説明

重合性シリコーンの製造方法

式P−Y−Sp−Si(R2n(OSiR13(3-n) (I)の高純度の重合性シリコーンの製造方法であって、(a)式(R13SiOSi(R13 (II)のジシロキサン(1)を、酢酸(2)および酸性触媒(3)の存在下に装入し、(b)0〜60℃の温度で、式P−Y−Sp−Si(R2n(OR3(3-n) (III)の置換されたアルコキシシラン(4)を計量供給し、(c)アルコキシシラン(4)1モルに対して、0.2〜1.0モルの塩化アセチルを添加し、(d)相分離の後で、酸性相(下相)を分離し、(e)アルコキシシラン(4)1モルに対して、0.02〜1.0モルのヘキサメチルジシラザン(6)を添加し、(f)生じた塩を濾別した後で、易揮発性成分を除去し、かつ生成物を蒸留し、かつ場合により(g)引き続き生成物を濾過する[上記の式中で、Spは、単結合を表すか、または1〜8個の炭素原子を有する二価の炭化水素基を表し、Yは、単結合または−O−を表し、Pは、アクリルオキシ基、メタクリルオキシ基、ビニル基またはアリル基を表し、nは、0、1または2であり、R1およびR2はそれぞれは、1〜18個の炭素原子を有し、置換されていてもよい一価の炭化水素基を表し、かつR3は、1〜18個の炭素原子を有し、アルコキシ基により置換されていてもよいアルキル基を表す]高純度の重合性シリコーンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロキシ置換されたシラン構造を有する重合性シリコーンの製造に関する。本発明は特に、ジシロキサンによりアルコキシシランを置換することによって、重合性の基を有し、トリオルガノシロキシ基により置換された高純度のシランを製造することに関する。
【0002】
重合性シリコーン、たとえば3−アクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3−メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3−メタクリルオキシプロピルトリス(ジメチルフェニルシロキシ)シラン、1−メタクリルオキシメチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等は、電子材料を製造するための原料もしくはモノマーとして、コンタクトレンズを製造するために、機能性および工業用被覆、ポリマーマイクロ構造または化粧品の適用のための組成物中の原料として有用である。
【0003】
電子材料を製造するための原料もしくはモノマーとして、コンタクトレンズおよび光学部材を製造するために、機能性および工業用被覆のため、ポリマーマイクロ構造または化粧品の適用のための組成物中の原料としての重合性シリコーンの適用は、副生成物、たとえばモノヒドロキシシラン、モノオルガノキシシランおよび二官能性ジシロキサンならびに無機および金属不純物の含有率が低減された、高純度の材料を提供することが要求されている。
【0004】
JP11−217389には、アルコキシ置換もしくはアリールオキシ置換されたシリコーン(たとえば3−メタクリルオキシプロピル−トリメトキシシラン)を、カルボン酸(たとえば酢酸)および酸性触媒(トリフルオロメタンスルホン酸)の存在下にヘキサメチルジシロキサンと反応させ、その際、シロキシ置換された生成物が得られる方法が記載されている。この方法は好ましくは、ヘキサメチルジシロキサン、カルボン酸および触媒を装入し、次いでアルコキシ成分またはアリールオキシ成分を添加し、かつ反応を約20〜70℃で実施するように構成されている。少量のヘキサメチルジシラザン(アルコキシシラン1モルあたり0.0025モル)の添加によって反応が停止し、中和され、その際、純度の低い(<90面積%)生成物が得られる。
【0005】
モノオルガノキシ副生成物であるG−Si(OMe)(OSiMe32に対する生成物であるG−Si(OSiMe33[G=メタクリルオキシプロピル]の比は、約8.3(つまり、モノオルガノキシ副生成物約10.7%)であり、二官能性副生成物であるG−[Me3SiO]2Si−O−Si[OSiMe32−Gに対する生成物の比は、54.9(つまり二官能性ジシロキサン約1.8%)である。相応して温度を調整することによって、シラノール基同士が二官能性ジシロキサンへと縮合することを抑制する方法が記載されているが、しかしモノヒドロキシシラン(シラノール)の含有率はどのようにして制限することができるかについては記載されていない。不純物の含有率が高いことは上記の適用に関して問題である。
【0006】
JP2000−186095から、ヘキサメチルジシロキサン、カルボン酸(酢酸)および強酸(濃硫酸)を、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランと反応させることが公知であり、この場合、後者を有利には−10℃〜0℃の温度で、30分以内に添加する。後反応、水による洗浄および蒸留の後で、3−メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシシラン)が90.2〜97.8%の純度で得られる。生成物はモノヒドロキシ副生成物および二量体副生成物(二官能性ジシロキサン)によって汚染されている。この方法の本質的な欠点は、前記の不純物(特に二官能性ジシロキサン)の含有率が高いこととならんで、本来の反応の後に異なった温度で反応混合物が、24時間の期間にわたって長い間、ひいては不経済的に老化することを甘受しなくてはならないことである。この老化プロセスは方法の実質的な構成部分である。というのも、反応の間、モノヒドロキシ副生成物が形成され、その含有率は老化プロセスの間に、シラノールが脱水を経由して二官能性ジシロキサンへと変換することによって低減されるからである。この関係で、10%までの二官能性ジシロキサンの含有率が得られ、このことは、一連の適用にとって認容できるものではない。
【0007】
EP1510520Aは、モノオルガノキシシランもしくはモノヒドロキシシラン不純物の含有率が低減された、高純度の分枝鎖状シロキサンを、2段階の方法で、不純物を含有する原料生成物(完全な、もしくは部分的な後処理もしくは単離の後で)を、ジシロキサンおよび酸と後反応させることにより高い収率で製造することを記載している。しかし前記の方法は、一方では水性の後処理に基づいて酸性の環境中でさらにモノヒドロキシシランもしくはモノオルガノキシ不純物が形成されうるという欠点を有している。後処理によって、モノオルガノキシシランもしくはモノヒドロキシシラン不純物の含有率は確かに低減することができる。他方、方法の実質的な欠点は、後反応の前に、粗生成物を完全に、または少なくとも部分的に後処理しなくてはならず、従って洗浄、相分離を(および場合により蒸留も)2回実施しなくてはならないことである。
【0008】
EP1472264Aは、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアシルオキシ基をトリアルキルシロキシ単位によって置換することによって、高純度のシリコーン化合物を製造する方法を記載している。反応はカルボン酸(酢酸)、酸性触媒(CF3SO3H)、ジシロキサン(Me3SiOSiMe3)の存在下にアルコキシシランまたはアリールオキシシランの添加によって開始される。その後、無水カルボン酸(たとえば無水酢酸)が添加される。反応系はほぼ単相のままであり、このことによって中和のために使用される塩基の量が増大する。
【0009】
たとえば3−メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシシラン)は、98.7%の純度で高収率で得られ、その際、不純物として、ジシロキサン(二量体)1.3%ならびにモノオルガノキシシラン副生成物CH2=CH(CH3)COO−(CH23−Si(OMe)(OSiMe330.5%未満が得られる。その他の生成物に関しては、明らかにより低い純度(93%まで)およびより高い二量体化合物の含有率(4.4%まで)が測定された。
【0010】
しかし、モノヒドロキシシラン副生成物の含有率をどのようにして生成物の単離まで低い値に維持することができるか、およびどのようにしてこの形成を後処理/中和の過程で防止することができるかについては記載されていない。
【0011】
無水カルボン酸の高い必要量とならんで、前記の方法の実質的な欠点はさらに、二官能性不純物(ジシロキサン)の含有率が1%を越えており、蒸留を断念する場合には、さらに無機不純物および有機ポリマー不純物が含有されることである。蒸留の場合には著しく低い収率が見込まれる。特に電子/光学用の材料/部材を製造するため、コンタクトレンズを製造するため、ならびに機能性被覆における適用のためには、明らかにより低い二官能性不純物含有率が要求される。この適用では、特に重合性シリコーン中の二官能性シリコーンの含有率が妨げとなっており、というのも、これは架橋密度が上昇することによって機械的特性、ひいては光学的特性、ないしは電子材料または機能性被覆の分野における適用のための所望の特性の変性が生じる。モノヒドロキシ不純物もしくはモノメトキシ不純物の残留含有率は、この適用では、脱離反応もしくは縮合反応によって材料、部材または被覆の機能的な特性の後からの変化につながりうる。無機塩またはポリマー成分の残留含有率は、不所望の光散乱および光学部材の不十分な性能につながりうる。電子材料では、この場合、絶縁作用/導電性および絶縁破壊電界強度の著しい変化が予測される。機能性被覆の表面特性は、前記の不純物によって後から否定的な影響を受けうる。従って、二官能性シリコーン、なお縮合反応性のシリコーンならびに無機不純物の含有率が低い、高純度の形の重合性シリコーンを提供することが重要である。
【0012】
上記の欠点が回避され、かつ少なくとも98.5%の含有率を有する高純度の重合性シリコーンであって、副生成物として二官能性ジシロキサン0.4%未満、ならびにモノヒドロキシ構造もしくはモノアルコキシ構造をそのつど0.4%未満の含有率を有する、高純度の重合性シリコーンを製造する方法を提供するという課題が生じた。前記課題は、本発明により解決される。
【0013】
本発明の対象は、式
P−Y−Sp−Si(R2n(OSiR13(3-n) (I)
の高純度の重合性シリコーンの製造方法であって、
(a)式
(R13SiOSi(R13 (II)
のジシロキサン(1)を、酢酸(2)および酸性触媒(3)の存在下に装入し、
(b)0〜60℃の温度で、式
P−Y−Sp−Si(R2n(OR3(3-n) (III)
の置換されたアルコキシシラン(4)を計量供給し、引き続き0.5〜3時間以内に0〜60℃で後反応させ、
(c)アルコキシシラン(4)1モルに対して、0.2〜1.0モルの塩化アセチル(5)を添加し、
(d)相分離の後で、酸性相(下相)を分離し、
(e)アルコキシシラン(4)1モルに対して、0.02〜1.0モルのヘキサメチルジシラザン(6)を添加し、
(f)生じた塩を濾別した後で、易揮発性成分を除去し、かつ生成物を蒸留し、
かつ場合により
(g)引き続き生成物を濾過する
[上記の式中で、
1は、同じであるか、または異なっており、かつ水素原子を表すか、または1〜18個の炭素原子を有し、置換されていてもよい一価の炭化水素基を表し、
2は、同じであるか、または異なっており、かつ水素原子を表すか、または1〜18個の炭素原子を有し、置換されていてもよい一価の炭化水素基を表し、
3は、同じであるか、または異なっており、かつ1〜18個の炭素原子を有し、アルコキシ基により置換されていてもよいアルキル基を表し、
Spは、単結合を表すか、または1〜8個の炭素原子を有する二価の炭化水素基を表し、
Yは、単結合または−O−を表し、
Pは、アクリルオキシ基、メタクリルオキシ基、ビニル基またはアリル基を表し、
nは、0、1または2、有利には0である]
ことによる、高純度の重合性シリコーンの製造方法である。
【0014】
本発明の対象はさらに、式
P−Y−Sp−Si(R2n(OSiR13(3-n) (I)
の高純度の重合性シリコーンであって、該シリコーンは少なくとも98.5%、好ましくは少なくとも99.0%の純度を有し、式
[P−Y−Sp−Si(R2n(OSiR13(2-n)2
の二官能性ジシロキサン0.4%未満、好ましくは0.2%未満の含有率を有し、式
P−Y−Sp−Si(R2n(OH)(OSiR13(2-n)
のモノヒドロキシシラン0.4%未満、好ましくは0.3%未満の含有率を有し、かつ式
P−Y−Sp−Si(R2n(OR3)(OSiR13(2-n)
のモノアルコキシシラン0.4%未満、好ましくは0.3%未満の含有率を有する[上記式中で、R1、R2、R3、Sp、Y、Pおよびnは、上記の意味を有する]高純度の重合性シリコーンである。
【0015】
1の例は、1〜18個の炭素原子、好ましくは1〜15個の炭素原子、有利には1〜9個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基である。R1の例は、アルキル基、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、およびn−オクチル基、シクロアルキル基、たとえばシクロペンチル基およびシクロヘキシル基、アルケニル基およびアルキニル基、たとえばビニル基、プロペニル基、アリル基およびエチニル基、およびアリール基、たとえばフェニル基である。
【0016】
2の例は、1〜18個の炭素原子、好ましくは1〜9個の炭素原子、有利には1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基である。R2の例は、アルキル基、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基およびn−オクチル基、シクロアルキル基、たとえばシクロペンチル基およびシクロヘキシル基、アルケニル基およびアルキニル基、たとえばビニル基、プロペニル基、アリル基およびエチニル基、およびアリール基、たとえばフェニル基である。
【0017】
基R3の例は、1〜3個の炭素原子を有し、アルコキシ基により置換されていてもよいアルキル基である。R3の例は、メチル基、エチル基およびプロピル基である。
【0018】
Spの例は、アルキレン基またはシクロアルキレン基、たとえば−CH2−、−CH2−CH2−および−CH2−CH2−CH2−基およびC4〜C8−アルキレン基およびシクロヘキシレン基である。
【0019】
Yは好ましくは−O−である。
【0020】
Pは好ましくはアクリルオキシ基およびメタクリルオキシ基である。
【0021】
式(R13SiOSi(R13のジシロキサンの例は、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、1,3−ジ−t−ブチル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−ジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンおよび1,3−ジフェニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンである。
【0022】
アルコキシシランの例は、
1−アクリルオキシメチルトリメトキシシラン、
2−アクリルオキシエチルトリメトキシシラン、
3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、
1−メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、
1−メタクリルオキシメチルジメトキシメチルシラン、
2−メタクリルオキシエチルトリメトキシシラン、
3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、
1−アクリルオキシメチルトリエトキシシラン、
2−アクリルオキシエチルトリエトキシシラン、
3−アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、
1−メタクリルオキシメチルトリエトキシシラン、
2−メタクリルオキシエチルトリエトキシシラン、
3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、
4−メタクリルオキシブチルトリメトキシシラン、
6−メタクリルオキシヘキシルトリメトキシシラン、
8−メタクリルオキシオクチルトリメトキシシラン、
メタクリルオキシシクロヘキシルトリメトキシシラン、
ビニルトリメトキシシラン
である。
【0023】
使用されるアルコキシシランは、すでに重合性の基により置換されている。重合性の基の重合を回避するために、すでに少量の安定剤が添加されているアルコキシシランを使用することも可能である。
【0024】
あるいは反応混合物に安定剤を添加することができる(使用されるアルコキシシランに対して0〜5000ppm、好ましくは0〜3000ppm)。
【0025】
安定剤の例は、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、2,6−ジ−t−ブチル−4−(ジメチルアミノ−メチル)フェノールおよびフェノチアジンである。
【0026】
特に有利なアルコキシシランは以下のものである:
3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、
1−メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、
1−メタクリルオキシメチルジメトキシメチルシラン、
ビニルトリメトキシシラン。
【0027】

P−Y−Sp−Si(R2n(OSiR13(3-n)
の重合性シリコーンの例は以下のものである:
1−アクリルオキシメチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
2−アクリルオキシエチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
3−アクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
1−メタクリルオキシメチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
2−メタクリルオキシエチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
3−メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
4−メタクリルオキシブチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
6−メタクリルオキシヘキシルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
8−メタクリルオキシオクチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
メタクリルオキシシクロヘキシルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
1−アクリルオキシメチルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、
2−アクリルオキシエチルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、
3−アクリルオキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、
1−メタクリルオキシメチルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、
2−メタクリルオキシエチルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、
3−メタクリルオキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、
1−メタクリルオキシメチルトリス(ジメチルビニルシロキシ)シラン、
3−メタクリルオキシプロピルトリス(ジメチルビニルシロキシ)シランおよび
ビニルトリス(トリメトキシシロキシ)シラン。
【0028】
重合性化合物
P−Y−Sp−Si(R2n(OSiR13(3-n)
の有利な例は、
3−アクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
3−メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
3−メタクリルオキシプロピルトリス(ジメチルフェニルシロキシ)シラン、
1−メタクリルオキシメチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
1−メタクリルオキシメチルビス(トリメチルシロキシ)メチルシランおよび
ビニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン
である。
【0029】
モノヒドロキシシラン不純物
P−Y−Sp−Si(R2n(OH)(OSiR13(2-n)
の例は、
3−アクリルオキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)シラノール、
3−メタクリルオキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)シラノール、
3−メタクリルオキシプロピルビス(ジメチルフェニルシロキシ)シラノール、
1−メタクリルオキシメチルビス(トリメチルシロキシ)シラノール、
1−メタクリルオキシメチル(トリメチルシロキシ)メチルシラノールおよび
ビニルビス(トリメチルシロキシ)シラノール
である。
【0030】
モノオルガノキシシラン不純物
P−Y−Sp−Si(R2n(OR3)(OSiR13(2-n)
の例は、
3−アクリルオキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メトキシシラン、
3−メタクリルオキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メトキシシラン、
3−メタクリルオキシプロピルビス(ジメチルフェニルシロキシ)メトキシシラン、
1−メタクリルオキシメチルビス(トリメチルシロキシ)メトキシシラン、
1−メタクリルオキシメチル(トリメチルシロキシ)メチルメトキシシランおよび
ビニルビス(トリメチルシロキシ)メトキシシラン
である。
【0031】

[P−Y−Sp−Si(R2n(OSiR13(2-n)2
の二官能性ジシロキサンを有する不純物の例は、
1,3−ビス(3−アクリルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラ(トリメチルシロキシ)−ジシロキサン、
1,3−ビス(3−メタクリルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラ(トリメチルシロキシ)−ジシロキサン、
1,3−ビス(1−メタクリルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラ(トリメチルシロキシ)−ジシロキサン、
1,3−ビス(1−メタクリルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラ(ジメチルフェニルシロキシ)−ジシロキサン、
1,3−ビス(3−メタクリルオキシプロピル)−1,3−ビス(トリメチルシロキシ)−1,3−ジメチルジシロキサンおよび
1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラ(トリメチルシロキシ)ジシロキサン
である。
【0032】
本発明による方法を以下に詳細に記載する:
(a)第一工程では、式(R13SiOSi(R13のジシロキサン(1)を酢酸(2)および酸性触媒(3)の存在下に装入する。この場合、ジシロキサン(1)とアルコキシシラン(4)とのモル量比は、アルコキシシラン(4)のアルコキシ基1モルあたり、有利にはジシロキサン(1)0.5〜1.0モル、好ましくは0.6〜0.8モルである。
【0033】
この場合、酢酸(2)とアルコキシシラン(4)とのモル量比はアルコキシシラン(4)1モルあたり、酢酸好ましくは1.5〜6モル、有利には2〜4モルである。
【0034】
酸性触媒により、後から添加されるアルコキシシラン(4)との反応が可能になる。酸性触媒として、アルコキシシランの置換基とさらなる副反応を開始しない限りで、たとえば濃塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸またはトリフルオロメタンスルホン酸、あるいはまたルイス酸、たとえばAlCl3またはTiCl3を使用することができる。一般に、アルコキシシランの量に対して酸性触媒(3)を、0.001〜0.01モル使用する。混合物は好ましくは撹拌下で0℃〜60℃、有利には20〜60℃の温度に加熱する。これより温度が高いと、アルコキシシリル基が縮合することにより副反応が促進され、二官能性のジシロキサンが形成される。
【0035】
(b)方法工程(b)では、置換されたアルコキシシラン(4)を、好ましくは0.5〜3時間、有利には0.5〜2時間、特に好ましくは45分〜75分の時間窓以内に計量供給し、その際、温度は0℃〜60℃、好ましくは20〜60℃に維持する。できる限り完全な前反応を可能にするために、この温度でさらに30分〜3時間、好ましくは45分〜2時間、後攪拌する。
【0036】
(c)前反応の後に存在する、モノオルガノキシシラン副生成物の含有率を排除するために、0℃〜60℃、好ましくは20℃〜60℃で、塩化アセチル(5)を、好ましくは5分〜3時間、有利には10分〜2時間の時間で計量供給する。この場合、アルコキシシラン(4)に対する塩化アセチル(5)のモル比は、そのつどアルコキシシラン(4)1モルに対して、0.2〜1.0モル、好ましくは0.3〜0.8モルである。
【0037】
塩化アセチルの機能は、反応の過程で生じる水とメタノールを結合して、平衡状態から除去することである。このようにして最終的になお存在するモノオルガノシロキサンの含有率を最小化する。
【0038】
(d)ところで方法の本質的な利点はさらに、塩化アセチルの供給を行い、かつ短い後反応(好ましくは5分〜1時間、有利には10分〜30分)の後で、反応混合物が相分離することである。アルコール、たとえばMeOH、水、酢酸、酸性触媒を含有している酸性相を分離することができる。これは一方では、アルコール、たとえばMeOH、および水を可能なその後の副反応に関して分離するという利点を、および他方では中和のために使用されるヘキサメチルジシラザンの量を最小化するという利点をもたらす。
【0039】
(e)最後に、なお存在するモノヒドロキシシラン副生成物含有率を最小化するために、アルコキシシラン(4)1モルあたり、0.02〜1.0モル、好ましくは0.1〜0.8モル、有利には0.2〜0.6モルのヘキサメチルジシラザン(6)を添加し、かつ引き続き後攪拌する。供給および副反応は、好ましくは1時間〜5時間の全時間内に好ましくは10℃〜40℃で行う。
【0040】
蒸留前の反応混合物の中和は、後の蒸留の間に、酸性条件下での平衡状態の推移による副生成物、特に二官能性ジシロキサンの新たな形成を回避するために重要である。水性中和剤の使用を断念することにより、ヘキサメチルジシラザンを使用する際にはさらに、副生成物としてのモノヒドロキシシランの後の形成が回避される。
【0041】
(f)生じる塩はたとえばヌッチェ式圧力フィルターもしくは遠心分離とその後方に接続された精密濾過により濾別し、その際、有利にはメッシュ幅0.2〜2μm、好ましくは0.2〜0.5μmのメッシュ幅を有する篩またはフィルターを使用する。蒸留の間もしくは蒸留後に生成物を安定化するために、蒸留工程の前または後の方法で安定剤を添加することが可能である。
【0042】
真空で揮発性成分を分離し、かつ後から生成物を蒸留する。蒸留のために、蒸留塔を用いるか、または蒸留塔を用いない従来の蒸留法以外に、熱保護的な方法、たとえば薄膜蒸発、フラッシュ蒸発およびこれらに匹敵する方法を使用することもできる。
【0043】
蒸留の過程でさらに無機不純物、たとえば塩の付加的な分離を行う。重合性シリコーンの加工特性に関しても材料特性に関しても重要なことは、高い純度以外にポリマー割合を排除することでもある。重合性シリコーンを合成している間の該シリコーン中のポリマーの形成を回避するために、反応または後処理の間に安定剤を添加することができる。アクリル基、メタクリル基、エチニル基またはビニル基の潜在的なラジカル重合に対する酸素の防止作用に基づいて、個々の方法工程を酸素分圧(たとえばリーン空気)下で実施することも可能である。生成物を蒸留することによってさらに生成物中のポリマー不純物の存在が回避される。重合性シリコーンを安定化するために、貯蔵に関して該シリコーンを単離した後にも安定剤を添加することができる。添加される安定剤の含有率はこの場合、好ましくは100〜5000ppm(アルコキシシラン(4)に対して)、有利には200〜2000ppmである。安定剤の例は、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、2,6−ジ−t−ブチル−4−(ジメチルアミノメチル)−フェノールおよびフェノチアジンである。
【0044】
(g)場合によりなお存在する塩、金属、粒子を分離するために、蒸留した重合性シリコーンを場合により再度濾過する。このためにたとえば0.1〜1μm、好ましくは0.2〜0.5μmの孔径を有するキャンドルフィルターを使用する。
【0045】
本発明による方法により製造された重合性シリコーンは、少なくとも98.5%の高い純度およびそのつど0.4%未満の副生成物モノヒドロキシシラン、モノオルガノキシシランおよび二官能性ジシロキサンの低い含有率を有する。
【0046】
さらに本発明による方法により製造された重合性シリコーンは有利には200ppm、好ましくは150ppm未満の塩含有率を有する。
【0047】
本発明による重合性シリコーンは、電子材料を製造するための原料もしくはモノマーとして、コンタクトレンズおよび光学部材を製造するために、機能性および工業用被覆のための組成物中の原料として、ポリマーマイクロ構造または化粧品の適用のために使用される。
【0048】
例1:3−メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン
三口フラスコ中に、ヘキサメチルジシロキサン80.8g(0.499モル)、酢酸39.9g(0.67モル)ならびに酢酸中のトリフルオロメタンスルホン酸の10%溶液(0.0003モル)0.5gを装入し、かつ撹拌下で45℃に加熱する。引き続き1時間以内に(45℃で)3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(WACKER GENIOSIL(登録商標)GF 31)55.0g(0.22モル)を供給し、かつ45℃で1時間、後攪拌する。粗生成物をガスクロマトグラフィー(GC)により分析する。反応混合物の易揮発性成分以外に、以下のGC含有率が判明した:生成物(44.3面積%)、モノオルガノキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OMe(1.1面積%)、モノヒドロキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OH(0.6面積%)ならびに二官能性ジシロキサン(二量体)[CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32]O 0.5面積%。
【0049】
反応混合物に45℃で塩化アセチル13.1g(0.167モル)を添加し(10分以内)、次いで10分間、後攪拌する。室温で酸性相を有機相から分離し、次いで反応混合物を改めてガスクロマトグラフィーにより分析する。次の成分が判明した:生成物(50.0面積%)、モノオルガノキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OMe(0.1面積%)、モノヒドロキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OH(0.5面積%)ならびに二官能性ジシロキサン(二量体)[CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32]O 0.8面積%。
【0050】
残留したモノヒドロキシシラン不純物の含有率を排除/低減するために、ヘキサメチルジシラザン18g(0.12モル)を添加し、その際、反応混合物を同時に中和する。形成された塩を濾別した後で、反応混合物を改めてGCにより分析する。以下の成分が判明した:生成物(44.6面積%)、モノオルガノキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OMe(0.1面積%)、モノヒドロキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OH(0.0面積%)ならびに二官能性ジシロキサン(二量体)[CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32]O 0.8面積%。
【0051】
揮発性成分を留去した後で、生成物を真空下に蒸留し、キャンドルフィルターにより濾別する。所望の生成物が80%の収率で得られ、これは99.6面積%の純度を有している(モノオルガノキシシランを0.1面積%含有)。前記のモノヒドロキシ不純物ならびにジシロキサン不純物は検出することができない。
【0052】
比較試験1:
方法を例1と同様に実施するが、ただしメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(WACKER GENIOSIL(登録商標)GF 31)を添加し、かつ相応して後攪拌した後に、塩化アセチルに代えて無水酢酸17.0g(0.167モル)を添加し、かつヘキサメチルジシラザンによる反応および中和に代えてCaCO3により中和する。
【0053】
メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(WACKER GENIOSIL(登録商標)GF 31)を添加し、かつ相応して後攪拌した後に、まず粗生成物をガスクロマトグラフィー(GC)により分析する。反応混合物の易揮発性成分以外に以下のGC含有率が判明した:生成物(45.8面積%)、モノオルガノキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OMe(1.2面積%)、モノヒドロキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OH(0.6面積%)ならびに二官能性ジシロキサン(二量体)[CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32]O 0.5面積%。
【0054】
しかし無水酢酸(17.0g、0.167モル)を添加した後に、本発明による例1とは異なって、酸性の下相を分離することができない。反応混合物を改めてガスクロマトグラフィーにより分析する。以下の成分が判明した(易揮発性成分以外):生成物(48.6面積%)、モノオルガノキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OMe(0.6面積%)、モノヒドロキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OH(0.4面積%)ならびに二官能性ジシロキサン(二量体)[CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32]O 0.8面積%。
【0055】
反応をCaCO3 60gの添加によって停止もしくは中和し、その際、固体を導入したことに基づいて反応混合物の粘度が著しく上昇する。ガスクロマトグラフィーによる分析の際に、易揮発性成分以外に以下の成分が判明した:生成物(46.2面積%)、モノオルガノキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OMe(0.7面積%)、モノヒドロキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OH(0.5面積%)ならびに二官能性ジシロキサン(二量体)[CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32]O 0.8面積%。
【0056】
塩を濾別し、かつ揮発性成分を留去した後で、反応混合物をGCにより分析する。以下の成分が判明した:生成物96.4面積%、モノオルガノキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OMe(1.2面積%)、モノヒドロキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OH(0.8面積%)ならびに二官能性ジシロキサン(二量体)[CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32]O 1.2面積%。
【0057】
真空蒸留および精密濾過の後で、生成物が62%の収率で得られ、該生成物は以下の純度を有していた:生成物(97.4面積%)、モノオルガノキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OMe(1.1面積%)、モノヒドロキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OH(0.9面積%)ならびに二官能性ジシロキサン(二量体)[CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32]O 0.0面積%。
【0058】
比較試験2:
方法を例1と同様に実施するが、ただしヘキサメチルジシラザンによる反応および中和に代えてCaCO3により中和する。
【0059】
メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(WACKER GENIOSIL(登録商標)GF 31)を添加し、かつ相応して後攪拌した後に、まず粗生成物をガスクロマトグラフィー(GC)により分析する。反応混合物の易揮発性成分以外に以下のGC含有率が判明した:生成物(46.3面積%)、モノオルガノキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OMe(1.3面積%)、モノヒドロキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OH(0.7面積%)ならびに二官能性ジシロキサン(二量体)[CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32]O 0.4面積%。
【0060】
塩化アセチル13.1g(0.167モル)を相応して添加し、かつ後撹拌(10分間)した後で、生じた酸性の下相を分離し、かつ反応混合物をガスクロマトグラフィーにより分析する:生成物(47.3面積%)、モノオルガノキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OMe(0.1面積%)、モノヒドロキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OH(0.5面積%)ならびに二官能性ジシロキサン(二量体)[CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32]O 0.9面積%。
【0061】
反応をCaCO3 60gの添加によって停止もしくは中和する。ガスクロマトグラフィーによる分析の際に、易揮発性成分以外に以下の成分が判明した:生成物(47.7面積%)、モノオルガノキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OMe(0.1面積%)、モノヒドロキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OH(0.6面積%)ならびに二官能性ジシロキサン(二量体)[CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32]O 0.7面積%。
【0062】
塩を分離し、かつ揮発性成分を留去した後で、粗生成物は以下の純度を有していた:生成物(97.2面積%)、モノオルガノキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OMe(0.2面積%)、モノヒドロキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OH(0.9面積%)ならびに二官能性ジシロキサン(二量体)[CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32]O 1.3面積%。
【0063】
真空蒸留および精密濾過の後で、生成物が60%の収率で得られる。該生成物は以下の純度を有していた(GCによる面積%):生成物(98.1面積%)、モノオルガノキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OMe(0.2面積%)、モノヒドロキシ不純物CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32OH(1.1面積%)。
【0064】
【表1】

【0065】
例2:1−メタクリルオキシメチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン
三口フラスコ中に、ヘキサメチルジシロキサン80.8g(0.499モル)、酢酸39.9g(0.67モル)ならびに酢酸中のトリフルオロメタンスルホン酸の10%溶液0.5g(0.0003モル)を装入し、かつ撹拌下で45℃に加熱する。引き続き1時間以内に(45℃で)1−メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン(WACKER GENIOSIL(登録商標)XL 33)48.8g(0.22モル)を供給し、かつ45℃で1時間、後攪拌する。粗生成物をガスクロマトグラフィー(GC)により分析する。反応混合物の易揮発性成分以外に、以下のGC含有率が判明した:生成物(44.7面積%)、モノオルガノキシ不純物(CH2=CH(CH3)−COO−CH2−Si(OSiMe32OMe 1.1面積%)、モノヒドロキシ不純物(CH2=CH(CH3)−COO−CH2−Si(OSiMe32OH 0.7面積%)ならびに二官能性ジシロキサン(二量体)[CH2=CH(CH3)−COO−(CH23−Si(OSiMe32]O 0.6面積%。反応混合物に40℃で塩化アセチル6.1g(0.078モル)を添加し、引き続き20分間、後攪拌する。室温で酸性の下相を有機相から分離し、次いで反応混合物を改めてガスクロマトグラフィーにより分析する。次の成分が判明した:生成物(49.3面積%)、モノオルガノキシ不純物(CH2=CH(CH3)−COO−CH2−Si(OSiMe32OMe 0.2面積%)、モノヒドロキシ不純物(CH2=CH(CH3)−COO−CH2−Si(OSiMe32OH 0.7面積%)ならびに二官能性ジシロキサン(二量体)[CH2=CH(CH3)−COO−CH2−Si(OSiMe32]O 0.9面積%。
【0066】
残留したモノヒドロキシシラン不純物の含有率を排除/低減するために、ヘキサメチルジシラザン17.9g(0.11モル)を添加し、その際、反応混合物を同時に中和する。形成された塩を濾別した後で、反応混合物を改めてGCにより分析する。以下の成分が判明した:生成物48.7面積%、モノオルガノキシ不純物(CH2=CH(CH3)−COO−CH2−Si(OSiMe32OMe 0.2面積%)、モノヒドロキシ不純物(CH2=CH(CH3)−COO−CH2−Si(OSiMe32OH 0.0面積%)ならびに二官能性ジシロキサン(二量体)[CH2=CH(CH3)−COO−CH2−Si(OSiMe32]O 0.9面積%。
【0067】
揮発性成分を留去した後で、生成物を真空下に蒸留し、キャンドルフィルター(孔径0.2μm)により濾別する。所望の生成物が78%の収率で得られ、これは99.3面積%の純度を有している(依然としてモノオルガノキシシランを0.2面積%含有)。前記のモノヒドロキシ不純物は検出することができない。
【0068】
例3:1−メタクリルオキシメチルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン
方法は例2と同様である。1−メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン(WACKER GENIOSIL(登録商標)XL 33)48.8g(0.22モル)に代えて、この例では1−メタクリルオキシメチルジメトキシメチルシラン(WACKER GENIOSIL(登録商標)XL 32)44.9g(0.22モル)ならびにヘキサメチルジシロキサンのみ56.7g(0.35モル)を使用する。所望の生成物は81%の収率で得られる。GC純度:1−メタクリルオキシメチルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン99.4%(モノオルガノキシシラン0.1面積%)。モノヒドロキシ不純物は検出されない。
【0069】
例4:ビニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン
方法は例2と同様である。1−メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン(WACKER GENIOSIL(登録商標)XL 33)48.8g(0.22モル)に代えて、この例ではビニルトリメトキシシラン32.6g(0.22モル)を使用する。所望の生成物は79%の収率で得られる。GC純度:ビニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン99.6%(モノオルガノキシシラン0.2面積%)。モノヒドロキシ不純物はそれ以上検出されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

P−Y−Sp−Si(R2n(OSiR13(3-n) (I)
の高純度の重合性シリコーンの製造方法であって、
(a)式
(R13SiOSi(R13 (II)
のジシロキサン(1)を、酢酸(2)および酸性触媒(3)の存在下に装入し、
(b)0〜60℃の温度で、式
P−Y−Sp−Si(R2n(OR3(3-n) (III)
の置換されたアルコキシシラン(4)を計量供給し、
(c)アルコキシシラン(4)1モルに対して、0.2〜1.0モルの塩化アセチル(5)を添加し、
(d)相分離の後で、酸性相(下相)を分離し、
(e)アルコキシシラン(4)1モルに対して、0.02〜1.0モルのヘキサメチルジシラザン(6)を添加し、
(f)生じた塩を濾別した後で、易揮発性成分を除去し、かつ生成物を蒸留し、
かつ場合により
(g)引き続き生成物を濾過する
[上記の式中で、
1は、同じであるか、または異なっており、かつ水素原子を表すか、または1〜18個の炭素原子を有し、置換されていてもよい一価の炭化水素基を表し、
2は、同じであるか、または異なっており、かつ水素原子を表すか、または1〜18個の炭素原子を有し、置換されていてもよい一価の炭化水素基を表し、
3は、同じであるか、または異なっており、かつ1〜18個の炭素原子を有し、アルコキシ基により置換されていてもよいアルキル基を表し、
Spは、単結合を表すか、または1〜8個の炭素原子を有する二価の炭化水素基を表し、
Yは、単結合または−O−を表し、
Pは、アクリルオキシ基、メタクリルオキシ基、ビニル基またはアリル基を表し、
nは、0、1または2、有利には0である]
高純度の重合性シリコーンの製造方法。
【請求項2】
ジシロキサン(1)とアルコキシシラン(4)とのモル量比が、アルコキシシラン(4)のアルコキシ基1モルあたり、ジシロキサン(1)0.5〜1.0モル、好ましくは0.6〜0.8モルであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
方法工程(b)で、アルコキシシラン(4)を、0.5〜3時間以内に計量供給し、引き続き0〜60℃で後反応させることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
アルコキシシラン(4)として、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ジシロキサン(1)として、ヘキサメチルジシロキサンを使用することを特徴とすることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
蒸留の前または後に、安定剤を使用することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
1もしくは複数の方法工程を、酸素分圧下で実施することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】

P−Y−Sp−Si(R2n(OSiR13(3-n) (I)
の高純度の重合性シリコーンであって、該シリコーンは少なくとも98.5%の純度を有し、式
[P−Y−Sp−Si(R2n(OSiR13(2-n)2
の二官能性ジシロキサン0.4%未満の含有率を有し、式
P−Y−Sp−Si(R2n(OH)(OSiR13(2-n)
のモノヒドロキシシラン0.4%未満の含有率を有し、かつ式
P−Y−Sp−Si(R2n(OR3)(OSiR13(2-n)
のモノオルガノキシシラン0.4%未満の含有率を有する[上記式中で、R1、R2、R3、Sp、Y、Pおよびnは、請求項1においてこれらに関して記載した意味を有する]高純度の重合性シリコーン。

【公表番号】特表2010−516722(P2010−516722A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546705(P2009−546705)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/050109
【国際公開番号】WO2008/090012
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】