説明

金属−セラミックス接合回路基板の製造方法

【課題】ロールコータによって金属−セラミックス接合回路基板の回路パターンにエッチングレジストインクを塗布する際に、レジストインクを均一に塗布し、回路パターンの側面にインク垂れを防止し、ロールの押し込み量が大きくなっても回路パターンへの湯道の部分までレジストインクが塗布されるのを防止し、金属−セラミックス接合回路基板に反りがあってもセラミックス基板の割れを防止することができる、金属−セラミックス接合回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】セラミックス基板の一方の面に金属回路板18aが接合し且つこの金属回路板の回路パターンへの湯道の一部が残存する金属−セラミックス接合回路基板18を作製した後、溝ピッチ0.05〜0.2mmの塗布ロール10を使用するロールコータによって金属−セラミックス接合回路基板の回路パターンにエッチングレジストインクを塗布してエッチング処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス基板に金属回路板が接合した金属−セラミックス接合回路基板の製造方法に関し、特に、パワーモジュールなどに使用される金属−セラミックス接合回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パワーモジュールなどに使用される金属−セラミックス接合回路基板の製造方法として、金属溶湯をセラミックス基板上に流し込んだ後に冷却して固化させることによりセラミックス基板に金属板を接合し、その後、スクリーン印刷などにより所望のパターン形状のエッチングレジストを印刷し、エッチング処理を行って回路パターンを形成した後、レジストを剥離することにより、所望の回路パターンの金属回路板を有する金属−セラミックス接合回路基板を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、この特許文献1の方法のように、金属溶湯をセラミックス基板上に流し込んだ後に冷却して固化させることによりセラミックス基板に金属板を接合した後に、エッチング処理により所望の回路パターンの金属回路板を形成する方法において、エッチング処理時間を短縮することができるようにするとともに、回路用金属板が厚い場合でもファインパターンを形成することができるようにするために、金属溶湯をセラミックス基板に接触させた後に冷却して固化させることによってセラミックス基板に接合する回路用金属板の形状を、予め回路パターンに類似した形状にする方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかし、この特許文献2の方法では、回路パターンにアルミニウムなどの溶湯を注湯するための湯道の少なくとも一部が残るだけでなく、回路パターン間の湯道の一部も残り、これらをエッチングなどの方法により除去する必要がある。
【0005】
そのため、従来では、回路パターンの形状と略同一の形状で回路パターンと略同一またはそれよりも大きい寸法のスクリーンマスクを使用して、スクリーン印刷により回路パターンの表面(上面)全体にエッチングレジストインクを塗布した後、エッチングにより湯道を除去していた。
【0006】
しかし、このようなスクリーン印刷による方法では、エッチングレジストインクを塗布する際にスクリーンマスクを回路パターンに対して位置決めする作業が必要になり、また、回路パターンの側面にインク垂れが生じるという問題があった。特に、スクリーン印刷による方法では、セラミックス基板の寸法のばらつきや、セラミックス基板に金属板を接合する際の僅かなズレが生じても、エッチングレジストインクの塗布に影響するため、エッチングレジストインクを塗布する際にスクリーンマスクを回路パターンに対して位置決めする作業が容易でなかった。
【0007】
また、スクリーン印刷による方法では、スクリーン印刷の際に加えられる圧力によって回路パターン間などにおいてセラミックス基板が割れるという問題があった。このような問題は、特に、異なる厚さのアルミニウム板がセラミックス基板の両面に接合した金属−セラミックス接合回路基板などのように、金属−セラミックス接合回路基板に大きな反りが生じている場合に顕著であった。
【0008】
さらに、スクリーン印刷による方法では、金属−セラミックス接合回路基板1枚毎にエッチングレジストインクを塗布しなければならず、一度に複数枚の金属−セラミックス接合回路基板にエッチングレジストインクを塗布することができなかった。
【0009】
一方、ポリエステルやポリイミドなどの絶縁基板の両面に銅箔が貼り付けられた厚さ0.05〜0.3mmの銅張り板に、両面の導通を目的とするスルーホール内部の導通層を形成するための直径0.15〜0.45mmの孔を開け、この孔の直径の1.5倍以上の溝幅のロールを用いて、ロールコータにより銅箔の表面と孔の内部に液状レジストインクを塗布する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
このようなロールコータによりレジストインクを塗布する方法を、金属−セラミックス接合回路基板の回路パターンにエッチングレジストインクを塗布する場合に適用すると、回路パターンの表面(上面)全体にレジストインクを塗布すればよいので、スクリーン印刷による場合のような位置決めが不要になる。また、一度に複数枚の金属−セラミックス接合回路基板にエッチングレジストインクを塗布することも可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−76551号公報(段落番号0030、0048)
【特許文献2】特開2005−93965号公報(段落番号0006)
【特許文献3】特開平6−45756号公報(段落番号0011−0019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、ロールコータによって金属−セラミックス接合回路基板の回路パターンにエッチングレジストインクを塗布したところ、回路パターンの表面(上面)全体にレジストインクを均一に塗布することが困難であり、また、回路パターンの側面にインク垂れが生じる場合もあった。さらに、ロールの押し込み量(ロールが回路パターンと接触した状態から回路パターンによって押し込まれる量)が大きくなると、回路パターンへの湯道や回路パターン間の湯道の部分までレジストインクが塗布される場合もあった。また、金属−セラミックス接合回路基板に大きな反りが生じている場合に、スクリーン印刷の場合よりもセラミックス基板が割れ易いという問題もあった。このようなセラミックス基板の割れは、複数個分の金属−セラミックス接合回路基板を一体として製造する場合に、各々の金属−セラミックス接合回路基板の間を分離するためのブレイクラインにおいて顕著になる。
【0013】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、ロールコータによって金属−セラミックス接合回路基板の回路パターンにエッチングレジストインクを塗布する際に、レジストインクを均一に塗布し、回路パターンの側面にインク垂れを防止し、ロールの押し込み量が大きくなっても回路パターンへの湯道の部分までレジストインクが塗布されるのを防止し、金属−セラミックス接合回路基板に反りがあってもセラミックス基板の割れを防止することができる、金属−セラミックス接合回路基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、セラミックス基板の一方の面に金属回路板が接合し且つこの金属回路板の回路パターンへの湯道の一部が残存する金属−セラミックス接合回路基板を作製した後、溝ピッチ0.05〜0.2mmの塗布ロールを使用するロールコータによって金属−セラミックス接合回路基板の回路パターンにエッチングレジストインクを塗布すれば、レジストインクを均一に塗布し、回路パターンの側面にインク垂れを防止し、塗布ロールの押し込み量が大きくなっても回路パターンへの湯道の部分までレジストインクが塗布されるのを防止し、金属−セラミックス接合回路基板に反りがあってもセラミックス基板の割れを防止することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明による金属−セラミックス接合回路基板の製造方法は、セラミックス基板の一方の面に金属回路板が接合し且つこの金属回路板の回路パターンへの湯道の一部が残存する金属−セラミックス接合回路基板を作製した後、溝ピッチ0.05〜0.2mmの塗布ロールを使用するロールコータによって金属−セラミックス接合回路基板の回路パターンにエッチングレジストインクを塗布してエッチング処理を行うことを特徴とする。
【0016】
また、本発明による金属−セラミックス接合回路基板の製造方法は、セラミックス基板の一方の面に複数の回路パターンの金属回路板が接合し且つこれらの回路パターン間の湯道の一部が残存する金属−セラミックス接合回路基板を作製した後、溝ピッチ0.05〜0.2mmの塗布ロールを使用するロールコータによって金属−セラミックス接合回路基板の回路パターンにエッチングレジストインクを塗布してエッチング処理を行うことを特徴とする。
【0017】
これらの金属−セラミックス接合回路基板の製造方法において、塗布ロールの溝深さが0.03〜0.3mmであるのが好ましく、金属−セラミックス接合回路基板の厚さが0.6〜6mmであるのが好ましい。また、レジストインクを塗布する際の塗布ロールの押し込み量が0.3〜1.0mmであるのが好ましく、レジストインクの粘度が50〜300dPa・sであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ロールコータによって金属−セラミックス接合回路基板の回路パターンにエッチングレジストインクを塗布する際に、レジストインクを均一に塗布し、回路パターンの側面にインク垂れを防止し、塗布ロールの押し込み量が大きくなっても回路パターンへの湯道の部分までレジストインクが塗布されるのを防止し、金属−セラミックス接合回路基板に反りがあってもセラミックス基板の割れを防止することができる。
【0019】
特に、金属溶湯をセラミックス基板上に流し込んだ後に冷却して固化させることによりセラミックス基板に金属板を接合した後に、エッチング処理により所望の回路パターンの金属回路板を形成する方法において、エッチング処理時間を短縮することができるようにするとともに、回路用金属板が厚い場合でもファインパターンを形成することができるようにするために、金属溶湯をセラミックス基板に接触させた後に冷却して固化させることによってセラミックス基板に接合する回路用金属板の形状を、予め回路パターンに類似した形状にする方法でも、ロールコータによって金属−セラミックス接合回路基板の回路パターンにエッチングレジストインクを塗布する際に、レジストインクを均一に塗布し、回路パターンの側面にインク垂れを防止し、塗布ロールの押し込み量が大きくなっても複数の回路パターンの間の湯道の部分までレジストインクが塗布されるのを防止し、金属−セラミックス接合回路基板に反りがあってもセラミックス基板の割れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】金属−セラミックス接合回路基板の製造方法の実施の形態において、ロールコータによって回路パターンにエッチングレジストインクを塗布する工程を概略的に示す図である。
【図2A】図1のロールコータの塗布ロールによって回路パターンにエッチングレジストインクを塗布する際の塗布ロールを概略的に示す図である。
【図2B】図2Aの塗布ロールの表面部の溝ピッチを説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明による金属−セラミックス接合回路基板の製造方法の一実施の形態では、金属溶湯をセラミックス基板に接触させた後に冷却して固化させることによって、セラミックス基板の一方の面に複数の回路パターンの金属回路板が接合し且つこの金属回路板の回路パターンへの湯道および回路パターン間の湯道の一部が残存する金属−セラミックス接合回路基板を作製した後、溝ピッチ0.05〜0.2mmの塗布ロールを使用するロールコータによって金属−セラミックス接合回路基板の回路パターンにエッチングレジストインクを塗布してエッチング処理を行う。
【0022】
本実施の形態の金属−セラミックス接合回路基板の製造方法では、図1に示すようなロールコータを使用して、金属−セラミックス接合回路基板の回路パターンにエッチングレジストインクを塗布する。
【0023】
図1、図2Aおよび図2Bに示すように、本実施の形態の金属−セラミックス接合回路基板の製造方法において使用するロールコータは、(図中細矢印方向に回転する)塗布ロール10と、この塗布ロール10の下方に離間して対向するバックアップロール12と、(図示しない)ばねにより付勢されて塗布ロール10に当接して塗布ロール10の溝部10aにレジストインク14を供給するドクターバー16と、金属−セラミックス接合回路基板18を(図中太矢印方向に)搬送して塗布ロール10とバックアップロール12の間を通過させるコンベア20とを備えている。このロールコータでは、塗布ロール10とバックアップロール12の間を通過する金属−セラミックス接合回路基板18の回路パターン18aの表面に塗布ロール10が押し付けられて、塗布ロール10の溝部10aに充填されているレジストインク14が回路パターン18aの表面に塗布されるようになっている。
【0024】
塗布ロール10は、ゴムがライニングされたゴムライニングロールであり、その表面には微細なV字形状の溝部10aが溝ピッチd=0.05〜0.2mm、好ましくは0.1〜0.2mmで螺旋状に形成されている。溝部10aの深さは、0.03〜0.3mmであるのが好ましく、0.04〜0.15mmであるのがさらに好ましい。このような溝ピッチおよび溝深さの溝部が形成された塗布ロールを使用することにより、レジストインクを均一に塗布し、回路パターンの側面にインク垂れを防止することができる。なお、塗布ロール10の表面に螺旋状に形成された溝部10aに代えて、塗布ロール10の表面に上記の溝ピッチで互いに離間した複数の微細なV字形状の溝を形成してもよい。
【0025】
塗布ロール10とバックアップロール12の間隔は、金属−セラミックス接合回路基板18が通過する際に、その回路パターン18aによって、塗布ロール10の溝部10aの間に形成された凸部10bが押し込まれるように、金属−セラミックス接合回路基板18の厚さより僅かに、すなわち押し込み量(回路パターン18aによって凸部10bが押し込まれる量)だけ小さくなっている。セラミックス基板の表面側に接合した回路パターン18aと裏面側に接合した金属板18bを含む金属−セラミックス接合回路基板18の厚さは、0.6〜6mmであるのが好ましく、1〜3.5mmであるのがさらに好ましい。また、回路パターン18aと金属板18bの厚さは、それぞれ0.2mm以上であるのが好ましく、0.4mm以上であるのがさらに好ましい。また、押し込み量は、0.2〜1.0mmであるのが好ましく、0.4〜0.8mmであるのがさらに好ましい。なお、湯道にレジストインクが塗布されるのを防ぐために、金属−セラミックス接合回路基板18の回路パターン18aの厚さと、回路パターン18a間の湯道の残部の厚さの差が、押し込み量より大きいのが好ましく、押し込み量よりも0.2mm以上大きいのが好ましく、0.4mm以上大きいのがさらに好ましい。また、金属−セラミックス接合回路基板18の反りが大き過ぎる場合には、セラミックス基板の割れを防止するために、反りを矯正して100μm以下にしておくのが好ましく、200μm以下にしておくのがさらに好ましい。
【0026】
なお、レジストインクとして、通常の粘度のインクを使用することができ、50〜300dPa・sの粘度範囲のインクを使用するのが好ましく、70〜250dPa・sの粘度範囲のインクを使用するのがさらに好ましい。また、レジストインクは二度塗りするのが好ましい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明による金属−セラミックス接合回路基板の製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0028】
[実施例1]
厚さ0.6mmの窒化アルミニウムからなるセラミックス基板の表面側および裏面側にそれぞれ厚さ0.8mmの複数の回路パターンのアルミニウム回路板と厚さ0.8mmのアルミニウム板が直接接合され且つこれらの回路パターン間に厚さ0.3mm未満の湯道の一部が残存する金属−セラミックス接合回路基板を作製した。
【0029】
その後、図1に示すようなロールコータにおいて、溝ピッチ0.1mm、溝深さ0.04mmの塗布ロールを使用し、押し込み量を0.5mmとして、一般に使用されているUV硬化型のレジストインク(粘度210dPa・s)を塗布してUV硬化させた後、レジストインクの塗布状態を観察した。その結果、部分的に薄いところがあったものの、レジストインクが回路パターンの表面(上面)全体に塗布されていた。また、回路パターンの側面へのインク垂れもなく、回路パターン間の湯道の部分までレジストインクが塗布されていなかった。
【0030】
その後、塩化鉄含有溶液でエッチングしたところ、回路パターン間の湯道が除去され、回路パターンの側面も一様にエッチングされ、回路パターンを上方から見たときの回路パターンの形状(ライン形状)も良好であった。
【0031】
また、金属−セラミックス接合回路基板の表面側を上に向けたときの中央部の高さと、裏面側を上に向けたときの中央部の高さの差の絶対値を反り量として測定したところ、反り量は0.1mm以下であった。
【0032】
[実施例2]
金属−セラミックス接合回路基板に反りがある例として、セラミックス基板の表面側の複数の回路パターンのアルミニウム回路板の厚さを0.6mm、裏面側のアルミニウム板の厚さを0.8mmとした以外は、実施例1と同様の方法によりレジストインクを塗布して硬化させた後、レジストインクの塗布状態を観察したところ、部分的に薄いところがあったものの、レジストインクが回路パターンの表面(上面)全体に塗布されていた。また、回路パターンの側面へのインク垂れもなく、回路パターン間の湯道の部分までレジストインクが塗布されていなかった。また、実施例1と同様の方法によりエッチングしたところ、回路パターン間の湯道が除去され、回路パターンの側面も一様にエッチングされ、回路パターンのライン形状も良好であった。また、実施例1と同様の方法により反り量を測定したところ、0.2mm以下であった。
【0033】
[実施例3]
塗布ロールの溝ピッチを0.2mmとした以外は、実施例2と同様の方法によりレジストインクを塗布して硬化させた後、レジストインクの塗布状態を観察したところ、レジストインクが回路パターンの表面(上面)全体に均一に塗布されていた。また、回路パターンの側面へのインク垂れもなく、回路パターン間の湯道の部分までレジストインクが塗布されていなかった。また、実施例1と同様の方法によりエッチングしたところ、回路パターン間の湯道が除去され、回路パターンの側面も一様にエッチングされ、回路パターンのライン形状も良好であった。
【0034】
[実施例4]
塗布ロールの溝ピッチを0.15mm、溝深さを0.06mmとした以外は、実施例2と同様の方法によりレジストインクを塗布して硬化させた後、レジストインクの塗布状態を観察したところ、レジストインクが回路パターンの表面(上面)全体に均一に塗布されていた。また、回路パターンの側面へのインク垂れもなく、回路パターン間の湯道の部分までレジストインクが塗布されていなかった。また、実施例1と同様の方法によりエッチングしたところ、回路パターン間の湯道が除去され、回路パターンの側面も一様にエッチングされ、回路パターンのライン形状も良好であった。
【0035】
[実施例5〜7]
それぞれ実施例1〜3と同様の方法によりレジストインクを塗布して硬化させる工程を繰り返して二度塗りした後、レジストインクの塗布状態を観察したところ、レジストインクが回路パターンの表面(上面)全体に均一に塗布されていた。また、回路パターンの側面へのインク垂れもなく、回路パターン間の湯道の部分までレジストインクが塗布されていなかった。また、実施例1と同様の方法によりエッチングしたところ、回路パターン間の湯道が除去され、回路パターンの側面も一様にエッチングされ、回路パターンのライン形状も良好であった。
【0036】
[実施例8]
セラミックス基板の表面側の複数の回路パターンのアルミニウム回路板の厚さを1.8mm、裏面側のアルミニウム板の厚さを0.8mmとした以外は、実施例7と同様の方法によりレジストインクを塗布して硬化させた後、レジストインクの塗布状態を観察したところ、レジストインクが回路パターンの表面(上面)全体に均一に塗布されていた。また、回路パターンの側面へのインク垂れもなく、回路パターン間の湯道の部分までレジストインクが塗布されていなかった。また、実施例1と同様の方法によりエッチングしたところ、回路パターン間の湯道が除去され、回路パターンの側面も一様にエッチングされ、回路パターンのライン形状も良好であった。
【0037】
[比較例1]
セラミックス基板の表面側の複数の回路パターンのアルミニウム回路板の厚さを1.8mm、裏面側のアルミニウム板の厚さを0.8mmとし、塗布ロールの溝ピッチを0.4mm、溝深さを0.1mmとした以外は、実施例1と同様の方法によりレジストインクを塗布して硬化させた後、レジストインクの塗布状態を観察したところ、レジストインクが回路パターンの表面(上面)全体に塗布されていたが、回路パターンの外周部にレジストインクが溜まって厚くなっており、インク垂れが生じていた。また、実施例1と同様の方法によりエッチングしたところ、インク垂れにより回路パターンの側面が一様にエッチングされておらず、回路パターンのライン形状が波打って良好でなかった。
【0038】
[実施例9]
実施例1のレジストインクを希釈して粘度80dPa・sにしたレジストインクを使用した以外は、実施例1と同様の方法によりレジストインクを塗布して硬化させた後、レジストインクの塗布状態を観察したところ、レジストインクが回路パターンの表面(上面)全体に均一に塗布されていた。また、回路パターンの側面へのインク垂れもなく、回路パターン間の湯道の部分までレジストインクが塗布されていなかった。また、実施例1と同様の方法によりエッチングしたところ、回路パターン間の湯道が除去され、回路パターンの側面も一様にエッチングされ、回路パターンのライン形状も良好であった。
【0039】
[実施例10]
塗布ロールの溝ピッチを0.2mmとした以外は、実施例9と同様の方法によりレジストインクを塗布して硬化させた後、レジストインクの塗布状態を観察したところ、レジストインクが回路パターンの表面(上面)全体に均一に塗布されていた。また、回路パターンの側面へのインク垂れもなく、回路パターン間の湯道の部分までレジストインクが塗布されていなかった。また、実施例1と同様の方法によりエッチングしたところ、回路パターン間の湯道が除去され、回路パターンの側面も一様にエッチングされ、回路パターンのライン形状も良好であった。
【0040】
[実施例11]
塗布ロールの溝ピッチを0.15mmとした以外は、実施例9と同様の方法によりレジストインクを塗布して硬化させた後、レジストインクの塗布状態を観察したところ、レジストインクが回路パターンの表面(上面)全体に均一に塗布されていた。また、回路パターンの側面へのインク垂れもなく、回路パターン間の湯道の部分までレジストインクが塗布されていなかった。また、実施例1と同様の方法によりエッチングしたところ、回路パターン間の湯道が除去され、回路パターンの側面も一様にエッチングされ、回路パターンのライン形状も良好であった。
【0041】
[実施例12〜13]
それぞれ実施例9および10と同様の方法によりレジストインクを塗布して硬化させる工程を繰り返して二度塗りした後、レジストインクの塗布状態を観察したところ、レジストインクが回路パターンの表面(上面)全体に均一に塗布されていた。また、回路パターンの側面へのインク垂れもなく、回路パターン間の湯道の部分までレジストインクが塗布されていなかった。また、実施例1と同様の方法によりエッチングしたところ、回路パターン間の湯道が除去され、回路パターンの側面も一様にエッチングされ、回路パターンのライン形状も良好であった。なお、レジストインクを希釈した場合、一度塗りでは、回路パターンに塗布されるレジストインクの量が少なくなってしまうため、エッチングの際にエッチング液によりレジストが破れてアルミニウム回路板が溶けてしまう可能性があるので、本実施例のように二度塗りした方がよい。
【0042】
[実施例14〜16]
実施例1のレジストインクを希釈して粘度80dPa・sにしたレジストインクを使用した以外は、それぞれ実施例6〜8と同様の方法によりレジストインクを塗布して硬化させた後、レジストインクの塗布状態を観察したところ、レジストインクが回路パターンの表面(上面)全体に均一に塗布されていた。また、回路パターンの側面へのインク垂れもなく、回路パターン間の湯道の部分までレジストインクが塗布されていなかった。また、実施例1と同様の方法によりエッチングしたところ、回路パターン間の湯道が除去され、回路パターンの側面も一様にエッチングされ、回路パターンのライン形状も良好であった。
【0043】
[比較例2〜4]
比較例2では、塗布ロールの溝ピッチを1.2mmとし、押し込み量を0.8mmとした以外は実施例2と同様の方法により、比較例3では、塗布ロールの溝ピッチを1.2mmとし、押し込み量を0.9mmとした以外は実施例1と同様の方法により、比較例4では、塗布ロールの溝ピッチを1.2mmとし、押し込み量を1.0mmとした以外は比較例1と同様の方法により、それぞれレジストインクを塗布して硬化させた後、レジストインクの塗布状態を観察した。その結果、比較例2では、回路パターンの側面へのインク垂れもなく、回路パターン間の湯道の部分までレジストインクが塗布されておらず、レジストインクが回路パターンの表面(上面)だけに塗布されていたが、塗布ロールの溝ピッチが大き過ぎるため、線状に塗布されて塗れていない部分が存在していた。また、比較例3および4のように、押し込み量を増加させると、回路パターンの側面にもレジストインクが垂れて、回路パターン間の湯道の部分までレジストインクが塗布されていた。
【0044】
また、実施例1と同様の方法によりエッチングしたところ、比較例2では、回路パターンの表面(上面)が線状にエッチングされ、所望の回路パターン形状にすることができなかった。また、比較例3および4では、回路パターン間の湯道の一部が除去されずに残り、回路パターンの側面が一様にエッチングされておらず、回路パターンのライン形状が波打って良好でなかった。
【符号の説明】
【0045】
10 塗布ロール
10a 溝部
10b 凸部
12 バックアップロール
14 レジストインク
16 ドクターバー
18 金属−セラミックス接合回路基板
18a 回路パターン
18b 金属板
20 コンベア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板の一方の面に金属回路板が接合し且つこの金属回路板の回路パターンへの湯道の一部が残存する金属−セラミックス接合回路基板を作製した後、溝ピッチ0.05〜0.2mmの塗布ロールを使用するロールコータによって金属−セラミックス接合回路基板の回路パターンにエッチングレジストインクを塗布してエッチング処理を行うことを特徴とする、金属−セラミックス接合回路基板の製造方法。
【請求項2】
セラミックス基板の一方の面に複数の回路パターンの金属回路板が接合し且つこれらの回路パターン間の湯道の一部が残存する金属−セラミックス接合回路基板を作製した後、溝ピッチ0.05〜0.2mmの塗布ロールを使用するロールコータによって金属−セラミックス接合回路基板の回路パターンにエッチングレジストインクを塗布してエッチング処理を行うことを特徴とする、金属−セラミックス接合回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記塗布ロールの溝深さが0.03〜0.3mmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の金属−セラミックス接合回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記金属−セラミックス接合回路基板の厚さが0.6〜6mmであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の金属−セラミックス接合回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記レジストインクを塗布する際の前記塗布ロールの押し込み量が0.3〜1.0mmであることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の金属−セラミックス接合回路基板の製造方法。
【請求項6】
前記レジストインクの粘度が50〜300dPa・sであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の金属−セラミックス接合回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2011−199209(P2011−199209A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67139(P2010−67139)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(506365131)DOWAメタルテック株式会社 (109)
【Fターム(参考)】