説明

野菜の保存方法

【課題】野菜の食感の維持又は向上、栄養素の維持又は向上、色素の維持又は向上、風味の維持又は向上を図りながら、なお付加価値を付して、野菜を週単位又は月単位で長期保存できる野菜の長期保存方法を提案する。
【解決手段】野菜を鮮度よく長期にわたって保存する保存方法であって、低温水洗浄工程、低温スチーミング工程及び予備冷却工程を順に経た野菜を、0℃から前記野菜が凍りはじめる直前までの温度帯で保存する野菜の保存方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜を鮮度よく長期(週単位又は月単位)にわたって保存する野菜の保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜を鮮度よく長期にわたって保存する野菜の保存方法として、例えば特許文献1〜特許文献3が提案されている。特許文献1は、生ネギ又は生ミツバを、一旦70%以上の相対湿度条件下で50℃〜70℃に加熱した後、保存する保存方法を提案している(特許文献1[請求項1]ほか)。この特許文献1によれば、簡便な処理により、新鮮な生ネギ又は生ミツバと同様のシャキシャキした食感、味、色調及び香りを有する状態で、生ネギ又は生ミツバを良好に保存できるとしている。
【0003】
特許文献2は、増粘剤及び静菌剤を含有する加熱水溶液に生鮮野菜を浸漬する鮮度保持方法を提案している(特許文献2[請求項1]ほか)。この特許文献2によれば、常温帯において3日程度は生鮮野菜の鮮度低下を防止し、野菜を新鮮な状態に保持することができるため、カット野菜や弁当、サラダに用いられるカット野菜を新鮮な状態で消費者に提供できるとしている。
【0004】
特許文献3は、除菌剤で洗浄及び除菌した野菜類を30℃〜50℃で5分〜10分加熱した後、硬度と機能性並びにうまみ成分を付与する第1の蒸気加熱工程、55℃〜80℃で3分〜30分加熱して除菌する第2の蒸気加熱工程、0℃〜30℃に冷却した後に20℃〜100℃の温風を通風して野菜類の水分を2%〜10%除去する乾燥工程を順に実施し、前記乾燥工程直後に0℃〜15℃に冷却する生食用野菜の製造方法を提案している(特許文献3[請求項1]ほか)。この特許文献3によれば、種々の野菜について、サラダの材料や浅漬の材料、調理用具材あるいは調味野菜として広く使用することができるとしている。
【0005】
【特許文献1】特開2001-231441号公報
【特許文献2】特開2004-215544号公報
【特許文献3】特開2005-151939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、生ネギ又は生ミツバを多湿下で加熱して保存することから、急冷による結露が問題となると指摘している(特許文献1[0023])。このため、加熱後の冷却は、10℃〜50℃、好ましくは15℃〜30℃程度で予備冷却し、最終的な保存に際しても1℃〜10℃程度で保存するとしている。前記冷却及び保存が、特許文献1に挙げる生ネギ又はミツバに妥当であるとしても、特に化学処理を施さず、ただ1℃〜10℃程度で保存するだけでは、週単位又は月単位の長期保存が難しいと考えられる。すなわち、特許文献1は、生ネギ又はミツバに限って、短期の保存を提案しているに過ぎない。
【0007】
特許文献2は、野菜の種類を問わず、常温での保存を実現しているが、その保存期間は3日程度であり、およそ長期保存と見ることはできない。また、この特許文献2では、増粘剤及び静菌剤を含有する加熱水溶液に野菜を浸漬する保存方法であることから、少なからず野菜に増粘剤及び静菌剤が残存する虞があり、果たして野菜を自然のままに保存していると言えない。このように、特許文献2は、化学処理を施しながら、なお3日程度しか野菜を保存できないことから、この特許文献2を利用して野菜を長期保存できる保存方法を考え出すことは難しい。
【0008】
特許文献3は、2度の蒸気加熱工程を経ることで、野菜にうまみ成分を付与したり、組織構造を強固にすることで、冷凍時の冷凍傷害を低減させる特徴がある(特許文献[0014])。しかし、こうした蒸気加熱工程を経た野菜は、例えば30%程度の水分を除去することにより1ヶ月〜2ヶ月程度の長期保存を実現するもので、保存状態にある野菜を使用する際には、水戻しを必要とする(特許文献3[0021]、[0023])。これから、特許文献3に従って長期保存された野菜は、水戻しによって食感が軟らかくなる虞があり、およそ野菜を自然のままに保存することはできないと考えられる。
【0009】
できるだけ野菜を自然のままに、そして長期保存する観点から、特許文献3が一番好ましいと考えられるが、長期保存後の仕様に際して水戻しを要する点に、なお改良の余地がある。すなわち、野菜の食感の維持又は向上、栄養素の維持又は向上、色素の維持又は向上、風味の維持又は向上を図りながら、なお付加価値を設けて、野菜を週単位又は月単位で長期保存できることが望ましい。そこで、前記条件を満たした野菜の長期保存方法を開発するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
検討の結果開発したものが、野菜を鮮度よく長期にわたって保存する保存方法であって、低温水洗浄工程、低温スチーミング工程及び予備冷却工程を順に経た野菜を、0℃から前記野菜が凍りはじめる直前までの温度帯(以下、特定温度帯と呼ぶ)で保存する野菜の保存方法である。本発明は、野菜の長期保存にいわゆる「氷温(登録商標)」と呼ばれる温度帯を利用する保存方法であるが、単に野菜を特定温度帯で保存するのではなく、既述した野菜の食感の維持又は向上、栄養素の維持又は向上、色素の維持又は向上、風味の維持又は向上を図りながら、なお付加価値を設けることを目的に、前処理として低温水洗浄工程、低温スチーミング工程及び予備冷却工程を野菜に施す点に特徴がある。
【0011】
低温水洗浄工程は、15℃以下、好ましくは10℃〜15℃の食塩水を用いて野菜を洗浄する工程である。前記食塩水は、塩分の割合が0.1wt%〜1.0wt%であることが好ましい。この低温水洗浄工程は、野菜に付着したゴミ等を洗い流す働きのほか、15℃以下の食塩水を用いることで野菜を引き締め、また食塩水を用いることで一定の殺菌効果を有する。ここで、食塩水における塩分の割合が0.1wt%未満であると前記殺菌効果に乏しく、逆に1.0wt%より多くなると野菜に不要な塩味が付いてしまうので好ましくない。より好ましい塩分の割合は、0.3wt%〜0.5wt%である。
【0012】
低温スチーミング工程は、30℃〜100℃、好ましくは50℃〜75℃の蒸気で低温水洗浄工程を経た野菜を1分間〜60分間、好ましくは2分間〜3分間蒸す工程である。ここで、低温スチーミングとは、広義には100℃未満で蒸すことを意味し、本発明では100℃を含み、スチーミング工程の時間が十分に短い場合は一時的に100℃を超える場合を含むものとする。この低温スチーミングを経た野菜は、調理に際してあく抜きが不要になったり、硬い皮や筋が甘く軟らかくなったり、短時間での漬物を作りやすくなる等、各種調理に要する調理時間を短縮できる等、長期保存する野菜の食感の維持又は向上、栄養素の維持又は向上、色素の維持又は向上、風味の維持又は向上を図る。
【0013】
予備冷却工程は、−30℃〜−50℃、好ましくは−40℃前後の冷気で低温スチーミング工程を経た野菜を1分間〜30分間で、好ましくは5分間〜15分間で冷却する工程である。この予備冷却工程は、低温スチーム工程で加熱された野菜を、続く特定温度帯での保存に適した温度にまで冷却する工程であり、低温スチーム工程により維持又は向上された各種性質を残存させるため、1分間〜60分間で野菜を冷却する。ここで、−30℃より温度の高い冷気であれば60分間より冷却時間が長くなり好ましくない。また、−50℃より温度の低い冷気であれば、部分的な凍結が生じ、野菜の組織を破壊してしまうので好ましくない。
【0014】
予備冷却工程を経た野菜は、そのまま特定温度帯で保存する空間(例えば倉庫等)に積み上げて保存してもよいが、野菜相互の密着をなくし、また保存状態から取り出して取り扱う際の便宜を考慮した場合、各野菜は真空包装して特定温度帯で保存することが好ましい。真空包装された野菜は、包装フィルムと野菜との間に断熱材となる空気が入り込まないので、特定温度帯で保存する空間の雰囲気温度とほぼ等しい温度に野菜を冷却し、保存できる。
【0015】
予備冷却工程を経た野菜は、0℃〜−5℃、好ましくは−1℃〜−3℃の特定温度帯で保存する。特定温度帯での保存は、0℃より低い温度で保存する野菜の性質を変化させずに、週単位又は月単位での野菜の保存を可能にする。これから、0℃を超える温度での保存は、特定温度帯での保存にならない。また、−5℃より低い温度での保存は、特定温度帯での保存を超える従来公知の冷凍保存になりかねず、低温スチーミング工程を経る本発明の野菜では、万一残存する水分が凍結し、野菜の組織を破壊しかねないので好ましくない。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、野菜の種類を問わず、野菜の食感の維持又は向上、栄養素の維持又は向上、色素の維持又は向上、風味の維持又は向上を図りながら、例えば調理時間を短縮する等の付加価値を付して、野菜を週単位又は月単位で長期保存できる保存方法を提供できるようになる。しかも、本発明の保存方法は、低温水洗浄工程で食塩水を用いる以外、なんら化学処理を施さないので、保存される野菜は自然のままである。このように、本発明は、野菜を自然のまま、むしろ付加価値を付与して長期間保存できる保存方法を提供する効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は本発明の保存方法を含む野菜の収穫から出荷までを表すフローチャートである。本例では、低温水洗浄工程、低温スチーミング工程及び予備冷却工程との関係から、特定温度帯で野菜を保存する段階を「特定温度保存工程」、必要により野菜を真空包装する段階を「真空包装工程」と呼ぶ。フローチャート中、破線枠で囲まれた範囲が本発明の処理手順に該当し、最初に野菜の収穫が、最後に保存された野菜の出荷がある。
【0018】
収穫された野菜は、通常汚れているため、本発明に従わない場合でも水洗して泥等を洗い落とす。本発明では、図1に見られるように、低温水洗浄工程により、10℃〜15℃で、塩分の割合が0.3wt%〜0.5wt%である食塩水を用いて野菜を洗浄する。具体的には、例えば収穫元の畑に隣接して設けた洗い場に前記食塩水を溜めて野菜を洗ってもよいが、大量の野菜を洗っていくと塩分の割合が低下していくほか、好ましい水温を保ちにくいことから、収穫された野菜を処理工場等へ持ち帰り、水温管理された食塩水を溜めた水洗槽で野菜を洗うとよい。この場合、前記処理工場等に、続く低温スチーミング工程を実施するスチーミング装置等を設置しておけば、一連の処理を順序よくかつ効率よく実施できる。また、低温水洗浄工程の段階は、野菜の種類が混在していてもよいので、できるだけ大量の野菜が処理できるように、大きな水洗槽を用いることが好ましい。
【0019】
低温水洗浄工程を経た野菜は、一時的に仮積みした後に一定数量毎にまとめて、50℃〜75℃の蒸気で1分間〜60分間の低温スチーミング工程を実施する。スチーミング装置が連続処理に対応する構成のものであれば、低温水洗浄工程を終えた野菜から順低温スチーミング工程を実施することもできる。この低温スチーミング工程は、100℃未満で野菜を蒸すことができればよいが、野菜の種類によって、また同じ野菜でも品種、収穫時期又は収穫場所等によって温度及び処理時間が異なってくる。このため、この低温スチーミング工程は、同一時期に同一場所で収穫された同品種の同じ野菜単位で実施することが好ましい。裏返せば、同じ温度及び同じ処理時間で処理できるのであれば、異なる野菜や異なる品種を同時に処理しても構わない。
【0020】
低温スチーミング工程は、本発明に基づいて保存された野菜について、調理に際してあく抜きが不要になったり、硬い皮や筋が甘く軟らかくなったり、短時間での漬物を作りやすくなる等、各種調理に要する調理時間を短縮できる等、長期保存する野菜の食感の維持又は向上、栄養素の維持又は向上、色素の維持又は向上、風味の維持又は向上を図る働きを有する。これは、低温で野菜を蒸すことにより、野菜の酸化を抑制しながら、水溶性タンパク質や低温で融解する脂肪のみを抽出し、逆にうまみ成分となるタンパク質及び脂肪を野菜に閉じ込めることができるからである。これから、低温スチーミング工程の温度及び処理時間は、処理する野菜において前記低温スチーミングの作用が十分に発揮されるように決定される。
【0021】
低温スチーミング工程を経た野菜は、最終的な特定温度保存工程に向けて、予備冷却工程により、−40℃前後の冷気で1分間〜60分間冷却される。この予備冷却工程は、特定温度保存工程に向けて、低温スチーミング工程で加温された野菜を冷却すると共に、ふやけた野菜を締めることが目的であることから、野菜の種類、品種等によって冷気の温度を加減して、冷却時間が最も短くなるように条件設定することが好ましい。また、前記目的から、予備冷却工程に使用する冷却装置は、スチーミング装置に隣接して設け、低温スチーミング工程を終えた野菜を直ちに予備冷却工程に移行できるようにすることが好ましい。これから、低温スチーミング工程及び予備冷却工程は、同一処理工場で実施できるようにするとよい。
【0022】
予備冷却工程を終えた野菜は、雰囲気温度を特定温度帯に維持できる低温倉庫等に保管し、特定温度保存工程により保存する。特定温度保存工程に用いる冷蔵保存技術は、0℃〜−5℃、好ましくは−1℃〜−3℃の特定温度帯で野菜等を長期保存するのに適していることから、例えばこの冷蔵保存技術のみで野菜を長期保存することが考えられ、現実にもこうした野菜の保存方法はよく知られている。しかし、本発明は、低温水洗浄工程から予備冷却工程までを経ることで、野菜の食感の維持又は向上、栄養素の維持又は向上、色素の維持又は向上、風味の維持又は向上を図りながら、例えば調理時間を短縮する等の付加価値を付することができる。これから、本発明は従来の冷蔵保存技術に付加価値を付け加える技術と見ることができる。
【0023】
特定温度保存工程では、野菜を特定温度帯で保存できればよいので、例えば低温倉庫等に野菜を積み上げてもよいが、個々の野菜の取り扱いの便宜のため、真空包装工程により個々の野菜を真空包装するとよい。この場合、白菜、キャベツ、レタス又は大根等、比較的大柄な野菜は個々に真空包装すればよいが、例えばジャガイモ、サツマイモ、アスパラ、ブロッコリー、カリフラワー又はタマネギ等、比較的小さく複数個単位又は重さ単位で販売される野菜は販売する数単位又は重さ単位で真空包装しておくとよい。こうして真空包装された野菜は、必要数毎に出荷され、真空包装された状態のまま出荷先にまで運搬される。この野菜の運搬に際して特定温度帯で積載可能な冷蔵車を用いると、出荷先に野菜が届くまで本発明の保存方法が実施されることになる。出荷先では、真空包装を開封し、野菜を一度水洗いした後、例えば調理等に使用される。
【実施例】
【0024】
本発明に従って、いくつかの野菜について長期保存を試みた。以下に示す各実施例において、低温水洗浄工程は収穫元の畑に隣接して設けた洗い場又は水洗槽を、低温スチーミング工程は処理工場に設置したスチーミング装置(ラショナル・ジャパン社製「SelfCooking Center(登録商標) 62」)を、予備冷却工程は処理工場に設置した冷却装置(福島工業社製「QXF-006SF5」)を、そして真空包装工程は処理工場に設置した真空包装装置(東静電気社製「V-380G」)をそれぞれ用い、前記予備冷却工程を終えた野菜は、0℃から前記野菜が凍りはじめる直前までの温度帯で雰囲気温度を管理できる低温倉庫で保管した。収穫元の畑から処理工場は、従来公知のトラック輸送による。また、保管後の評価は10人以上の試食による官能評価である。
【0025】
実施例1:
岡山県産の小松菜(葉茎菜類)1kgを、収穫後、塩分0.3wt%、水温15℃の食塩水を用いて洗浄し、処理工場に運んで蒸気温度50℃の低温蒸気により3分間の低温スチーミング工程で処理し、気温−40℃の冷気により芯温(野菜の中核部分又は内部の温度。以下同じ。)が10℃以下になるように約5分間の予備冷却工程で冷却し、500g単位で小松菜を真空包装した後、低温倉庫にて倉庫内温度−1℃で保管した。この小松菜は10日間保管した後でも、収穫後と変わらぬ色合い、風味を有し、旨味が増すほか、シャキシャキした食感を残していた。
【0026】
実施例2:
岡山県産のホウレンソウ(葉茎菜類)1kgを、収穫後、塩分0.3wt%、水温15℃の食塩水を用いて洗浄し、処理工場に運んで蒸気温度50℃の低温蒸気により3分間の低温スチーミング工程で処理し、気温−40℃の冷気により芯温が10℃以下になるように約5分間の予備冷却工程で冷却し、500g単位でホウレンソウを真空包装した後、低温倉庫にて倉庫内温度−1℃で保管した。このホウレンソウは10週間保管した後でも、収穫後と変わらぬ色合い、風味を有し、旨味が増すほか、シャキシャキした食感を残していた。
【0027】
実施例3:
岡山県産のチンゲンサイ(葉茎菜類)1kgを、収穫後、塩分0.3wt%、水温15℃の食塩水を用いて洗浄し、処理工場に運んで蒸気温度75℃の低温蒸気により2分間の低温スチーミング工程で処理し、気温−40℃の冷気により芯温が10℃以下になるように約5分間の予備冷却工程で冷却し、500g単位でチンゲンサイを真空包装した後、低温倉庫にて倉庫内温度−1℃で保管した。このチンゲンサイは10週間保管した後でも、収穫後と変わらぬ色合い、風味を有し、旨味が増すほか、シャキシャキした食感を残していた。
【0028】
実施例4及び実施例5:
岡山県産のジャガイモ(「メークイン」、根菜類)10kgを、収穫後、塩分0.5wt%、水温15℃の食塩水(実施例1〜3に比べて、根菜類を洗浄する食塩水の濃度は高めにするとよい。)を用いて洗浄した後に処理工場へ運んで、まずできるだけ収穫後の硬さで保存する通常処理(実施例4)として、蒸気温度80℃の低温蒸気により20分間の低温スチーミング工程で処理し、気温−40℃の冷気により芯温が10℃以下になるように約15分間の予備冷却工程で冷却し、3kg単位でジャガイモを真空包装した後、低温倉庫にて倉庫内温度−1℃で保管した。また収穫後より軟らかい状態で保存する特別処理(実施例5)として、蒸気温度90℃〜100℃の低温蒸気により20分間の低温スチーミング工程で処理し、気温−40℃の冷気により芯温が10℃以下になるように約15分間の予備冷却工程で冷却し、3kg単位でジャガイモを真空包装した後、低温倉庫にて倉庫内温度−1℃で保管した。通常処理及び特別処理のジャガイモそれぞれは6ヶ月間保管した後でも収穫後と変わらぬ色合い、風味を有し、旨味が増していた。また、通常処理のジャガイモは調理によっても型崩れせず、逆に特別処理のジャガイモはポテトサラダ用等として容易に潰すことができた。
【0029】
実施例6:
徳島県産のサツマイモ(「なると金時」、根菜類)5kgを、収穫後、塩分0.5wt%、水温15℃の食塩水を用いて洗浄し、処理工場に運んで蒸気温度90℃〜100℃の低温蒸気により20分間の低温スチーミング工程で処理し、気温−40℃の冷気により芯温が10℃以下になるように約15分間の予備冷却工程で冷却し、3kg単位でサツマイモを真空包装した後、低温倉庫にて倉庫内温度−1℃で保管した。このサツマイモは6ヶ月間保管した後でも、収穫後と変わらぬ色合い、風味を有し、旨味及び甘味が増していた。
【0030】
実施例7:
青森県産のニンジン(根菜類)5kgを、収穫後、塩分0.5wt%、水温15℃の食塩水を用いて洗浄し、処理工場に運んで蒸気温度90℃〜100℃の低温蒸気により30分間の低温スチーミング工程で処理し、気温−40℃の冷気により芯温が10℃以下になるように約15分間の予備冷却工程で冷却し、1kg単位でニンジンを真空包装した後、低温倉庫にて倉庫内温度−1℃で保管した。このニンジンは6ヶ月間保管した後でも、収穫後と変わらぬ色合い、風味を有し、旨味及び甘味が増していた。
【0031】
実施例8:
兵庫県産のタマネギ(花茎菜類)10kgを、収穫後、塩分0.5wt%、水温15℃の食塩水(タマネギは花茎菜類であるが、葉が密になっているため、根菜類と同程度の濃度を有する食塩水を用いた。)を用いて洗浄し、処理工場に運んで蒸気温度90℃〜100℃の低温蒸気により15分間の低温スチーミング工程で処理し、気温−40℃の冷気により芯温が10℃以下になるように約15分間の予備冷却工程で冷却し、3kg単位でタマネギを真空包装した後、低温倉庫にて倉庫内温度−1℃で保管した。このタマネギは50日間保管した後でも、収穫後と変わらぬ色合い、風味を有し、旨味が増していた。
【0032】
実施例9:
茨城県産のごぼう(根菜類)5kgを、収穫後、塩分0.5wt%、水温15℃の食塩水を用いて洗浄し、処理工場に運んで蒸気温度90℃〜100℃の低温蒸気により20分間の低温スチーミング工程で処理し、気温−40℃の冷気により芯温が10℃以下になるように約15分間の予備冷却工程で冷却し、1kg単位でごぼうを真空包装した後、低温倉庫にて倉庫内温度−1℃で保管した。このごぼうは6ヶ月間保管した後でも、収穫後と変わらぬ色合い、風味を有し、旨味が増していた。
【0033】
実施例10:
岡山県産のレンコン(根菜類)5kgを、収穫後、塩分0.5wt%、水温15℃の食塩水を用いて洗浄し、処理工場に運んで蒸気温度50℃の低温蒸気により20分間の低温スチーミング工程で処理し、気温−40℃の冷気により芯温が10℃以下になるように約15分間の予備冷却工程で冷却し、1kg単位でレンコンを真空包装した後、低温倉庫にて倉庫内温度−1℃で保管した。このレンコンは6ヶ月間保管した後でも、収穫後と変わらぬ色合い、風味を有し、旨味が増していた。
【0034】
実施例11:
愛媛県産の里芋(根菜類)10kgを、収穫後、塩分0.5wt%、水温15℃の食塩水を用いて洗浄し、処理工場に運んで蒸気温度80℃の低温蒸気により30分間の低温スチーミング工程で処理し、気温−40℃の冷気により芯温が10℃以下になるように約15分間の予備冷却工程で冷却し、1kg単位で里芋を真空包装した後、低温倉庫にて倉庫内温度−40℃で保管した。この里芋は6ヶ月間保管した後でも、収穫後と変わらぬ色合い、風味を有し、旨味が増していた。
【0035】
実施例12:
長野県産のブロッコリー(花茎菜類)5kgを、収穫後、塩分0.3wt%、水温15℃の食塩水を用いて洗浄し、処理工場に運んで蒸気温度75℃の低温蒸気により5分間の低温スチーミング工程で処理し、気温−40℃の冷気により芯温が10℃以下になるように約15分間の予備冷却工程で冷却し、1株単位でブロッコリーを真空包装した後、低温倉庫にて倉庫内温度−1℃で保管した。このブロッコリーは6ヶ月間保管した後でも、収穫後と変わらぬ色合い、風味を有し、旨味が増していた。
【0036】
実施例13:
岡山県産のアスパラ(花茎菜類)1kgを、収穫後、塩分0.3wt%、水温15℃の食塩水を用いて洗浄し、処理工場に運んで蒸気温度50℃の低温蒸気により3分間の低温スチーミング工程で処理し、気温−40℃の冷気により芯温が10℃以下になるように約15分間の予備冷却工程で冷却し、100g単位でアスパラを真空包装した後、低温倉庫にて倉庫内温度−1℃で保管した。このアスパラは2週間保管した後でも、収穫後と変わらぬ色合い、風味を有し、旨味が増していた。
【0037】
実施例14:
福島県産のグリンピース(豆類)1kgを、収穫後、塩分0.3wt%、水温15℃の食塩水を用いて洗浄し、処理工場に運んで蒸気温度70℃の低温蒸気により3分間の低温スチーミング工程で処理し、気温−40℃の冷気により芯温が10℃以下になるように約15分間の予備冷却工程で冷却し、500g単位でグリンピースを真空包装した後、低温倉庫にて倉庫内温度−1℃で保管した。このグリンピースは2ヶ月間保管した後でも、収穫後と変わらぬ色合い、風味を有し、旨味が増していた。
【0038】
実施例15:
長野県産のトウモロコシ(「スイートコーン」、穀類)10kgを、収穫後、塩分0.3wt%、水温15℃の食塩水を用いて洗浄し、処理工場に運んで蒸気温度90℃〜100℃の低温蒸気により20分間の低温スチーミング工程で処理し、気温−40℃の冷気により芯温が10℃以下になるように約15分間の予備冷却工程で冷却し、1本単位でスイートコーンを真空包装した後、低温倉庫にて倉庫内温度−1℃で保管した。このトウモロコシは6ヶ月間保管した後でも、収穫後と変わらぬ色合い、風味を有し、旨味が増していた。
【0039】
実施例16:
岡山県産のカボチャ(「坊ちゃん南京」、果菜類)5kgを、収穫後、塩分0.3wt%、水温15℃の食塩水を用いて洗浄し、処理工場に運んで蒸気温度90℃〜100℃の低温蒸気により20分間の低温スチーミング工程で処理し、気温−40℃の冷気により芯温が10℃以下になるように約15分間の予備冷却工程で冷却し、1個単位でカボチャを真空包装した後、低温倉庫にて倉庫内温度−1℃で保管した。このカボチャは6ヶ月間保管した後でも、収穫後と変わらぬ色合い、風味を有し、旨味が増していた。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の保存方法を含む野菜の収穫から出荷までを表すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜を鮮度よく長期にわたって保存する保存方法であって、低温水洗浄工程、低温スチーミング工程及び予備冷却工程を順に経た野菜を、0℃から前記野菜が凍りはじめる直前までの温度帯で保存する野菜の保存方法。
【請求項2】
低温水洗浄工程は、15℃以下の食塩水を用いて野菜を洗浄する請求項1記載の野菜の保存方法。
【請求項3】
食塩水は、塩分の割合が0.1wt%〜1.0wt%である請求項2記載の野菜の保存方法。
【請求項4】
低温スチーミング工程は、30℃〜100℃の蒸気で低温水洗浄工程を経た野菜を1分間〜60分間蒸す請求項1記載の野菜の保存方法。
【請求項5】
予備冷却工程は、−30℃〜−50℃の冷気で低温スチーミング工程を経た野菜を1分間〜30分間冷却する請求項1記載の野菜の保存方法。
【請求項6】
予備冷却工程を経た野菜は、真空包装して0℃から前記野菜が凍りはじめる直前までの温度帯で保存する請求項1記載の野菜の保存方法。
【請求項7】
予備冷却工程を経た野菜は、0℃〜−5℃の温度帯で保存する請求項1記載の野菜の保存方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−159516(P2007−159516A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362515(P2005−362515)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(505464442)株式会社田口青果 (1)
【Fターム(参考)】