説明

金型構造

【課題】高温の鋳造に際して、鋳造品の内部巣をつぶし緻密で均一な組織として高強度化を図ることができる金型構造を提供する。
【解決手段】本金型構造は、鋳造用の金型構造2であって、互いに近接・離反可能とされる上型5及び下型6と、上型及び下型との間でキャビティCを形成し、該キャビティ内に注湯される溶湯を加圧し得るように上型及び下型の間で上下方向に移動可能とされる中間型7と、下型に対して中間型を浮上させる浮上手段(浮上用シリンダ3)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型構造に関し、さらに詳しくは、高温の鋳造に際して、鋳造品の内部巣をつぶし緻密で均一な組織として高強度化を図ることができる金型構造に関する。
【背景技術】
【0002】
非鉄金属と異なり、鋳鉄鋳造は、極めて高温の鋳造である。従来、鋳物の組織改善や巣などの内部欠陥の改善には、冷やし型と呼ばれる冷却効果の高い材質を組み合わせたり、鋳造方案で改善したりする方法が一般に取られている。しかし、これらの方法では、鋳鉄品の内部巣をつぶし緻密で均一な組織として十分な高強度化を図ることができていないのが現状である。そこで、従来の鋳造装置として、金型のキャビティ内に挿入可能であり、且つ、このキャビティ内に注湯される鋳鉄溶湯を加圧する加圧ピンを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような加圧ピンの部分加圧により鋳鉄品の組織改善が効果的に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−122971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1の技術では、加圧ピンを用いてキャビティ内の鋳鉄溶湯を部分的に加圧しているので、加圧作用がキャビティ内の鋳鉄全体に及ばず、加圧ピンの加圧タイミングも適切なものに設定し難い。このため、鋳鉄品を安定的に量産することが困難となる。なお、上述の問題は、銅合金やチタン合金等の鋳造品を得る場合にも同様に生じるものと考えられる。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、高温の鋳造に際して、鋳造品の内部巣をつぶし緻密で均一な組織として高強度化を図ることができる金型構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.鋳造用の金型構造であって、
互いに近接・離反可能とされる上型及び下型と、
前記上型及び前記下型との間でキャビティを形成し、該キャビティ内に注湯される溶湯を加圧し得るように該上型及び該下型の間で上下方向に移動可能とされる中間型と、
前記下型に対して前記中間型を浮上させる浮上手段と、を備えることを特徴とする金型構造。
2.鋳鉄鋳造用である上記1.記載の金型構造。
3.前記中間型は、前記下型に上下方向に移動自在に嵌合され、
前記中間型と前記下型との嵌合部位にはガス抜き用の隙間が形成されており、該隙間の間隔(s2)は0.1〜0.4mmである上記1.又は2.に記載の金型構造。
4.前記下型及び前記中間型のうちの一方の型には上下方向に延びるガイドピンが設けられ、他方の型には該ガイドピンを上下方向に案内する案内孔が設けられている上記1.乃至3.のいずれか一項に記載の金型構造。
【発明の効果】
【0007】
本発明の金型構造によると、上型、下型及び浮上手段により浮上状態とされた中間型により形成されるキャビティ内に溶湯が注湯され、その注湯中又は注湯完了後に浮上手段の浮上力に抗して上型及び下型が近接され、中間型の上下方向の移動に伴ってキャビティ内の溶湯の全体が加圧される。この加圧による溶湯の急冷効果により、高温の鋳造に際して、鋳造品の内部巣がつぶされ緻密で均一な組織とされて高強度化を図ることができる。
また、鋳鉄鋳造用である場合は、鋳造品としての鋳鉄品の内部巣がつぶされ緻密で均一な組織とされて高強度化を図ることができる。
また、前記中間型が、前記下型に上下方向に移動自在に嵌合され、前記中間型と前記下型との嵌合部位にはガス抜き用の隙間が形成されており、該隙間の間隔(s2)は0.1〜0.4mmである場合は、隙間間隔(s2)が0.1mm以上であるため、金型の熱膨張を好適に吸収しつつガス抜き効果により鋳造品の表面性状を向上させ得るとともに、下型に対する中間型の嵌合性を向上させることができる。また、隙間間隔(s2)が0.4mm以下であるため、バリ発生を抑制することができる。
さらに、前記下型及び前記中間型のうちの一方の型にはガイドピンが設けられ、他方の型には案内孔が設けられている場合は、下型に対して中間型が上下方向に移動するときにガイドピンが案内孔に案内されるので、中間型の平面方向の位置決め精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例に係る金型構造の縦断面図である。
【図2】上記金型構造を構成する上型、下型及び中間型の分解斜視図である。
【図3】上記下型を構成する入れ子型の分解斜視図である。
【図4】図1の要部拡大図である。
【図5】上記金型構造の鋳造作用を説明するための説明図である。
【図6】上記金型構造の鋳造作用を説明するための説明図である。
【図7】上記金型構造の鋳造作用を説明するための説明図である。
【図8】上記金型構造の鋳造作用を説明するための説明図である。
【図9】その他の形態の金型構造の分解斜視図である。
【図10】その他の形態の中間型と下型とのガス抜き用隙間の形態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0010】
1.金型構造
本実施形態1.に係る金型構造は、鋳造用の金型構造であって、互いに近接・離反可能とされる上型(5)及び下型(6)と、これら上型及び下型との間でキャビティ(C)を形成し、このキャビティ内に注湯される溶湯を加圧し得るように上型及び下型の間で上下方向に移動可能とされる中間型(7)と、下型に対して中間型を浮上させる浮上手段(3)と、を備えることを特徴とする(例えば、図1等参照)。
【0011】
上記浮上手段としては、例えば、流体圧シリンダ、弾性体(例えば、バネ、ゴム等)などを挙げることができる。これらのうち、耐久性及び浮上量の制御性といった観点から、流体圧シリンダであることが好ましい。また、中間型の浮上量は、鋳造品の形状、大きさ等に応じて適宜選択される。キャビティ内の加圧性といった観点から、中間型の浮上量(s3)が0.3〜2mm(好ましくは0.5〜0.9mm)であることが好ましい(例えば、図4等参照)。
【0012】
本実施形態1.に係る金型構造としては、例えば、〔1〕中間型は、下型に上下方向に移動時自在に嵌合され、中間型と下型との嵌合部位にはガス抜き用の隙間(25)が形成されており、この隙間の間隔(s2)は0.1〜0.4mm(好ましくは0.1〜0.3mm)である形態(例えば、図4等参照)、〔2〕下型を構成する複数の分割型(12,13)は上下方向に嵌合され、これら複数の分割型の嵌合部位の間にはガス抜き用の隙間(24)が形成されており、この隙間の間隔(s1)は0.1〜0.4mm(好ましくは0.1〜0.3mm)である形態(例えば、図4等参照)等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0013】
上記〔1〕〔2〕形態では、例えば、上記ガス抜き用の隙間は、第1隙間(25a)と、この第1隙間に連なり且つ第1隙間より大きな隙間間隔を有する第2隙間(25b)と、を有することができる(例えば、図10等参照)。これにより、例えば、湯口の近傍に第1隙間を配置し、湯口の遠方に第2隙間を配置すれば、第1隙間により比較的高温の溶湯のバリ発生をより確実に抑制するとともに、第2隙間により鋳造品の表面性状及び中間型の嵌合性を更に向上させることができる。
【0014】
上記〔1〕形態では、例えば、上記中間型の下型との嵌合部位は段差状に形成されていることができる(例えば、図4等参照)。これにより、中間型と下型との嵌合面域を必要最小限として、バリ発生をより確実に抑制できる。
【0015】
本実施形態1.に係る金型構造としては、例えば、下型及び中間型のうちの一方の型には上下方向に延びるガイドピン(17)が設けられ、他方の型にはガイドピンを上下方向に案内する案内孔(18)が設けられている形態を挙げることができる(例えば、図9等参照)。上記ガイドピン及び案内孔は、中間型の平面視にてキャビティの外側に配置されていることが好ましい。中間型の熱膨張をより確実に抑制できるためである。
【0016】
本実施形態1.に係る金型構造としては、例えば、上記浮上手段の浮上力に抗して上型及び下型を近接させ中間型を上下方向に移動させてキャビティ内の溶湯を18MPa未満の加圧力で加圧する形態を挙げることができる。これにより、アルミダイキャスト等に比べて小さな加圧力で良質な鋳造品を得ることができる。
【0017】
本実施形態1.に係る金型構造としては、例えば、上型及び中間型は熱間工具鋼製であり、下型を構成する複数の分割型のうちの少なくとも1つの分割型(12)は銅合金製である形態を挙げることができる(例えば、図2等参照)。これにより、熱間工具鋼製の上型及び中間型により金型構造全体の耐熱性及び剛性を向上させ得るとともに、銅合金製の少なくとも1つの分割型により溶湯の急冷効果を更に向上させることができる。この熱間工具鋼としては、例えば、SKD61等を使用できる。また、銅合金としては、例えば、クロム銅等を使用できる。
【0018】
本実施形態1.に係る金型構造としては、例えば、型開き状態の上型及び下型の間に挿入されて上型、下型及び中間型を予熱する予熱手段(4)を更に備える形態を挙げることができる(例えば、図5等参照)。これにより、注湯時の湯回り性が高められ、得られる鋳造品の引張強さ及び伸びを向上させることができる。
【0019】
本実施形態1.に係る金型構造としては、例えば、上型又は中間型に載置される湯口型(15)を下方に押圧する押圧手段(8)を更に備える形態を挙げることができる(例えば、図6等参照)。これにより、注湯時の湯口型の浮き上がりを防止できる。この押圧手段としては、例えば、例えば、流体圧シリンダ、弾性体(例えば、バネ、ゴム等)などを挙げることができる。これらのうち、耐久性及び押圧量の制御性といった観点から、流体圧シリンダであることが好ましい。
【0020】
なお、上記「溶湯」の種類、注湯温度等は特に問わない。この溶湯としては、例えば、鋳鉄、銅合金、チタン合金等を挙げることができる。上記鋳鉄としては、例えば、球状黒鉛鋳鉄、ねずみ鋳鉄、可鍛鋳鉄等を挙げることができる。これらのうち、鋳鉄品の引張強さ及び伸びといった観点から、球状黒鉛鋳鉄であることが好ましい。また、上記鋳鉄溶湯の注湯温度は、例えば、1200〜1400℃(好ましくは1250〜1350℃)であることができる。また、上記鋳鉄溶湯は、例えば、半凝固状態となるようにキャビティ内に注湯されることができる。これらにより、得られる鋳鉄品の更なる高強度化を図ることができる。なお、半凝固状態とは、固液共存状態であることを意図し、例えば、上記鋳鉄溶湯が注湯温度1200〜1400℃(好ましくは1250〜1350℃)でキャビティに充填されたときになる状態を挙げることができる。また、上記鋳鉄溶湯の粘性係数は、例えば、1300〜1400℃で9〜11cpsであることができる。
【0021】
2.鋳造方法
本実施形態2.に係る鋳造方法は、上記実施形態1.に係る金型構造を用いる鋳造方法であって、上型、下型及び中間型により形成されるキャビティ内に鋳鉄溶湯を注湯する工程と、その注湯中又は注湯完了後に上型及び下型を近接させて、中間型を上下方向に移動させてキャビティ内の鋳鉄溶湯を加圧する工程と、を備えることを特徴とする。
【実施例】
【0022】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、球状黒鉛鋳鉄(以下、単に「鋳鉄」とも記載する。)を用いて複数の鋳鉄品を鋳造する金型構造を例示する。
【0023】
(1)金型構造の構成
本実施例に係る金型構造1は、図1及び図2に示すように、上型5及び下型6と、これら上型5及び下型6との間でキャビティCを形成する中間型7(「シールドブロック」とも呼ばれる。)と、下型6に対して中間型7を浮上させる浮上用シリンダ3(本発明に係る「浮上手段」として例示する。)と、を備えている。また、この金型構造は、予熱用ヒータ4(図5参照)及び押圧用シリンダ8(図6参照)を更に備えている。
【0024】
上記上型5は、熱間工具鋼製(例えば、SKD61製等)である。この上型5は、連絡部9を介して図示しない駆動機構(例えば、流体圧シリンダ等)に連絡され、この駆動機構の駆動により下型6に対して近接・離反し得るようになっている。
【0025】
上記下型6は、台座10上に配置される熱間工具鋼製(例えば、SKD61製等)の本体型6aと、この本体型6a上に配置される複数の入れ子型6bと、を有している。各入れ子型6bは、図3に示すように、銅合金製(例えば、クロム銅製)の内側分割型12と、この内側分割型12に上下方向に嵌合される孔部13a(図4参照)を有する熱間工具鋼製(例えば、SKD61製等)の外側分割型13と、を有している。図4に示すように、これら内側分割型12及び外側分割型13の嵌合部位の間には、間隔s1が約0.2mmとされたガス抜き用の隙間24が形成されている。
【0026】
上記中間型7は、熱間工具鋼製(例えば、SKD61製等)である。この中間型7は、図1及び図2に示すように、下型6の入れ子型6bに上下方向に嵌合される孔部7aを有しており、キャビティC内に注湯される鋳鉄溶湯を加圧し得るように上型5及び下型6の間で上下方向に移動可能とされている。図4に示すように、この中間型7と下型6の入れ子型6bとの嵌合部位には、間隔s2が約0.2mmとされたガス抜き用の隙間25が形成されている。また、中間型の入れ子型6bとの嵌合部位は段差状に形成されている。
【0027】
上記浮上用シリンダ3は、図1に示すように、台座10に支持されるシリンダ本体3aと、その先端側が中間型7に連結されるピストンロッド3bと、を有している。図4に示すように、浮上用シリンダ3による中間型7の浮上量s3(即ち、下型6に対する中間型7の離間間隔s3)は約0.3mmとされている。したがって、後述の作用で説明するように、浮上用シリンダ3の浮上力に抗して下型6に対して上型5を近接させてキャビティC内を加圧するときに、中間型7は下型6に対して浮上量s3分だけ下方に移動することとなる。
【0028】
上記予熱用ヒータ4は、図5に示すように、型開き状態の上型5及び下型6の間に挿入・脱出可能とされている。この予熱用ヒータ4により上型5、下型6及び中間型7が予熱される。また、上記押圧用シリンダ8は、図6に示すように、上型5の中心孔を介して中間型7上に載置される湯口型15を下方に押圧するように金型構造1の固定側(例えば、枠体等)に設けられている。
【0029】
(2)金型構造の作用
次に、上記構成の金型構造1の鋳造作用について説明する。図5に示すように、型開き状態の上型5及び下型6の間に予熱用ヒータ4を挿入して、予熱用ヒータ4により上型5、下型6及び中間型7が予熱される。次に、図6に示すように、下型6に対して上型5を近接させて上型5、下型6及び浮上用シリンダ3により浮上状態の中間型7の間にキャビティCを形成する。この状態で、上型5の中心孔を介して中間型7上に湯口型15を載置し、湯口型15を押圧用シリンダ8で上型5に押圧して浮き上がりを防止する。次いで、取鍋11を用いて鋳鉄溶湯をキャビティC内に注湯する。この注湯温度は約1250〜1300℃とされ、鋳鉄溶湯はキャビティC内に充填されて半凝固状態となる。
【0030】
その後、図7に示すように、その注湯中又は注湯完了後の適宜タイミングで浮上用シリンダ3の浮上力に抗して下型6に対して上型5を更に近接させる。すると、上型5とともに中間型7が下方に移動してキャビティC内の鋳鉄溶湯の全体が所定の加圧力で加圧され複数の鋳鉄品Pが得られる。次に、図8に示すように、押圧用シリンダ8による湯口型15の押圧を解除してから、下型6に対して上型5を離間させて型開き状態として上型5に付いた鋳鉄品Pを取り外す。なお、上型5及び下型6を型開き状態とすると、浮上用シリンダ3の作用で中間型7が再び浮上される。以降、上述の作用が繰り返されて鋳鉄品Pが量産されることとなる。
【0031】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例の金型構造1によると、上型5、下型6及び浮上用シリンダ3により浮上状態とされた中間型7により形成されるキャビティC内に鋳鉄溶湯が注湯され、その注湯中又は注湯完了後に浮上用シリンダ3の浮上力に抗して上型5及び下型6が近接され、中間型7の下方移動に伴ってキャビティC内の鋳鉄溶湯の全体が加圧される。この加圧による鋳鉄溶湯の急冷効果により、高温の鋳鉄鋳造に際して、鋳鉄品の内部巣がつぶされ緻密で均一な組織とされて高強度化を図ることができる。また、従来のように加圧ピンを用いてキャビティ内の鋳鉄溶湯を部分的に加圧して鋳造するものに比べて、キャビティ内の鋳鉄溶湯全体を加圧するため、欠陥がなく且つ高強度な鋳鉄品Pを安定的に量産することができる。特に、本実施例では、浮上用シリンダ3の浮上力に抗して上型5及び下型6を近接させ中間型7を上下方向に移動させてキャビティC内の鋳鉄溶湯を4.5MPaの加圧力で加圧するようにしたので、極めて小さな加圧力で良質な鋳鉄品Pを得ることができる。これに対して、アルミダイキャストでは、通常、30〜200Mpaの大きな加圧力を必要としており、ホットチャンバ−ダイカストと称するものでも、通常、7〜40MPaの加圧力を必要とする。
【0032】
また、本実施例では、中間型7を、下型6の入れ子型6bに上下方向に移動自在に嵌合し、中間型7と入れ子型6bとの嵌合部位に間隔s2が約0.2mmのガス抜き用の隙間25を形成したので、金型の熱膨張を好適に吸収しつつガス抜き効果により鋳鉄品Pの表面性状を向上させることができる。また、下型6に対する中間型7の嵌合性を向上させることができる。さらに、バリ発生を抑制することができる。
【0033】
また、本実施例では、下型6を構成する内側分割型12及び外側分割型13を上下方向に嵌合し、これら内側及び外側分割型12,13の嵌合部位の間に間隔s1が約0.2mmのガス抜き用の隙間24を形成したので、金型の熱膨張を好適に吸収しつつガス抜き効果により鋳鉄品Pの表面性状を向上させることができる。また、各分割型12,13の嵌合性を向上させることができる。さらに、バリ発生を抑制することができる。
【0034】
また、本実施例では、中間型7の入れ子型6bとの嵌合部位を段差状に形成したので、中間型7と入れ子型6bとの嵌合面域を必要最小限として、バリ発生をより確実に抑制できる。
【0035】
また、本実施例では、注湯温度を約1250〜1300℃として球状黒鉛鋳鉄溶湯をキャビティC内に注湯するようにしたので、鋳鉄溶湯がキャビティC内に充填されて半凝固状態となり、得られる鋳鉄品Pの更なる高強度化を図ることができる。
【0036】
また、本実施例では、上型5、中間型7、並びに下型6を構成する本体型6a及び外側分割型13を熱間工具鋼製としたので、金型構造全体の耐熱性及び剛性を向上させることができる。また、下型6を構成する内側分割型12を銅合金製としたので、鋳鉄溶湯の急冷効果を更に向上させることができる。
【0037】
また、本実施例では、上型5、下型6及び中間型7を予熱する予熱用ヒータ4を更に備えたので、注湯時の湯回り性が高められ、得られる鋳鉄品Pの引張強さ及び伸びを向上させることができる。
【0038】
さらに、本実施例では、上型5の中心孔を介して中間型7上に載置される湯口型15を下方に押圧する押圧用シリンダ8を更に備えたので、注湯時の湯口型15の浮き上がりを防止できる。
【0039】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例において、例えば、図9に示すように、下型6に上下方向に延びるガイドピン17を設け、中間型7にガイドピン17を上下方向に案内する案内孔18を設けるようにしてもよい。これにより、下型6に対して中間型7が上下方向に移動するときにガイドピン17が案内孔18に案内され、中間型7の平面方向の位置決め精度を向上させることができる。特に、本実施例では、上記ガイドピン17及び案内孔18を中間型7の平面視にてキャビティCの外側に配置したので、中間型7の熱膨張をより確実に抑制できる。
【0040】
また、上記実施例において、例えば、図10に示すように、中間型7と下型6との間に形成される隙間25を、湯口30の近傍に配置される第1隙間25aと、この第1隙間25aに連なり且つ第1隙間25aより大きな隙間間隔を有する第2隙間25bと、を有して構成するようにしてもよい。これにより、湯回り経路の上流側に第1隙間25aを配置し、湯回り経路の下流側に第2隙間25bを配置して、第1隙間25aにより比較的高温の鋳鉄溶湯のバリ発生がより確実に抑制されるとともに、第2隙間25bにより鋳鉄品の表面性状及び中間型7の嵌合性を更に向上させることができる。なお、上記隙間25と略同様にして、各分割型12,13の間に形成される隙間24を、第1隙間と、この第1隙間に連なり且つ第1隙間より大きな隙間間隔を有する第2隙間と、を有して構成するようにしてもよい。
【0041】
また、上記実施例では、鋳鉄溶湯をキャビティC内で半凝固状態となるように注湯するようにしたが、これに限定されず、例えば、鋳鉄溶湯をキャビティC内で液相状態となるように注湯するようにしてもよい。
【0042】
また、上記実施例では、中間型7を浮上させる浮上手段として浮上用シリンダ7を採用したが、これに限定されず、例えば、浮上手段としては、中間型7と下型6との間に介装されるバネ等を採用することもできる。
【0043】
また、上記実施例では、キャビティC内を加圧する際に中間型7を浮上量s3分だけ下方移動させるようにしたが、これに限定されず、例えば、キャビティC内を加圧する際に中間型7を浮上量s3より小さな間隔分だけ下方移動させるようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施例において、キャビティC内の鋳鉄溶湯を加圧する際に湯口型15の湯口を加圧する加圧機構を更に備えるようにしてもよい。
【0045】
さらに、上記実施例では、上型5を可動型とし、下型6を固定型とした形態を例示したが、これに限定されず、例えば、上型を固定型とし、下型を可動型としたり、上型及び下型を可動型としたりしてもよい。
【0046】
さらに、上記実施例では、鋳鉄を鋳造するための金型構造を例示したが、これに限定されず、例えば、銅合金やチタン合金等を鋳造するための金型構造としてもよい。
【0047】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0048】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
鋳鉄鋳造に関する技術として広く利用される。特に、半凝固鋳鉄鋳造として好適に利用される。
【符号の説明】
【0050】
1;金型構造、3;浮上用シリンダ、5;上型、6;下型、7;中間型、17;ガイドピン、18;案内孔、C;キャビティ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造用の金型構造であって、
互いに近接・離反可能とされる上型及び下型と、
前記上型及び前記下型との間でキャビティを形成し、該キャビティ内に注湯される溶湯を加圧し得るように該上型及び該下型の間で上下方向に移動可能とされる中間型と、
前記下型に対して前記中間型を浮上させる浮上手段と、を備えることを特徴とする金型構造。
【請求項2】
鋳鉄鋳造用である請求項1記載の金型構造。
【請求項3】
前記中間型は、前記下型に上下方向に移動自在に嵌合され、
前記中間型と前記下型との嵌合部位にはガス抜き用の隙間が形成されており、該隙間の間隔(s2)は0.1〜0.4mmである請求項1又は2に記載の金型構造。
【請求項4】
前記下型及び前記中間型のうちの一方の型には上下方向に延びるガイドピンが設けられ、他方の型には該ガイドピンを上下方向に案内する案内孔が設けられている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の金型構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−157887(P2012−157887A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19118(P2011−19118)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、経済産業省、戦略的基盤技術高度化支援事業委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(595108572)クロダイト工業株式会社 (7)
【出願人】(391037766)株式会社高橋精機工業所 (7)
【Fターム(参考)】