説明

金属−酸素結合を有する分散質

【課題】200℃以下の低温度での金属酸化物薄膜の製造、および均質な有機−無機
複合体の製造に適した金属−酸素結合を有する分散質を提供するとともに、各種機能を有
する金属酸化物薄膜および有機−無機複合体、特に高屈折率、高透明性を有する有機−無
機複合体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の金属−酸素結合を有する分散質は、3以上の加水分解性基を有する金属化合物と所定量の水を、酸、塩基、及び分散安定化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の非存在下に、所定温度で混合して得られてくる金属−酸素結合を有する分散質において、該所定量の水が、炭化水素系溶媒、及びアルコール系溶媒で希釈された溶液であり、該希釈された溶液を、該金属化合物に添加し、さらに該所定温度が、室温であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属−酸素結合を有する分散質、該分散質から製造される金属酸化物膜、及び該分散質または該分散質等を無機成分とする有機−無機複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物ゾルは、金属酸化物膜の形成用材料、有機−無機複合体の無機成分等として有用であり、いくつかの製造方法が知られている。
具体的に例えば、特開平10−298769号公報には、1種又は2種以上の金属化合物を加水分解及び重合させて金属酸化物前駆体ゾルを製造する方法において、前記金属化合物への水の添加を−20℃以下の温度で行うことを特徴とする金属酸化物前駆体ゾルの製造方法が記載されている。
【0003】
また、特開平1−129032号公報には、チタンテトラアルコキシドを、1.0倍モル〜1.7倍モルの水を用いて20〜90℃の温度で加水分解する、有機溶剤溶解性の高分子量ラダー状ポリチタノキサンの製造方法が記載されている。この方法は、高分子量体においても有機溶剤に溶解し、繊密な薄膜を形成する高分子量のラダー状ポリチタノキサンを提供することを目的としている。
【0004】
特開2001−342018号公報には、水を加えて加熱することにより部分的に加水分解した金属塩1モルに対して、0.1〜2.0モルの水を含有するアルコール溶液を加え、加熱して金属塩を加水分解して金属水酸化物とし、脱水縮合した後、濃縮して金属酸化物前駆体溶液を製造する方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、得られてくるゾル粒子が、凝集して、粒子径が大きく、金属酸化物膜、または有機成分との複合体を製造しても満足のいく性能は得られないという問題があった。
【0006】
また、金属アルコキシドを酸もしくは塩基を用いて加水分解、脱水縮合し、溶媒、水、酸または塩基を留去してバルク重合処理して得られてくるゾルは、用いた水、酸、または塩基を完全に除去することが困難であることから、残存するこれらが重合反応に影響するという問題があった。また、特に有機溶媒中での溶液重合行うには、溶液中で金属アルコキシドの加水分解生成物を安定に存在させるために、酸、塩基または分散安定化剤を用いる必要があり、それらは重合を阻害したり生成物の物性に悪影響を及ぼすという問題もあった。さらに、酸化チタンゲルを用いた上記無機−有機複合体は、概して他の金属酸化物ゲルを用いた無機−有機複合体に比して透過率が低い傾向にあり、酸化チタンが加水分解・脱水縮合後の濃縮段階で凝集していることを示唆しているといえる。
【0007】
また、多座配位化合物の添加により金属アルコキシドを安定化させて金属アルコキシドの加水分解速度を抑制する方法によれば、均質な成膜用ゾルを容易に調製することができるが、ゾルやゲル膜中に高沸点で分解しにくい有機物が多く共存することとなり、その有機物の除去のためにゲル膜を500℃程度の高温で加熱処理することが必要になる。また、ゲル膜中に多くの有機物が残存するため、ゲル膜を加熱処理すると膜の重量減少が大きくなる。言い換えると、ゲル膜からの有機物の除去によって膜中に多くの気孔が生成され、得られた金属酸化物薄膜の欠陥の原因となる。すなわち、金属酸化物の機械的、光学的、電気的等の各種特性を十分に発揮できないという問題があった。一方、膜中の気孔を除去するためには、その薄膜の緻密化のために余分なエネルギーが必要となってくる。また、上記したように金属塩を用いる方法は、基本的には熱分解法であり、加熱処理後の膜質に多くの問題を生じることになる。
【0008】
本発明は、表面が平滑で緻密な金属酸化物膜、または透明で均質な有機−無機複合体を製造し得ることができる微細で、しかも、酸、塩基、または分散安定化剤が存在しなくても有機溶媒中で安定に分散可能な分散質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、低温で所定量の水を加水分解性基を有する金属化合物に添加すること、室温においても、添加する水を特定の溶媒系で希釈すること、または、水を低温で分割して添加することにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、
(構成1)3以上の加水分解性基を有する金属化合物と所定量の水を、酸、塩基、及び分散安定化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の非存在下に、所定温度で混合して得られてくる金属−酸素結合を有する分散質において、該所定量が、該金属化合物総モル数に対して1.0倍モル以上、2.0倍モル未満であり、該所定温度が、0℃未満の温度であることを特徴とする金属−酸素結合を有する分散質、
(構成2)3以上の加水分解性基を有する金属化合物と所定量の水を、酸、塩基、及び分散安定化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の非存在下に、所定温度で混合して得られてくる金属−酸素結合を有する分散質において、該所定量が、該金属化合物総モル数に対して0.5倍モル以上、1.0倍モル未満であり、該所定温度が、0℃未満の温度であることを特徴とする金属−酸素結合を有する分散質、
(構成3)該所定温度が、−20℃以下の温度であることを特徴とする(構成1)または(構成2)に記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成4)該所定温度が、該金属化合物の加水分解開始温度以下であることを特徴とする(構成1)または(構成2)に記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成5)該所定温度が、−50〜−100℃の範囲の温度であることを特徴とする(構成1)または(構成2)に記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成6)該金属化合物と該所定量の水を混合する工程において、有機溶媒を用いることを特徴とする(構成1)〜(構成5)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成7)該金属化合物と該所定量の水を混合する工程が、該金属化合物に所定量の水を添加する工程であることを特徴とする(構成1)〜(構成6)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成8)該金属化合物に所定量の水を添加する工程が、該金属化合物の有機溶媒溶液に所定量の水を添加する工程であること特徴とする(構成7)に記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成9)有機溶媒が、炭化水素系溶媒、またはエーテル系溶媒であることを特徴とする(構成6)〜(構成8)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成10)所定量の水が、水に可溶な有機溶媒で希釈された溶液であることを特徴とする(構成1)〜(構成9)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成11)水に可溶な有機溶媒が、アルコール系溶媒であることを特徴とする(構成10)に記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成12)該金属化合物と水を該所定温度で混合した後、該所定温度以上に昇温して得られてくることを特徴とする(構成1)〜(構成11)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成13)3以上の加水分解性基を有する金属化合物を酸、塩基、及び/または分散安定化剤の非存在下に加水分解して得られた有機溶媒中で凝集せずに安定に分散しうる部分加水分解物と、該金属化合物総モル数に対して0.5倍モル以上2倍モル未満となる量から該部分加水分解物を製造する際に用いられた量を差し引いた量の水を、酸、塩基、及び分散安定化剤からなる群から選ばれるすくなくとも1種の非存在下に、所定温度で混合して得られてくる金属−酸素結合を有する分散質であって、所定温度が0℃未満の温度であることを特徴とする金属−酸素結合を有する分散質、
(構成14)該所定温度が、−20℃以下の温度であることを特徴とする(構成13)に記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成15)該所定温度が、該金属金属化合物の加水分解開始温度以下であることを特徴とする(構成13)または(構成14)に記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成16)該所定温度が、−50〜−100℃の範囲の温度であることを特徴とする(構成13)または(構成14)に記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成17)該部分加水分解物と該所定量の水を混合する工程において、有機溶媒を用いることを特徴とする(構成13)〜(構成16)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成18)該部分加水分解物と該所定量の水を混合する工程が、該部分加水分解物に所定量の水を添加する工程であることを特徴とする(構成13)〜(構成17)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成19)該部分加水分解物に所定量の水を添加する工程が、該部分加水分解物の有機溶媒溶液に所定量の水を添加する工程であること特徴とする(構成18)に記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成20)該有機溶媒が、炭化水素系溶媒、またはエーテル系溶媒であることを特徴とする(構成17)〜(構成19)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成21)所定量の水が、水に可溶な有機溶媒で希釈された溶液であることを特徴とする(構成13)〜(構成20)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成22)水に可溶な有機溶媒が、アルコール系溶媒であることを特徴とする(構成21)に記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成23)該部分加水分解物と水を該所定温度で混合した後、該所定温度以上に昇温して得られてくることを特徴とする(構成13)〜(構成22)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成24)3以上の加水分解性基を有する金属化合物と所定量の水を、酸、塩基、及び分散安定化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の非存在下に、所定温度で混合して得られてくる金属−酸素結合を有する分散質において、該所定量の水が、炭化水素系溶媒、及びアルコール系溶媒で希釈された溶液であり、該希釈された溶液を、該金属化合物に添加し、さらに該所定温度が、室温であることを特徴とする金属−酸素結合を有する分散質、
(構成25)所定量が、該金属化合物総モル数に対し0.5倍モル以上2.0倍モル未満であることを特徴とする(構成24)に記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成26)該希釈された溶液中の水の濃度が、炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒の混合溶媒に対する水の飽和溶解度の40%から1%あることを特徴とする(構成24)または(構成25)に記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成27)3以上の加水分解基を有する金属化合物に、該金属化合物の総モル数に対して0.5倍モル以上2倍モル未満の水を添加することにより得られてくる金属−酸素結合を有する分散質であって、該水を複数回に分割して所定温度で添加する工程を有し、該工程中に該所定温度が0℃未満の温度である工程を少なくとも1工程含むことを特徴とする金属−酸素結合を有する分散質、
(構成28)3以上の加水分解基を有する金属化合物に、該金属化合物の総モル数に対して0.5倍モル以上2倍モル未満の水を添加することにより得られてくる金属−酸素結合を有する分散質であって、該水を複数回に分割して添加する工程を有し、最初の水添加工程において、該金属化合物総モル数に対して0.5倍モル以上1倍モル未満の水を添加することを特徴とする金属−酸素結合を有する分散質、
(構成29)最初の水添加工程の後、残存する必要量の水を所定温度で添加する工程を有し、該所定温度が、0℃未満の温度であることを特徴とする(構成28)に記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成30)該所定温度が、−20℃以下の温度であることを特徴とする(構成27)、または(構成29)に記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成31)該所定温度が、該金属化合物の加水分解開始温度以下の温度であることを特徴とする(構成27)または(構成29)に記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成32)該所定温度が、−50〜−100℃の範囲であることを特徴とする(構成27)または(構成29)に記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成33)該所定温度で水を添加する工程の後に、該所定温度以上に昇温することを特徴とする(構成27)〜(構成32)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成34)(構成1)〜(構成33)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質の溶液を濃縮することにより得られることを特徴とする金属−酸素結合を有する分散質、
(構成35)金属化合物が、式(I)
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Mは、金属原子を表し、Xは加水分解性基を表し、Rは、水素原子または、金属原子と酸素原子を介して結合を形成でき得る加水分解性基を有していてもよい有機基を表し、a+b=mを表し、mは金属原子の原子価を表す。)で表される化合物であることを特徴とする(構成1)〜(構成34)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成36)式(I)中、Xが、アルコキシ基であることを特徴とする(構成35)に記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成37)金属が、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、インジウム、スズ、タンタル、亜鉛、タングステン、鉛からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする(構成1)〜(構成36)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成38)金属−酸素結合を有する分散質が、有機溶媒中、酸、塩基、及び分散安定化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の非存在下に凝集せずに安定に分散している分散質であることを特徴とする(構成1)〜(構成37)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成39)金属−酸素結合を有する分散質を含む溶液が、光学的に透明であることを特徴とする(構成1)〜(構成38)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成40)有機溶媒中で分散した状態での平均粒径が、1〜20nmの範囲であることを特徴とする(構成1)〜(構成39)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成41)粒径分布が0〜50nmの範囲の単分散であることを特徴とする(構成40)に記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成42)有機溶媒が、エーテル系溶媒、または炭化水素系溶媒であることを特徴とする(構成40)または(構成41)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成43)有機溶媒中、酸、塩基、及び分散安定剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の非存在下、凝集せずに安定に分散し、平均粒径が1〜20nmの範囲であることを特徴とする金属−酸素結合を有する分散質、
(構成44)粒径分布が0〜50nmの範囲の単分散であることを特徴とする(構成43)に記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成45)有機溶媒が、エーテル系溶媒、または炭化水素系溶媒であることを特徴とする(構成43)または(構成44)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質、
(構成46)(構成1)〜(構成45)のいずれかに記載の分散質から製造されることを特徴とする金属酸化物膜、
(構成47)(構成1)〜(構成45)のいずれかに記載の分散質を含む溶液を塗布または吹き付け後、200℃以下の温度で加熱して製造されることを特徴とする金属酸化物膜、
(構成48)(構成1)〜(構成45)のいずれかに記載の分散質および該分散質から誘導される金属酸化物微粒子種結晶を含む溶液を塗布または吹き付けご後、200℃以下の温度で加熱して製造されることを特徴とする金属酸化物膜、
(構成49)さらに360nm以下の波長の紫外線を照射して製造されることを特徴とする(構成47)または(構成48)に記載の金属酸化物膜、
(構成50)膜表面が平滑であることを特徴とする(構成46)〜(構成49)のいずれかに記載の金属酸化物膜、
(構成51)膜表面の平均粗さが10nm以下であることを特徴とする(構成46)〜(構成49)のいずれかに記載の金属酸化物膜、
(構成52)膜表面の平均粗さが5nm以下であることを特徴とする(構成46)〜(構成49)のいずれかに記載の金属酸化物膜、
(構成53)プラスチック基板上に成膜され、膜中の炭素含有量が元素比で10%以下であることを特徴とする(構成46)〜(構成49)のいずれかに記載の金属酸化物膜、
(構成54)塗布または吹き付けにより成膜され、膜表面が平滑であることを特徴とする金属酸化物膜、
(構成55)200℃以下で乾燥することにより成膜されたことを特徴とする(構成54)に記載の金属酸化物膜、
(構成56)膜表面の平均粗さが10nm以下であることを特徴とする(構成54)または(構成55)に記載の金属酸化物膜、
(構成57)膜表面の平均粗さが5nm以下であることを特徴とする(構成54)または(構成55)に記載の金属酸化物膜、
(構成58)プラスチック基板上に成膜され、膜中の炭素含有量が元素比で10%以下であることを特徴とする金属酸化物膜、
(構成59)(構成1)〜(構成30)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質、該分散質から誘導される無機構造部分、及び該分散質を出発物質とする無機ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする有機−無機複合体、
(構成60)有機成分が、アクリル系樹脂、ポリチオウレタン系樹脂、エピチオ基含有化合物から得られる樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする(構成59)に記載の有機−無機複合体、
(構成61)(構成1)〜(構成45)のいずれかに記載の金属−酸素結合を有する分散質の存在下、有機モノマーを重合させて製造されることを特徴とする(構成59)または(構成60)に記載の有機−無機複合体、
(構成62)(構成59)〜(構成61)のいずれかに記載の有機−無機複合体を含むことを特徴とする光学材料、
(構成63)(構成62)に記載の光学材料からなることを特徴とする光学製品、
(構成64)光学製品が、プラスチックレンズであることを特徴とする(構成63)に記載の光学製品、
(構成65)表面が平滑である金属酸化物膜を基板上に成膜し、さらに、少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤を接触させて得られてくることを特徴とする単分子膜、
(構成66)表面が平滑である金属酸化物膜が、(構成46)〜(構成59)のいずれかに記載の金属酸化物膜であることを特徴とする(構成65)に記載の単分子膜、
(構成67)有機溶媒中、酸、塩基、及び分散安定化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の非存在下、凝集せずに安定に分散している金属−酸素結合を有する分散質またはそれを含む溶液を用いて基板上に金属酸化物膜を成膜し、さらに、少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤を接触させて得られてくることを特徴とする単分子膜、
(構成68)有機溶媒中、酸、塩基、及び分散安定化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の非存在下、凝集せずに安定に分散している金属−酸素結合を有する分散質が、(構成1)〜(構成45)のいずれかに記載の分散質であることを特徴とする(構成67)に記載の単分子膜、
(構成69)金属系界面活性剤が、式(II)
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、R1は、1価炭化水素基、置換基を有する1価炭化水素基、1価ハロゲン化炭化水素基、連結基を含む1価炭化水素基、または、連結基を含む1価ハロゲン化炭化水素基を表し、Mは、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、チタン原子、及びジルコニウム原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属原子を表し、Yは、加水分解性基を表し、nは、1〜(m−1)のいずれかの整数を表し、mはMの原子価を表し、nが2以上の場合、R1は、同一または相異なっていてもよく、(m−n)が2以上の場合、Yは、同一または相異なっていてもよい。)で表される化合物であることを特徴とする(構成65)〜(構成68)のいずれかに記載の単分子膜、
(構成70)式(II)で表される化合物が、式(III)
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、R2は、アルキレン基、ビニレン基、エチニレン基、アリレーン基、または、ケイ素原子及び/または酸素原子を含む2価官能基を表し、Zは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、含フッ素アルキル基、または含フッ素アルコキシ基を表し、Y、M、及びmは前記と同じ意味を表し、pは、0または整数を表し、qは、0又は1を表し、rは0または1〜(m−2)のいずれかの整数を表す。)で表される化合物であることを特徴とする(構成69)に記載の単分子膜、
に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1で調製されたチタンアルコキシドの低温加水分解物のUV特性を示す図である。
【図2】実施例3、5、7、及び9で調製されたチタンアルコキシドの低温加水分解物のUV特性を示す図である。
【図3】実施例4及び8、比較例3で調製された溶液のラマンスペクトルを示す図である。
【図4】実施例35のゾル液1の粒径分布を示す図である。
【図5】実施例36の粉末の熱重量分析を示すグラフ図である。
【図6】実施例38のゾル液2の粒径分布を示す図である。
【図7】実施例39のチタンアルコキシドの加水分解物のUV特性を示す図である。
【図8】実施例41、45のゾル溶液の光透過率を示す図である。
【図9】実施例41のゾル溶液の粒度分布を示す図である。
【図10】実施例43のゾル溶液の熱重量分析を示す図である。
【図11】実施例44の金属酸化物膜表面の形状を示す図である。
【図12】実施例45のゾル溶液の粒度分布を示す図である。
【図13】実施例47のゾル溶液の粒度分布を示す。
【図14】実施例48においてC−1液から形成した膜表面形状を示す図である。
【図15】実施例48にて形成した膜の深さ方向の元素組成を示す図である。
【図16】実施例48にて形成した膜表面近くの深さ方向の元素組成を示す図である。
【図17】比較例10のSTS−01の膜表面形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、共通した性質を有する金属−酸素結合を有する分散質に関するものであり、構成1、構成2、構成13、構成24、構成27、構成28にそれぞれその製造方法を規定するものである。以下、構成1及び2に記載の分散質を分散質I、構成13に記載の分散質を分散質II、構成24に記載の分散質を分散質III、構成27及び28に記載の分散質を分散質IVとして、順次説明する。各分散質に共通の内容がある場合には、一の分散質の説明中の記載で代用することとし、共通の性質については、個別の説明の後にまとめて記載することとする。
【0019】
(I)分散質Iについて
本発明における分散質Iは、3以上の加水分解性基を有する金属化合物と所定量の水を、酸、塩基、及び分散安定化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の非存在下に、所定温度で混合して得られてくる金属−酸素結合を有する分散質であって、該所定量が、該金属化合物総モル数に対して1.0倍モル以上、2.0倍モル未満または、0.5倍モル以上1.0倍モル未満であり、該所定温度が、0℃未満の温度であることを特徴とする。
【0020】
この場合、分散質とは、分散系中に分散している微細粒子のことをいい、具体的には、コロイド粒子、数分子が縮重合等したナノサイズの粒子等を例示することができる。
【0021】
本明細書において使用される酸または塩基は、凝結してできた沈殿を再び分散させる解膠剤として、また、後述するように、3以上の加水分解性基を有する金属化合物を加水分解、脱水縮合等させてコロイド粒子、またはナノ粒子等の分散質を製造するための触媒として、及び生成した分散質の分散剤として機能するものであれば特に制限されず、酸として具体的には、塩酸、硝酸、ホウ酸、ホウフッ化水素酸、炭酸等の鉱酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸等を例示することができ、さらには、光照射によって酸を発生する光酸発生剤、具体的には、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート等を例示することができる。また、塩基として、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、アンモニア、ホスフィン等を例示することができる。
【0022】
また、本明細書中において使用される分散安定化剤とは、分散質を分散媒中になるべく安定に分散させるために添加させる成分をいい、解膠剤、保護コロイド、界面活性剤等の凝結防止剤等を示す。このような作用を有する化合物として、具体的には、キレート性の化合物を例示することができ、分子骨格中に少なくとも1個のカルボキシル基が含まれており、金属に対して強いキレート効果を有するものが好ましく、このような化合物として、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸等の多価カルボン酸、またはヒドロキシカルボン酸等を例示することができ、さらに、ピロ燐酸、トリポリ燐酸等を例示することができる。また、同じく金属原子に対して強いキレート能力を有する多座配位子化合物として、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタン−ジオン、3,5−ヘプタン−ジオン、2,4−オクタン−ジオン、2,4−ノナン−ジオン、5−メチル−ヘキサン−ジオン等を例示することができる。また、その他、脂肪族アミン系、ハイドロステアリン酸系、ポリエステルアミンとして、スルパース3000、9000、17000、20000、24000(以上、ゼネカ社製)、Disperbyk−161、−162、−163、−164(以上、ビックケミー社製)等を例示することができ、特開平9−208438号公報、特開平2000−53421号公報等に記載されているジメチルポリシロキサン・メチル(ポリシロキシアルキレン)シロキサン共重合体、トリメチルシロキシケイ酸、カルボキシ変性シリコーンオイル、アミン変性シリコーン等のシリコーン化合物等を例示することができる。
【0023】
本発明に用いられる3以上の加水分解性基を有する金属化合物は、金属原子に直接または、炭素鎖等の連結基を介して等のどのような形であっても加水分解性基が分子内に3以上有する金属原子含有化合物であれば、特に限定はされない。
【0024】
加水分解性基とは、水と接触して加水分解する官能基、または水存在下または水の非存在下に金属原子と酸素原子を介して結合形成し得る官能基を示すこととし、具体的には、ハロゲン原子、アミノ基、アルコキシ基、エステル基、カルボキシル基、ホスホリル基、イソシアナート基、シアノ基等を例示することができる。加水分解性基は、水と接触して加水分解された後、金属化合物が、他の活性基と縮合または自己重縮合をするための官能基である点を考慮した場合に、厳密な意味で加水分解性基に含まれないが、同様の性質を有するという点で、本明細書においては、ヒドロキシル基も加水分解性基の一つとして含むものとする。(以後、本明細書においては同様の意味で用いることとする。)
【0025】
また、該金属化合物として、3以上の加水分解性基を有する金属化合物を少なくとも1種含まれていれば、他の金属化合物、例えば、2の加水分解性基を有する化合物等を含んでいても構わない。
【0026】
上記金属化合物として、具体的には、式(I)で表される化合物を例示することができる。
【0027】
式(I)中、Mは金属原子を表し、好ましくは金属アルコキシドまたは金属カルボキシレートが合成可能な金属原子、すなわち周期律表第III、IVあるいはV族の3〜5価の金属原子であり、具体的にはケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、アンチモン、ビスマス、バナジウム、ニオブ、タンタル、ランタノイド、アクチノイドなどの金属原子を例示することができ、好ましくはチタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、インジウム、スズ、タンタル、亜鉛、タングステン、鉛等を例示することができる。
【0028】
Rは、水素原子または、金属原子と酸素原子を介して結合を形成でき得る加水分解性基を有していてもよい有機基を表す。加水分解性基として、上記した加水分解性基と同様の官能基を例示することができる。Rとして具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数1〜12のアルキル基、クロロメチル基、クロロエチル基、クロロプロピル基、ブロモプロピル基、ブロモオクチル基、トリフロロプロピル基などの炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、グリシドキシプロピル基、エポキシシクロヘキシルエチル基などの炭素数1〜12のエポキシアルキル基;アミノプロピル基、アミノブチル基などの炭素数1〜12のアミノアルキル基、フェニル基、ベンジル基などの炭素数6〜12の芳香族基、ビニル基、アリル基、アクリルオキシプロピル基、メタクリルオキシプロピル基などの炭素数2〜12の感光性基等を例示することができる。
【0029】
式(I)中、Xは、金属原子Mに結合した加水分解性基であり、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基などのアルコキシ基、イミノヒドロキシ基、アミノヒドロキシ基、エノキシ基、アミノ基、カルバモイル基、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、またはヒドロキシル基等を例示することができ、特にアルコキシ基を好ましく例示することができる。
【0030】
式(I)中、a+b=mを表し、mは金属原子の原子価を表す。分子内に3以上の加水分解性基を有するとは、具体的には、bが3以上の場合、bが2以下であって、加水分解性基を有するRが1以上であり合計で3以上である場合を例示することができる。
また、加水分解に供される金属化合物は、3以上の加水分解性基を有するという条件を満足する化合物であれば、式(I)等で代表される単分子化合物である必要はなく、例えば、式(I)等で表される化合物を同様の方法で加水分解及び縮重合したオリゴマーであっても構わない。
【0031】
式(I)で表される金属化合物として具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラブトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、ジメチルジクロロシラン、テトラキス(ジエチルアミノ)シラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジルトリクロロシラン、ベンジルトリエトキシシラン、t−ブチルフェニルジクロロシラン、2−クロロエチルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、8−ブロモオクチルトリクロロシラン、3−ブロモプロピルトリクロロシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジクロロシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリクロロシラン、クロロメチルトリクロロシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルビス(メチルエチルケトキシミン)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリクロロシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を例示することができ、特にテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、チタンテトラプロポキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド等に代表される金属アルコキシドを好ましく例示することができる。
【0032】
これらの金属化合物は、単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。 また、前記元素2種以上の金属アルコキシド間での反応により得られた複合アルコキシド、あるいは、1種もしくは2種以上の金属アルコキシドと1種もしくは2種以上の金属塩との反応により得られた複合アルコキシドであってもよい。さらには、これらを組み合わせて使用することも可能である。
【0033】
2種以上の金属アルコキシド間での反応により得られる複合アルコキシドとして具体的には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルコキシドと遷移金属のアルコキシドとの反応により得られた複合アルコキシドや、第3B族元素の組合せにより得られる錯塩としての複合アルコキシドを例示することができ、より具体的には、BaTi(OR’)、SrTi(OR’)、BaZr(OR’)、SrZr(OR’)、LiNb(OR’)、LiTa(OR’)、および、これらの組合せ、LiVO(OR’)、MgAl(OR’)等を例示することができる。また、(R’O)SiOAl(OR’’)、(R’O)SiOTi(OR’’)、(R’O)SiOZr(OR’’)、(R’O)SiOB(OR’’)、(R’O)SiONb(OR’’)、(R’O)SiOTa(OR’’)等のシリコンアルコキシドとの反応物やその縮重合物をさらに例示することができる。ここで、R’およびR’’は、アルキル基を示す。また、1種もしくは2種以上の金属アルコキシドと1種もしくは2種以上の金属塩との反応により得られる複合アルコキシドとして、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩などの金属塩とアルコキシドとの反応により得られる化合物を例示することができる。
【0034】
本発明で用いられる水としては、一般水道水、蒸溜水、イオン交換水などを用いることができる。これらのうち、蒸溜水またはイオン交換水が好ましく、特に電気電導度が2μs/cm以下のイオン交換水が好ましい。
【0035】
使用する水の量は、該金属化合物のモル数に対して、0.5倍モル以上、2倍モル未満の範囲である。0.5倍モル未満では、加水分解または縮重合等が均一に進行せず、式(I)等で表される金属化合物が未反応のまま残る場合があり、均質で稠密な膜を形成できない場合がある。また、2倍モル以上では、加水分解または縮重合過程において、ゲル化または粒子の凝集がおこり、やはり、均質で稠密な膜を形成することができない場合がある。
【0036】
また、上記水は、有機溶媒により希釈して用いるのが好ましい。そのような有機溶媒としては、凝固点が0℃以下のものが好ましく、さらに本発明の条件下混合時に金属化合物と反応性を有しないものが好ましく、具体的にはアルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ケトンエーテル類、ケトンエステル類、エステルエーテル類等を例示することができる。さらに詳細な具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、ベンジルアルコール、メチルシクロヘキサノール、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、ヘキサントリオール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、ギ酸ブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸ベンジル、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ペンチル、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ヘプタノン、ジイソブチルケトン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、メチラール、アセタール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、ミシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、シメン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、クロロメタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、クロロプロパン、ジクロロプロパン、トリクロロプロパン、クロロブタン、クロロペンタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、ブロモメタン、ブロモエタン、ブロモプロパン、ブロモベンゼン、クロロブロモメタンなどを挙げることができる。これらのうち、アルコール類、エステル類および炭化水素類が好ましく、特にブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、トリメチルヘキサノール、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ペンタン、ヘキサン、キシレン、トルエンなどが好ましい。また、前記有機溶媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。水と有機溶媒とが均一に溶解混合する場合には、そのまま使用することができる。また、水と有機溶媒とが均一に混合しない場合には、撹拌処理、超音波処理などの方法で均一に分散して使用することができる。希釈する有機溶媒の使用量は、水1重量部に対し、2〜100重量部の範囲が好ましい。
【0037】
本発明の分散質Iは、上記した金属化合物と所定量の水を、酸、塩基及び分散安定化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の非存在下に、所定温度で混合して得られてくるが、該金属化合物と所定量の水の混合方法は特に限定されず、該金属化合物の撹拌下に水を添加する方法、水撹拌下に該金属化合物を添加する方法、該金属化合物と水を、撹拌装置を有する容器に同時に添加する方法等を例示することができる。また、混合を、溶媒を用いずに行うことも可能ではあるが、有機溶媒を用いて混合するのが、目的の分散質Iを効率よく製造する上で好ましい。
【0038】
用いる有機溶媒は、有機物質であって、特に最終的に得られてくる目的の分散質Iを分散できるものが好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等の塩素系溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、また特開平9−208438号公報に記載されている二酸化チタン分散体の分散媒に用いられているメチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタンシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン等を例示することができ、後述するように、水を低温で添加して反応を行うためには、低温で凝固しない溶媒が好ましく、具体的には低級アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、トルエン等の炭化水素系溶媒を好ましく例示することができる。また、これらの溶媒は1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0039】
有機溶媒を用いる場合、本発明の分散質Iの製造方法として、該金属化合物の有機溶媒溶液に、水または有機溶媒で希釈した水を添加する方法、該金属化合物に有機溶媒で希釈した水を添加する方法、有機溶媒で希釈した水に、該金属化合物または有機溶媒で希釈した該金属化合物を添加する方法等を例示することができる。該金属化合物を希釈する有機溶媒の使用量は、該金属化合物100重量部に対し、好ましくは10〜5,000重量部、さらに好ましくは100〜3,000重量部であり、10重量部未満では生成する微粒子が結合した状態で成長し、粒径制御が困難になる場合があり、一方5,000重量部を超えると溶液が希薄すぎて、微粒子の生成が困難な場合がある。水を希釈する有機溶媒の使用量は、前述した通りである。また、該金属化合物、及び水の一方のみを有機溶媒で希釈して用いる場合には、上記範囲に限定されず、より多くの量の有機溶媒で希釈して用いることもできる。
【0040】
該金属化合物と水の混合時の所定温度は、0℃未満の温度であるが、−20℃以下の温度が好ましく、−50〜−100℃範囲の温度が好ましく、さらには、該金属化合物の加水分解開始温度以下の温度であるのが好ましい。尚、所定温度は、常に一定である必要はなく、指定された温度範囲内であれば、変動しても構わない。
【0041】
この場合加水分解開始温度とは、該金属化合物と水が接触した際に、加水分解が進行する最下限温度を示す。加水分解開始温度の測定方法は、特に制限されないが、具体的には、特開平1−230407号公報に記載されている方法、低温状態からの昇温HNMRを測定することにより該金属化合物の加水分解性基のシグナル変化を測定する方法等を例示することができる。また、水を該金属化合物に所定温度で添加する場合には、同様の所定温度の水または水を含む有機溶媒溶液を、添加するのが好ましい。
【0042】
添加方法は所定温度に温度が維持されていれば特に限定されないが、具体的には、連続滴下方法、一定間隔である一定量を滴下する方法、液中に注入する方法等を例示することができる。
【0043】
また、本発明の分散質Iは、上記水添加工程を所定温度で行った後、該所定温度以上に昇温して製造するのが好ましい。昇温する温度は、所定温度以上であれば、特に制限されず、溶媒を用いた場合には、溶媒還流温度まで昇温することができる。
【0044】
(II)分散質IIについて
また、本発明の分散質IIは、3以上の加水分解性基を有する金属化合物を酸、塩基、及び/または分散安定化剤の非存在下に加水分解して得られた有機溶媒中で凝集せずに安定に分散しうる部分加水分解物と、該金属化合物総モル数に対して0.5倍モル以上2倍モル未満となる量から該部分加水分解物を製造する際に用いられた量を差し引いた量の水を、酸、塩基、及び分散安定化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の非存在下に、所定温度で混合して得られてくる金属−酸素結合を有する分散質であって、所定温度が0℃未満の温度であることを特徴とする。
【0045】
上記部分加水分解生成物は、有機溶媒中で凝集せずに安定に分散する性質を有すれば、特に限定されず、具体的には、特開平1−129032号公報に比較試料C−2として記載されているポリチタノキサン等を例示することができ、その製造方法は特に限定されないが、本発明の分散質を製造する方法と同様の方法を用いるのが好ましい。
【0046】
また、凝集せずに安定に分散している状態とは、有機溶媒中、金属−酸素結合を有する分散質が、凝結して不均質に分離していない状態を表し、好ましくは透明で均質な状態を表す。この場合、透明とは、可視光における透過率が高い状態をいい、具体的には、分散質の濃度を酸化物換算で0.5重量%とし、石英セルの光路長を1cmとし、対象試料を有機溶媒とし、光の波長を550nmとする条件で測定した分光透過率で表して好ましくは80〜100%の透過率を表す状態をいう。以下、本明細書において、同様の意味で用いることとする。
【0047】
本発明の分散質IIは、該部分加水分解物と水を0℃以下の温度で混合して得られてくるが、−20℃以下の温度が好ましく、さらに−50〜−100℃の範囲が好ましく、さらに該金属化合物の加水分解開始温度以下であるのが好ましい。用いる該金属化合物、水、混合方法等の詳細は、分散質Iで記載した内容と同様である。
【0048】
(III)分散質IIIについて
本発明の分散質IIIは、3以上の加水分解性基を有する金属化合物と所定量の水を、酸、塩基、及び/または分散安定化剤の非存在下に、所定温度で混合して得られてくる金属−酸素結合を有する分散質において、該所定量の水が、炭化水素系溶媒、及びアルコール系溶媒で希釈された溶液であり、該希釈された溶液を、該金属化合物に添加し、さらに該所定温度が、室温であることを特徴とする。
【0049】
本発明の分散質IIIは、該金属化合物に直接水溶液を添加することでも得ることができるが、反応をより制御するために、有機溶媒を用いるのが好ましい。用いる有機溶媒は、分散質Iで例示した溶媒と同様のものを例示することができ、その量も同様の量を例示することができる。
【0050】
水の希釈に用いられる炭化水素系溶媒としてはヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒があるが、好ましくは芳香族炭化水素系溶媒でありさらに好ましくはトルエン、キシレン等を例示することができる。
【0051】
アルコール系溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等があげられるが好ましくはイソプロピルアルコールである。
【0052】
炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒の混合比は、特に限定されないが、2:8〜8:2の範囲が好ましくさらに、4:6〜6:4の範囲が好ましい。
【0053】
添加する水の量は、該金属化合物のモル数に対して、特に制限されないが、0.5倍モル〜5倍モル未満が好ましく、さらに0.5倍モル〜2倍モル未満、さらに1.0倍モル〜2倍モル未満であるのが好ましい。添加する水の濃度は、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒及び水の合計に対して1〜15重量%、好ましくは1〜10重量%、さらに好ましくは1〜5重量%であり、水が均一に溶解している状態が好ましい。また、添加する水の濃度は、炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒の混合溶媒に対する水の飽和溶解度の40%から1%、好ましくは30%〜10%、さらに好ましくは25%〜15%である。
【0054】
該金属化合物への炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒及び水の混合物の添加は室温で行ない、一定時間熟成した後、室温から用いた溶媒の還流温度で加水分解、脱水縮合反応をさらに行うこともできる。
その他の詳細は、分散質I及びIIで記載した内容と同様である。
【0055】
(IV)分散質IVについて
本発明の分散質IVは、3以上の加水分解基を有する金属化合物に、該金属化合物の総モル数に対して0.5倍モル以上2倍モル未満の水を添加することにより得られてくる金属−酸素結合を有する分散質であって、該水を複数回に分割して所定温度で添加する工程を有し、該工程中に該所定温度が0℃未満の温度である工程を少なくとも1工程含むことを特徴とする。
【0056】
即ち、本発明の分散質の製造方法としては、
(i)3以上の加水分解基を有する金属化合物に、該金属化合物の総モル数に対して合計で0.5倍モル以上2倍モル未満の水を添加する、
(ii)水を2以上の複数回に分割して添加する、
(iii)複数回の水を添加する工程のうち、少なくとも1工程は、0℃未満の温度で水を添加する工程を有する、
以上の3点を構成要件として含む。
【0057】
複数回に分割して添加するとは、各回ごとに、添加条件を変更して添加する場合、添加条件は同一ではあるが添加量が異なる場合、添加条件、添加量は同一であるが、一定間隔をおいて添加する場合等水をある一定条件下で、長時間の間隔をおかずに必要量を添加する場合以外を示す。分割する数は2以上であれば、特に制限がないが、反応操作を考慮した場合、添加する水を2分割し、少なくと1方の水を、0℃未満の温度で添加するのが好ましい。一度に添加する水の量は、合計した水の量が該金属化合物総モル数に対して0.5倍モル以上、2.0倍モル未満の範囲であれば特に制限されないが、特に最初に添加する量として、該金属化合物総モル数に対して、0.5倍モル以上、1倍モル未満が好ましい。添加する温度は、複数回に分割した水添加工程のうち少なくとも1工程に0℃以下で水を添加する工程を有していれば、添加温度は特に限定されないが、最初に水を添加する工程の後、残存する必要量の水を添加する温度が、0℃未満の温度であるのが好ましく、さらにその温度は−20℃以下の温度が好ましく、さらに該金属化合物の加水分解開始温度以下の温度、または−50〜−100℃の範囲の温度が好ましい。
【0058】
所定温度で水を添加する各工程の後には、該所定温度以上に昇温して製造するのが好ましい。昇温する温度は特に制限されないが、有機溶媒を用いた場合には、該有機溶媒の還流温度まで昇温することができる。
【0059】
また、水を添加する工程は、酸、塩基、及び分散安定化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の存在下に行うこともできるが、それらの非存在下に行うのが好ましい。
その他の詳細については、分散質I〜IIIに記載された内容と同様である。
【0060】
(V)分散質I〜IVに共通の性質について
上述の様にして調製された分散質I〜IVは、有機溶媒溶液中の該分散質の金属酸化物換算重量濃度が、加水分解前の金属化合物の金属酸化物換算重量濃度に対して1.2倍以上さらには1.4倍以上であっても、溶媒中に安定に分散していることを特徴とする。これは、有機溶媒中に金属−酸素結合を有する分散質が高濃度に分散した溶液を、さらに、室温以上、好ましくは80℃以下で有機溶媒を留去してさらに高濃度の状態においても、分散質粒子が凝結せず、有機溶媒を再度添加しても、均質で透明な分散液となる。また、高濃度の状態とは、溶媒がない状態を含み、その時の状態は、金属によって、固体状態、液体状態、ゲル化状態のいずれかの状態、またはこれらの混合状態を取りうる。
【0061】
また、本発明の分散質I〜IVは、有機溶媒中、酸、塩基、及び分散安定化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の非存在下に凝集せずに安定に分散している分散質であることを特徴とする。凝集せずに安定に分散している状態とは、有機溶媒中、金属−酸素結合を有する分散質が、凝結して不均質に分離していない状態を表し、好ましくは透明で均質な状態を表す。この場合、透明とは、可視光における透過率が高い状態をいい、具体的には、分散質の濃度を酸化物換算で0.5重量%とし、石英セルの光路長を1cmとし、対象試料を有機溶媒とし、光の波長を550nmとする条件で測定した分光透過率で表して好ましくは80〜100%の透過率を表す状態をいう。
【0062】
本発明の分散質I〜IVを分散させるのに用いる有機溶媒は、液状有機物質で分散質を分散できるものであれば特に限定されず、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等の塩素系溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、また特開平9−208438号公報に記載されている二酸化チタン分散体の分散媒に用いられているメチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタンシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン等を例示することができ、後述するように、水を低温で添加して反応を行うためには、低温で凝固しない溶媒が好ましく、具体的には低級アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、トルエン等の炭化水素系溶媒を好ましく例示することができる。また、これらの溶媒は1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0063】
また、本発明の分散質I〜IVの粒子径は、1〜100nmの範囲であることを特徴とし、さらに1〜50nm、及び1〜20nmの範囲であることを特徴とする。また、その粒径分布は、0〜50nmの範囲で単分散であることを特徴とする。
【0064】
(VI)金属酸化物膜について
以上述べたようにして調製された金属−酸素結合を有する分散質、及び/または前記分散質を出発物質とする無機ポリマーから、金属酸化物膜を製造することができる。
【0065】
金属酸化物膜を成形する場合には、分散質を適当な溶媒で希釈して、溶媒を留去して溶媒のない状態で、また溶媒を留去した後別の溶媒に再溶解または再分散して用いることができる。
【0066】
本発明の分散質は、多座配位化合物等の分散安定化剤を添加して加水分解物を安定化させることなく、加水分解性基を有する金属化合物を高濃度で加水分解・縮重合反応を行うことが可能となり、多座配位化合物等の不要な有機物を含有しない高濃度の分散液を得ることができる。この結果、この分散液を用いると、有機物含有量の少ないゲル膜、ゲルファイバー、バルクゲルなどが得られ、加熱処理などによりそれらのゲルから有機物を脱離させたときに、得られた成形体における微細組織の破壊や残留気孔量を低減させることができる。
【0067】
金属酸化物薄膜の製造方法については、前記分散質を含む溶液を、塗布後、200℃以下の温度で乾燥することを特徴とする。
【0068】
前記分散質を含む溶液中の分散質の濃度は、塗布方法、目的とする膜厚によっても異なるが、基板上に塗布可能な濃度であれば特に制限されず、具体的には、酸化物に換算した重量で5〜50重量%の範囲が好ましい。
【0069】
溶液に用いる溶媒としては、前記分散質を分散させるのに用いた溶媒と同様の溶媒を例示することができ、特に前記分散質を分散させるのに用いた溶媒と同一の溶媒を用いるのが好ましいが、分散質の分散性に影響を与えない溶媒であれば、異なる溶媒を用いることもできる。
【0070】
前記分散質を含む溶液には、必要に応じて他の成分を添加することができる。他の成分としては、具体的には、水ガラス、コロイダルシリカ、ポリオルガノシロキサンなどのケイ素化合物、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウムなどのリン酸塩、重リン酸塩、セメント、石灰、セッコウ、ほうろう用フリット、グラスライニング用うわぐすり、プラスターなどの無機系結着剤、フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマー、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂などの有機系結着剤などが挙げられ、これらの結着剤を単一または2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、接着強度の観点から無機系結着剤、フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマーが好ましい。セメントとしては、例えば早強セメント、普通セメント、中庸熱セメント、耐硫酸塩セメント、ホワイト(白色)セメント、油井セメント、地熱井セメントなどのポルトランドセメント、フライアッシュセメント、高硫酸塩セメント、シリカセメント、高炉セメントなどの混合セメント、アルミナセメントなどを用いることができる。プラスターとしては、例えばセッコウプラスター、石灰プラスター、ドロマイトプラスターなどを用いることができる。フッ素系ポリマーとしては、例えばポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化三フッ化エチレン、ポリ四フッ化エチレン、ポリ四フッ化エチレン−六フッ化プロピレンコポリマー、エチレン−ポリ四フッ化エチレンコポリマー、エチレン−塩化三フッ化エチレンコポリマー、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマーなどの結晶性フッ素樹脂、パーフルオロシクロポリマー、ビニルエーテル−フルオロオレフィンコポリマー、ビニルエステル−フルオロオレフィンコポリマーなどの非晶質フッ素樹脂、各種のフッ素系ゴムなどを用いることができる。特に、ビニルエーテル−フルオロオレフィンコポリマー、ビニルエステル−フルオロオレフィンコポリマーを主成分としたフッ素系ポリマーが分解・劣化が少なく、また、取扱が容易であるため好ましい。シリコン系ポリマーとしては、直鎖シリコン樹脂、アクリル変性シリコン樹脂、アクリル−シリコン樹脂、エポキシ−シリコン樹脂等のシリコン変性樹脂、各種のシリコン系ゴムなどを用いることができる。
【0071】
前記分散質と上記例示した他の成分の比率は、分散質の比率が両者の合計に対して重量%で、5〜98%、好ましくは20〜98%、より好ましくは50〜98%、もっとも好ましくは70〜98%である。前記分散質を含む溶液には、必要に応じて、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、架橋剤、分散剤、充填剤などを配合させることができる。架橋剤としては、イソシアネート系、メラミン系などの通常の架橋剤を、分散剤としては、カップリング剤などを使用することができる。
【0072】
基体に前記分散質を含む溶液を塗布する方法として具体的には、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法等の公知の方法がいずれも使用することができる。大量生産を安価に行うためには、ロールコート法が好ましい。特に、バーを用いる方法、ギーサーを用いる方法は好ましい方法である。また、パターニングを塗布時にできるという点で、スクリーン印刷法やオフセット印刷法も好ましい。塗布量は、得られる薄膜の用途によって異なるが、一般的には溶媒以外の有効成分塗量として0.1〜10ml/mである。より好ましくは、0.2〜7ml/mであり、さらに好ましくは0.4〜5ml/mである。
【0073】
基体としては、セラミックス、ガラスなどの無機材質の物品、プラスチック、ゴム、木、紙などの有機材質の物品、アルミニウムなどの金属、鋼などの合金などの金属材質の物品を用いることができる。基体の大きさや形には特に制限されず、平板、立体物、フィルム等いずれも使用することができる。また、塗装した物品でも用いることができる。なかでもプラスチックのフィルムが好ましく、例としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、ニトロセルロース、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ポリエチレン被覆紙、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリフッ化ビニリデン、テフロン(登録商標)などを用いることができる。また、これらの支持体には温度や湿度の変化によって寸法が変化する、いわゆる寸度安定性を向上する目的で、ポリ塩化ビニリデン系ポリマーを含む防水層を設けてもよい。さらに、ガスバリアーの目的で、有機及び/又は無機化合物の薄膜を設けてもよい。有機薄膜の例としてはポリビニルアルコール、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)等があげられ、無機化合物の例としては、シリカ、アルミナ、タルク、バーミキュライト、カオリナイト、雲母、合成雲母等が挙げられる。また、その他諸機能のため基板中に各種有機及び/又は無機添加物が加えられていてもよい。
【0074】
塗布被膜の加熱は溶媒の乾燥とともに、前記分散質の加水分解および脱水縮合等のために行われる。塗布後の加熱条件は、基板にダメージをあたえないために,200℃以下の低温で行われることが好ましい。好ましくは、20〜100℃で行われる。さらに好ましくは、30〜80℃で行われる。加熱時間は、特に限定されるものではないが、通常1分〜120時間の間で適宜行われる。
【0075】
本発明において、形成された金属酸化物膜の機械的強度が要求される時には、この膜の上に保護膜を形成すればよい。この保護膜を形成する際には,通常の保護膜形成用塗布液、例えばアルコキシシラン加水分解物を含むシリカ系被膜形成用塗布液が用いられる。
【0076】
本発明において、結晶化を必要とする金属酸化物膜の場合、金属−酸素結合を有する分散質を含有する塗布液に、目的とする金属酸化物微粒子種結晶が添加されていることが好ましい。金属酸化物微粒子種結晶の添加割合は、好ましくは、前記分散質からゾルが生成した場合のゾル重量の10〜90重量%であり、特に好ましくは10〜80重量%である。後に述べるように、本発明においては、光照射により金属酸化物が結晶化する場合があるが、この場合は、種結晶が添加されていることにより、金属酸化物の結晶化がさらに促進する。種結晶の大きさは任意であるが、透過率の観点から球換算で0.1μm以下が好ましい。
【0077】
加える種結晶は目的とする金属酸化物そのものでなくても、結晶形が同じ、及び/又は格子定数が近い値をとるものなど、ヘテロエピタキシャルに都合の良いものを使用することもできる。例えば、ITO膜を作成する場合、酸化インジウムを種結晶として用いることができる。
【0078】
上述の種結晶は、市販品を用いても、合成したものを用いてもよい。金属酸化物膜がITOの場合、市販品では三菱マテリアル製、住友金属鉱山製のものなどを用いることができる。合成法については、ゾル−ゲル法、水熱合成の他通常の焼結などが挙げられる。ゾル−ゲル法については、「ゾル−ゲル法の科学,作花済夫、アグネ承風社、1988」,「ゾル−ゲル法による薄膜コーティング技術、技術情報協会編、1994」や「ゾル−ゲル法の現状と展望、山根正之監修、技術情報サービス懇談会[ATIS]ゾル−ゲル法リポート刊行会、1992」などに詳しく記述されている。
【0079】
本発明の膜形成方法においては、塗布膜の加熱時及び/又は加熱後に、光照射するのが好ましい。塗布被膜に紫外光もしくは可視光を照射する光源は、150nm〜700nmの波長の光を発生する限りにおいてどんなものを用いてもよい。例えば、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、ナトリウムランプなどが挙げられる。好ましくは、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプである。また、フォトマスクを併用することによって透明導電性パターンが形成できる。また、レーザー発振装置を使用することもできる。レーザー発振装置としては、エキシマレーザー、アルゴンレーザー、ヘリウムネオンレーザー、半導体レーザー、YAGレーザー、炭酸ガスレーザー、色素レーザー等が挙げられる。レーザー光を用いた場合、照射部分以外は金属酸化物と成らないので、塗布時にスクリーン印刷等を用いることなくパターン形成ができる。また、シンクロトロン放射光を利用することもできる。
【0080】
これらの装置は、照射したい波長を考慮して選ぶことができる。前記分散質を含む塗布液の反応を行った場合、金属酸化物の生成ともに、金属水酸化物も残る場合があり、その場合には金属−OH結合の吸収を考慮して、400nm以下の紫外光含む光を発生する装置を用いるとよい。更に、脱水反応が進行して、メタロキサンネットワークが形成した場合、金属−O−金属結合の吸収は,金属−OH結合より短波長であるが、金属−O−金属結合を活性化することができる波長の光照射によって、金属酸化物の結晶化が促進する。
照射時間は、特に限定されるものではないが、通常1分〜120時間の間で適宜行われる。
【0081】
本発明において、光照射プロセスでの雰囲気は自由であるが、ある程度の還元雰囲気で行うことは好ましい。ある程度の還元雰囲気下では酸素欠陥の増大によるキャリアー密度の増大及び/又は粒界への酸素分子の吸着が抑制されたものと考えられる。
【0082】
一方、光照射によって分解する高沸点低分子量溶媒を使用してもよい。このような例としてイソホロン,酢酸ベンジルが挙げられる。
【0083】
また、前記分散質を含有する溶液に添加できるものとして、光照射を行う場合は、光崩壊製樹脂なども用いることができる。例えば,ポリメチルビニルケトン、ポリビニルフェニルケトン、ポリスルホン、p−ジアゾジフェニルアミン・パラホルムアルデヒド重縮合物等のジアゾニウム塩類、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸イソブチルエステルなどのキノンジアジド類、ポリメチルメタクリレート、ポリフェニルメチルシラン、ポリメチルイソプロペニルケトンなどが挙げられる。上記樹脂の場合、金属化合物100重量部あたり0〜1000重量部の割合で使用することが望ましい。さらに、光照射を行う場合に、照射光波長と前記分さ質の吸収波長が異なる場合に、光増感剤を加えるとよい。
【0084】
以上のようにして得られた金属酸化物膜は、塗布または吹き付けのみの簡単な操作であり、200℃以下の低温で加熱処理したとしても、膜表面が平滑であることを特徴とし、平滑性を示す値である膜表面の平均粗さが、10nm以下であり、更に好ましくは、5nm以下であることを特徴とする。また、低温で加熱処理することができるために、ブラスチック基板上に成膜したとしても、金属酸化物膜中の炭素含有量は、元素比で10%以下であることを特徴とする。
【0085】
(VII)有機−無機複合体
本発明の有機−無機複合体は、以上述べたようにして調製された金属−酸素結合を有する分散質、該分散質から誘導される無機構造部分、及び該分散質を出発物質とする無機ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0086】
有機成分としては特に限定されることはなく、付加重合体、重付加体、重縮合体いずれも樹脂を用いることができ、具体的には以下に例示することができる。
【0087】
アクリル系樹脂としては、次に記すモノマーを原料とし、これを重合したものが挙げられる。単官能メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸トリシクロ[5,2,1,0]デカニル、メタクリル酸3,3,3−トリフロロエチル等が挙げられ、また多官能メタクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレンジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン等が挙げられる。また単官能アクリル酸エステルとして、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸トリシクロ[5,2,1,0]デカニル、アクリル酸3,3,3−トリフロロエチル等が挙げられ、多官能アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。さらに、上述のアクリル又はメタクリル化合物と共重合可能なモノマーとして、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、p−クロルメチルスチレン、ジビニルベンゼン等の核置換スチレンやα−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、N−置換マレイミドなどがあり、これらと上述のアクリル又はメタクリル化合物との共重合体も、アクリル系樹脂に該当する。
【0088】
また、ラジカルまたはカチオン重合可能な有機モノマーが好ましく、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合および尿素結合から選ばれる少なくとも1種の結合を含有する有機モノマーが特に好ましい。このような有機モノマーのうち、ラジカル重合可能な有機モノマーの具体例としては、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体、(メタ)アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、(メタ)ウレタンアクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレートとイソシアネートとの付加体などが挙げられる。ここで(メタ)アクリルアミドとは、メタクリルアミドとアクリルアミドの両者を、また(メタ)アクリレートとは、メタクリレートとアクリレートの両者を示す。
【0089】
一方、上記有機モノマーのうち、カチオン重合可能なモノマーとしては、重合官能基としてエポキシ環、ビニルエーテル結合、オルトスピロ環を有する化合物が挙げられ、具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0090】
また上記必須有機モノマーとともに、任意有機モノマーを、得られるポリマーの改質のために用いてもよく、この種の任意有機モノマーは、アミド結合、ウレタン結合、尿素結合を有していてもいなくてもよい。但し、この任意有機モノマーは、その重合様式(ラジカル重合、カチオン重合)が上記必須モノマーと同一でなければならない。
【0091】
ポリ(チオ)ウレタン系樹脂とは、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物またはポリヒドロキシ化合物との反応により得られるポリチオウレタンまたはポリウレタン系樹脂のことをいう。
【0092】
ポリイソシアネート化合物としては、特に限定されず、その具体例としては、以下のものを挙げることができる。
【0093】
(i)水添2,6−トリレンジイソシアネート、水添メタおよびパラフェニレンジイソシアネート、水添2,4−トリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添メタキシリレンジイソシアネート、水添パラキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、ノルボルナンジイソシアナートなどの脂環族イソシアネート化合物、
(ii)メタおよびパラフェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、メタおよびパラキシリレンジイソシアネート、メタおよびパラテトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ナフタリンジイソシアネート、1,5−ナフタリンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼンなどの芳香環を有するイソシアネート化合物(好ましいものは2,4−および2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、メタテトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ナフタリンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼンなど)、
(iii)ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュウレット反応生成物、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、リジンジイソシアネート、2−イソシアナトメチル−2,6−ジイソシアナトカプロナート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの脂環、芳香環を有していないイソシアネート化合物、
(iv)ジフェニルジスルフィド−4,4’−ジイソシアナート、2,2’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアナート、3,3’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアナート、3,3’−ジメチルジフェニルジスルフィド−6,6’−ジイソシアナート、4,4’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアナート、3,3’−ジメトキシジフェニルジスルフィド−4,4’−ジイソシアナート、4,4’−ジメトキシジフェニルジスルフィド−3,3’−ジイソシアナート、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアナート、ジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアナート、ベンジリデンスルホン−4,4’−ジイソシアナート、ジフェニルメタンスルホン−4,4’−ジイソシアナート、4−メチルジフェニルメタンスルホン−2,4’−ジイソシアナート、4,4’−ジメトキシジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアナート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアナトジベンジルスルホン、4,4’−ジメチルジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアナート、4,4’−ジ−tert−ブチルジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアナート、4,4’−ジメトキシベンゼンエチレンジスルホン−3,3’−ジイソシアナート、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアナート、4−メチル−3−イソシアナトベンゼンスルホニル−4’−イソシアナトフェノールエステル、4−メトキシ−3−イソシアナトベンゼンスルホニル−4’−イソシアナトフェノールエステル、4−メチル−3−イソシアナトベンゼンスルホニルアニリド−3’−メチル−4’−イソシアナート、ジベンゼンスルホニル−エチレンジアミン−4,4’−ジイソシアナート、4,4’−ジメトキシベンゼンスルホニル−エチレンジアミン−3,3’−ジイソシアナート、4−メチル−3−イソシアナトベンゼンスルホニルアニリド−4−メチル−3’−イソシアナート、チオフェン−2,5−ジイソシアナート、チオフェン−2,5−ジイソシアナトメチル、1,4−ジチアン−2,5−ジイソシアナート、1,4−ジチアン−2,5−ジイソシアナトメチル、1,4−ジチアン−2,3−ジイソシアナトメチル、1,4−ジチアン−2,5−ジイソシアナトメチル、1,4−ジチアン−2−イソシアナトメチル−5−イソシアナトプロピル、1,3−ジチオラン−4,5−ジイソシアナート、1,3−ジチオラン−4,5−ジイソシアナトメチル、1,3−ジチオラン−2−メチル−4,5−ジイソシアナトメチル、1,3−ジチオラン−2,2−ジイソシアナトエチル、テトラヒドロチオフェン−2,5−ジイソシアナート、テトラヒドロチオフェン−2,5−ジイソシアナトメチル、テトラヒドロチオフェン−2,5−ジイソシアナトエチル、テトラヒドロチオフェン−3,4−ジイソシアナトメチル等の硫黄含有イソシアネート化合物。
【0094】
ポリチオール化合物としては以下のものを挙げることができる。
(i)メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオール、2−メチルシクロヘキサン−2,3−ジチオール、1,1−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、チオリンゴ酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、2,3−ジメルカプトコハク酸(2−メルカプトエチルエステル)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(2−メルカプトアセテート)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(3−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン、テトラメチロールメタンテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)等の脂肪族チオール、
(ii)1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,5−テトラメルカプトベンゼン、1,2,4,5−テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、2,2’−ジメルカプトビフェニル、4,4’−ジメルカプトビフェニル、4,4’−ジメルカプトビベンジル、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,4−ナフタレンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール、2,7−ナフタレンジチオール、2,4−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、4,5−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、9,10−アントラセンジメタンチオール、1,3−ジ(p−メトキシフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、1,3−ジフェニルプロパン−2,2−ジチオール、フェニルメタン−1,1−ジチオール、2,4−ジ(p−メルカプトフェニル)ペンタン等の芳香族チオール、
(iii)2,5−ジクロロベンゼン−1,3−ジチオール、1,3−ジ(p−クロロフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、3,4,5−トリブロム−1,2−ジメルカプトベンゼン、2,3,4,6−テトラクロル−1,5−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン等の塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換芳香族チオール、
(iv)1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン等、及びこれらの核アルキル化物等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する芳香族チオール、(v)ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3−メルカプトプロピル)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,2−(3−メルカプトプロピル)エタン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,3−ビス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン、2−メルカプトエチルチオ−1,3−プロパンジチオール、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3−メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)ジスルフィド等、及びこれらのチオグリコール酸及びメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(2−メルカプトアセテート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(3−メルカプトプロピオネート)、チオグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4’−チオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4’−ジチオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオジプロピオン酸(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、4−メルカプトメチル−3,6−ジチアオクタン−1,8−ジチオール、ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11−ウンデカンジチオール、ビス(1,3−ジメルカプト−2−プロピル)スルフィド等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する脂肪族チオール、
(vi)3,4−チオフェンジチオール、テトラヒドロチオフェン−2,5−ジメルカプトメチル、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する複素環化合物。
【0095】
ポリヒドロキシ化合物としては以下のものが挙げられる。
(i)エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、1,2−メチルグルコサイド、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、シクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、ビシクロ〔4,3,0〕−ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカンジオール、スピロ〔3,4〕オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、等の脂肪族ポリオール、
(ii)ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、テトラヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゼン、ベンゼントリオール、トリヒドロキシフェナントレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、キシリレングリコール、テトラブロムビスフェノールA等の芳香族ポリオール、
(iii)上記(i)または(ii)のポリヒドロキシ化合物とエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドとの付加反応生成物、
(iv)ビス−〔4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル〕スルフィド、ビス−〔4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕スルフィド、ビス−〔4−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)フェニル〕スルフィド、ビス−〔4−(4−ヒドロキシシクロヘキシロキシ)フェニル〕スルフィド、ビス−〔2−メチル−4−(ヒドロキシエトキシ)−6−ブチルフェニル〕スルフィドおよびこれらの化合物に水酸基当たり平均3分子以下のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドが付加された化合物、ジ−(2−ヒドロキシエチル)スルフィド、1,2−ビス−(2−ヒドロキシエチルメルカプト)エタン、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィド、1,4−ジチアン−2,5−ジオール、ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)スルフィド、テトラキス(4−ヒドロキシ−2−チアブチル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(商品名ビスフェノールS)、テトラブロモビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチルチオエチル)−シクロヘキサンなどの硫黄原子を含有したポリオール。
【0096】
ポリ(チオ)ウレタン樹脂中、レンズ基材として使用されるものは従来より知られており、これを開示している具体的な公知刊行物例として、例えば、特開昭58−127914号公報、特開昭57−136601号公報、特開平01−163012号公報、特開平03−236386号公報、特開平03−281312号公報、特開平04−159275号公報、特開平05−148340号公報、特開平06−065193号公報、特開平06−256459号公報、特開平06−313801号公報、特開平06−192250号公報、特開平07−063902号公報、特開平07−104101号公報、特開平07−118263号公報、特開平07−118390号公報、特開平07−316250号公報、特開昭60−199016号公報、特開昭60−217229号公報、特開昭62−236818号公報、特開昭62−255901号公報、特開昭62−267316号公報、特開昭63−130615号公報、特開昭63−130614号公報、特開昭63−046213号公報、特開昭63−245421号公報、特開昭63−265201号公報、特開平01−090167号公報、特開平01−090168号公報、特開平01−090169号公報、特開平01−090170号公報、特開平01−096208号公報、特開平01−152019号公報、特開平01−045611号公報、特開平01−213601号公報、特開平01−026622号公報、特開平01−054021号公報、特開平01−311118号公報、特開平01−295201号公報、特開平01−302202号公報、特開平02−153302号公報、特開平01−295202号公報、特開平02−802号公報、特開平02−036216号公報、特開平02−058517号公報、特開平02−167330号公報、特開平02−270859号公報、特開平03−84031号公報、特開平03−084021号公報、特開平03−124722号公報、特開平04−78801号公報、特開平04−117353号公報、特開平04−117354号公報、特開平04−256558号公報、特開平05−78441号公報、特開平05−273401号公報、特開平05−093801号公報、特開平05−080201号公報、特開平05−297201号公報、特開平05−320301号公報、特開平05−208950号公報、特開平06−072989号公報、特開平06−256342号公報、特開平06−122748号公報、特開平07−165859号公報、特開平07−118357号公報、特開平07−242722号公報、特開平07−247335号公報、特開平07−252341号公報、特開平08−73732号公報、特開平08−092345号公報、特開平07−228659号公報、特開平08−3267号公報、特開平07−252207号公報、特開平07−324118号公報、特開平09−208651号公報などが挙げられる。これらの公報に開示されているポリイソシアネート化合物、ポリチオール化合物、ポリヒドロキシ化合物は、本発明でいうポリ(チオ)ウレタン樹脂を製造するための原料モノマーとして使用することができる。
【0097】
ジエチレングリコールビスアリルカーボネートを主成分とする樹脂としては、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートの単独重合体、及びジエチレングリコールビスアリルカーボネートと、共重合可能なモノマーとを反応させてなる共重合体が挙げられる。
【0098】
ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと共重合可能なモノマーとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸アダマンチル等の単官能メタクリル酸エステルが挙げられ、また、多官能メタクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン等が挙げられる。また、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、アクリル酸イソボルニル、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、2,2−ビス〔4−(アクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン等のアクリル酸エステル、さらに、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、p−クロルメチルスチレン、ジビニルベンゼン等の核置換スチレンやα−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、N−置換マレイミド、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート等が挙げられる。
【0099】
ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと他のモノマーとの共重合体は知られており、その例として、特開昭54−41965号公報、特開昭51−125487号公報、特再平01−503809号公報などに記載されたものが挙げられる。
【0100】
エピチオ基含有化合物から得られる樹脂とは、エピチオ基を有するモノマーまたは該モノマーを含むモノマー混合物を原料とし、これを重合してなる樹脂をいい、エピチオ基を有するモノマーの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0101】
(i)1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕スルフィドなどの脂環族骨格を有するエピスルフィド化合物、
(ii)1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3および1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフィン、4,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ビフェニルなどの芳香族骨格を有するエピスルフィド化合物、
(iii)2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオエチルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)−1,4−ジチアン、2,3,5−トリ(β−エピチオプロピルチオエチル)−1,4−ジチアンなどのジチアン環骨格を有するエピスルフィド化合物、
(iv)2−(2−β−エピチオプロピルチオエチルチオ)−1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオ〕−3−(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、テトラキス(β−エピチオプロピルチオメチル)メタン、1,1,1−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、ビス−(β−エピチオプロピル)スルフィド、ビス−(β−エピチオプロピル)ジスルフィドなどの脂肪族骨格を有するエピチオ化合物。
【0102】
また、エピチオ基含有化合物から得られる樹脂のうち、プラスチックレンズ基材として用いられるものは従来知られており、その具体例としては、特開平09−071580号公報、特開平09−110979号公報、特開平09−255781号公報、特開平03−081320号公報、特開平11−140070号公報、特開平11−183702号公報、特開平11−189592号公報、特開平11−180977号公報、特再平01−810575号公報等に記載されたものが挙げられる。
【0103】
また、他の例として、分子内に(チオ)ウレタン構造を有するラジカル重合体を例示することができ、具体的には、分子中に少なくとも2個のメルカプト基を有する炭素数3〜6の直鎖状アルカン化合物と分子中に少なくとも1個のイソシアネート基および少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させることにより得られるモノマーを用いたラジカル重合体を例示することができる。なお、(メタ)アクリロイル基はアクリロイル基とメタクリロイル基の両方を意味する。
【0104】
以上のようなチオウレタン結合をもつラジカル重合性化合物の原料の1つである分子中に少なくとも2個のメルカプト基を有する炭素数3〜6の直鎖状アルカン化合物の例としては、1,2,3−トリメルカプトプロパン、1,2,3−トリメルカプトブタン、1,2,4−トリメルカプトブタン、1,2,3,4−テトラメルカプトブタン、1,2,3−トリメルカプトペンタン、1,2,4−トリメルカプトペンタン、1,2,3,4−テトラメルカプトペンタン、1,2,3−トリメルカプトヘキサン、1,2,4−トリメルカプトヘキサン、1,2,5−トリメルカプトヘキサン、2,3,4−トリメルカプトヘキサン、2,3,5−トリメルカプトヘキサン、3,4,5−トリメルカプトヘキサン、1,2,3,4−テトラメルカプトヘキサン、1,2,3,5−テトラメルカプトヘキサン、1,2,4,5−テトラメルカプトヘキサン、2,3,4,5−テトラメルカプトヘキサン、1,2,3,4,5−ペンタメルカプトヘキサンを挙げることができるが、これらの中で特に得られる光学材料の性能および入手の容易さなどの点から、1,2,3−トリメルカプトプロパンが好ましい。
【0105】
もう1つの原料である少なくとも分子中に1個のイソシアネート基と少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の例としては、アクリロイルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、2−イソシアナトプロピルアクリレート、2−イソシアナトプロピルメタクリレートなどが挙げられるが、これらの中で、特に得られる光学材料の性能および入手の容易さなどの点から、2−イソシアナトエチルメタクリレートが好ましい。上で例示したものは、1個のイソシアネート基と1個の(メタ)アクリロイル基を有するものであるが、2個以上のイソシアネート基を有するものでもよく、また2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するものでもよい。
【0106】
また、上記有機−無機複合体を光学材料として用いる場合はその物性を適宜改良するために、前記重合性化合物以外に、例えば、ラジカル重合可能な有機モノマーを用いた場合には、ラジカル重合性基を有し、かつ上記化合物と共重合可能なラジカル重合性化合物を1種もしくは2種以上含んでいてもよく、このラジカル重合性化合物としては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレンジグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルクリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールビスグリシジル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、2,5−ビス(2−チア−3−ブテニル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス((メタ)アクリロイルチオメチル)−1,4−ジチアンなどが挙げられ、特に好ましくは、2,5−ビス(2−チア−3−ブテニル)−1,4−ジチアンが挙げられる。なお、上記(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートの両方を意味し、(メタ)アクリロキシ基は、アクリロキシ基とメタクリロキシ基の両方を意味する。
【0107】
重合反応は、有機モノマーがラジカルまたはカチオン重合可能な有機モノマーの場合、公知のラジカルまたはカチオン重合開始剤を、また、有機モノマーが、重付加、または重縮合可能な有機モノマーの場合、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン、4,4′−トリメチレンビス(1−メチルピペリジン)、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン等のアミン化合物、またはジメチルスズジクロライド、ジメチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズマレエートポリマー、ジブチルスズジリシノレート、ジブチルスズビス(ドデシルメルカプチド)、ジブチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジオクチルスズジクロライド、ジオクチルスズマレエート、ジオクチルスズマレエートポリマー、ジオクチルスズビス(ブチルマレエート)、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジリシノレート、ジオクチルスズジオレエート、ジオクチルスズジ(6−ヒドロキシ)カプロエート、ジオクチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジドデシルスズジリシノレート、オレイン酸銅、アセチルアセトン酸銅、アセチルアセトン酸鉄、ナフテン酸鉄、乳酸鉄、クエン酸鉄、グルコン酸鉄、オクタン酸カリウム、チタン酸2−エチルヘキシル等の有機金属化合物を添加して重合を行う。前記重付加、または重縮合反応の触媒中、特に、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズジラウレートが好ましく、またこれらの触媒は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0108】
光ラジカル重合を行う場合は、反応性向上のために、ベンゾフェノン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、アシルフォスフィンオキサイド等の公知の増感剤を添加することもできる。
【0109】
前記重合反応は、溶液重合、またはバルク重合いずれでも行うことができ、有機成分、無機成分の混合物を、加熱または光照射を行うことにより重合を行うことができる。
【0110】
有機−無機複合体の製造方法としては、
(1)有機ポリマー、金属アルコキシド等の金属化合物から調製された本発明の金属−酸素結合を有する分散質を有機溶媒中、またはバルクで混合し、成形加工する方法、
(2)有機溶媒中、金属アルコキシド等の金属化合物から本発明の金属−酸素結合を有する分散質を調製し、有機モノマーを添加し、溶液重合、またはバルク重合を行い成形加工する方法、
(3)有機溶媒中、金属アルコキシド等の金属化合物と有機モノマーを混合し、水を添加して加水分解を行い有機モノマーと本発明の金属−酸素結合を有する分散質の混合物を調製し、溶液重合、またはバルク重合を行い成形加工する方法、
(4)有機ポリマーと金属アルコキシド等の金属化合物を有機溶媒中に混合し、水を添加して加水分解を行い、成形加工する方法、
(5)金属アルコキシド等の金属化合物から調製された本発明の金属−酸素結合を有する分散質を含む有機溶媒中に有機ポリマーを含む有機溶媒を滴下混合し成形加工する方法、
(6)有機モノマーからオリゴマーと調製し、予め調製した金属アルコキシド等の金属化合物から本発明の金属−酸素結合を有する分散質と混合し、溶液重合、またはバルク重合を行い、成形加工する方法、
等を例示するができ、特に(2)、(3)または(6)の方法が好ましい。
【0111】
また、有機ポリマーとして重縮合物を用いる場合、または水に対して不安定な有機モノマーを用いる場合には、金属−酸素結合を有する分散質を調製した後、有機ポリマーまたは有機モノマー添加するのが好ましい。
【0112】
本発明の有機−無機複合体は、高屈折率、高い可視光透過率を有することから、光学材料として用いるのが好ましい。該光学材料には、吸光特性を改良するために紫外線吸収剤、色素や顔料等を、耐候性を改良するために、酸化防止剤、着色防止剤等を、成形加工性を改良するために、離型剤等を、所望により適宜加えることができる。ここで、紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系等が、色素や顔料としては、例えばアントラキノン系やアゾ系等が挙げられる。酸化防止剤や着色防止剤としては、例えばモノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系、硫黄系、リン系等が、離型剤としては、例えばフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、酸性リン酸エステル、高級脂肪酸等が挙げられる。
【0113】
本発明の光学材料の製造方法について、例えば、前記酸素−金属結合を有する分散質、前記有機モノマー、該モノマーと共重合可能なモノマー及び添加剤や触媒を含有する均一混合物を、例えば、ラジカル重合性のモノマーであれば、公知の注型重合法、すなわち紫外線を透過するガラス製または樹脂製のモールドと樹脂製のガスケットを組み合わせた型の中に注入し、紫外線を照射して硬化させ、重付加、重縮合性モノマーであれば、加熱して硬化させる。この際、成形後の樹脂の取り出しを容易にするためにあらかじめモールドを離型処理したり、前記均一混合液中に離型剤を含有させてもよい。さらに紫外線照射後、重合を完結させたり、材料内部に発生する応力を緩和させるために、加熱することも好ましく行われる。この際の加熱温度及び時間は、紫外線照射エネルギー量等により異なるが、一般にはそれぞれ30〜150℃、0.2〜24時間である。また、加熱による注型重合の場合、例えば初期温度は5〜40℃と比較的低温の範囲が好ましく、10〜70時間かけて徐々に昇温し、100〜130℃の高温にするのが好ましい。また、既に有機ポリマーの製造が終了している前記(1)または(4)のような製造方法によって得られた光学材料については、溶液を型でキャスチング等することにより、成形することができる。また、本発明の光学材料は通常の分散染料を用い、水もしくは有機溶媒中で容易に染色が可能であるが、この際さらに染色を容易にするために、キャリアーを加えたり加熱してもよい。
【0114】
本発明はまた、このようにして得られた光学材料からなる光学製品をも提供するものであり、この光学製品としては特に制限はなく、例えば眼鏡レンズをはじめとする光学プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、記録媒体用基板、フィルター、さらにはグラス、花瓶などを挙げることができるが、これらの中で、光学プラスチックレンズ、特に眼鏡レンズに好適に用いられる。
【0115】
また、本発明の光学材料は、注型重合することなく、レンズまたはガラス等の表面に塗布し、必要に応じて光照射等の操作を行うことで硬化させ、表面を保護するハードコート膜、反射を防止する多層反射防止膜の原料として用いることもできる。塗布方法は特に限定されないが、ディップコート、スピンコート、フローコート、ローラ塗り、刷毛塗り等いずれの方法も採用することができる。
【0116】
(VIII)単分子膜
本発明の単分子膜の製造方法は、本発明である金属酸化物膜に、少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤を接触させることを特徴とする。
【0117】
少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤としては、加水分解可能な官能基を有し、該官能基を介して基体表面上の活性水素と反応して結合を形成することができ、該結合を形成し得る親水性部位と、疎水性部位を同一分子内に有するものであれば、特に制限されないが、特に、式(II)で表される化合物を例示することができる。
【0118】
式(II)中、Rは、1価炭化水素基、置換基を有する1価炭化水素基、1価ハロゲン化炭化水素基、置換基を有する1価ハロゲン化炭化水素基、連結基を含む1価炭化水素基、または、連結基を含む1価ハロゲン化炭化水素基を表し、nが2以上の場合には同一、または相異なっていてもよい。
【0119】
が1価炭化水素基である場合、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルケニル基、またはアリール基が好ましい。Rが1価ハロゲン化炭化水素基である場合、該基とは炭化水素基中の水素原子の1個以上がハロゲン原子に置換された基をいい、アルキル基中の水素原子の2個以上がハロゲン原子に置換された基が好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
【0120】
がフッ素化アルキル基である場合、直鎖構造または分岐構造が好ましく、分岐構造である場合には、分岐部分が炭素数1〜4程度の短鎖である場合が好ましい。Rがフッ素化アルキル基である場合、末端炭素原子にフッ素原子が1個以上結合した基が好ましく、特に末端炭素原子にフッ素原子が3個結合したCF基部分を有する基が好ましいが、末端が、フッ素原子が置換しない炭化水素基で内部の炭素鎖にフッ素原子が置換した炭素鎖であっても構わない。
【0121】
また、フッ素化アルキル基中のフッ素原子数は、[(フッ素化アルキル基中のフッ素原子数)/(フッ素化アルキル基に対応する同一炭素数のアルキル基中に存在する水素原子数)×100]%で表現したときに、60%以上が好ましく、特に80%以上が好ましい。さらにフッ素化アルキル基は、末端部分にアルキル基の水素原子の全てはフッ素原子に置換されたペルフルオロアルキル部分を有し、金属原子との間に−(CH−(hは1〜6の整数であり、2〜4の整数が好ましい)である基が存在する基が好ましい。該好ましい基の態様は、Rが置換基や連結基を有する1価ハロゲン化炭化水素基である場合も同様である。
【0122】
が置換基を有する1価炭化水素基である場合、1価炭化水素基の水素原子が置換基に置換された基をいい、Rが置換基を有する1価ハロゲン化炭化水素基である場合、1価ハロゲン化炭化水素基中の水素原子またはハロゲン原子が置換基に置換された基をいう。これらの基中の置換基としては、カルボキシル基、アミド基、イミド基、エステル基、または水酸基等が挙げられる。また、これらの基中の置換基の数は1〜3個が好ましい。
【0123】
また、Rが連結基を含む1価炭化水素基、または、連結基を含む1価ハロゲン化炭化水素基である場合、1価炭化水素基または1価ハロゲン化炭化水素の炭素−炭素結合間に連結基を含む基、または、1価炭化水素基または1価ハロゲン化炭化水素基の金属原子に結合する末端に連結基が結合した基が挙げられる。連結基としては、−O−、−S−、−COO−または−CONR21−(R21は水素原子またはアルキル基)等が好ましい。
【0124】
これらのうち、撥水性、耐久性の観点から、Rとして、メチル基、フッ素化アルキル基、または連結基を有するフッ素化アルキル基であるのが好ましい。Rがフッ素化アルキル基または連結基を有するフッ素化アルキル基である場合の具体例としては、下記の基を具体的に例示することができる。
【0125】
CF
CFCF
(CFCF−
(CFC−
CF(CH
CF(CF(CH
CF(CF(CH
CF(CF(CH
CF(CF(CH
CF(CF(CH
CF(CF(CH
CF(CFO(CF(CH
CF(CFO(CF(CH
CF(CFO(CF(CH
CF(CFCONH(CH
CF(CFCONH(CH
CF(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)CO−NH
(CH
CH(CF(CH
CH(CF(CH
CH(CF(CH
CH(CF10(CH
CH(CF11(CH
CH(CF12(CH
CH(CF(CH
CH(CF(CH
CH(CF11(CH
CHCH(CF(CH
CHCH(CF(CH
CHCF(CF10(CH
CH(CFO(CF(CH
CH(CF(CHO(CH
CH(CF(CHO(CH
CH(CF(CHO(CH
CHCH(CF(CHO(CH
CH(CFCONH(CH
CH(CFCONH(CH
CH(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)CO−NH
(CH
【0126】
式(II)中のYは、加水分解性基を表し、具体的には、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアシルオキシ基、ハロゲン原子、イソシアネート基、アミノ基、またはアミド基等を例示することができ、(m−n)が2以上の場合には同一または相異なっていてもよく、特に、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、またはイソシアネート基が好ましい。また、先に記載したように、加水分解性基は、加水分解を受けて活性水素を有する他の官能基と結合を形成させることができる官能基であることを考慮して、便宜上、本明細書においては、水酸基を加水分解性基に含めることとする。
【0127】
式(II)中のnは、1〜(m−1)のいずれかの整数を表し、高密度の化学吸着膜を製造するためには、1であるのが好ましい。Mはケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、チタン原子、及びジルコニウム原子からなる群から選ばれる1種の原子を表し、原料の入手しやすさ、反応性等を考慮するとケイ素原子を好ましい。
【0128】
式(II)で表される化合物中、特に、式(III)で表される化合物を例示することができる。式(II)中、Rは、アルキレン基、ビニレン基、エチニレン基、アリレーン基、または、ケイ素原子及び/または酸素原子を含む2価官能基を表す。具体的には、下記式に示す官能基を例示することができる。
【0129】
上記式中、a及びbは1以上の任意の整数を表す。
【0130】
式(III)中、Zは、水素原子、アルキル基、または含フッ素アルキル基を表す。rは、0または1〜(m−2)のいずれかの整数を表すが、高密度の吸着膜を製造するためには、rが0の場合が好ましい。
【0131】
式(II)で表される化合物としては、式(III)で表される化合物以外に
(1)CH−(CH−MZm−r−1
(2)CH−(CH−O−(CH−MZm−r−1
(3)CH−(CH−Si(CH−(CH−MZm−r−1
(4)CFCOO−(CH−MZm−r−1
等の化合物を例示することができる。式中、g、s、u、v、及びwは、任意の整数を表すが、特に好ましい範囲として、gは1〜25、sは0〜12、tは1〜20、uは0〜12、vは1〜20、wは1〜25を例示することができ、Z、Y、r及びmは、式(III)における意味と同じ意味を表す。
【0132】
式(II)で表される化合物として、具体的には、金属原子としてケイ素原子を代表して下記式で示す化合物を例示することができる。尚、加水分解性基についても、例示した官能基に限定されず他の加水分解性基を同様に用いることができる。
【0133】
CHCHO(CH15Si(OCH
CFCHO(CH15Si(OCH
CH(CHSi(CH(CH15Si(OCH
CH(CHSi(CH(CHSi(OCH
CHCOO(CH15Si(OCH
CF(CF(CHSi(OCH
CF(CF−(CH=CH)−Si(OCH
CHCHO(CH15Si(OC
CH(CHSi(CH(CH15Si(OC
CH(CHSi(CH(CHSi(OC
CF(CHSi(CH(CHSi(OC
CHCOO(CH15Si(OC
CFCOO(CH15Si(OC
CFCOO(CH15Si(OCH
CF(CF(CHSi((OC
CF(CF(CHSi(OC
CF(CF(CHSi(OC
CF(CF(CH=CH)Si(OC
CF(CF(CHSi(OCH
CF(CF(CHSi(OCH
CF(CF(CHSi(CH)(OC
CF(CF(CHSi(CH)(OCH
CF(CF(CHSi(CH(OC
CF(CF(CHSi(CH(OCH
CF(CHSiCl
CF(CF(CHSiCl
CF(CF(CHSiCl
CF(CF(CHSiCl
CF(CF(CHSiCl
CF(CF(CHSiCl
CF(CF(CHSiCl
CF(CFO(CF(CHSiCl
CF(CFO(CF(CHSiCl
CF(CF(CHO(CHSiCl
CF(CFCONH(CHSiCl
CF(CFCONH(CHSiCl
CF(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)−CONH
(CHSiCl
CF(CF(CHSi(CH)Cl
CF(CF(CHSi(CH)Cl
CF(CHSi(CH)Cl
CF(CF(CHSi(CH)Cl
CF(CF(CHSi(CH)Cl
CF(CF(CHSi(CH)Cl
CF(CF(CF(CHSi(CH)Cl
CF(CF(CF(CHSi(CH)Cl
CF(CF(CHO(CHSi(CH)Cl
CF(CFCONH(CHSi(CH)Cl
CF(CFCONH(CHSi(CH)Cl
CF(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)−CONH
(CHSi(CH)Cl
CH(CHSiCl
CH(CF(CHSiCl
CH(CF(CHSi(CH)Cl
CH(CF(CHSi(OCH
CH(CF(CHSi(NCO)
CH(CF(CHSiCl
CH(CF(CHSi(OCH
CH(CF(CHSi(NCO)
CH(CF(CHSiCl
CH(CF(CHSi(OCH3)
CH(CF(CHSi(NCO)
CHCH(CF(CHSiCl
CHCH(CF(CHSi(OCH3)
CHCH(CF(CHSi(NCO)
CHCH(CF(CHSiCl
CHCH(CF(CHSi(OCH3)
CHCH(CF(CHSi(NCO)
CHCH(CF10(CHSiCl
CH(CF0(CF(CHSiCl
CH(CF(CHO(CHSiCl
CH(CF(CHO(CHSiCl
CH(CF(CHO(CHSiCl
CHCH(CF(CHO(CHSiCl
CH(CFCONH(CHSiCl
CH(CFCONH(CHSiCl
CH(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)−CONH
(CHSiCl
【0134】
上記した金属系界面活性剤は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができ、通常、溶媒に希釈して用いる。また、必要に応じて、有機溶媒中で、金属酸化物、または金属アルコキシド部分加水分解生成物等の存在下に水と共に用いることもできる。
【0135】
本発明の単分子膜の製造方法は、
(i)前記した分散質等を含む溶液を基板上に塗布または吹き付け、乾燥して金属酸化物膜を成膜し、
(ii)金属酸化物膜を形成した基板に金属系界面活性剤溶液を接触させ、乾燥させるの工程を順次行うのが好ましい。
【0136】
上記工程(i)において、金属酸化物等を含む溶液を基板上に塗布または吹き付ける方法は、特に制限されず、ディッピング法、スピンコート法、メイヤバー法、はけ塗り法等、表面を平滑に塗布できる方法であれば、特に制限はされない。
【0137】
また、上記工程(ii)において、金属系界面活性剤を該基板に接触させる方法として、特に制限されず、上記したいずれの方法を用いることができるが、均一な単分子膜を形成するには、ディッピング法が好ましい。
【0138】
本発明に用いられる金属系界面活性剤の溶液中の含有量は、特に制限はないが、緻密な単分子膜を製造するためには、0.1〜30重量%の範囲がシラン系化合物の溶液として好ましい。
【0139】
本発明に用いられるプラスチック基板としては、シート、板状、フィルム等が用いられ、特にフィルムが好ましく、具体的に、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、ニトロセルロース、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ポリエチレン被覆紙、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリフッ化ビニリデン、テフロン(登録商標)などを用いることができる。
【0140】
基体の大きさや形には特に制限されず、平板、立体物、フィルム等いずれも使用することができる。また、塗装した物品でも用いることができる。これらの支持体には温度や湿度の変化によって寸法が変化する、いわゆる寸度安定性を向上する目的で、ポリ塩化ビニリデン系ポリマーを含む防水層を設けてもよい。さらに、ガスバリアーの目的で、有機及び/又は無機化合物の薄膜を設けてもよい。有機薄膜の例としてはポリビニルアルコール、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)等があげられ、無機化合物の例としては、シリカ、アルミナ、タルク、バーミキュライト、カオリナイト、雲母、合成雲母等が挙げられる。また、その他諸機能のため基板中に各種有機及び/又は無機添加物が加えられていてもよい。
【実施例】
【0141】
以下実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
尚、粒径分布及び光透過率の測定は、以下の分析装置を用いて行った。
粒径分布:ダイナミック光散乱光度計(DLS−7000:動的光散乱測定法、Arレーザー75mW、大塚電子(株)製)
光透過率:自記分光光度計(U−4000、(株)日立製作所製)
【0142】
(実施例1)
チタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)製A−1:純度99.9%、酸化チタン換算濃度28重量%)7.87g(27.7mmol)を4つ口フラスコ中で、テトラヒドロフランに溶解し、窒素ガス置換した後に、ドライアイスを加えたメタノール浴(約−74℃)で冷却した。20分程度冷却した後、テトラヒドロフランで希釈した蒸留水(蒸留水として0.8g:44.4mmol)を撹拌しながら加えた。このときテトラヒドロフラン溶液の総重量は32.12gであった。この時の添加水量は、HO/Ti=1.6モル比であった。その後徐々に室温に戻すと淡い黄色透明のチタンイソプロポキシドの加水分解物を含むテトラヒドロフラン溶液が得られた。このとき得られたテトラヒドロフラン溶液の外観を第1表に示した。この溶液の可視光透過率(550nm)は、87%であった。
また、上記のように調製した溶液のUV特性を第1図に示した。第1図にはチタンテトライソプロポキシドのUV特性をも併記した。両者を比較すると、低温加水分解物は、チタンテトライソプロポキシドに比してUVカット性が優れており、Ti−O−Ti結合が成長していることが分かった。
【0143】
(比較例1)
実施例1において、添加する蒸留水の重量を1.0g(55.6mmol)とした以外は実施例1と同様に行った。このとき得られたテトラヒドロフラン溶液の外観を第1表に示した。
【0144】
(比較例2)
実施例1において、添加する蒸留水の重量を1.2g(66.7mmol)とした以外は実施例1と同様に行った。このとき得られたテトラヒドロフラン溶液の外観を第1表に示した。
【0145】
(実施例2)
実施例1で得られたテトラヒドロフラン溶液をロータリーエバポレーターで、バス温度50℃で減圧濃縮し、酸化チタン換算濃度40.2重量%の淡黄色で透明な粘稠性液体を得た。この液体にテトラヒドロフラン溶媒を加えた所、再溶解した。
【0146】
【表1】

【0147】
(実施例3)
チタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)製A−1:純度99%、酸化チタン換算濃度28.2重量%)12.4gを4つ口フラスコ中で、トルエン45.0gに溶解し、窒素ガス置換した後に、エタノール/液体窒素バス中で−80℃に冷却した。別に、イオン交換水1.26g(HO/Ti=1.6モル比)をイソプロパノール11.3gに混合後、−80〜−70℃に冷却した状態で、上記4つ口フラスコ中へ撹拌しながら滴下し、加水分解を行なった。滴下中は、フラスコ内の液温を−80〜−70℃に維持した。
滴下終了後、30分間冷却しながら撹拌後、室温まで撹拌しながら昇温して加水分解を行い、無色透明な酸化チタン換算濃度5重量%のゾルを得た。このとき得られたトルエン/イソプロパノール混合溶液の外観を第2表に示した。この溶液の可視光透過率(550nm)は、85%であった。
また、上記のように調製した溶液のUV特性を第2図に示した。
【0148】
(実施例4)
実施例3で得られた溶液をロータリーエバポレーターで、バス温度50℃で濃縮し、酸化チタン換算濃度54.3重量%の粘稠性液体を得た。このようにして得られた液体のRamanスペクトルを第3図に示した。またこの液体にトルエン溶媒を加えたところ、再溶解した。このとき得られたトルエン/イソプロパノール混合溶液の外観を第2表に示した。
【0149】
(実施例5)
チタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)製A−1:純度99%、酸化チタン換算濃度28.2重量%)35.4gを4つ口フラスコ中で、トルエン152.2gに溶解し、窒素ガス置換した後に、エタノール/液体窒素バス中で−25℃に冷却した。別に、イオン交換水1.24g(HO/Ti=0.55モル比)をイソプロパノール11.2gに混合後、−25℃に冷却した状態で、上記4つ口フラスコ中へ撹拌しながら滴下した。滴下終了後、30分間温度を保持し、室温まで撹拌しながら昇温して加水分解を行い、無色透明な酸化チタン換算濃度5重量%のゾルを得た。この溶液の可視光透過率(550nm)は、95%であった。また、上記のように調製した溶液のUV特性を第2図に示した。
【0150】
(実施例6)
実施例5で得られた溶液をロータリーエバポレーターで、バス温度50℃で濃縮し、酸化チタン換算濃度41.1重量%の粘稠性液体を得た。この液体にトルエン溶媒を加えたところ、再溶解した。このとき得られたトルエン/イソプロパノール混合溶液の外観を第2表に示した。
【0151】
(実施例7)
チタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)製A−1:純度99%、酸化チタン換算濃度28.2重量%)35.4gを4つ口フラスコ中で、トルエン144gに溶解し、窒素ガス置換した後に、エタノール/液体窒素バス中で−25℃に冷却した。別に、イオン交換水2.04g(HO/Ti=0.9モル比)をイソプロパノール18.3gに混合後、−25℃に冷却した状態で、上記4つ口フラスコ中へ撹拌しながら滴下した。滴下終了後、30分間温度を保持し、室温まで撹拌しながら昇温して加水分解を行い、無色透明な酸化チタン換算濃度5重量%のゾルを得た。この溶液の可視光透過率(550nm)は、92%であった。また、上記のように調製した溶液のUV特性を第2図に示した。
【0152】
(実施例8)
実施例7で得られた溶液をロータリーエバポレーターで、バス温度50℃で濃縮し、酸化チタン換算濃度45.7重量%の粘稠性液体を得た。この液体にトルエン溶媒を加えたところ、再溶解した。このとき得られたトルエン/イソプロパノール混合溶液の外観を第2表に示した。
【0153】
(実施例9)
チタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)製A−1:純度99%、酸化チタン換算濃度28.2重量%)17.7gを4つ口フラスコ中で、トルエン68.7gに溶解し、窒素ガス置換した後に、エタノール/液体窒素バス中で−70℃に冷却した。別に、イオン交換水1.36g(HO/Ti=1.2モル比)をイソプロパノール12.2gに混合後、−70℃に冷却した状態で、上記4つ口フラスコ中へ撹拌しながら滴下した。滴下終了後、30分間温度を保持し、室温まで撹拌しながら昇温して加水分解を行い、無色透明な酸化チタン換算濃度5重量%のゾルを得た。この溶液の可視光透過率(550nm)は、93%であった。このようにして得られた液体のRamanスペクトルを第3図に示した。また、上記のように調製した溶液のUV特性を第2図に示した。
【0154】
(実施例10)
実施例9で得られた溶液をロータリーエバポレーターで、バス温度50℃で濃縮し、酸化チタン換算濃度50.8重量%の粘稠性液体を得た。この液体にトルエン溶媒を加えたところ、再溶解した。このとき得られたトルエン/イソプロパノール混合溶液の外観を第2表に示した。
【0155】
(比較例3)
チタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)製A−1:純度99%、酸化チタン換算濃度28.2重量%)35.4gを4つ口フラスコ中で、トルエン144gに溶解し、窒素ガス置換した後に、オイルバス中で80〜90℃に加温保持した。別に、イオン交換水2.04g(HO/Ti=0.9モル比)をイソプロパノール18.3gに混合後、上記4つ口フラスコ中へ撹拌しながら滴下し、加水分解を行なった。滴下終了後、90〜100℃で30分間過熱還流した。その後、室温まで撹拌しながら冷却して、薄黄色透明な酸化チタン換算濃度5重量%のゾルを得た。この溶液の可視光透過率(550nm)は、75%であった。
【0156】
【表2】

【0157】
(実施例11)
ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド(日本曹達(株)製TBZR:純度87%、酸化ジルコニウム換算濃度32.2重量%)10.8gを4つ口フラスコ中で、トルエン溶液46.9gに溶解し、窒素ガス置換した後に、エタノール/液体窒素バス中で−80℃に冷却した。別に、イオン交換水0.812g(HO/Zr=1.6モル比)を2−ブタノール7.30gに混合後、−80〜−70℃に冷却した状態で、上記四つ口フラスコ中へ撹拌しながら滴下した。滴下中は、フラスコ内の液温を−80〜−70℃に維持した。
滴下終了後、30分間冷却しながら撹拌後、室温まで撹拌しながら昇温して加水分解を行い、無色透明な酸化ジルコニウム換算濃度5重量%のゾルを得た。この溶液の可視光透過率(550nm)は、88%であった。
【0158】
(実施例12)
実施例11で得られた溶液をロータリーエバポレーターで、バス温度50℃で濃縮し、酸化ジルコニウム換算濃度43重量%の粘稠性液体を得た。この液体にトルエン溶媒を加えたところ、再溶解した。
【0159】
(実施例13)
タンタルペンタエトキシド(高純度化学研究所(株)製:純度99%、酸化タンタル換算濃度54.4重量%)9.12gを4つ口フラスコ中で、トルエン42.1g、エタノール42.1gの混合溶液に溶解し、窒素ガス置換した後に、エタノール/液体窒素バス中で−80℃に冷却した。別に、イオン交換水0.652g(HO/Ta=1.6モル比)をトルエン2.96g、エタノール2.96gの混合溶媒に混合後、−80〜−70℃に冷却した状態で、上記四つ口フラスコ中へ撹拌しながら滴下した。滴下中は、フラスコ内の液温を−80〜−70℃に維持した。滴下終了後、30分間冷却しながら撹拌後、室温まで撹拌しながら昇温して加水分解を行い、無色透明な酸化タンタル換算濃度5重量%のゾルを得た。この溶液の可視光透過率(550nm)は、88%であった。
【0160】
(実施例14)
実施例13で得られた溶液をロータリーエバポレーターで、バス温度50℃で濃縮し、酸化タンタル換算濃度64.5重量%の粘稠性液体を得た。この液体にトルエン溶媒を加えたところ、再溶解した。
【0161】
(実施例15)
インジウムトリイソプロポキシド(高純度化学研究所(株)製:純度99%、酸化インジウム換算濃度47.4重量%)5.00g、スズテトライソプロポキシド・イソプロパノール付加物(アヅマックス(株)製:純度99%、二酸化スズ換算濃度42.6重量%)0.79gを4つ口フラスコ中で、トルエン溶液44.5gに溶解し、窒素ガス置換した後に、エタノール/液体窒素バス中で−80℃に冷却した。別に、イオン交換水0.370g(HO/(In+Sn)=1.08モル比)をイソプロパノール3.33gに混合後、−80〜−70℃に冷却した状態で、上記四つ口フラスコ中へ撹拌しながら滴下した。滴下中は、フラスコ内の液温を−80〜−70℃に維持した。滴下終了後、30分間冷却しながら撹拌後、室温まで撹拌しながら昇温して加水分解を行い、黄色透明な金属酸化物(In、SnO)換算濃度5重量%の酸化インジウム、酸化スズの混合ゾルを得た。この溶液の可視光透過率(550nm)は、75%であった。
【0162】
(実施例16)
実施例15で得られた溶液をロータリーエバポレーターで、バス温度50℃で濃縮し、金属酸化物換算濃度70重量%の濃縮物を得た。この濃縮物にトルエン溶媒を加えたところ、再溶解した。
【0163】
(実施例17)
チタンテトライソプロポキシドの部分加水分解物(チタンイソプロポキシド1モルに対して0.9モルの比で水を添加して加水分解した生成物)66.84gを4つ口フラスコ中で、トルエン402.74gに溶解し、窒素ガス置換した後に、エタノール/液体窒素バス中で−80℃に冷却した。別にイオン交換水3.38gをイソプロパノール30.42gに混合後、−80〜−70℃に冷却した状態で、上記4つ口フラスコ中へ撹拌しながら滴下した。滴下中は、フラスコ内の液温を−80〜−70℃に維持した。滴下終了後、30分間冷却しながら撹拌後、室温まで撹拌しながら昇温して加水分解を行い、無色透明な酸化チタン換算濃度5重量%のゾルを得た。この溶液の可視光透過率(550nm)は92%であった。
【0164】
(実施例18)
実施例17で得られた溶液をロータリーエバポレーターで、バス温度50℃で濃縮し、酸化チタン換算濃度52.3重量%の粘稠液体を得た。この液体にトルエン溶媒を加えたところ、再溶解した。
【0165】
(実施例19)
実施例1で調製したチタンイソプロポキシドの加水分解物を含むテトラヒドロフラン溶液3.0gを、ドライアイスを加えたメタノール浴(約−74℃)で冷却し、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン(DMMD)4.2gと2,5−ビス(イソシアナートメチル)−1,4−ジチアン(BIMD)4.6gを含むテトラヒドロフラン溶液に撹拌しながら滴下・混合した。混合後、徐々に室温に戻した後、ジラウリン酸ジブチルスズ(ナカライテスク社製)0.06gを加えて撹拌した。その後、溶媒留去、脱泡を行った。これを、ガラス製成形型に注入し型を密閉した後、室温から120℃まで徐々に昇温して24時間加熱重合させ、その後室温まで冷却し成形型から取り出し、透明な塊状体が得られた。このとき得られた塊状体の屈折率をアッベ屈折率計により求めた。屈折率の値を第3表に示した。
【0166】
(実施例20)
実施例1で調製したチタンイソプロポキシドの加水分解物を含むテトラヒドロフラン溶液を1.5g用いる以外は、実施例19と同様に行い、その結果を第3表にまとめて示した。
【0167】
(比較例4)
実施例19でチタンイソプロポキシドの加水分解物を含むテトラヒドロフラン溶液を用いない以外は実施例19と同様に行った。このとき得られた塊状体の屈折率を第3表に示した。
【0168】
【表3】

【0169】
(実施例21)
チタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)製A−1:純度99.9%、酸化チタン換算濃度28重量%)3.56g(12.5mmol)を4つ口フラスコ中で、テトラヒドロフラン12gに溶解し、窒素ガス置換した後に、ドライアイスを加えたメタノール浴(約−74℃)で冷却した。20分程度冷却した後、テトラヒドロフラン4gで希釈した蒸留水(蒸留水として0.36g:20mmol)を撹拌しながら加えた。この時の添加水量は、HO/Ti=1.6モル比であった。その後徐々に室温に戻すと淡い黄色透明のチタンイソプロポキシドの加水分解物を含むテトラヒドロフラン溶液が得られた。この溶液を窒素ガス置換した状態のまま再びドライアイスを加えたメタノール浴で冷却した。他方、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン(DMMD)1.0gと2,5−ビス(イソシアナートメチル)−1,4−ジチアン(BIMD)1.0g及びジラウリン酸ジブチルスズ0.025gをテトラヒドロフラン5.0gに加えたものを60℃の温浴で1時間振とう撹拌させて粘稠なDMMDとBIMDの重合体を含むテトラヒドロフラン溶液を調製した。この粘稠な重合体を含むテトラヒドロフラン溶液を先ほどの冷却したチタンテトライソプロポキシドの加水分解物を含むテトラヒドロフラン溶液に10分かけて滴下した。その後冷却したまま30分撹拌した後、ドライアイスを加えたメタノール浴を取り除いてゆっくりと室温に戻すと淡黄緑色透明のテトラヒドロフラン溶液を得た。溶液中の固形分濃度は11.1重量%であり、全固形分に対するチタンの酸化物換算濃度は、58.2モル%であった。
この透明溶液に30mm×15mmのシリコンウエハーを浸漬して毎秒0.1mmの速さで垂直に引き上げてシリコンウエハー上に透明な薄膜を形成した。この薄膜の反射スペクトルをLitho Tech Japan製FILMETRICS FシリーズモデルF20を用いて測定し、そのスペクトルを光学定数を変えたときに得られるシミュレーションスペクトルと重ね合せることによって、この薄膜の膜厚と633nmにおける屈折率を測定した。この時の膜厚と屈折率を第4表に示す。
【0170】
(実施例22)
テトラヒドロフランの代わりにトルエンを用いて実施例21と同様の方法でチタンテトライソプロポキシドの加水分解物を含むトルエン溶液を調製した以外は、実施例21と同様に行ない、無色透明の溶液を得た。
この透明溶液を実施例21と同様の方法で膜厚と屈折率を測定した。結果を第4表に示す。
【0171】
【表4】

【0172】
(実施例23)
蒸留水の希釈剤としてテトラヒドロフランに代えてイソプロパノールを用いて実施例21と同様の方法でチタンテトライソプロポキシドの加水分解物を含む溶液を調製した以外は、実施例21と同様に行ない、透明の溶液を得た。
この透明溶液を実施例21と同様の方法で膜厚と屈折率を測定した。その結果膜厚は134nmで屈折率は1.87であった。
【0173】
(実施例24)
実施例1と同様にして調製されたテトラヒドロフラン溶液をバーコーター(No.5)で、ガラス基板上に成膜し、150℃で30分間乾燥し、厚さ0.1μmの酸化チタン膜を得た。この膜の水に対する接触角は、42°であった。この膜に、15Wのブラックライトにより近紫外光を1時間照射した所、接触角は12°まで低下し、良好な親水性を示した。紫外線照射により残留しているイソプロポキシ基が脱離したためと考えられる。
【0174】
(実施例25)
実施例17で得られた溶液をバーコーター(No.5)でガラス基板上に成膜し、150℃で30分間乾燥し、厚さ0.1μmの酸化チタン膜を得た。この膜の水に対する接触角は28°であった。この膜に15Wのブラックライトにより2mW/cm近紫外光を1時間照射したら、接触角は3°まで低下し、良好な親水性を示した。XPS装置(Quantum2000)(アルバックファイ(株)製)による薄膜の元素分析では、紫外線照射後の膜中の炭素元素濃度(式I)は5%以下であった。
式(I) 炭素元素濃度=(炭素元素濃度)/(炭素元素濃度+チタン元素濃度+酸素元素濃度)×100
【0175】
(実施例26)
実施例17で得られた溶液270gと光触媒チタニアゾル(テイカ(株)製TKS−251)をトルエンで固形分5重量%になるように希釈した溶液30gを混合した溶液を調製した。ガラス基板と金属アルミ基盤上に、この溶液をディップにより成膜し、100℃で乾燥すること、厚み0.3μmの膜を調製した。
この膜の光触媒活性を調べるために、膜上にサラダオイルを約0.1mg/cmになるように塗布後、2mW/cmの強度の紫外線をブラックライトにより照射した。第5表に結果を示す。サラダオイルが短時間で分解され、高い光触媒活性を示した。
【0176】
【表5】

【0177】
(実施例27)
実施例13と同様にして調整されたトルエン溶液をバーコーター(No.5)で、金電極をコートしたガラス基板上に成膜し、150℃で30分間乾燥し、厚さ0.1μmの酸化タンタル膜を得た。この膜の上に金電極をスパッター法で付け、膜の誘電率を測定した。膜の誘電率は18であった。
【0178】
(実施例28)
実施例15で得られた溶液に、ITO微粒子(住友金属製)をITO換算で5重量%添加した後、バーコーター(No.7)で、PET基板上に成膜し、120℃で30分間乾燥し、厚さ0.2μmの膜を得た。この膜に高圧水銀ランプで紫外線を10分間照射した。膜の面抵抗値は、350Ω/□であった。
【0179】
(実施例29〜34)
アクリルシリコン樹脂(鐘淵化学製ゼムラックYC3918)と実施例3と同様にして調製したチタニアゾルとを第6表に示す各比率で混合し、固形分濃度10重量%(樹脂固形分重量と酸化チタンに換算した重量の合計)のトルエン溶液を調製した。この溶液を各種基板にバーコーター(No.12)でコートし、ハイブリッド膜を得た。得られた膜の特性を第6表にまとめて示した。全て透明なハイブリッド膜が得られた。
【0180】
(比較例5)
酸化チタンとして、チタンテトライソプロポキシドを用いた以外、実施例30と同様の操作で成膜した。その結果について第6表にまとめて示す。膜が白化してしまい透明な膜が得られなかった。
【0181】
【表6】

【0182】
(実施例35)
1リットルの4つ口フラスコ中で、チタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)製A−1:純度99.9%、酸化チタン換算濃度28重量%)130g(0.46mol)を、トルエン(ナカライテスク社製)481gに溶解し、内部を窒素ガス置換した後に、全容をドライアイスを加えたメタノール浴(約−40℃)で冷却した。一方、蒸留水(ADBANTEC GS−200より採水)12.4g(0.69mol)を脱水イソプロパノール122g(水分:3.6ppm)に溶解した溶液を冷却可能な滴下ロートに仕込み、ドライアイスを加えたメタノールにて約−40〜−35℃に冷却した。次いで、この冷却した水−イソプロピルアルコール溶液を、チタンテトライソプロポキシドのトルエン溶液中に1.5時間かけて滴下した。この間、反応液を約−40〜−35℃に保持した。
滴下終了後、同温度で1時間撹拌した後、室温で2時間さらに撹拌し、80〜82℃で2時間還流して、透明なチタンテトライソプロポキシドの加水分解重合体溶液(酸化チタン換算濃度:5重量%のゾル、以下「ゾル液1」という)を得た。この溶液の光透過率50%の光の透過波長は358nmであった。またゾルは、平均粒径4.5nmでシャープな単分散の粒径分布を有していた。
得られたゾル液1に含まれるゾルの粒径分布を図4に示す。図4中、横軸は粒径(nm)、縦軸はピーク強度(intensity(%))をそれぞれ示す。
【0183】
(実施例36)
実施例1で得たゾル液1をロータリーエバポレーターで完全に濃縮して、酸化チタン換算濃度50重量%の粉末とした。この粉末3.45mgを採取し、熱重量分析を行なった結果、255℃に吸熱ピーク温度、355℃に発熱ピーク温度が観測された。熱重量分析の測定結果を図5に示す。図5中、横軸は測定温度(Temperature/℃)、縦軸(右)は重量減少率(Weight/%)、縦軸(左)は熱量の変化(heat Flow/μV)をそれぞれ示す。また、▲1▼は温度変化に対する重量変化、▲2▼は温度変化に対する熱量変化をそれぞれ示す。
【0184】
(実施例37)
実施例1で得た溶液を、表面がオゾン処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)基板上に、No.3のバーコーターを用いて塗布し、100℃で10分間乾燥して、該基板上に酸化チタン膜を形成して、酸化チタン膜付のPET基板を得た。SPM装置(セイコーインスツルメント社製、SPA−400(SII))を用いて、酸化チタン膜表面の形状を測定したところ、その表面の平均粗さは5nm以下であり、平滑性に優れていることがわかった。
【0185】
(実施例38)
2リットルの四つ口フラスコ中で、チタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)製A−1:純度99.9%、酸化チタン換算濃度28重量%)88.3g(0.31mol)を、トルエン(ナカライテスク社製)327gに溶解し、内部を窒素ガス置換した後に、全容をドライアイスを加えたメタノール浴(約−75℃)で冷却した。そこへ、別途調製したイソプロパノール76gで希釈したイオン交換水8.5g(HO/Ti=1.5mol/mol)の混合溶液を撹拌しながら90分間で滴下した。滴下中のフラスコの液温を−75〜−70℃に保持した。滴下終了後、−70℃で30分間撹拌した後、更に3時間かけて室温まで昇温して1時間撹拌したところ無色透明の液体を得た。この液体(反応液)を90〜100℃で2時間還流して無色透明な酸化チタン換算濃度5重量%のゾル(以下、「ゾル液2」という)を得た。ゾル液2には、1次粒子の平均粒径5.3nm、2次粒子の平均粒径28.5nm、3次粒子の平均粒径187nmからなる粒径と広範囲の粒度分布を有する粒子の複合物からなるゾルの溶液であった。ゾル液2に含まれるゾルの粒径分布を図6に示す。図6中、横軸は粒径(nm)、縦軸は(f(Is(%))をそれぞれ示す。
【0186】
(実施例39)
チタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)製A−1:純度99.9%、酸化チタン換算濃度28重量%)17.79g(62.6mmol)と脱水トルエン65.31gをフラスコ中で窒素ガス雰囲気下に混合攪拌し溶解した(液温18℃)。そこへ水1.69g(93.9mmol)と脱水イソプロパノール30.42gと脱水トルエン30.42gの混合物(水の濃度は、イソプロパノールとトルエンの混合溶媒に対する水の飽和溶解度の22%)を液温18〜20℃で撹拌しながら2時間かけて滴下すると淡い黄色透明のチタンイソプロポキシドの加水分解物を含むイソプロパノールトルエン溶液が得られた。この時の添加水量は、HO/Ti=1.5モル比であった。液温18℃でさらに1.5時間攪拌すると黄色が少し強くなり、その後2.5時間還流すると無色の透明液となっ
た。
上記のように調製した溶液のUV特性をした。UV測定は脱水トルエン95.73g/脱水IPA30.42g混合液をベースラインとして測定し、各溶液の酸化物濃度は約3.4%で測定した。その結果を第7図に示した。第7図にはチタンテトライソプロポキシドのUV特性をも併記した。両者を比較すると、低温加水分解物は、チタンテトライソプロポキシドに比してUVカット性が優れており、Ti−O−Ti結合が成長していることがわかった。
【0187】
(実施例40)
実施例1で得られた無色の透明液をロータリーエバポレーターで、バス温度50℃で減圧濃縮したところ上部がパリパリにねっている粘調性液体を得た。この液体は、脱水トルエンまたは脱水テトラヒドロフラン、脱水ジエチルエーテルにすんなり再溶解し、脱水イソプロパノールにはこれらに比べて溶けにくいが溶解させることができた。
【0188】
(実施例41)
チタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)製A−1:純度99.9%、酸化チタン換算濃度28重量%)178g(0.63mol)を4つ口フラスコ中で、テトラヒドロフラン654gに溶解し、窒素ガス置換した後に、ドライアイスを加えたメタノール浴(約−15℃)で冷却した。別に調整したテトラヒドロフラン91gで希釈したイオン交換水10.1g(HO/Ti=0.9mol/mol)の混合溶液を撹拌しながら90分間で滴下した。滴下中のフラスコの液温を−15〜−10℃に保持した。滴下終了後、−10℃に30分間保持し、更に室温まで昇温して1時間撹拌を継続して無色透明の液体を得た。次にドライアイスを加えたメタノール浴で約−80℃に冷却して、テトラヒドロフラン61gで希釈したイオン交換水6.8g(HO/Ti=0.6mol/mol)の混合溶液を撹拌しながら90分間で滴下した。滴下終了後、3時間要して室温に昇温した。この溶液を90〜100℃で2時間還流して無色透明な酸化チタン換算濃度5重量%のゾルを得た。この溶液の光透過率50%の光の透過波長は、358nmであった(図8)。また、ゾルは、平均粒径6.5nmでシャープな単分散の粒度分布を示した(図9)。
【0189】
(実施例42)
実施例41で得られた溶液をロータリーエバポレーターで、バス温度50℃で減圧濃縮し、酸化チタン換算濃度56.2重量%の白色固体を得た。この液体にトルエン溶媒を加えると再溶解した。再溶解後の透明溶液は、平均粒径7.0nmの単分散ゾルであった。
【0190】
(実施例43)
実施例41で得られた溶液をロータリーエバポレーターで酸化チタン換算濃度30重量%の溶液とした。この黄色粘調性液体3.45mgを採取し熱重量分析を行なった結果、247℃に吸熱ピーク温度、357℃に発熱ピーク温度が観測された。(図10)
【0191】
(実施例44)
実施例41で得られた溶液を表面をオゾン処理したポリエチレンテレフタレート(PET)基板上に、No.3のバーコーターを用いて塗布し、100℃、10分間乾燥し、該基板上に金属酸化物膜を形成した。SPM装置(セイコーインスツルメント社製、SPA−400(SII))を用いて該膜表面の形状を測定したところ、その表面の平均粗さは、5nm以下であり、本発明の金属酸化物膜の表面が平滑であることがわかった。(図11)
【0192】
(実施例45)
チタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)製A−1:純度99.9%、酸化チタン換算濃度28重量%)530g(1.86mol)を4つ口フラスコ中で、トルエン1960gに溶解し、窒素ガス置換した後に、ドライアイスを加えたメタノール浴(約−15℃)で冷却した。別に調整したイソプロパノール274gで希釈したイオン交換水30.4g(HO/Ti=0.9mol/mol)の混合溶液を撹拌しながら90分間で滴下した。滴下中のフラスコの液温を−15〜−10℃に保持した。滴下終了後、−10℃に30分間保持し、更に室温まで昇温して1時間撹拌を継続して無色透明の液体を得た。
次にドライアイスを加えたメタノール浴で約−80℃に冷却して、イソプロパノール183gで希釈したイオン交換水20.3g(HO/Ti=0.6mol/mol)の混合溶液を撹拌しながら90分間で滴下した。滴下終了後、3時間要して室温に昇温した。この溶液を90〜100℃で2時間還流して無色透明な酸化チタン換算濃度5重量%のゾルを得た。この溶液の光透過率50%の光の透過波長は、358nmであった(図8)。また、ゾルは、平均粒径5.6nmでシャープな単分散の粒度分布を示した(図12)。
【0193】
(実施例46)
実施例45で得られた溶液をロータリーエバポレーターで、バス温度50℃で減圧濃縮し、酸化チタン換算濃度54.8重量%の白色固体を得た。この液体にトルエン溶媒を加えると再溶解した。再溶解後の透明溶液は、平均粒径6.1nmの単分散ゾルであった。
【0194】
(実施例47)
チタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)製A−1:純度99.9%、酸化チタン換算濃度28重量%)88.3g(0.31mol)を4つ口フラスコ中で、トルエン327gに溶解し、窒素ガス置換した後に、ドライアイスを加えたメタノール浴(約−75℃)で冷却した。別に調整したイソプロパノール76gで希釈したイオン交換水8.5g(HO/Ti=1.5mol/mol)の混合溶液を撹拌しながら90分間で滴下した。滴下中のフラスコの液温を−75〜−70℃に保持した。滴下終了後、−70℃に30分間保持し、更に3時間要して室温まで昇温後1時間撹拌を継続して無色透明の液体を得た。この溶液を90〜100℃で2時間還流して無色透明な酸化チタン換算濃度5重量%のゾルを得た。この溶液は、1次粒子の平均粒径5.3nm、2次粒子の平均粒径28.5nm、3次粒子の平均粒径187nmからなる粒径と広範囲の粒度分布を有する粒子の複合物からなるゾルであった(図13)。
【0195】
(実施例48)
(1)[金属酸化物膜形成溶液の調製]
(i)窒素ガス置換した4つ口フラスコ中で、チタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)製A−1)530gをトルエン1960gに溶解し、エタノール/ドライアイスバスで−15℃に冷却した。別に、イオン交換水30.4g(モル比(HO/Ti)=0.9)をイソプロパノール274gに混合し、上記4つ口フラスコ中へ攪拌しながら90分かけて滴下し、加水分解を行なった。滴下中は、フラスコ内の液温を−15〜−10℃に維持した。滴下終了後−10℃で30分間、室温まで昇温した後1時間攪拌を続け、無色透明の液体を得た。次にこの溶液をエタノール/ドライアイスバスで−80℃に冷却し、イオン交換水20.3g(モル比(HO/Ti)=0.6)とイソプロパノール183gの混合溶液を90分かけて攪拌滴下した。滴下終了後、3時間かけて室温に戻した。この溶液を90〜100℃で2時間還流し、無色透明な溶液(C−1)を得た。溶液中の固形分濃度は、酸化チタン換算で5重量%であった。また、ゾルの平均粒径は5.6nmと粒径分布のシャープな単分散性を示した。
(ii)チタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)製A−1:純度99%、酸化チタン換算濃度28.2重量%)12.4gを4つ口フラスコ中で、トルエン45.0gに溶解し、窒素ガス置換した後に、エタノール/液体窒素バス中で−80℃に冷却した。別に、イオン交換水1.26g(モル比(水/Ti原子)=1.6)をイソプロパノール11.3gに混合後、−80〜−70℃に冷却した状態で、上記4つ口フラスコ中へ攪拌しながら滴下した。滴下中は、フラスコ内の液温を−80〜−70℃に維持した。滴下終了後、30分間同温度で攪拌後、室温まで攪拌しながら昇温して、無色透明な溶液(C−2)を得た。溶液の固形分濃度は酸化チタン換算で5重量%であった。さらに無水トルエンで希釈して、無色透明な溶液(C−3)を得た。溶液の固形分濃度は、酸化チタン換算で1重量%であった。
(iii)ジルコニウムテトラn−ブトキシド(日本曹達(株)製TBZR:純度87%、酸化ジルコニウム換算濃度32.2重量%)10.8gを4つ口フラスコ中で、トルエン溶液46.9gに溶解し、窒素ガス置換した後に、エタノール/液体窒素バス中で−80℃に冷却した。別に、イオン交換水0.812g(モル比(HO/Zr)=1.6)を2−ブタノール7.30gに混合後、−80〜−70℃に冷却した状態で、上記四つ口フラスコ中へ攪拌しながら滴下し、加水分解を行なった。滴下中は、フラスコ内の液温を−80〜−70℃に維持した。滴下終了後、30分間冷却しながら攪拌後、室温まで攪拌しながら昇温して、無色透明な溶液(C−4)を得た。得られた溶液中の固形分濃度は、酸化ジルコニウム換算で5重量%であった。さらに、無水トルエンで希釈して、無色透明な溶液(C−5)を得た。得られた溶液の固形分濃度は、酸化ジルコニウム換算で1重量%であった。
【0196】
(2)[単分子膜形成溶液の調製]
(i)ヘプタデカトリフルオロデシルトリメチキシシラン(FAS−17:信越化学工業社製)を無水トルエンで希釈して、固形分濃度0.5重量%の溶液(C−6)を得た。
(ii)ヘプタデカトリフルオロデシルトリメトキシシラン(FAS−17:信越化学工業社製)を脱水トルエンで希釈して得た5重量%のFAS−17溶液100gに溶液(C−1)3.36gを混合し、30分間攪拌した。この溶液に、イオン交換水を飽和させたトルエン溶液900gを滴下し、滴下終了後、2時間攪拌し、加水分解を行った。この溶液をろ過し、溶液(C−7)を得た。
【0197】
(3)単分子膜の製造
溶液(C−1)を用い、超音波洗浄した表面の平均粗さが2nmであるソーダライムガラス基板上に、No.3のバーコータを用いて塗布し、150℃で30分間乾燥して、ガラス基板上に薄膜を形成した。SPM装置(セイコーインスツルメント社製、SPA−400(SII))を用いて薄膜表面の形状を測定したところ、その表面の平均粗さは、2.5nmであり、本発明の金属酸化物膜の表面が平滑であり、単分子膜を効率よく生成させるのに好適であることがわかった。(図14)
上記のようにして得られた金属酸化物膜付きの基板を、オゾンガス洗浄を2分間した後、溶液(C−6)に10分間浸漬後、60℃、10分間乾燥し、FAS−17よりなる化学吸着膜を成膜した。FAS−17膜表面にマイクロシリンジから水、トルエン(Tol)、イソプロピルアルコール(IPA)を5μlを滴下し、60秒後に、接触角測定器(エルマ(株)社製、360S型)を用いて接触角を測定したところ、106°(水)、62°(トルエン)、40°(IPA)であり、十分に撥水性を示した。また、表面の平均粗さは、2.3nmであったことから、FAS−17膜は、基板表面上に緻密に形成されていることがわかった。
FAS−17よりなる化学吸着膜中の元素をXPS装置(Quntum2000、アルバックファイ(株)製)を用いて、分析したところ、フッ素原子と炭素原子のモル比(F/C)が、1.72であり、加水分解がすべて進行した場合の理論値1.70とよい一致をみた。また、該自己組織化膜の深さ方向の元素組成分析結果から、FAS−17よりなる化学吸着膜は、膜厚2nmの薄い単分子膜の形成が示唆された。(図15及び図16)また、金属酸化物膜中に炭素を殆ど含まれておらず、200℃以下の低温処理でも有機物を含まない膜が得られていた。
また、上記FAS−17よりなる化学吸着膜上に2mW/cmの強度の245nmのUVを3時間照射した後の接触角の変化を測定したところ、3時間後において、3.5°(水)、0°(トルエン)、0°(IPA)となった。このことは、UV照射により、基
板上のFAS−17が脱離し、酸化チタン膜が露出したことを意味しており、UV等のエネルギーを特定の位置に照射することにより、容易に特定のパターンを形成できることを示唆していると言える。
【0198】
(実施例49〜56)
実施例48と同様に、表7に示す必要に応じて表面オゾン処理を施した基板上に、所定の示すバーコータNoを用いて成膜し、所定の乾燥温度で乾燥し、金属酸化物膜を得た。また表7に示す所定の方法により調整した溶液を用い、さらに、表7に示す所定の金属系界面活性剤溶液を用いて、所定の時間浸漬させる以外は、実施例48と同様に行い金属酸化物膜上に自己組織化膜からなる単分子膜を製造した結果を、実施例48の結果と合わせて第7表にまとめて示す。ポリエステル(PET)基板及びアクルル基板において密着性、接触角の良好な自己組織化膜からなる単分子膜が得られた。
【0199】
(比較例6〜8)
第7表に示す所定の基板上に、チタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)製A−1:純度99%、酸化チタン換算濃度28.2重量%)をエタノールで希釈した酸化チタン濃度が0.5重量%の溶液(C−8)を用いて金属酸化物膜を形成する以外に、実施例48と同様にして単分子膜を製造した。その結果をまとめて表7に示す。ポリエステル(PET)基板及びアクルル基板では、金属酸化物膜の密着性が悪く、膜の剥離がみられた。ガラス基板では、自己組織化膜からなる単分子膜の形成が不十分で十分な撥水性を得ることができなかった。
【0200】
(比較例9、10)
酸化チタン微粒子ゾル溶液(石原産業STS−01、粒子系7nm、C−9)をエタノールで1重量%に希釈した溶液を用い、実施例48と同様に、アクルル基板または超音波洗浄した表面の平均粗さが2nmであるソーダライムガラス基板上に、No.3のバーコータを用いて塗布し、150℃で30分間乾燥して、各基板上に薄膜を形成した。その結果をまとめて第7表に示す。SPM装置(セイコーインスツルメント社製、SPA−400(SII))を用いて薄膜表面の形状を測定したところ、金属酸化物膜の表面の平均粗さは、45nmであり、密着性および耐摩耗性の劣る膜であった。(図17)
【0201】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0202】
以上述べたように、本発明の金属−酸素結合を有する分散質を用いることにより、均一で透明な有機−無機複合体、及び金属酸化物膜を製造することができ、そのような物質は、光学材料等として広く利用されることから、本発明の産業上の利用価値は高いといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3以上の加水分解性基を有する金属化合物と所定量の水を、酸、塩基、及び分散安定化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の非存在下に、所定温度で混合して得られてくる金属−酸素結合を有する分散質において、該所定量の水が、炭化水素系溶媒、及びアルコール系溶媒で希釈された溶液であり、該希釈された溶液を、該金属化合物に添加し、さらに該所定温度が、室温であることを特徴とする金属−酸素結合を有する分散質。
【請求項2】
所定量が、該金属化合物総モル数に対し0.5倍モル以上2.0倍モル未満である請求項1に記載の金属−酸素結合を有する分散質。
【請求項3】
該希釈された溶液中の水の濃度が、炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒の混合溶媒に対する水の飽和溶解度の40%から1%ある請求項1または2に記載の金属−酸素結合を有する分散質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図11】
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【図14】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−136428(P2012−136428A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−62286(P2012−62286)
【出願日】平成24年3月19日(2012.3.19)
【分割の表示】特願2005−505670(P2005−505670)の分割
【原出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】