説明

重心移動訓練システム

【課題】使用者ごとにそれぞれ適した重心移動訓練を実施させることができる重心移動訓練システムを提供する。
【解決手段】モード切替部52は、訓練モードと設定モードとの2つの動作モードを切り替える。表示処理部53は、訓練モードにおいて、操作図像と操作図像の追尾の対象となる目標図像とを表示面30に表示させる。操作処理部54は、訓練モードにおいて、測定装置4で測定される使用者2の重心位置に基づいて、表示面30における操作図像の表示位置を変化させる。設定モードにおいては、評価部56が設定モード中に記憶部55に記憶された重心情報から使用者2の重心位置の偏りを評価する。設定決定部57は、訓練モードにおける表示面30上の目標図像の位置を決める設定データを、訓練モードが開始する前の設定モードにおいて評価部56の評価結果に基づいて決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の重心移動の訓練に用いられる重心移動訓練システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人の重要な運動機能の1つに重心移動の機能があるが、たとえば病気や怪我により身体の動きに障害のある患者や高齢者等においては、この重心移動の機能が衰えている場合がある。重心移動の機能が不十分な人は、たとえば左右の脚に交互に体重が掛かるようにスムーズに重心移動させることができないがために、歩行などの基本的な運動にも支障がでる場合がある。そのため、重心移動をスムーズに行わせるための重心移動訓練は、たとえばリハビリテーションの分野等に広く取り入れられている。
【0003】
一方、使用者(被検者)の足元に配置され使用者の各足にかかる全荷重の中心を検出する測定装置(荷重検出手段)を備え、測定装置の出力から求まる使用者の重心位置を示すイメージを表示装置に表示させるシステムが提案されている(たとえば特許文献1参照)。特許文献1記載のシステムでは、表示装置上に重心移動の目標となる目標図像(目標イメージ)が表示され、使用者は、重心位置を示すイメージを目標図像上に重ねるように目標図像の動きに合わせて重心位置を移動させる重心移動訓練が可能になる。さらに、特許文献1記載のシステムでは、使用者の訓練目標に応じて目標図像の移動パターンが予め複数記憶されており、使用者に合わせて移動パターンを選択できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−275307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載のシステムでは、人が、予め用意された複数の移動パターンの中から目標図像の移動パターンを選択するので、不特定多数の使用者を対象とする場合などに、使用者ごとにそれぞれ適した移動パターンを個別に選択することは困難である。すなわち、同じような症状の(たとえば右脚の機能が低下した)人でも重心移動の機能の低下具合は人によって様々であり、同じような症状の使用者全てに対して画一的な重心移動訓練を実施させることは、訓練の効率の面で望ましくない。
【0006】
本発明は上記事由に鑑みて為されており、使用者ごとにそれぞれ適した重心移動訓練を実施させることができる重心移動訓練システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の重心移動訓練システムは、表示面に映像を表示する表示装置と、前記表示面と向き合う使用者の水平面内での重心位置を測定する測定装置と、前記表示装置および前記測定装置の動作を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記測定装置で測定された前記重心位置の情報を重心情報として取得する情報取得部と、訓練モードと設定モードとの2つの動作モードを切り替えるモード切替部と、前記訓練モードにおいて操作図像および当該操作図像による追尾の対象となる目標図像を前記表示装置に表示させる表示処理部と、前記訓練モードにおいて前記重心情報に応じて前記表示面内での前記操作図像の位置を変化させる操作処理部と、前記重心情報を記憶する記憶部と、前記設定モードにおいて前記記憶部に記憶された前記重心情報から前記使用者の前記重心位置の偏りを評価する評価部と、前記訓練モードにおける前記表示面上の前記目標図像の位置を決めている設定データを、前記評価部で評価された前記重心位置の偏りに基づいて決定する設定決定部とを有することを特徴とする。
【0008】
この重心移動訓練システムにおいて、前記制御装置は、前記訓練モードにおいて前記表示面における前記操作図像の動きを評価する修正評価部をさらに有し、前記設定決定部は、前記訓練モードにおいて前記修正評価部の評価結果に基づいて前記設定データを修正することが望ましい。
【0009】
この重心移動訓練システムにおいて、表示面に対して前記使用者側に配置され、前記表示面に表示される映像を透過させるとともに前記使用者の鏡像を映すハーフミラーをさらに備えることがより望ましい。
【0010】
この重心移動訓練システムにおいて、前記使用者の映像を撮像する撮像装置をさらに備え、前記表示処理部は、前記撮像装置で撮像された前記使用者の映像を、前記操作図像および前記目標図像と共に前記表示装置に表示させることがより望ましい。
【0011】
この重心移動訓練システムにおいて、前記表示処理部は、前記設定モードにおいては前記評価部での評価に用いられる前記重心情報を前記表示装置に表示させることがより望ましい。
【0012】
この重心移動訓練システムにおいて、前記制御装置は、前記訓練モードの前後の前記設定モードにおける前記評価部の評価結果を比較する比較部と、前記比較部の比較結果を提示する提示部とをさらに有することがより望ましい。
【0013】
この重心移動訓練システムにおいて、前記比較部は比較結果を数値化し、前記提示部は、前記訓練モード後の前記設定モードにおいて前記比較部の比較結果を前記表示処理部に表示させることがより望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、訓練モードにおける表示面上の目標図像の位置を決めている設定データが、評価部で評価された重心位置の偏りに基づいて決定されるので、使用者ごとにそれぞれ適した重心移動訓練を実施させることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1の重心移動訓練システムのシステム構成を示す概略図である。
【図2】同上の表示装置の表示例を示す説明図である。
【図3】同上の動作の説明図である。
【図4】実施形態2の重心移動訓練システムの動作の説明図である。
【図5】実施形態4の重心移動訓練システムのシステム構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の実施形態では、病気や怪我により重心移動の機能が衰えた患者を対象として、重心移動をスムーズに行わせるためのリハビリテーションに用いられる重心移動訓練システムについて説明する。ただし、以下の実施形態の記載は重心移動訓練システムの用途を限定する趣旨ではなく、たとえば健常者が日頃の運動や、各種のスポーツに必要な重心移動の感覚を習得するためのトレーニングなどに重心移動訓練システムを用いてもよい。
【0017】
(実施形態1)
本実施形態の重心移動訓練システム1は、図1に示すように、使用者2の正面に配置され表示面30に映像を映す表示装置3と、水平面内での使用者2の重心位置を測定する測定装置4と、表示装置3および測定装置4の動作を制御する制御装置5とを備えている。表示装置3および測定装置4は、いずれも制御装置5に対して接続されている。本実施形態では、使用者2は測定装置4上に立った姿勢(立位)で重心移動訓練システム1を使用する。
【0018】
また、この重心移動訓練システム1は、表示装置3の使用者2と向き合う表示面30の手前(使用者2側)に配置されたハーフミラー6をさらに備えている。ハーフミラー6は、その前面(鏡面)が使用者2と向き合うように、表示装置3と使用者2との間に垂直に立てて配置されており、背後の表示装置3に表示された映像を使用者2側に透過させる。
【0019】
表示装置3は、ここではプラズマディスプレイからなり、ハーフミラー6の背面側に取り付けられている。図1では、ハーフミラー6を支持する構造や、表示装置3の取付構造の図示を省略しているが、適宜選択される構造で、ハーフミラー6および表示装置3は十分な強度をもって定位置に固定される。なお、表示装置3はプラズマディスプレイに限らず、液晶ディスプレイ等、他のディスプレイ装置であってもよい。また、ディスプレイ装置の代わりに、ハーフミラー6の背面に貼り付けられる拡散シート(図示せず)と、ハーフミラー6の後方(使用者2とは反対側)から拡散シートに映像を投影する投影装置(図示せず)とで構成される表示装置を用いることも考えられる。
【0020】
本実施形態においては、ハーフミラー6は、前面が縦長の長方形状であって、使用者2の全身を映す姿見として機能する大きさに形成されている。ハーフミラー6の透過率は、ハーフミラー6を鏡として利用でき、且つ使用者2がハーフミラー6を通して表示装置3に表示される映像を視認できるように設計される。ハーフミラー6は、ガラスや合成樹脂の透明な基材の少なくとも一表面に、金属膜などによる鏡面コーティングが施されることにより形成されている。
【0021】
ここでは、表示装置3は、ハーフミラー6の背面に表示面30が接するように配置されている。表示装置3の高さ位置は、下端縁がハーフミラー6の下端から所定の間隔を空けて位置し、且つ上端縁がハーフミラー6の上端から所定の間隔を空けて位置するように決められている。ここで、表示装置3はハーフミラー6の中心よりもやや上方寄りに配置されている。また、表示装置3に表示される映像をハーフミラー6の前面に高輝度で表示できるよう、ハーフミラー6と表示面30との間には、屈折率を調節して反射を防止する透明材料が充填されていてもよい。
【0022】
上記構成によれば、ハーフミラー6の前面は、鏡として使用者2の鏡像を映し出すとともに、表示装置3の表示面30に表示された映像を映し出すように機能する。つまり、ハーフミラー6の正面に使用者2が居れば、使用者2の鏡像がハーフミラー6の前面に映るとともに、表示装置3に表示される映像がハーフミラー6を透過してハーフミラー6の前面に映し出されることになる。詳しくは後述するが、表示装置3に表示される映像は制御装置5によって生成される。
【0023】
測定装置4は、ハーフミラー6の手前の床であって使用者2の足元に配置されている。この測定装置4は、使用者2が搭乗する搭乗台40と、搭乗台40上に立つ使用者2から搭乗台40に作用する荷重を測定する複数個の荷重センサ(図示せず)とを具備している。荷重センサは、水平面内で一直線上に並ばないように3個以上設けられており、互いにできるだけ離れるように水平面内で二次元配置されている。
【0024】
この測定装置4を用いると、各荷重センサにそれぞれ作用する荷重を求めることにより、搭乗台40上に立つ使用者2の水平面内での重心位置を測定することができる。つまり、使用者2の身体が前後方向あるいは左右方向に傾いていなければ、前後方向と左右方向とのそれぞれにおいて荷重の比率が等しくなり、使用者2の重心位置は搭乗台40の中心に位置する。
【0025】
測定装置4は、重心位置が搭乗台40の中心に位置する状態を基準として、前後方向と左右方向とのそれぞれについて荷重の偏りをリアルタイムで測定し、この偏りに応じて水平面内での重心位置を求める。本実施形態では、測定装置4は、ハーフミラー6に向き合った状態にある使用者2の左右方向をX軸、前後方向をY軸とし、搭乗台40の中心位置を(X,Y)=(0,0)とする二次元直交座標系における使用者2の重心の座標位置を、重心位置として求める。
【0026】
このように、測定装置4は水平面内での使用者2の重心位置をリアルタイムで測定し、測定結果(重心位置)を制御装置5に対して出力する。ただし、制御装置5に出力される測定装置4の測定結果は水平面内での使用者2の重心位置を特定できる値であればよく、測定装置4はたとえば各荷重センサにそれぞれ作用する荷重を制御装置5に出力する構成であってもよい。この場合、制御装置5では、測定装置4の測定結果を用いて前後方向と左右方向とのそれぞれについて荷重の比率が算出され、水平面内での使用者2の重心位置が算出される。
【0027】
ところで、本実施形態の重心移動訓練システム1は、測定装置4から重心位置の情報を重心情報として取得する情報取得部51と、制御装置5の動作モードを切り替えるモード切替部52とを制御装置5に有している。さらに、制御装置5は、操作図像および目標図像を表示装置3に表示させる表示処理部53と、使用者2の重心位置に基づいて表示面30内での操作図像の位置を変化させる操作処理部54と、記憶部55とを有している。
【0028】
モード切替部52は、制御装置5の入力インタフェース(図示せず)に対し所定の操作が為されることにより、訓練モードと設定モードとの2つの動作モードを切り替える。つまり、使用者2あるいは療法士等が制御装置5の入力インタフェースを操作することにより、制御装置5の動作モードは訓練モードと設定モードとの間で切り替わることになる。詳しくは後述するが、訓練モードは実際に使用者2に重心移動訓練を行わせる動作モードであって、設定モードは訓練モードで使用者2に実施させる重心移動訓練の設定等を行う動作モードである。
【0029】
表示処理部53は、訓練モードにおいて、操作図像と目標図像とを表示面30上に同時に表示させる。ここでいう操作図像および目標図像は、いずれも表示面30上に占める面積が表示面30全域に比べて十分に小さく、表示面30内を移動可能に表示される図像である。本実施形態では、図2に例示するように金魚を表す画像を目標図像31とし、金魚をすくうポイ(すくい網)を表す画像を操作図像32とする。図2(a)の例では、表示面30上に6匹の金魚の画像が表示されているが、これらの金魚の画像の各々が目標図像31である。目標図像31は金魚の静止画ではなく、水中を泳いでいるように揺らぐ金魚の動画からなる。
【0030】
操作処理部54は、訓練モードにおいて、測定装置4で測定される水平面内での使用者2の重心位置に基づいて、表示面30における操作図像32の表示位置を変化させる。具体的には、操作処理部54は、情報取得部51で取得された使用者2の重心の座標位置(X,Y)を座標変換により表示面30上の位置に変換して求まる位置を、操作図像32の位置とする。操作処理部54は、使用者2の重心位置が略リアルタイムで表示面30上の操作図像32の位置に反映されるように、所定の周期(たとえば1/30秒)で情報取得部51から重心情報を取得し操作図像32の位置を決定する。
【0031】
ここでは、操作処理部54は、使用者2の左右が表示面30の左右に対応し、使用者2の前方が表示面30の上方、使用者2の後方が表示面30の下方に対応するように座標変換する。そのため、たとえば使用者2が身体を右側に傾けて重心位置を右に移動させると、重心移動に合わせて表示面30上の操作図像32は右に移動し、使用者2が身体を前方に傾けて重心位置を前に移動させると、表示面30上の操作図像32は上に移動する。さらには、使用者2の重心位置の移動速度、加速度等も操作図像32の移動に反映される。
【0032】
目標図像31は、操作図像32による追尾の対象となる図像である。目標図像31は、表示面30上の定位置に表示される図像であってもよいが、本実施形態では、表示処理部53は、目標図像31が表示面30内を移動するように表示装置3に目標図像31を表示させている。これにより、制御装置5が訓練モードで動作中においては、使用者2は、自身の重心移動によって表示面30上の操作図像32を操作して、表示面30上を動き回る目標図像31を操作図像32にて追尾することができる。
【0033】
ここで、記憶部55には、操作図像32および目標図像31の内容を表す画像データ(本実施形態では金魚とポイの画像データ)と、表示面30上での目標図像31の位置および動きを決める設定データとが記憶されている。目標図像31の移動パターンには、ランダムに動き回るパターンと、ある規則性を持ったパターンとがあり、表示処理部53がいずれのパターンを選択するかについても設定データによって決定される。さらに、設定データには、目標図像31の個数、移動速度、加速度等を決めるデータが含まれる。
【0034】
操作図像32および目標図像31は、表示面30における互いの位置が重なるとそれぞれ所定の処理を実行するように、当該処理と関連付けられている。すなわち、表示処理部53は、操作図像32および目標図像31にそれぞれ実行すべき処理を関連付けておくことにより、操作図像32と目標図像31との位置が重なったときに、各図像に関連付けた処理を実行させることができる。
【0035】
具体的には、目標図像31には、操作図像32と位置が重なったときには金魚が操作図像32中のポイにすくわれるようなアニメーションを伴って金魚の絵柄が消滅する処理が関連付けられている。また、操作図像32には、目標図像31と位置が重なったときにはポイで目標図像31中の金魚をすくうようなアニメーションを実行する処理が関連付けられている。
【0036】
つまり、制御装置5が訓練モードで動作中においては、使用者2が操作図像32を操作して目標図像31の金魚をすくう度に、表示される金魚(目標図像31)の数は減っていく。たとえば図2(a)のように6匹の金魚が表示されている状態で使用者2が金魚をすくうと、図2(b)のように金魚は5匹になる。さらに、操作図像32には、目標図像31と位置が重なったときに、たとえば金魚をすくう際の水がはねる音など絵柄の変化に対応した音を制御装置5のスピーカ(図示せず)から発生させるような処理が関連付けられていてもよい。
【0037】
ここでは、表示処理部53は、目標図像31の代表点(たとえば図像の中心)の座標位置から所定範囲に設定される判定領域内に操作図像32の代表点が位置するときに、両図像の位置が重なったと判断する。ただし、表示処理部53は、操作図像32の代表点が判定領域に入ってすぐに両図像が重なったと判断するのではなく、操作図像32の代表点が判定領域に位置する状態でタイマ(図示せず)にて計時される所定時間が経過して初めて両図像が重なったと判断する。
【0038】
これにより、使用者2は、目標図像31にゆっくり近づくように操作図像32を操作した場合のみ、目標図像31の金魚をすくうことができる。さらに、操作図像32には、操作図像32の代表点が判定領域を通過した場合、つまり操作図像32中のポイが目標図像31中の金魚を行き過ぎたような場合に、ポイが破れるような処理が関連付けられていてもよい。
【0039】
ここにおいて、表示処理部53が目標図像31および操作図像32を表示装置3に表示させて使用者2に重心移動訓練を行わせる訓練モードは、上述したように制御装置5の入力インタフェースに対し訓練を開始する所定の操作が為されることにより開始する。つまり制御装置5の動作モードがモード切替部52にて設定モードから訓練モードに切り替えられることによって、使用者2の重心移動訓練が開始する。この訓練モードは、表示された全ての金魚がすくわれる他、訓練の開始から予め定められた制限時間が経過した時点で終了してもよいし、時間制限を設けずに制御装置5の入力インタフェースに対し訓練を終了する所定の操作が為されることによって終了してもよい。
【0040】
表示処理部53は、訓練モードが終了する際に、使用者2が制限時間内にすくった金魚の数や、表示された全ての金魚をすくうのに要した時間などを得点として表示装置3に表示させる。つまり、使用者2が訓練モードにて行った重心移動訓練の結果は、モード切替部52が訓練モードを終了して設定モードに切り替える際に、表示装置3に表示されることになる。なお、図2の例では、表示面30の下部に表示された戻るボタン33に対して、操作図像32が所定時間以上に亘って重ねられることにより、制御装置5は訓練モードを強制的に終了する。
【0041】
上述した重心移動訓練システム1を用いれば、訓練モードにて、使用者2は、ハーフミラー6に映る自身の鏡像を見ながら、重心移動を行うことによって表示面30上の操作図像32を操作し、目標図像31中の金魚を操作図像32中のポイですくうことができる。このとき、使用者2は、表示面30上を動き回る目標図像31を操作図像32にて的確に捕らえるべく、目標図像31の動きに合わせて重心移動を行うことになる。したがって、使用者2は、高得点を目指すことにより、特に意識しなくても身体の重心位置を動かすことになるので、ゲームを楽しんでいるような感覚で身体を動かすことにより十分な重心移動訓練の効果を享受できる。
【0042】
ところで、上記構成の重心移動訓練システム1では、訓練モードにおける表示面30上の目標図像31の位置および動きは、記憶部55に記憶されている設定データによって決まる。ただし、重心移動訓練システム1が不特定多数の使用者2を対象としている場合などに、使用者2あるいは療法士等が使用者2ごとにそれぞれ適した設定データを作成し、または複数の設定データの中から選択することは困難である。
【0043】
そこで、本実施形態の重心移動訓練システム1では、制御装置5は、設定モードにおいて情報取得部51にて随時取得される重心情報を評価する評価部56と、評価部56での評価結果に基づいて設定データを自動的に決定する設定決定部57とをさらに備えている。
【0044】
すなわち、設定モードにおいては、記憶部55が情報取得部51にて随時取得される重心情報を記憶し、評価部56が設定モード中に記憶部55に記憶された重心情報を用いて使用者2の重心位置の偏りを評価する。この評価結果は設定決定部57に入力され、設定データの決定に用いられる。設定決定部57は、訓練モードにおける表示面30上の目標図像31の位置と動きとを決める設定データを、訓練モードが開始する前の設定モードにおいて評価部56の評価結果(重心位置の偏り)に基づいて決定し、記憶部55に記憶する。
【0045】
具体的に説明すると、設定モードにおいては、評価部56での評価対象となる重心情報を情報取得部51に与えるため、療法士等は、使用者2に対して、搭乗台40上に立った状態で前後左右に自由に重心を移動させるように指示を出す。ここで、情報取得部51は所定の周期(たとえば1/30秒)で重心情報を取得し、記憶部55に時系列に記憶する。
【0046】
これにより、設定モードにおいては、使用者2が可能な範囲で自由に身体を前後左右に傾けて重心を移動させた際の、重心位置の軌跡が記憶部55に記憶されることになる。この重心位置の軌跡は、使用者2の重心移動の機能や癖を反映する。たとえば、右方および後方への重心移動を苦手とする使用者2の場合、設定モードで得られる重心位置の軌跡は、図3に示すように搭乗台40の中心位置41に対して左前方に偏った軌跡42となる。図3では、搭乗台40上面における重心位置の軌跡42を模式的に表している。設定モードでこのような重心位置が得られた場合、評価部56は、使用者2の重心位置が左前方に偏っている、言い換えれば右方および後方への重心移動を使用者2が苦手にしていると評価する。
【0047】
この評価結果(重心位置の偏り)に基づいて、設定決定部57は、使用者2が苦手にしていると推定される向きへの重心移動を重点的に行わせるように、目標図像31の位置および動きを決める設定データを決定する。要するに、図3のような軌跡42が設定モードで得られた場合、設定決定部57は、訓練モードにおいて、表示面30の右方あるいは下方に偏って目標図像31が表示されるように、設定データを決定する。このとき、設定決定部57は、予め記憶部55に記憶された基本となるデータを評価結果に基づいて修正して設定データを決定してもよいし、予め記憶部55に記憶された複数の設定データの候補の中から評価結果に基づいて一の設定データを選択してもよい。
【0048】
あるいは、設定決定部57は、評価部56で評価された使用者2の重心位置の偏りに基づいて、使用者2が苦手にしていると推定される向きへの重心移動を控えるように、設定データを決定してもよい。この場合、使用者2は、無理な重心移動を強いられることがなくなり、使用者2に過度の負担が掛かることを回避できる。
【0049】
また、評価部56は、使用者2の重心の移動速度や重心の移動範囲の広さなどを評価してもよく、この場合、設定決定部57は、評価部56の評価結果に応じて目標図像31の移動速度や移動範囲が制限されるように設定データを決定してもよい。他にも、設定決定部57は、評価部56の評価結果に応じて目標図像31の移動パターンの難易度(目標図像31の個数、加速度等)が決まるように設定データを決定してもよい。
【0050】
さらに、表示処理部53は、設定モードにおいては、評価部56での評価に用いられる重心情報を表示装置3に表示させるように構成されていてもよい。この場合、表示処理部53は、設定モードにおいて、たとえば重心の座標位置を座標変換により表示面30上の位置に変換して求まる位置に図像を表示したり、図3のような重心位置の軌跡を表示面30に表示したりする。
【0051】
これにより、使用者2は設定モードにおいて表示装置3に表示された重心情報を確認しながら重心移動を行うことができ、可能な範囲でむらなく重心を移動させることが可能となる。したがって、使用者2は、たとえば右方への重心移動が特に不得意でもないのに、重心位置の軌跡が左方に偏ってしまうような事態を回避でき、評価部56での評価の精度が高くなる。
【0052】
このように、本実施形態では訓練モード前の設定モードにおいて、使用者2が自由に重心移動させた際の重心情報の評価結果に基づいて設定モードが決定され、決定された設定モードが記憶部55に記憶されることになる。制御装置5の動作モードが訓練モードに切り替わった後は、表示処理部53が記憶部55に記憶された設定データを用いて目標図像31を表示面30上に表示させることにより、設定決定部57にて決定された設定データに従って目標図像31が表示される。
【0053】
また、本実施形態においては、制御装置5は、訓練モードにおいて表示面30に表示される操作図像32の動きを評価する修正評価部58をさらに有し、設定決定部57は、訓練モードでの動作中に修正評価部58の評価結果に基づいて設定データを随時修正する。すなわち、設定決定部57は、訓練モード開始時点における目標図像31の位置および動きを決める設定データを設定モードにおいて予め決定するものの、訓練モード開始後の使用者2の動きに応じて、訓練モード中に設定データを随時修正することが可能である。なお、修正評価部58は訓練モード中に一定時間間隔で操作図像32の動きを評価する。
【0054】
ここでは、図3のような軌跡42が設定モードで得られたために、設定モードにおいて、設定決定部57が、表示面30の右方あるいは下方に偏って目標図像31が表示されるように設定データを決定した場合を例に、修正評価部58の機能を説明する。
【0055】
この場合、訓練モードにおいて、操作図像32が右方および下方への目標図像31の動きを殆ど追従できていなければ、修正評価部58は、右方および後方への重心移動ができていないと評価する。この評価結果を受けて、設定決定部57は、右方および下方への目標図像31の移動を減らしたり、あるいは目標図像31の移動速度や移動範囲を制限したり、目標図像31の移動パターンの難易度を下げたりするように設定データを修正する。その結果、使用者2は無理な重心移動をしなくても操作図像32で目標図像31を追従することが可能となり、使用者2に過度の負担が掛かることを回避できる。
【0056】
一方、訓練モードにおいて、操作図像32が右方および下方への目標図像31の動きを十分に追従できていれば、修正評価部58は、右方および後方への重心移動ができていると評価する。この評価結果を受けて、設定決定部57は、右方および下方への目標図像31の移動を増やしたり、あるいは目標図像31の移動速度や移動範囲の制限を緩めたり、目標図像31の移動パターンの難易度を上げたりするように設定データを修正する。その結果、使用者2を重心移動の機能の回復度(あるいは成長度)に合わせて重心移動訓練の難易度が向上することとなり、重心移動訓練の効率が向上することになる。
【0057】
さらに、重心移動訓練システム1は、特定の複数の使用者2に交代で使用されるような場合には、記憶部55は、設定データを記憶する記憶領域を使用者2ごとに有していてもよい。これにより、設定決定部57にて設定データが既に決定(あるいは修正)された使用者2が再度訓練を行う際には、制御装置5はこの使用者2の設定データを記憶部55から読み出すことにより、設定モードを飛ばして訓練モードを開始することも可能になる。
【0058】
以上説明した本実施形態の重心移動訓練システム1によれば、訓練モードでの表示面30上の目標図像31の位置が、訓練モード前の設定モードに得られた重心位置の偏りに基づいて決定されるので、使用者2ごとに適した重心移動訓練を実施できる。すなわち、重心移動訓練システム1は、実際に訓練を開始する前に使用者2の重心移動の機能や癖(苦手としている向きなど)を評価し、その評価結果に基づいて訓練モードにおける目標図像31の位置を自動的に決定している。
【0059】
したがって、この重心移動訓練システム1は、不特定多数の使用者2を対象としている場合などでも、使用者2ごとにそれぞれ適した目標図像31の位置を設定し、使用者2ごとに不得意な動きを個別に強化することができる。結果的に、各使用者2に適した個別の重心移動訓練を実施させることができ、同じような症状の使用者2全てに対して画一的な重心移動訓練を実施させる場合に比べて、訓練の効率がよくなるという利点がある。
【0060】
しかも、設定決定部57は、訓練モードでの動作中に修正評価部58の評価結果に基づいて設定データを随時修正するので、使用者2が訓練を実施中であっても、この使用者2により適した訓練となるように目標図像31の位置および動きを修正することができる。したがって、使用者2に過度の負担が掛かることを回避でき、また、重心移動訓練の効率向上を図ることができる。
【0061】
また、本実施形態の重心移動訓練システム1では、使用者2は、ハーフミラー6に映る自身の鏡像を見ながら運動することができるので、自身がどのような姿勢のときにどのように重心が移動するのかということを視覚的に学習することができる。そのため、使用者2は、訓練を行う中で、たとえば右脚に荷重を掛ける場合には身体をどのように傾ければよいか等、重心移動に必要な身体の動きを習得することができるという利点がある。
【0062】
つまり、使用者2は、自身の姿勢を常に確認しながら重心移動訓練を行うことができ、正しい姿勢を確認しながら重心移動を行うことができる。たとえば、使用者2は、ハーフミラー6に映る自身の鏡像によって、左右の肩部の位置が水平であることを確認しながら、重心移動を行うことができる。この場合、使用者2は、闇雲に体重を移動させて結果的に重心が移動すればいいというのではなく、左右の肩部の位置を水平にして正しい姿勢を保ったままで、重心移動を行うことが可能になる。このように自身の姿勢を確認しながら重心移動を行うことは、たとえば真っ直ぐに立つことすら困難な患者にとっては、特に有用である。
【0063】
ここで、使用者2を前方から撮像する撮像装置(図示せず)を設け、撮像装置で撮像された使用者2の全身の映像を制御装置5で左右反転させ、反転映像を表示装置3に表示させる構成であっても、使用者2に自身の全身像を見せることは可能である。ただし、表示装置3が表示する映像は、時間遅れや画像解像度、被写体の照明状態、撮像装置の位置の違いによる使用者2の視点とのずれ、レンズの焦点距離等により、使用者2の動き等をリアルタイムで完全に反映することは困難である。そのため、ハーフミラー6を設けずに、表示装置3に表示される反転映像のみを使用者2に見せるようにした場合、使用者2は多少の違和感を感じることがある。
【0064】
これに対して、本実施形態ではハーフミラー6が設けられ、ハーフミラー6の前面に映る鏡像は、光学的に使用者2の姿を忠実に反映しているので、使用者2の動き等をリアルタイムで略完全に表すことができる。
【0065】
しかも、使用者2は、眼の焦点距離(映像の焦点距離:鏡像の焦点距離=1:2)を切り替えることにより、ハーフミラー6に映った鏡像と、表示装置3に表示される映像とのどちらかに注目することができる。そこで、使用者2は、表示装置3に表示される映像(目標図像31および操作図像32)に注目しながら、鏡像についても視界に入るような状態で重心移動訓練システム1を使用することが可能である。
【0066】
また、使用者2から見て、ハーフミラー6に映る鏡像と表示装置3に表示される映像との見え方に大差が生じないように、重心移動訓練システム1の使用時には、表示装置3の輝度や室内の明るさが適宜調節されていることが望ましい。
【0067】
なお、本実施形態では、目標図像31を金魚、操作図像32をポイの画像として、金魚すくいをイメージした訓練を行う例を示したが、これらの図像は一例に過ぎず、たとえば目標図像31を蝿、操作図像32を蝿たたきの画像としてもよい。
【0068】
また、操作処理部54は、測定装置4で測定される重心位置に基づいて表示面30内での操作図像32の位置を変化させる構成であればよく、上述したように座標変換によって求まる位置に操作図像32を表示させる構成に限らない。たとえば、操作処理部54は、搭乗台40の中心と重心位置との相対的な位置関係に応じて、操作図像32の位置を変化させてもよい。すなわち、使用者2が身体を右側に傾けて搭乗台40の中心から重心位置が右にずれると、操作処理部54は、たとえば搭乗台40の中心位置からの重心位置のずれ量に応じた加速度で表示面30中の操作図像32を右に移動させる構成であってもよい。
【0069】
(実施形態2)
本実施形態の重心移動訓練システム1は、制御装置5が、訓練モードの前後の設定モードでの評価部56の評価結果を比較する比較部(図示せず)と、比較部の比較結果を提示する提示部(図示せず)とを有する点が実施形態1の重心移動訓練システム1と相違する。
【0070】
すなわち、本実施形態では、モード切替部52は、制御装置5の動作モードを設定モードから訓練モードに切り替えた後、訓練モードが終了すると再び設定モードに切り替える。設定モードでは、実施形態1で説明したように評価部56での評価対象となる重心情報を情報取得部51に与えるため、療法士等は、使用者2に対して、搭乗台40上に立った状態で前後左右に自由に重心を移動させるように指示を出す。そのため、設定モードにおいては、使用者2が可能な範囲で自由に身体を前後左右に傾けて重心を移動させた際の、重心位置の軌跡が記憶部55に記憶されることになる。評価部56は、訓練モード前の設定モードだけでなく、訓練モード後の設定モードにおいても、設定モードでの動作中に得られた重心情報を評価する。
【0071】
たとえば、訓練モード前の設定モードにおいて、図3に示すように搭乗台40の中心位置41に対して左前方に偏った重心位置の軌跡42が得られた場合、評価部56は、使用者2の重心移動が左前方に偏っていると評価する。これに対し、訓練モード後の設定モードにおいて、図4に示すように搭乗台40の中心位置41に対してあまり大きな偏りのない重心位置の軌跡42が得られた場合、評価部56は、重心移動のバランスが取れていると評価する。図4では、搭乗台40上面における重心位置の軌跡42を模式的に表している。また、評価部56では、左右、前後それぞれについて、たとえば「左右バランス:80点」、「前後バランス:72点」というように、どの程度バランスよく重心移動できているかを数値化した評価を行ってもよい。これら評価部56での評価結果は記憶部55に記憶される。
【0072】
比較部は、訓練モード後の設定モードにおいて、訓練モードの前後の各設定モードで得られた評価部56の評価結果を記憶部55から読み出し、両評価結果を比較する。ここで、比較部は、訓練モード前の評価結果に対する訓練モード後の評価結果の相対的な比較結果を定量的に求めて数値化してもよいし、あるいは定性的に求めてもよい。
【0073】
提示部は、比較部の比較結果を、訓練モード後の設定モードにおいて使用者2に提示する。具体的には、提示部は、比較結果を表示処理部53から表示装置3に表示させたり、制御装置5に接続されたプリンタ(図示せず)に比較結果をプリントアウトさせたりすることによって、使用者2に比較結果を提示する。表示装置3が提示部として兼用される場合、設定モードにおいて測定装置4による重心位置の測定が終了後、表示面30に比較結果が自動的に表示される構成とすることが考えられる。
【0074】
以上説明した本実施形態の重心移動訓練システム1によれば、訓練モードの前後における使用者2の重心移動の評価を比較部にて比較し、その比較結果を使用者2に提示することができる。したがって、使用者2は、訓練モードに実施した重心移動訓練によって、どの程度の効果があったのかを知ることができ、重心移動訓練の必要性や効果を十分に理解することができる。
【0075】
また、比較部が比較結果を数値化し、提示部が、訓練モードの後の設定モードにおいて比較部の比較結果を表示処理部に表示させる構成では、使用者2は、重心移動訓練の効果を定量的に把握することが可能となる。さらに、比較結果を使用者2に提示するために別途ディスプレイやプリンタ等を用いる必要がなく、システム構成の簡略化を図ることができる。
【0076】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0077】
(実施形態3)
本実施形態の重心移動訓練システム1は、ハーフミラーを備えていない点が実施形態1の重心移動訓練システム1と相違する。また、本実施形態では、使用者2の前方に配置され使用者2を前方から撮像する向きにレンズが向けられた撮像装置(図示せず)が設けられている。
【0078】
撮像装置は、たとえばカメラスタンド等を利用して表示装置3の正面側(使用者2側)における使用者2の目の高さ位置に設置されている。さらに、撮像装置は、その視野内に使用者2の全身が含まれ、且つ使用者2が直立した状態で使用者2の身体の左右方向における中心線が撮像した映像の左右方向の中心線に一致するように、チルト角およびパン角が調節されている。
【0079】
上述したような撮像装置の位置および向きの調節は、使用者2の立ち位置、目線の高さ等が決定してから初期設定として行われる。これにより、撮像装置では、使用者2の全身を映した動画像(以下、「全身映像」という)が撮像されることになる。
【0080】
制御装置5は、表示装置3と撮像装置との両方に接続されており、撮像装置で撮像された映像を加工して表示装置3に表示させる機能を持つ。具体的には、制御装置5は、全身映像を撮像装置から取得し、取得した全身映像を左右反転させて反転映像を生成する反転処理部(図示せず)を有する。さらに、制御装置5は、反転映像の左右方向の中心線が表示面30の左右方向の中心線に一致するように、操作図像32および目標図像31と共に反転映像を表示処理部53にて表示装置3に表示させる。
【0081】
これにより、表示装置3の表示面30には、使用者2の全身の映像が、鏡に映った鏡像のように左右反転されて、操作図像32および目標図像31と共に表示されることになる。反転映像は操作図像32および目標図像31と重なるように表示されてもよいが、この場合、反転映像は半透明(たとえば透過率50%)の映像として表示されることが望ましい。
【0082】
ここで、制御装置5は、撮像装置から入力される映像をリアルタイム(1秒間に15〜30フレーム程度)で加工(反転)して、表示装置3に映像信号を出力する。表示装置3は、制御装置5からの映像信号を受け、リアルタイムで反転映像を表示する。そのため、表示装置3の表示面30には、実際の使用者2の動きに合わせて動く動画像が反転映像として表示されることになる。
【0083】
すなわち、本実施形態の重心移動訓練システム1は、光学的に形成される鏡像を提示することはなく、表示装置3に表示された反転映像を使用者2に視認させ、使用者2に対して、反転映像を自身の鏡像と錯覚させることができる。
【0084】
以上説明した本実施形態の重心移動訓練システム1によれば、ハーフミラーを省略した分だけ、実施形態1のシステムに比べて構成を簡略化できるという利点がある。しかも、本実施形態の構成では、比較的大型の画面を備えるディスプレイが予め備わっていれば、専用のディスプレイを新設しなくても、既存のディスプレイを表示装置3として用いることが可能であるため、システムの導入コストを低減できる。
【0085】
また、本実施形態の他の例として、使用者2の正面以外、たとえば側方、後方、あるいは上方に設置された撮像装置にて撮像される使用者2の映像を、操作図像32および目標図像31と共に表示処理部53にて表示装置3に表示させてもよい。たとえば使用者2の側方から撮像された使用者2の映像が表示面30に表示されていると、使用者2は、自身の身体の前後方向の傾きも確認しながら、重心移動訓練を行うことができる。
【0086】
ここで、使用者2を正面以外から撮像した映像は、上記反転映像と共に並べて表示されてもよいし、単独で表示されてもよい。さらに、ハーフミラー6(図1参照)を備えた構成であっても、使用者2を正面以外から撮像装置で撮像した映像が表示装置3に表示される構成としてもよい。この場合、ハーフミラー6に映る鏡像によって正面から見た使用者2の全身像が表され、撮像装置で撮像された映像によって正面以外から見た使用者2の像が表される。
【0087】
使用者2を正面以外から撮像した映像が上記反転映像あるいはハーフミラー6に映る鏡像と共に表示されることにより、使用者2は、自身の姿勢を複数方向から確認することができ、より正しい姿勢での重心移動訓練が可能になる。
【0088】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0089】
(実施形態4)
本実施形態の重心移動訓練システム1は、測定装置4が図5に示すように椅子43に設けられている点で、実施形態1の重心移動訓練システム1と相違する。本実施形態では、使用者2は椅子43に座った姿勢(座位)で重心移動訓練システム1を使用する。
【0090】
測定装置4は、ハーフミラー6の手前に設置されている椅子43に設けられている。この測定装置4は、椅子43の座面44に載置され、椅子43に座った状態の使用者2の臀部から座面44に掛かる荷重を測定するシート状のセンサシート45を具備している。センサシート45は、それぞれ使用者2から作用する荷重の大きさを測定する複数個の荷重センサ(図示せず)が、水平面内で一直線上に並ばないように3個以上設けられてなり、且つ荷重センサが互いにできるだけ離れるように水平面内で二次元配置されている。
【0091】
本実施形態では、測定装置4は、各荷重センサにそれぞれ作用する荷重を求めることにより、座面44上における使用者2の上半身の重心位置を、椅子43に座っている使用者2の水平面内での重心位置として測定する。つまり、使用者2の上半身が前後方向あるいは左右方向に傾いていなければ、前後方向と左右方向とのそれぞれにおいて荷重の比率が等しくなり、使用者2の重心位置は座面44の中心に位置する。
【0092】
測定装置4は、重心位置が座面44の中心に位置する状態を基準として、前後方向と左右方向とのそれぞれについて荷重の偏りをリアルタイムで測定し、この偏りに応じて水平面内での重心位置を求める。本実施形態では、測定装置4は、ハーフミラー6に向き合った状態にある使用者2の左右方向をX軸、前後方向をY軸とし、座面44の中心位置を(X,Y)=(0,0)とする二次元直交座標系における使用者2の重心の座標位置を、重心位置として求める。
【0093】
このように、測定装置4は水平面内での使用者2の重心位置をリアルタイムで測定し、測定結果(重心位置)を制御装置5に対して出力する。そのため、たとえば使用者2が椅子43に座ったまま上半身を右側に傾けて重心位置を右に移動させると、操作処理部54により、重心移動に合わせて表示面30上の操作図像32(図2参照)は右に移動する。
【0094】
以上説明した本実施形態の重心移動訓練システム1によれば、使用者2は椅子43に座ったままの状態で重心移動訓練を行うことができ、病気や怪我により足が不自由な人であっても重心移動の訓練が可能になるという利点がある。
【0095】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0096】
また、実施形態2、実施形態3、実施形態4の各構成は適宜組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 重心移動訓練システム
2 使用者
3 表示装置
4 測定装置
5 制御装置
6 ハーフミラー
30 表示面
51 情報取得部
52 モード切替部
53 表示処理部
54 操作処理部
55 記憶部
56 評価部
57 設定決定部
58 修正評価部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面に映像を表示する表示装置と、前記表示面と向き合う使用者の水平面内での重心位置を測定する測定装置と、前記表示装置および前記測定装置の動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記測定装置で測定された前記重心位置の情報を重心情報として取得する情報取得部と、訓練モードと設定モードとの2つの動作モードを切り替えるモード切替部と、前記訓練モードにおいて操作図像および当該操作図像による追尾の対象となる目標図像を前記表示装置に表示させる表示処理部と、前記訓練モードにおいて前記重心情報に応じて前記表示面内での前記操作図像の位置を変化させる操作処理部と、前記重心情報を記憶する記憶部と、前記設定モードにおいて前記記憶部に記憶された前記重心情報から前記使用者の前記重心位置の偏りを評価する評価部と、前記訓練モードにおける前記表示面上の前記目標図像の位置を決めている設定データを、前記評価部で評価された前記重心位置の偏りに基づいて決定する設定決定部とを有することを特徴とする重心移動訓練システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記訓練モードにおいて前記表示面における前記操作図像の動きを評価する修正評価部をさらに有し、前記設定決定部は、前記訓練モードにおいて前記修正評価部の評価結果に基づいて前記設定データを修正することを特徴とする請求項1に記載の重心移動訓練システム。
【請求項3】
表示面に対して前記使用者側に配置され、前記表示面に表示される映像を透過させるとともに前記使用者の鏡像を映すハーフミラーをさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の重心移動訓練システム。
【請求項4】
前記使用者の映像を撮像する撮像装置をさらに備え、前記表示処理部は、前記撮像装置で撮像された前記使用者の映像を、前記操作図像および前記目標図像と共に前記表示装置に表示させることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の重心移動訓練システム。
【請求項5】
前記表示処理部は、前記設定モードにおいては前記評価部での評価に用いられる前記重心情報を前記表示装置に表示させることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の重心移動訓練システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記訓練モードの前後の前記設定モードにおける前記評価部の評価結果を比較する比較部と、前記比較部の比較結果を提示する提示部とをさらに有することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の重心移動訓練システム。
【請求項7】
前記比較部は比較結果を数値化し、前記提示部は、前記訓練モード後の前記設定モードにおいて前記比較部の比較結果を前記表示処理部に表示させることを特徴とする請求項6に記載の重心移動訓練システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−161418(P2012−161418A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23067(P2011−23067)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】