説明

金型温度測定装置

【課題】電磁波に対するノイズ環境下においても、金型に設けた温度検出素子の温度信号を低消費電力で確実に型外へ送信することができる。
【解決手段】専用型2が汎用型1に対し相対移動可能に設けられた金型間の通信装置であって、専用型2の必要箇所に配設された温度検出素子4と、温度検出素子4から出力される温度信号を高周波パルス信号に変換する送信モジュール5と、専用型2と汎用型1にそれぞれ設けられて、その間に生じる電界により高周波パルス信号を伝達させる一対の電極状中継モジュール6,7と、汎用型1側に設けられて電極状中継モジュール6,7を介して専用型2から伝達された高周波パルス信号から温度信号を得る受信モジュール8とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金型温度測定装置に関し、特に、金型に設置した温度検出素子から出力される温度信号を、金型外との間に信号線を敷設することなく金型外にてリアルタイムに測定できる金型温度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金型のキャビティ面の温度ないし温度分布を遠隔的に測定する方法として例えば特許文献1等においては、キャビティ面から放射される赤外線を検出する赤外線カメラを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−256099
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、赤外線カメラを使用した温度測定では、キャビティ面が露出した型開き状態での温度測定しか行うことができない。そこで、キャビティ面に近い型内部に複数の温度検出素子を埋設して、型閉め状態でのキャビティ面の温度分布を測定することが考えられるが、この場合は温度検出素子からの配線が型外へ延びるため、可動型のような型開き時に移動する金型や、固定型であっても頻繁に交換される金型では、配線の処理が煩わしい、あるいは型交換時にその都度配線作業が必要となる、という問題がある。この場合、温度検出素子の温度信号をアンテナを介した無線通信によって型外へ送信することも考えられるが、電磁波に対するノイズ源が多く存在する工場内では確実な通信が困難であるという問題があるとともに比較的大きな通信電力を消費する。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、電磁波に対するノイズ環境下においても、金型に設けた温度検出素子の温度信号を低消費電力で確実に型外へ送信することができる金型温度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明では、一方の金型(2)が他方の金型(1)に対し相対移動ないし離脱可能に設けられた金型間の通信装置であって、前記一方の金型(2)の必要箇所に配設された温度検出素子(4)と、前記温度検出素子(4)から出力される温度信号を高周波パルス信号に変換する変調手段(5)と、前記一方の金型(2)と他方の金型(1)にそれぞれ設けられて、その間に生じる電界により前記高周波パルス信号を一方から他方へ伝達させる一対の電極(6,7)と、前記他方の金型(1)側に設けられて前記一対の電極(6,7)を介して前記一方の金型側(2)から伝達された前記高周波パルス信号から前記温度信号を得る復調手段(8)とを備えている。
【0007】
本第1発明においては、一方の金型から他方の金型への温度信号の伝達を電極間に生じる電界によって行っているから、両金型間の配線が不要である。したがって、一方の金型が移動し、あるいは頻繁に交換される場合でも、配線の処理が煩わしい、あるいは型交換時にその都度配線作業が必要となる、という問題が解消される。また、電極間に生じる電界によって信号伝達を行っているから、電磁波に対するノイズ環境下でも確実な通信が行えるとともに、通信電力の消費も少ない。
【0008】
本第2発明では、前記他方の金型(1)は汎用型であり、前記一方の金型(2)は前記汎用型(1)に設けられた専用型であって、前記汎用型(1)に対して前記専用型(2)が接近移動してこれらが衝合されることにより型閉め状態となる。
【0009】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明の金型温度測定装置によれば、電磁波に対するノイズ環境下においても、金型に設けた温度検出素子の温度信号を低消費電力で確実に型外へ送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の金型温度測定装置によって温度測定を行う金型の概念的構成図である。
【図2】可動型用の送信モジュール、中継モジュール、および受信モジュールの詳細な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1には、本発明の金型温度測定装置によって温度測定を行う金型の概念的構成図を示す。図1は可動型を説明したもので、当該可動型は汎用型1と4個の専用型2で構成されており、汎用型1に対して専用型2が接近移動してこれらが衝合されることにより型閉め状態となる。
【0013】
専用型2にはキャビティ面に近い型内部に必要数の温度検出素子としての熱電対4が埋設されている。また、専用型2の外表面には詳細を後述する変調手段としての送信モジュール5と中継モジュール6が設けられている。各熱電対4は送信モジュール5に入力接続されている。
【0014】
中継モジュール6は全体が厚肉平板の電極状となっており、その一部には受電用のフェライトコアが設けられている。一方、汎用型1にも詳細を後述する中継モジュール7が設けられており、中継モジュール7は全体が厚肉平板の電極状となって、その一部には送電用のフェライトコアが設けられている。そして、型閉め位置まで移動した各専用型2の中継モジュール6は、それぞれ汎用型1の中継モジュール7と正対するようになっている。汎用型1の外部には詳細を後述する復調手段としての受信モジュール8が設けられており、受信モジュール8はコンピュータ9に接続されている。
【0015】
図2には、可動型を構成する一つの専用型2の送信モジュール5と中継モジュール6、および汎用型1の中継モジュール7、そして受信モジュール8の詳細な構成を示す。
【0016】
送信モジュール5はADコンバータ51、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)52、周波数偏移(FSK)変調回路53を備えている。ADコンバータ51は14ビット、25チャンネルのもので、25個までの熱電対4からのアナログ温度信号を入力することができる。アナログ温度信号はADコンバータ51でパルス符号変調(PCM)によってデジタル化される。デジタル温度信号は、PLD52によって時分割多重化されて、フレーム信号と誤り訂正信号が付加されたパケットデータに変換される。
【0017】
パケットデータ化された温度信号はFSK変調回路53にて27MHz帯のFSK信号に変換されて中継モジュール6へ送出される。FSK温度信号は電極状の中継モジュール6から電極状の中継モジュール7へ、これらの間に生じる電界によって伝達される。中継モジュール9へ伝達されたFSK温度信号は、ミキシング回路73を介して後述する定電圧電源に重畳されて受信モジュール8へ送られる。
【0018】
そして、受信モジュール8のミキシング回路81を経て、FSK温度信号はフィルタ82,83やアンプ84で構成された分離回路によって取り出され、FSK復調回路85で再びパケットデータに戻されて、後段のPLD86にて誤りチェック等がなされる。その後、温度信号はインターフェース回路87によってRSS422規格のシリアルデジタル信号に変換されてコンピュータ9に送られる。
【0019】
受信モジュール8には12Vの定電圧電源が供給されており、これは電源回路88によって受信モジュール8内の各回路用の5V電源に変換されるとともに、ミキシング回路81,73を経て中継モジュール7の送電回路72に入力し、ここで約50KHzの正弦波に変換されて送電用フェライトコア71へ送られる。正弦波電源の電力は送電用フェライトコア71からこれに正対する中継モジュール6の受電用フェライトコア61へ送信され、これに接続された送信モジュール5の電源回路54で当該モジュール5内の各回路用の5V電源に変換される。
【0020】
なお、専用型2の送信モジュール5にはスーパーキャパシタ55が設けられて、これが電源回路54の出力側に接続されている。これにより、専用型2が型閉め位置から型開き位置へ移動して中継モジュール6,7同士の位置がずれ、フェライトコア61,71間の電力送信が中断しても数秒間は温度信号の通信が維持され、例えば離型剤を専用型2のキャビティ面に吹いた際の温度変化も測定することができる。
【0021】
可動型を構成する他の専用型2からの温度信号も、上述した構成と同一構成の送信モジュール5、中継モジュール6,7、受信モジュール8を経てコンピュータ9に送られる。この際、受信モジュール8には実際には、フィルタ82,83およびアンプ84、FSK復調回路85、PLD86、電源回路88、ミキシング回路81がさらに一系統設けられており、温度信号はインターフェース回路87を他の専用型2からの温度信号と共用してコンピュータ9へ送信される。図示しない固定型は各一個の専用型と汎用型で構成されており、その送信モジュール、中継モジュール、受信モジュールの詳細は、送信モジュールにスーパーキャパシタ55が設けられていない以外は、以上に説明した可動型の送信モジュール5、中継モジュール6,7、受信モジュール8と同一である。
【符号の説明】
【0022】
1…汎用型(他方の金型)、2…専用型(一方の金型)、4…熱電対(温度検出素子)、5…送信モジュール(変調手段)、6…中継モジュール(電極)、7…中継モジュール(電極)、8…受信モジュール(復調手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の金型が他方の金型に対し相対移動ないし離脱可能に設けられた金型間の通信装置であって、前記一方の金型の必要箇所に配設された温度検出素子と、前記温度検出素子から出力される温度信号を高周波パルス信号に変換する変調手段と、前記一方の金型と他方の金型にそれぞれ設けられて、その間に生じる電界により前記高周波パルス信号を一方から他方へ伝達させる一対の電極と、前記他方の金型に設けられて前記一対の電極を介して前記一方の金型側から伝達された前記高周波パルス信号から前記温度信号を得る復調手段とを備える金型温度測定装置。
【請求項2】
前記他方の金型は汎用型であり、前記一方の金型は前記汎用型に設けられた専用型であって、前記汎用型に対して前記専用型が接近移動してこれらが衝合されることにより型閉め状態となる請求項1に記載の金型温度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−256143(P2010−256143A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105752(P2009−105752)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(591172054)株式会社明和eテック (24)
【Fターム(参考)】