説明

重合性化合物及び重合性化合物の製造方法

【課題】熱、紫外線、放射線等により容易に重合し得る高い反応性を有しながら、可撓性及び柔軟性を有する重合体を形成することができ、かつ、アルカリ水溶液に対して高い溶解性を有するため、例えば、アルカリ現像型レジスト材料に好適に用いることができる重合性化合物、及び、該重合性化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】分子内に、2以上の重合性不飽和結合、1以上のカルボキシル基、並びに、ラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造及び/又はオキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造を有する重合性化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱、紫外線、放射線等により容易に重合し得る高い反応性を有しながら、可撓性及び柔軟性を有する重合体を形成可能で、かつ、アルカリ水溶液に対して高い溶解性を有する重合性化合物、及び、該重合性化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗料、ハードコート、インキ、レジスト等の用途において、熱、紫外線、放射線等により重合することで固化するために、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル化合物に代表される多官能重合性化合物を用いることが知られている。
このような重合性化合物は、重合により3次元的な架橋構造を形成し、強固な重合体を形成し得る反面、一般に可撓性に欠けるものであった。
【0003】
そこで、重合体に可撓性を付与する方法として、例えば、柔軟な高分子化合物を複合する方法や、単官能の重合性化合物を共重合することにより架橋密度を低減する方法等が知られている。
しかしながら、このような方法では重合性化合物本来の性能を損なったり、反応性が低下して固化に要するエネルギーや時間が増加したりする問題点があった。
【0004】
一方、このような問題を生じることなく重合体に可撓性を付与できる重合性化合物として、例えば、特許文献1には、多官能重合性化合物をエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド又はカプロラクトン等により変性した重合性化合物が開示されている。このような重合性化合物は、例えば、アルカリ現像型レジスト材料に用いると、フォトリソグラフの手法により可撓性を有する柔軟なレジストパターンを形成することができる。
【0005】
しかしながら、このような多官能重合性化合物をエチレンオキサイド等により変性した重合性化合物は、アルカリ現像液に対する溶解性が低くいものであった。そのため、このような重合性化合物をアルカリ現像型レジスト材料に用い、フォトリソグラフの手法によりレジストパターンを形成すると、現像液中において重合性化合物が凝集して異物として残留したり、現像液フィルターを詰まらせたりするという問題があった。
【特許文献1】特開2001−91954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、熱、紫外線、放射線等により容易に重合し得る高い反応性を有しながら、可撓性及び柔軟性を有する重合体を形成可能で、かつ、アルカリ水溶液に対して高い溶解性を有する重合性化合物、及び、該重合性化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、分子内に、2以上の重合性不飽和結合、1以上のカルボキシル基、並びに、ラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造及び/又はオキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造を有する重合性化合物である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の重合性化合物は、分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する。分子内に2以上の重合性不飽和結合を有することで、本発明の重合性化合物は、熱、紫外線、放射線等により容易に重合し得る高い反応性を有する。
【0009】
本発明の重合性化合物において、上記2以上の重合性不飽和結合は、(メタ)アクリレート基中の不飽和二重結合であることが好ましい。すなわち、本発明の重合性化合物は、分子内に2以上の(メタ)アクリレート基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物(以下、本発明に係る(メタ)アクリレート化合物ともいう)であることが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。このような(メタ)アクリレート基は、主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよく、更に主鎖及び側鎖のいずれにも含まれていてもよい。
【0010】
本発明の重合性化合物が上記本発明に係る(メタ)アクリレート化合物である場合、重合反応の進行が速く、露光感度を向上させやすいことから、分子内の(メタ)アクリレート基の数の好ましい下限は3である。
【0011】
本発明の重合性化合物は、分子内に1以上のカルボキシル基を有する。分子内に1以上のカルボキシル基を有することで、本発明の重合性化合物は、アルカリ水溶液に対して高い溶解性を有する。従って、本発明の重合性化合物をアルカリ現像型レジスト材料に用いた場合、フォトリソグラフの手法によりレジストパターンを形成すると、現像液中において重合性化合物が凝集して異物として残留したり、現像液フィルターを詰まらせたりするという問題が生じることがない。
【0012】
上記カルボキシル基の変性量としては、アルカリ水溶液に速やかに溶解するものであれば特に限定されないが、酸価の好ましい下限は5mgKOH/g、好ましい上限は80mgKOH/gであり、より好ましい下限は10mgKOH/g、より好ましい上限は50mgKOH/gである。
【0013】
また、上記カルボキシル基の数の好ましい上限は2である。分子内のカルボキシル基の数が2を超えると、アルカリ現像液への溶解性・膨潤性が高くなり、例えば、本発明の重合性化合物をアルカリ現像型レジスト材料に用いた場合に、現像パターンの剥離や、膨潤性による解像度の低下が起こりやすくなる。
【0014】
本発明の重合性化合物は、分子内にラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造及び/又はオキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造を有する。分子内にラクトンの開環体等を有することで、本発明の重合性化合物は、重合体が柔軟で可撓性に優れたものとなる。
本発明の重合性化合物において、上記ラクトンの開環体若しくは開環重合体及び/又はオキサイドの開環体若しくは開環重合体は、例えば、本発明の重合性化合物が上記本発明に係る(メタ)アクリレート化合物である場合、分子内に2以上の(メタ)アクリレート基と1以上のカルボキシル基とを有する多官能(メタ)アクリレート化合物のアルコール由来部位と(メタ)アクリロイル基との間に導入されている。
【0015】
本発明の重合性化合物における上記ラクトンの開環体又は開環重合体の変性度としては、例えば、本発明の重合性化合物が上述した本発明に係る(メタ)アクリレート化合物である場合、ベースとなる多官能(メタ)アクリレート化合物の官能基数をnとした場合、多官能(メタ)アクリレート化合物1モルに対して好ましい下限は0.5nモル、好ましい上限は5nモルである。0.5nモル未満であると、本発明の重合性化合物の重合体の柔軟性が不充分となることがあり、5nモルを超えると、露光時の反応性が低下し、本発明の重合性化合物をアルカリ現像型レジスト材料に用いた場合、フォトリソグラフの手法によりパターニングが困難となることがある。より好ましい下限は1nモル、より好ましい上限は3nモルである。
【0016】
また、本発明の重合性化合物における上記オキサイドの開環体又は開環重合体の変性度としては、例えば、本発明の重合性化合物が上述した本発明に係る(メタ)アクリレート化合物である場合、ベースとなる多官能(メタ)アクリレート化合物の官能基数をnとした場合、多官能(メタ)アクリレート化合物1モルに対して好ましい下限は0.5nモル、好ましい上限は15nモルである。0.5nモル未満であると、本発明の重合性化合物の重合体の柔軟性が不充分となることがあり、15nモルを超えると、アルカリ現像液への親和性が高くなり、本発明の重合性化合物をアルカリ現像型レジスト材料に用いた場合、膨潤による解像性の低下が起こりやすくなる。より好ましい下限は3nモル、より好ましい上限は10nモルである。
【0017】
本発明の重合性化合物は、分子内に2以上の重合性不飽和結合、水酸基、並びに、ラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造及び/又はオキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造を有する化合物に、カルボキシル基を2つ以上有するカルボン酸化合物及び/又は酸無水物が付加反応されてなるものであることが好ましい。
上記分子内2以上の重合性不飽和結合、水酸基、並びに、ラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造及び/又はオキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造を有する化合物としては特に限定されず、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のラクトン変性及び/又はオキサイド変性体等が挙げられる。
なお、本明細書において、上記ラクトン変性とは、例えば、本発明の重合性化合物が上述した本発明に係る(メタ)アクリレート化合物である場合、分子内に2以上の(メタ)アクリレート基と1以上のカルボキシル基とを有する多官能(メタ)アクリレート化合物のアルコール由来部位と(メタ)アクリロイル基との間に、ラクトンの開環体又は開環重合体が導入されることを意味し、上記オキサイド変性とは、上記分子内に2以上の(メタ)アクリレート基と1以上のカルボキシル基とを有する多官能(メタ)アクリレート化合物のアルコール由来部位と(メタ)アクリロイル基との間に、オキサイドの開環体又は開環重合体が導入されることを意味する。
【0018】
上記分子内に2以上の重合性不飽和結合、水酸基、並びに、ラクトンの開環体構造又は開環重合体構造を有する化合物を合成する方法としては、例えば、多価アルコールとラクトンとを反応させ、ラクトン変性多価アルコールを合成した後、このラクトン変性多価アルコールと(メタ)アクリル酸とをエステル化反応させる方法(1);(メタ)アクリル酸とラクトンとを反応させ、ラクトン変性(メタ)アクリル酸を合成した後、このラクトン変性(メタ)アクリル酸とアルコールとをエステル化反応させる方法(2);(メタ)アクリル酸、ラクトン及び多価アルコールを一括反応させる方法(3)等が挙げられる。
【0019】
上記方法(1)において、多価アルコールとラクトンとを反応させ、ラクトン変性多価アルコールを合成する方法としては、例えば、攪拌機、温度計及び冷却器を備えた反応器に多価アルコールと上記ラクトンを仕込み、酸性触媒の存在下、加熱、反応させる方法が挙げられる。
上記ラクトン変性多価アルコールを合成する際に用いる酸性触媒としては、例えば、塩化第一スズ、オクチル酸第一スズ、ジブチルスズジラウレート等が好適に用いられる。また、その使用量としては、反応液の全量に対し、好ましい下限が0.005重量%、好ましい上限が0.5重量%である。
上記ラクトン変性多価アルコールを合成する際の反応条件としては、反応温度の好ましい下限は80℃、好ましい上限は200℃であり、反応時間の好ましい下限は1時間、好ましい上限は20時間である。
【0020】
上記多価アルコールとしては特に限定されないが、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び、ジトリメチロールプロパンからなる群より選択される少なくとも1種の3価以上の多価アルコール化合物が好適に用いられる。
【0021】
上記ラクトンとしては特に限定されないが、カプロラクトンが好適に用いられる。上記カプロラクトンとしては特に限定されず、例えば、ε−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、γ−カプロラクトン等が挙げられ、なかでも、ε−カプロラクトンが好適である。
また、上記カプロラクトン以外のラクトンとしては特に限定されず、例えば、δ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、β−プロピオラクトン等が挙げられる。これらのラクトンは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0022】
上記ラクトン変性多価アルコールと(メタ)アクリル酸とをエステル化反応させる方法としては、例えば、常法の脱水エステル化反応が挙げられる。
具体的には、攪拌機、温度計及び水分離器を備えた反応器にラクトン変性多価アルコール、(メタ)アクリル酸及び溶媒を仕込み、酸性触媒の存在下、加熱する。反応の進行に伴い生成する水は系外に留去する。反応終了後、反応液を水洗し、水層を分離後、減圧下で溶媒を留去する方法が挙げられる。
【0023】
上記エステル化反応における溶媒としては、水の流出を容易にし、ラクトン変性多価アルコール、(メタ)アクリル酸及び酸性触媒と反応しないものであれば特に限定されないが、生成する水と共沸混合物を形成するn−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素が好適である。
【0024】
また、上記酸性触媒としては、無機酸又は有機酸のいずれでもよく、上記無機酸の具体例としては、例えば、塩酸、硫酸及び燐酸等が挙げられる。また、上記有機酸の具体例としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びメタンスルホン酸等が挙げられる。なかでも、p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸は、腐食性が低いため特に好ましい。上記酸性触媒の添加量としては、反応液の全量に対して好ましい下限が0.5重量%、好ましい上限が5重量%である。
【0025】
また、上記エステル化反応の反応温度としては、好ましい下限は70℃、好ましい上限は150℃である。この範囲内の温度で加熱することにより、容易に脱水エステル化反応を行うことができる。より好ましい下限は80℃、より好ましい上限は120℃である。
【0026】
更に、上記(メタ)アクリル酸には既に重合禁止剤が添加されているのが普通であるが、上記エステル化反応においては、改めて重合禁止剤を添加して反応を行うことが好ましい。上記重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、p−ベンゾキノン、2,5−ジヒドロキシ−p−ベンゾキノン、4−t−ブチルカテコール、銅塩等が挙げられる。その使用量としては、通常、反応液の全量に対して好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は1重量%である。
【0027】
上記方法(2)において、(メタ)アクリル酸とラクトンとを反応させ、ラクトン変性(メタ)アクリル酸を合成する方法としては、具体的には、例えば、攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に(メタ)アクリル酸、ラクトンを仕込み、酸性触媒の存在下、加熱する。反応終了後、反応液を中和、吸着等の処理により、触媒を除去し、また、必要に応じて、水洗、蒸留等の操作を行う方法が挙げられる。
【0028】
上記ラクトン変性(メタ)アクリル酸を合成する際に使用する酸性触媒としては、無機酸又は有機酸のいずれでもよく、具体的には、上述した方法(1)のエステル化反応における酸性触媒と同様のものが挙げられ、その添加量としては、反応液の全量に対して好ましい下限が0.5重量%、好ましい上限が5重量%であり、より好ましい下限は0.8重量%、より好ましい上限は3重量%である。
【0029】
また、上記ラクトン変性(メタ)アクリル酸を合成する際の反応温度としては、反応時間の短縮と重合防止の点から、好ましい下限が60℃、好ましい上限が120℃であり、より好ましい下限は70℃、より好ましい上限は100℃である。
【0030】
上記ラクトン変性(メタ)アクリル酸を合成する際には、反応中の温度コントロールを容易にするため溶媒を使用することが好ましい。使用しうる溶媒としては、例えば、(メタ)アクリル酸、ラクトン及び酸性触媒と反応しないものであれば特に限定されないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が好ましい。
【0031】
また、上記(メタ)アクリル酸には既に重合禁止剤が添加されているのが普通であるが、上記ラクトン変性(メタ)アクリル酸を合成する際には、改めて重合禁止剤を添加して反応を行うことが好ましい。上記重合禁止剤としては、例えば、上述した方法(1)のエステル化反応における重合禁止剤と同様のものが挙げられ、その添加量としては、通常、反応液の全量に対して好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は1重量%である。
【0032】
また、上記ラクトン変性(メタ)アクリル酸とアルコールとをエステル化反応させる方法としては、例えば、常法の脱水エステル化反応が挙げられる。
具体的には、攪拌機、温度計及び水分離器を備えた反応器にラクトン変性(メタ)アクリル酸、多価アルコール及び溶媒を仕込み、酸性触媒の存在下、加熱する。反応の進行に伴い生成する水は系外に留去する。反応終了後、反応液を水洗し、水層を分離後、減圧下で溶媒を留去する方法が挙げられる。
上記方法(2)のエステル化反応における(メタ)アクリレート分子内の水酸基は、多価アルコールに対するラクトン変性(メタ)アクリル酸の仕込みモル比及び反応率を調整することにより得ることができる。
【0033】
上記方法(2)のエステル化反応において、上記多価アルコールに対するラクトン変性(メタ)アクリル酸のモル比としては、好ましい下限は0.6、好ましい上限は1.2であり、より好ましい下限は0.7、より好ましい上限は1.0である。
【0034】
上記方法(2)のエステル化反応における溶媒としては、水の留出を容易にし、ラクトン変性(メタ)アクリル酸、多価アルコール及び酸性触媒と反応しないものであれば特に限定されないが、生成する水と共沸混合物を形成するベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が好ましい。
【0035】
上記方法(2)のエステル化反応における酸性触媒としては、p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸好適である。上記酸性触媒の添加量としては、反応後の全量に対して好ましい下限は0.5重量%、好ましい上限は5重量%である。
【0036】
更に、上記方法(2)のエステル化反応の反応温度としては、好ましい下限は70℃、好ましい上限は150℃である。この範囲内の温度で加熱することにより、容易に脱水エステル化反応を行うことができる。より好ましい下限は80℃、より好ましい上限は120℃である。
【0037】
上記方法(2)のエステル化反応では、重合禁止剤を添加することが好ましく、該重合禁止剤としては、例えば、上述した方法(1)のエステル化反応における重合禁止剤と同様のものが挙げられ、その使用量としては、通常、反応液の全量に対して好ましい下限は0.01重量%であり、好ましい上限は1重量%である。
【0038】
上記方法(3)において、(メタ)アクリル酸、ラクトン及び多価アルコールを一括反応させる方法としては、例えば、常法の脱水エステル化反応が挙げられる。
具体的には、攪拌機、温度計及び水分離機を備えた反応器に(メタ)アクリル酸、ラクトン、多価アルコール及び溶媒を仕込み、酸性触媒の存在下、加熱する。反応の進行に伴い生成する水は系外に留去する。反応の終点は、副生する水の量で決定する。反応終了後、反応液を水洗し、水層を分離後、減圧下で溶媒を留去する方法が挙げられる。
【0039】
上記方法(3)における酸性触媒としては、無機酸又は有機酸のいずれでもよく、具体的には、上述した方法(1)のエステル化反応における酸性触媒と同様のものが挙げられ、その酸性触媒の添加量としては、反応液の全量に対して好ましい下限は0.5重量%、好ましい上限は5重量%である。
【0040】
上記方法(3)の反応温度としては、反応時間の短縮と重合防止の点から、好ましい下限は70℃、好ましい上限は150℃であり、より好ましい下限は100℃、より好ましい上限は120℃である。
【0041】
また、上記方法(3)では、反応中の温度コントロールを容易にするため溶媒を使用するのが好ましい。使用しうる溶媒としては、(メタ)アクリル酸、ラクトン、多価アルコール及び酸性触媒と反応しないものであれば特に限定されないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が好ましい。
【0042】
更に、上記(メタ)アクリル酸には既に重合禁止剤が添加されているのが普通であるが、上記方法(3)においては、改めて重合禁止剤を添加して反応を行うことが好ましい。上記重合禁止剤としては、例えば、上述した方法(1)のエステル化反応における重合禁止剤と同様のものが挙げられ、その使用量としては、通常、反応液の全量に対して好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は1重量%である。
【0043】
また、上記分子内に2以上の重合性不飽和結合、水酸基、並びに、オキサイドの開環体構造又は開環重合体構造を有する化合物を合成する方法としては特に限定されず、例えば、多価アルコールとオキサイドとを反応させ、オキサイド変性多価アルコールを合成した後、このオキサイド変性多価アルコールと(メタ)アクリル酸とをエステル化反応させる方法(4)等が挙げられる。
【0044】
上記方法(4)において、上記多価アルコールとオキサイドとを反応させ、オキサイド変性多価アルコールを合成する方法としては、例えば、攪拌機付きオートクレーブに上記多価アルコール、塩基性触媒を仕込み、窒素にて加圧した後、オートクレーブを加熱し、オキサイドを逐次導入しながら反応させる。反応終了後、反応液を中和、ろ過した後、減圧下で溶媒を留去する方法が挙げられる。
【0045】
上記オキサイド変性多価アルコールを合成する際における上記塩基性触媒としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等が好適であり、具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0046】
また、上記オキサイド変性多価アルコールを合成する際における溶媒としては、反応物質に不活性であれば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素等が挙げられる。
【0047】
なお、上記多価アルコールとしては特に限定されず、例えば、上述したものと同様の3価以上の多価アルコール化合物が挙げられる。
また、上記オキサイドとしては特に限定されず、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、1,3−ブチレンオキサイド、オキセタン、テトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、スチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイド、エピクロルヒドリン等が挙げられる。なかでも、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが好適に用いられる。これらのオキサイドは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0048】
上記オキサイド変性多価アルコールと(メタ)アクリル酸とをエステル化反応させる方法としては、例えば、常法の脱水エステル化反応が挙げられる。
具体的には、攪拌機、温度計及び水分離器を備えた反応器に上記オキサイド変性多価アルコール、(メタ)アクリル酸及び溶媒を仕込み、酸性触媒の存在下、加熱する。反応の進行に伴い生成する水は系外に留去する。反応終了後、反応液を水洗し、水層を分離後、減圧下で溶媒を留去する方法が挙げられる。
【0049】
上記方法(4)のエステル化反応における溶媒としては、水の留出を容易にし、(メタ)アクリル酸、オキサイド変性多価アルコール及び酸性触媒と反応しないものであれば特に限定されないが、上述した方法(1)のエステル化反応における溶媒と同様のものが好適に用いられる。
【0050】
また、上記方法(4)のエステル化反応における酸性触媒としては、上述した方法(1)エステル化反応における酸性触媒と同様のものが挙げられ、その添加量としては、反応液の全量に対して好ましい下限は0.5重量%、好ましい上限は5重量%である。
【0051】
また、上記方法(4)のエステル化反応の反応温度としては、好ましい下限は70℃、好ましい上限は150℃である。この範囲内の温度で加熱することにより、容易に脱水エステル化反応を行うことができる。より好ましい下限は80℃、より好ましい上限は120℃である。
【0052】
更に、上記方法(4)におけるエステル化反応では、重合禁止剤を添加して反応を行うことが好ましい。上記重合禁止剤としては、上述した方法(1)のエステル化反応における重合禁止剤と同様のものか挙げられ、その使用量としては、通常、反応液の全量に対して好ましい下限は0.01重量部、好ましい上限は1重量%である。
また、オキサイド変性多価アルコールを(メタ)アクリル酸クロライドのような酸ハライド類と反応させることによっても目的とする(メタ)アクリレートを得ることができる。
【0053】
上記カルボキシル基を2つ以上有するカルボン酸化合物としては、例えば、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エチルヘキサヒドロフタル酸、クロレンド酸等のジカルボン酸化合物、トリメリット酸等のトリカルボン酸化合物が挙げられる。好ましくは、ジカルボン酸化合物やトリカルボン酸化合物が用いられる。
【0054】
上記酸無水物としては特に限定されず、例えば、無水シュウ酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水酒石酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水クロレンド酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の無水カルボン酸化合物が挙げられる。
【0055】
これらカルボキシル基を2つ以上有するカルボン酸化合物及び/又は酸無水物は、上述した分子内2以上の重合性不飽和結合、1以上の水酸基、並びに、ラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造及び/又はオキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造を有する化合物の水酸基に付加反応される。
【0056】
上記カルボキシル基を2つ以上有するカルボン酸化合物を上記分子内2以上の重合性不飽和結合、1以上の水酸基、ラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造及び/又はオキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造を有する化合物の水酸基に付加反応させる反応は、例えば、常法の脱水エステル化反応が挙げられる。
具体的には、攪拌機、温度計及び水分離器を備えた反応器に上記分子内2以上の重合性不飽和結合、1以上の水酸基、ラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造及び/又はオキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造を有する化合物、カルボキシル基を2つ以上有するカルボン酸化合物と溶媒を仕込み、酸性触媒の存在下、加熱する。反応の進行に伴い生成する水は系外に留去する。反応終了後、反応液を水洗し、水層を分離後、減圧下で溶媒を留去する方法が挙げられる。
【0057】
上記カルボキシル基を2つ以上有するカルボン酸化合物を上記分子内2以上の重合性不飽和結合、1以上の水酸基、ラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造及び/又はオキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造を有する化合物の水酸基に付加するエステル化反応における溶媒としては、水の留出を容易にし、カルボキシル基を2つ以上有するカルボン酸化合物、及び、分子内2以上の重合性不飽和結合、1以上の水酸基、ラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造及び/又はオキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造を有する化合物、及び酸性触媒と反応しないものであれば特に限定されないが、上述した方法(1)のエステル化反応における溶媒と同様のものが好適に用いられる。
【0058】
また、上記カルボキシル基を2つ以上有するカルボン酸化合物と分子内2以上の重合性不飽和結合、1以上の水酸基、ラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造及び/又はオキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造を有する化合物とのエステル化反応における酸性触媒としては、上述した方法(1)エステル化反応における酸性触媒と同様のものが挙げられ、その添加量としては、反応液の全量に対して好ましい下限は0.5重量%、好ましい上限は5重量%である。
【0059】
また、上記カルボキシル基を2つ以上有するカルボン酸化合物と分子内2以上の重合性不飽和結合、1以上の水酸基、ラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造及び/又はオキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造を有する化合物とのエステル化反応の反応温度としては、好ましい下限は70℃、好ましい上限は150℃である。この範囲内の温度で加熱することにより、容易に脱水エステル化反応を行うことができる。より好ましい下限は80℃、より好ましい上限は120℃である。
更に、上記カルボキシル基を2つ以上有するカルボン酸化合物と分子内2以上の重合性不飽和結合、1以上の水酸基、ラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造及び/又はオキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造を有する化合物とのエステル化反応では、重合禁止剤を添加して反応を行うことが好ましい。上記重合禁止剤としては、上述した方法(1)のエステル化反応における重合禁止剤と同様のものか挙げられ、その使用量としては、通常、反応液の全量に対して好ましい下限は0.01重量部、好ましい上限は1重量%である。
【0060】
上記酸無水物を上記分子内2以上の重合性不飽和結合、1以上の水酸基、ラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造及び/又はオキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造を有する化合物の水酸基に付加反応させる反応は、一般的なエステル化反応であり、反応温度の好ましい下限は60℃、好ましい上限は150℃であり、反応時間の好ましい下限は1時間、好ましい上限は12時間である。
【0061】
また、上記酸無水物を上記分子内に2以上の重合性不飽和結合、1以上の水酸基、並びに、ラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造及び/又はオキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造を有する化合物の水酸基に付加反応させる際には、触媒として、例えば、トリエチルアミン等の三級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、2−エチル−4−メチルイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン等のリン化合物等を使用してもよい。
【0062】
また、重合禁止剤として、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン等のキノン誘導体、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等のフェノール誘導体等、従来公知のものを添加してもよい。
【0063】
更に、上記カルボキシル基を2つ以上有するカルボン酸化合物及び/又は酸無水物を、分子内に2以上の重合性不飽和結合、1以上の水酸基、並びに、ラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造及び/又はオキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造を有する化合物の水酸基に付加反応させる反応は、無溶媒で行ってもよいが、必要に応じて溶媒中で行ってもよい。
反応に使用できる溶媒としては、反応を阻害するものでなければ特に限定されず、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。
【0064】
本発明の重合性化合物は、更に分子内に1以上の水酸基を有してもよい。このような分子内に更に水酸基を有する本発明の重合性化合物は、例えば、上記分子内に2以上の重合性不飽和結合、1以上の水酸基、ラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造及び/又はオキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造を有する化合物を合成する際に、多価アルコールと反応させる(メタ)アクリル酸の配合比率及び/又は反応比率、及び、分子内に2以上の重合性不飽和結合、1以上の水酸基、並びに、ラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造及び/又はオキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造を有する化合物、カルボキシル基を2つ以上有するカルボン酸化合物及び/又は酸無水物の配合比率及び/又は反応比率を調整することにより得ることができる。
【0065】
本発明の重合性化合物は、分子内に、2以上の重合性不飽和結合と1以上のカルボキシル基とを有するため、熱、紫外線、放射線等により容易に重合し得る高い反応性と、アルカリ水溶液に対して高い溶解性を有する。また、分子内に、ラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造及び/又はオキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造を有するため、重合体の柔軟で可撓性に優れたものとなる。従って、本発明の重合性化合物は、例えば、アルカリ現像型レジスト材料に用いると、フォトリソグラフの手法により可撓性に優れるレジストパターンを形成することができる。
【0066】
本発明の重合性化合物は、例えば、3価以上の多価アルコール化合物と、ラクトン及び/又はオキサイドとを反応させてラクトン及び/又はオキサイド変性多価アルコール化合物を合成する工程、前記ラクトン及び/又はオキサイド変性多価アルコール化合物に(メタ)アクリル酸、並びに、カルボキシル基を2つ以上有するカルボン酸化合物及び/又は無水カルボン酸化合物を付加する工程とを有する方法により製造することができる。このような本発明の重合性化合物の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0067】
本発明の重合性化合物の製造方法において、3価以上の多価アルコール化合物、ラクトン、オキサイド化合物、並びに、カルボキシル基を2つ以上有するカルボン酸化合物及び/又は無水カルボン酸化合物としては、上記本発明の重合性化合物で説明したものと同様のものが挙げられる。
また、上記3価以上の多価アルコール化合物と、ラクトン及び/又はオキサイドとを反応させてラクトン及び/又はオキサイド変性多価アルコール化合物を合成する方法、並びに、上記ラクトン及び/又はオキサイド変性多価アルコール化合物に(メタ)アクリル酸、並びに、カルボキシル基を2つ以上有するカルボン酸化合物及び/又は無水カルボン酸化合物を付加する方法としては、上記本発明の重合性化合物で説明した方法と同様の方法が挙げられる。
【0068】
本発明の重合性化合物の製造方法は、3価以上の多価アルコール化合物と、ε−カプロラクトンとを反応させてカプロラクトン変性多価アルコール化合物を合成する工程、前記カプロラクトン変性多価アルコール化合物を、1以上の水酸基を残存するように(メタ)アクリル酸でエステル化し、更に残存する前記水酸基にカルボキシル基を2つ以上有するカルボン酸化合物及び/又は無水カルボン酸化合物を反応させてカルボキシル基を付加する工程とを有することが好ましい。得られる本発明の重合性化合物の熱、紫外線、放射線等に対する反応性及びアルカリ水溶液に対する溶解性がより優れたものとなり、かつ、得られる本発明の重合性化合物の重合体の可撓性もより優れたものとなる。
【0069】
このような本発明の重合性化合物の製造方法において、上記カプロラクトン変性多価アルコール化合物を、1以上の水酸基を残存するように(メタ)アクリル酸でエステル化するとは、カプロラクトン変性多価アルコール化合物の水酸基nモルに対して、(メタ)アクリル酸を(n−1)モル以下の比率で反応することを意味する。
【発明の効果】
【0070】
本発明の重合性化合物は、分子内に、2以上の重合性化合物と1以上のカルボキシル基とを有するため、熱、紫外線、放射線等に対する反応性、及び、アルカリ水溶液に対する溶解性が優れたものとなり、更に、分子内に、ラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造及び/又はオキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造を有するため、重合体の可撓性に優れたものとなる。
従って、本発明によると、熱、紫外線、放射線等により容易に重合し得る高い反応性を有しながら、可撓性及び柔軟性を有する重合体を形成可能で、かつ、アルカリ水溶液に対して高い溶解性を有する重合性化合物、及び、該重合性化合物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0072】
(実施例1)
原料モノマーとして、下記化学式(1)に示す構造のカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(ジペンタエリスリトール1モルに、ε−カプロラクトン12モルを反応させ、さらにアクリル酸5モルをエステル化により反応させた化合物)20重量部(10.8mmol)、酸無水物として無水コハク酸1.28重量部(10.8mmol)、重合禁止剤としてヒドロキノン0.01重量部、及び、溶媒として酢酸プロピレングリコールメチルエーテル(PGMEA)20重量部をフラスコに仕込み、窒素フローしながら加熱を行った。なお、得られた化学式(1)に示す構造のカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレートのNMR測定を行った結果を図1に示す。
【0073】
【化1】

【0074】
次に、無水コハク酸が完全に溶けたところで、触媒としてトリエチルアミン0.02重量部を添加した後、窒素雰囲気下、120℃油浴で6時間反応させた後、室温まで放冷し、下記化学式(2)に示す構造の化合物(A)を得た。なお、得られた化合物(A)のNMR測定を行った結果を図2に示す。
【化2】

【0075】
(実施例2)
原料モノマーとして、下記化学式(3)に示す構造のカプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリアクリレート(ペンタエリスリトール1モルにε−カプロラクトン8モルを反応させ、さらにアクリル酸3モルをエステル化により反応させた化合物)20重量部(16.8mmol)、酸無水物として無水コハク酸1.98重量部(16.8mmol)、重合禁止剤としてヒドロキノン0.01重量部、及び、溶媒として酢酸プロピレングリコールメチルエーテル(PGMEA)20重量部をフラスコに仕込み、窒素フローしながら加熱を行った。なお、得られた化学式(3)に示す構造のカプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリアクリレートのNMR測定を行った結果を図3に示す。
【0076】
【化3】

【0077】
次に、無水コハク酸が完全に溶けたところで、触媒としてトリエチルアミン0.02重量部を添加した後、窒素雰囲気下、120℃油浴で6時間反応させた後、室温まで放冷し、下記化学式(4)に示す構造の化合物(B)を得た。なお、得られた化合物(B)のNMR測定を行った結果を図4に示す。
【0078】
【化4】

【0079】
(実施例3)
原料モノマーとして、下記化学式(5)に示す構造のエチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート(ペンタエリスリトール1モルに、エチレンオキサイド20モルを反応させ、さらにアクリル酸3モルをエステル化により反応させた化合物)20重量部(18.3mmol)、酸無水物として無水コハク酸2.16重量部(18.3mmol)、重合禁止剤としてヒドロキノン0.01重量部、及び、溶媒として酢酸プロピレングリコールメチルエーテル(PGMEA)20重量部をフラスコに仕込み、窒素フローしながら加熱を行った。
【0080】
【化5】

【0081】
次に、無水コハク酸が完全に溶けたところで、触媒としてトリエチルアミン0.02重量部を添加した後、窒素雰囲気下、120℃油浴で6時間反応させた後、室温まで放冷し、下記化学式(6)に示す構造の化合物(C)を得た。
【0082】
【化6】

【0083】
(評価)
重合性化合物の実施例として、実施例1〜3で得られた化合物(A)〜(C)、及び、比較例1〜4として、上述の化学式(1)、(3)の化合物、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、DPHA)、並びに、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学社製、PE−3A)について、以下の方法により評価を行った。なお、以下、実施例1〜3で得られた化合物(A)〜(C)、及び、比較例1〜4である上述の化学式(1)、(3)の化合物、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬製、DPHA)、並びに、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学製、PE−3A)を、単に「重合性化合物」ともいう。各評価結果を表1に示した。
【0084】
(反応性)
重合性化合物(固形分)36重量部と、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製「イルガキュアー907」と日本化薬社製「カヤキュアーDETX−S」との1:1混合物)4重量部に、溶剤(ジエチレングリコールジメチルエーテル)を加え、固形分40wt%の硬化組成物溶液を調整した。それぞれの硬化組成物液を、0.7mm厚のガラス板上に、乾燥後の塗膜厚が5μmとなるようにスピンコートにより塗布し、100℃で3分間乾燥した後、紫外線露光機(ミカサ社製、MA−10)にて300mJ/cm(i線)の紫外線を照射した。
この塗膜について、指触により表面の硬化を確認し、重合性化合物の反応性を以下の基準により評価した。
【0085】
〇:指触による粘着感なし
×:指触による粘着感あり
【0086】
(アルカリ可溶性)
重合性化合物(固形分)1重量部を、0.04wt%KOH水溶液200重量部に溶解し、目視にて溶解状態を評価することにより、アルカリ可溶性を以下の基準により評価した。
【0087】
〇:沈殿物及び溶液の濁りなし
×:沈殿物及び溶液の濁りあり
【0088】
(可撓性)
重合性化合物(固形分)36重量部と、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製「イルガキュアー907」と日本化薬社製「カヤキュアーDETX−S」との1:1混合物)4重量部に、溶剤(ジエチレングリコールジメチルエーテル)を加え、固形分40wt%の硬化組成物溶液をそれぞれ調製した。
得られた各硬化組成物液を、180μm厚のPETフィルム上に乾燥後の塗膜厚が5μmとなるようにバーコートにより塗布し、100℃で3分間乾燥した後、紫外線露光機(ミカサ社製、MA−10)にて300mJ/cm(i線)の紫外線を照射して硬化した。
この塗膜を形成したPETフィルムを、塗膜面が外側となるように曲率半径5mmで曲げた際の塗膜のクラックの有無により硬化物の可撓性を以下の基準により評価した。
【0089】
〇:曲げによるクラックの発生なし
×:曲げによるクラックの発生あり
【0090】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、熱、紫外線、放射線等により容易に重合し得る高い反応性を有しながら、可撓性及び柔軟性を有する重合体を形成可能で、かつ、アルカリ水溶液に対して高い溶解性を有する重合性化合物、及び、該重合性化合物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】実施例1で得られた化学式(1)に示す構造のカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレートのNMRの測定結果を示すグラフである。
【図2】実施例1で合成した化学式(2)で表される構造の化合物(A)のNMRの測定結果を示すグラフである。
【図3】実施例2で得られた化学式(3)に示す構造のカプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリアクリレートのNMRの測定結果を示すグラフである。
【図4】実施例2で合成した化学式(4)で表される構造の化合物(B)のNMRの測定結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に、2以上の重合性不飽和結合、1以上のカルボキシル基、並びに、ラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造及び/又はオキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造を有することを特徴とする重合性化合物。
【請求項2】
ラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造は、カプロラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造であり、オキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造は、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造であることを特徴とする請求項1記載の重合性化合物。
【請求項3】
重合性不飽和結合は、(メタ)アクリレート基中の不飽和二重結合であることを特徴とする請求項1又は2記載の重合性化合物。
【請求項4】
分子内に2以上の重合性不飽和結合、水酸基、並びに、ラクトンの開環体構造若しくは開環重合体構造及び/又はオキサイドの開環体構造若しくは開環重合体構造を有する化合物に、カルボキシル基を2つ以上有するカルボン酸化合物及び/又は酸無水物が付加反応されてなることを特徴とする請求項1、2又は3記載の重合性化合物。
【請求項5】
3価以上の多価アルコール化合物と、ラクトン及び/又はオキサイドとを反応させてラクトン及び/又はオキサイド変性多価アルコール化合物を合成する工程、前記ラクトン及び/又はオキサイド変性多価アルコール化合物に、(メタ)アクリル酸、並びに、カルボキシル基を2つ以上有するカルボン酸化合物及び/又は無水カルボン酸化合物を付加する工程とを有することを特徴とする重合性化合物の製造方法。
【請求項6】
3価以上の多価アルコール化合物と、ε−カプロラクトンとを反応させてカプロラクトン変性多価アルコール化合物を合成する工程、前記カプロラクトン変性多価アルコール化合物を、1以上の水酸基を残存するように(メタ)アクリル酸でエステル化し、更に残存する前記水酸基にカルボキシル基を2つ以上有するカルボン酸化合物及び/又は無水カルボン酸化合物を反応させてカルボキシル基を付加する工程とを有することを特徴とする請求項5記載の重合性化合物の製造方法。
【請求項7】
3価以上の多価アルコール化合物は、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び、ジトリメチロールプロパンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項5又は6記載の重合性化合物の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−63252(P2007−63252A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149863(P2006−149863)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(000190895)新中村化学工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】