量子情報の検査
量子検査又は量子状態比較(QSC)が、量子デジタル署名の検証照合に適した態様で未知の光子状態を比較し、量子ゲート(610)の演算を検査することができるか、又はエンタングルメントを検出することができる。QSCシステムは、測定される制御チャネル(C)を有する制御スワップゲート(110)、ビームスプリッタ(212)、及び測定される制御チャネル(C)を有する制御位相ゲート(214)、又は出力チャネル上にパリティ検出器(310)を有するビームスプリッタ(312)を含むことができる。QSCシステム(700)は、エンタングルした光子状態を生成するためにも使用され得る。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
デジタル署名によって、送信者が、デジタル送信信号に印をつけることができ、それによりその送信信号の受信者が、その送信信号の出所を確認し、その送信信号の改竄を検出できる。従って、認可された関係者だけが、要求されたデジタル署名を提供し、その送信信号が本物であることを証明できる限り、デジタル署名による送信は安全である。従来のデジタル署名による送信の場合、送信の安全性は、数学的な一方向関数が秘密情報(例えば、秘密鍵)を公衆伝送のための情報に変換するという仮定に基づく。しかしながら、従来の計算能力に対する一方向関数の安全性は一般に証明されているわけではなく、少なくともいくつかの一方向関数は量子コンピューティング技術に対して安全ではないので、認可されていない第三者が、公衆伝送から秘密情報を抽出して、デジタル署名を偽造することが可能になる。
【0002】
Gottesman及びChuang著「Quantum Digital Signatures」(http://arxiv. org/abs/quant-ph/0105032)によって記述されるような量子デジタル署名技術は、情報を安全に伝送するために量子物理学の基本原理を使用する。これらの技術によって、送信者は、量子状態を署名として用いて、メッセージに署名することが可能になる。特に、送信者は、送信者だけが知っている秘密情報に対応する量子状態のコピーを作成することができる。その後、送信者は、その量子状態のコピーを、選択された受信者に配布することができ、それら受信者はその量子状態のコピーを用いて、そのメッセージを認証するか、又は改竄を検出する。量子コピー不可能性(quantum no-cloning theorem)によって、送信者以外の人が、量子状態/署名のさらなるコピーを作成するのを防ぐとともに、傍受及び測定によって量子署名は破壊されるが、秘密情報に関する限られた手掛かりだけは提供される。従って、適切な配布方法によって、量子デジタル署名の安全性を保つことができる。
【0003】
量子デジタル署名を認証するには一般に、その署名を表す量子状態のコピーを比較する必要がある。従って、状態比較のための効率的な方法が必要とされている。
【0004】
概要
本発明の一態様によれば、量子状態比較(Quantum State Comparison:QSC)システムが、量子システムを検査して、未知の状態が等しいこと、又は未知の状態のエンタングルメントのような特性を検出することができる。例えば、QSCを用いて、量子署名を検証することができるか、量子ゲートの動作を検査することができるか、又は量子状態のエンタングルメントを検出することができる。さらに、入力状態に対するQSC検査の影響を用いて、入力状態をエンタングルすることができるか、又はエンタングルメントを検出することができる。本発明の一実施形態は、第1の量子状態を入力するための第1のフォトニックチャネルと、第2の量子状態を入力するための第2のフォトニックチャネルと、第1のフォトニックチャネル及び第2のフォトニックチャネルを干渉させるように配置された第1のビームスプリッタと、第2のフォトニックチャネルを測定するように配置された検出器システムとを含むシステムである。検出器システムからの第1の測定結果の確率は、第1の量子状態及び第2の量子状態が第1の関係を満たす場合(例えば、同じである場合)に100%であり、第1の量子状態及び第2の量子状態が第2の関係を満たす場合(例えば、同じでない場合)に100%未満である。
【0005】
種々の図面において同じ参照符号を用いる場合、類似又は同一の要素を示している。
【0006】
詳細な説明
本発明の一態様によれば、制御スワップゲートを用いる検査が、2つの未知の量子状態を比較して、2つの比較される状態が同じであることを検証することができる。そのような比較は、1つのメッセージに関連付けられた量子署名を認証するために、量子署名を有するメッセージの破損又は改竄を検出するために、量子状態を比較するために、エンタングルメントを検出するために、又は入力状態をエンタングルするために適用され得る。
【0007】
図1Aは、本発明の一実施形態による量子状態比較(Quantum State Comparison:QSC)システム100を示す。QSCシステム100は、制御スワップゲート110と、2つのアダマール変換ゲート120及び130とを含み、それらは全体として、3つの量子システムに関するコヒーレント量子変換を実行する。それらの量子システムのうちの2つは、等しい次元Dから成り、未知の量子状態|A〉及び|B〉にある。例示的な実施形態では、量子状態|A〉及び|B〉はnキュービット状態(ただし、nは1以上の整数)であるが、代案として、量子状態|A〉及び|B〉は、他の離散量子情報(即ち、1つ又は複数のキューディット(qudit))、又は連続量子情報(即ち、1つ又は複数のキューナット(qunat))を表すことができる。第3の量子システムは一般に、制御キュービット|C〉に対応する。
【0008】
アダマールゲート120及び130は、式1に示されるように制御チャネルキュービットを変換し、その場合、制御スワップゲート110に基底状態|1〉を適用することによって、状態|A〉及び|B〉のスワッピングを生じるが、基底状態|0〉を適用してもスワッピングを生じない。例示された実施形態では、制御キュービット|C〉は最初に既知の状態|0〉にあり、その結果、アダマールゲート120の出力状態は、1/21/2(|0〉+|1〉)であることがわかっている。代替の実施形態では、アダマールゲート120は除かれることができ、他の技術を用いて、所望の制御キュービット状態1/21/2(|0〉+|1〉)を生成することができる。さらに、制御キュービット|C〉の初期の既知の状態の他の選択(アダマールゲート120を使用、又は使用しない)によっても、さらに後述されるように、類似した比較結果を達成することができる。
【0009】
【数1】
【0010】
式2は、図1におけるアダマールゲート120の演算後の積状態に対する制御スワップゲート110の作用を示す。制御スワップゲート110の後に、アダマールゲート130がさらに、制御チャネルを変換して、式3に示される形を有する状態を生成する。
【0011】
【数2】
【0012】
検出器140が制御チャネルを測定し、詳細には、制御状態|0〉と制御状態|1〉とを区別する射影測定を実行する。式3から、状態|0〉に対応する測定の確率は1/2(1+|〈A|B〉|2)である。従って、状態|A〉及び|B〉が同じである場合には、状態|0〉に対応する測定の確率は1であり、検出器140からの測定信号Xは常に、状態|0〉に対応する値を有するであろう。状態|A〉及び|B〉が小さな内積を有する場合には、状態|0〉に対応する測定の確率は、1より小さくなり、状態|A〉及び|B〉が直交する場合には半分になるであろう。
【0013】
QSCシステム100の重要な用途は、測定値Xを用いて、2つの未知の量子状態|A〉及び|B〉が異なるか否かを判定することである。上述したように、上記のQSCシステム100における制御チャネルの一回の変換及び測定は、測定結果Xが状態|1〉に対応する値を有する場合には、状態|A〉及び|B〉が同じではないことを示すであろう。しかしながら、状態|A〉及び|B〉が異なる場合、一回の測定では、状態|0〉に対応する測定結果は、状態|A〉及び|B〉が同じであるときのように100%にはならないが、それでも、その確率は0ではない。従って、一回の測定は、1/2(1+|〈A|B〉|2)の確率で状態|A〉及び|B〉が異なることを検出し損なうことになり、それは、状態|A〉及び|B〉が異なるときに1未満である。
【0014】
状態|A〉及び|B〉のk個のコピーがあり、変換及び測定をk回繰り返すものと仮定すると、状態|A〉及び|B〉が異なることを検出し損なう、全ての測定結果Xkの確率P(k)は、式4に示されるように、数kとともに指数関数的に減少する。従って、状態|A〉及び|B〉が異なることを検出し損なう確率P(k)は、状態|A〉及び|B〉の利用可能なコピーの数kが十分に大きい場合には、任意に小さくすることができる。
【0015】
【数3】
【0016】
また、QSCシステム100は、Aチャネル及びBチャネル上の入力状態が混合された状態ρ及びσである場合にも使用され得る。しかしながら、混合された状態ρ及びσが同じ場合であっても、状態|0〉に対応する制御チャネルの測定値Xの確率は1未満である。2つの混合された状態ρ及びσにQSCシステム100を適用すると、制御状態|0〉に対応する結果を有する測定値は、確率1/2+1/2Trace(ρ・σ)で観測されるであろう(ただし、Traceは、混合された状態ρ及びσのための2つの密度行列の積より大きい)。従って、この測定は、2つの混合された状態ρ及びσが同じであるか否かを検出することはできないが、QSCシステム100は、実際には同じ純粋な状態(例えば、ρ=σ=|φ〉〈φ|)である「混合された」状態ρ及びσを検出することができる。詳細には、延長された一連の測定が全て制御状態|0〉に対応する結果を与える場合には、2つの「混合された」状態ρ及びσは実際には等しい純粋な状態でなければならない。
【0017】
量子状態|A〉、|B〉及び|C〉は一般に、任意の物理系の量子状態とすることができ、その物理系のために、制御スワップゲート110、アダマールゲート120及び130、並びに検出器140を実現することができる。詳細には、各状態|A〉又は|B〉が1つのキュービットに対応する場合、制御スワップゲート110の1つの論理構造は、図1Bに示されるように、3つの制御・制御NOT(CCNOT)ゲート又はトフォリ(Toffoli)ゲート112、114及び116を含む。制御チャネルCの状態は、3つ全てのトフォリゲート112、114及び116をイネーブル又はディスエーブルにし、チャネルA及びBは、制御キュービット状態になることとターゲットキュービット状態になることを繰り返す。その際、トフォリゲート及びアダマールゲートの特定の具現化形態は、チャネルA、B及びCに対応する物理系に依存する。M. A. Nielsen及びI.L. Chuang著「Quantum Computation and Quantum Information」(Cambridge University Press (2000))は、トフォリゲートの構成及び使用法をさらに説明する。このようにして制御スワップゲートを構成するには、多くのCNOTゲートを必要とする可能性がある。
【0018】
本発明の例示的な実施形態では、各量子状態|A〉、|B〉又は|C〉は1つ又は複数の光子チャネルの量子状態である。例えば、量子状態|A〉及び|B〉はそれぞれ、一定の光子数を有する2つ以上の状態(例えばフォック状態)の一次結合、コヒーレント光子状態、又はスクイーズド状態とすることができる。従って、単一のフォトニックチャネル上のフォトニック状態は、キュービット、キューディット又はキューナットのような量子情報を表すことができる。1つの特定の実施形態では、各状態|A〉及び|B〉は、1つ又は複数のキュービットを表し、各キュービットは別個のフォトニックチャネルに対応し、状態|C〉は、さらに別のフォトニックチャネル上の1つのキュービットに対応する。キュービット毎の基底状態|0〉及び|1〉は、例えば、そのチャネル内の0及び1光子にそれぞれ相当するフォック状態に対応することができるか、そのチャネルの時間的に分離されたフォトニック状態に対応することができるか、又はそのチャネル内の光子の直交する直線偏光状態に対応することができる。
【0019】
図2Aは、フォトニック状態のためのQSCシステム200を示しており、この場合、制御スワップゲート210が、単一の制御位相ゲート214と、マッハ−ツェンダー(MZ)干渉計を形成するように構成されたビームスプリッタ212及び216とを用いて実施される。システム200において、状態|A〉及び|B〉はチャネルA及びBに入力される光子状態であり、キュービット状態|C〉は、制御チャネルCに入力される光子状態である。チャネルA、B及びCは、光ファイバ、導波路、及び/又は光子が伝搬することができる自由空間の部分のうちの1つ又はその組み合わせに対応することができる。
【0020】
QSCシステム200の1つの応用形態では、各状態|A〉、|B〉又は|C〉は、対応するチャネルA、B又はC上に単一光子状態が存在しないこと、及び存在することにそれぞれ対応する基底状態|0〉及び|1〉を有する経路符号化されたキュービットである。当業者には明らかであるように、キュービットの偏光符号化、又は時分割多重(TDM)符号化等の他のタイプのキュービット符号化は、QSC200を使用するために経路符号化に変換され得る。例えば、その経路から離れる1つの偏光をQSC200内へ導くことによって、偏光ビームスプリッタが、基底状態|0〉及び|1〉を有する偏光符号化されたキュービットを、それぞれ対応する水平偏光状態|H〉及び垂直偏光状態|V〉に変換することができる。QSCシステム200は、キュービットに対応する状態を比較することに限定されず、それぞれチャネルA及びB上の光子としてキューディット又はキューナットを表すコヒーレント又はスクイーズド光子状態である状態|A〉及び|B〉を同様に比較することができる。
【0021】
図2Aに示されるように、チャネルA及びBは、入力ビームスプリッタ212と、制御位相ゲート214と、オプションのビームスプリッタ216とを含む制御スワップゲート210に入射する。制御位相ゲート214は、ビームスプリッタ212から出力される一方のチャネルB’内にあり、ビームスプリッタ216は、ビームスプリッタ212からの他方のチャネルA’と、制御位相ゲート214からの出力とを受け取る。
【0022】
QSCシステム200の例示的な実施形態では、状態|A〉及び|B〉は経路符号化されたキュービット状態であり、演算ビームスプリッタ212は、式5Aに示されるように入力チャネルA及びB内の光子のための生成演算子a†A及びa†Bを変換する。式5Aでは、演算子a†A’及びa†B’は、ビームスプリッタ212の出力チャネルA’及びB’のための生成演算子である。式5Aの変換を実施するには、式5Aの位相関係を達成するために、ビームスプリッタ212の位置を注意深く調整すること、又はチャネルA、B、A’及び/又はB’内に適切な位相板を追加することが必要とされることもある。同様に、式5Bに示されるように生成演算子a†A’及びa†B’を変換するために、ビームスプリッタ216が位置決めされるか、又は位相板が追加される。ただし、生成演算子a†A’’及びa†B’’は、ビームスプリッタ216の出力チャネルA’’及びB’’のための生成演算子である。
【0023】
【数4】
【0024】
状態|A〉及び|B〉の積は、経路符号化されたキュービット状態に関して、式6の形を有する。式6では、基底状態|0〉Aは真空状態であり、基底状態|1〉Aは単一光子状態であり、A0及びA1は、チャネルAにおいて表される量子情報の複素パラメータである。同様に、チャネルBの場合、基底状態|0〉Bは真空状態であり、基底状態|1〉Bは単一光子状態であり、B0及びB1は、キュービット状態|B〉によって表される量子情報の複素パラメータである。
【0025】
【数5】
【0026】
制御チャネルCが状態|0〉C’にある場合、制御位相ゲート214は位相シフトを引き起こさない。従って、ビームスプリッタ212からのチャネルA’及びB’の状態の相対的な位相は保持され、式6に対して式5A及び5Bの変換を適用することにより、式7Aの形の出力積状態が生成される。対照的に、制御チャネルCが状態|1〉C’にある場合、制御位相ゲート214は位相シフトπを引き起こし、A’ チャネル及びB’チャネルの状態間に相対的な符号変化、即ちa†B’→−a†B’をもたらし、チャネルA’’及びB’’上の出力状態の積は式7Bにおいて与えられる形をとる。従って、入力状態|A〉及び|B〉が式6に示されるようなキュービット状態である場合、ゲート210は、要求される制御されたスワップを実行する。
【0027】
【数6】
【0028】
フォトニック状態に関する演算について、制御位相ゲート214に適したいくつかの具現化形態が知られている。例えば、制御位相ゲート214は、線形光学系を用いて実現され得る。例えば、T.B. Pittman、B.C. Jacobs及びJ.D. Franson著「Probabilistic quantum logic operations using polarizing beam splitter」(Phys. Rev. A64, 062311 (2001))は、確率的である量子ゲートの具現化形態において線形光学系及び測定を用いることを説明する。これらの確率的量子ゲートは、もともと或る確率で所望の演算を実行し損なうことがわかっており、それ故に、量子資源を非効率的に使用する可能性がある。代案として、制御位相ゲート214は、電磁誘導透過(EIT)、又はR. G. Beausoleil、W. J. Munro及びT. P. Spiller著、J. Mod. Opt. 51, 1559 (2004)に記述されるような交差カー非線形性を与えるシステムを用いて実施され得る。
【0029】
QSCシステム200内のアダマールゲート120及び130並びに検出器140は、チャネルC内の制御キュービットに使用される表現に応じて選択される光学素子を用いて実施され得る。詳細には、アダマールゲートは、経路符号化されたフォトニックキュービットに対してビームスプリッタを用いて、又は偏光符号化されたフォトニックキュービットに対して波長板を用いて実現され得る。単一光子状態を用いて表されるキュービットの場合、検出器140は、光子検出器と、状態|0〉(又は代案として状態|1〉)に対応する光子だけを通すフィルタとを用いて実現され得る。その際、光子の検出は、制御キュービットチャネルC’’の状態を、状態|0〉又は|1〉上に射影する。この用途に適している効率的な単一光子検出器は、W. J. Munro、Kae Nemoto、R. G. Beausoleil及びT. P. Spiller著「A High-Efficiency Quantum Non-Demolition Single Photon Number Resolving Detector」(http://arxiv. org/abs/quant-ph/0310066)によって説明される。
【0030】
検出器140によりQSCシステム200内のチャネルC’’を繰返し測定することによって、式4に関して先に説明されたのと同じようにして、入力状態|A〉及び|B〉が等しいか、又は等しくないかを確率的に判定することができる。さらに、制御スワップゲート210のチャネルA’’及びB’’上に出力される光子は、量子情報処理システム(図示せず)の他の所で使用され得る。しかしながら、ゲート210の完全なスワップ機能は、状態|A〉及び|B〉が等しいか否かを判定する場合には不要である。詳細には、状態|A〉及び|B〉の比較に影響を及ぼすことなく、スワップ演算を完全なものにするビームスプリッタ216を省くことができる。
【0031】
また、図2Aのゲート210を含むQSCシステム200は、ビームスプリッタ212及び216が状態の要求された変換又は干渉を実施するという条件で、コヒーレント状態、スクイーズド状態、及びコヒーレント状態の重ね合わせを含む、他のタイプの状態を比較するためにも使用することができる。例えば、状態|A〉及び|B〉がそれぞれコヒーレント状態|α〉A及び|β〉Bである場合に、式8Aは、入力積状態|A〉|B〉|C〉に対するアダマールゲート120及びビームスプリッタ212の所望の演算を示す。アダマールゲート130及びビームスプリッタ216が式8Cにおいて与えられる最終的な出力状態を提供する前に、制御位相ゲート214が、式8Bに示されるようにシステム200の状態を変換する。式8Cは、パラメータα及びβが等しい場合には、制御チャネルC’’が状態|1〉C’’にある確率がゼロであることを明確に示す。結果として、状態|1〉C’’を特定する測定値Xは、パラメータα及びβが等しくないことを示す。
【0032】
【数7】
【0033】
図2Aのスワップゲート具現化形態の原理は、複数のフォトニックチャネルの量子状態|A〉及び|B〉と使用するために拡張され得る。例えば、図2Bは、状態|A〉が2つのフォトニックチャネルA1及びA2の入力状態であり、状態|B〉が2つの他のフォトニックチャネルB1及びB2の入力状態である、QSCシステム220を示す。図2Aに関して説明されたのと同じようにして、制御位相ゲート214及びビームスプリッタ212、216がチャネルA1及びB1の状態に関して演算を行い、制御位相ゲート214’ 及びビームスプリッタ212’、216’がチャネルA2及びB2の状態に関して演算を行う。チャネルCの同じ状態が、制御位相ゲート214及び214’の両方を制御する。従って、各チャネルA1、B1、A2又はB2が1つのキュービットに対応する本発明の一実施形態では、ゲート250が、多チャネル状態|A〉及び|B〉の所望の制御されたスワップを実行する。図2Bのアーキテクチャは、比較される状態当たりn個の光子チャネルを用いるQSCシステムに簡単に拡張されることができ、それは、2n次元の量子状態|A〉及び|B〉を比較するのに有用である。量子状態|A〉又は|B〉当たり2個又はn個のチャネルに適用される場合のQSCシステム220のアーキテクチャは、状態|A〉及び|B〉の対応するチャネルのシリアル検査を実行する。
【0034】
多チャネルQSCシステムの代替のアーキテクチャは、複数のチャネル対を並列に検査することができる。図2Cは、複数の並列の制御チャネルC1及びC2を用いて多チャネル状態|A〉及び|B〉を検査又は比較する、本発明の一実施形態によるQSCシステム240を示す。QSCシステム240では、制御位相ゲート214及びビームスプリッタ212、216がチャネルA1及びB1の状態に関して演算を行い、制御位相ゲート214’ 及びビームスプリッタ212’、216’がチャネルA2及びB2の状態に関して演算を行う。しかしながら、制御チャネルC1の状態|C1〉及びC2の状態|C2〉がそれぞれ、制御位相ゲート214及び214’を制御し、別個の検出器140及び140’が、出力制御チャネルC1’’の測定値X1及びC2’’の測定値X2を提供する。
【0035】
図2BのQSCシステム220の解析は、状態|A〉(又は|B〉)のキュービットがエンタングルしている場合であっても、QSCシステム220が多キュービット状態|A〉及び|B〉を比較し、状態|A〉及び|B〉が異なることを検出することができることを示す。しかしながら、図2CのQSCシステム240は、状態|A〉及び|B〉がキュービットの積状態である、即ちエンタングルしていない状態である場合に、状態|A〉及び|B〉が異なること、又は等しいことを検出する時においてのみ有効である。しかしながら、式9Aに示されるような一般的な形を有する、状態|A〉及び|B〉に対する図2CのQSCシステム240の演算を調べてみると、QSCシステム240を用いて、エンタングルメントを検出できることが示される。式9Aでは、式を簡単にするために、個々のチャネルA1、A2、B1及びB2のための生成演算子α†A1、α†A2、α†B1及びα†B2が演算を行う真空状態が省略されている。各値i、j、r及びsは、合計で範囲{0,1}に制限され、生成演算子α†A1、α†A2、α†B1又はα†B2の冪(累乗)であり、複素パラメータAij又はBrsのための添え字(index:指数)である。パラメータAijは、4つの基底状態{|ij〉A1,A2}に関して状態|A〉の係数であり、パラメータBrsは、4つの基底状態{|rs〉B1,B2}に関して状態|B〉の係数である。
【0036】
【数8】
【0037】
式9Aの状態|A〉及び|B〉から開始する場合、アダマールゲート120及び120’の演算が、式9Bに示されるようにシステムの状態を変換する。その後、制御スワップ250の演算により、システムの状態が、式9Cの形にさらに変換され、この場合、仮の添え字i、j、r、及びsを交換することによって、その式が簡単にされる。式9Dは、アダマールゲート130及び130’の演算後の出力状態|Ψout〉を示す。状態|A〉及び|B〉が同じである場合には、パラメータAij又はBijは、全てのi及びjに関して等しく、チャネルC1’’及びC2’’の状態|01〉及び|10〉に関連付けられる式9Dの項は等しくゼロになる。従って、状態|A〉及び|B〉が同じである場合には、出力状態|Ψout〉は式9Eの形まで簡単になる。
【0038】
【数9】
【0039】
式9Eの第2項は、状態|A〉がエンタングルしていない状態、即ち積状態である場合には、i、j、r及びsの全てに関して0であるが、状態|A〉がエンタングルした状態である場合には、第2項は0以外の値を有する。従って、状態|A〉及び|B〉がいずれもエンタングルしていない状態である場合には、制御チャネルの全ての測定値X1及びX2は、状態|A〉及び|B〉が等しい場合に、制御チャネルC1’’及びC2’’が状態|00〉にあることを示し、制御チャネルC1’’又はC2’’が状態|01〉、|10〉又は|11〉にあることを示す測定値X1及びX2は、エンタングルしていない状態|A〉及び|B〉が等しくないことを示す。
【0040】
状態|A〉及び|B〉がエンタングルした状態である場合には、状態|A〉及び|B〉が等しい場合であっても、測定値X1及びX2が、対応する制御チャネルC1’’及びC2’’が状態|11〉にあることを示す確率は0ではない。従って、QSCシステム240は、エンタングルメント検出器として用いることができる。詳細には、QSCシステム240が状態|A〉の2つのコピーを検査する場合には、状態|A〉がエンタングルしていない状態である場合に、測定値X1及びX2は常に、個々の制御チャネルC1’’及びC2’’が状態|00〉にあることを示すであろう。しかしながら、状態|A〉がエンタングルした状態である場合には、式9Eは、制御チャネルC1’’及びC2’’が状態|11〉にあることを測定値X1及びX2が示すことになる確率が0でないことを示す。結果として、QSCシステム240を用いて、状態|A〉のコピーの検査を繰り返すことによって、状態|A〉がエンタングルしているか否かを高い確度で区別することができる(制御チャネルC1’’又はC2’’が状態|01〉又は|10〉にあることを示す測定値X1及びX2が存在しないことは、入力状態が実際に等しいことの確証を与える)。
【0041】
上記のようにエンタングルメント検出器として動作しているQSCシステム240は、一対のキュービットのエンタングルメントを検出することができる。QSCシステム240のアーキテクチャは、3つ以上の測定制御チャネルを用いる、3つ以上のキュービットのエンタングルメントを検査するように拡張され得る。
【0042】
本発明のさらなる態様によれば、QSCシステムが、入力状態の比較又はエンタングルメント検出のためにパリティ検出を利用することができる。図3Aは、一対のビームスプリッタ312及び316と、パリティ検出器310とを含む検査システム300を示す。ビームスプリッタ312及び316は、上記の式5A及び式5Bにおいて与えられる変換特性を有するように設定される。従って、式6において与えられる形の入力状態|A〉及び|B〉の場合に、検査システム300の状態は式10において与えられる。状態|A〉及び|B〉が等しい場合には、チャネルB’のための生成演算子a†B’において線形である式10の項は0であり、それ故に、チャネルB’の状態は、偶数の光子を含まなければならない。
【0043】
【数10】
【0044】
パリティ検出器310は、チャネルB’の状態が偶数の光子を含むか、又は奇数の光子を含むかを判定する。こうして、チャネルB’において奇数の光子を示すパリティ検出器310からの測定値は、状態|A〉及び|B〉が等しくないことを示す。従って、状態|A〉及び|B〉の検査を何度も繰り返すことによって、状態|A〉及び|B〉が等しいか否かを高い信頼度で判定することができる。本発明の例示的な実施形態では、パリティ検出器310は、「Nonlinear Electromagnetic Quantum Information Processing」と題する共同所有の米国特許出願第10/899,332号に記述されるような、非吸収性で、概ね確定的な検出器である。非吸収性又は非破壊性のパリティ検出器310を利用することに関する利点は、チャネルA’’及びB’’上の光子の出力を、量子情報処理システム内の他の所で利用できることである。代案として、パリティ検出器310は、チャネルB’内の光子を吸収し且つ入力状態内の情報を破壊する吸収性の光子数検出器とすることができ、それは安全性の理由から望ましいかもしれない。
【0045】
チャネルA’、及びパリティ検出器310においてチャネルB’を測定した後のチャネルB’は、ビームスプリッタ316への入力チャネルである。パリティ検出器310が非吸収性である場合には、ビームスプリッタ316は、出力チャネルA’’及びB’’上に出力光子状態を提供することになり、それら出力光子は、状態が等しい|A〉及び|B〉である場合には、状態|A〉及び|B〉にあるであろう。しかしながら、ビームスプリッタ316は、状態|A〉及び|B〉を比較するのに不要である。従って、出力光子が必要とされない本発明の実施形態、例えば、パリティ検出器310が吸収性光子検出器であるシステムでは、ビームスプリッタ316は省くことができる。
【0046】
パリティ検出を用いる検査システムは、1つ又は複数の制御スワップゲートの場合の制御キュービットの測定を用いるQSCシステムの拡張と同様にして、多チャネル入力状態|A〉及び|B〉を検査するように拡張され得る。例えば、図3Bは、各入力状態|A〉又は|B〉が2キュービット状態である検査システム320を示す。検査システム320では、ビームスプリッタ312が、状態|A〉のチャネルA1上のフォトニックキュービットを、状態|B〉のチャネルB1上の対応するフォトニックキュービットと干渉させて、ビームスプリッタ312’が、状態|A〉のチャネルA2上のフォトニックキュービットを、状態|B〉のチャネルB2上のフォトニックキュービットと干渉させる。パリティ検出器330が、チャネルB1’及びB2’上の全光子数が偶数であるか、又は奇数であるかを検出する。奇パリティを示す検出結果Pは、状態|A〉及び|B〉が等しくないことを示し、偶パリティを示す繰返しの検出結果Pは、状態|A〉及び|B〉が等しいことを示す。
【0047】
図3Cは、状態|A〉及び|B〉を検査するためにパリティ検出を用いる別の検査システム340を示す。検査システム340は、パリティ検出器310及び310’が、個々のチャネルB1’及びB2’が偶数の光子を含むか、又は奇数の光子を含むかを示す検出結果P1及びP2を切り離すという点で、検査システム320とは異なる。検査システム340は、図2CのQSCシステム240と同様に、状態|A〉及び|B〉がエンタングルしていない状態である場合には、状態|A〉及び|B〉が異なるか否かを検出でき、又は代案として、状態|A〉がエンタングルした状態であるか、又はエンタングルしていない状態であるかを判定できることが明らかにされ得る。
【0048】
上記の量子状態検査及び比較のためのシステム及びプロセスは、量子署名を安全に照合するのに有用である。図4Aは、システム400を示しており、そのシステム400では、送信者410が、量子署名|Ψi〉を有するメッセージを、そのメッセージの出所を照合又は検証することを望む複数の受信者420に送信する。例示的な実施形態では、量子署名|Ψi〉は、D次元の量子状態|Ψ1〉〜|ΨN〉から成る公知の集合Sから選択される。ただし、状態の数Nは、各状態の次元Dよりもはるかに大きくすることができる(一般的に、Nは約2Dである)。集合S内の利用可能な量子署名|Ψ1〉〜|ΨN〉は、2つの異なる署名間の内積が小さい、即ち〈Ψi|Ψj〉<1であるようになされる。ただし、1≦i≠j≦Nである。既知のハッシュ/誤り訂正符号技術を用いて、大きな数Nの状態及び小さな内積の組み合わせを有する集合Sを提供することができる。Gottesman及びChuang著「Quantum Digital Signatures」(http://arxiv. org/abs/quant-ph/0105032)は、量子署名を選択して使用するためのプロセスをさらに説明する。
【0049】
量子署名|Ψi〉のための添え字(index:指標)i(1≦i≦N)は秘密である(例えば、送信者410だけが知っている)が、送信者410は、量子署名|Ψi〉のコピーを受信者420に公的に配布する。一般に、送信者410は、各受信者420に、量子署名|Ψi〉の複数のコピーを送信することができ、それらのいくつか又は全てが、並列に、又は順次に送信される。ここでの重要な特性は、量子状態量子署名|Ψi〉のk個のコピーが、秘密の添え字iについて、k×log(D)キュービット以下の情報しか与えないことである。その添え字はlog(N)、又は一般に約Dビットの情報を含むので、量子署名|Ψi〉のk個の量子コピーを配布することは、コピーの数kが約D/log(D)よりも少ない限り安全である。
【0050】
全体として署名|Ψi〉のいくつかの公開コピーを有する受信者420は、検証サービス430に送信者の署名のコピーを要求する。その後、送信者420は、QSC比較システム440を用いて、そのメッセージに関連付けられた量子署名が検証サービス430からの署名と同じであることを確認する。
【0051】
図4Bは、QSC比較を用いて量子署名を検証する、本発明の別の実施形態によるシステム450を示す。システム450では、送信者412が、送信者412の識別情報を確認する必要がある受信者422にメッセージを送信する。送信者412からのメッセージは、従来のネットワークを介して送信される古典デジタルメッセージとすることができる。送信者412はさらに、そのメッセージの前、後又はそのメッセージとともに、或いは受信者422からの問い合わせに応答して、受信者422に量子署名|Ψi〉のk個のコピーを送信する。量子署名|Ψi〉は、光ネットワーク、光ファイバ又は自由空間を介して、受信者422に送信される1つ又は複数の光子の量子状態とすることができる。送信者412は一般に、一度に量子署名|Ψi〉の1つ又は複数のコピーを受信者422に送信することができる。
【0052】
量子署名及び/又はメッセージを検証するために、受信者422は、量子署名|Ψi〉のk個のコピーを有するか、又は生成することができる検証サービス432に問い合わせを送信する。一実施形態では、その問い合わせは、送信者のメッセージからの情報を含むので、検証サービス432は、送信者412の秘密情報及びメッセージの内容を用いて、正しい量子署名|Ψi〉を生成することができる。検証サービス432は、量子署名|Ψi〉のk個のコピーを受信者420に送信する。その後、受信者422は、1つ又は複数の比較システム442を用いて、送信者412からの量子署名|Ψi〉と、検証サービス432からの量子署名|Ψi〉とのk回の比較を実行し、それにより、量子署名|Ψi〉が有効であることを高い確率で確認することができる。こうして、受信者422は送信者412の識別情報を検証することができ、必要に応じて、そのメッセージが送信者412からの送信中に変更されなかったことを確認することができる。さらに、量子署名|Ψi〉の2k個のコピーの公開送信が、秘密情報を抽出するのに不十分な情報しか提供しない限り、送信者412の秘密情報は、送信者412及びサービス432しか知り得ない。
【0053】
図4Cは、代替の構成を示しており、この場合、買い手414が、量子署名|Ψi〉のk個のコピーを用いて、売り手424に注文を送信する。量子署名|Ψi〉は一般に、買い手414の秘密情報及び注文の内容に依存するであろう。注文に対する支払いを受けるために、売り手424は、買い手412に代わって支払いを行うように許可された銀行434又は他の金融機関に問い合わせを送信する。銀行434は、量子署名|Ψi〉のk個の認証されたコピー460を有するか、又は生成することができ、売り手424に代金を支払うか否かを判定する際に、QSCシステム444を用いて、認証されたコピー460を、送信者414からのk個のコピーと比較することができる。図4Cにおいて、売り手424は、送信者414からの量子署名|Ψi〉のコピーを銀行434に中継するが、代案として、売り手424からの要求に応答して、送信者414が銀行434に直接的に量子署名|Ψi〉を送信することもできる。
【0054】
システム470の1つの変形形態では、買い手414が、認証されたコピー460を銀行434に与え、銀行434及び売り手424がいずれも買い手414の秘密情報を持たないようにする。代案として、買い手414及び銀行434が同じ秘密情報を有し、銀行434が、その秘密情報に基づいて、且つ売り手424からの注文に基づいて、k個の認証されたコピー460を生成できるようにする。その後、量子状態を比較するためにQSCシステム444を用いて、買い手414が量子署名を与えなかったために無効であるか、又は買い手414によって注文された後に、その注文が変更されたために無効である取引を特定することができる。
【0055】
また、QSC比較は、量子署名の利用可能な次元Dが小さいシステムにおいてデータ機密保護をもたらすためにも使用され得る。例えば、各量子署名が1キュービット状態にあることに制限される、即ち、量子署名の次元Dが2である場合には、1/3に等しい内積〈Ψi|Ψj〉を有する4つの量子署名|Ψ1〉、|Ψ2〉、|Ψ3〉及び|Ψ4〉が利用可能である。ただしiはjに等しくない。量子署名|Ψ1〉、|Ψ2〉、|Ψ3〉及び|Ψ4〉は一般に、単位球面によって画定される四面体の頂点に対応する係数を有し、一方、1つのキュービットの係数は一般に、単位球面上にある1つの点に対応する。
【0056】
図5Aは、当事者(パーティ)510及び520がそれぞれ所有する古典ビット列512及び522が全く同じであることを検証する際に、キュービット状態を用いるシステム500を示す。古典ビット列512及び522は、任意の長さのデータ列から成ることができ、詳細には、古典デジタル署名に対応することができる。検証サービス530が、ビット列512及び522から導出される情報のうちの任意の2ビットに対応する量子通信を繰返し要求し、その後、返送された量子状態|Ψi〉及び|Ψj〉を比較することによって、データ列512及び522が等しいことを確認する。
【0057】
図5Aの例示された実施形態では、検証サービス530は、当事者510及び520に古典的に送信され得る問い合わせを生成する問い合わせ発生器532を含む。各問い合わせは、その問い合わせへの2ビット応答を符号化する量子状態|Ψ1〉、|Ψ2〉、|Ψ3〉又は|Ψ4〉を要求することができる。例えば、検証サービス530は、「あなたのビット列512又は522のうちのビット5及び67が何であるか」又は「あなたのビット列512又は522の最初の10ビットのパリティ及び最後の10ビットのパリティが何であるか」を尋ねることができる。各当事者510又は520は、サービス530からの問い合わせを評価し、且つビット列512又は522の内容に基づいて古典的な2ビット応答を生成する古典データ解析システム514又は524を有する。個々の当事者510及び520の量子状態発生器516及び526は、古典応答に対応する添え字を有する量子状態|Ψ1〉、|Ψ2〉、|Ψ3〉及び|Ψ4〉のうちの1つを選択し、それぞれの量子状態|Ψi〉及び|Ψj〉を送信する。一実施形態では、量子状態|Ψi〉及び|Ψj〉は、適切なチャネルを介して検証サービス530に送信され得るフォトニック状態である。
【0058】
図5Bは、本発明の代替の実施形態を示しており、この場合、当事者560及び570がユニタリー量子ゲート566又は576を用いて、出力状態|Ψi〉又は|Ψj〉を生成する。各ユニタリー量子ゲート566又は576は、対応するデータ解析システム514又は524からの古典入力と、一定の量子状態564又は574とを有し、出力状態|Ψi〉又は|Ψj〉が、データ列512及び522から抽出された古典情報、及び状態564及び574の量子情報の両方に依存するようにする。状態564及び574が同じであり、且つユニタリー演算子566及び576が同じである場合には、当事者560及び570は同じ出力状態を生成する。
【0059】
検証サービス530が、量子状態|Ψi〉及び|Ψj〉の比較を実行して、両方の当事者510及び520が同じ応答を返したことを(確率的に)照合する。このプロトコルの利点は、当事者510及び520がいずれも、2ビット応答を公開しないことである(当事者510及び520は、問い合わせ毎に1キュービットの情報を送信するだけである)。従って、当事者510及び520はいずれも、他方の当事者520又は510からの量子送信を傍受することができず、その情報を迅速に繰り返して、検証サービス530を騙すことはできない。古典データ列512及び522は任意の長さにすることができ、問い合わせが2度用いられることのないように、検証サービス530からの異なる問い合わせの数を十分に多くすることができる。
【0060】
制御スワップ検査の別の応用形態は、2つのユニタリーゲートの効率的な比較である。例えば、図6は、量子ゲート610及び620を比較するために1つ又は複数のQSCシステム630を用いるシステム600を示す。システム600のための入力状態は一般に、形|0,Ψ,Ψ〉の積状態とすることができ、その場合、状態|0〉がQSCシステム630の制御キュービットとして直接的に入力され、同じ状態|Ψ〉が、両方の量子ゲート610及び620に入力される。状態|Ψ〉は、任意の純粋なD次元の量子状態とすることができる。例えば、D次元の光子状態から一対のエンタングルしたD次元状態へのパラメトリック下方変換によって、全く同じ状態|Ψ〉を生成することができる。その後、エンタングルした光子状態の第1の部分及び第2の部分をそれぞれ、量子ゲート610及び620に適用することができる。
【0061】
量子ゲート610及び620の出力状態の対応するチャネルが、それぞれの検査システム(単数又は複数)630に適用される。その後、制御ビット(又は複数の制御ビット)を観測することによって、出力状態が異なることを確率的に検出することができる。詳細には、量子ゲート610及び620が全く同じであり、入力状態|Ψ〉が全く同じである場合には、量子ゲート610及び620からの出力状態は全く同じであり、検査システム630において制御状態|0〉又は偶パリティに対応する測定結果に100%の確率が与えられる。入力状態|Ψ〉は全く同じであるが、量子ゲート610及び620が同じでない場合には、繰返し測定することによって、最終的には、制御キュービット状態|1〉又は奇パリティに対応する結果が生成されるであろう。
【0062】
また、上記の制御スワップシステムは、エンタングルメント発生器として用いることもできる。図7は、本発明の一実施形態によるエンタングルメント発生器700を示す。エンタングルメント発生器700は、制御スワップゲート110と、アダマールゲート120及び130とを含み、それらは構造的には、上記のQSCシステムのうちの何れかの対応する構成要素と同じにすることができる。
【0063】
エンタングルメント発生器700への入力状態は、制御キュービット状態|C〉=|0〉と、D次元の状態|Ψ〉と、状態|Ψ〉に直交するD次元の状態|Ψ⊥〉との積である。式11の左辺によって示されるように、コヒーレント変換(即ち、エンタングラ700の検出器140の前)の出力状態は、3つの部分において(即ち、1つの制御チャネル及び2つのターゲットチャネル上で)最大にエンタングルした状態である。各部分において、このエンタングルメントは2次元を占有し、それ故に、状態|Ψ〉及び|Ψ⊥〉がキュービットを表す場合、この状態は、GHZ状態(|0,0,0〉+|1,1,1〉)/21/2に等価である(局所変換まで)。従って、2つのD次元システム間のエンタングルメントの量は、1つのエンタングル対のエンタングルメントに等しく、完全なD次元のエンタングル状態のエンタングルメントには等しくないことに留意されたい。
【0064】
【数11】
【0065】
式11に示されるような測定値は、変換された状態を状態|Ψ(X)〉に射影し、その状態は、式12において示されるように、測定結果Xに依存する。測定値が制御ビット状態|0〉に対応する結果を有する場合には、状態|Ψ〉及び|Ψ⊥〉は、2パーティ態様(two party way)で偶パリティ状態にエンタングルされる。測定値が制御ビット状態|1〉に対応する結果を有する場合には、状態|Ψ〉及び|Ψ⊥〉は、2パーティ態様で奇パリティ状態にエンタングルされる。入力状態|Ψ〉及び|Ψ⊥〉が完全に直交しない場合には、出力状態はあまりエンタングルされず、その場合、エンタングルメントの量は、混合状態|(|Ψ〉〈Ψ|+|Ψ⊥〉〈Ψ⊥|)のフォンノイマンエントロピーに等しい。
【0066】
【数12】
【0067】
本発明は特定の実施形態に関連して説明されてきたが、その説明は、本発明の応用形態の一例にすぎず、制限するものと見なされるべきではない。開示された実施形態の特徴の種々の改変及び組み合わせが、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1A】本発明の一実施形態による量子状態比較システムのブロック図である。
【図1B】本発明の一実施形態による量子状態比較システムのブロック図である。
【図2A】比較される光子状態のスワッピングを制御しながら制御位相ゲートを用いる、本発明の実施形態による量子状態比較システムを示す図である。
【図2B】比較される光子状態のスワッピングを制御しながら制御位相ゲートを用いる、本発明の実施形態による量子状態比較システムを示す図である。
【図2C】比較される光子状態のスワッピングを制御しながら制御位相ゲートを用いる、本発明の実施形態による量子状態比較システムを示す図である。
【図3A】選択された光子チャネルのパリティ検出を用いる、本発明の実施形態による量子状態比較システムを示す図である。
【図3B】選択された光子チャネルのパリティ検出を用いる、本発明の実施形態による量子状態比較システムを示す図である。
【図3C】選択された光子チャネルのパリティ検出を用いる、本発明の実施形態による量子状態比較システムを示す図である。
【図4A】複数の受信者が1つの量子署名を受信する、本発明の一実施形態における情報の送信及び認証を示す図である。
【図4B】1つの量子署名の複数の認証されたコピーを用いる、本発明の代替の実施形態における情報の送信及び認証を示す図である。
【図4C】1つの量子署名の複数の認証されたコピーを用いる、本発明の代替の実施形態における情報の送信及び認証を示す図である。
【図5A】長いデータ列を安全に検証するために小次元の量子状態を用いる、本発明の実施形態によるシステムを示す図である。
【図5B】長いデータ列を安全に検証するために小次元の量子状態を用いる、本発明の実施形態によるシステムを示す図である。
【図6】制御スワップゲート検査を用いて量子ゲートを比較する、本発明の一実施形態によるシステムを示す図である。
【図7】制御スワップゲート及び射影測定を用いる、本発明の一実施形態によるエンタングルメント発生器を示す図である。
【背景技術】
【0001】
背景
デジタル署名によって、送信者が、デジタル送信信号に印をつけることができ、それによりその送信信号の受信者が、その送信信号の出所を確認し、その送信信号の改竄を検出できる。従って、認可された関係者だけが、要求されたデジタル署名を提供し、その送信信号が本物であることを証明できる限り、デジタル署名による送信は安全である。従来のデジタル署名による送信の場合、送信の安全性は、数学的な一方向関数が秘密情報(例えば、秘密鍵)を公衆伝送のための情報に変換するという仮定に基づく。しかしながら、従来の計算能力に対する一方向関数の安全性は一般に証明されているわけではなく、少なくともいくつかの一方向関数は量子コンピューティング技術に対して安全ではないので、認可されていない第三者が、公衆伝送から秘密情報を抽出して、デジタル署名を偽造することが可能になる。
【0002】
Gottesman及びChuang著「Quantum Digital Signatures」(http://arxiv. org/abs/quant-ph/0105032)によって記述されるような量子デジタル署名技術は、情報を安全に伝送するために量子物理学の基本原理を使用する。これらの技術によって、送信者は、量子状態を署名として用いて、メッセージに署名することが可能になる。特に、送信者は、送信者だけが知っている秘密情報に対応する量子状態のコピーを作成することができる。その後、送信者は、その量子状態のコピーを、選択された受信者に配布することができ、それら受信者はその量子状態のコピーを用いて、そのメッセージを認証するか、又は改竄を検出する。量子コピー不可能性(quantum no-cloning theorem)によって、送信者以外の人が、量子状態/署名のさらなるコピーを作成するのを防ぐとともに、傍受及び測定によって量子署名は破壊されるが、秘密情報に関する限られた手掛かりだけは提供される。従って、適切な配布方法によって、量子デジタル署名の安全性を保つことができる。
【0003】
量子デジタル署名を認証するには一般に、その署名を表す量子状態のコピーを比較する必要がある。従って、状態比較のための効率的な方法が必要とされている。
【0004】
概要
本発明の一態様によれば、量子状態比較(Quantum State Comparison:QSC)システムが、量子システムを検査して、未知の状態が等しいこと、又は未知の状態のエンタングルメントのような特性を検出することができる。例えば、QSCを用いて、量子署名を検証することができるか、量子ゲートの動作を検査することができるか、又は量子状態のエンタングルメントを検出することができる。さらに、入力状態に対するQSC検査の影響を用いて、入力状態をエンタングルすることができるか、又はエンタングルメントを検出することができる。本発明の一実施形態は、第1の量子状態を入力するための第1のフォトニックチャネルと、第2の量子状態を入力するための第2のフォトニックチャネルと、第1のフォトニックチャネル及び第2のフォトニックチャネルを干渉させるように配置された第1のビームスプリッタと、第2のフォトニックチャネルを測定するように配置された検出器システムとを含むシステムである。検出器システムからの第1の測定結果の確率は、第1の量子状態及び第2の量子状態が第1の関係を満たす場合(例えば、同じである場合)に100%であり、第1の量子状態及び第2の量子状態が第2の関係を満たす場合(例えば、同じでない場合)に100%未満である。
【0005】
種々の図面において同じ参照符号を用いる場合、類似又は同一の要素を示している。
【0006】
詳細な説明
本発明の一態様によれば、制御スワップゲートを用いる検査が、2つの未知の量子状態を比較して、2つの比較される状態が同じであることを検証することができる。そのような比較は、1つのメッセージに関連付けられた量子署名を認証するために、量子署名を有するメッセージの破損又は改竄を検出するために、量子状態を比較するために、エンタングルメントを検出するために、又は入力状態をエンタングルするために適用され得る。
【0007】
図1Aは、本発明の一実施形態による量子状態比較(Quantum State Comparison:QSC)システム100を示す。QSCシステム100は、制御スワップゲート110と、2つのアダマール変換ゲート120及び130とを含み、それらは全体として、3つの量子システムに関するコヒーレント量子変換を実行する。それらの量子システムのうちの2つは、等しい次元Dから成り、未知の量子状態|A〉及び|B〉にある。例示的な実施形態では、量子状態|A〉及び|B〉はnキュービット状態(ただし、nは1以上の整数)であるが、代案として、量子状態|A〉及び|B〉は、他の離散量子情報(即ち、1つ又は複数のキューディット(qudit))、又は連続量子情報(即ち、1つ又は複数のキューナット(qunat))を表すことができる。第3の量子システムは一般に、制御キュービット|C〉に対応する。
【0008】
アダマールゲート120及び130は、式1に示されるように制御チャネルキュービットを変換し、その場合、制御スワップゲート110に基底状態|1〉を適用することによって、状態|A〉及び|B〉のスワッピングを生じるが、基底状態|0〉を適用してもスワッピングを生じない。例示された実施形態では、制御キュービット|C〉は最初に既知の状態|0〉にあり、その結果、アダマールゲート120の出力状態は、1/21/2(|0〉+|1〉)であることがわかっている。代替の実施形態では、アダマールゲート120は除かれることができ、他の技術を用いて、所望の制御キュービット状態1/21/2(|0〉+|1〉)を生成することができる。さらに、制御キュービット|C〉の初期の既知の状態の他の選択(アダマールゲート120を使用、又は使用しない)によっても、さらに後述されるように、類似した比較結果を達成することができる。
【0009】
【数1】
【0010】
式2は、図1におけるアダマールゲート120の演算後の積状態に対する制御スワップゲート110の作用を示す。制御スワップゲート110の後に、アダマールゲート130がさらに、制御チャネルを変換して、式3に示される形を有する状態を生成する。
【0011】
【数2】
【0012】
検出器140が制御チャネルを測定し、詳細には、制御状態|0〉と制御状態|1〉とを区別する射影測定を実行する。式3から、状態|0〉に対応する測定の確率は1/2(1+|〈A|B〉|2)である。従って、状態|A〉及び|B〉が同じである場合には、状態|0〉に対応する測定の確率は1であり、検出器140からの測定信号Xは常に、状態|0〉に対応する値を有するであろう。状態|A〉及び|B〉が小さな内積を有する場合には、状態|0〉に対応する測定の確率は、1より小さくなり、状態|A〉及び|B〉が直交する場合には半分になるであろう。
【0013】
QSCシステム100の重要な用途は、測定値Xを用いて、2つの未知の量子状態|A〉及び|B〉が異なるか否かを判定することである。上述したように、上記のQSCシステム100における制御チャネルの一回の変換及び測定は、測定結果Xが状態|1〉に対応する値を有する場合には、状態|A〉及び|B〉が同じではないことを示すであろう。しかしながら、状態|A〉及び|B〉が異なる場合、一回の測定では、状態|0〉に対応する測定結果は、状態|A〉及び|B〉が同じであるときのように100%にはならないが、それでも、その確率は0ではない。従って、一回の測定は、1/2(1+|〈A|B〉|2)の確率で状態|A〉及び|B〉が異なることを検出し損なうことになり、それは、状態|A〉及び|B〉が異なるときに1未満である。
【0014】
状態|A〉及び|B〉のk個のコピーがあり、変換及び測定をk回繰り返すものと仮定すると、状態|A〉及び|B〉が異なることを検出し損なう、全ての測定結果Xkの確率P(k)は、式4に示されるように、数kとともに指数関数的に減少する。従って、状態|A〉及び|B〉が異なることを検出し損なう確率P(k)は、状態|A〉及び|B〉の利用可能なコピーの数kが十分に大きい場合には、任意に小さくすることができる。
【0015】
【数3】
【0016】
また、QSCシステム100は、Aチャネル及びBチャネル上の入力状態が混合された状態ρ及びσである場合にも使用され得る。しかしながら、混合された状態ρ及びσが同じ場合であっても、状態|0〉に対応する制御チャネルの測定値Xの確率は1未満である。2つの混合された状態ρ及びσにQSCシステム100を適用すると、制御状態|0〉に対応する結果を有する測定値は、確率1/2+1/2Trace(ρ・σ)で観測されるであろう(ただし、Traceは、混合された状態ρ及びσのための2つの密度行列の積より大きい)。従って、この測定は、2つの混合された状態ρ及びσが同じであるか否かを検出することはできないが、QSCシステム100は、実際には同じ純粋な状態(例えば、ρ=σ=|φ〉〈φ|)である「混合された」状態ρ及びσを検出することができる。詳細には、延長された一連の測定が全て制御状態|0〉に対応する結果を与える場合には、2つの「混合された」状態ρ及びσは実際には等しい純粋な状態でなければならない。
【0017】
量子状態|A〉、|B〉及び|C〉は一般に、任意の物理系の量子状態とすることができ、その物理系のために、制御スワップゲート110、アダマールゲート120及び130、並びに検出器140を実現することができる。詳細には、各状態|A〉又は|B〉が1つのキュービットに対応する場合、制御スワップゲート110の1つの論理構造は、図1Bに示されるように、3つの制御・制御NOT(CCNOT)ゲート又はトフォリ(Toffoli)ゲート112、114及び116を含む。制御チャネルCの状態は、3つ全てのトフォリゲート112、114及び116をイネーブル又はディスエーブルにし、チャネルA及びBは、制御キュービット状態になることとターゲットキュービット状態になることを繰り返す。その際、トフォリゲート及びアダマールゲートの特定の具現化形態は、チャネルA、B及びCに対応する物理系に依存する。M. A. Nielsen及びI.L. Chuang著「Quantum Computation and Quantum Information」(Cambridge University Press (2000))は、トフォリゲートの構成及び使用法をさらに説明する。このようにして制御スワップゲートを構成するには、多くのCNOTゲートを必要とする可能性がある。
【0018】
本発明の例示的な実施形態では、各量子状態|A〉、|B〉又は|C〉は1つ又は複数の光子チャネルの量子状態である。例えば、量子状態|A〉及び|B〉はそれぞれ、一定の光子数を有する2つ以上の状態(例えばフォック状態)の一次結合、コヒーレント光子状態、又はスクイーズド状態とすることができる。従って、単一のフォトニックチャネル上のフォトニック状態は、キュービット、キューディット又はキューナットのような量子情報を表すことができる。1つの特定の実施形態では、各状態|A〉及び|B〉は、1つ又は複数のキュービットを表し、各キュービットは別個のフォトニックチャネルに対応し、状態|C〉は、さらに別のフォトニックチャネル上の1つのキュービットに対応する。キュービット毎の基底状態|0〉及び|1〉は、例えば、そのチャネル内の0及び1光子にそれぞれ相当するフォック状態に対応することができるか、そのチャネルの時間的に分離されたフォトニック状態に対応することができるか、又はそのチャネル内の光子の直交する直線偏光状態に対応することができる。
【0019】
図2Aは、フォトニック状態のためのQSCシステム200を示しており、この場合、制御スワップゲート210が、単一の制御位相ゲート214と、マッハ−ツェンダー(MZ)干渉計を形成するように構成されたビームスプリッタ212及び216とを用いて実施される。システム200において、状態|A〉及び|B〉はチャネルA及びBに入力される光子状態であり、キュービット状態|C〉は、制御チャネルCに入力される光子状態である。チャネルA、B及びCは、光ファイバ、導波路、及び/又は光子が伝搬することができる自由空間の部分のうちの1つ又はその組み合わせに対応することができる。
【0020】
QSCシステム200の1つの応用形態では、各状態|A〉、|B〉又は|C〉は、対応するチャネルA、B又はC上に単一光子状態が存在しないこと、及び存在することにそれぞれ対応する基底状態|0〉及び|1〉を有する経路符号化されたキュービットである。当業者には明らかであるように、キュービットの偏光符号化、又は時分割多重(TDM)符号化等の他のタイプのキュービット符号化は、QSC200を使用するために経路符号化に変換され得る。例えば、その経路から離れる1つの偏光をQSC200内へ導くことによって、偏光ビームスプリッタが、基底状態|0〉及び|1〉を有する偏光符号化されたキュービットを、それぞれ対応する水平偏光状態|H〉及び垂直偏光状態|V〉に変換することができる。QSCシステム200は、キュービットに対応する状態を比較することに限定されず、それぞれチャネルA及びB上の光子としてキューディット又はキューナットを表すコヒーレント又はスクイーズド光子状態である状態|A〉及び|B〉を同様に比較することができる。
【0021】
図2Aに示されるように、チャネルA及びBは、入力ビームスプリッタ212と、制御位相ゲート214と、オプションのビームスプリッタ216とを含む制御スワップゲート210に入射する。制御位相ゲート214は、ビームスプリッタ212から出力される一方のチャネルB’内にあり、ビームスプリッタ216は、ビームスプリッタ212からの他方のチャネルA’と、制御位相ゲート214からの出力とを受け取る。
【0022】
QSCシステム200の例示的な実施形態では、状態|A〉及び|B〉は経路符号化されたキュービット状態であり、演算ビームスプリッタ212は、式5Aに示されるように入力チャネルA及びB内の光子のための生成演算子a†A及びa†Bを変換する。式5Aでは、演算子a†A’及びa†B’は、ビームスプリッタ212の出力チャネルA’及びB’のための生成演算子である。式5Aの変換を実施するには、式5Aの位相関係を達成するために、ビームスプリッタ212の位置を注意深く調整すること、又はチャネルA、B、A’及び/又はB’内に適切な位相板を追加することが必要とされることもある。同様に、式5Bに示されるように生成演算子a†A’及びa†B’を変換するために、ビームスプリッタ216が位置決めされるか、又は位相板が追加される。ただし、生成演算子a†A’’及びa†B’’は、ビームスプリッタ216の出力チャネルA’’及びB’’のための生成演算子である。
【0023】
【数4】
【0024】
状態|A〉及び|B〉の積は、経路符号化されたキュービット状態に関して、式6の形を有する。式6では、基底状態|0〉Aは真空状態であり、基底状態|1〉Aは単一光子状態であり、A0及びA1は、チャネルAにおいて表される量子情報の複素パラメータである。同様に、チャネルBの場合、基底状態|0〉Bは真空状態であり、基底状態|1〉Bは単一光子状態であり、B0及びB1は、キュービット状態|B〉によって表される量子情報の複素パラメータである。
【0025】
【数5】
【0026】
制御チャネルCが状態|0〉C’にある場合、制御位相ゲート214は位相シフトを引き起こさない。従って、ビームスプリッタ212からのチャネルA’及びB’の状態の相対的な位相は保持され、式6に対して式5A及び5Bの変換を適用することにより、式7Aの形の出力積状態が生成される。対照的に、制御チャネルCが状態|1〉C’にある場合、制御位相ゲート214は位相シフトπを引き起こし、A’ チャネル及びB’チャネルの状態間に相対的な符号変化、即ちa†B’→−a†B’をもたらし、チャネルA’’及びB’’上の出力状態の積は式7Bにおいて与えられる形をとる。従って、入力状態|A〉及び|B〉が式6に示されるようなキュービット状態である場合、ゲート210は、要求される制御されたスワップを実行する。
【0027】
【数6】
【0028】
フォトニック状態に関する演算について、制御位相ゲート214に適したいくつかの具現化形態が知られている。例えば、制御位相ゲート214は、線形光学系を用いて実現され得る。例えば、T.B. Pittman、B.C. Jacobs及びJ.D. Franson著「Probabilistic quantum logic operations using polarizing beam splitter」(Phys. Rev. A64, 062311 (2001))は、確率的である量子ゲートの具現化形態において線形光学系及び測定を用いることを説明する。これらの確率的量子ゲートは、もともと或る確率で所望の演算を実行し損なうことがわかっており、それ故に、量子資源を非効率的に使用する可能性がある。代案として、制御位相ゲート214は、電磁誘導透過(EIT)、又はR. G. Beausoleil、W. J. Munro及びT. P. Spiller著、J. Mod. Opt. 51, 1559 (2004)に記述されるような交差カー非線形性を与えるシステムを用いて実施され得る。
【0029】
QSCシステム200内のアダマールゲート120及び130並びに検出器140は、チャネルC内の制御キュービットに使用される表現に応じて選択される光学素子を用いて実施され得る。詳細には、アダマールゲートは、経路符号化されたフォトニックキュービットに対してビームスプリッタを用いて、又は偏光符号化されたフォトニックキュービットに対して波長板を用いて実現され得る。単一光子状態を用いて表されるキュービットの場合、検出器140は、光子検出器と、状態|0〉(又は代案として状態|1〉)に対応する光子だけを通すフィルタとを用いて実現され得る。その際、光子の検出は、制御キュービットチャネルC’’の状態を、状態|0〉又は|1〉上に射影する。この用途に適している効率的な単一光子検出器は、W. J. Munro、Kae Nemoto、R. G. Beausoleil及びT. P. Spiller著「A High-Efficiency Quantum Non-Demolition Single Photon Number Resolving Detector」(http://arxiv. org/abs/quant-ph/0310066)によって説明される。
【0030】
検出器140によりQSCシステム200内のチャネルC’’を繰返し測定することによって、式4に関して先に説明されたのと同じようにして、入力状態|A〉及び|B〉が等しいか、又は等しくないかを確率的に判定することができる。さらに、制御スワップゲート210のチャネルA’’及びB’’上に出力される光子は、量子情報処理システム(図示せず)の他の所で使用され得る。しかしながら、ゲート210の完全なスワップ機能は、状態|A〉及び|B〉が等しいか否かを判定する場合には不要である。詳細には、状態|A〉及び|B〉の比較に影響を及ぼすことなく、スワップ演算を完全なものにするビームスプリッタ216を省くことができる。
【0031】
また、図2Aのゲート210を含むQSCシステム200は、ビームスプリッタ212及び216が状態の要求された変換又は干渉を実施するという条件で、コヒーレント状態、スクイーズド状態、及びコヒーレント状態の重ね合わせを含む、他のタイプの状態を比較するためにも使用することができる。例えば、状態|A〉及び|B〉がそれぞれコヒーレント状態|α〉A及び|β〉Bである場合に、式8Aは、入力積状態|A〉|B〉|C〉に対するアダマールゲート120及びビームスプリッタ212の所望の演算を示す。アダマールゲート130及びビームスプリッタ216が式8Cにおいて与えられる最終的な出力状態を提供する前に、制御位相ゲート214が、式8Bに示されるようにシステム200の状態を変換する。式8Cは、パラメータα及びβが等しい場合には、制御チャネルC’’が状態|1〉C’’にある確率がゼロであることを明確に示す。結果として、状態|1〉C’’を特定する測定値Xは、パラメータα及びβが等しくないことを示す。
【0032】
【数7】
【0033】
図2Aのスワップゲート具現化形態の原理は、複数のフォトニックチャネルの量子状態|A〉及び|B〉と使用するために拡張され得る。例えば、図2Bは、状態|A〉が2つのフォトニックチャネルA1及びA2の入力状態であり、状態|B〉が2つの他のフォトニックチャネルB1及びB2の入力状態である、QSCシステム220を示す。図2Aに関して説明されたのと同じようにして、制御位相ゲート214及びビームスプリッタ212、216がチャネルA1及びB1の状態に関して演算を行い、制御位相ゲート214’ 及びビームスプリッタ212’、216’がチャネルA2及びB2の状態に関して演算を行う。チャネルCの同じ状態が、制御位相ゲート214及び214’の両方を制御する。従って、各チャネルA1、B1、A2又はB2が1つのキュービットに対応する本発明の一実施形態では、ゲート250が、多チャネル状態|A〉及び|B〉の所望の制御されたスワップを実行する。図2Bのアーキテクチャは、比較される状態当たりn個の光子チャネルを用いるQSCシステムに簡単に拡張されることができ、それは、2n次元の量子状態|A〉及び|B〉を比較するのに有用である。量子状態|A〉又は|B〉当たり2個又はn個のチャネルに適用される場合のQSCシステム220のアーキテクチャは、状態|A〉及び|B〉の対応するチャネルのシリアル検査を実行する。
【0034】
多チャネルQSCシステムの代替のアーキテクチャは、複数のチャネル対を並列に検査することができる。図2Cは、複数の並列の制御チャネルC1及びC2を用いて多チャネル状態|A〉及び|B〉を検査又は比較する、本発明の一実施形態によるQSCシステム240を示す。QSCシステム240では、制御位相ゲート214及びビームスプリッタ212、216がチャネルA1及びB1の状態に関して演算を行い、制御位相ゲート214’ 及びビームスプリッタ212’、216’がチャネルA2及びB2の状態に関して演算を行う。しかしながら、制御チャネルC1の状態|C1〉及びC2の状態|C2〉がそれぞれ、制御位相ゲート214及び214’を制御し、別個の検出器140及び140’が、出力制御チャネルC1’’の測定値X1及びC2’’の測定値X2を提供する。
【0035】
図2BのQSCシステム220の解析は、状態|A〉(又は|B〉)のキュービットがエンタングルしている場合であっても、QSCシステム220が多キュービット状態|A〉及び|B〉を比較し、状態|A〉及び|B〉が異なることを検出することができることを示す。しかしながら、図2CのQSCシステム240は、状態|A〉及び|B〉がキュービットの積状態である、即ちエンタングルしていない状態である場合に、状態|A〉及び|B〉が異なること、又は等しいことを検出する時においてのみ有効である。しかしながら、式9Aに示されるような一般的な形を有する、状態|A〉及び|B〉に対する図2CのQSCシステム240の演算を調べてみると、QSCシステム240を用いて、エンタングルメントを検出できることが示される。式9Aでは、式を簡単にするために、個々のチャネルA1、A2、B1及びB2のための生成演算子α†A1、α†A2、α†B1及びα†B2が演算を行う真空状態が省略されている。各値i、j、r及びsは、合計で範囲{0,1}に制限され、生成演算子α†A1、α†A2、α†B1又はα†B2の冪(累乗)であり、複素パラメータAij又はBrsのための添え字(index:指数)である。パラメータAijは、4つの基底状態{|ij〉A1,A2}に関して状態|A〉の係数であり、パラメータBrsは、4つの基底状態{|rs〉B1,B2}に関して状態|B〉の係数である。
【0036】
【数8】
【0037】
式9Aの状態|A〉及び|B〉から開始する場合、アダマールゲート120及び120’の演算が、式9Bに示されるようにシステムの状態を変換する。その後、制御スワップ250の演算により、システムの状態が、式9Cの形にさらに変換され、この場合、仮の添え字i、j、r、及びsを交換することによって、その式が簡単にされる。式9Dは、アダマールゲート130及び130’の演算後の出力状態|Ψout〉を示す。状態|A〉及び|B〉が同じである場合には、パラメータAij又はBijは、全てのi及びjに関して等しく、チャネルC1’’及びC2’’の状態|01〉及び|10〉に関連付けられる式9Dの項は等しくゼロになる。従って、状態|A〉及び|B〉が同じである場合には、出力状態|Ψout〉は式9Eの形まで簡単になる。
【0038】
【数9】
【0039】
式9Eの第2項は、状態|A〉がエンタングルしていない状態、即ち積状態である場合には、i、j、r及びsの全てに関して0であるが、状態|A〉がエンタングルした状態である場合には、第2項は0以外の値を有する。従って、状態|A〉及び|B〉がいずれもエンタングルしていない状態である場合には、制御チャネルの全ての測定値X1及びX2は、状態|A〉及び|B〉が等しい場合に、制御チャネルC1’’及びC2’’が状態|00〉にあることを示し、制御チャネルC1’’又はC2’’が状態|01〉、|10〉又は|11〉にあることを示す測定値X1及びX2は、エンタングルしていない状態|A〉及び|B〉が等しくないことを示す。
【0040】
状態|A〉及び|B〉がエンタングルした状態である場合には、状態|A〉及び|B〉が等しい場合であっても、測定値X1及びX2が、対応する制御チャネルC1’’及びC2’’が状態|11〉にあることを示す確率は0ではない。従って、QSCシステム240は、エンタングルメント検出器として用いることができる。詳細には、QSCシステム240が状態|A〉の2つのコピーを検査する場合には、状態|A〉がエンタングルしていない状態である場合に、測定値X1及びX2は常に、個々の制御チャネルC1’’及びC2’’が状態|00〉にあることを示すであろう。しかしながら、状態|A〉がエンタングルした状態である場合には、式9Eは、制御チャネルC1’’及びC2’’が状態|11〉にあることを測定値X1及びX2が示すことになる確率が0でないことを示す。結果として、QSCシステム240を用いて、状態|A〉のコピーの検査を繰り返すことによって、状態|A〉がエンタングルしているか否かを高い確度で区別することができる(制御チャネルC1’’又はC2’’が状態|01〉又は|10〉にあることを示す測定値X1及びX2が存在しないことは、入力状態が実際に等しいことの確証を与える)。
【0041】
上記のようにエンタングルメント検出器として動作しているQSCシステム240は、一対のキュービットのエンタングルメントを検出することができる。QSCシステム240のアーキテクチャは、3つ以上の測定制御チャネルを用いる、3つ以上のキュービットのエンタングルメントを検査するように拡張され得る。
【0042】
本発明のさらなる態様によれば、QSCシステムが、入力状態の比較又はエンタングルメント検出のためにパリティ検出を利用することができる。図3Aは、一対のビームスプリッタ312及び316と、パリティ検出器310とを含む検査システム300を示す。ビームスプリッタ312及び316は、上記の式5A及び式5Bにおいて与えられる変換特性を有するように設定される。従って、式6において与えられる形の入力状態|A〉及び|B〉の場合に、検査システム300の状態は式10において与えられる。状態|A〉及び|B〉が等しい場合には、チャネルB’のための生成演算子a†B’において線形である式10の項は0であり、それ故に、チャネルB’の状態は、偶数の光子を含まなければならない。
【0043】
【数10】
【0044】
パリティ検出器310は、チャネルB’の状態が偶数の光子を含むか、又は奇数の光子を含むかを判定する。こうして、チャネルB’において奇数の光子を示すパリティ検出器310からの測定値は、状態|A〉及び|B〉が等しくないことを示す。従って、状態|A〉及び|B〉の検査を何度も繰り返すことによって、状態|A〉及び|B〉が等しいか否かを高い信頼度で判定することができる。本発明の例示的な実施形態では、パリティ検出器310は、「Nonlinear Electromagnetic Quantum Information Processing」と題する共同所有の米国特許出願第10/899,332号に記述されるような、非吸収性で、概ね確定的な検出器である。非吸収性又は非破壊性のパリティ検出器310を利用することに関する利点は、チャネルA’’及びB’’上の光子の出力を、量子情報処理システム内の他の所で利用できることである。代案として、パリティ検出器310は、チャネルB’内の光子を吸収し且つ入力状態内の情報を破壊する吸収性の光子数検出器とすることができ、それは安全性の理由から望ましいかもしれない。
【0045】
チャネルA’、及びパリティ検出器310においてチャネルB’を測定した後のチャネルB’は、ビームスプリッタ316への入力チャネルである。パリティ検出器310が非吸収性である場合には、ビームスプリッタ316は、出力チャネルA’’及びB’’上に出力光子状態を提供することになり、それら出力光子は、状態が等しい|A〉及び|B〉である場合には、状態|A〉及び|B〉にあるであろう。しかしながら、ビームスプリッタ316は、状態|A〉及び|B〉を比較するのに不要である。従って、出力光子が必要とされない本発明の実施形態、例えば、パリティ検出器310が吸収性光子検出器であるシステムでは、ビームスプリッタ316は省くことができる。
【0046】
パリティ検出を用いる検査システムは、1つ又は複数の制御スワップゲートの場合の制御キュービットの測定を用いるQSCシステムの拡張と同様にして、多チャネル入力状態|A〉及び|B〉を検査するように拡張され得る。例えば、図3Bは、各入力状態|A〉又は|B〉が2キュービット状態である検査システム320を示す。検査システム320では、ビームスプリッタ312が、状態|A〉のチャネルA1上のフォトニックキュービットを、状態|B〉のチャネルB1上の対応するフォトニックキュービットと干渉させて、ビームスプリッタ312’が、状態|A〉のチャネルA2上のフォトニックキュービットを、状態|B〉のチャネルB2上のフォトニックキュービットと干渉させる。パリティ検出器330が、チャネルB1’及びB2’上の全光子数が偶数であるか、又は奇数であるかを検出する。奇パリティを示す検出結果Pは、状態|A〉及び|B〉が等しくないことを示し、偶パリティを示す繰返しの検出結果Pは、状態|A〉及び|B〉が等しいことを示す。
【0047】
図3Cは、状態|A〉及び|B〉を検査するためにパリティ検出を用いる別の検査システム340を示す。検査システム340は、パリティ検出器310及び310’が、個々のチャネルB1’及びB2’が偶数の光子を含むか、又は奇数の光子を含むかを示す検出結果P1及びP2を切り離すという点で、検査システム320とは異なる。検査システム340は、図2CのQSCシステム240と同様に、状態|A〉及び|B〉がエンタングルしていない状態である場合には、状態|A〉及び|B〉が異なるか否かを検出でき、又は代案として、状態|A〉がエンタングルした状態であるか、又はエンタングルしていない状態であるかを判定できることが明らかにされ得る。
【0048】
上記の量子状態検査及び比較のためのシステム及びプロセスは、量子署名を安全に照合するのに有用である。図4Aは、システム400を示しており、そのシステム400では、送信者410が、量子署名|Ψi〉を有するメッセージを、そのメッセージの出所を照合又は検証することを望む複数の受信者420に送信する。例示的な実施形態では、量子署名|Ψi〉は、D次元の量子状態|Ψ1〉〜|ΨN〉から成る公知の集合Sから選択される。ただし、状態の数Nは、各状態の次元Dよりもはるかに大きくすることができる(一般的に、Nは約2Dである)。集合S内の利用可能な量子署名|Ψ1〉〜|ΨN〉は、2つの異なる署名間の内積が小さい、即ち〈Ψi|Ψj〉<1であるようになされる。ただし、1≦i≠j≦Nである。既知のハッシュ/誤り訂正符号技術を用いて、大きな数Nの状態及び小さな内積の組み合わせを有する集合Sを提供することができる。Gottesman及びChuang著「Quantum Digital Signatures」(http://arxiv. org/abs/quant-ph/0105032)は、量子署名を選択して使用するためのプロセスをさらに説明する。
【0049】
量子署名|Ψi〉のための添え字(index:指標)i(1≦i≦N)は秘密である(例えば、送信者410だけが知っている)が、送信者410は、量子署名|Ψi〉のコピーを受信者420に公的に配布する。一般に、送信者410は、各受信者420に、量子署名|Ψi〉の複数のコピーを送信することができ、それらのいくつか又は全てが、並列に、又は順次に送信される。ここでの重要な特性は、量子状態量子署名|Ψi〉のk個のコピーが、秘密の添え字iについて、k×log(D)キュービット以下の情報しか与えないことである。その添え字はlog(N)、又は一般に約Dビットの情報を含むので、量子署名|Ψi〉のk個の量子コピーを配布することは、コピーの数kが約D/log(D)よりも少ない限り安全である。
【0050】
全体として署名|Ψi〉のいくつかの公開コピーを有する受信者420は、検証サービス430に送信者の署名のコピーを要求する。その後、送信者420は、QSC比較システム440を用いて、そのメッセージに関連付けられた量子署名が検証サービス430からの署名と同じであることを確認する。
【0051】
図4Bは、QSC比較を用いて量子署名を検証する、本発明の別の実施形態によるシステム450を示す。システム450では、送信者412が、送信者412の識別情報を確認する必要がある受信者422にメッセージを送信する。送信者412からのメッセージは、従来のネットワークを介して送信される古典デジタルメッセージとすることができる。送信者412はさらに、そのメッセージの前、後又はそのメッセージとともに、或いは受信者422からの問い合わせに応答して、受信者422に量子署名|Ψi〉のk個のコピーを送信する。量子署名|Ψi〉は、光ネットワーク、光ファイバ又は自由空間を介して、受信者422に送信される1つ又は複数の光子の量子状態とすることができる。送信者412は一般に、一度に量子署名|Ψi〉の1つ又は複数のコピーを受信者422に送信することができる。
【0052】
量子署名及び/又はメッセージを検証するために、受信者422は、量子署名|Ψi〉のk個のコピーを有するか、又は生成することができる検証サービス432に問い合わせを送信する。一実施形態では、その問い合わせは、送信者のメッセージからの情報を含むので、検証サービス432は、送信者412の秘密情報及びメッセージの内容を用いて、正しい量子署名|Ψi〉を生成することができる。検証サービス432は、量子署名|Ψi〉のk個のコピーを受信者420に送信する。その後、受信者422は、1つ又は複数の比較システム442を用いて、送信者412からの量子署名|Ψi〉と、検証サービス432からの量子署名|Ψi〉とのk回の比較を実行し、それにより、量子署名|Ψi〉が有効であることを高い確率で確認することができる。こうして、受信者422は送信者412の識別情報を検証することができ、必要に応じて、そのメッセージが送信者412からの送信中に変更されなかったことを確認することができる。さらに、量子署名|Ψi〉の2k個のコピーの公開送信が、秘密情報を抽出するのに不十分な情報しか提供しない限り、送信者412の秘密情報は、送信者412及びサービス432しか知り得ない。
【0053】
図4Cは、代替の構成を示しており、この場合、買い手414が、量子署名|Ψi〉のk個のコピーを用いて、売り手424に注文を送信する。量子署名|Ψi〉は一般に、買い手414の秘密情報及び注文の内容に依存するであろう。注文に対する支払いを受けるために、売り手424は、買い手412に代わって支払いを行うように許可された銀行434又は他の金融機関に問い合わせを送信する。銀行434は、量子署名|Ψi〉のk個の認証されたコピー460を有するか、又は生成することができ、売り手424に代金を支払うか否かを判定する際に、QSCシステム444を用いて、認証されたコピー460を、送信者414からのk個のコピーと比較することができる。図4Cにおいて、売り手424は、送信者414からの量子署名|Ψi〉のコピーを銀行434に中継するが、代案として、売り手424からの要求に応答して、送信者414が銀行434に直接的に量子署名|Ψi〉を送信することもできる。
【0054】
システム470の1つの変形形態では、買い手414が、認証されたコピー460を銀行434に与え、銀行434及び売り手424がいずれも買い手414の秘密情報を持たないようにする。代案として、買い手414及び銀行434が同じ秘密情報を有し、銀行434が、その秘密情報に基づいて、且つ売り手424からの注文に基づいて、k個の認証されたコピー460を生成できるようにする。その後、量子状態を比較するためにQSCシステム444を用いて、買い手414が量子署名を与えなかったために無効であるか、又は買い手414によって注文された後に、その注文が変更されたために無効である取引を特定することができる。
【0055】
また、QSC比較は、量子署名の利用可能な次元Dが小さいシステムにおいてデータ機密保護をもたらすためにも使用され得る。例えば、各量子署名が1キュービット状態にあることに制限される、即ち、量子署名の次元Dが2である場合には、1/3に等しい内積〈Ψi|Ψj〉を有する4つの量子署名|Ψ1〉、|Ψ2〉、|Ψ3〉及び|Ψ4〉が利用可能である。ただしiはjに等しくない。量子署名|Ψ1〉、|Ψ2〉、|Ψ3〉及び|Ψ4〉は一般に、単位球面によって画定される四面体の頂点に対応する係数を有し、一方、1つのキュービットの係数は一般に、単位球面上にある1つの点に対応する。
【0056】
図5Aは、当事者(パーティ)510及び520がそれぞれ所有する古典ビット列512及び522が全く同じであることを検証する際に、キュービット状態を用いるシステム500を示す。古典ビット列512及び522は、任意の長さのデータ列から成ることができ、詳細には、古典デジタル署名に対応することができる。検証サービス530が、ビット列512及び522から導出される情報のうちの任意の2ビットに対応する量子通信を繰返し要求し、その後、返送された量子状態|Ψi〉及び|Ψj〉を比較することによって、データ列512及び522が等しいことを確認する。
【0057】
図5Aの例示された実施形態では、検証サービス530は、当事者510及び520に古典的に送信され得る問い合わせを生成する問い合わせ発生器532を含む。各問い合わせは、その問い合わせへの2ビット応答を符号化する量子状態|Ψ1〉、|Ψ2〉、|Ψ3〉又は|Ψ4〉を要求することができる。例えば、検証サービス530は、「あなたのビット列512又は522のうちのビット5及び67が何であるか」又は「あなたのビット列512又は522の最初の10ビットのパリティ及び最後の10ビットのパリティが何であるか」を尋ねることができる。各当事者510又は520は、サービス530からの問い合わせを評価し、且つビット列512又は522の内容に基づいて古典的な2ビット応答を生成する古典データ解析システム514又は524を有する。個々の当事者510及び520の量子状態発生器516及び526は、古典応答に対応する添え字を有する量子状態|Ψ1〉、|Ψ2〉、|Ψ3〉及び|Ψ4〉のうちの1つを選択し、それぞれの量子状態|Ψi〉及び|Ψj〉を送信する。一実施形態では、量子状態|Ψi〉及び|Ψj〉は、適切なチャネルを介して検証サービス530に送信され得るフォトニック状態である。
【0058】
図5Bは、本発明の代替の実施形態を示しており、この場合、当事者560及び570がユニタリー量子ゲート566又は576を用いて、出力状態|Ψi〉又は|Ψj〉を生成する。各ユニタリー量子ゲート566又は576は、対応するデータ解析システム514又は524からの古典入力と、一定の量子状態564又は574とを有し、出力状態|Ψi〉又は|Ψj〉が、データ列512及び522から抽出された古典情報、及び状態564及び574の量子情報の両方に依存するようにする。状態564及び574が同じであり、且つユニタリー演算子566及び576が同じである場合には、当事者560及び570は同じ出力状態を生成する。
【0059】
検証サービス530が、量子状態|Ψi〉及び|Ψj〉の比較を実行して、両方の当事者510及び520が同じ応答を返したことを(確率的に)照合する。このプロトコルの利点は、当事者510及び520がいずれも、2ビット応答を公開しないことである(当事者510及び520は、問い合わせ毎に1キュービットの情報を送信するだけである)。従って、当事者510及び520はいずれも、他方の当事者520又は510からの量子送信を傍受することができず、その情報を迅速に繰り返して、検証サービス530を騙すことはできない。古典データ列512及び522は任意の長さにすることができ、問い合わせが2度用いられることのないように、検証サービス530からの異なる問い合わせの数を十分に多くすることができる。
【0060】
制御スワップ検査の別の応用形態は、2つのユニタリーゲートの効率的な比較である。例えば、図6は、量子ゲート610及び620を比較するために1つ又は複数のQSCシステム630を用いるシステム600を示す。システム600のための入力状態は一般に、形|0,Ψ,Ψ〉の積状態とすることができ、その場合、状態|0〉がQSCシステム630の制御キュービットとして直接的に入力され、同じ状態|Ψ〉が、両方の量子ゲート610及び620に入力される。状態|Ψ〉は、任意の純粋なD次元の量子状態とすることができる。例えば、D次元の光子状態から一対のエンタングルしたD次元状態へのパラメトリック下方変換によって、全く同じ状態|Ψ〉を生成することができる。その後、エンタングルした光子状態の第1の部分及び第2の部分をそれぞれ、量子ゲート610及び620に適用することができる。
【0061】
量子ゲート610及び620の出力状態の対応するチャネルが、それぞれの検査システム(単数又は複数)630に適用される。その後、制御ビット(又は複数の制御ビット)を観測することによって、出力状態が異なることを確率的に検出することができる。詳細には、量子ゲート610及び620が全く同じであり、入力状態|Ψ〉が全く同じである場合には、量子ゲート610及び620からの出力状態は全く同じであり、検査システム630において制御状態|0〉又は偶パリティに対応する測定結果に100%の確率が与えられる。入力状態|Ψ〉は全く同じであるが、量子ゲート610及び620が同じでない場合には、繰返し測定することによって、最終的には、制御キュービット状態|1〉又は奇パリティに対応する結果が生成されるであろう。
【0062】
また、上記の制御スワップシステムは、エンタングルメント発生器として用いることもできる。図7は、本発明の一実施形態によるエンタングルメント発生器700を示す。エンタングルメント発生器700は、制御スワップゲート110と、アダマールゲート120及び130とを含み、それらは構造的には、上記のQSCシステムのうちの何れかの対応する構成要素と同じにすることができる。
【0063】
エンタングルメント発生器700への入力状態は、制御キュービット状態|C〉=|0〉と、D次元の状態|Ψ〉と、状態|Ψ〉に直交するD次元の状態|Ψ⊥〉との積である。式11の左辺によって示されるように、コヒーレント変換(即ち、エンタングラ700の検出器140の前)の出力状態は、3つの部分において(即ち、1つの制御チャネル及び2つのターゲットチャネル上で)最大にエンタングルした状態である。各部分において、このエンタングルメントは2次元を占有し、それ故に、状態|Ψ〉及び|Ψ⊥〉がキュービットを表す場合、この状態は、GHZ状態(|0,0,0〉+|1,1,1〉)/21/2に等価である(局所変換まで)。従って、2つのD次元システム間のエンタングルメントの量は、1つのエンタングル対のエンタングルメントに等しく、完全なD次元のエンタングル状態のエンタングルメントには等しくないことに留意されたい。
【0064】
【数11】
【0065】
式11に示されるような測定値は、変換された状態を状態|Ψ(X)〉に射影し、その状態は、式12において示されるように、測定結果Xに依存する。測定値が制御ビット状態|0〉に対応する結果を有する場合には、状態|Ψ〉及び|Ψ⊥〉は、2パーティ態様(two party way)で偶パリティ状態にエンタングルされる。測定値が制御ビット状態|1〉に対応する結果を有する場合には、状態|Ψ〉及び|Ψ⊥〉は、2パーティ態様で奇パリティ状態にエンタングルされる。入力状態|Ψ〉及び|Ψ⊥〉が完全に直交しない場合には、出力状態はあまりエンタングルされず、その場合、エンタングルメントの量は、混合状態|(|Ψ〉〈Ψ|+|Ψ⊥〉〈Ψ⊥|)のフォンノイマンエントロピーに等しい。
【0066】
【数12】
【0067】
本発明は特定の実施形態に関連して説明されてきたが、その説明は、本発明の応用形態の一例にすぎず、制限するものと見なされるべきではない。開示された実施形態の特徴の種々の改変及び組み合わせが、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1A】本発明の一実施形態による量子状態比較システムのブロック図である。
【図1B】本発明の一実施形態による量子状態比較システムのブロック図である。
【図2A】比較される光子状態のスワッピングを制御しながら制御位相ゲートを用いる、本発明の実施形態による量子状態比較システムを示す図である。
【図2B】比較される光子状態のスワッピングを制御しながら制御位相ゲートを用いる、本発明の実施形態による量子状態比較システムを示す図である。
【図2C】比較される光子状態のスワッピングを制御しながら制御位相ゲートを用いる、本発明の実施形態による量子状態比較システムを示す図である。
【図3A】選択された光子チャネルのパリティ検出を用いる、本発明の実施形態による量子状態比較システムを示す図である。
【図3B】選択された光子チャネルのパリティ検出を用いる、本発明の実施形態による量子状態比較システムを示す図である。
【図3C】選択された光子チャネルのパリティ検出を用いる、本発明の実施形態による量子状態比較システムを示す図である。
【図4A】複数の受信者が1つの量子署名を受信する、本発明の一実施形態における情報の送信及び認証を示す図である。
【図4B】1つの量子署名の複数の認証されたコピーを用いる、本発明の代替の実施形態における情報の送信及び認証を示す図である。
【図4C】1つの量子署名の複数の認証されたコピーを用いる、本発明の代替の実施形態における情報の送信及び認証を示す図である。
【図5A】長いデータ列を安全に検証するために小次元の量子状態を用いる、本発明の実施形態によるシステムを示す図である。
【図5B】長いデータ列を安全に検証するために小次元の量子状態を用いる、本発明の実施形態によるシステムを示す図である。
【図6】制御スワップゲート検査を用いて量子ゲートを比較する、本発明の一実施形態によるシステムを示す図である。
【図7】制御スワップゲート及び射影測定を用いる、本発明の一実施形態によるエンタングルメント発生器を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の量子状態を入力するための第1のフォトニックチャネル(A)と、
第2の量子状態を入力するための第2のフォトニックチャネル(B)と、
前記第1のフォトニックチャネル(A)及び前記第2のフォトニックチャネル(B)を干渉させるように配置された第1のビームスプリッタ(212)と、
前記第2のフォトニックチャネル(B)を測定するように配置された検出器システムとを含み、前記検出器システムからの第1の測定結果の確率は、前記第1の量子状態及び前記第2の量子状態が第1の関係を満たす場合に100%であり、前記第1の量子状態及び前記第2の量子状態が第2の関係を満たす場合に100%未満である、システム。
【請求項2】
前記検出器システムが、
第3のフォトニックチャネル(C)と、
前記第1のビームスプリッタ(212)の下流にあり、且つ前記第2のフォトニックチャネル(B)で演算するように配置された制御位相ゲート(214)であって、前記第3のフォトニックチャネル(C)の状態が、前記制御位相ゲート(214)を制御する、制御位相ゲート(214)と、
前記制御位相ゲート(214)の下流にあり、前記第3のフォトニックチャネル(C)の状態を測定する検出器(140)とを含み、
前記検出器(140)は、前記制御位相ゲート(214)が前記第1のフォトニックチャネル(A)及び前記第2のフォトニックチャネル(B)の状態の相対的な位相をシフトする、前記第3のチャネル(C)の第1の状態と、前記制御位相ゲート(214)が前記第1のフォトニックチャネル及び前記第2のフォトニックチャネルの状態の前記相対的な位相を変更しない、前記第3のチャネル(C)の第2の状態とを区別する射影測定を実行する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記検出器システムがパリティ検出器(310)を含み、前記第1の測定結果及び前記第2の測定結果はそれぞれ、前記第2のフォトニックチャネル(B)内の偶数の光子の測定値、及び前記第2のフォトニックチャネル(B)内の奇数の光子の測定値のうちの異なる測定値に対応する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の量子状態及び前記第2の量子状態が、等しいことによって前記第1の関係を満たし、等しくないことによって前記第2の関係を満たす、請求項1〜3の何れか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の量子状態を入力するための第1の複数のフォトニックチャネル(A1、A2)であって、前記第1のフォトニックチャネルが前記第1の複数のフォトニックチャネル(A1、A2)内にある、第1の複数のフォトニックチャネル(A1、A2)と、
前記第2の量子状態を入力するための第2の複数のフォトニックチャネル(B1、B2)であって、前記第2のフォトニックチャネルが前記第2の複数のフォトニックチャネル(B1、B2)内にある、第2の複数のフォトニックチャネル(B1、B2)と、
複数のビームスプリッタ(212、212’)であって、前記第1のビームスプリッタ(212)を含み、前記複数のビームスプリッタ(212、212’)のそれぞれが、前記第1の複数のフォトニックチャネル(A1、A2)のうちの対応するフォトニックチャネルと、前記第2の複数のフォトニックチャネル(B1、B2)のうちの対応するフォトニックチャネルとを干渉させるように配置されている、複数のビームスプリッタ(212、212’)とをさらに含み、
前記検出器システムが、前記第2の複数のフォトニックチャネル内の前記フォトニックチャネル(B1、B2)を測定する、請求項1〜4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記検出器システムによる測定の後に、前記第1のフォトニックチャネル(A)及び前記第2のフォトニックチャネル(B)内に配置された第2のビームスプリッタ(216)をさらに含む、請求項1〜5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の量子状態が前記第2の量子状態と直交し、前記第2のビームスプリッタ(216)が、第1の出力フォトニックチャネル(A)及び第2の出力フォトニックチャネル(B)のエンタングルした状態を生成する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
送信者(412)からの古典データを送信することができる第1のネットワークと、
前記送信者(412)からの量子署名を前記第1の量子状態として前記第1のフォトニックチャネル(A)に送信することができる第2のネットワークと、
前記量子署名の複数のコピーを、前記第2の量子状態として前記第2のフォトニックチャネル(B)に与えることができる検証サービス(432)とをさらに含む、請求項1〜6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1のビームスプリッタ(212)及び前記検出器システムを含む支払サービス(434)と、
買い手(414)から売り手に、及び前記売り手(424)から前記支払サービス(414)に古典データを送信することができる第1のネットワークと、
前記買い手(414)から前記売り手(424)に、及び前記売り手(424)から前記第1のフォトニックチャネル(A)に量子署名を前記第1の量子状態として送信することができる第2のネットワークとをさらに含み、
前記支払サービス(434)が、前記売り手(424)に代金を支払うか否かを判定する際に、前記検出器システムからの出力を使用する、請求項1〜6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項10】
検査されるべき第1の量子ゲート(610)であって、前記第1の量子状態及び前記第2の量子状態のうちの一方を提供するように接続された、第1の量子ゲートと、
前記第1の量子状態及び前記第2の量子状態のうちの他方を提供するための第2の量子ゲート(620)とをさらに含み、前記検出器システムからの出力は、前記第1の量子ゲート(610)が検査に合格したか否かを示す、請求項1〜6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項1】
第1の量子状態を入力するための第1のフォトニックチャネル(A)と、
第2の量子状態を入力するための第2のフォトニックチャネル(B)と、
前記第1のフォトニックチャネル(A)及び前記第2のフォトニックチャネル(B)を干渉させるように配置された第1のビームスプリッタ(212)と、
前記第2のフォトニックチャネル(B)を測定するように配置された検出器システムとを含み、前記検出器システムからの第1の測定結果の確率は、前記第1の量子状態及び前記第2の量子状態が第1の関係を満たす場合に100%であり、前記第1の量子状態及び前記第2の量子状態が第2の関係を満たす場合に100%未満である、システム。
【請求項2】
前記検出器システムが、
第3のフォトニックチャネル(C)と、
前記第1のビームスプリッタ(212)の下流にあり、且つ前記第2のフォトニックチャネル(B)で演算するように配置された制御位相ゲート(214)であって、前記第3のフォトニックチャネル(C)の状態が、前記制御位相ゲート(214)を制御する、制御位相ゲート(214)と、
前記制御位相ゲート(214)の下流にあり、前記第3のフォトニックチャネル(C)の状態を測定する検出器(140)とを含み、
前記検出器(140)は、前記制御位相ゲート(214)が前記第1のフォトニックチャネル(A)及び前記第2のフォトニックチャネル(B)の状態の相対的な位相をシフトする、前記第3のチャネル(C)の第1の状態と、前記制御位相ゲート(214)が前記第1のフォトニックチャネル及び前記第2のフォトニックチャネルの状態の前記相対的な位相を変更しない、前記第3のチャネル(C)の第2の状態とを区別する射影測定を実行する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記検出器システムがパリティ検出器(310)を含み、前記第1の測定結果及び前記第2の測定結果はそれぞれ、前記第2のフォトニックチャネル(B)内の偶数の光子の測定値、及び前記第2のフォトニックチャネル(B)内の奇数の光子の測定値のうちの異なる測定値に対応する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の量子状態及び前記第2の量子状態が、等しいことによって前記第1の関係を満たし、等しくないことによって前記第2の関係を満たす、請求項1〜3の何れか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の量子状態を入力するための第1の複数のフォトニックチャネル(A1、A2)であって、前記第1のフォトニックチャネルが前記第1の複数のフォトニックチャネル(A1、A2)内にある、第1の複数のフォトニックチャネル(A1、A2)と、
前記第2の量子状態を入力するための第2の複数のフォトニックチャネル(B1、B2)であって、前記第2のフォトニックチャネルが前記第2の複数のフォトニックチャネル(B1、B2)内にある、第2の複数のフォトニックチャネル(B1、B2)と、
複数のビームスプリッタ(212、212’)であって、前記第1のビームスプリッタ(212)を含み、前記複数のビームスプリッタ(212、212’)のそれぞれが、前記第1の複数のフォトニックチャネル(A1、A2)のうちの対応するフォトニックチャネルと、前記第2の複数のフォトニックチャネル(B1、B2)のうちの対応するフォトニックチャネルとを干渉させるように配置されている、複数のビームスプリッタ(212、212’)とをさらに含み、
前記検出器システムが、前記第2の複数のフォトニックチャネル内の前記フォトニックチャネル(B1、B2)を測定する、請求項1〜4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記検出器システムによる測定の後に、前記第1のフォトニックチャネル(A)及び前記第2のフォトニックチャネル(B)内に配置された第2のビームスプリッタ(216)をさらに含む、請求項1〜5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の量子状態が前記第2の量子状態と直交し、前記第2のビームスプリッタ(216)が、第1の出力フォトニックチャネル(A)及び第2の出力フォトニックチャネル(B)のエンタングルした状態を生成する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
送信者(412)からの古典データを送信することができる第1のネットワークと、
前記送信者(412)からの量子署名を前記第1の量子状態として前記第1のフォトニックチャネル(A)に送信することができる第2のネットワークと、
前記量子署名の複数のコピーを、前記第2の量子状態として前記第2のフォトニックチャネル(B)に与えることができる検証サービス(432)とをさらに含む、請求項1〜6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1のビームスプリッタ(212)及び前記検出器システムを含む支払サービス(434)と、
買い手(414)から売り手に、及び前記売り手(424)から前記支払サービス(414)に古典データを送信することができる第1のネットワークと、
前記買い手(414)から前記売り手(424)に、及び前記売り手(424)から前記第1のフォトニックチャネル(A)に量子署名を前記第1の量子状態として送信することができる第2のネットワークとをさらに含み、
前記支払サービス(434)が、前記売り手(424)に代金を支払うか否かを判定する際に、前記検出器システムからの出力を使用する、請求項1〜6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項10】
検査されるべき第1の量子ゲート(610)であって、前記第1の量子状態及び前記第2の量子状態のうちの一方を提供するように接続された、第1の量子ゲートと、
前記第1の量子状態及び前記第2の量子状態のうちの他方を提供するための第2の量子ゲート(620)とをさらに含み、前記検出器システムからの出力は、前記第1の量子ゲート(610)が検査に合格したか否かを示す、請求項1〜6の何れか一項に記載のシステム。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2008−514056(P2008−514056A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531476(P2007−531476)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/032912
【国際公開番号】WO2006/031960
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/032912
【国際公開番号】WO2006/031960
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】
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