説明

重車両用のタイヤ

【課題】本発明は農業型または建設型の重車両用のタイヤに関する。
【解決手段】このタイヤは、自身がトレッドにより半径方向に覆われたクラウン補強体により半径方向に覆われたカーカスを備えており、前記トレッドは2つの側壁部によって2つのビードに接合されている。本発明によれば、タイヤは、形状比H/Sが0.75未満であり、トレッドの幅A対クラウンの反りの高さBの比が17より大きいようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業型または建設型の重車両、より詳細には農業トラクタに取付けられるようになっており、トレッドにより半径方向に覆われた少なくとも1つのカーカス補強体を備えているタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ、詳細には農業用車両のためのタイヤの補強アーマチュアまたは補強体は、現在のところおよび最もしばしば、「カーカスプライ」、「クラウンプライ」などと従来から称せられている1つまたはそれ以上のプライを積重ねることにより形成されている。補強アーマチュアを設計するこの方法は、しばしば長さ方向であるコード補強スレッドを備えているプライの形態の一連の半仕上げ製品を製造し、次いでタイヤ素材を構成するためにこれらの製品を組付けるか或いは積重ねることよりなる製造方法に由来している。これらのプライは大きな寸法で平らに生じられ、次いで所定の製品の寸法に応じて切断される。また、これらのプライは第1段階では実質的に平らに組付けられる。次いで、かくして製造された素材を、タイヤの体表的であるトロイダル輪郭をとるように成形する。次いで、「仕上げ用製品」と称せられる半仕上げ製品を素材に付けて加硫される用意のできた製品を得る。
【0003】
このような種類の「在来の」方法は、特にタイヤの素材の製造段階では、タイヤのビードの帯域にカーカス補強体を固定するか或いは保持するのに使用される固定要素(一般には、ビードワイヤ)の使用を伴う。かくして、この種類の方法では、カーカス補強体を構成するプライすべての一部(またはその一部のみ)が、タイヤビードに配置されたビードワイヤのまわりに折り返される。
【0004】
工業におけるこの種類の在来の方法の一般的採用によれば、プライおよび組立体を製造する多くの異なる方法にかかわらず、当業者は、この方法を表す用語類、従って、特に用語「プライ」、「カーカス」、「ビードワイヤ」、平らな輪郭からトロイダル輪郭への変化を示す「成形」などを含む一般に受入れられている専門用語を使用している。
【0005】
今日、適切に言えば、先の定義による「プライ」または「ビードワイヤ」を備えていないタイヤがある。例えば、文献ヨーロッパ特許第0582196号は、プライの形態の半仕上げ製品の助成なしに製造されるタイヤを述べている。例えば、異なる補強構造体の補強要素はゴム混合物の隣接層に直接付けられ、全体は、製造されるタイヤの最終輪郭と同様な輪郭を直接得ることを可能にする形状のトロイダルコアに次々の層の状態で付けられる。かくして、この場合、もはや、いずれの「半仕上げ製品」も、「プライ」も、「ビードワイヤ」も無い。コードまたはフィラメントの形態のゴム混合物および補強要素のような基本製品は、コアに直接付けられる。このコアがトロイダル形状のものである場合、素材は、もはや、平らな輪郭からトーラスの形状における輪郭へ変化させるために成形される必要がない。
【0006】
更に、この文献に記載されてタイヤはビードワイヤのまわりのカーカスの「在来の」折返し部を有していない。この種類の固定は、周方向のコードが前記側壁補強構造体に隣接して配置され、全体が固定用または接合用ゴム混合物に埋設されている構成と置き換えられる。
【0007】
また、中央コアにおける素早く、効果的で簡単な載置に特に適している半仕上げ製品を使用してトロイダルコアに組付けるための方法がある。最終的に、(プライ、ビードワイやなどのような)或る構造特徴を製造するために或る半仕上げ製品を同時に備えている混合物を使用することも可能であり、その一方、他の特徴は混合物/または補強要素の直接付設から生じられる。
【0008】
この文献では、製造分野および製品のデザインの両方における最近の技術的発展を考慮して、「プライ」、「ビードワイヤ」などのような在来の用語は、自然の用語または使用される方法の種類と無関係である用語と有利に置き換えられている。かくして、用語「カーカス型補強スレッド」または「側壁補強スレッド」は、在来の方法におけるカーカスプライの補強要素、および半仕上げ製品なしで方法により製造されるタイヤの、側壁部の高さのところで一般に付設される対応する補強要素のための呼称として有効である。用語「固定用帯域」は、その一部について、在来の方法のビードワイヤのまわりのカーカスプライの「慣例の」折返し部と、周方向の補強要素、ゴム混合物およびトロイダルコアへの付設を使用している方法で生じられる底帯域の隣接した側壁補強部分により構成される組立体とを均等に良く示し得る。
【0009】
農業用車両のためのタイヤの通常の設計に関しては、各ビード内に固定されたカーカス補強体は、布製および/または金属製補強要素の少なくとも1つの層で構成されており、前記要素は、層において互いに実質的に平行であり、可及的に、実質的に半径方向であって、1つのプライから次のプライまで明らかに交差されて周方向と等しいかあるいは等しくない角度を形成している。カーカス補強体は、通常、補強要素の少なくとも2つの作用クラウン層で構成されたクラウン補強体により覆われており、前記クラウン層の補強要素は、布製または金属製のものでもよいが、1つの層から次の層まで交差されて周方向と小さい角度を形成している。前記タイヤのスレッドは、一般的に大きい角度だけ周方向に対して傾斜されたゴムブロックまたはバーで構成されており、これらのブロックまたはバーは、それらの平均幅より大きい(周方向に測定された)幅を有する中空部により互いから周方向に離されている。前記バーは、軸方向に連続的であるか、或いは通例、軸方向に断続的であって赤道平面に対して互いに対称でもよい。赤道平面に軸方向に近い方のバーの端部は、通例、山形設計と一般に呼ばれるものを有しながら、互いに対して周方向にずれている。
【0010】
上述のような農業用車両のためのタイヤは、通常、28%未満のタイヤの最大の反り量に対応する従来の荷重および寸法について耕された土地で車両を使用するために1.1バールと1.4バールとの間の圧力を受ける。
【0011】
最大の反り量は、後で定義される側壁部の高さにより割り算された最大の反りであると定義される。
タイヤの反りは、定格荷重および圧力条件下で非負荷状態から静的負荷状態へ変化するときのタイヤの半径方向変形または高さの変化により定められる。
【0012】
この同じ農業用車両が硬い地面または道路上をより高い速度で走行しなければならない場合、これらのタイヤの満足な耐久性を保持し且つ過剰の急速な摩耗を防ぐために2バールほどでもよいより高い圧力を有することが必要である。
これらの圧力変化を行なうためには、コンプレッサまたは加圧空気溜め部のような装置、一般には、定義によれば、タイヤの圧力を増大することが必要になるときに運転される機械を有することが必要である。
【0013】
これらの装置の主な欠点は、それらの圧力、コストおよびメンテナンスに加えて、タイヤの圧力を変化させるのに必要な時間である。
更に、使用者の1つの現在の要求は、車両、より詳細にはタイヤが農産物上を通るときの農産物の押し潰しによる耕された土地における使用中の農作物の損傷の恐れを更に低減することである。
トレッドの子午線方向輪郭、カーカス補強体の子午線方向輪郭、カーカスおよびクラウン補強体の材料の変更、トレッドパターンブロックの設計および寸法の変更に関する本出願人により行なわれた多量の研究は、今までのところ、期待された改良をもたらしていない。
更に、負荷容量を維持しながら、圧力を低減することによって押し潰しを制限することを可能にする二重タイヤを使用することが知られている。しかしながら、かかる解決策は特に道路上の嵩の問題を引起こす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
かくして、本発明の1つの目的は、前述の欠点なしで、特に、農業用機械の通過による圧縮または押し潰しによる農作物の損傷を低減することを可能にする農業用車両のためのタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による車両用のタイヤは、2つの側壁部により2つのビードに接合されているトレッドが半径方向に載っているクラウン補強体により半径方向に覆われたカーカス補強体を備えており、形状比H/Sは0.75未満であり、トレッドの幅A対クラウンの反りの子午線方向高さBの比A/Bは17より大きい。
【0016】
形状比H/Sはは、タイヤをその作動リムに取付け、その推薦圧力まで膨らましたときのリム上のタイヤの高さH対タイヤの最大の軸方向幅Sの比である。
トレッドの幅Aは、タイヤをその作動リムに取付け、その推薦圧力まで膨らましたときの肩端部間の軸方向における子午線方向の輪郭で測定されたものであり、平らな地面と接触状態の表面の軸方向における走行中の幅に対応する。
クラウンの反りの子午線方向高さBは、タイヤをその作動リムに取付け、その推薦圧力まで膨らましたときの半径方向における子午線方向輪郭で測定されたものである。反りの子午線方向高さBはトレッドの最大半径とトレッドの最小半径との差として定められ、トレッドの最大半径は赤道平面における測定されたものであり、トレッドの最小半径は一方の肩端部のところで測定されたものである。
肩端部は、タイヤをその作動リムに取付け、その推薦圧力まで膨らましたときのタイヤの肩部の帯域において、一方では、トレッドの軸方向外端部(バーの頂点)の表面、他方では、側壁部の半径方向外端部の表面に対する接線の交差点のタイヤの外面に対する直角の投射により定められる。
【0017】
「軸方向」は、タイヤの回転軸線と平行な方向を意味するものと理解されるものであり、この方向は、タイヤをその内側に向けるとき、「軸方向内側」であり、タイヤをその外側に向けるとき、「軸方向外側」であり得る。
「半径方向」は、タイヤの回転軸線に対して垂直であって、この回転軸線を通る方向を意味するものと理解される。この方向は、タイヤを回転軸線に向けるか、タイヤの外側に向けるかに応じて「半径方向内側」または「半径方向外側」であり得る。
タイヤの回転軸線はタイヤが正常使用時に回転する中心の軸線である。
タイヤの周方向または長さ方向は、タイヤの周囲に対応し、タイヤの転動方向により定められる方向である。いずれの箇所でも、この方向は半径方向および軸方向に対して垂直である。
半径方向または子午線方向平面はタイヤの回転軸線を含む平面である。
周方向平面はタイヤの回転軸線に対して垂直な平面である。
周方向の子午線平面または赤道平面は、タイヤの回転軸線に対して垂直であって、タイヤを2つの半体に分割する平面である。
【0018】
試験を行なった結果、かくして定義されたタイヤを使用することにより、特に地面との接触表面の高さのところの圧力に良好な分布により畑における走行時に農作物の損傷の恐れを低減することが可能であることを示した。
本発明の1つの有利な実施形態によれば、トレッドの幅A対クラウンの反りの子午線方向高さBの比は37未満である。
本発明のこの有利な実施形態によるかくして定義されたタイヤは、在来の荷重および寸法の場合に1バールまたはそれ以下の圧力で使用し得、在来のタイヤと比較して、他の特性、特に摩耗を低減することがない。
【0019】
同じように、かくして定義されたタイヤによれば、在来の圧力および寸法の場合に荷重の増大を許容することができる。
本発明によるかくして製造されたタイヤは、その反り量が28%より大きいような条件下で使用される。
実際、在来のタイヤのものより小さい形状比と、17より大きく、37より小さいトレッドの幅対クラウンの反り高さの比A/Bとの組合せの結果、タイヤのクラウン、より正確にはトレッドの子午線方向輪郭が在来のタイヤのものより大きい曲率半径を有し、その結果、上記のような性能が得られるものと思われる。
【0020】
本発明の好適な実施形態によれば、トレッドの幅A対タイヤの最大の軸方向幅Bの比A/Sは0.9より大きい。
本発明のこの好適な実施形態によれば、試験の結果は、押し潰しおよび圧縮に関してより有利な性能を示し、0.9より大きい比A/Sを定めるこの実施形態では、タイヤの所定の最大の軸方向幅の場合、トレッドの幅が在来のタイヤのものより大きくなり、また在来の荷重および寸法の場合に在来の使用圧力より小さい圧力で使用するときに性能が向上される。
【0021】
本発明の1つの有利な実施形態によれば、トレッドの幅対クラウンの反り高さの比A/Bと、トレッドの幅A対タイヤの最大の軸方向幅Sの比A/Bのとの積は14より大きく、好ましくは16より大きい。
【0022】
本発明の1つの好適実施の形態によれば、タイヤのラジアルカーカス補強体は半径方向に配向された補強要素の少なくとも1つの層を備えており、半径方向に配向された補強要素の半径方向の最も内側の層と、回転軸線に対して垂直な方向と45°の角度を形成し、且つタイヤのない壁部の2つの点の間に設けられて、長さDがタイヤの最大の軸方向幅Sの20%に等しい弦の中心との間の距離Uは0.21×Dと0.33×Dとの間であり、本発明のこの実施形態によれば、距離Uは前記弦の配向に対して垂直な方向に測定されるものである。
【0023】
この距離Uはバーを備えていない肩部帯域におけるタイヤの子午線方向断面で測定されており、換言すると、測定は2つのバーの間で肩部帯域において行なわれている。
更に、肩部のところの曲率半径の明確化に対応する本発明のこのような実施形態によれば、特に、タイヤの耐久性性能が向上される。
【0024】
本発明の1つの有利な変形例によれば、タイヤをその作動リムに取付けると、タイヤの最大の軸方向幅S対リム幅Lの比S/Lは1.2未満である。
リム幅Lはタイヤをそのリムに取付けたときのリムシートの間、従って、ビードの軸方向外端部の間で軸方向に測定される距離として定められる。
本発明のこの変形例により製造されたタイヤは、幅広いリムの使用により、特に道路上挙動を改良することが可能であるので、先に有利に示されたように、1バールまたはそれ以下であるように選択される圧力を変更することが必要であることなしに、道路のような硬い地面に使用されることができるものと思われる。このような実施形態は、使用者がタイヤの圧力を変えることなしに、道路上走行の間で農業活動を行なうことができるので、非常に有利である。更に、先に説明したように、これにより、圧力の増大を行なうための追加設備なしで車両を設計することが可能である。かくして、圧力を変化させる段階のどれももはや必要でないので、本発明による前記のようなタイヤを取付けた車両はより大きい歩留りを許容する。
【0025】
更に、かくして本発明により定義されたタイヤは、特に17より大きいそれらの特性A/Bにより、許容可能な摩耗で道路上の走行を行なえる。
更に、本発明の1つの好適な実施形態によれば、トレッドは、ヒステリシス損失HLが34%未満であるように、低ヒステリシス損失のゴムで作成されている。
ヒステリシス損失HLは、式HL(%)=100×(W0−W1)/W1(W0:供給されたエネルギであり、W1:回復されたエネルギ)により、第6衝撃における60℃での弾性反発によるパーセントとして測定されるものである。
本発明のこの好適な実施形態によれば、農業用車両は、タイヤの早期劣化のいずれの恐れもなしにより高い速度で道路において使用され得る。在来の荷重および寸法では、1バール未満の圧力で50km/時より大きい速度が得られる。
【0026】
かくして、トレッドは、共役ジエンから生じる構成単位のモル比が50%より大きい少なくとも1つのジエンエラストマーを基材料とする低減ヒステリシス損失を有する架橋ゴム組成物のゴム混合物で有利に製造される。
「ジエンエラストマー」は、公知のように、少なくとも一部がジエンモノマー(モノマーは共役でもそうでなくてもいずれにしても、2つの二重炭素―炭素結合を有している)から生じたエラストマー(ホモポリマーまたはコポリマー)を意味しているものと理解される。
本発明によるトレッド組成物に使用可能である前記各ジエンエラストマーは、「高飽和」であり、すなわち、共役ジエンから生じる50%より大きい量の構成単位を有しているものと言える。
【0027】
かくして、例えば、ブチルゴム、またはジエンおよびEPDM種類のアルファオレフィンのようなジエンエラストマーは、「本質的に飽和された」ジエンエラストマー(常に14%未満であるジエン弦の構成単位の低い或いは非常に低い含有量)と呼べるので、先に定義には入らない。
天然ゴムに加えて、本発明による組成物に使用可能であるジエンエラストマーとして、下記のものを使用し得る。
炭素原子数4ないし12の共役ジエンモノマーの重合により得られるホモポリマー、または
相互に、或いは炭素原子数8ないし20の1つまたはそれ以上にビニル芳香族化合物と共役された1つまたはそれ以上のジエンの共重合により得られるコポリマー。
【0028】
適当な共役ジエンは、特に、1,3‐ブタジエン、12‐メチル‐1,3‐ブタジエン、2,3‐ジ(炭素原子数1ないし5のアルキル)‐1,3‐ブタジエン、例えば、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐3‐エチル‐1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐3‐イソプロピル‐1,3‐ブタジエン、アリール‐1,3‐ブタジエン、1,3‐ペンタジエンおよび2,4‐ヘキサジエンである。
適当なビニル‐芳香族化合物は、例えば、スチレン、オルト‐、メタ‐およびパラ‐メチルスチレン、市販の混合物「ビニルトルエン」、パラ‐第三ブチルスチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼンおよびビニルナフタレンである。
【0029】
コポリマーは99重量%と20重量%との間のジエン構成単位と1重量%と80重量%との間のビニル‐芳香族構成単位とを含有してもよい。エラストマーは、特に改質剤および/またはランダム化剤の存在または不存在で使用される重合と、改質剤および/またはランダム化剤の使用量との関数である任意のミクロ構造を有してもよい。エラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、序列またはミクロ序列エラストマーでもよく、そして分散液または溶液状態で調製されてもよい。これらのエラストマーはカップリング剤および/またはスターリング剤または官能化剤でカップリングおよびスターリングされるか、或いは変更例として官能化されてもよい。
【0030】
ポリブタジエン、特に、4%と80%との間の含有量の1,2‐構成単位を有するポリブタジエン、または80%より多い含有量のシス‐1,4‐構成単位を有するポリブタジエン、合成ポリイソプレン、ブタジエン/スチレンコポリマー、特に、5%と50%との間の含有量、更に特に20%と40%との間のスチレン含有量、4%と65%との間のブタジエン部分の1,2‐結合の含有量および20%と80%との間のトランス‐1,4‐結合の含有量を有するブタジエン/スチレンコポリマー、ブタジエン/イソプレンコポリマー、特に、5重量%と90重量%との間のイソプレン含有量および−40℃ないし−80℃のガラス転移温度(Tg)を有するブタジエン/イソプレンコポリマー、イソプレン/スチレンコポリマー、特に、5重量%と50重量%との間のスチレン含有量および−25℃ないし−50℃のガラス転移温度(Tg)を有するイソプレン/スチレンコポリマーが好適である。
【0031】
ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合、適当であるブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーは、特に、5重量%と50重量%との間、更に特に10%と40%との間のスチレン含有量と、15重量%と60重量%との間、更に特に20%と50%との間のイソプレン含有量と、5重量%と50重量%との間、更に特に20%と40%との間のブタジエン含有量と、4%と85%との間のブタジエン部分の1,2‐構成単位の含有量と、6%と80%との間のブタジエン部分のトランス1,4‐構成単位の含有量と、5%と70%との間のイソプレン部分のトランス1,2‐プラス3,4‐構成単位の含有量と、10%と50%との間のイソプレン部分のトランス1,4‐構成単位の含有量とを有するブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマー、およびより一般的には、−20℃と−70℃との間のガラス転移温度(Tg)を有するブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーである。
【0032】
特に好ましくは、本発明による組成物のジエンエラストマーは、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、ブタジエン/イソプレンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマー(SBIR)またはこれらの化合物のうちの2つまたはそれ以上の混合物よりなる高不飽和のジエンエラストマーの群から選択される。
【0033】
本発明の1つの好適な実施形態によれば、前記ジエンエラストマーは、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、およびブタジエンと、溶液またはエマルジョン状態で調製されたビニル‐芳香族化合物とのコポリマーよりなる群に属する。
更に、より好ましくは、トレッドは、架橋ゴム組成物が、少なくとも20phr(phr:エラストマーの100部あたりの重量部)、好ましくは少なくとも40phrの天然ゴムを基材料としたゴム混合物で製造されている。
本発明によれば、この組成物は、有利には、天然ゴムと、ブタジエンと溶液状態で調製されたビニル‐芳香族化合物との少なくとも1つのコポリマーとの混合物よりなってもよい。
【0034】
有利には、タイヤのトレッドを構成する架橋ゴム組成物は大部分または独占的な補強充填材としてカーボンブラックを含有している。
適当なカーボンブラックは、タイヤ、特にタイヤ用のトレッドに従来から使用されている任意のカーボンブラック、詳細には、HAF、ISAFおよびSAFの種類のブラックである。このようなブラックの非限定的な例としては、ブラックN115、N134、N234、N339、N347およびN375が挙げられる。
【0035】
本発明によるトレッド組成物は、カーボンブラックと補強無機充填材との混合物を補強充填材として含有してもよいことは気づくであろう。「補強無機充填材」は、公知のように、色および源(天然または合成)がどうであれ、カーボンブラックと対照的に、「ホワイト」充填材、ときどき「透明」充填材とも称せられる無機または鉱物充填材を意味しているものと理解され、この無機充填材は、それ自身、中間カップリング剤以外の任意の手段なしで、タイヤの製造用のゴム組成物を補強することが可能であり、換言すると、その補強機能において在来のカーボンブラック充填材を取って代わることが可能である。
【0036】
タイヤの耐久性性能を更に改良するために、本発明は、有利には、カーカス補強体が少なくとも2つのカーカスプライで構成されている場合、カーカスプライの剪断および/または刻み目付けの恐れを制限することを提案する。本発明のこのような実施形態によれば、前記カーカスプライの補強スレッド間の距離、より詳細には、肩部帯域における前記カーカスプライの補強スレッド間の距離は1.5mmより大きく、好ましくは、2mmより大きい。
【0037】
補強スレッド間の距離はケーブルからケーブルまで、すなわち、第1プライのケーブルと第2カーカスプライのケーブルとの間で測定されている。換言すると、この距離は、前記ケーブル間のプライ各々のカレンダー仕上げ用ゴム混合物、およびこの条件を満たすために混入されたゴム混合物の任意の層の夫々の厚さを包含する。
肩部帯域はトレッドと側壁部との間の接合帯域であると定義される。
【0038】
本発明の1つの有利な実施形態によれば、トレッドパターンは、主として、赤道平面の両側において、V模様または山形を形成するように周方向に対して傾斜されたバーで構成されており、前記バーは、タイヤの転動中、赤道平面に近い方のバーの端部が、トレッドの軸方向外端部に近い方の端部の前にタイヤと地面との接触領域に侵入するように、周方向に対して傾斜された中心線を有している。赤道平面に近い方のこれらの端部は、地面と接触するようになっていて、長さ方向寸法対軸方向寸法の比が1より大きい表面を有している。農業用車両のための在来のタイヤにおけるこれらの2つの寸法の比は1に等しい。
【0039】
発明者は、本発明によるタイヤのこの特性が、特に前記タイヤを道路において高速で使用するとき、あまり急速でない摩耗を許容することを実証することができた。
本発明の他の利点、詳細および特徴は図1ないし図4を参照して行なう本発明の実施形態の例の説明から以後に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は取付けリムに取付けられて膨らまされて示される寸法650/60R38のタイヤ1の図を示している。
タイヤ1は、自身がトレッド4により覆われているクラウン補強体3により覆われているカーカス補強体2を備えている。
カーカス補強体2は半径方向に配向されたポリエステル補強要素の2つのプライ21、22を備えている。図示されていないビードワイヤのまわりに折返すためのタイヤのビード5におけるカーカス補強体2の固定は図1aに示されており、周方向補強体との関連による種類のもでもよく、全体が連結ゴムに埋設されている。
クラウン補強体3は図に詳細に示されていない複数の作用プライで構成されている。
トレッド5は、図1aに示されていなく、図4に現われているブロックまたはバー6で構成されている。
【0041】
タイヤの縦横比H/Sは0.60である(Hは、タイヤがその作動リムに取付けられ、推薦圧力まで膨らまされたときの、リム上のタイヤの高さであり、Sは同様にタイヤの最大の軸方向幅である)。
本発明によれば、トレッドの幅A対クラウンの反り高さBの比は、17より大きく、前記タイヤの場合、17.9に等しい。
トレッドの幅A対タイヤの最大の軸方向幅Sの比は0.9より大きい。図示のタイヤの場合、この比A/Sは0.92に等しい。
トレッドの幅A対タイヤの最大の軸方向幅Sの比A/S×トレッドの幅A対クラウンの反り高さBの比A/Bの積は、16より大きく、前記タイヤの場合、16.5に等しい。
これらの積または比のこれらの異なる値は、本発明により製造されたタイヤが、一方では、農業用途のための在来のタイヤのものに匹敵する比較的平らなクラウンを有しており、他方では、農業用途のための在来のタイヤのものより幅広いトレッドの幅を有していることを示している。
【0042】
先に述べたように、本発明により製造されたタイヤのこれらの特性により、農産物の損傷の恐れを制限することにより、特にコンパクト化によりタイヤを使用し得る。更に、本発明によるタイヤは、在来の荷重および寸法のために農業用のタイヤに通常必要である圧力より小さい圧力で使用し得る。更に、本発明によるこのようなタイヤは、同じ圧力で硬い地面に使用されることができる。
【0043】
タイヤの最大の軸方向幅S対リム幅Lの比は、1.2未満であり、前記のタイヤの場合、1.13に等しい。
比S/Lのこの値は農業用途のためのタイヤに通常使用されるより幅広いリムへの取付けを示している。
タイヤのトレッドは、40phrの天然ゴムを含有するゴム混合物で形成されており、そして30.5±3に等しいヒステリシス損失HLを有する。
このようなゴム混合物の使用により、特に硬い地面上を高速で走行するときの加熱を回避することが可能である。
【0044】
図1bは帯域7の拡大を示しており、特にこの肩部帯域における2つのカーカスプライ21、22間の距離「a」を示している。この距離は2mmに等しく、この距離により、本発明によるタイヤの走行中、カーカスプライの剪断を回避することが可能である。
【0045】
図2は本発明によるタイヤの肩部の帯域と、肩端部Nの決定を可能にする軌跡とを表している。肩端部Nは、タイヤの肩部の帯域では、一方では、トレッド10の軸方向外端部(バーの頂点)の表面、他方では、側壁部102の半径方向外端部の表面に対する接線8、9の交差点のタイヤの外面に対する直角の投射により定められる。
【0046】
また、図3は、本発明によるタイヤの肩部の帯域と、半径方向に配向された補強要素の半径方向に最も外側の層と弦12の中心との間の前記弦の配向に対して垂直な方向で測定された距離Uを定めることを可能にする軌跡とを示している。弦12はタイヤの最大の軸方向幅Sの20%に等しい長さDを有しており、タイヤのない壁部上の2つの点P、Q間を辿って回転軸線に対して垂直な方向と45°の角度を形成している。距離Uは0.21×Dと0.33×Dとの間であり、この場合、31mmに等しい。
【0047】
図4aは軸線XX'により表される周方向に対して傾斜された平均方向の細長い形態のバー6を備えているタイヤ1の表面の一部を示している。これらのバー6は、タイヤのトレッドの全幅を表していない図にそれらの全体としては示されていない。軸線XX'の両側に分布されたこれらのバーは、山形の形態、より正確には片寄った分岐部を有するVの形態である。バー6すべては、タイヤの前方転動時、赤道平面XX'に軸方向に最も近い端部が初めに前記タイヤと地面との間の接触領域に侵入し、これに対して、トレッドの縁部に最も近い同じバーの端部が最後に接触領域に侵入するような共通の方向を有している。バーの共通の方向はタイヤの回転方向に対応すると言える。
【0048】
図4bはバー6の一部、詳細には、赤道平面XX'に最も近いバーの端部の拡大を示している。この端部は、軸方向の寸法、すなわち、タイヤの回転軸線の方向と平行な寸法と、長さ方向の寸法、すなわち、長さ方向と平行な、従って軸線XX'と平行な寸法とを備えている。本発明によれば、これらの寸法の比I/dは、1より大きく、図示のタイヤの場合、1.76に等しい。
試験を行なった結果、このようなバーにより、特に50km/時程度の速度で硬い地面上を走行しているときにトレッドの摩耗を制限することができることを示した。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1a】本発明によるタイヤの図である。
【図1b】図1の図の一部の拡大部分図である。
【図2】距離Uの測定を示す本発明によるタイヤの肩部帯域の拡大図である。
【図3】本発明によるタイヤの肩部帯域の他の拡大図である。
【図4a】本発明の変更実施形態によるタイヤのトレッドにおける幾つかのバーの赤道平面に近い方の端部を示す図である。
【図4b】図2aにおける本発明の変更実施形態によるタイヤのバーの赤道平面に近い方の端部の拡大図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの側壁部により2つのビードに接合されているトレッドが半径方向に載っているクラウン補強体により半径方向に覆われたラジアルカーカス補強体を備えている農業型または建設型の重車両用のタイヤにおいて、形状比H/Sは0.75未満であり、トレッドの幅A対クラウンの反りの子午線方向高さBの比は17より大きいことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
トレッドの幅A対クラウンの反りの子午線方向高さBの比は37未満であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
形状比H/Sは0.60未満であることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
トレッドの幅A対タイヤの最大の軸方向幅Sの比は0.9より大きいことを特徴とする請求項1ないし3に記載のタイヤ。
【請求項5】
トレッドの幅A対クラウンの反り高さBの比A/B×トレッドの幅A対タイヤの最大の軸方向幅Sの比A/Bの積は14より大きく、好ましくは16より大きいことを特徴とする請求項1ないし4のうちのいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
ラジアルカーカス補強体が半径方向に配向された補強要素の少なくとも1つの層を備えているタイヤにおいて、半径方向に配向された補強要素の半径方向の最も内側の層と、回転軸線に対して垂直な方向と45°の角度を形成し、そしてタイヤの内壁部の2つの点の間に配置される、タイヤの最大の軸方向幅Sの20%に等しい長さDの弦の中心との間の距離Uは0.21×Dと0.33×Dとの間であり、距離Uは前記弦の配向に対して垂直な方向に測定されるものであることを特徴とする請求項1ないし5のうちのいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
リムに設けられたタイヤにおいて、タイヤの最大の軸方向幅S対リム幅Lの比は1.2未満であることを特徴とする請求項1ないし6のうちのいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
カーカス補強体が少なくとも2つのカーカスプライを備えているタイヤにおいて、前記カーカスプライの補強スレッド間の距離は1.5mmより大きく、好ましくは2mmより大きいことを特徴とする請求項1ないし7のうちのいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
トレッドは、共役ジエンから生じる構成単位のモル比が50%より大きい少なくとも1つのジエンエラストマーを基材料としていて、減少されたヒステリシス損失を有する架橋ゴム組成物の混合物で形成されていることを特徴とする請求項1ないし8のうちのいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記ジエンエラストマーは、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエンと溶液またはエマルジョン状態で調製されたビニル芳香族化合物との共重合体よりなる群に属することを特徴とする請求項9に記載のタイヤ。
【請求項11】
減少されたヒステリシス損失を有する架橋ゴム組成物は少なくとも20phr、好ましくは少なくとも40phrの天然ゴムを基材料としていることを特徴とする請求項9に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記組成物は大部分または独占的の補強充填材としてカーボンブラックを含有していることを特徴とする請求項9ないし11のうちのいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項13】
トレッドパターンは、主として、赤道平面の両側において、V模様を形成するように周方向に対して傾斜されたバーで構成されており、赤道平面に近い方のバーの端部は、長さ方向寸法対軸方向寸法の比が1より大きい地面と接触するようになっている表面を有していることを特徴とする請求項1ないし12のうちのいずれか1項に記載のタイヤ。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【公表番号】特表2007−501163(P2007−501163A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529918(P2006−529918)
【出願日】平成16年5月26日(2004.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005646
【国際公開番号】WO2004/106089
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(599105403)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (228)
【Fターム(参考)】