説明

金属と樹脂との複合体及びその製造方法

【課題】金属よりなる金属部と樹脂よりなる樹脂部とが接着剤を用いることなく強固に接着された金属と樹脂との複合体及びこの金属と樹脂との複合体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】金属よりなる金属部20と樹脂よりなる樹脂部30とが接着された金属と樹脂との複合体10であって、金属部20は表面にカルボキシル基及びアミノ基の少なくとも一方が付与されたものであり、樹脂30はエポキシ基を含む接着性改質剤が配合されたものであり、カルボキシル基及びアミノ基の少なくとも一方とエポキシ基との相互作用により、金属部20と樹脂部30とが接着されていることを特徴とする金属と樹脂との複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属よりなる金属部と樹脂よりなる樹脂部とが接着された複合体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、異なる材料を接着させ、それらの材料の特性を生かしたさまざまな複合材料が開発されている。特に、金属と樹脂とは互いの特性が大きく異なることから、これらからなる複合材料は、今までにない特徴を有しているため、今後、より用途が拡大していくものと思われる。
【0003】
金属と樹脂とからなる複合材料において、金属と樹脂とを接着する方法としては、一般的に、金属表面に凹凸を形成し、その凹凸によるアンカー効果により金属と樹脂とを接着する方法や、接着剤を介して金属と樹脂とを接着する方法等がある。なお、接着剤としては、特許特許文献1に記載のようなものがある。
【0004】
しかし、アンカー効果による接着は、接着力が弱く、特に、温度の昇降を繰り返すサーマル試験を行うと、金属と樹脂とが界面で破断してしまう問題があった。また、接着剤を介する接着は、界面に接着剤層を形成する必要があり、工程数が多くなる問題があった。
【0005】
上記以外の方法として、特許文献2に記載のように、エポキシ樹脂をポリアリーレンサルファイド系樹脂中に配合して、金属と樹脂とを接着する方法や、特許文献3に記載のように、金属表面にエポキシ樹脂を熱変性させた膜を形成し、金属と樹脂とを接着する方法が提案されている。しかし、これらの方法では、十分な接着性を確保することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−273168号公報
【特許文献2】特開平5−214071号公報
【特許文献3】特開2004−58646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、金属よりなる金属部と樹脂よりなる樹脂部とが接着剤を用いることなく強固に接着された金属と樹脂との複合体及びこの金属と樹脂との複合体の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
ここで、金属部と樹脂部とが強固に接着されているとは、両部を相反する方向に引張った場合に、両部からなる複合体の破断が両部の界面で生じないように、両部が接着されていることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の金属と樹脂との複合体は、金属よりなる金属部と樹脂よりなる樹脂部とが接着された金属と樹脂との複合体であって、前記金属部は表面に極性官能基が付与されたものであり、前記樹脂は前記極性官能基と相互に作用し合う接着性官能基を含む接着性改質剤が配合されたものであり、前記極性官能基と前記接着性官能基との相互作用により、前記金属部と前記樹脂部とが接着されていることを特徴とする。
【0010】
ここで、表面に極性官能基が付与される態様には、表面(金属)との化学結合等により、極性官能基が直接表面に設けられて、極性官能基が付与される態様と、極性官能基を含む化合物の層が表面に形成されて、極性官能基が付与される態様とがある。そして、本明細書において、表面に極性官能基が付与されるとは、この両方の態様が含まれる。
また、極性官能基と接着性官能基との相互作用は、極性官能基と接着性官能基との間に働く化学結合であり、具体的には、水素結合、共有結合、イオン結合、ファンデルワールス結合等である。
【0011】
また、上記課題を解決するため、本発明の金属と樹脂との複合体の製造方法は、金属よりなる金属部と樹脂よりなる樹脂部とが接着された金属と樹脂との複合体の製造方法であって、前記金属部の表面に極性官能基を付与する表面処理と、前記樹脂に前記極性官能基と相互に作用し合う接着性官能基を含む接着性改質剤を配合して成形材料とする配合処理とを行った後、前記成形材料を用いて、前記金属部と接するように前記樹脂部を成形し、もって、前記極性官能基と前記接着性官能基との相互作用により、前記金属部と前記樹脂部とを接着させることを特徴とする。
【0012】
本発明における各要素の態様を以下に例示する。
【0013】
1.金属部
金属部の態様としては、特に限定はされないが、板状、箔状、塊状等が例示でき、複合体の用途にあわせて、加工機等により、予め所定形状に形成されていてもよいし、樹脂部との接着後に所定形状に形成されてもよい。
【0014】
金属部に用いられる金属としては、特に限定はされないが、銅、ニッケル、錫、金、銀、アルミニウム、鉄、マグネシウム、クロム、タングステン、亜鉛、鉛等及びこれらの合金であるステンレス、真鍮等が例示できる。
【0015】
金属部表面に付与される極性官能基としては、特に限定はされないが、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルデヒド基等が例示でき、金属部表面に付与しやすいことから、カルボキシル基及びアミノ基の少なくとも一方であることが好ましい。
【0016】
金属部表面に極性官能基を付与する表面処理方法としては、特に限定はされないが、極性官能基を含む化合物又はその誘導体等を用いた、塗布処理、フレーム処理、蒸着処理、プラズマ処理等が例示できる。
【0017】
極性官能基を含む化合物又はその誘導体としては、特に限定はされないが、カルボキシル基を含む化合物として、アクリル酸の単量体、アクリル酸の重合体、アクリル酸とマレイン酸の共重合体、メタクリル酸の単量体、メタクリル酸の重合体等が例示でき、アミノ基を含む化合物としては、アリルアミンの単量体、アリルアミンの重合体等が例示でき、カルボキシル基とアミノ基の誘導体としては、カプロラクタム、ポリアミド等が例示できる。
【0018】
2.樹脂部
樹脂部の態様としては、特に限定はされないが、板状、フィルム状、塊状等が例示でき、複合体の用途にあわせて、金属部と接するように樹脂部を成形時に、所定形状にすることが、工程の削減になって好ましい。
【0019】
樹脂部に用いられる樹脂としては、特に限定はされないが、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のエンジニアリングプラスチック、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の汎用樹脂等が例示でき、複合体の特性(耐熱性等)が向上することから、エンジニアリングプラスチックであることが好ましい。
また、樹脂は、機械的強度等を向上させるため、ガラス繊維、無機フィラー等が配合されていてもよいし、配合されていなくてもい。
【0020】
ポリフェニレンサルファイドとしては、特に限定はされないが、分子内に酸素を介して二次元又は三次元の架橋構造を有する架橋型でもよいし、分子が直鎖状になっている(構造単位が一列に繋がっている)リニア型でもよい。
【0021】
ポリアミドとしては、特に限定はされないが、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド6T(PA6T)、ポリアミド6I(PA6I)、ポリアミド9T(PA9T)、芳香族ポリアミドであるアラミド等が例示できる。
【0022】
樹脂に配合される接着性改質剤としては、特に限定はされないが、容易に樹脂と均一に混合できることが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリスチレン等を主鎖とし、スチレン系ポリマーを側鎖としたグラフト共重合体を接着性官能基で変性した化合物や、ポリエチレン、ポリスチレン等を接着性官能基で変性した化合物等が例示でき、具体的には、エチレンとスチレンとの共重合体がグリシジルメタクリレートで変性された変性エチレン−スチレン共重合体、ポリエチレンがグリシジルメタクリレートで変性された変性ポリエチレン等が例示できる。
接着性改質剤の含有量は、接着性改質剤の種類(接着性官能基の種類及び接着性改質剤中での接着性官能基の量等)によっても異なり、特に限定はされないが、樹脂と接着性改質剤との合計量100質量部に対し、5〜40質量部であることが好ましい。この値が5質量部未満では、金属部に対する樹脂部の接着性が低下し、40質量部を超えると、樹脂部を成形するときの離型性等が悪くなる。より好ましくは、10〜30質量部である。
【0023】
接着性改質剤に含まれる接着性官能基としては、特に限定はされないが、エポキシ基(グリシジル基中のエポキシ基を含む、以下同じ)、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基等が例示でき、極性官能基と反応しやすいことから、エポキシ基であることが好ましい。
樹脂と接着性改質剤との混合物(成形材料でもある)中における接着性官能基の含有量は、接着性官能基の種類によっても異なり、特に限定はされないが、樹脂と接着性改質剤との合計量の0.15〜1.2質量%であることが好ましい。この値が0.15質量%未満では、金属部に対する樹脂部の接着性が低下し、1.2質量%を超えると、樹脂部を成形するときの離型性等が悪くなる。より好ましくは、0.3〜0.9質量%である。
【0024】
樹脂に接着性改質剤を配合して成形材料にする配合処理方法としては、特に限定はされないが、一軸又は二軸の押出機等を用いて、所定温度で溶融混練し、均一にした後、ペレット状等にする方法等が例示できる。
【0025】
金属部と接するように樹脂部を成形する方法としては、特に限定はされないが、金属部と樹脂部との接着及び樹脂部の成形が一度にできることから、内部に金属部が保持されている金型を用いるインサート成形であることが好ましい。インサート成形としては、特に限定はされないが、圧縮成形、射出成形等が例示できる。
また、成形は、アニール工程を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0026】
金属部と樹脂部との接着は、金属部表面の極性官能基と樹脂部の接着性官能基との相互作用によるものと考えられる。
この相互作用は、金属部と樹脂部との界面で極性官能基及び接着性官能基の原子、電子等が互いに引き合う作用である。具体的には、極性官能基及び接着性官能基の原子間で、電子の移動・共有を伴う一次結合(イオン結合、共有結合等)と、極性官能基及び接着性官能基の中で、電子密度の偏在が生じ、両官能基同士がクローン力で引き合う二次結合(水素結合、ファンデルワールス結合等)とである。
【0027】
3.金属と樹脂との複合体
金属と樹脂との複合体の態様としては、特に限定はされないが、板状、箔状、紐状、筒状、柱状、球状、塊状等が例示できる。
金属と樹脂との複合体の用途としては、特に限定はされないが、電子・電気部品、建築土木部材、自動車部品、農業資材、梱包資材、衣料、日用品等、又はこれらを製造するための材料等が例示できる。自動車部品としては、特に限定はされないが、エンジンオイル等をシールするシール部材、ハイブリット車等のバッテリーをシールするシール部材等が例示できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、金属よりなる金属部と樹脂よりなる樹脂部とが接着剤を用いることなく強固に接着された金属と樹脂との複合体及びこの金属と樹脂との複合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の金属と樹脂との複合体の金属部と樹脂部との界面付近の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0030】
本発明の金属と樹脂との複合体10は、図1に示すように、金属からなる金属部20の表面には、カルボキシル基及びアミノ基の少なくとも一方が付与され、樹脂部30の樹脂は、エポキシ基を含む接着性改質剤が配合されており、金属部20と樹脂部30との界面における、カルボキシル基及びアミノ基の少なくとも一方とエポキシ基との化学結合により金属部20と樹脂部30とが接着されている。
【0031】
本発明の実施例として、金属部にアルミニウム(A1050)を用いた25種類を作成し、それぞれ接着性の評価を行った。また、金属部にアルミニウムを用いた15種類の比較例を作成し、それらについても接着性の評価を行った。
【0032】
本実施例の接着性の評価結果を表1に示し、比較例の接着性の評価結果を表2に示す。また、実施例又は比較例の樹脂部に用いた樹脂の種類と量、及び、樹脂に配合した接着性改質剤の種類と量も、それぞれ表1、2に示す。さらに、実施例又は比較例の金属部の表面処理に用いた化合物も、それぞれ表1、2に示す。表1、2の樹脂及び接着性改質剤の欄の単位は質量部である。接着性改質剤の欄のエポキシ基量は、接着性改質剤中のエポキシ基の部位の質量を、樹脂と接着性改質剤との合計質量で割った値である。また、表面処理の欄の○は、表面処理に用いた化合物を表す。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
本実施例及び比較例には、次の原料を用いた。
金属部は、長さ75mm、幅25mm、厚さ2mmのアルミニウム(A1050)の板であった。
樹脂は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド66(PA66)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)であった。
接着性改質剤は、エチレンとスチレンとの共重合体がグリシジルメタクリレート(GMA)で変性された変性ポリエチレン−ポリスチレン共重合体(変性PE/PS)、又は、ポリエチレンがグリシジルメタクリレート(GMA)で変性された変性ポリエチレン(変性PE)であった。また、変性ポリエチレン−ポリスチレン共重合体及び変性ポリエチレンは共に、グリシジルメタクリレートの割合が10質量%であり、エポキシ基の含有量が3質量%であった。このうち、変性ポリエチレン−ポリスチレン共重合体は、ポリエチレンを主鎖とし、スチレン系モノマーを側鎖としたグラフト共重合体に、主鎖のポリエチレンがグリシジルメタクリレート(GMA)で変性され、接着性官能基として、エポキシ基(グリシジル基)を含む化合物であった。
金属表面にカルボキシル基を付与する化合物として、アクリル酸の単量体(分子量MW:72)、アクリル酸の重合体(分子量MW:5,000〜800,000)又はアクリル酸とマレイン酸の共重合体(アクリル酸/マレイン酸共重合体、分子量MW:10,000)を用いた。
金属表面にアミノ基を付与する化合物として、アリルアミンの単量体(分子量MW:57)又はアリルアミンの重合体(分子量MW:1,000〜25,000)を用いた。
金属表面にカルボキシル基とアミノ基との両方を付与する化合物として、ポリアミドを用いた。
【0036】
各試料は、次のようにして、作成した。
・金属部の前処理
金属部は、表面を粒度#1,000のサンドペーパで擦って、油分を除去した。次いで、23℃の塩酸中に1分間浸漬して、表面のエッチングを行った。さらに、強アルカリ脱脂剤(日本パーカライジング社の「FC−E2001」)の70℃の水溶液中に1分間浸漬して脱脂を行った。
【0037】
・金属部の表面処理
上記前処理を行った金属部の表面に、それぞれの表面処理に用いる化合物を塗布した後、150℃の恒温槽中にて、10分間の乾燥処理を行い、金属部の表面にそれぞれの化合物からなる膜(層)を形成した。なお、金属部の表面処理を行わないものは、本処理は行わなかった。
【0038】
・樹脂の配合処理
接着性改質剤を樹脂に配合するため、ラボプラストミル(東洋精機製作所社の「KF70V2」)を用い、表1、2の配合割合で樹脂と接着性改質剤とを、使用した樹脂が溶融する温度(PPS:320℃、PA66:300℃、PBT:260℃)で、5分間溶融混練を行い、成形材料とした。なお、樹脂に接着性改質剤を配合しないものは、本処理は行わなかった。
【0039】
・成形
上記表面処理を行った金属部を金型内に配置した後、上記成形材料又は樹脂を金型内に入れ、成形材料に用いられている樹脂が溶融する上記温度で圧縮成形を行った。また、成形中に、次に示す条件でアニール工程を行った。
用いた樹脂がPPSのときは、金型の表面温度を150℃で3時間保持し、用いた樹脂がPA66又はPBTのときは、金型の表面温度を100℃で3時間保持した。
【0040】
上記のようにして、長さ75mm、幅15mm、厚さ3mmの板状の複合体を得た。この複合体は、縦12mm、横15mmの広さの面(面積:180mm)で、金属部の表面に接着された樹脂部を形成した。
【0041】
接着性の評価は次のようにして行った。
上記のようにして作成した複合体を、JIS K−6850(接着剤−剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法)に準拠して試験を行い、各複合体に破断を生じさせた。
金属部と樹脂部との界面で破断が生じ場合を×とし、樹脂部中で破断が生じ場合を○と評価した。
【0042】
以上の結果より、全ての実施例(1〜25)は、破断が樹脂部中で起こった。これは、金属部表面に付与された、カルボキシル基及びアミノ基の少なくとも一方と、樹脂部のエポキシ基とが化学結合していることにより、金属部と樹脂部との接着力が樹脂部の強度より高いことによる。
【0043】
一方、金属部の表面処理を行わなかった比較例1〜6(比較例4〜6は、樹脂に接着性改質剤が配合されている)は、金属部と樹脂部との界面で破断が生じた。また、樹脂に接着性改質剤を配合せず、金属部の表面処理のみを行った比較例7〜15のうち、樹脂部の樹脂がPA66以外(金属部の表面にアミノ基が付与されたものは除く)のものも、金属部と樹脂部との界面で破断が生じた。これは、金属部と樹脂部との接着力が樹脂部の強度より低いことによる。
【0044】
次に、金属部をアルミニウム(A1050)にかえて、銅(C1100)にした以外は上記実施例等と同じである、25種類の実施例と15種類の比較例を、上記実施例等と同じように作成し、それらについても上記のように接着性の評価を行った。
【0045】
本実施例の接着性の評価結果を表3に示し、比較例の接着性の評価結果を表4に示す。また、実施例又は比較例の樹脂部に用いた樹脂の種類と量、及び、樹脂に配合した接着性改質剤の種類と量も、それぞれ表3、4に示す。さらに、実施例又は比較例の金属部の表面処理に用いた化合物も、それぞれ表3、4に示す。表3、4の樹脂及び接着性改質剤の欄の単位は質量部である。接着性改質剤の欄のエポキシ基量は、接着性改質剤中のエポキシ基の部位の質量を、樹脂と接着性改質剤との合計質量で割った値である。また、表面処理の欄の○は、表面処理に用いた化合物を表す。
【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
以上の結果より、全ての実施例(26〜50)は、破断が樹脂部中で起こった。これは、金属部表面に付与された、カルボキシル基及びアミノ基の少なくとも一方と、樹脂部のエポキシ基とが化学結合していることにより、金属部と樹脂部との接着力が樹脂部の強度より高いことによる。
【0049】
一方、金属部の表面処理を行わなかった比較例16〜21(比較例19〜21は、樹脂に接着性改質剤が配合されている)は、金属部と樹脂部との界面で破断が生じた。また、樹脂に接着性改質剤を配合せず、金属部の表面処理のみを行った比較例22〜30も、金属部と樹脂部との界面で破断が生じた。これは、金属部と樹脂部との接着力が樹脂部の強度より低いことによる。
【0050】
以上より、本実施例の金属と樹脂との複合体は、金属部と樹脂部とが接着剤を用いることなく強固に接着されている。
【0051】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
【符号の説明】
【0052】
10 金属と樹脂との複合体
20 金属部
30 樹脂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属よりなる金属部と樹脂よりなる樹脂部とが接着された金属と樹脂との複合体であって、
前記金属部は表面に極性官能基が付与されたものであり、
前記樹脂は前記極性官能基と相互に作用し合う接着性官能基を含む接着性改質剤が配合されたものであり、
前記極性官能基と前記接着性官能基との相互作用により、前記金属部と前記樹脂部とが接着されていることを特徴とする金属と樹脂との複合体。
【請求項2】
前記極性官能基は、カルボキシル基及びアミノ基の少なくとも一方である請求項1記載の金属と樹脂との複合体。
【請求項3】
前記接着性官能基は、エポキシ基である請求項1又は2記載の金属と樹脂との複合体。
【請求項4】
前記接着性改質剤は、エチレンとスチレンとの共重合体がグリシジルメタクリレートで変性された変性エチレン−スチレン共重合体又はポリエチレンがグリシジルメタクリレートで変性された変性ポリエチレンである請求項3記載の金属と樹脂との複合体。
【請求項5】
前記樹脂は、エンジニアリングプラスチックである請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属と樹脂との複合体。
【請求項6】
前記エンジニアリングプラスチックは、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド又はポリブチレンテレフタレートである請求項5記載の金属と樹脂との複合体。
【請求項7】
前記金属は、アルミニウム又は銅である請求項1〜6のいずれか一項に記載の金属と樹脂との複合体。
【請求項8】
金属よりなる金属部と樹脂よりなる樹脂部とが接着された金属と樹脂との複合体の製造方法であって、
前記金属部の表面に極性官能基を付与する表面処理と、
前記樹脂に前記極性官能基と相互に作用し合う接着性官能基を含む接着性改質剤を配合して成形材料とする配合処理とを行った後、
前記成形材料を用いて、前記金属部と接するように前記樹脂部を成形し、もって、前記極性官能基と前記接着性官能基との相互作用により、前記金属部と前記樹脂部とを接着させることを特徴とする金属と樹脂との複合体の製造方法。
【請求項9】
前記表面処理は、アクリル酸の単量体、アクリル酸の重合体又はアクリル酸とマレイン酸との共重合体を用いて、前記金属部の表面に前記極性官能基としてのカルボキシル基を付与することである請求項8記載の金属と樹脂との複合体の製造方法。
【請求項10】
前記表面処理は、アリルアミンの単量体又はアリルアミンの重合体を用いて、前記金属部の表面に前記極性官能基としてのアミノ基を付与することである請求項8記載の金属と樹脂との複合体の製造方法。
【請求項11】
前記表面処理は、ポリアミドを用いて、前記金属部の表面に前記極性官能基としてのカルボキシル基及びアミノ基を付与することである請求項8記載の金属と樹脂との複合体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−173274(P2010−173274A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21017(P2009−21017)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】