説明

野菜又は野菜を使用した食品の風味向上方法

【課題】加熱処理した野菜又は当該野菜を使用した食品の風味を向上する方法を提供する。
【解決手段】野菜又は野菜を使用した食品を、炒めるか、又は焼くかした後に、スクラロースを添加し混合することで、野菜又は当該野菜を使用した食品の風味を向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜又は野菜を使用した食品の風味向上方法、詳細には、野菜又は野菜を使用した食品を、炒めるか、又は焼くかした後に、スクラロースを添加し混合することを特徴とする、野菜又は野菜を使用した食品の風味向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜はビタミンやミネラル等の栄養素並びに繊維質が豊富で、それ自体で食されることもあり、また、数多くの食品にも使用されている。
野菜は、生で食するよりも加熱処理を行ったほうが、甘味が増すなどして食べやすくなることが知られており、炒める、焼く、茹でる、煮る、蒸す、揚げるなどの種々の加熱処理方法が用いられている。
【0003】
スクラロースは、ショ糖の約600倍の甘味を有しており、高甘味度甘味料として、種々の食品の甘味付けだけでなく、野菜などの不快な味や臭いのマスキングなどに広く用いられている。
特許文献1には、スクラロースを添加することで、野菜の青臭さをマスキングできること、及びスクラロースを野菜の青臭さをマスキングする有効量含有する野菜加工食品が記載されている。
特許文献2には、野菜汁にスクラロースを添加することで、野菜汁特有の青臭みやエグ味が少なく、後味が爽やかで飲みやすい野菜飲料が記載されている。
特許文献3には、野菜を加工する際に使用する浸漬液にスクラロースを含有することにより、風味向上効果が得られることが記載されている。
実施例では、スクラロースを含有する浸漬液を沸騰させ、その中にカットしたニンジンを加えてブランチング(茹でる、蒸す)処理を行うことが記載されている。
しかしながら、野菜又は野菜を使用した食品を、炒めるか、又は焼くかした後に、スクラロースを添加することで、野菜又は野菜を使用した食品の風味を向上できることは、いずれにも記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−42021号公報
【特許文献2】特開2010−46047号公報
【特許文献3】特開2008−72999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
野菜は生で食するよりも加熱処理を行ったほうが、甘味が増すなどして食べやすく風味が向上するが、そのためには加熱調理時間をある程度長くする必要があり、炒めるか、又は焼くかする加熱調理方法を行うと、焦げたり、柔らかくなりすぎたり、野菜自体及び野菜を使用した食品の風味が逆に悪くなるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねていたところ、野菜又は野菜を使用した食品を、炒めるか、又は焼くかする調理方法を行った後に、スクラロースを添加し混合することにより、加熱調理時間を短縮しても、野菜又は当該野菜を使用した食品の風味を向上できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記に掲げる野菜又は野菜を使用した食品の風味向上方法に関するものである。
項1.野菜又は野菜を使用した食品を、炒めるか、又は焼くかした後に、スクラロースを添加し混合することを特徴とする、野菜又は野菜を使用した食品の風味向上方法。
項2.野菜がキャベツ、たまねぎ、アスパラガス及びブロッコリーから選ばれる1種以上である、項1記載の野菜又は野菜を使用した食品の風味向上方法。
項3.食品が、キャベツを使用したお好み焼きである、項1記載の野菜を使用した食品の風味向上方法。
【発明の効果】
【0008】
野菜又は野菜を使用した食品を、炒めるか、又は焼くかした後に、スクラロースを添加し混合することで、野菜又は当該野菜を使用した食品の風味を向上することができるので、野菜の加熱調理時間を短縮することができ、野菜が焦げたり、柔らかくなりすぎたりすることを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、野菜又は野菜を使用した食品を、炒めるか、又は焼くかした後に、スクラロースを添加し混合することを特徴とする、野菜又は野菜を使用した食品の風味向上方法に関するものである。
本発明に用いるスクラロースは、ショ糖の約600倍の甘味を有する高甘味度甘味料であり、商業的に入手することができ、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のサンスイートSU100等を挙げることができる。
【0010】
本発明において、野菜に添加し混合するスクラロースの割合は、野菜の種類などによっても異なるが、野菜の質量(可食部分)に対して、スクラロースを1〜100ppm、好ましくは5〜80ppm、さらに好ましくは10〜50ppm添加する。
野菜の重量に対して、スクラロースが1ppmより少ないと、野菜の風味の向上効果が十分ではなく、また、スクラロースが100ppmより多いと、スクラロースの甘味によって、本来の野菜の風味が損なわれるので、いずれも好ましくない。
【0011】
本発明の対象となる野菜の種類は特に制限されず、例えばアスパラガス等の茎菜類、白菜、キャベツ、ほうれん草、小松菜、春菊、モロヘイヤ、ケール、レタス等の葉菜類、ニンジン、大根等の根菜類、タマネギ、ニラ、ネギ等の鱗茎菜類、カリフラワー、ブロッコリー等の花菜類、トマト、ピーマン、トウガラシ、ウリ、カボチャ、キュウリ、インゲン豆、枝豆、エンドウ豆、そら豆等の果菜類、セロリやパセリ等の香草類を挙げることができる。
これらの中で、スクラロースは、特にアスパラガス、キャベツ、タマネギ、ブロッコリーに対して、風味を向上する効果が大きい。
【0012】
本発明の対象となる野菜を使用した食品としては、例えば、ハンバーグ、ミートボール、メンチカツ、コロッケ、シュウマイ、ギョウザ、春巻き、チヂミ、ピザ、天ぷら、フライ、グラタン、リゾット、パエリア、パスタ、ポテトサラダ、牛丼の具、シューマイの具、ギョウザの具、春巻きの具、カレー、カレーフィリング、シチュー、焼き飯、八宝菜、焼きそば、たこ焼き、プルコギ、ジンギスカン、チンジャオロース、ホイコーロー、酢豚、エビチリ、麻婆豆腐、野菜炒め、お好み焼き等が挙げられる。
【0013】
本発明に係る風味が向上した野菜、又は野菜を使用した食品を得るためには、野菜又は野菜を使用した食品を炒めるか、又は焼くかした後に、スクラロースを添加し混合すればよい。
スクラロースの添加方法は特に制限されず、溶液状態にしたスクラロースを添加し混合してもよいし、粉末や顆粒状等といった固体状のスクラロースを添加し混合してもよい。
スクラロースの添加、混合による風味向上効果は、野菜を炒めるか、又は焼くかして加熱した場合に顕著に認められるが、加熱処理でも、野菜を茹でたり、煮たりする場合には顕著な効果が認められない。
なお、スクラロースは熱に対する安定性に優れるので、野菜又は野菜を使用した食品にスクラロース添加し混合した後に、炒めるか、又は焼くかしても、同様の風味向上効果が期待できる。
野菜を使用した食品へのスクラロースの添加割合は、前記の野菜におけるスクラロースの添加割合に基づいて、食品に使用される野菜の量により、決定することができる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の内容を以下の実験例及び実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0015】
実施例1:キャベツ
(試験方法)
キャベツはみじん切りにし、良く混合してから用いた。以下の表1の各加熱調理方法により得られたキャベツに対して、スクラロースを25ppm添加し混合した。
なお、スクラロースは0.05%水溶液を作製し、これをキャベツ95質量部に対し、5質量部添加することで混合した。
(加熱調理方法)
炒める・・・ホットプレートを用い、200℃で3分間加熱した。
茹でる・・・キャベツ100gに対して、1Lの沸騰水で3分間加熱した。
(評価方法)
官能にてキャベツの風味を次のように評価し、結果を表1に示す。
○風味向上効果あり、△やや効果あり、×効果なし
【0016】
【表1】

【0017】
上記の結果から、炒めたキャベツに対してスクラロースを添加し混合することで、風味向上効果が認められた。他方、加熱調理しない生キャベツや、茹でたキャベツに対しては、スクラロースは風味向上効果を示さなかった。
【0018】
実施例2
試験方法
実施例1と同様にして炒めたキャベツに対して、以下の表2の各甘味料を添加し混合して、キャベツの風味を評価した。
各甘味料の添加量は、スクラロース25ppm添加と同等の甘味になるように調整を行った。
評価方法は、実施例1と同様に行ない、結果を表3に示した。
【0019】
【表2】

【0020】
*1:ミラスィー200(大日本住友製薬株式会社製)
*2:レバウディオJ-100(守田化学工業株式会社製)
【0021】
【表3】

【0022】
評価した甘味料の中で、スクラロースが炒めたキャベツの甘味の持続が一番長く、さらに、スクラロースはキャベツの甘みとマッチしており、甘味が強まったような印象を受け、最も好ましいことがわかる。
【0023】
実施例3
下記表4、表5の処方にて、各甘味料を添加したお好み焼きを調製し、その風味を評価して、結果を表6に示した。
(お好み焼きの製法と評価)
・ お好み焼き粉300g、卵150g、各甘味料、及び水360gを混合し、生地を調製した。
(2)キャベツは約1cm角にみじん切りし、部位の偏りをなくすために良く混合した。
(3)生地50gに対してキャベツ50gを混ぜ合わせ、200℃で片面7分、ひっくり返してから5分間焼いた。
(4)十分冷ましてから、実施例1と同様に官能評価を行った。結果を表6に示す。
【0024】
【表4】

※市販品を使用
【0025】
【表5】

【0026】
*3:ネオサンマルクDC(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)
*4:aGスイートP(東洋精糖株式会社製)
【0027】
【表6】

【0028】
スクラロースは、砂糖や他の高甘味度甘味料に比べて、お好み焼きにおけるキャベツの風味を顕著に向上させることがわかる。
【0029】
試験方法
たまねぎは、みじん切りしたものを用いた。生食用はスライスしたものを30分間水にさらして用いた。アスパラガスは、四等分にカットしたものを用いた。ブロッコリーは、一口大のものを四等分にカットして用いた。
それぞれの野菜を以下の調理方法で加熱調理後に、各野菜に対してスクラロースを25ppm添加し混合して、官能にて実施例1と同様に風味を評価した。結果を表7〜9に示した。
(加熱調理方法)
炒める・・・各野菜をフライパンを用いて、中火で3分間加熱した。
茹でる・・・各野菜100gに対して、1Lの沸騰水で3分間加熱した。
【0030】
実施例4:たまねぎ
【表7】

【0031】
実施例5:アスパラガス
【表8】

【0032】
実施例6:ブロッコリー
【表9】

【0033】
以上の結果から、炒めた野菜(たまねぎ、アスパラガス、ブロッコリー)に対して、スクラロース水溶液を添加することで、野菜本来の甘味とマッチした甘味を付与することができる。他方、加熱調理しない生の野菜や、茹でた野菜に対しては、スクラロースは風味向上効果を示さなかった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明により、野菜又は野菜を使用した食品を、炒めるか、又は焼くかした後に、スクラロースを添加し混合することで、野菜又は野菜を使用した食品の風味の向上を図ることができるので、食品工業において有用である。






























【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜又は野菜を使用した食品を、炒めるか、又は焼くかした後に、スクラロースを添加し混合することを特徴とする、野菜又は野菜を使用した食品の風味向上方法。
【請求項2】
野菜が、キャベツ、たまねぎ、アスパラガス及びブロッコリーから選ばれる1種以上である、請求項1記載の野菜又は野菜を使用した食品の風味向上方法。
【請求項3】
食品が、キャベツを使用したお好み焼きである、請求項1記載の野菜を使用した食品の風味向上方法。



























【公開番号】特開2013−9656(P2013−9656A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146000(P2011−146000)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】