説明

重合性化合物、光硬化性組成物、光学素子および光ヘッド装置

【課題】高屈折率性と高耐光性とを両立可能な化合物と、これを含む光硬化性組成物とを提供する。また、青色レーザに対する耐光性の良好な波長選択性回折素子1A等の光学素子と、これを用いた光ヘッド装置とを提供する。
【解決手段】ゲルマニウムと4つの環基が直接結合したGeAで表される重合性化合物。A、A、AおよびAは、それぞれフェニル基であることが好ましい。フェニル基の水素原子の0〜3個がCH=CR−COO−Y−で表される重合性部位に置換されており、かつ、その環基の残りの水素原子の一部または全部の水素原子がメチル基またはフッ素原子に置換されていてもよい。また、A、A、A、Aのいずれかの環基自身がCH=CR−COO−Y−で表される重合性部位に置換されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性化合物、光硬化性組成物、光学素子および光ヘッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学用樹脂材料は、光学フィルム、レンズ、光ディスクや光ピックアップ用の光学素子などの用途に広く用いられている。近年、照度の増大や使用波長の短波長化により、耐光性の改善が求められており、耐光性が不十分な場合、透過率の低下や光学歪みの増加が発生し、長期間安定に部品や素子を使用することができないという問題がある。
【0003】
特に、光ディスクの大容量化のため、DVD(Digital Versatile Disc)方式から、より波長の短い青色半導体レーザー(以下、青色LDともいう)を光源に用いるBD(Blu−ray Disc)方式では、波長が405nm前後と紫外域に近いため、光ピックアップ用光学素子には、耐光性に優れる樹脂材料が求められている。特許文献1には、屈折率と波長分散の異なる材料を組み合わせた波長選択性回折素子が提案されているが、青色LD用途に関する樹脂材料は具体的に記載されていない。屈折率や波長分散を制御する上で、芳香族、例えば、フェニル基は有用である。屈折率を高くする場合、フェニル基の数を増やせばよいが、耐光性が悪くなる傾向がある。また、耐光性を優先するとフェニル基の数は少ない方がよく、屈折率は高くできない問題がある。
【0004】
従来の高屈折率樹脂材料の例としては、フルオレン、テトラフェニルメタン、1,1,2,2−テトラフェニルエタンまたはビフェニルなどの骨格を持つ化合物が挙げられる(特許文献2および3参照。)。これらの化合物の耐光性を向上させるには、分子中の重合基の数を増やしたり、光安定化剤を添加したりすることが考えられる。しかしながら、こうした方法によっても十分な耐光性は得られず、さらなる向上が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−318306号公報
【特許文献2】特開2004−315744号公報
【特許文献3】特開2005−298665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、高屈折率性と高耐光性とは相反する傾向にあり、屈折率の高い化合物では耐光性が悪くなり、耐光性のよい化合物では屈折率が低くなる。したがって、十分に高屈折率性と高耐光性とを両立する化合物は、これまで見出されていなかった。
【0007】
本発明は、こうした点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、高屈折率性と高耐光性とを両立可能な重合性化合物と、これを含む光硬化性組成物とを提供することにある。
また、本発明の別の目的は、その重合性化合物を硬化してなる光学用樹脂材料を用いた光学素子ならびにこれを用いた光ヘッド装置とを提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の形態は、ゲルマニウムと4つの基A〜Aが直接または酸素を介して結合した下記式(1)で表されることを特徴とする重合性化合物に関する。

(式(1)において、A、A、AおよびAは、夫々独立して−(O)−Xであり、
4個のmは、夫々独立して0または1を表し、
4個のXは、少なくとも3個のXは夫々独立して、フェニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルフェニル基およびフェニルシクロヘキシル基のいずれかの環基であり、環基が4個のときにはその環基はA〜Aの水素原子の内、合計して1〜4個が下記式(2)で表される置換基で置換されており、環基が3個のときには、4つ目の基AのXは、メチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基または下記式(2)で表される基のいずれかであり、かつ、その環基はA〜Aの水素原子及びAのXの内、合計して1〜4個が下記式(2)で表される置換基で置換されており、かつ、A〜Aで夫々独立してその環基の残りの水素原子の一部または全部の水素原子がメチル基、メトキシ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基またはトリフルオロメトキシ基に置換されていてもよく、4つ目の基AのXが、メチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基の場合には、その水素原子の一部または全部の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよく、

式(2)において、Rは、水素原子またはメチル基を表し、
Yは、単結合または炭素数1〜12のアルキレン基を表し、そのアルキレン基の一部または全部の水素原子がフッ素原子またはメチル基に置換されていてもよく、そのアルキレン基の一部の炭素原子が、ケイ素原子またはゲルマニウム原子同士が隣接しない範囲内でケイ素原子またはゲルマニウム原子に置換されていてもよく、そのアルキレン基の隣接する炭素−炭素結合の間または環基と結合する末端に酸素原子を有していてもよい。)
【0010】
本発明の第1の態様において、Xは、置換基を有していてもよいフェニル基であることが好ましい。
【0011】
本発明の第1の態様において、Yは、水素原子の一部または全部の水素原子がフッ素原子に置換されてもよい炭素数が2〜12のアルキレン基または炭素数が2〜12のアルキレンオキシ基であることが好ましい。
【0012】
本発明の第1の態様において、上記式(1)で表される化合物における上記式(2)で表される置換基の数の総和が1または2であることが好ましい。
【0013】
本発明の第1の態様において、A〜Aの全てにおいて、その環基が置換基を有していてもよいフェニル基であり、かつmが0であることが好ましい。
【0014】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の重合性化合物を含むことを特徴とする光硬化性組成物に関する。
【0015】
本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様の光硬化性組成物を硬化してなる樹脂材料を用いたことを特徴とする光学素子に関する。
【0016】
本発明の第4の態様は、本発明に第3の態様の光学素子を用いてなることを特徴とする光ヘッド装置に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の形態によれば、組成物に含有されて、それを硬化することにより、高屈折率性と耐光性とを兼ね備えた樹脂を提供することの可能な重合性化合物を提供することができる。
【0018】
本発明の第2の形態によれば、本発明の重合性化合物を用いた光硬化性組成物を作製することができ、この組成物を硬化することにより、高屈折率性と高耐光性とを両立可能な樹脂材料の提供が可能となる。
【0019】
本発明の第3の形態によれば、本発明の光硬化性組成物を硬化してなる樹脂材料を用いた耐光性の良好な光学素子を提供することができる。
本発明の第4の形態によれば、大容量化に適した光ヘッド装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態の波長選択性回折素子の一例を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の実施形態の波長選択性回折素子の別の例を示す模式的な断面図である。
【図3】本発明の実施形態の波長選択性回折素子の他の例を示す模式的な断面図である。
【図4】本発明の実施形態の光ヘッド装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者は、鋭意研究した結果、式(1)に示すゲルマニウム誘導体重合性化合物を用いることにより、高屈折率性と高耐光性を兼ね備えた樹脂材料が得られることを見出した。この材料を用いることにより、耐光性の良好な光学素子および大容量化に適した光ヘッド装置を提供することができる。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。

【0022】
本発明の実施形態の重合性化合物は、式(1)に示すゲルマニウムと4つの基A〜Aが直接または酸素を介して結合した構造を有する重合性の化合物である。
【0023】
式(1)において、A、A、AおよびAは、夫々独立して−(O)−Xである。このとき、4個のmは、夫々独立して0または1を表す。
【0024】
そして、4個のXは、少なくとも3個のXは夫々独立して、フェニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルフェニル基およびフェニルシクロヘキシル基のいずれかの環基であり、環基が4個のときにはその環基はA〜Aの水素原子の内、合計して1〜4個が下記式(2)で表される置換基で置換されており、環基が3個のときには、4つ目の基AのXは、メチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基または下記式(2)で表される基のいずれかであり、かつ、その環基はA〜Aの水素原子及びAのXの内、合計して1〜4個が下記式(2)で表される置換基で置換されており、かつ、A〜Aで夫々独立してその環基の残りの水素原子の一部または全部の水素原子がメチル基、メトキシ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基またはトリフルオロメトキシ基に置換されていてもよく、4つ目の基AのXが、メチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基の場合には、その水素原子の一部または全部の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい。

【0025】
このとき、式(2)において、Rは、水素原子またはメチル基を表す。
【0026】
そして、Yは、単結合または炭素数1〜12のアルキレン基を表し、そのアルキレン基の一部または全部の水素原子がフッ素原子またはメチル基に置換されていてもよく、そのアルキレン基の一部の炭素原子が、ケイ素原子またはゲルマニウム原子同士が隣接しない範囲内でケイ素原子またはゲルマニウム原子に置換されていてもよく、そのアルキレン基の隣接する炭素−炭素結合の間または環基と結合する末端に酸素原子を有していてもよい。また、式(2)の基が複数ある場合には、上記のRおよびYについては同じであってもよいし、それぞれ上記の範囲の中で異なっていてもよい。
【0027】
本発明では、A〜Aは、1個〜4個の式(2)の置換基を有する。A〜Aの各々は、0〜3個の式(2)の置換基を有していてもよく、A〜Aの少なくとも1つには、式(2)の置換基を有することになる。架橋密度が高くなると、耐光性が改善される傾向があるが、フェニル基の密度が低下して屈折率が低下するため、本発明では、この式(2)の置換基の数は1個〜4個とされる。特に、1個〜2個とすることが特に好ましい。
【0028】
本発明の重合性化合物において好ましい形態の1つは、A〜AのXにおける環基が全てフェニル基であることが好ましい。特に、A〜AのXが全て環基であり、その環基がフェニル基である下記式(3)に示す構造であることが好ましい。すなわち、式(1)において、A〜Aは、後に説明するように高屈折率を得やすいことから、フェニル基であることが好ましい。なお、Z〜Zは、式(2)の置換基である。

【0029】
また、本発明では、Aが環基でないケースがある。このため、本発明の重合性化合物において好ましい形態の2つ目は、下記式(4)に示す構造の化合物である。すなわち、式(1)において、A〜Aがフェニル基であり、残りの1個のAのXは、メチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基または式(2)で表される置換基のいずれかである。なお、Z〜Zは、式(2)の置換基である。

【0030】
式(3)及び式(4)中、Z〜Zと置換した残りのフェニル基中の水素原子は一部または全部の水素原子がメチル基、メトキシ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基またはトリフルオロメトキシ基に置換されていてもよい。例えば、紫外波長域での透過率が高くできることから、フッ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基で置換されていてもよく、融点が低くできることから、メチル基またはメトキシ基で置換されていてもよい。これらは、目的に応じて種々選択し得る。但し、置換によって屈折率が低下するので、高い屈折率を得るには水素原子とすることが好ましい。
【0031】
式(2)の置換基は、下記式(5)で表される置換基であることが好ましい。

【0032】
式(5)において、Rは、水素原子またはメチル基を表す。また、Yは、単結合またはC2pで表されるアルキレン基(但し、pは1から12までの整数)、C2qOで表されるアルキレンオキシ基(但し、qは1から12までの整数)、(CHCHO)で表されるエチレンオキシ基を繰り返し単位で含む基(但し、rは1から6までの整数)、(CHCH(CH)O)で表されるプロピレンオキシ基を繰り返し単位で含む基(但し、sは1から4までの整数)を表す。
ここで、これらの基の炭素原子の一部をケイ素原子またはゲルマニウム原子に置換していてもよい。この場合、ケイ素原子またはゲルマニウム原子同士が直接結合していると、不安定になりやすいので、好ましくない。また、高融点を避けるため、ケイ素原子またはゲルマニウム原子に結合する水素原子はメチル基に置換されていることが好ましい。
また、式(2)または式(5)の置換基が、環基に結合する置換基ではなく、Xである場合には、ゲルマニウム原子に結合するAが酸素原子を介して結合することは不安定になりやすいので、mは0であることが好ましい。
【0033】
このとき、屈折率を調整するために、式(2)または式(5)における基中の水素原子の一部または全てをハロゲン原子、フェニル基またはシクロヘキシル基などで置換してもよい。例えば、大きな波長分散を維持しつつ屈折率を下げる場合には水素原子をフッ素原子にすることができる。また、Yがアルキレン基の場合、耐光性をより高くするためにフェニル基と結合する炭素上の水素原子はメチル基に置換されていてもよい。これらのなかでも屈折率が高いこと、耐光性に優れることの両バランスに優れることから水素原子とすることが好ましい。
【0034】
はその分子長が短い場合は、重合性基の転化率が低い場合があることから、単結合以外の上記基が好ましい。また、p、q、r及びsは、大き過ぎると屈折率が小さくなることから、pおよびqは各々1から6、また、rおよびsは各々1から2であることが更に好ましい。
【0035】
式(3)において、a、b、c、dは、それぞれ独立に0〜3の整数であり、少なくとも1つは1以上であって、同時にゼロとなることはない。架橋密度が高くなると、耐光性が改善される場合がある一方で、Z、Z、Z、Zの数が多過ぎると、フェニル基の密度が低下して屈折率が低下するため、a、b、c、dの総和(a+b+c+d)は4以下であり、1または2であることが特に好ましい。
【0036】
式(4)においては、AのXが式(2)または式(5)の置換基の場合には、a、b、cは、それぞれ独立に0〜3の整数であり、a、b、cの総和(a+b+c)は3以下となる。また、AのXが式(2)または式(5)の置換基でない場合には、a、b、cは、それぞれ独立に0〜3の整数であり、少なくとも1つは1以上であって、同時にゼロとなることはない。a、b、cの総和(a+b+c)は3以下となる。いずれの場合も、化合物としての式(2)または式(5)の置換基の数の合計は、1または2であることが特に好ましい。
【0037】
本実施の形態の重合性化合物は、式(3)で示されるように、4つのフェニル基を有する化合物が好ましいが、そのフェニル基については、高い屈折率を得るために、分極率の大きなフェニル基が特に好ましく用いられる。
【0038】
尚、シクロヘキシルフェニル基およびフェニルシクロヘキシル基もフェニル基が含まれる点では好ましいが、フェニル基の密度が下がり屈折率が低下するため、シクロヘキシル基を有しないフェニル基であることが特に好ましい。さらに、有するフェニル基の数に従い屈折率を高くできること、そして、結合可能な最大数が4つであることから、式(3)に示す化合物は好ましい。
【0039】
本発明の実施形態の重合性化合物は、ゲルマニウムにフェニル基が結合した構造を有する。青色LD波長帯において耐光性に優れること、すなわち、フェニル基との結合において、炭素とゲルマニウムを比較すると、耐光性はゲルマニウムの方が優れていることを我々は見出した。このような事実は従来知られていなかった。これより、フェニル基の数を最大4つまで増やし高い屈折率を得る一方で、それらフェニル基に結合する元素としてゲルマニウムを用いることで耐光性に優れる化合物ならびに樹脂材料をえることができる。
【0040】
また、本発明の化合物は式(2)、式(5)において、Rは、水素原子またはメチル基である。したがって、重合性基は、アクリロイルオキシ基またはメタアクリロイルオキシ基となる。(メタ)アクリロイルオキシ基は、光重合反応が可能であり、硬化時間が短くて生産性に優れている。また、既知の安定化剤、例えば、フェノール系酸化防止剤やヒンダードアミン系光安定化剤などを用いた安定化が可能であり、使用可能な安定化剤の制約も少ない。したがって、(メタ)アクリロイルオキシ基を重合性基として用いることにより、安定化剤を利用したさらなる耐光性の向上を図ることができる。尚、重合速度が速いことから、アクリロイルオキシ基を重合性基として用いることが好ましい。すなわち、式(2)、式(5)において、Rは水素原子とすることが好ましい。
【0041】
本実施形態の重合性化合物を用いることにより、高屈折率性と高耐光性を兼ね備えた樹脂材料を得ることができる。
【0042】
さらに本発明においては、本発明の重合性化合物を含む重合性の組成物を提供することが可能である。この組成物に含まれる重合性化合物は、式(1)の化合物が単一であってもよく、複数であってもよい。特に、上述した実施形態の式(3)の化合物は、高屈折率性と高耐光性とを併せ持つ化合物であり、そのような性質が好ましいとして用いられるが、一方、融点の低い化合物として、式(4)の化合物を用いることもできる。尚、本実施形態の重合性の組成物は、式(1)以外の重合性化合物を含んでいてもよい。
【0043】
式(1)以外の重合性化合物は、融点、粘度または屈折率などの調整目的に応じて適宜選定すればよく、特に限定されるものではない。組成物中の重合性化合物に含まれる式(1)の化合物の割合は、10mol%以上とすることが好ましい。これにより、屈折率が高く、耐光性にも優れた樹脂が得られる。
【0044】
本実施形態の重合性の組成物は、重合反応に用いる反応開始剤を含んでいてもよい。ここで、重合反応としては、光重合反応や熱重合反応などが挙げられる。そして、周辺部材への熱的影響を考慮しないで済む光重合反応の方が好ましい。光重合反応に用いる光線としては、紫外線または可視光線が挙げられるが、重合速度が速いことから紫外線が好ましい。
【0045】
光重合開始剤としては、既知の材料を用いることができ、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンゾイン類、ベンジル類、ミヒラーケトン類、ベンゾインアルキルエーテル類およびベンジルジメチルケタール類から1種または2種以上を適宜選択して使用することができる。光重合開始剤の量は、組成物の総量に対して、0.1質量%〜5質量%とすることが好ましく、0.3質量%〜2質量%とすることが特に好ましい。
【0046】
本実施形態の組成物に添加可能な他の成分としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤および光安定化剤など安定化剤が挙げられる。これらの添加量は、組成物の総量に対して、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることが特に好ましい。
【0047】
本実施の形態の組成物には、有機溶剤が含まれていても構わないが、希釈を目的とする場合には、有機溶剤でなく低粘性の重合性化合物を用いる方が好ましい。また、取り扱いを容易にするには、熱重合しない範囲で加熱し、粘度を下げて用いるのがよい。
【0048】
以上述べたように、本発明の重合性化合物を含む組成物を硬化させることにより、特に光硬化性組成物を光硬化させることにより、高屈折率性と高耐光性を兼ね備えた樹脂材料を得ることができる。
【0049】
さらに、本発明においては、本発明の重合性化合物を含む重合性の組成物を硬化してなる樹脂材料を用いた光学素子を提供することが可能である。
【0050】
本発明の重合性化合物を用いて屈折率の高い樹脂を得ることができ、波長589nmの屈折率が、1.55以上必要とされる用途において好ましく用いることができる。従来は、屈折率1.55以上で耐光性に優れる光学樹脂材料はなく、耐光性を優先した場合、屈折率が1.55以上となる光学樹脂材料はなかった。また、本発明の化合物を用いた樹脂材料は屈折率が高い場合、屈折率の波長分散が大きくできることから、そのような用途においても好ましく用いられる。
【0051】
例えば、特開平11−211905号公報記載の偏光ホログラム素子において、凸状または凹状の形状をした高分子液晶の常光屈折率や異常光屈折率に対し、そのいずれかと屈折率を一致させた光学的等方性媒質が必要であるが、その等方性媒質として本発明による樹脂材料を用いることができる。
【0052】
また、その他の例として、本発明の樹脂材料を用いた波長選択性回折素子について説明する。以下、入射する光の波長をλと波長λ(λ<λ)とする。
【0053】
図1は、本発明の実施形態の波長選択性回折素子の第1の態様を示す模式的な横断面図である。そして、図1(a)は、波長λの光が波長選択性回折素子1Aに入射したときの作用を示す模式的な横断面図であり、図1(b)は、波長λの光が波長選択性回折素子1Aに入射したときの作用を示す模式的な横断面図である。
【0054】
図1に示す波長選択性回折素子1Aは、格子の凹凸部である回折格子12A(凹凸部材からなる)を表面に形成している透明基板11Aと、その間に充填される充填部材13Aとを備える回折素子であり、透明基板14Aで充填部材13Aが保護されている(図1(a)では波長λの光が入射する様子を示し、図1(b)では波長λの光が入射する様子を示す)。波長λの光に対しては回折格子12Aと充填部材13Aの屈折率が等しく、波長λの光に対しては回折格子12Aと充填部材13Aの屈折率が異なっている。
【0055】
すなわち、回折格子12A(凹凸部材からなる)と充填部材13Aとの波長λの光に対する屈折率をそれぞれn12A(λ)、n13A(λ)とし、λの光に対する屈折率をそれぞれn12A(λ)、n13A(λ)とし、波長λに対してn12A(λ)=n13A(λ)、波長λに対してn12A(λ)>n13A(λ)>0となるようにする。
【0056】
波長λの光が回折格子12Aを通過するときには、屈折率が等しいため、図1(a)に示すように、回折格子の機能は発生せず直進透過する。一方、波長λの光が透過するときには、屈折率が異なるため回折格子として機能し、図1(b)に示すように、回折格子12Aの高さdと格子形状により回折効率を変化させることができ、また回折格子12Aの格子ピッチを変化させることにより回折角度を変化させることができる。このように波長λの光に対してのみ回折の効果を有する波長選択性回折素子を実現することができる。
【0057】
ここで、吸収による透過損失が少ないことから、12Aおよび13Aのいずれの材料も波長λと波長λの範囲で正常分散を示すことが好ましく、n12A(λ)>n12A(λ)、n13A(λ)>n13A(λ)であるとする。すなわち、n12A(λ)=n13A(λ)>n12A(λ)>n13A(λ)の関係となり、13Aは12Aより波長分散が大きく(アッベ数が小さく)なるが、このような材料として本発明の実施形態である樹脂材料は好適に用いられる。
【0058】
次に、図2に示す波長選択性回折素子1Bについて説明する。図2は、本発明の実施形態の波長選択性回折素子の第2の態様を示す模式的な横断面図である。そして、図2(a)は、波長λの光が波長選択性回折素子1Bに入射したときの作用を示す模式的な横断面図であり、図2(b)は、波長λの光が波長選択性回折素子1Bに入射したときの作用を示す模式的な横断面図である。
【0059】
波長選択性回折素子1Bは、凹凸部材からなる回折格子12Bを表面に形成している透明基板11Bと、その間に充填される充填部材13Bとを備える回折素子である。波長λの光に対しては回折格子12Bと充填部材13Bの屈折率が異なり、波長λの光に対しては回折格子12Bと充填部材13Bの屈折率が等しい。11B、14Bなど11A、14Aとはアルファベットは異なっているが、同じ数字のものは図1と同じ構成要素を示し、透明基板である。
【0060】
すなわち、回折格子12Bと充填部材13Bとの波長λの光に対する屈折率をそれぞれn12B(λ)、n13B(λ)とし、波長λの光に対する屈折率をそれぞれn12B(λ)、n13B(λ)とし、波長λに対してn13B(λ)>n12B(λ)>0、また波長λに対してn12B(λ)=n13B(λ)となるようにする。波長λの光に対しては回折の効果を有さず、波長λの光に対して回折の効果を有する。
【0061】
回折格子12Bを波長λの光が通過するときには、波長選択性回折素子1Bは回折格子として機能し(図2(a))、格子ピッチの大きさに応じて特定の角度で回折される。直進光の透過効率と回折光の回折効率は、回折格子12Bの高さdや格子形状を変えることで変化できる。一方、波長λの光が通過するときは回折されることなく直進透過する(図2(b))。すなわち、波長λの光に対してのみ回折の効果を有する波長選択性回折素子を実現することができる。
【0062】
ここで、吸収による透過損失が少ないことから、12Bおよび13Bのいずれの材料も波長λと波長λの範囲で正常分散を示すことが好ましく、n12B(λ)>n12B(λ)、n13B(λ)>n13B(λ)であるとする。すなわち、n12B(λ)>n13B(λ)>n12B(λ)=n13B(λ)の関係となり、12Bは13Bより波長分散が大きく(アッベ数が小さく)なるが、このような材料として本発明の実施形態である樹脂材料は好適に用いられる。
【0063】
次に図3に示す波長選択性回折素子1Cについて説明する。図3は、本発明の実施形態である波長選択性回折素子の第3の態様を示す模式的な横断面図である。そして、図3(a)は、波長λの光が波長選択性回折素子1Cに入射したときの作用を示す模式的な横断面図であり、図3(b)は、波長λの光が波長選択性回折素子1Cに入射したときの作用を示す模式的な横断面図である。
【0064】
波長選択性回折素子1Cは、上述の波長選択性回折素子1Aと1Bを組み合わせたものである。波長選択性回折素子1Cは、回折格子12Cを表面に形成している透明基板11Cと、回折格子15Cを表面に形成している透明基板16Cとを備え、充填部材13Cと14Cとにより透明基板17Cが挟まれている積層構造を有する。すなわち、図3の透明基板11C、回折格子12C、充填部材13C、透明基板17Cが、図1における透明基板11A、回折格子12A、充填部材13A、透明基板14Aに相当する。また、図3の透明基板16C、回折格子15C、充填部材14C、透明基板17Cが、図2における透明基板11B、回折格子12B、充填部材13B、透明基板14Bに相当する。ここで、波長λの光に対しては回折格子12Cと充填部材13Cの屈折率が等しく、波長λの光に対しては回折格子12Cと充填部材13Cの屈折率が異なる。
【0065】
また、波長λの光に対しては回折格子15Cと充填部材14Cの屈折率が異なり、波長λの光に対しては回折格子15Cと充填部材14Cの屈折率が等しい。したがって、図3(a)が示す波長選択性回折素子1Cの上側の部分は図2(a)、下側の部分は図1(a)がそれぞれ示すように、波長λの光は回折格子15Cで回折され、回折格子12Cを透過し、15Cのみが回折格子として作用する。
【0066】
一方、図3(b)が示す波長選択性回折素子1Cの上側の部分は図2(b)、下側の部分は図1(b)がそれぞれ示すように、波長λの光は回折格子15Cを透過し、回折格子12Cで回折され、12Cのみが回折格子として作用する。したがって、ひとつの複合化された素子で2種の波長に対して、それぞれ独立に回折素子として機能する。
【0067】
ここで、波長λおよび波長λがそれぞれBDで使用される405nm波長帯およびDVDで使用される660nm波長帯であるとする。図1において説明した関係にある場合には、405nm波長帯を透過し、660nm波長帯を回折する波長選択性回折素子を作製することができる。さらに、CD(Compact Disk)で使用される785nm波長帯は660nm波長帯と屈折率が近いことから、785nm波長帯においても回折する波長選択性回折素子を作製することができる。
【0068】
また、図2において説明した関係にある場合には、405nm波長帯を回折し、660nm波長帯を透過する波長選択性回折素子を作製することができる。さらに、785nm波長帯は660nm波長帯と屈折率が近いことから、785nm波長帯においても透過する波長選択性回折素子を作製することができる。
【0069】
以上説明した波長選択性回折素子においては、格子高さd、dまたは格子形状を変化させることで回折効率を変ることができるので、3ビーム発生用素子またはホログラムビームスプリッタとして、好適な効率が得られる格子高さを用いればよい。また、波長選択性回折素子の凹凸部をブレーズド格子形状またはマルチレベル構造の階段状格子形状にすることにより、特定の次数の回折効率を高めて用いてもよい。回折角度についても、所望の回折角度となるような格子ピッチとすればよく、これらは従来の3ビーム発生用素子やホログラムビームスプリッタに用いられている手法をそのまま、波長選択性回折素子に採用できる。
【0070】
また、特開2005−209327号公報記載のような波長選択の偏光ホログラム素子において、凸状または凹状の形状をしたコレステリック高分子液晶の円偏光に対する屈折率波長分散のうち、左右の円偏光のいずれかに対するものと一致させた光学的等方性媒質として、本発明による樹脂材料を用いることができる。
【0071】
さらに、本発明の組成物を重合してなる樹脂材料は、上述の回折素子以外にその他の回折素子、レンズなどの光学素子に用いることができる。本材料はこれら光学素子の作製方法には限定されず、従来知られた方法であってよい。さらに、光学素子同士の積層や、光学部品の固定のための接着剤としても使用できる。
【0072】
本発明の材料ならびにそれを用いた素子は青色レーザーに対する耐光性が優れていることから、光ピックアップ用途において好ましく用いられ、大容量化に適した光ヘッド装置を作製できる。すなわち、本発明の実施形態である樹脂材料を用いた光学素子は、光記録媒体に情報を記録する、および/または、光記録媒体に記録された情報を再生する光ヘッド装置に適し、特にBD(Blu−ray Disk)やHDDVD(High−Definition Digital Versatile Disk)のような青色レーザを用いた光情報記録再生装置用の光ヘッド装置に好適である。具体的には、光ヘッド装置のレーザ光の光路中に好ましく配置される。また、従来高屈折率樹脂が必要とされたその他用途においても、好適に用いられる。
【0073】
以下に、本発明の実施の形態である光ヘッド装置について説明する。
図4は、本発明の実施形態である光ヘッド装置の構成図である。この図に示すように、光ヘッド装置111は、レーザ光を出射する光源112と、波長選択性回折格子113と、レーザ光を透過するビームスプリッタ114と、レーザ光を平行化するコリメータレンズ115と、光ディスク116の記録層117に集光する対物レンズ118と、光ディスク116からの反射光を検出する光検出器119とを有する。光ヘッド装置111は、BDなどに記録された情報を読み取る際のトラッキング制御において3ビームを用いる。波長選択性回折格子113は、3ビーム発生用回折格子であり、本発明の実施の形態である光学素子(図2の波長選択性回折格子1B)が適用される。
【0074】
尚、図4では、光源112とビームスプリッタ114の間に波長選択性回折格子113が設けられているが、ビームスプリッタ114と対物レンズ118との間に波長選択性回折格子113を設けてもよく、光源112と対物レンズ118の間の光路中に波長選択性回折格子113を設ける構成であればよい。尚、図4のように波長選択性回折格子113を光源112とビームスプリッタ114の間に配置すれば、光ディスクからの反射光が波長選択性回折格子113で回折されないで光検出器119に導かれるため、光の利用効率が高くなり、好ましい。
【0075】
光源112は、例えば半導体レーザダイオードで構成され、光ディスク116の種類に応じた波長のレーザ光を生成して波長選択性回折格子113に出射するようになっている。光源112には、通常の光ヘッド装置に使用される通常のレーザ光源が使用される。具体的には、半導体レーザが好適であるが、他のレーザであってもよい。本発明で得られる樹脂材料は、青色レーザに対する耐光性が良好であるので、青色レーザを光源として使用することにより、光ヘッド装置の大容量化が図れる。
【0076】
本実施の形態では、レーザ光の波長を、例えば、405nm(波長λ)と660nm(波長λ)とする。尚、互いに異なる波長のレーザ光を出射する光源を複数備え、各光源から波長選択性回折格子113にレーザ光が出射される構成としてもよい。
【0077】
波長選択性回折格子113は、波長λのレーザ光を回折せずに透過した光(0次回折光)と、波長λのレーザ光を回折した光(±1次回折光)とを含む3つのビームをビームスプリッタ114に出力する。さらに、波長選択性回折格子113は、波長λのレーザ光を透過してビームスプリッタ114に出力する。
【0078】
ビームスプリッタ114は、透過性の材料、例えば、ガラスまたはプラスチックなどで構成され、光ディスク116からの反射光を反射する反射面を備えている。
コリメータレンズ115も、透過性の材料、例えば、ガラスまたはプラスチックなどで構成され、入射したレーザ光を平行化するようになっている。
【0079】
対物レンズ118は、所定の開口数NAを有し、コリメータレンズ115からの入射光を光ディスク116の記録層117に集光し、記録層117からの反射光を捕捉するようになっている。
【0080】
光検出器119は、レンズやフォトダイオードなどを含み、ビームスプリッタ114の反射面によって反射された光ディスク116からの反射光を電気信号に変換する。また、光検出器119は、波長λの3ビームの反射光を受光し、0次回折光により生成された主ビームと、±1次回折光により生成された2つの副ビームとを受光し、2つの副ビーム間の光量差に基づいてトラッキングエラーを検出し、トラッキング制御部(図示せず)に出力する。
【0081】
光ディスク116がBDである場合、光ヘッド装置111は次のように動作する。
まず、光源112から出射された波長λの光は、波長選択性回折格子113によって出射光の一部が回折される。これにより、波長選択性回折格子113からは、0次回折光と±1次回折光を含む光が出射され、ビームスプリッタ114を透過してコリメータレンズ115によって平行光にされる。
【0082】
コリメータレンズ115から出射された平行光は、対物レンズ118により、0次回折光と±1次回折光が3ビームとなって光ディスク116の情報記録トラック上に集光される。次に、光ディスク116によって反射された光は、再び対物レンズ118よりコリメータレンズ115を透過しビームスプリッタ114で反射されて、0次回折光により生成された主ビームと、±1次回折光により生成された2つの副ビームとが光検出器119の受光面に集光される。そして、光検出器119によって、2つの副ビーム間の光量差に基づいてトラッキングエラー信号が検出され、トラッキング制御部(図示せず)に出力される。
【0083】
光ディスク116がDVDである場合には、光ヘッド装置111は次のように動作する。
まず、光源112から出射された波長λの光は、波長選択性回折格子113で回折されることなく透過した後、さらにビームスプリッタ114を透過して、コリメータレンズ115で平行光にされる。その後、この平行光は、対物レンズ118によって光ディスク116の情報記録トラック上に集光される。そして、光ディスク116で反射された光は、再び対物レンズ118とコリメータレンズ115を透過し、ビームスプリッタ114で反射されて光検出器119の受光面に集光される。
【0084】
以上述べたように、本発明の重合性化合物を含む組成物を硬化し、得られる樹脂材料を使用した光学素子を用いることにより、大容量化に適した高信頼の光ヘッド装置を構成することができる。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々変形して実施することができる。
【実施例】
【0085】
以下に、本発明の実施例および比較例を述べる。ただし、本発明は以下の実施例に何ら制限されるものではない。
【0086】
<重合性化合物の合成>
実施例1
下記に合成スキームに示す方法に従い、化合物A−1、A−2、A−3およびA−4を経て重合性化合物Aを合成した。


【0087】
上記式において、TBDMSはtert−ブチルジメチルシリル基を示す。
以下、重合性化合物Aにおける上記合成スキームの各反応について詳細に説明する。
【0088】
(a)化合物A−1の合成
200mLのテトラヒドロフラン(以下、THFと記載)に、5.0g(29mmol)の4−ブロモフェノールと、4.8mL(35mmol)のトリエチルアミンとを溶解させて攪拌した後、THF100mLに溶解させた6.5g(43mmol)のtert−ブチルジメチルクロロシラン(以下、TBDMS−Clと記載)を10分間かけてゆっくりと滴下して室温で12時間反応させた。次いで、水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、さらに硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させた後、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(体積比1:9)を用いてカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、無色透明液体の化合物A−1を6.1g得た。収率は72%であった。
【0089】
(b)化合物A−2の合成
100mLのTHFに4.6g(16mmol)の化合物A−1を溶解し、窒素雰囲気下−30℃にて攪拌をした。次いで、濃度1.6mol/Lのn−ブチルリチウムヘキサン溶液10mL(16mmol)を5分程度かけてゆっくりと滴下した。−30℃で20分間反応させた後、100mLのTHFに溶解させたトリフェニルクロロゲルマン5g(15mmol)を10分間程度かけてゆっくりと滴下した。その後、−30℃で15分間保持してから、室温で3時間反応させた。次に、水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させてから、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(体積比1:8)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体の化合物A−2を5.1g得た。収率は62%であった。
【0090】
(c)化合物A−3の合成
100mLのTHFに、3.4g(6.6mmol)の化合物A−2と、1.9g(7.2mmol)のテトラブチルアンモニウムフルオリド(以下、TBAFと記載)とを溶解し、室温で3時間攪拌した。その後、水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させてから、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(体積比1:3)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体の化合物A−3を2.1g得た。収率は79%であった。
【0091】
(d)化合物A−4の合成
100mLのアセトンと100mLのN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと記載)に、1.3g(5.0mmol)の化合物A−3、炭酸セシウム5.3g(16mmol)、2−ブロモエタノール0.30mL(4.2mmol)、ヨウ化カリウム0.3g(1.2mmol)を加え、50℃で12時間反応させた。次いで、水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、さらに硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させた後、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(体積比1:3)を用いてカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体の化合物A−4を1.0g得た。収率は69%であった。
【0092】
(e)化合物Aの合成
50mLのTHFに、1.0g(2.2mmol)の化合物A−4と、0.38mL(2.7mmol)のトリエチルアミンとを溶解し、窒素雰囲気において水浴下で2分程度かけてゆっくりとアクリル酸クロリド0.20mL(2.5mmol)を滴下した。その後、水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させてから、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(体積比1:6)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体の化合物Aを0.75g得た。収率は67%であった。
【0093】
重合性化合物Aの1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl、内部標準:テトラメトキシシラン(TMS))のスペクトルデータは、δ(ppm):4.22(2H、t)、4.50(2H、t)、5.84−6.46(3H、m)、6.94−7.53(19H、m)であった。得られた化合物Aの融点は100℃であった。
【0094】
実施例2
下記に示す合成スキームに従い、化合物B−1、B−2、B−3およびB−4を経て化合物Bを合成した。


【0095】
以下、重合性化合物Bにおける上記合成スキームの各反応について詳細に説明する。
(a)化合物B−1の合成
200mLのアセトンと100mLのDMFに、5.0g(29mmol)の3−ブロモフェノール、28g(86mmol)の炭酸セシウム、4.2mL(59mmol)の2−ブロモエタノール、0.3g(1.2mmol)のヨウ化カリウムを加え、50℃で12時間反応させた。次いで、水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、さらに硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させた後、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(体積比1:2)を用いてカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、無色透明液体の化合物B−1を4.8g得た。収率は77%であった。
【0096】
(b)化合物B−2の合成
200mLのTHFに、4.8g(22mmol)の化合物B−1と、3.3mL(24mmol)のトリエチルアミンとを溶解させて攪拌した後、THF100mLに溶解させた3.7g(25mmol)のtert−ブチルジメチルクロロシランを10分間かけてゆっくりと滴下して室温で12時間反応させた。次いで、水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、さらに硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させた後、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(体積比1:6)を用いてカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、無色透明液体の化合物B−2を4.1g得た。収率は56%であった。
【0097】
(c)化合物B−3の合成
100mLのTHFに4.1g(12mmol)の化合物B−2を溶解し、窒素雰囲気下−30℃にて攪拌をした。次いで、濃度1.6mol/Lのn−ブチルリチウムヘキサン溶液7.8mL(12mmol)を3分程度かけてゆっくりと滴下した。−30℃で20分間反応させた後、100mLのTHFに溶解させたトリフェニルクロロゲルマン4.2g(12mmol)を10分間程度かけてゆっくりと滴下した。その後、−30℃で15分間保持してから、室温で3時間反応させた。次に、水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させてから、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(体積比1:19)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体の化合物B−3を4.5g得た。収率は65%であった。
【0098】
(d)化合物B−4の合成
100mLのTHFに、4.5g(8.1mmol)の化合物B−3と、2.4g(9.2mmol)のTBAFとを溶解し、室温で3時間攪拌した。その後、水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させてから、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(体積比1:2)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体の化合物B−4を2.3g得た。収率は64%であった。
【0099】
(e)化合物Bの合成
100mLのTHFに、2.3g(5.2mmol)の化合物B−4と、0.80mL(5.7mmol)のトリエチルアミンとを溶解し、窒素雰囲気において水浴下で5分程度かけてゆっくりとアクリル酸クロリド0.46mL(5.6mmol)を滴下した。その後、水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させてから、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(体積比1:9)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体の化合物Bを1.6g得た。収率は62%であった。
【0100】
化合物Bの1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl、内部標準:TMS)のスペクトルデータは、δ(ppm):4.13(2H、t)、4.46(2H、t)、5.81−6.44(3H、m)、6.95(1H、m)、7.09−7.15(2H、m)、7.30−7.54(16H、m)であった。得られた化合物Bの融点は75℃であった。
【0101】
実施例3
下記に示す合成スキームに従い、化合物C−1、C−2およびC−3を経て化合物Cを合成した。


【0102】
以下、重合性化合物Cにおける上記合成スキームの各反応について詳細に説明する。
(a)化合物C−1の合成
200mLのTHFに、5.0g(25mmol)の2−(4−ブロモフェニル)エチルアルコールと、4.1mL(30mmol)のトリエチルアミンとを溶解させて攪拌した後、THF100mLに溶解させた5.6g(37mmol)のtert−ブチルジメチルクロロシランを10分間かけてゆっくりと滴下して室温で12時間反応させた。次いで、水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、さらに硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させた後、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(体積比1:19)を用いてカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、無色透明液体の化合物C−1を6.2g得た。収率は79%であった。
【0103】
(b)化合物C−2の合成
100mLのTHFに4.6g(15mmol)の化合物C−1を溶解し、窒素雰囲気下−30℃にて攪拌をした。次いで、濃度1.6mol/Lのn−ブチルリチウムヘキサン溶液9.2mL(15mmol)を5分程度かけてゆっくりと滴下した。−30℃で20分間反応させた後、100mLのTHFに溶解させたトリフェニルクロロゲルマン5.0g(15mmol)を10分間程度かけてゆっくりと滴下した。その後、−30℃で15分間保持してから、室温で3時間反応させた。次に、水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させてから、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(体積比1:19)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体の化合物C−2を6.2g得た。収率は78%であった。
【0104】
(c)化合物C−3の合成
100mLのTHFに、6.2g(11mmol)の化合物C−2と、3.6g(14mmol)のTBAFとを溶解し、室温で3時間攪拌した。その後、水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させてから、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(体積比1:2)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体の化合物C−3を3.5g得た。収率は72%であった。
【0105】
(d)化合物Cの合成
100mLのTHFに、3.5g(8.2mmol)の化合物C−3と、1.3mL(9.4mmol)のトリエチルアミンとを溶解し、窒素雰囲気において水浴下で5分程度かけてゆっくりとアクリル酸クロリド0.73mL(9.0mmol)を滴下した。その後、水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させてから、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(体積比1:6)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体の化合物Cを3.0g得た。収率は76%であった。
【0106】
化合物Cの1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl、内部標準:TMS)のスペクトルデータは、δ(ppm):2.99(2H、t)、4.38(2H、t)、5.30−6.41(3H、m)、7.24−7.53(19H、m)であった。得られた化合物Cの融点は123℃であった。
【0107】
実施例4
下記に示す合成スキームに従い、化合物D−1、D−2およびD−3を経て化合物Dを合成した。


【0108】
以下、重合性化合物Dにおける上記合成スキームの各反応について詳細に説明する。
(a)化合物D−1の合成
200mLのTHFに、12.0g(64.5mmol)の4−ブロモベンジルアルコールと、10.7mL(77.3mmol)のトリエチルアミンとを溶解させて攪拌した後、THF100mLに溶解させた14.6g(96.7mmol)のtert−ブチルジメチルクロロシランを10分間かけてゆっくりと滴下して室温で12時間反応させた。次いで、水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、さらに硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させた後、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(体積比1:19)を用いてカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、無色透明液体の化合物D−1を13.0g得た。収率は67.2%であった。
【0109】
(b)化合物D−2の合成
100mLのTHFに4.4g(15mmol)の化合物D−1を溶解し、窒素雰囲気下−30℃にて攪拌をした。次いで、濃度1.6mol/Lのn−ブチルリチウムヘキサン溶液9.2mL(15mmol)を5分程度かけてゆっくりと滴下した。−30℃で20分間反応させた後、100mLのTHFに溶解させたトリフェニルクロロゲルマン5.0g(15mmol)を10分間程度かけてゆっくりと滴下した。その後、−30℃で15分間保持してから、室温で3時間反応させた。次に、水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させてから、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(体積比1:19)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体の化合物D−2を4.9g得た。収率は64%であった。
【0110】
(c)化合物D−3の合成
100mLのTHFに、4.9g(9.3mmol)の化合物D−2と、2.7g(10mmol)のTBAFとを溶解し、室温で3時間攪拌した。その後、水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させてから、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(体積比1:2)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体の化合物D−3を3.0g得た。収率は78%であった。
【0111】
(d)化合物Dの合成
100mLのTHFに、3.0g(7.3mmol)の化合物D−3と、1.1mL(8.0mmol)のトリエチルアミンとを溶解し、窒素雰囲気において水浴下で5分程度かけてゆっくりとアクリル酸クロリド0.66mL(8.2mmol)を滴下した。その後、水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させてから、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(体積比1:6)を用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体の化合物Dを1.7g得た。収率は50%であった。
【0112】
化合物Dの1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl、内部標準:TMS)のスペクトルデータは、δ(ppm):5.22(2H、s)、5.84−6.48(3H、m)、7.37−7.55(19H、m)であった。得られた化合物Dの融点は124℃であった。
【0113】
実施例5
下記に示す合成スキームに従い、化合物E−1およびE−2を経て化合物Eを合成した。


【0114】
以下、重合性化合物Eにおける上記合成スキームの各反応について詳細に説明する。
(a)化合物E−1の合成
200mLのTHFに、5.0g(15mmol)のトリフェニルクロロゲルマンを溶解させ、窒素雰囲気において氷浴下で15mL(15mmol)の1mol/Lアリルマグネシウムブロミド THF溶液を10分程度かけてゆっくりと滴下し、その後、室温で5時間反応させた。次いで、水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、さらに硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させた後、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(体積比1:9)を用いてカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、無色透明液体の化合物E−1を2.7g得た。収率は53%であった。
【0115】
(b)化合物E−2の合成
20mLのTHFに、8.6mL(7.8mmol)の0.9mol/LボランTHF溶液を加えて、窒素雰囲気において氷浴下で2.7g(7.8mmol)の化合物E−1を10分程度かけてゆっくりと滴下し、その後、室温で3時間反応させた。次いで、水40mLに溶かした水酸化ナトリウム4.0gを水浴下で5分かけてゆっくりと滴下し、さらに、水浴下で30% 過酸化水素水を15mLを10分程度かけてゆっくりと滴下した。水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、さらに硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させた後、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(体積比4:1)を用いてカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体の化合物E−2を2.5g得た。収率は88%であった。
【0116】
(c)化合物Eの合成
100mlのTHFに、1.8g(4.9mmol)の化合物E−2と、トリエチルアミン 0.8mL(5.8mmol)を溶解させ、窒素雰囲気において氷浴下でTHF10mLに溶解させた0.5mL(6.2mmol)のアクリル酸クロリドを10分程度かけてゆっくりと滴下し、その後、室温で3時間反応させた。水と酢酸エチルを加えて有機層を抽出し、さらに硫酸マグネシウムを加えて十分に乾燥させた後、溶媒を留去した。酢酸エチルとヘキサン(体積比1:6)を用いてカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体の化合物Eを1.4g得た。収率は68%であった。
【0117】
化合物Eの1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl、内部標準:TMS)のスペクトルデータは、δ(ppm):1.51−1.59(2H、t)、1.86−1.93(2H、dd)、4.13−4.16(2H、t)、5.79−6.41(3H、m)、7.27−7.49(15H、m)であった。得られた化合物Dの融点は86℃であった。
【0118】
<光硬化性組成物の重合と屈折率評価>
実施例6
化合物A100重量部に、光開始剤としてチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「IC184」(商品名)を0.5重量部加え、加熱しながら均一になるまで攪拌した。そして、光硬化性組成物Aを得た。
【0119】
次に、2枚のガラス板の角4箇所を直径10μmのガラスビーズを混ぜた接着剤で貼り合わせて、10μmのガラス間隔のガラスセルを作製した。このガラスセルの内部に、上記の組成物Aを液体状態で注入した後、ガラス板に対して垂直方向から紫外線を2分間照射し、セルAを得た。用いた高圧水銀灯の照度は、波長365nmで50mW/cmであった。その後、カッターを用いてセルAの2枚のガラス板の一方を剥離させ、片側に硬化樹脂がついた試験片Aを得た。プリズムカプラ(Metricon社製:Model2010)を用い、室温で波長404nm、633nmおよび791nmにおける屈折率を測定したところ、それぞれ、1.669、1.621、1.611であり、高屈折率の樹脂であることが確認できた。
【0120】
次に、3つの波長の屈折率をもとにして、コーシーの分散式(n(λ)=A+B/λ+C/λ)のパラメーターA、B、Cを、最小2乗法を用いたフィッティングから求めることによって400nm〜800nmにおける屈折率を導出し、そのフィッティング値をもとに589nmにおける屈折率n、およびアッベ数νを算出したところ、nは1.625、νは26.9であった。
【0121】
実施例7〜10
化合物Aに代えて化合物B、C、D、Eを用いる以外は実施例6と同様にして光硬化性組成物B、C、D、Eを得、それらを用いてセルB、C、D、Eを得た後、セルの片側のガラスを剥離することによって試験片B、C、D、Eを作製した。試験片B、C、D、Eを室温で屈折率を測定し、nおよびνを算出したところ、それぞれ、589nmの屈折率nは1.629、1.630、1.633、1.615、アッベ数νは26.6、26.5、26.0、29.4であり、高屈折率の樹脂であることが確認できた。
【0122】
<光硬化性組成物の重合と耐光性評価>
実施例11
一方の表面に反射防止膜がコーティングされたガラス板を用い、コーティング面と反対側の面が対向するようにし、接着剤に混ぜるガラスビーズの直径を20μmに変更した以外は、実施例6と同様にして、ガラスセルを作製した。化合物A100重量部に、光開始剤としてチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「IC184」(商品名)を0.5重量部加え、加熱しながら均一になるまで攪拌し、液状の光硬化性組成物Aを得た。得られた組成物を液体の状態で上記のガラスセルの内部に注入し、ガラス板に対して垂直方向から紫外線を2分間照射して積層体Aを得た。尚、用いた高圧水銀灯の照度は、波長365nmにて50mW/cmであった。
【0123】
上記の積層体Aに、80℃で発振波長406nmの青色LD光を15kJ/mm照射した。照射前後で透過率を測定したところ、透過率変化△TLDは2.0%であった。尚、ここで、△TLD=(照射前の青色LD光透過率)−(照射後の青色LD光透過率)である。
【0124】
実施例12〜15
化合物Aに代えて化合物BまたはCまたはDまたはEを用いた以外は実施例11と同様にして、積層体B、C、DおよびEを作製した。実施例13と同様にして、積層体B、C、DおよびEの△TLDを測定したところ、積層体Bは2.6%、積層体Cは1%未満、積層体Dは2.6%、積層体Eは1%未満であった。
【0125】
比較例1
化合物Aに代えて下記の化合物Fを用いる以外は実施例6と同様にして、樹脂を作製した。室温で屈折率を測定したところ、589nmにおける屈折率が1.608、アッベ数νが28.2であった。

【0126】
化合物Aに代えて化合物Fを用いる以外は実施例6と同様にして、セルFを作製した。次いで、実施例11と同様にして、積層体Fの透過率を測定したところ、△TLDは59%であった。
【0127】
比較例2
化合物Aに代えて下記の化合物Gを用いる以外は実施例6と同様にして、樹脂を作製した。室温で屈折率を測定したところ、589nmにおける屈折率が1.625、アッベ数νが27.2であった。

【0128】
化合物Aに代えて化合物Gを用いる以外は実施例6と同様にして、セルGを作製した。次いで、実施例11と同様にして、積層体Gの透過率変化を測定したところ、△TLDは42%であった。
【0129】
表1は、実施例6〜15および比較例1、2の評価結果を比較したものである。実施例1〜5の重合性化合物A、B、C、D、Eを用いて得られた、実施例6〜10の樹脂の屈折率n、アッべ数νおよび対応する上記積層体A〜E(実施例11〜15)の透過率変化△TLDを表1にまとめた。そして、併せて、本発明の比較例である化合物F(比較例1)および化合物G(比較例2)を用いた樹脂について、同様の評価を行い、表1にまとめた。
【0130】
この表から分かるように、本発明の重合性化合物を用いて得られる樹脂材料は、従来材料と同等以上の高い屈折率を実現しながら、耐光性にも優れていることが分かった。
【0131】
表1

【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の材料は、屈折率が高く、各種光学用途に使用可能であり、特に、青色光に対して高い耐光性を有するので、強い青色光を用いる光ディスク、光学素子等の高屈折率材料が必要とされる用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0133】
1A、1B、1C、113 波長選択性回折素子
11A、14A、11B、14B、11C、16C、17C 透明基板
12A、12B、12C,15C 回折格子
13A、13B、13C、14C 充填部材
111 光ヘッド装置
112 光源
114 ビームスプリッタ
115 コリメータレンズ
116 光ディスク
117 記録層
118 対物レンズ
119 光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルマニウムと4つの基A〜Aが直接または酸素を介して結合した下記式(1)で表されることを特徴とする重合性化合物。

(式(1)において、A、A、AおよびAは、夫々独立して−(O)−Xであり、
4個のmは、夫々独立して0または1を表し、
4個のXは、少なくとも3個のXは夫々独立して、フェニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルフェニル基およびフェニルシクロヘキシル基のいずれかの環基であり、環基が4個のときにはその環基はA〜Aの水素原子の内、合計して1〜4個が下記式(2)で表される置換基で置換されており、環基が3個のときには、4つ目の基AのXは、メチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基または下記式(2)で表される基のいずれかであり、かつ、その環基はA〜Aの水素原子及びAのXの内、合計して1〜4個が下記式(2)で表される置換基で置換されており、かつ、A〜Aで夫々独立してその環基の残りの水素原子の一部または全部の水素原子がメチル基、メトキシ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基またはトリフルオロメトキシ基に置換されていてもよく、4つ目の基AのXが、メチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基の場合には、その水素原子の一部または全部の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよく、

式(2)において、Rは、水素原子またはメチル基を表し、
Yは、単結合または炭素数1〜12のアルキレン基を表し、そのアルキレン基の一部または全部の水素原子がフッ素原子またはメチル基に置換されていてもよく、そのアルキレン基の一部の炭素原子が、ケイ素原子またはゲルマニウム原子同士が隣接しない範囲内でケイ素原子またはゲルマニウム原子に置換されていてもよく、そのアルキレン基の隣接する炭素−炭素結合の間または環基と結合する末端に酸素原子を有していてもよい。)
【請求項2】
Xは、置換基を有していてもよいフェニル基であることを特徴とする請求項1に記載の重合性化合物。
【請求項3】
Yは、水素原子の一部または全部の水素原子がフッ素原子に置換されてもよい炭素数が2〜12のアルキレン基または炭素数が2〜12のアルキレンオキシ基であることを特徴とする請求項1または2に記載の重合性化合物。
【請求項4】
式(1)で表される化合物における式(2)で表される置換基の数の総和が1または2であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の重合性化合物。
【請求項5】
〜Aの全てにおいて、その環基が置換基を有していてもよいフェニル基であり、かつmが0であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の重合性化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の重合性化合物を含むことを特徴とする光硬化性組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の光硬化性組成物を硬化してなる樹脂材料を用いたことを特徴とする光学素子。
【請求項8】
請求項7に記載の光学素子を用いてなることを特徴とする光ヘッド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−94080(P2011−94080A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251649(P2009−251649)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】