説明

量子干渉装置および量子通信システム

【課題】光周波数の異なる2光子間の量子干渉測定を可能にする。
【解決手段】本発明の一実施形態による量子干渉装置は、光周波数の異なる2光子(1,2)のベル状態測定を行う。この量子干渉装置では、光周波数の異なる2光子の一方の光周波数を他方の光周波数に変換し、光周波数が一致した2光子(1’,2)のベル状態測定を行う。これにより、光周波数の異なる2光子間の量子干渉測定が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光周波数の異なる2光子を、2光子の基底状態であるベル状態に対して射影測定するための量子干渉装置に関する。また、このような量子干渉装置を用いて量子状態の転送を行うためのシステム、および量子もつれ状態を遠隔の2者で共有するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
光子の量子状態を遠方に転送する技術として、量子テレポーテーションという手法が知られている(非特許文献1)。図1に、量子テレポーテーションを説明するための系を示す。この系において、ユーザAのノード100にある単一光子光源102からの光子1の偏波に関する量子状態α|1,0>+β|0,1>をユーザBのノード200に転送したいとする。ここで、|a,b>は水平偏波モードに光子がa個、垂直偏波モードに光子がb個存在する状態を表す量子状態ベクトルであり、α,βは|α|+|β|=1を満たす複素数である。添え字1は光子1であることを示している。図に示すように、中継ノード10,20を配置して量子状態をユーザBに転送する。
【0003】
中継ノード20には偏波に関する量子もつれ光子対を発生する量子もつれ光源22を配置する。この光源22により、例えば2光子の量子状態が次式で表される光子2,3を発生する。
【0004】
【数1】

【0005】
これは、偏波に関する量子もつれ状態の一つである。この光子2を中継ノード10に、光子3をユーザBにそれぞれ送付する。一方、ユーザAが用意した光子1もまた中継ノード10に送付する。
【0006】
光子1,2,3をまとめた全系の量子状態は次式で表される。
【0007】
【数2】

【0008】
ここで、式(2)は次のように変形することができる。
【0009】
【数3】

【0010】
ここで、|Φ12,|Φ12,|Ψ12,|Ψ12は光子1、2の偏波状態に対する固有状態(ベル状態)であり、次式で表される。
【0011】
【数4】

【0012】
【数5】

【0013】
式(3)は、光子1,2が4つのベル状態のいずれかに射影測定されれば、光子3の状態が光子1の初期状態をユニタリ変換したものに定まることを示唆している。そこで、光子1、2を中継ノード10においてベル状態測定器(BSM)12でベル状態への射影測定を行い、その結果をユーザBに通常の通信回線30を通じて送付する。ユーザBにおいては、ユニタリ変換器(UT)202でベル状態測定の結果に応じて、光子3の状態を適切にユニタリ変換する。これにより、光子1の初期状態を光子3の転送することができる。
【0014】
ベル状態測定の手法として最もよく用いられるのは、図2に示すように2入力2出力のビームスプリッタ(BS)120と光子検出器122,124を用いる手法である。この手法は、非特許文献2において報告された、Hong-On-Mandel(HOM)効果に基づく。HOM効果とは、識別不可能な光子がBSの2入力ポートに一個ずつ入力されると、2光子はBSの同じ出力ポートから出力されるというものである。ここで2光子が識別不可能であるとは、光子の偏波モード、時間モード、周波数モードなど、すべての物理パラメータが2光子で同一になっている状況を表す。
【0015】
BSに入力される2光子は、偏波状態以外の物理パラメータは識別不可能となっているとする。BS120の2入力ポートに相当するモードをm,n、2出力ポートをx,yとラベル付けすると、BSに光子を入力することにより次のようなユニタリ変換を行うことができる。
【0016】
【数6】

【0017】
【数7】

【0018】
ここでk,kはそれぞれH偏波モードおよびV偏波モードに存在する光子数である。
【0019】
BSの2入力ポートより、量子状態が|Φ±12で表される2光子が、光子1が上記入力ポートmから、光子2が入力ポートnから入力されたとする。このとき、式(6),(7)で表されるユニタリ変換により、BS出力における2光子の量子状態は次のように変換される。
【0020】
【数8】

【0021】
このように、BSの出力ポートにおいては、2光子は常に同一のポートかつ同一の偏波モードに観測される。これは、状態|Ψ±12が入力しているとき、BSに入力されている2光子は同一の偏波状態を持つため、すべての物理パラメータに関して識別不可能の状態になり、前述のHOM効果による同一の出力ポートから2光子が出力されると考えることができる。
【0022】
次に、量子状態が|Ψ12で表される2光子が上記と同様に入力された場合は、BS出力における量子状態は以下のようになる。
【0023】
【数9】

【0024】
最後に、量子状態が|Ψ12で表される2光子が入力された場合は、BS出力における量子状態は以下のようになる。
【0025】
【数10】

【0026】
式(8),(9),(10)から、BSの2出力ポートから光子が一個ずつ出力されるのは、入力された2光子の量子状態が|Ψ12であるときのみであることがわかる。よって、BSの出力に配置された2つの光子検出器122,124が同時に光子を検出したとき、入力された2光子の量子状態は|Ψ12に射影されたことになる。
【0027】
また、式(9)の状態は、同一ポートから異なる偏波モードの光子が出力される状況に相当する。よって、図3に示すように、BS出力ポートにさらに偏波ビームスプリッタ(PBS)126,128を配置し、その出力ポートにそれぞれ光子検出器122−1,122−2,124−1,124−2を配置する。出力ポートxにおけるH偏波モードの光子検出器122−1とV偏波モードの光子検出器122−2、または出力ポートyにおけるH偏波モードの光検出器124−1とV偏波モードの光子検出器124−2の同時計数を観測すれば、入力された2光子は|Ψ12に射影される。また、PBSの出力にかかわらず、出力ポートx側の光子検出器122−1,122−2と出力ポートy側の光子検出器124−1,124−2の同時計数を観測すれば、入力2光子は|Ψ12に射影されたことになる。
【0028】
一方、式(8)の状態は、現在の技術では|Φ12と|Φ12のいずれかであることを区別することは困難である。
【0029】
以上より、図2に示す系より、4つのレベル基底状態から|Ψ12を選択して射影するベル状態測定が、図3に示す系により|Ψ12と|Ψ12を区別して射影することのできるベル状態測定がそれぞれ実現可能である。非特許文献1においては、前者のベル状態測定を用いて量子テレポーテーション実験に成功している。
【0030】
上に述べた量子もつれ光子対は、主に2次または3次の非線形光学効果を用いて発生されている。最近では、例えば非特許文献3などで、光ファイバでの伝送に適した1.5μm帯の量子もつれ光子対の発生が盛んに行われている。1.5μm帯の量子もつれ光子対を用いると、数10kmを超える距離にわたり量子もつれ状態を分配することが可能である(非特許文献4)。このようにして長距離伝送した量子もつれ光子対を用いて、光ファイバ網上で長距離の量子テレポーテーションを行うことが可能である。
【0031】
また、転送するための単一光子状態を発生する技術として、単一の量子系からの発光を用いる手法がある。量子系としては、半導体量子ドットや原子などを用いる。例えば、非特許文献5に報告されている半導体量子ドットを用いた手法においては、既に同一のドットから出力された2光子を用いて前述のHOM効果を観測している。これはすなわち、同一のドットから出力される光子は、その光周波数および時間波形が同一であり、識別不可能になっていることを表している。この単一光子光源は、量子テレポーテーションを含む、量子情報処理のための単一光子を供給するものとして期待されている。
【0032】
量子テレポーテーションは、量子状態を観測することなく遠方に転送できることから、例えば量子暗号の中継器として応用することが可能である。
【0033】
【非特許文献1】D.Bouwmeester et al., Nature 390, 575 (1997).
【非特許文献2】C.K.Hong et al., Phys. Rev. Lett. 59, 2044 (1987).
【非特許文献3】H.Takesue and K.Inoue, Phys. Rev. A 70, 031802 (2004).
【非特許文献4】H.Takesue, Opt. Express 14, 3453 (2006).
【非特許文献5】C.Santori et al., Nature 419, 594 (2002).
【非特許文献6】K.Inoue and K.Shimizu, Jpn. J.Appl. Phys. Part 1, 43, 8048 (2004).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
先に述べたように、1.5μm帯の量子もつれ光子対を用いることにより、長距離の光ファイバ上で量子もつれを分配することが可能となっている。また、単一の量子系を用いて単一光子状態を生成することが可能となっている。しかし、現在の技術では、このような単一光子状態の発生はほとんどの場合500nmから800nm近辺の波長帯において行われている。このため、従来の技術を用いて発生した単一光子は、光周波数の違いによる識別可能性のため、長距離ファイバ伝送に適した1.5μm量子もつれ光子対を用いて量子テレポーテーションすることができなかった。よって、従来技術を用いて発生した単一光子源のほとんどは、長距離の光ファイバ網上を量子テレポーテーションすることは困難であった。
【0035】
また、第2の課題として以下が挙げられる。現在、非特許文献6の例に見られるように、複数の光周波数の量子もつれ光子対を一括発生する技術が開発されている。しかし、前述のように、ベル状態測定における2光子は識別不可能であることが要請されるため、転送したい光子の光周波数が定まっている場合、量子もつれ光子対源から複数の光周波数の量子もつれ光子対が発生している場合にも、テレポーテーションに使用できる光子対は一組に限られていた。これにより、複数の光周波数の量子もつれ光子対を一括発生する光源の量子テレポーテーションへの応用が制限されていた。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明は、このような課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、光周波数の異なる2光子のベル状態測定を行うための量子干渉装置であって、前記2光子の一方の光周波数を他方の光周波数に変換する光周波数変換手段と、前記光周波数変換手段により光周波数が一致した2光子のベル状態測定を行うベル状態測定手段とを備えたこと特徴とする。
【0037】
また、請求項2に記載の発明は、光周波数の異なる2光子のベル状態測定を行うための量子干渉装置であって、前記2光子の一方の光周波数をある特定の光周波数に変換する第1の光周波数変換手段と、前記2光子の他方の光周波数を前記特定の光周波数に変換する第2の光周波数変換手段と、前記第1および第2の光周波数変換手段により光周波数が一致した2光子のベル状態測定を行うベル状態測定手段とを備えたこと特徴とする。
【0038】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の量子干渉装置であって、前記ベル状態測定手段は、ベル状態測定を行う2光子を入力して干渉させる2入力2出力のビームスプリッタと、前記ビームスプリッタの各々の出力に接続された光子検出手段と
を備えたことを特徴とする。
【0039】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の量子干渉装置であって、前記ベル状態測定手段は、ベル状態測定を行う2光子を入力して干渉させる2入力2出力のビームスプリッタと、前記ビームスプリッタの各出力に接続された偏波ビームスプリッタと、前記偏波ビームスプリッタの各出力に接続された光子検出手段とを備えたことを特徴とする。
【0040】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載の量子干渉装置であって、前記周波数変換手段は、2次の非線形光学媒質を備え、光周波数fの光子および光周波数fのポンプ光を入力して、f=f+fを満たす光周波数fの光子を出力することを特徴とする。
【0041】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載の量子干渉装置であって、前記周波数変換手段は、3次の非線形光学媒質を備え、光周波数fの光子、光周波数fp1の第1のポンプ光および光周波数fp2の第2のポンプ光を入力して、f+fp1=f+fp2を満たす光周波数fの光子を出力することを特徴とする。
【0042】
また、請求項7に記載の発明は、第1のノードから第2のノードへ中継ノードを介して光子の量子状態を転送するための量子通信システムであって、単一光子を発生する第1のノードと、請求項1から6のいずれかに記載の量子干渉装置を備えた第1のタイプの中継ノードであって、2光子を受信して、ベル状態測定を行う1つまたは複数の第1のタイプの中継ノードと、量子もつれ状態にある光子対を発生する1つまたは複数の第2のタイプの中継ノードと単一光子を受信し、ユニタリ変換して光子の状態を測定する第2のノードとを備え、前記第1のノードは、前記第1のタイプの中継ノードの最初の中継ノードに前記単一光子を送信するように構成され、前記第1のタイプの中継ノードは、前記第1のノードおよび前記第2のタイプの中継ノードのうち2つのノードからそれぞれ単一の光子を受信し、該受信した2光子のベル状態測定を行うように構成され、前記第2のノードは、前記第2のタイプの中継ノードの最終の中継ノードから前記光子対の一方を受信し、各第1のタイプの中継ノードからベル状態測定の結果を受信して、その結果に基づいて、前記光子対の一方の状態を操作し、該光子の状態を測定するように構成されたことを特徴とする。
【0043】
また、請求項8に記載の発明は、第1のノードと第2のノードの間に中継ノードを介して量子もつれ状態を共有するための量子通信システムであって、単一光子を受信し、ユニタリ変換して光子の状態を測定する第1のノードと、請求項1から6のいずれかに記載の量子干渉装置を備えた第1のタイプの中継ノードであって、2光子を受信して、ベル状態測定を行う1つまたは複数の第1のタイプの中継ノードと、量子もつれ状態にある光子対を発生する1つまたは複数の第2のタイプの中継ノードと単一光子を受信し、ユニタリ変換して光子の状態を測定する第2のノードとを備え、前記第1のノードは、前記第2のタイプの中継ノードの最初の中継ノードから前記光子対の一方を受信し、各第1のタイプの中継ノードからベル状態測定の結果を受信して、その結果に基づいて、前記光子対の一方の状態を操作し、該光子の状態を測定するように構成され、前記第1のタイプの中継ノードは、前記第2のタイプの中継ノードのうち2つの中継ノードからそれぞれ単一の光子を受信し、該受信した2光子のベル状態測定を行うように構成され、前記第2のノードは、前記第2のタイプの中継ノードの最終の中継ノードから前記光子対の一方を受信し、各第1のタイプの中継ノードからベル状態測定の結果を受信して、その結果に基づいて、前記光子対の一方の状態を操作し、該光子の状態を測定するように構成されたことを特徴とする。
【0044】
また、請求項9に記載の発明は、第1のノードから複数の第2のノードへ中継ノードを介して光子の量子状態を転送するための量子通信システムであって、単一光子を発生する第1のノードと、請求項1から6のいずれかに記載の量子干渉装置を備えた第1のタイプの中継ノードであって、2光子を受信して、ベル状態測定を行う1つまたは複数の第1のタイプの中継ノードと、量子もつれ状態にある多チャネルの光子対を発生する1つまたは複数の第2のタイプの中継ノードと、単一光子を受信し、ユニタリ変換して光子の状態を測定する複数の第2のノードとを備え、前記第1のノードは、前記第1のタイプの中継ノードの最初の中継ノードに前記単一光子を送信するように構成され、前記第1のタイプの中継ノードは、前記第1のノードおよび前記第2のタイプの中継ノードのうち2つのノードからそれぞれ単一の光子を受信し、該受信した2光子のベル状態測定を行うように構成され、前記複数の第2のノードの各々は、前記第2のタイプの中継ノードの最終の中継ノードから前記多チャンネルのそれぞれの光子対の一方を受信し、前記第1のタイプの中継ノードから前記光子対の他方に対応するベル状態測定の結果を受信して、その結果に基づいて、前記光子対の一方の状態を操作し、該光子の状態を測定するように構成されたことを特徴とする。
【0045】
また、請求項10に記載の発明は、複数の第1のノードと複数の第2のノード間に中継ノードを介して量子もつれ状態を共有するための量子通信システムであって、単一光子を受信し、ユニタリ変換して光子の状態を測定する複数の第1のノードと、請求項1から6のいずれかに記載の量子干渉装置を備えた第1のタイプの中継ノードであって、2光子を受信して、ベル状態測定を行う1つまたは複数の第1のタイプの中継ノードと、量子もつれ状態にある多チャネルの光子対を発生する1つまたは複数の第2のタイプの中継ノードと、単一光子を受信し、ユニタリ変換して光子の状態を測定する複数の第2のノードとを備え、前記複数の第1のノードの各々は、前記第2のタイプの中継ノードの最初の中継ノードから前記多チャネルのそれぞれの光子対の一方を受信し、前記第1のタイプの中継ノードから前記光子対の他方に対応するベル状態測定の結果を受信して、その結果に基づいて、前記光子対の一方の状態を操作し、該光子の状態を測定するように構成され、前記第1のタイプの中継ノードは、前記第2のタイプの中継ノードのうち2つの中継ノードから前記多チャネルのそれぞれの光子対の一方を受信し、該受信した2光子のベル状態測定を行うように構成され、前記複数の第2のノードの各々は、前記第2のタイプの中継ノードの最終の中継ノードから前記多チャネルのそれぞれの光子対の一方を受信し、前記第1のタイプの中継ノードから前記光子対の他方に対応するベル状態測定の結果を受信して、その結果に基づいて、前記光子対の一方の状態を操作し、該光子の状態を測定するように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0046】
本発明により、光周波数の異なる2光子を、2光子の基底状態であるベル状態に対して射影測定するための量子干渉装置を構築することが可能となる。また、このような量子干渉装置を用いて、量子状態の転送を行う量子通信システム、および量子もつれ状態を遠隔の2者で共有する量子通信システムの構築が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
図4に、本発明の第1の実施形態による量子干渉装置の構成例を示す。この量子干渉装置は、2光子のベル状態を測定するベル状態測定器12と、光子の光周波数を変換する光周波数変換器14とを備えている。量子干渉装置には、光周波数fを有する光子1と、光周波数fを有する光子2がそれぞれのポートから入力される。ただし、f≠fとする。光子1は、光周波数変換器14に入力され、光周波数fの光子1’に変換される。ここで、光周波数変換器14は、光子1の光周波数だけを変換し、他の物理パラメータは変換しない。光子1’と光子2はベル状態測定器12に入力され、4つのベル状態のいずれかに射影測定され、測定結果が出力される。光周波数変換器の構成例については後述する。
【0048】
図5に、本発明の第2の実施形態による量子干渉装置の構成例を示す。この量子干渉装置は、2光子のベル状態を測定するベル状態測定器12と、光子の光周波数を変換する2つの光周波数変換器14−1,14−2とを備えている。量子干渉装置には、光周波数fを有する光子1と、光周波数fを有する光子2がそれぞれのポートから入力される。ただし、f≠fとする。光子1は、光周波数変換器14−1に入力され、光周波数fの光子1’に変換される。また、光子2は、光周波数変換器14−2に入力され、光周波数fの光子2’に変換される。ここで、光周波数変換器14−1,14−2は、光子の光周波数だけを変換し、他の物理パラメータは変換しない。光子1’と光子2’はベル状態測定器12に入力され、4つのベル状態のいずれかに射影測定され、測定結果が出力される。光周波数変換器の構成例については後述する。
【0049】
図6に、本発明の第3の実施形態による量子干渉装置の構成例を示す。この量子干渉装置は、2入力2出力のビームスプリッタ(BS)120と、BSからの光子を検出する2つの光子検出器122,124と、2つの光子検出器の検出信号を解析する解析装置16とを備えている。量子干渉装置には、光周波数fを有する光子1と、光周波数fを有する光子2がそれぞれのポートから入力される。ただし、f≠fとする。光子1は、光周波数変換器14に入力され、光周波数fの光子1’に変換される。ここで、光周波数変換器14は、光子1の光周波数だけを変換し、他の物理パラメータは変換しない。光子1’と光子2はそれぞれBS120の入力ポートmおよびnから入力される。BS120の出力ポートxおよびyから出力された光子はそれぞれ光子検出器122,124により検出される。光子検出器122,124からの検出信号は、解析装置16に入力される。従来の技術で述べたように、2つの光子検出器において同時検出が得られた場合、2光子は|Ψ12に射影されている。よって、解析装置16は、2光子の同時計数が検出されると、出力信号を発生するよう動作する。
【0050】
図7に、本発明の第4の実施形態による量子干渉装置の構成例を示す。この量子干渉装置は、光子の光周波数を変換する2つの光周波数変換器14−1,14−2と、2入力2出力のビームスプリッタ(BS)120と、BSからの光子を検出する2つの光子検出器122,124と、2つの光子検出器の検出信号を解析する解析装置16とを備えている。量子干渉装置は、光周波数fを有する光子1と、光周波数fを有する光子2がそれぞれのポートから入力される。ただし、f≠fとする。光子1は、光周波数変換器14−1に入力され、光周波数fの光子1’に変換される。また、光子2は、光周波数変換器14−2に入力され、光周波数fの光子2’に変換される。ここで、光周波数変換器14−1,14−2は、光子の光周波数だけを変換し、他の物理パラメータは変換しない。光子1’と光子2’は、第3の実施形態と同様、ビームスプリッタ120、光子検出器122,124、解析装置16からなるベル状態測定器に入力され、2光子が|Ψ12に射影された場合、出力信号を発生する。
【0051】
なお、第1および第2の実施形態ともに、図3に述べたBSの出力ポートにそれぞれPBSと2つの光子検出器を配置した系をとることも可能である。この場合、同時計数される光子検出器の組み合わせにより、|Ψ12および|Ψ12の2状態に射影することが可能となる。
【0052】
図8に、本発明に使用することができる光周波数変換器の一例を示す。この光周波数変換器は、入力光子とポンプ光を合波する合波手段140と、合波手段からの入力光子とポンプ光から周波数を変換した光子を生成する2次の非線形光学媒質142と、2次の非線形光学媒質からの不要成分を取り除くフィルタ144とを備えている。入力光子とポンプ光が合波手段により合波され、2次の非線形媒質に入力される。ポンプ光が十分強く、古典的な電磁場と近似できる場合、系の相互作用ハミルトニアンは次式で表される。
【0053】
【数11】

【0054】
ここで、
【0055】
【数12】

【0056】
は、入力光子と、周波数変換後の光子の消滅演算子である。また、χは2次の非線形感受率とポンプ光の電場に比例する定数である。入力光子、ポンプ光、周波数変換後の光子の光周波数をf,f,fとすると、これらの間には次式の関係が成立する。
【0057】
【数13】

【0058】
式(11)より、ハイゼンベルグの運動方程式は次式のように得られる。
【0059】
【数14】

【0060】
【数15】

【0061】
上式の解は次のように得られる。
【0062】
【数16】

【0063】
【数17】

【0064】
ここで、
【0065】
【数18】

【0066】
は時刻t=0におけるモードxの消滅演算子である。周波数変換後の光子の平均光子数
【0067】
【数19】

【0068】
は次式で与えられる。
【0069】
【数20】

【0070】
特に、光周波数変換の場合、t=0における光周波数fの光子数は
【0071】
【数21】

【0072】
だから、
【0073】
【数22】

【0074】
となる。上式より、1個の入力光子が入力された場合、sinχtの確率で光周波数変換されることがわかる。特に、χt=π/2のとき、入力光子は100%の確率で周波数変換される。
【0075】
2次の非線形媒質から出力された光子は、光周波数fを透過するフィルタを通過させることにより残留ポンプ光や他の雑音光子などを除去させる。その結果、出力ポートからは周波数変換後の光子を取り出すことができる。
【0076】
本実施形態の光周波数変換器によると、式(12)より、入力光子の光周波数fは、周波数変換後の光周波数fに比べて小さくなることがわかる。すなわち、本光周波数変換器は、必ず周波数を増大する方向に光周波数変換する。言いかえれば、波長を短くする方向に波長変換する。
【0077】
図9に、本発明に使用することができる光周波数変換器の別の一例を示す。この光周波数変換器は、入力光子と2つのポンプ光を合波する合波手段140と、合波手段からの入力光子と2つのポンプ光から周波数を変換した光子を生成する3次の非線形光学媒質146と、3次の非線形光学媒質からの不要成分を取り除くフィルタ144とを備えている。入力光子と光周波数fp1およびfp2を持つ2つのポンプ光が合波手段により合波され、3次の非線形媒質に入力される。2つのポンプ光が十分強く、古典的な電磁場と近似できる場合、その周波数変換の特性は式(11)、(13)、(14)、(15)、(16)、(17)、(18)とまったく同一の式で表される。ただし、式(11)のχはここでは3次の非線形感受率と2つのポンプ光の電場に比例する定数となり、2ポンプ光と入力光子、周波数変換後の光子の光周波数の間には次の関係が成立する。
【0078】
【数23】

【0079】
この式より、図8の光周波数変換器と異なり、fとfの大小関係は、2ポンプ光の周波数を適当に配置することにより、f<f,f>fのどちらにでも設定できることがわかる。よって、この光周波数変換器により、入力光子の周波数を、増大および減少の両方向に変換することが可能となる。
【0080】
図8の場合と同様に、3次の非線形媒質から出力された光子は、光周波数fを透過するフィルタを通過させることにより残留ポンプ光や他の雑音光子などを除去させる。その結果、出力ポートからは周波数変換後の光子を取り出すことができる。
【0081】
図10に、本発明による量子干渉装置を用いた量子通信システムの第1の実施例を示す。この量子通信システムは、ユーザAのノード100と、2つの中継ノード10,20と、ユーザBのノード200とから構成されている。この通信システムにおいて、ユーザAのノード100にある単一光子光源102からの光子1の偏波に関する量子状態を、中継ノード10,20を介してユーザBのノード200に転送する。
【0082】
ユーザAのノード100は単一光子光源102を備え、光周波数がfであり、送付したい量子状態をもつ単一光子1を発生する。この光源から発生した光子1は、光伝送路を介して中継ノード10に送付される。中継ノード20は、量子もつれ発生装置22を備え、量子もつれ状態にある光周波数fの光子2および光周波数fの光子3を発生する。光子2は光伝送路を介して中継ノード10に送付され、光子3は光伝送路を介してユーザBに送付される。中継ノード10は、図4から図7で述べた量子干渉装置15を有し、光子1および光子2についてベル状態測定を行う。ベル状態測定の結果は、通信手段30を介してユーザBに送付される。
【0083】
ユーザBのノード200は、制御装置212と光子測定装置214とを備えている。ユーザBのノード200は、送付されたベル状態測定の結果に基づき、制御装置212により光子3の状態を操作し(ユニタリ変換)、光子測定装置214により光子3の状態を測定する。本実施例においては、光子3の偏波に関する量子状態を測定する。また、測定可能な量子状態のときだけ、ゲートを開け、他は捨てるといった制御を行ってもよい。これは、例えば、光子検出器をゲート動作させたり、あるいは取得したデータからソフトウェア上で削除するなどして実現することができる。これにより、ユーザBはユーザAが光子1により用意した量子状態を光子3として受信し、測定することができる。なお、図2に示す系より、4つのレベル基底状態のうち|Ψ12のみを選択して射影するベル状態測定においては、測定した2光子の量子状態を送付する必要はなく、ベル状態測定が成功した時刻を送付するだけでよい。
【0084】
図11に、本発明による量子干渉装置を用いた量子通信システムの第2の実施例を示す。この量子通信システムは、ユーザAのノード100と、3つの中継ノード10,20−1,20−2と、ユーザBのノード200とから構成されている。中継ノード20−1は量子もつれ発生装置22−1を備え、量子もつれ状態にある光子1(光周波数f)と光子4(光周波数f)を発生する。同様に、中継ノード20−2は量子もつれ発生装置22−2を備え、量子もつれ状態にある光子2(光周波数f)と光子3(光周波数f)を発生する。光子1と光子2は光伝送路を介して中継ノード10に送付される。光子4と光子3は、光伝送路を介してそれぞれユーザAおよびユーザBに送付される。
【0085】
中継ノード10は、図4から図7で述べた量子干渉装置15を有し、光子1および光子2についてベル状態測定を行う。ベル状態測定の結果は、通信手段30a,30bを介してそれぞれユーザAおよびユーザBに送付される。ユーザAおよびユーザBのノード100,200はそれぞれ、制御装置112,212と光子測定装置114,214とを備えている。ユーザAおよびユーザBの各ノードは、送付されたベル状態測定の結果に基づき、制御装置112,212により光子4,3の状態を操作し(ユニタリ変換)、光子測定装置114,214により光子4,3の状態を測定する。本実施例においては、光子4,3それぞれの偏波に関する量子状態を測定する。この方法によると、光子4と量子もつれの関係にある光子1の量子状態は、量子テレポーテーションにより光子3の量子状態へと転送される。その結果、光子4と光子3の間に量子もつれ状態を形成することが可能となる。
【0086】
図12に、本発明による量子干渉装置を用いた量子通信システムの第3の実施例を示す。この量子通信システムは、ユーザAのノード100と、2つの中継ノード10,20と、ユーザB1からBnで表されるn個のノード200−1〜200−n(nは2以上の自然数)とから構成されている。なお、図12はn=2の場合を示している。
【0087】
中継ノード20は広帯域量子もつれ発生装置24を備え、量子もつれ状態にある光周波数f2−k(k=1,2,・・・,n)の光子2−kと光周波数f3−kの光子3−k(k=1,2,・・・,n)の計n組の光子対を発生する。ユーザAのノード100は、広帯域量子もつれ発生装置104を備え、光子1を発生する。光子1は光伝送路を介して中継ノード10に送付される。合計n個の光子2−1〜2−nは光伝送路を介してすべて中継ノード10に送付される。一方、光子3−1〜3−nは光伝送路を介してそれぞれ異なるユーザのノード200−1〜200−nに送付される。
【0088】
中継ノード10は、図4から図7で述べた量子干渉装置15を有する。送付された光子1および光子2−1〜2−nは、この量子干渉装置15に入力される。量子干渉装置中の光周波数変換器は、入力された光子2−1〜2−nのうち一つの光子2−k(k=1,2,・・・,n)だけが光子1と干渉するように、光子1または光子2−kまたはその両方を光周波数変換する。その結果、光子1とある一つの光子2−kについてベル状態測定がなされる。ベル状態測定の結果は、通信手段30を用いてユーザBkに送付される。ユーザBkのノード200−kは、制御装置212−kと光子測定装置214−kとを備えている。ユーザBkのノード200−kは、送付されたベル状態測定の結果に基づき、制御装置212−kにより光子3−kの状態を操作し(ユニタリ変換)、光子測定装置214−kにより光子3−kの状態を測定する。本実施例においては、光子3−kの偏波に関する量子状態を測定する。これにより、ユーザBkはユーザAが光子1により用意した量子状態を光子3−kとして受信し、測定することができる。
【0089】
本構成によると、量子干渉装置15において光子1と量子干渉させる光子2−kを任意に変更することが可能である。よって、ユーザAが送付したい量子状態を、任意のユーザBkに転送することが可能となる。
【0090】
図13に、本発明による量子干渉装置を用いた量子通信システムの第4の実施例を示す。この量子通信システムは、ユーザA1からAnで表されるn個のノード100−1〜100−n(nは2以上の自然数)と、3つの中継ノード10,20−1,20−2と、ユーザB1からBmで表されるm個のノード200−1〜200−m(mは2以上の自然数)とから構成されている。なお、図13はn=m=2の場合を示している。
【0091】
中継ノード20−1は広帯域量子もつれ発生装置24−1を備え、量子もつれ状態にある光周波数f1−kの光子1−k(k=1,2,・・・,n)と光周波数f4−kの光子4−k(k=1,2,・・・,n)のn組の光子対を発生する。同様に、中継ノード20−2は広帯域量子もつれ発生装置24−2を備え、量子もつれ状態にある光周波数f2−jの光子2−j(j=1,2,・・・,m)と光周波数f3−jの光子3−j(j=1,2,・・・,m)のm組の光子対を発生する。合計n個の光子1−1〜1−nおよび合計m個の光子2−1〜2−mはそれぞれ光伝送路を介してすべて中継ノード10に送付される。一方、n個の光子4−1〜4−nは光伝送路を介してそれぞれことなるユーザのノード100−1〜100−nに送付され、m個の光子3−1〜3−mは光伝送路を介してそれぞれ異なるユーザのノード200−1〜200−mに送付される。
【0092】
中継ノード10は、図4から図7で述べた量子干渉装置15を有する。送付された光子1−1〜1−nおよび光子2−1〜2−mは、この量子干渉装置15に入力される。量子干渉装置中の光周波数変換器は、入力された光子1−1〜1−nのうち一つの光子1−k(k=1,2,・・・,n)と光子2−1〜2−mのうち一つの光子2−j(j=1,2,・・・,m)のうちの一組だけが干渉するように、光子1−kまたは光子2−jまたはその両方を光周波数変換する。その結果、ある一つの光子1−kとある一つの光子2−jについてベル状態測定がなされる。ベル状態測定の結果は、通信手段30を用いてユーザAkおよびユーザBjに送付される。ユーザAkのノード100−kは、制御装置112−kと光子測定装置114−kとを備えている。ユーザBjのノード200−jは、制御装置212−jと光子測定装置214−jとを備えている。ユーザAkは、送付されたベル状態測定の結果に基づき、制御装置112−kにより光子4−kの状態を操作し(ユニタリ変換)、光子測定装置114−kにより光子4−kの状態を測定する。また、ユーザBjは、送付されたベル状態測定の結果に基づき、制御装置212−jにより光子3−jの状態を操作し(ユニタリ変換)、光子測定装置214−jにより光子3−jの状態を測定する。本実施例においては、光子4−k,3−jそれぞれの偏波に関する量子状態を測定する。これにより、光子4−kと光子3−jの間に量子もつれ状態を形成することが可能となる。本実施例により、n個のユーザAkとm個のユーザBjの任意の組み合わせの間に量子もつれ状態を分配することが可能となる。
【0093】
図14に、本発明による量子干渉装置を用いた量子通信システムの第5の実施例を示す。この実施例は、第4の実施例と比べて、中継ノード10の構成が異なっている。本実施例における中継ノード10は、m>nとして、n個の量子干渉装置15−1〜15−nと、2つの波長分離器18a,18bと、n×nの光スイッチ19とを備えている。
【0094】
中継ノード20−1,20−2の構成および動作は、第4の実施例と同様である。中継ノード20−1から光伝送路により中継ノード10へ送付されたn個の光子1−1〜1−nは、波長分離器18aによりn個の異なる光路に分離され、それぞれ光スイッチ19に入力される。光スイッチ19は、n個の入力ポートとn個の入力ポートを有し、任意の入力および出力ポート間を接続することが可能である。光スイッチの出力ポートはそれぞれ量子干渉装置15−1〜15−nに接続されている。一方、中継ノード20−2から光伝送路により中継ノード10へ送付されたm個の光子2−1〜2−mは、波長分離器18bによりm個の異なる光路に分離され、それぞれ量子干渉装置15−1〜15−nに入力される。光スイッチ19において、入力ポートと出力ポートの接続の組み合わせを変更することにより、n組の任意の組み合わせの光子1−kと光子2−jについてベル状態測定を同時に行うことができる。このようにして得られたベル状態測定結果を通信手段を介してユーザAkおよびユーザBjに送付することにより、任意のn個の組み合わせのユーザAkおよびユーザBjの間で同時に量子もつれ状態を分配することが可能となる。
【0095】
図15に、本発明による量子干渉装置を用いた量子通信システムの第6の実施例を示す。この量子通信システムは、ユーザAのノード100と、n個の中継ノード10−1〜10−nと、n+1個の中継ノード20−1〜20−(n+1)とから構成されている。これら各ノードは、図11の各ノードと同じ構成を有している。各中継ノード10−kは、中継ノード20−kおよび20−(k+1)からの光子を受信し、量子干渉装置によりベル状態測定をして、その結果を通信手段30によりユーザAのノード100およびユーザBのノード200に送付する。ただし、最初の中継ノード20−1および最終の中継20−(n+1)からの光子対の一方をそれぞれユーザAのノード100およびユーザBのノード200に送付する。図11の場合と同様に、ユーザAおよびBは、通信手段30により送付された中継ノード10−1〜10−nのベル状態測定結果を元に、制御装置により受信した光子の状態を操作し、光子測定装置により光子の状態を測定する。このような構成により、図11の場合に比べて、より長い距離を隔てた2者間に量子もつれ状態を分配することが可能となる。
【0096】
なお、この実施例と同様に、複数個の中継ノードを用いて量子状態を転送する距離を延長する方法は、他の実施例にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】量子テレポーテーションの原理を説明するための図である。
【図2】2光子のベル状態を測定するベル状態測定器の構成例を示す図である。
【図3】2光子のベル状態を測定するベル状態測定器の別の構成例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による量子干渉装置の構成例を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態による量子干渉装置の構成例を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施形態による量子干渉装置の構成例を示す図である。
【図7】本発明の第4の実施形態による量子干渉装置の構成例を示す図である。
【図8】本発明に使用することができる光周波数変換器の一例を示す図である。
【図9】本発明に使用することができる光周波数変換器の別の一例を示す図である。
【図10】本発明による量子干渉装置を用いた量子通信システムの第1の実施例を示す図である。
【図11】本発明による量子干渉装置を用いた量子通信システムの第2の実施例を示す図である。
【図12】本発明による量子干渉装置を用いた量子通信システムの第3の実施例を示す図である。
【図13】本発明による量子干渉装置を用いた量子通信システムの第4の実施例を示す図である。
【図14】本発明による量子干渉装置を用いた量子通信システムの第5の実施例を示す図である。
【図15】本発明による量子干渉装置を用いた量子通信システムの第6の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0098】
1,1’,2,2’,2−1,2−2,3,3−1,3−2,4,4−1,4−2 光子
10,20,20−1,20−2 中継ノード
18a,18b 波長分離器
19 光スイッチ
30 通信回線
100,100−1,100−2,200,200−1,200−2 ユーザノード
120 ビームスプリッタ
122,122−1,122−2,124,124−1,124−2 光子検出器
126,128 偏波ビームスプリッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光周波数の異なる2光子のベル状態測定を行うための量子干渉装置であって、
前記2光子の一方の光周波数を他方の光周波数に変換する光周波数変換手段と、
前記光周波数変換手段により光周波数が一致した2光子のベル状態測定を行うベル状態測定手段と
を備えたこと特徴とする量子干渉装置。
【請求項2】
光周波数の異なる2光子のベル状態測定を行うための量子干渉装置であって、
前記2光子の一方の光周波数をある特定の光周波数に変換する第1の光周波数変換手段と、
前記2光子の他方の光周波数を前記特定の光周波数に変換する第2の光周波数変換手段と、
前記第1および第2の光周波数変換手段により光周波数が一致した2光子のベル状態測定を行うベル状態測定手段と
を備えたこと特徴とする量子干渉装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の量子干渉装置であって、前記ベル状態測定手段は、
ベル状態測定を行う2光子を入力して干渉させる2入力2出力のビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタの各々の出力に接続された光子検出手段と
を備えたことを特徴とする量子干渉装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の量子干渉装置であって、前記ベル状態測定手段は、
ベル状態測定を行う2光子を入力して干渉させる2入力2出力のビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタの各出力に接続された偏波ビームスプリッタと、
前記偏波ビームスプリッタの各出力に接続された光子検出手段と
を備えたことを特徴とする量子干渉装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の量子干渉装置であって、前記周波数変換手段は、2次の非線形光学媒質を備え、光周波数fの光子および光周波数fのポンプ光を入力して、f=f+fを満たす光周波数fの光子を出力することを特徴とする量子干渉装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の量子干渉装置であって、前記周波数変換手段は、3次の非線形光学媒質を備え、光周波数fの光子、光周波数fp1の第1のポンプ光および光周波数fp2の第2のポンプ光を入力して、f+fp1=f+fp2を満たす光周波数fの光子を出力することを特徴とする量子干渉装置。
【請求項7】
第1のノードから第2のノードへ中継ノードを介して光子の量子状態を転送するための量子通信システムであって、
単一光子を発生する第1のノードと、
請求項1から6のいずれかに記載の量子干渉装置を備えた第1のタイプの中継ノードであって、2光子を受信して、ベル状態測定を行う1つまたは複数の第1のタイプの中継ノードと、
量子もつれ状態にある光子対を発生する1つまたは複数の第2のタイプの中継ノードと
単一光子を受信し、ユニタリ変換して光子の状態を測定する第2のノードと
を備え、
前記第1のノードは、前記第1のタイプの中継ノードの最初の中継ノードに前記単一光子を送信するように構成され、前記第1のタイプの中継ノードは、前記第1のノードおよび前記第2のタイプの中継ノードのうち2つのノードからそれぞれ単一の光子を受信し、該受信した2光子のベル状態測定を行うように構成され、前記第2のノードは、前記第2のタイプの中継ノードの最終の中継ノードから前記光子対の一方を受信し、各第1のタイプの中継ノードからベル状態測定の結果を受信して、その結果に基づいて、前記光子対の一方の状態を操作し、該光子の状態を測定するように構成されたことを特徴とする量子通信システム。
【請求項8】
第1のノードと第2のノード間に中継ノードを介して量子もつれ状態を共有するための量子通信システムであって、
単一光子を受信し、ユニタリ変換して光子の状態を測定する第1のノードと、
請求項1から6のいずれかに記載の量子干渉装置を備えた第1のタイプの中継ノードであって、2光子を受信して、ベル状態測定を行う1つまたは複数の第1のタイプの中継ノードと、
量子もつれ状態にある光子対を発生する1つまたは複数の第2のタイプの中継ノードと
単一光子を受信し、ユニタリ変換して光子の状態を測定する第2のノードと
を備え、
前記第1のノードは、前記第2のタイプの中継ノードの最初の中継ノードから前記光子対の一方を受信し、各第1のタイプの中継ノードからベル状態測定の結果を受信して、その結果に基づいて、前記光子対の一方の状態を操作し、該光子の状態を測定するように構成され、前記第1のタイプの中継ノードは、前記第2のタイプの中継ノードのうち2つの中継ノードからそれぞれ単一の光子を受信し、該受信した2光子のベル状態測定を行うように構成され、前記第2のノードは、前記第2のタイプの中継ノードの最終の中継ノードから前記光子対の一方を受信し、各第1のタイプの中継ノードからベル状態測定の結果を受信して、その結果に基づいて、前記光子対の一方の状態を操作し、該光子の状態を測定するように構成されたことを特徴とする量子通信システム。
【請求項9】
第1のノードから複数の第2のノードへ中継ノードを介して光子の量子状態を転送するための量子通信システムであって、
単一光子を発生する第1のノードと、
請求項1から6のいずれかに記載の量子干渉装置を備えた第1のタイプの中継ノードであって、2光子を受信して、ベル状態測定を行う1つまたは複数の第1のタイプの中継ノードと、
量子もつれ状態にある多チャネルの光子対を発生する1つまたは複数の第2のタイプの中継ノードと、
単一光子を受信し、ユニタリ変換して光子の状態を測定する複数の第2のノードと
を備え、
前記第1のノードは、前記第1のタイプの中継ノードの最初の中継ノードに前記単一光子を送信するように構成され、前記第1のタイプの中継ノードは、前記第1のノードおよび前記第2のタイプの中継ノードのうち2つのノードからそれぞれ単一の光子を受信し、該受信した2光子のベル状態測定を行うように構成され、前記複数の第2のノードの各々は、前記第2のタイプの中継ノードの最終の中継ノードから前記多チャンネルのそれぞれの光子対の一方を受信し、前記第1のタイプの中継ノードから前記光子対の他方に対応するベル状態測定の結果を受信して、その結果に基づいて、前記光子対の一方の状態を操作し、該光子の状態を測定するように構成されたことを特徴とする量子通信システム。
【請求項10】
複数の第1のノードと複数の第2のノード間に中継ノードを介して量子もつれ状態を共有するための量子通信システムであって、
単一光子を受信し、ユニタリ変換して光子の状態を測定する複数の第1のノードと、
請求項1から6のいずれかに記載の量子干渉装置を備えた第1のタイプの中継ノードであって、2光子を受信して、ベル状態測定を行う1つまたは複数の第1のタイプの中継ノードと、
量子もつれ状態にある多チャネルの光子対を発生する1つまたは複数の第2のタイプの中継ノードと、
単一光子を受信し、ユニタリ変換して光子の状態を測定する複数の第2のノードと
を備え、
前記複数の第1のノードの各々は、前記第2のタイプの中継ノードの最初の中継ノードから前記多チャネルのそれぞれの光子対の一方を受信し、前記第1のタイプの中継ノードから前記光子対の他方に対応するベル状態測定の結果を受信して、その結果に基づいて、前記光子対の一方の状態を操作し、該光子の状態を測定するように構成され、前記第1のタイプの中継ノードは、前記第2のタイプの中継ノードのうち2つの中継ノードから前記多チャネルのそれぞれの光子対の一方を受信し、該受信した2光子のベル状態測定を行うように構成され、前記複数の第2のノードの各々は、前記第2のタイプの中継ノードの最終の中継ノードから前記多チャネルのそれぞれの光子対の一方を受信し、前記第1のタイプの中継ノードから前記光子対の他方に対応するベル状態測定の結果を受信して、その結果に基づいて、前記光子対の一方の状態を操作し、該光子の状態を測定するように構成されたことを特徴とする量子通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2010−91685(P2010−91685A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260012(P2008−260012)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人 科学技術振興機構、「通信波長帯量子もつれ光子とその応用システム」の中の「時間位置もつれ光子対を用いた量子通信実験」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】