説明

重合性液晶混合物

本発明は、重合性混合物、基体に対する改良された接着性を有するポリマーフィルムの製造おけるその使用、そのようなポリマーフィルムの製造方法、そのようなポリマーフィルムを含む多層フィルム、さらに、該混合物またはフィルムの光学、電気光学、装飾または安全保障装置および用途における使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、重合性混合物、基体に対する改良された接着性を有するポリマーフィルムの製造おけるその使用、そのようなポリマーフィルムの製造方法、そのようなポリマーフィルムを含む多層フィルム、さらに、該混合物またはフィルムの光学、電気光学、装飾または安全保障装置および用途における使用に関する。
【0002】
(背景技術)
重合性液晶(LC)物質は、通常、液晶ディスプレイにおける光学フィルムの製造において使用される。これらの物質は、通常、2個以上の重合性の基を有する一定量の化合物(二官能性または多官能性)を含有し、これらを架橋させて硬質フィルムを得ている。しかしながら、これらの硬質フィルムは、重合および架橋工程中にフィルムの収縮が生じるので、製造過程において一般的に使用されるプラスチック基体表面に多くの場合容易には接着しない。従って、そのようなLC物質から製造したフィルムは、通常、剥離させて、液晶ディスプレイにおいて使用する偏光子のガラスまたはプラスチックのような他の基体に再結合させている。しかしながら、剥離および代替基体への適用の両工程は、時間的にまた材料的に費用高である。また、フィルムの損失が剥離または再ラミネーション中の劣化によって生じ得るという2つの可能性ある時点を生じ、製品の全体的収率の低下をもたらしている。
また、従来技術においては、接着層および位置合せ(アラインメント)層を使用してLCポリマーフィルムをプラスチック基体へ結合させることが報告されている。例えば、米国特許第5,631,051号は、ゼラチン接着層をトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に先ず付与することによる、TACの透明基体上への光学的補償シートの製造方法を開示している。その後、位置合せ層を、重合性基の付加により化学的に変性した変性ポリビニルアルコール(PVA)の溶液を上記ゼラチン層上にコーティーングし、溶媒を蒸発させ、重合させたPVA層の表面を一方向に擦ることによって形成させている。最後に、ディスコチックLC物質を含む光学異方性層を上記PVA層の擦った表面上にコーティーングし、重合させている。
【0003】
米国特許第5,747,121号は、重合性基の付加により化学的に変性した変性ポリビニルアルコール(PVA)の溶液を透明基体上にコーティーングし、溶媒を蒸発させ、PVA層の表面を一方向に擦ることによる光学補償シートの製造方法を開示している。次いで、ディスコチックLC物質を含む光学異方性層を上記PVA層の擦った表面上にコーティーングし、重合させている。その後、フィルムを加熱処理に供し、それによって、PVA層およびディスコチックLC層は、遊離の架橋性基を介して互いに化学的に結合していると報告している。
しかしながら、上記の方法は、多くの別々のコーティーング工程を必要としている。さらにまた、ゼラチンまたはPVAのような等方性物質を含む接着層または位置合せ層のような数種の中間層の使用は、光学フィルムの光学性能に負に影響し得る。
GB 2 398 077号は、7質量%よりも多くない2個以上の重合性基を有する架橋性化合物を含む重合性LC物質を使用することによる良好な接着性を有する架橋LCフィルムの調製方法を開示している。そのようなフィルムは、光学フィルム工業において一般的に使用されるようなプラスチック基体に良好に接着する。しかしながら、この低架橋LCフィルムは、軟質であり、機械的応力に対して感受性であり得るので、好ましくは、硬質コートによって或いは高度の架橋を含むさらなる重合LCフィルムによって被覆されている。
【0004】
(発明の開示)
(発明が解決しようとする課題)
従って、プラスチック基体に良好に接着する架橋LC物質のフィルムを提供すると共に、加工時間を節減し且つLCフィルムの加工中の劣化に基づく損失の低減を可能にし、フィルムがより硬質の表面および機械的応力または劣化に対してより高い安定性を有する有利な方法が求められている。
本発明の目的は、上述した欠点を有しない架橋LCフィルム、並びにその製造のための方法および物質を提供することである。本発明の他の目的は、以下の説明から熟練者にとっては直ちに明白となろう。
上記の目的は、上記および下記で説明するような本発明に従うフィルム、方法および物質を提供することによって解決された。
【0005】
用語の定義
用語“フィルム”は、機械的安定性を有する硬質または可撓質、自己支持性または自由起立性のフィルム、並びに支持基体上のまたは2つの基体間のコーティーングまたは層を包含する。
用語“液晶またはメソゲニック物質”または“液晶またはメソゲニック化合物”とは、1個以上の柱状、板状または円盤状のメソゲニック基、即ち、液晶(LC)相挙動を誘発させる能力を有する基を含む物質または化合物を意味する。柱状または板状の基を有するLC化合物は、当該技術においては、“カラミチック”液晶としても知られている。円盤状の基を有するLC化合物は、当該技術においては、“ディスコチック”液晶としても知られている。メソゲニック基を含む化合物または物質は、必ずしも、LC相自体を示さなければならないことはない。また、これらの物質または化合物は、他の化合物との混合物中でのみ、或いはメソゲニック化合物もしくは物質またはそれらの混合物を重合させたときにLC相挙動を示すことも可能である。
以下、簡素化のため、用語“液晶物質”は、メソゲニックおよびLC物質の双方について使用する。
1個の重合性基を有する重合性化合物は“単反応性”化合物とも称し、2個の重合性基を有する重合性化合物は“二反応性”化合物とも称し、3個以上の重合性基を有する重合性化合物は“多反応性”化合物とも称する。また、重合性基を有さない化合物は、“非反応性”化合物とも称する。多反応性化合物は、“架橋性”化合物とも称する。
用語“反応性メソゲン”(RM)は、重合性メソゲニックまたは液晶化合物を意味する。
【0006】
特に断らない限り、以下においては、重合性液晶物質中の個々の固形または液晶化合物の質量パーセント(質量%)は、当該物質中の固形または液晶化合物の総量に対する。
用語“ディレクター”とは、LC物質中のメソゲニック基の長分子軸(カラミチック化合物の場合)または短分子軸(ディスコチック化合物の場合)の好ましい配向方向を意味する。
一軸的に正の服屈折性LC物質を含むフィルムにおいては、光軸は、ディレクターによってもたらされる。
用語“コレステリック構造”または“らせん状にねじれ構造”は、ディレクターがフィルム面に平行であり且つフィルム面に垂直の軸の周りでらせん状にねじれているLC分子を含むフィルムを称する。
用語“ホメオトロピック構造”または“ホメオトロピック配向”は、光軸がフィルム面に実質的に垂直であるフィルムを称する。
用語“平面構造”または“平面配向”は、光軸がフィルム面に実質的に平行であるフィルムを称する。
用語“傾斜構造”または“傾斜配向”は、光軸がフィルム面に対する0〜90°において角度θで傾斜しているフィルムを称する。
用語“斜角構造”または“斜角配向”とは、傾斜角がフィルム面に対して垂直の方向に、好ましくは最低値から最高値まで変動する上記で定義したような傾斜配向を意味する。
【0007】
(課題を解決するための手段)
本発明は、a) >0〜12%の1種以上の架橋性化合物、好ましくは架橋性メソゲニック化合物、およびb) ≧50%の1種以上の下記の式Iの化合物を含むことを特徴とする混合物に関する:
【化1】

(式中、Pは、重合性の基であり;
Spは、スペーサー基または一重結合であり;
Aは、芳香族または脂肪族の5員または6員環、或いは2または3個の縮合芳香族または脂肪族5員または6員環を含む基であり;これらの環は、必要に応じて、N、OおよびSから選ばれた1個以上のヘテロ原子を含有し、さらに、必要に応じて、1個以上の同一または異なる基L1によって置換されており;
Zは、複数存在する場合は互いに独立して、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-S-CO-、-CO-S-、-O-CO-O-、-CO-NR0-、-NR0-CO-、-OCH2-、-CH2O-、-SCH2-、-CH2S-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-CH2CH2-、-CF2CH2-、-CH2CF2-、-CF2CF2-、-CH=CR0-、-CH=CH-、-CH=CF-、-CY1=CY1-、-C≡C-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-または一重結合であり;
Z1は、Zの意味の1つを有し;
R0およびR00は、互いに独立して、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルであり;
Y1およびY2は、互いに独立して、H、F、ClまたはCNであり;
mは、0または1であり;
L1、L2は、互いに独立して、F、Cl、Br、I、CN、NO2、P-Sp-、或いは1〜12個のC原子を有し、1個以上のH原子が必要に応じてFまたはClによって置換されているアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシであり;
r1およびr2は、互いに独立して、0、1、2、3または4である)。
【0008】
さらに、本発明は、本発明に従う化合物を架橋させることによって得られるポリマーフィルムにも関する。
さらに、本発明は、本発明に従う混合物またはフィルムの、光学、電気光学、情報記憶、装飾および安全保障用途における使用にも関する。
さらに、本発明は、本発明に従う混合物またはフィルムを含む光学部品または装置にも関する。
さらに、本発明は、本発明に従う混合物またはフィルムを含む液晶ディスプレイにも関する。
さらに、本発明は、本発明に従う混合物またはフィルムを含む、鑑定、検証もしくは安全保障マークまたはカラー画像にも関する。
さらに、本発明は、上記および下記で説明するような鑑定、検証もしくは安全保障マークまたは画像を含む価値ある物体または文書にも関する。
【0009】
(発明を実施するための最良の形態)
上記および下記の各式において、Aは、好ましくは、必要に応じて1〜4個の上述したような基L1で置換した1,4-フェニレン、またはトランス-1,4-シクロヘキシレンから選ばれる。
Z1は、好ましくは、-COO-、-OCO-、-CH2CH2-、-CH=CH-または一重結合、とりわけ好ましくは、-COO-または-OCO-から選ばれる。
Zは、好ましくは、-COO-、-OCO-、-CH2CH2-、-CH=CH-または一重結合から選ばれる。
L1およびL2は、好ましくは、F、Cl、CN、NO2、CH3、C2H5、OCH3、OC2H5、COCH3、COC2H5、COOCH3、COOC2H5、CF3、OCF3、OCHF2またはOC2F5、とりわけF、Cl、CN、CH3、C2H5、OCH3、COCH3またはOCF3、最も好ましくはF、Cl、CH3、OCH3またはCOCH3から選ばれる。
r1およびr2は、好ましくは、0、1または2である。
置換フェニレンは、好ましくは、下記:
【化2】

から選ばれ、Lは、式IのL1の意味の1つを有する。
ハロゲンは、好ましくは、FまたはClである。
Y1およびY2は、好ましくはHまたはFである。
【0010】
反応性または重合性の基Pは、ラジカルまたはイオン連鎖重合、重付加または重縮合のような重合反応に関与し得る或いは重合体同類(polymeranaloguous)反応においてポリマー主鎖に、例えば、縮合または付加によりグラフトさせ得る基である。とりわけ好ましいのは、ラジカル、カチオンまたはアニオン重合のような連鎖重合反応のための重合性基である。極めて好ましいのは、C-C二重または三重結合を含む重合性基、および、オキセタンまたはエポキシドのような、開環反応によって重合可能な重合性基である。
極めて好ましくは、重合性または反応性の基Pは、CH2=CW1-COO-、
【化3】

、CH2=CW2-(O)k1-、CH3-CH=CH-O-、(CH2=CH)2CH-OCO-、(CH2=CH-CH2)2CH-OCO-、(CH2=CH)2CH-O-、(CH2=CH-CH2)2N-、(CH2=CH-CH2)2N-CO-、HO-CW2W3-、HS-CW2W3-、HW2N-、HO-CW2W3-NH-、CH2=CW1-CO-NH-、CH2=CH-(COO)k1-Phe-(O)k2-、Phe-CH=CH-、HOOC-、-OCN-、およびW4W5W6Si-から選ばれ; W1は、H、Cl、CN、フェニルまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、とりわけ、H、ClまたはCH3であり;W2およびW3は、互いに独立して、Hまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、とりわけ、メチル、エチルまたはn-プロピルであり;W4、W5およびW6は、互いに独立して、Cl、1〜5個のC原子を有するオキサアルキルまたはオキサカルボニルアルキルであり;Pheは、1個以上の上述したような基Lによって必要に応じて置換した1,4-フェニレンであり;k1およびk2は、互いに独立して、0または1である。
とりわけ好ましくは、Pは、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、オキセタン基またはエポキシ基、とりわけ好ましくは、アクリレート基またはメタクリレート基である。
【0011】
スペーサー基Spに関しては、当業者にこの目的において知られている全ての基を使用し得る。スペーサー基Spは、好ましくは、P-SpがP-Sp'-X-であるような式Sp'-Xを有し、式中、Sp'は、1〜20個のC原子、好ましくは1〜12個のC原子を有し、必要に応じて、F、Cl、Br、IまたはCNによってモノ-またはポリ置換され、さらに、1個以上の隣接していないCH2基が、必要に応じて、各々の場合に、互いに独立して、Oおよび/またはS原子が直接互いに結合しない形で、-O-、-S-、-NH-、-NR0-、-SiR0R00-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-NR0-CO-O-、O-CO-NR0-、-NR0-CO-NR0-、-CH=CH-または-C≡C- によって置換されているアルキレンであり;Xは、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-CO-NR0-、-NR0-CO-、-NR0-CO-NR0-、-OCH2-、-CH2O-、-SCH2-、-CH2S-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-CF2CH2-、-CH2CF2-、-CF2CF2-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CR0-、-CY1=CY2-、-C≡C-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-または一重結合であり;R0およびR00は、互いに独立して、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルであり;そして、Y1およびY2は、互いに独立して、H、F、ClまたはCNである。
Xは、好ましくは、-O-、-S-、-OCH2-、-CH2O-、-SCH2-、-CH2S-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-CH2CH2-、-CF2CH2-、-CH2CF2-、-CF2CF2-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CR0-、-CY1=CY2-、-C≡C-または一重結合、とりわけ、-O-、-S-、-C≡C-、-CY1=CY2-または一重結合、極めて好ましくは、-C≡C-もしくは-CY1=CY2-のような共役系を形成し得る基または一重結合である。
典型的なSp'は、例えば、-(CH2)p-、-(CH2CH2O)q-CH2CH2-、-CH2CH2-S-CH2CH2-または-CH2CH2-NH-CH2CH2-または-(SiR0R00-O)p-であり、pは2〜12の整数であり、qは1〜3の整数であり、R0およびR00は、上記で示した意味を有する。
好ましい基Sp'は、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、へプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシブチレン、エチレン-チオエチレン、エチレン-N-メチル-イミノエチレン、1-メチルアルキレン、エテニレン、プロペニレンおよびブテニレンである。
さらに好ましいのは、Spが一重結合である化合物である。
【0012】
好ましい混合物は、下記を含む;
‐下記の式Ia:
【化4】

(式中、P、Sp、L1、L2、r1およびr2は、式Iにおいて示した意味を有する)
を有する1種以上の化合物;
‐r1およびr2が0である式IまたはIaを有する1種以上の化合物;
‐r1およびr2が1である式IまたはIaを有する1種以上の化合物;
‐r1およびr2の片方が0であり他方が1である式IまたはIaを有する1種以上の化合物;
‐下記の式II:
【化5】

(式中、PおよびSp、L1、L2、r1およびr2は、式Iにおいて定義したとおりであり;L3は、式IにおけるL1の意味の1つを有し;r3は、0、1、2、3または4であり;Z1およびZ2は、式IにおけるZの意味の1つを有する)
を有する1種以上の架橋性メソゲニック化合物;
‐r2およびr3が0であり、r1が0、1または2である式IIを有する1種以上の化合物;
‐Z1およびZ2が、-COO-、-OCO-、-CH2CH2-および一重結合から選ばれる式IIを有する1種以上の化合物;
‐下記の式IIa:
【化6】

(式中、PおよびSp、L1およびr1は、式IIにおいて定義したとおりであり、r1は、好ましくは、0または1であり;L1は、好ましくは、Cl、CH3またはOCH3である)
を有する1種以上の架橋性メソゲニック化合物;
‐下記の式III:
【化7】

(式中、PおよびSpは、式Iにおいて定義したとおりであり;Rは、1〜12個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシであり、1個以上のH原子は、必要に応じて、FまたはClによって置換されている)
を有する1種以上の化合物を含むさらなる成分c);
‐5〜12%の1種以上の架橋性化合物;
‐>7〜12%の1種以上の架橋性化合物;
‐50〜80%、好ましくは55〜75%の式IまたはIaを有する1種以上の化合物;
‐5〜50%、好ましくは10〜40%の式IIIを有する1種以上の化合物;
‐a) > 0〜12%の1種以上の架橋性化合物、
‐b) >50%の式IまたはIaを有する1種以上の化合物、
‐c) 任意成分としての式IIIを有する1種以上の化合物、
‐d) 好ましくは0.5〜8%の濃度の1種以上の光開始剤、
‐e) 好ましくは0.1〜2%の濃度の、任意成分としての1種以上の界面活性剤、
‐f) 任意成分としての1種以上の安定剤。
重合性LC混合物の透明点は、好ましくは少なくとも50℃、極めて好ましくは少なくとも60℃である。
【0013】
また、本発明は、下記の工程によるポリマーフィルムの製造方法にも関する:
‐本発明に従う混合物の層を基体上に付与する工程;
‐必要に応じて、混合物を位置合せして、メソゲニックまたはLC化合物が均一な配向を獲得するようにする工程;
‐混合物を架橋させてポリマーフィルムを形成させる工程;および、
‐必要に応じて、ポリマーフィルムを基体から剥離する工程。
本発明に従うポリマーフィルムの厚さは、好ましくは0.5〜5μm、極めて好ましくは1〜2μmである。
ポリマーフィルム中のLC分子は、好ましくは、平面配向を有する。
本発明に従うポリマーフィルムは、低量の架橋性化合物により、限定された架橋密度を有し、とりわけプラスチック基体に対し良好な接着性を示す。従って、本発明に従うポリマーフィルムは、さもないと基体に良好に付着しないその後のLC層に対する接着またはベースコーティーングとして使用し得る。同時に、このポリマーフィルムは、粘着性の低い硬めの表面を有し、従来技術による低架橋フィルムと比較して改良された耐久性を有する。
また、本発明に従うポリマーフィルムは、該フィルム上にコーティーングするLC層中のアラインメントを促進し得る。従って、本発明に従うポリマーフィルムは、LC物質用のアラインメント層として使用し得る。ポリマーフィルムの厚さを変化させることにより、その後のLC層の配向、とりわけ傾斜角に影響を与えることが可能である。例えば、平面配向を有する本発明に従うポリマーフィルムを使用してその後のLC層中に平面配向を誘発させ得る。傾斜または斜角配向を有する本発明に従うポリマーフィルムは、その後のLC層中に傾斜または斜角配向を誘発させるのに使用し得る。
【0014】
従って、本発明のもう1つの好ましい実施態様は、ベース層として本発明に従う低架橋ポリマーフィルムを含み、さらに、1層以上のさらに重合または架橋させたLCフィルムを含む多分子層に関する。上記ベースポリマーフィルムまたは追加のLCポリマーフィルムのいずれか或いは双方のフィルムが、例えば、光学層として作用し得る。
さらに、本発明は、下記の工程による多分子層の製造方法にも関する:
‐本発明に従う重合性LC混合物の層を基体上に付与する工程;
‐必要に応じて、重合性LC混合物を位置合せして、メソゲニックまたはLC化合物が均一な配向を獲得するようにする工程;
‐上記LC混合物を架橋させてポリマーフィルムを形成させる工程;
‐第2の重合性LC物質の層を上記ポリマーフィルムの自由表面上に付与する工程;
‐必要に応じて、上記第2LC物質を位置合せして、メソゲニックまたはLC化合物が均一な配向を獲得するようにする工程;および、
‐上記第2LC物質を重合させて第2のポリマーフィルムを形成させる工程。
上記第2ポリマーフィルムは、例えば、平面、傾斜または斜角配向を有する。
【0015】
本発明に従う重合性LC混合物は、1個の重合性基(単反応性)を有する少なくとも1種の重合性化合物と2個以上の重合性基(二反応性または多反応性)を有する少なくとも1種の重合性化合物とを含む。
また、上記重合性LC混合物は、1種以上のキラル化合物も含み得、該化合物は、加えるに、重合性および/またはメソゲニックまたは液晶性であり得る。
上記重合性LC混合物は、好ましくは、ネマチックもしくはスメクチック相またはコレステリック相、極めて好ましくはネマチック相を有する。
上記重合性メソゲニックまたはLC化合物は、好ましくは、モノマー、極めて好ましくはカラミチックモノマーである。これらの物質は、低減された色度のような良好な光学特性を典型的に有し、所望の配向に容易に且つ迅速に位置合せし得、このことは、大規模でのポリマーフィルムの工業的生産においてとりわけ重要である。
本発明において適する重合性メソゲニックモノ-、ジ-および多反応性化合物は、それ自体公知であり、また、例えば、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, Thieme-Verlag, Stuttgartのような標準の有機化学著作物に記載されている方法によって調製し得る。
本発明に従う重合性LC混合物は、キラルまたはアキラル重合性メソゲニックまたはLC化合物をさらに含む得る。このタイプの適切な化合物は、例えば、WO 93/22397号、EP 0 261 712号、DE 195 04 224号、WO 95/22586号、WO 97/00600号、米国特許第5,518,652号、米国特許第5,750,051号、米国特許第5,770,107号および米国特許第6,514,578.号に開示されている。
とりわけ有用で好ましい重合性メソゲニックまたはLC化合物の例を、以下に示す:








【0016】
【化8】








【0017】
【化9】








【0018】
【化10】

【0019】
上記各式において、Pは、重合性の基、例えば、アクリル、メタクリル、ビニル、ビニルオキシ、プロペニルエーテル、エポキシまたはスチレン基であり;
xおよびyは、1〜12の同一または異なる整数であり;
AおよびDは、必要に応じてL1によってモノ-、ジ-またはトリ置換されている1,4-フェニレン、または1,4-シクロへキシレンであり;
uおよびvは、互いに独立して、0または1であり;
Z0は、-COO-、-OCO-、-CH2CH2-または一重結合であり;
Yは、F、Cl、CN、NO2、OCH3、OCN、SCN、必要に応じてフッ素化された1〜4個のC原子を有するアルキルカルボニル, アルコキシカルボニル, アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ、或いは1〜4個のC原子を有するモノ-、オリゴ-またはポリフッ化アルキルまたはアルコキシであり;
R0は、1個以上、好ましくは1〜12個のC原子を有し、必要に応じてフッ素化されたアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル, アルコキシカルボニル, アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシであり;
Terは、例えば、メンチルのようなテルペノイド基であり;
Cholは、コレステリルであり;
L1およびL2は、互いに独立して、H、F、Cl、CN、或いは必要に応じてハロゲン化された1〜5個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシである。
適切なキラル化合物は、上記で示した化合物であり、さらにまた、R-またはS-811、R-またはS-1011、R-またはS-2011、R-またはS-3011、R-またはS-4011、R-またはS-5011またはCB 15 (全てドイツ国ドルトムントのMerck KGaA社から)のような商業的に入手可能なキラルドーパント類である。極めて好ましいのは、高らせん状ねじれ力(HTP)を有するキラル化合物、とりわけ、WO 98/00428号に記載されているようなソルビトール基を含む化合物、GB 2,328,207号に記載されているようなヒドロベンゾイン基を含む化合物、WO 02/94805号に記載されているようなキラルビナフチル誘導体、WO 02/34739号に記載されているようなキラルビナフトールアセタル誘導体、WO 02/06265号に記載されているようなキラルTADDOL誘導体、並びにWO 02/06196号およびWO 02/06195号に記載されているような少なくとも1個のフッ素化連結基および末端または中心キラル基を有するキラル化合物である。
【0020】
特に断らない限り、本発明に従うポリマーLCフィルムの一般的な製造は、文献から公知の標準の方法によって実施し得る。典型的には、重合性LC物質を均一な配向として配列している基体上にコーティーングまたは塗布し、そのLC相内のその場で、例えば、熱または化学線に暴露させることにより、好ましくは光重合により、極めて好ましくはUV-光重合により重合させて、LC分子のアラインメントを固定させる。必要に応じて、均一なアラインメントは、LC物質の剪断加工、基体の表面処理、またはLC物質への界面活性剤の添加のようなさらなる手段によって促進させ得る。
基体としては、例えば、ガラス、石英シートまたはプラスチックフィルムを使用し得る。また、第2の基体を重合前および/または重合中および/または重合後の上記コーティーング物質の上に置くことも可能である。基体は、重合後に剥離させても或いはさせなくてもよい。化学線によって硬化させる場合に2つの基体を使用するときには、少なくとも1つの基体は、重合に当って使用する化学線に対し透過性でなければならない。等方性または複屈折性基体を使用することもできる。基体を重合後の重合フィルムから剥離しない場合、好ましくは、等方性基体を使用する。
適切で好ましいプラスチック基体は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンナフタレート(PEN)のようなポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカーボネート(PC)またはトリアセチルセルロース(TAC)のフィルム、極めて好ましくはPETまたはTACフィルムである。服屈折性基体としては、例えば、一方向伸張性プラスチックフィルムを使用し得る。PETフィルムは、例えば、DuPont Teijin Films社から商品名 MelinexRとして商業的に入手可能である。
【0021】
重合性物質は、基体上に、スピンコーティーングまたはブレードコーティーングのような通常のコーティーング方法によって適用し得る。また、重合性物質は、例えば、スクリーンプリンティング、オフセットプリンティング、オープンリール式(reel-to-reel)プリンティング、凸版プリンティング、グラビアプリンティング、輪転グラビアプリンティング、フレキソプリンティング、凹版プリンティング、パッドプリンティング、ヒートシールプリンティング、インクジェットプリンティングまたはスタンプもしくはプリンティングプレートによるプリンティングのような熟練者にとって公知の通常のプリンティング方法によっても適用し得る。
また、重合性物質は、適切な溶媒中に溶解させることも可能である。その後、この溶液を、基体上に、例えば、スピンコーティーングもしくはプリンティングまたは他の公知の方法によってコーティーングまたはプリンティングし、溶媒を重合前に蒸発除去する。殆どの場合、混合物を加熱して溶媒の蒸発を容易にするのが適切である。溶媒としては、例えば、標準の有機溶媒を使用し得る。溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトンまたはシクロヘキサノンのようなケトン類;酢酸メチル、エチルもしくはブチル、またはアセト酢酸メチルのような酢酸エステル類;メタノール、エタノールまたはイソプロピルアルコールのようなアルコール類;トルエンまたはキシレンのような芳香族溶媒;ジ-またはトリクロロメタンのようなハロゲン化炭化水素類;PGMEA (プロピルグリコールモノメチルエーテルアセテート)、□-ブチロラクトンのようなグリコール類またはそのエステル類等がある。
【0022】
重合性LC物質の初期アラインメント(例えば、平面アラインメント)は、例えば、基体の擦り処理により、物質のコーティーング中またはコーティーング後の剪断加工により、アラインメント層の適用により、コーティーングした物質に磁場または電場を適用することにより、または物質への界面活性化合物の添加により達成し得る。アラインメント方法の考察は、例えば、I. Sageによって"Thermotropic Liquid Crystals", edited by G. W. Gray, John Wiley & Sons, 1987, pages 75-77において、また、T. UchidaおよびH. Sekiによって"Liquid Crystals - Applications and Uses Vol. 3", edited by B. Bahadur, World Scientific Publishing, Singapore 1992, pages 1-63において示されている。アラインメント物質および方法の考察は、J. CognardによってMol. Cryst. Liq. Cryst. 78, Supplement 1 (1981), pages 1-77において示されている。
とりわけ好ましいのは、LC分子の比表面アラインメントを促進させる1種以上の界面活性剤を含む重合性物質である。適切な界面活性剤は、例えば、J. Cognard, Mol.Cryst.Liq.Cryst. 78, Supplement 1, 1-77 (1981)に記載されている。平面アラインメント用のの好ましいアラインメント剤は、例えば、非イオン界面活性剤類、好ましくは、商業的に入手可能なFluorad FC-171R (3M社から.)またはZonyl FSNR (DuPont社から)のようなフッ化炭素界面活性剤、GB 2 383 040号に記載されている界面活性剤、またはEP 1 256 617号に記載されているような重合性界面活性剤である。
また、アラインメント層を基体上に適用し、このアラインメント層上に重合性物質を付与させることも可能である。適切なアラインメント層は、例えば、擦ったポリイミド或いは米国特許第5,602,661号、米国特許第5,389,698号または米国特許第6,717,644号に記載されているような光アラインメント法によって製造したアラインメント層のように、当該技術において公知である。
【0023】
重合は、例えば、重合性物質を熱または化学線に暴露させることによって行なう。化学線は、UV光線、IR光線または可視光線のような光による照射;X線またはガンマ線による照射;またはイオンまたは電子のような高エネルギー粒子による照射を意味する。好ましくは、重合は、UV照射によって実施する。化学線源としては、例えば、単一のUVランプまたは1群のUVランプを使用し得る。高ランプ出力を使用する場合は、硬化時間を短縮し得る。もう1つの可能性ある化学線源は、例えば、UV、IRまたは可視光線レーザーのようなレーザーである。
重合は、好ましくは、化学線の波長において吸収性の開始剤の存在下に実施する。例えば、UV光線によって重合させる場合、UV照射下に分解して重合反応を開始させるフリーラジカルまたはイオンを発生させる光開始剤を使用し得る。アクリレートまたはメタクリレート基を重合させるに当っては、好ましくは、ラジカル光開始剤を使用する。ビニル、エポキシドまたはオキセタン基を重合させるに当っては、好ましくは、カチオン光開始剤を使用する。また、加熱したとき分解して重合を開始ざせるフリーラジカルまたはイオンを発生させる熱重合開始剤を使用することもできる。典型的ラジカル光開始剤は、例えば、Irgacure 907、Irgacure 651、Irgacure 184、Darocure 1173またはDarocure 4205 (Ciba Geigy社)であり;典型的なカチオン光開始剤は、例えば、UVI 6974 (Union Carbide社)である。
硬化時間は、とりわけ、重合性物質の反応性、コーティーング層の厚さ、重合開始剤のタイプおよびUVランプの出力に依存する。硬化時間は、好ましくは≦5分、極めて好ましくは≦3分、最も好ましくは≦1分である。大量生産においては、≦30秒の短硬化時間が好ましい。
また、重合性物質は、重合に当って使用する放射線の波長に対して調整した吸収最高値を有する1種以上の染料、とりわけ、例えば、4,4”-アゾキシアニソールまたはTinuvinR染料 (Ciba社、スイス国ベーゼル)のようなUV染料も含み得る。
【0024】
もう1つの好ましい実施態様においては、重合性物質は、好ましくは0〜50%、極めて好ましくは0〜20%の量の1種以上の単反応性重合性非メソゲニック化合物を含む。典型的な例は、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレート類である。
また、1種以上の連鎖移動剤を重合性物質に添加してポリマーフィルムの物理的性質を改変することも可能である。とりわけ好ましいのは、チオール化合物、例えば、ドデカンチオールのような単官能性チオール類またはトリメチルプロパントリ(3-メルカプトプロピオネート)のような多官能性チオール類である。極めて好ましいのは、例えば、WO 96/12209号、WO 96/25470号または米国特許第6,420,001号に開示されているメソゲニックまたはLCチオール類である。連鎖移動剤を使用することにより、ポリマーフィルム中の遊離ポリマー鎖の長さおよび/または2つの架橋間のポリマー鎖の長さを制御し得る。連鎖移動剤の量を増大させると、ポリマーフィルム中のポリマー鎖長は低下する。
さらに、重合性物質は、例えば、触媒、増感剤、安定剤、抑制剤、連鎖移動剤、共反応性モノマー、界面活性化合物、潤滑剤、湿潤剤、分散剤、疎水化剤、接着剤、流動改良剤、消泡剤、脱気剤、希釈剤、反応性希釈剤、補助剤、着色剤、染料または顔料のような1種以上のさらなる成分も含み得る。
【0025】
本発明のポリマーフィルムは、通常のLCディスプレイ、例えば、DAP (位置合せ相の変形)、ECB (電気制御複屈折率)、CSH (カラー超ホメオトロピック)、VA (垂直位置合せ)、VANまたはVAC (垂直位置合せネマチックまたはコレステリック)、MVA (多領域垂直位置合せ)またはPVA (パターン化垂直位置合せ)モードのような垂直アラインメントを有するディスプレイ;OCB (光学補償弯曲セルまたは光学補償複屈折率)、R-OCB (反射性OCB)、HAN (ハイブリッド位置合せネマチック)またはパイ-セル (π-セル)モードのような弯曲またはハイブリッドアラインメントを有するディスプレイ;TN (捩れネマチック)、HTN (高捩れネマチック)、STN (超捩れネマチック)、AMD-TN (アクティブ・マトリックス推進TN)モードのような捩れアラインメントを有するディスプレイ; IPS (面内切替え)モードのディスプレイ;または、WO 02/93244号に記載されているディスプレイのような光学的に等方性の相内での切替えを有するディスプレイにおけるアラインメント層、位相差または補償フィルムとして使用し得る。
上記および下記において、温度は、全て摂氏で示し、パーセントは、特に断らない限り、全て質量による。以下の略号は、LC相挙動を説明するのに使用する:C、K = 結晶質;N = ネマチック;S = スメクチック;N*、Ch = キラルネマチックまたはコレステリック;I = 等方性。これらの記号における数値は、摂氏での相転移温度を示す。さらにまた、m.p.は融点を示し、c.p.は透明点(℃での)を示す。
【0026】
(実施例)
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明を限定するものではない。
実施例1
重合性LC混合物は、下記の表1に示すような種々の濃度の化合物(1)〜(8)から調製する。
(1) = 架橋性(二反応性)メソゲニック化合物
(2)、(4) = 単反応性メソゲニック化合物
(3)、(5) = 式(I)の単反応性メソゲニック化合物
(6) = Irgacure 907R (Ciba社からの光開始剤)
(7) = Irganox 1076R (Ciba社からの安定剤)
(8) = Fluorad FC171R (3M社からの界面活性剤)
【化11】

【0027】
平面アラインメントを有するLCポリマーフィルムを、これらの混合物から、各混合物を30%または50%の濃度のキシレンまたはトルエンに溶解させることによって製造する。各溶液を、ワイヤー巻き棒を使用して、基体上に棒コーティーングして約4μmの湿潤フィルム厚を付着させる(英国のRK Coating社からの棒 #0)。コーティーング後直ぐに、各サンプルを60℃で30秒間アニーリングし、中圧水銀ランプを使用して、空気環境内で20mW/cm2の出力で60秒間重合させる。基体は、LoFo Germany社からのトリアセチルセルロース(TAC)である。コーティーングする前に、TACフィルムをベルベット布で擦って重合性LC混合物のための平面アラインメントを付与する。
ポリマーフィルム表面の鉛筆硬度は、ASTM D3363-00に従って測定する。硬化度(EoC)は、反応したアクリレート基のパーセントとして定義され、重合前後のアクリレートピーク(810cm-1における)の下領域の比を取るFTIRによって測定する。TAC基体に対するポリマーフィルムの接着性は、Scotch 610テープ (3M社) ("テープ 1")およびSekisui no. 252 テープ ("テープ 2")の2つによるクロスハッチ法(25個の正方形の)を使用して測定し、少なくとも3回の試験において平均する。クロスハッチ法は、25個の正方形のグリッドを形成し、その後、これらのグリッドに接着テープを貼付け、剥がす前に押圧する装置によってフィルムを採点する(即ち、基体に切断する)ことを含む。その後、各グリッドに対して残った正方形の数を計数し、所定のフィルムに対する全体的割合を典型的に算定する。この方法は、英国規格 IS 2409:1992(E)により詳細に記載されている。
各重合性LC混合物の組成および透明点、並びにこれらの混合物から製造したポリマーフィルムP1〜P12のEoC、鉛筆硬度および接着性を下記の表1に示す。
【0028】
表1(50%溶液における)

【0029】
表1(続き)

【0030】
混合物1〜5は、低量の架橋性化合物および式Iの単反応性化合物を含む。得られたポリマーフィルムP1〜P5は、TACに対し1部は良好な接着性を有しているが、重合後に依然として粘着性表面を有している。そのようなフィルムは、例えば、光学フィルムまたは多層部品を製造するときの生産工程において行なうようなロールへの巻上げ時にそれ自体に粘着する性向を有し、従って、フィルムに劣化を生じさせる。
混合物6は、高めの量の式Iの単反応性化合物と12%よりも多い架橋性化合物を含む。得られたポリマーフィルムP6は、硬めの表面を有するが、TACに対しては低接着性を有する。
本発明に従う混合物7〜12は、12%までの架橋性化合物と高量の式Iの単反応性化合物を含む。得られたポリマーフィルムP7〜P12は、TACに対して良好なまたは十分な接着性を有し、同時に、粘着性の低い硬めの表面を有し、また、機械的応力に対し、例えば、さらに加工し或いは光学多分子層を製造するために使用するときに、より安定である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) >0〜12%の1種以上の架橋性化合物、およびb) ≧50%の1種以上の下記の式Iの化合物を含む混合物:
【化1】

(式中、Pは、重合性の基であり;
Spは、スペーサー基または一重結合であり;
Aは、芳香族または脂肪族の5員または6員環、或いは2または3個の縮合芳香族または脂肪族5員または6員環を含む基であり;これらの環は、必要に応じて、N、OおよびSから選ばれた1個以上のヘテロ原子を含有し、さらに、必要に応じて、1個以上の同一または異なる基L1によって置換されており;
Zは、複数存在する場合は互いに独立して、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-S-CO-、-CO-S-、-O-CO-O-、-CO-NR0-、-NR0-CO-、-OCH2-、-CH2O-、-SCH2-、-CH2S-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-CH2CH2-、-CF2CH2-、-CH2CF2-、-CF2CF2-、-CH=CR0-、-CH=CH-、-CH=CF-、-CY1=CY1-、-C≡C-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-または一重結合であり;
Z1は、Zの意味の1つであり;
R0およびR00は、互いに独立して、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルであり;
Y1およびY2は、互いに独立して、H、F、ClまたはCNであり;
mは、0または1であり;
L1、L2は、互いに独立して、F、Cl、Br、I、CN、NO2、P-Sp-、或いは1〜12個のC原子を有し、1個以上のH原子が必要に応じてFまたはClによって置換されているアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシであり;
r1およびr2は、互いに独立して、0、1、2、3または4である)。
【請求項2】
前記混合物が、1種以上の下記の式Iaの化合物を含むことを特徴とする、請求項1記載の混合物:
【化2】

(式中、P、Sp、L1、L2、r1およびr2は、式Iにおいて示した意味を有する)。
【請求項3】
前記混合物が、1種以上の下記の式IIの架橋性メソゲニック化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜2の少なくとも1項に記載の混合物:
【化3】

(式中、PおよびSp、L1、L2、r1およびr2は、式Iにおいて定義したとおりであり;L3は、式IにおけるL1の意味の1つを有し;r3は、0、1、2、3または4であり;Z1およびZ2は、式IにおけるZの意味の1つを有する)。
【請求項4】
前記混合物が、1種以上の式IIaの架橋性メソゲニック化合物を含むことを特徴とする、請求項3記載の混合物:
【化4】

(式中、P、Sp、L1およびr1は、式IIにおいて定義したとおりである)。
【請求項5】
前記混合物が、1種以上の下記の式IIIの化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜4の少なくとも1項に記載の混合物:
【化5】

(式中、PおよびSpは、式Iにおいて定義したとおりであり;Rは、1〜12個のC原子を有し、1個以上のH原子が必要に応じてFまたはClによって置換されているアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシである)。
【請求項6】
前記混合物が、5〜12%の1種以上の架橋性化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜5の少なくとも1項に記載の混合物。
【請求項7】
前記混合物が、50〜80%の1種以上の式IまたはIaの化合物および5〜50%の1種以上の式IIIの化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜6の少なくとも1項に記載の混合物。
【請求項8】
前記混合物が、下記をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜7の少なくとも1項に記載の混合物:
d) 1種以上の光開始剤;
e) 任意成分としての1種以上の界面活性剤;
f) 任意成分としての1種以上の安定剤。
【請求項9】
請求項1〜8の少なくとも1項に記載の混合物を架橋することによって取得可能なポリマーフィルム。
【請求項10】
請求項1〜9の少なくとも1項に記載の混合物またはフィルムの、光学、電気光学、情報記憶、装飾および安全保障用途における使用。
【請求項11】
請求項1〜10の少なくとも1項に記載の混合物またはフィルムを含む、光学部品または装置。
【請求項12】
請求項1〜11の少なくとも1項に記載の混合物またはフィルムを含む、液晶ディスプレイ。
【請求項13】
請求項1〜12の少なくとも1項に記載の混合物またはフィルムを含む、鑑定、検証もしくは安全保障マークまたはカラー画像。
【請求項14】
請求項13記載の鑑定、検証もしくは安全保障マークまたは画像を含む、価値ある物体または文書。

【公表番号】特表2008−517077(P2008−517077A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536017(P2007−536017)
【出願日】平成17年9月19日(2005.9.19)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010073
【国際公開番号】WO2006/039980
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】