒体である各種形態の重合体に分散させた抗菌性組成物として各種製品の製造に使用される。重合体としては、合成樹脂(以下では樹脂という)(固体状態または溶融状態)、樹脂の溶液または水性分散体が挙げられる。このような重合体分散媒体を使用した製品、例えば、合成樹脂成形体、繊維、紙、不織布、塗料、コーティング剤、捺染剤、印刷インキ、電子写真現像剤、インクジェットインク、接着剤または化粧品などは、その製造時に、それぞれの原料樹脂或はその溶液、ビヒクル樹脂或はその溶液または水性分散体などに、重合体結合抗菌剤が従来公知の方法で添加され、本発明の抗菌性組成物が得られ、これらは従来公知のそれぞれの処理方法或は加工方法で、例えば、成形、紡糸、製紙、成膜、塗布、捺染、印刷、電子写真記録、インクジェットプリンティング、接着などに使用され、形成された加工物品や記録材などに改良された抗菌性能などの機能が付与される。
【0033】
それによって、各種製品は、通常の低分子の有機系抗菌剤の有する欠陥である蒸発、揮発や昇華などによる抗菌剤の揮散による機能の低下や相溶性の限界による添加量の制限、表面へのブルーミング現象による有効添加量の減少や他の物品への汚染や印刷性の阻害、無機系抗菌剤の樹脂(重合体媒体)への添加による透明性の低下などが改良される。また、化粧品の場合はそれを用いて化粧することで人の皮膚が保護される。
【0034】
上記した合成樹脂としては従来公知の成型物、シート、フィルムなどに使用される熱可塑性成形材料が挙げられる。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−ビニルアルコール系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、液晶ポリエステル樹脂(LCP)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)からなる群より選ばれた樹脂または2種以上の樹脂のポリマーブレンド或いはポリマーアロイである。また、前記したナチュラル樹脂にガラス繊維、炭素繊維、半炭化繊維、セルロース系繊維、ガラスビーズなどのフィラーや難燃剤などを含有させた熱可塑性成形材料も使用される。例えば、PET、PBT、LCP、POM、PA、PPSなどのエンジニアリングプラスチックのガラス繊維入り複合材料或いは難燃剤、発泡剤、架橋剤などの各種添加剤を添加したものである。また、必要に応じて従来使用されている樹脂用の添加剤、例えば、ポリオレフィン系樹脂微粉末、ポリオレフィン系ワックス、エチレンビスアマイド系ワックス、金属石鹸などを単独で或いは併用して使用することができる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などであり、ナチュラル樹脂のほかガラス繊維、炭素繊維、半炭化繊維、セルロース系繊維、ガラスビーズなどのフィラーや難燃剤などを含有させた熱硬化性成形材料が挙げられる。
【0035】
本発明の抗菌性組成物は、重合体結合抗菌剤を上記の合成樹脂に対して任意の添加量で添加して得ることが可能であるが、抗菌剤成分の含有量として上記樹脂100質量部に対して約0.05〜20質量部、好ましくは約0.1〜10質量部の割合で添加するのがよい。また、重合体結合抗菌剤として抗菌剤部分の有する機能と使用する目的とに応じて、同種機能剤の組み合わせ、或いは重合体結合紫外線吸収剤、重合体結合光安定剤或は重合体結合酸化防止剤のような異種機能剤の組み合わせを含め2種以上併用することができる。
【0036】
本発明の抗菌性組成物は、重合体結合抗菌剤を、単独或いは上記の樹脂を加えてミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ニーダールーダー、単軸押出機或は多軸押出機などで混練され、シート状のマスターバッチに裁断されるか、ペレタイザーでマスターバッチのペレットとされ、使用される上記の樹脂とともに常法に従いヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラーなどにて混合し、ミキシングロール、射出成形機、押出し成形機、ブロー成形機、インフレーション成形機、圧縮成形機、回転成形機、熱硬化性樹脂成形機などで成形される。
【0037】
上記の方法で成形される物品として容器(食品容器、化粧品容器、医薬品容器など)、フィルム、シート、ブリスター、パイプ、ホース、チューブ、ビーズ、繊維、自動車部品(車両内装品など)、電気機器部品(電気器具のハウジングなど)、文具、おもちゃ、家具(衣装収納製品など)、日用品(台所用品、浴用製品など)などが挙げられる。上記の物品の中で、透明性、耐ブリード性が必要な用途の物品、特に耐ブリード性が必要な食品、医療用品、化粧品或は精密装置部品用の包装フィルム、容器などの成形に本発明の抗菌性組成物は適している。
【0038】
繊維材料としては公知の繊維材料が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン系繊維、アクリロニトリル系繊維、ポリウレタン繊維、ポリエチレン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維などである。加工方法もそれぞれ従来公知の紡糸方法に準じて行われる。重合体結合抗菌剤の添加量としては、抗菌剤成分として上記樹脂100質量部に対して約0.1〜5質量部の割合が好ましい。
【0039】
紙材料、不織布材料、塗料、コーティング剤、捺染剤、印刷インキまたは接着剤においても従来公知の方法に準じてなされる。加工方法としては従来公知のそれぞれの処理方法、例えば、製紙、成膜、塗布、捺染、印刷することでなされる。塗料としては従来公知のアクリルメラミン系、アルキッドメラミン系、ポリエステルメラミン系、アクリルイソシアネート系、二液ポリウレタン系などの油性溶剤型、アクリルメラミン系、アルキッドメラミン系などの水性溶液型、アクリル樹脂エマルジョン系、フッ素樹脂エマルジョン系などの水性ディスパージョン型、アクリルイソシアネート系、ポリエステルイソシアネート系、ポリエステルエポキシ系などの粉体塗料など、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系などの紫外線硬化、電子線硬化塗料などが挙げられる。用途では、金属板用、コイルコーティング用、建材用、木工用などである。コーティング剤や接着剤も同様な乾式および湿式のタイプが挙げられる。
【0040】
捺染剤としては従来公知のアクリル樹脂エマルジョン系、アクリルスチレン樹脂エマルジョン系、合成ゴム系のタイプが挙げられる。印刷インキとしては、従来公知の輪転、枚葉などのオフセットインキ、プラスチックフィルム・シート用、アルミ箔用、建材・化粧板用などのグラビヤインキ、金属板用インキなどのインキが挙げられる。電子写真現像剤およびインクジェットインクとしては、従来公知のフルカラー、モノカラー、モノクロの乾式現像剤、湿式現像剤、水性、油性、ソリッドタイプのインクジェットインクが挙げられる。特に広告、看板用、外装塗装用などのフルカラー画像の用途に使用される現像剤やインクが挙げられる。
【0041】
上記のそれぞれの材料への重合体結合抗菌剤の添加量は、使用される用途、目的によって変わるが、ひとつの基準として樹脂固形分100質量部に対する抗菌剤成分としての添加量として約0.1〜10質量部の割合が好ましい。また、重合体結合抗菌剤として目的に応じて同種機能或いは異種機能を含め2種以上併用し、相乗効果を得ることができる。
【0042】
一般的に、製品がフィルムのような薄膜や糸のように細い場合や、材料が劣化し易いものだったり、使用される状況が屋外の塗料のように厳しい環境に曝され、かつ長期にわたる耐久性を期待される時などでは、添加量としては多い方の比率で使用することが望ましい。
【0043】
湿式の加工方法としては、加熱攪拌反応槽、混合攪拌反応槽、ディゾルバー混合などが挙げられ、湿式分散による加工方法としてはミキシングロールミル、ニーダー、ボールミル、アトライター、サンドミル、横形媒体分散機、縦形媒体分散機、連続横形媒体分散機、連続縦形媒体分散機などが使用される。乾式の溶解、分散加工方法は上記合成樹脂で挙げた方法および加工機械が使用できる。
【0044】
合成樹脂の着色、塗料、捺染剤、印刷インキ、電子写真現像剤或いはインクジェットインクなどの物品を着色する場合に使用される色素としては、通常使用されている有機顔料、無機顔料および体質顔料、および染料が使用される。具体的には、例えば、溶性アゾ系顔料、不溶性アゾ系顔料、ポリアゾ系顔料、アゾメチンアゾ系顔料、アントラキノン系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリノン−ペリレン系顔料、アゾメチン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ピロロピロール系顔料、蛍光顔料などの有機顔料、カーボンブラック顔料、酸化チタン系顔料、黄色酸化鉄、弁柄、酸化クロム、群青、複合酸化物顔料、硫化亜鉛などの無機顔料、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、硫酸バリウムなどの体質顔料、さらに分散染料、油溶性染料が挙げられ、特に限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
次に合成例および実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、文中「部」または「%」とあるのは質量基準である。
【0046】
合成例1(重合体結合抗菌剤−1の合成)
温度計、攪拌機および還流管を備えた反応容器にエチレン−アクリル酸共重合体(重量比;74.5:25.5、カルボキシル基当量:282.6)70.0部をモノクロルベンゼン500部に溶解し、常法に従って塩化チオニルを用いて酸クロライド化し、続いて4−ヒドロキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチル−ピペリジン46.7部を仕込み、5時間加熱還流し、反応させた。放冷後、水200部を加え、炭酸ナトリウムで中和し、イソプロピルアルコール中に注入して反応生成物を析出させ、濾過した。水およびイソプロピルアルコールで充分に洗浄し、乾燥させ、「重合体結合抗菌剤−1」を98.7部得た。生成物は赤外吸収スペクトルおよびNMRで確認した。得られた重合体結合抗菌剤−1の抗菌剤残基の含有量は2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(以下「TMP」と称する)換算の含有率で示すと31%である。
【0047】
合成例2(重合体結合抗菌剤−2の合成)
合成例1と同様にして4−ヒドロキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンの代わりに4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン42.9部を使用して、重合体結合抗菌剤−2を合成した。TMP換算含有率は32%であった。
【0048】
合成例3(重合体結合抗菌剤−3の合成)
合成例1と同様にして4−ヒドロキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンの代わりに1−オクチルオキシ−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン77.8部を使用して、重合体結合抗菌剤−3を合成した。TMP換算含有率は25%であった。
【0049】
実施例1(重合体結合抗菌剤を含むマスターバッチの製造例)
低密度ポリエチレン(比重0.918、MFR 12)83.9部と重合体結合抗菌剤−1の17.1部を高速混合機(ヘンシェルミキサー)で充分混合の後、2軸押出機を用い、130〜150℃で混練、造粒しマスターバッチを得た。このマスターバッチは抗菌剤残基をTMP換算で5%含有する。同様にして合成例2、3で得られた重合体結合抗菌剤−2、−3をポリエチレンと混練、造粒し、それぞれ抗菌剤残基をTMP換算で5%含むマスターバッチとした。
【0050】
比較例1
また、同様に2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン誘導体からなる低分子量抗菌剤−1或はオリゴマー抗菌剤−1をポリエチレンと混練、造粒し、それぞれ抗菌剤残基をTMP換算で5%含むマスターバッチとした。
【0051】
実施例2
低密度ポリエチレン(比重0.918、MFR 12)に実施例1で得た重合体結合抗菌剤−1のポリエチレンマスターバッチ(TMP換算で5%含有)を40%(TMP換算で2%)ミキシングロール(ロール表面温度:120℃)で添加、混練し、シートに成型した。同様に重合体結合抗菌剤−2、−3のマスターバッチでもシートを成型した。
【0052】
比較例2
実施例2と同様に、比較例1で作成したマスターバッチを使用して抗菌性残基をTMP換算で0.5%含有するシートを作成した。
【0053】
実施例3(抗菌性試験)
(供試菌株)
グラム陰性菌:大腸菌(Escherichia coli NBRC 3972)
グラム陽性菌:黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus NBRC 12732)
【0054】
(試験方法)
JIS Z 2801に準じた。
試験片(50×50mm)(実施例2および比較例2で得られたシート)を滅菌シャーレ中に置き、試料面上に生菌数を調整した前培養液を0.2ml接種し、ポリエチレンフィルム(40×40mm)で被覆して、35℃、24時間培養した後、SCDLP培地で菌を洗い出し、生菌数を混釈平板法で測定した。接種菌液の栄養分には1/500(大腸菌)および1/20(黄色ブドウ球菌)希釈のニュートリエントプロス液体培地を使用し、無添加試料と比較して、JIS指定の計算式で抗菌活性値が2.0以上の試料を抗菌性があると判定した。対照試験として、ポリエチレンフィルムを試験片とした試験も同様に行った。
【0055】

【0056】

【0057】
重合体結合抗菌剤−1、低分子量抗菌剤−1、オリゴマー抗菌剤−1、いずれも充分な抗菌性を示した。また、同様に重合体結合抗菌剤−2、重合体結合抗菌剤−3も充分な抗菌性を示した。
【0058】
実施例4(ブルーミング性試験)
実施例2および比較例2で得られたポリエチレンシートを60℃でギアオーブンで加熱し、抗菌剤のポリエチレンシート表面へのブルーミング現象を表面の曇りの状況から調べた。本発明の重合体結合抗菌剤を添加したシートはいずれもブルームが見られなかった。
【0059】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の重合体結合抗菌剤を分散媒体中に分散して得られる抗菌性組成物は、重合体結合抗菌剤の分散媒体への相溶性、抗菌性、耐熱性、耐ブリード性が良好なため、これを加工して得られる物品も透明性、抗菌性、耐熱性、耐ブリード性に優れている。分散媒体が樹脂である抗菌性組成物は、例えば、容器(食品容器、化粧品容器、医薬品容器など)、フィルム、シート、ブリスター、パイプ、ホース、チューブ、ビーズ、繊維(衣類、カーペット)、自動車部品(車両内装品など)、電気機器部品(電気器具のハウジングなど)、文具、おもちゃ、家具(衣装収納製品など)、日用品(台所用品、浴用製品など)などの合成樹脂成形体、繊維(衣類、カーペット)、紙、不織布、塗料、コーティング剤、捺染剤、印刷インキ、電子写真現像剤、ジェットインク、接着剤または化粧品などは、その製造時に、それぞれの原料樹脂或はその溶液、ビヒクル樹脂或はその溶液または水性分散体などに、重合体結合抗菌剤が従来公知の方法で添加され、本発明の抗菌性組成物が得られ、これらは従来公知のそれぞれの処理方法或は加工方法で、例えば、成形、紡糸、製紙などで製品化される。各種製品は、成膜、塗布、捺染、印刷、電子写真記録、インクジェットプリンティング、接着などに使用され形成された加工物品などに改良された抗菌性能などが付与される。
【0061】
それによって、各種製品は通常の低分子の抗菌剤の有する欠陥である蒸発、揮発や昇華などによる抗菌剤の揮散による機能の低下や相溶性の限界による添加量の制限、表面へのブルーミング現象による有効添加量の減少や他の物品への汚染や印刷性の阻害、無機系抗菌剤の樹脂(重合体媒体)への添加による透明性の低下などが改良される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性基を有する2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン誘導体と、該反応性基と反応する基を有する重合体とを反応させて得られた、重合体が結合した2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン誘導体からなることを特徴とする重合体結合抗菌剤。
【請求項2】
2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン誘導体が、カルボン酸アルキルエステル基、カルボン酸ハロゲナイド基、水酸基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の基を有する4−ヒドロキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチル−ピペリジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン、1−オクチルオキシ−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジンおよびそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種であり、上記重合体が、水酸基、アミノ基、カルボン酸アルキルエステル基およびカルボン酸ハロゲナイド基から選ばれる少なくとも1種の基を有する重合体である請求項1に記載の重合体結合抗菌剤。
【請求項3】
抗菌剤残基の含有量が5〜95質量%である請求項1または2に記載の重合体結合抗菌剤を分散媒体に分散させてなることを特徴とする抗菌性組成物。
【請求項4】
分散媒体が、樹脂、樹脂の溶液或は水系分散体である請求項3に記載の抗菌性組成物。
【請求項5】
樹脂が、熱可塑性重合体または熱硬化性樹脂の少なくとも1種である請求項4に記載の抗菌性組成物。
【請求項6】
請求項1または2に記載の重合体結合抗菌剤を、混練機、混合機または分散機により、分散媒体に分散させることを特徴とする抗菌性組成物の製造方法。
【請求項7】
分散媒体が樹脂であり、請求項6に記載の製造方法で得られた、重合体結合抗菌剤を高濃度で含有することを特徴とする抗菌性組成物。
【請求項8】
分散媒体が樹脂である請求項3に記載の抗菌性組成物を成形加工することを特徴とする抗菌性樹脂加工物品の製造方法。
【請求項9】
容器、フィルム、シート、パイプ、ホース、チューブ、ビーズ、繊維、自動車部品、電気機器部品、文具、家具または日用品である請求項8に記載の方法で得られたことを特徴とする抗菌性樹脂加工物品。
【請求項10】
請求項1または2に記載の重合体結合抗菌剤を、樹脂の溶液或は水系分散体に分散させてなる抗菌性組成物を、物品に塗布、含浸または印刷で付与することを特徴とする抗菌性加工物品の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の製造方法で得られたことを特徴とする抗菌性組成物を含有する抗菌性加工物品。

【公開番号】特開2008−214396(P2008−214396A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50219(P2007−50219)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】