金属の分離回収方法
【課題】新規な金属の分離回収方法を提供する。
【解決手段】下記化学式で表されるポリチオアミドにより、溶液中のパラジウムを吸着し、りん化合物により、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出させることにより分離回収する。ここで、溶液中での、パラジウムに対する他の金属のモル比は1〜1000の範囲内にあることが好ましい。また、ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出するには、ポリチオアミドが存する溶液に、りん化合物を添加することが好ましい。
【解決手段】下記化学式で表されるポリチオアミドにより、溶液中のパラジウムを吸着し、りん化合物により、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出させることにより分離回収する。ここで、溶液中での、パラジウムに対する他の金属のモル比は1〜1000の範囲内にあることが好ましい。また、ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出するには、ポリチオアミドが存する溶液に、りん化合物を添加することが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリチオアミドにより溶液中のパラジウムを吸着し、りん化合物により前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出する、新規な金属の分離回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大学などの研究機関から排出される有機廃液中には有機溶媒のほかに合成触媒である遷移金属錯体や貴金属、希土類元素などが含まれている場合が少なくない。それらの多くは焼却・熱分解などで処理されているが、有価金属の存在はその過程で難処理化を引き起こすだけでなく、有価金属の多くが焼却灰や飛灰に移行することからリサイクル、省資源の観点から見てもきわめて非効率的である。
【0003】
現在、廃水処理には種々のキレート樹脂やイオン交換樹脂、高分子凝集剤などの機能性高分子が用いられている。
【0004】
なお、発明者は、本発明に関連する技術内容を開示している(非特許文献1〜8参照。)。これらのうち非特許文献7,8は、特許法第30条第1項を適用できるものと考えられる。
【非特許文献1】佐藤恵美,河合自立,加賀谷重浩,神原貴樹,長谷川淳,1PB076ポリチオアミドの重金属吸着特性,日本化学会第79春季年会,平成13年3月
【非特許文献2】佐藤恵美,加賀谷重浩,神原貴樹,長谷川淳,2PC-106ポリチオアミドを用いた有機廃液中の重金属の沈殿回収,日本化学会第81春季年会,平成14年3月
【非特許文献3】加賀谷重浩,真草嶺郁美,佐藤恵美,神原貴樹,長谷川淳,P-18廃液中の有価金属の選択的回収剤の開発,富山工業高等専門学校第9回エコテクノロジーに関するアジア国際シンポジウム−富山(ASET9),平成14年12月
【非特許文献4】加賀谷重浩,真草嶺郁美,佐藤恵美,神原貴樹,長谷川淳,1PB-133ポリチオアミドによる有機廃液中のパラジウム及びニッケルの回収,日本化学会第83春季年会,平成15年3月
【非特許文献5】S. Kagaya, E. Sato, I. Masore, K. Hasegawa, and T. Kanbara, Polythioamide as a Collector for Valuable Metals from Aqueous and Organic Solutions, Chemistry Letters, Vol. 32, No. 7, pp. 622 - 623(平成15年7月)
【非特許文献6】加賀谷重浩,河合信宏,真草嶺郁美,佐藤恵美,神原貴樹,長谷川淳,P-92ポリチオアミドに吸着したパラジウムの溶出:有機廃液中パラジウムの分離・回収への応用,富山工業高等専門学校第10回エコテクノロジーに関するアジア国際シンポジウム−富山(ASET10),平成15年11月
【非特許文献7】加賀谷重浩,田中絵梨佳,河合信宏,真草嶺郁美,佐藤恵美,神原貴樹,長谷川淳,ニッケル及び白金を含む溶液からのパラジウムの分離,日本分析化学会中部支部「分析中部ゆめ21」若手交流会第4回高山フォーラム,平成16年11月26日・27日
【非特許文献8】加賀谷重浩,田中絵梨佳,河合信宏,真草嶺郁美,佐藤恵美,神原貴樹,長谷川淳,Paper#25ニッケル及び白金を含む有機溶液からのパラジウムの分離,富山工業高等専門学校第11回エコテクノロジーに関するアジア国際シンポジウム−富山(ASET11),平成16年12月3日・4日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特定の有価金属もしくは有害重金属に対して効果的に選択分離できる材料は限られている。特に、含有する有機溶媒に対して耐性を有し、かつ有価金属に対して選択的分離機能を持つものはほとんど見られない。このため、これらの課題を解決する、新規な金属の分離回収方法の開発が望まれている。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、新規な金属の分離回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の金属の分離回収方法は、一般式化15で表されるポリチオアミドの群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、溶液中のパラジウムを吸着し、一般式化20および一般式化24で表されるりん化合物の群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出する。
【0008】
ここで、限定されるわけではないが、溶液中での、パラジウムに対する他の金属のモル比は1〜1000の範囲内にあることが好ましい。限定されるわけではないが、他の金属はニッケルまたは白金であることが好ましい。限定されるわけではないが、ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出するには、ポリチオアミドが存する溶液に、りん化合物を添加することが好ましい。
【0009】
本発明の金属の分離回収方法は、一般式化16で表されるポリチオアミドの群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、溶液中のパラジウムを吸着し、一般式化21および一般式化25で表されるりん化合物の群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出する。
【0010】
ここで、限定されるわけではないが、溶液中での、パラジウムに対する他の金属のモル比は1〜1000の範囲内にあることが好ましい。限定されるわけではないが、他の金属はニッケルまたは白金であることが好ましい。限定されるわけではないが、ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出するには、ポリチオアミドが存する溶液に、りん化合物を添加することが好ましい。
【0011】
本発明の金属の分離回収方法は、化学式化27で表されるポリチオアミドにより、溶液中のパラジウムを吸着し、化学式化28で表されるりん化合物により、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出する。
【0012】
ここで、限定されるわけではないが、溶液中での、パラジウムに対する他の金属のモル比は1〜1000の範囲内にあることが好ましい。限定されるわけではないが、他の金属はニッケルまたは白金であることが好ましい。限定されるわけではないが、ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出するには、ポリチオアミドが存する溶液に、りん化合物を添加することが好ましい。限定されるわけではないが、ポリチオアミドを再利用することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
【0014】
本発明は、一般式化15で表されるポリチオアミドの群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、溶液中のパラジウムを吸着し、一般式化20および一般式化24で表されるりん化合物の群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出するので、新規な金属の分離回収方法を提供することができる。
【0015】
本発明は、一般式化16で表されるポリチオアミドの群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、溶液中のパラジウムを吸着し、一般式化21および一般式化25で表されるりん化合物の群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出するので、新規な金属の分離回収方法を提供することができる。
【0016】
本発明は、化学式化27で表されるポリチオアミドにより、溶液中のパラジウムを吸着し、化学式化28で表されるりん化合物により、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出するので、新規な金属の分離回収方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、金属の分離回収方法にかかる発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0018】
本発明の金属の分離回収方法は、ポリチオアミドにより、溶液中のパラジウムを吸着し、りん化合物により、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出する方法である。以下に、本発明の金属の分離回収方法を具体的に説明する。
【0019】
最初に、ポリチオアミドにより、溶液中のパラジウムを吸着する方法を説明する。
【0020】
ポリチオアミドは、化学式化15で表すことができる。
【0021】
【化15】
【0022】
ここで、R1,R2は二官能性の芳香族ユニット、二官能性の複素環ユニット、または二官能性の脂肪族炭化水素ユニットを示す。二官能性の芳香族ユニットは、二官能性のフェニレン、ナフチレン、フェナントリレン、アントリレン、またはビフェニルを示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。二官能性の複素環ユニットは、二官能性のピリジルジイル、チエニレン、フリレン、ピロリレン、またはキノリンジイルを示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。二官能性の脂肪族炭化水素ユニットは、炭素数が2〜10の直鎖状または分岐状の二官能性の脂肪族炭化水素を示す。炭化水素の炭素−炭素結合間に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子、またはリン原子のヘテロ原子を有していても良い。炭化水素の炭素−炭素結合間にフェニレンまたはナフチレンの二官能性の芳香族ユニットを有していても良い。
【0023】
ここで、R3は水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族置換基、または複素環置換基を示す。脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜8の直鎖状または分岐状脂肪族置換基を示す。芳香族置換基は、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、またはビフェニル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。複素環置換基は、ピリジル基、チエニル基、またはフリル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。
【0024】
また、R2とR3が脂肪族炭化水素ユニットから形成されている場合、結合して環状化合物を形成していても良い。
【0025】
ポリチオアミドは、具体的には化学式化16で表すことができる。
【0026】
【化16】
【0027】
ここで、R1,R2は化学式化17に示す二官能性のユニットが挙げられる。また、nは2〜10の整数を表す。
【0028】
【化17】
【0029】
ここで、R3は水素原子または化学式化18に示す置換基が挙げられる。また、nは0〜7の整数を表す。
【0030】
【化18】
【0031】
また、R2とR3が結合している場合、環状構造を形成した化学式化19に示すユニットが挙げられる。
【0032】
【化19】
【0033】
本発明の金属の分離回収方法は、パラジウム以外の他の金属が共存する場合に適用することができる。他の金属としては、ニッケル、白金、亜鉛、コバルト、カドミウム、鉛、マンガン,またはクロムを挙げることができる。
【0034】
溶液中での、パラジウムに対する他の金属のモル比は1〜1000の範囲内にあることが好ましい。また、パラジウムに対する他の金属のモル比は10〜100の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0035】
パラジウムに対する他の金属のモル比が1以上であると、パラジウムと他の金属との分離における効率が向上し、他の金属が混入することなくパラジウムのみを分離回収できるという利点がある。モル比が10以上であると、この効果がより顕著になる。
【0036】
パラジウムに対する他の金属のモル比が1000以下であると、パラジウムの吸着率の低下を防ぐことができ、他の金属の混入を実用範囲で抑制して、パラジウムを分離回収できるという利点がある。モル比が100以下であると、この効果がより顕著になる。
【0037】
パラジウムを吸着する方法において、溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール,ブチルアルコール,アセトニトリル,アセトン,ジクロロメタン,クロロホルム,酢酸エチル,酢酸ブチルなどを採用することができる。
【0038】
パラジウムの吸着において他の金属の同時吸着(すなわちパラジウムの分離回収に対する妨害)を抑制するために酸性化合物またはアルカリ性化合物を添加する。酸性化合物の添加はニッケル,亜鉛、コバルト、カドミウム、鉛、マンガン,またはクロムの同時吸着を抑制するのに有効であり、アルカリ性化合物の添加は白金の同時吸着を抑制するのに有効である。
【0039】
酸性化合物としては、塩酸、硫酸,硝酸、ギ酸などを採用することができる。
【0040】
酸性化合物の濃度は0.001〜0.1Mの範囲内にあることが好ましい。濃度が0.001〜0.1Mの範囲内にあると、パラジウムに対する他の金属のモル比が1〜1000の範囲で同時吸着を抑制するのに有効であるという利点がある。
【0041】
アルカリ性化合物としては、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシドなどを採用することができる。
【0042】
アルカリ性化合物の濃度は0.01〜0.1Mの範囲内にあることが好ましい。濃度が0.01〜0.1Mの範囲内にあると、パラジウムに対する他の金属のモル比が1〜1000の範囲で同時吸着を抑制するのに有効であるという利点がある。
【0043】
ポリチオアミドによる、溶液中のパラジウムの吸着は、チオアミド基のチオカルボニルユニットの配位結合能力に起因する。
【0044】
つぎに、りん化合物により、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出する方法について説明する。
【0045】
りん化合物は、化学式化20で表すことができる。
【0046】
【化20】
【0047】
ここで、R1は二官能性の芳香族ユニット、二官能性の複素環ユニット、または二官能性の脂肪族炭化水素ユニットを示す。二官能性の芳香族ユニットは、二官能性のフェニレン、ナフチレン、フェナントリレン、アントリレン、ビフェニル、またはビナフチルを示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。二官能性の複素環ユニットは、二官能性のピリジルジイル、チエニレン、ビピリジンジイル、キサンテンジイル、またはフリレンを示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。二官能性の脂肪族炭化水素ユニットは、炭素数が1〜8の直鎖状または分岐状の二官能性の脂肪族炭化水素を示す。
ここで、R2,R3,R4,R5は芳香族置換基、複素環置換基、脂肪族炭化水素基、または脂肪族炭化水素基を有するアルコキシ基を示す。芳香族置換基は、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、またはビフェニル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。複素環置換基は、ピリジル基、チエニル基、またはフリル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜8の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基を示す。
また、R2,R3,R4,R5は各化合物において同一であっても異なっていてもよい。
【0048】
前記りん化合物は、具体的には化学式化21で表すことができる。
【0049】
【化21】
【0050】
ここで、R1は化学式化22に示す二官能性のユニットが挙げられる。また、nは2〜10の整数を表す。
【0051】
【化22】
【0052】
ここで、R2,R3,R4,R5は化学式化23に示す置換基が挙げられる。R2,R3,R4,R5は各化合物において同一であっても異なっていてもよい。また、nは0〜7の整数を表す。
【0053】
【化23】
【0054】
また、りん化合物は、化学式化24で表すことができる。
【0055】
【化24】
【0056】
ここで、R1,R2,R3は芳香族置換基、複素環置換基、脂肪族炭化水素基、または脂肪族炭化水素基を有するアルコキシ基を示す。芳香族置換基は、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、またはビフェニル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。複素環置換基は、ピリジル基、チエニル基、またはフリル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜8の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基を示す。
また、R1,R2,R3は各化合物において同一であっても異なっていてもよい。
【0057】
前記りん化合物は、具体的には化学式化25で表すことができる。
【0058】
【化25】
【0059】
ここで、R1,R2,R3は化学式化26に示す置換基が挙げられる。R1,R2,R3は各化合物において同一であっても異なっていてもよい。また、nは0〜7の整数を表す。
【0060】
【化26】
【0061】
ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出する方法において、ポリチオアミドが存する溶液に、りん化合物を添加することが好ましい。その理由は、リン化合物の配位結合能力によってパラジウムをポリチオアミドから解離及び抽出できるためである。
【0062】
パラジウムを溶出する方法において、溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、クロロホルムなどを採用することができる。
【0063】
パラジウムを溶出する方法においては、酸性化合物を添加することにより、反応を最適化することができる。
【0064】
酸性化合物としては、塩酸、硫酸,硝酸、ギ酸などを採用することができる。
【0065】
酸性化合物の濃度は0.001〜0.1Mの範囲内にあることが好ましい。濃度が0.001〜0.1Mの範囲内にあると、他の金属の混入を実用範囲で抑制して、ポリチオアミドに吸着したパラジウムを実用範囲で溶出できるという利点がある。
【0066】
ポリチオアミドに吸着したパラジウムの溶出において、リン化合物の配位結合能力によってパラジウムはポリチオアミドから解離及び抽出される。
【0067】
ポリチオアミドの再利用の回数は100回以下の範囲内にあることが好ましい。再利用の回数が100回以下であると、パラジウムを高効率で分離回収でき、ポリチオアミドをパラジウム捕集剤として実用範囲で再生利用できるという利点がある。
【0068】
以上のことから、本発明を実施するための最良の形態によれば、一般式化15で表されるポリチオアミドの群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、溶液中のパラジウムを吸着し、一般式化20および一般式化24で表されるりん化合物の群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出するので、新規な金属の分離回収方法を提供することができる。
【0069】
また、本発明を実施するための最良の形態によれば、一般式化16で表されるポリチオアミドの群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、溶液中のパラジウムを吸着し、一般式化21および一般式化25で表されるりん化合物の群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出するので、新規な金属の分離回収方法を提供することができる。
【0070】
また、本発明を実施するための最良の形態によれば、化学式化27で表されるポリチオアミドにより、溶液中のパラジウムを吸着し、化学式化28で表されるりん化合物により、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出するので、新規な金属の分離回収方法を提供することができる。
【0071】
なお、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【実施例】
【0072】
つぎに、本発明にかかる実施例について具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではないことはもちろんである。
【0073】
参考例[ポリチオアミドの合成]
窒素雰囲気下にした50mlシュレンク管にヘキサメチレンジアミン0.2589g(2 mmol)と硫黄0.1601g(5mmol)を入れ、DMAc(脱水)10mlを添加し、室温で10分間溶解させた。この反応溶液にテレフタルアルデヒド0.2708g(2mmol)を加え、115℃で6時間攪拌した。反応溶液を300mlのメタノールが入った三角フラスコに添加し、洗浄した。生成した沈殿物を吸引ろ過により回収した後、DMAc10mlに再溶解させ、再び300mlのメタノールで洗浄した。その後、吸引ろ過により回収した沈殿物をDMF5mlに溶解させた。この溶液をガラスフィルターに通し、未反応の硫黄を除去した後、このDMF溶液を約3mlまで濃縮した。濃縮後、このDMF溶液をメタノール300mlに再沈殿させ、吸引ろ過により沈殿物を回収した。この沈殿物をDMF5mlに再溶解させ、約3mlまで濃縮した後、メタノール300mlに再沈殿させた。生成した沈殿物を吸引ろ過により回収した後、真空下で乾燥させ、目的のポリチオアミド化27を得た。目的の化合物は、黄色で収量0.3991g、収率71.7%で得られた。
【0074】
【化27】
【0075】
実施例1[Pd−Ni混合系吸着]
塩化パラジウム(II)溶液及び塩化ニッケル(II)溶液をメタノールに添加し、0.1mM Pd(II)−0.1mM Ni(II)混合溶液、0.1mM Pd(II)−1.0mM Ni(II)混合溶液及び0.1mM Pd(II)−10.0mM Ni(II)混合溶液を調製した。なお、各溶液には塩酸を0.02Mとなるように添加した。各溶液5mlをサンプル瓶に分取し、ポリチオアミド5mgをそれぞれ添加して室温で15時間撹拌した。その後、孔径0.2μmのメンブレンフィルターを用いてろ過し、ろ液中のPd(II)及びNi(II)の濃度を黒鉛炉原子吸光分析にて測定し、それぞれの残存濃度を求めた。残存濃度と撹拌前の初濃度とから、Pd(II)及びNi(II)の吸着率を求めた。結果は表1に示すように、いずれの溶液からもPd(II)のみを定量的に吸着できた。
【0076】
【表1】
【0077】
実施例2[Pd−Ni混合系溶出]
実施例1において、吸着後、メンブレンフィルターに捕集されたPd(II)を吸着したポリチオアミドをメンブレンフィルターごとサンプル瓶に入れ、塩酸を0.02Mとなるように添加したメタノール溶液10mlを加えた後、DPPP(化28)粉末2.1mgを添加し、室温で6時間撹拌した。その後、メンブレンフィルターでろ過し、ろ液中のPd(II)及びNi(II)濃度を黒鉛炉原子吸光分析にて測定した。得られた濃度と撹拌前の初濃度とから、Pd(II)及びNi(II)の溶出率を求めた。結果は表1に併せて示しているが、吸着されたPd(II)を90%以上溶出できた。
【0078】
【化28】
【0079】
実施例3[Pd−Pt混合系吸着]
塩化パラジウム(II)溶液及びヘキサクロロ白金(IV)酸ナトリウム溶液をメタノールに添加し、0.1mM Pd(II)−0.1mM Pt(IV)混合溶液、0.1mM Pd(II)−1.0mM Pt(IV)混合溶液及び0.1mM Pd(II)−10.0mM Pt(IV)混合溶液を調製した。なお、各溶液にはナトリウムメトキシドを0.05Mとなるように添加した。各溶液5mlをサンプル瓶に分取し、ポリチオアミド5mgをそれぞれ添加して室温で15時間撹拌した。その後、孔径0.2μmのメンブレンフィルターを用いてろ過し、ろ液中のPd(II)及びPt(IV)の濃度を黒鉛炉原子吸光分析にて測定し、それぞれの残存濃度を求めた。残存濃度と撹拌前の初濃度とから、Pd(II)及びPt(IV)の吸着率を求めた。結果は表2に示すように、Pt(IV)共存下においてもPd(II)を80%以上吸着でき、かつPt(IV)の吸着率は4%未満であった。
【0080】
【表2】
【0081】
実施例4[Pd−Pt混合系溶出]
実施例3において、吸着後、メンブレンフィルターに捕集されたPd(II)を吸着したポリチオアミドをメンブレンフィルターごとサンプル瓶に入れ、塩酸を0.02Mとなるように添加したメタノール溶液10mlを加えた後、DPPP粉末2.1mgを添加し、室温で6時間撹拌した。その後、メンブレンフィルターでろ過し、ろ液中のPd(II)及びPt(IV)濃度を黒鉛炉原子吸光分析にて測定した。得られた濃度と撹拌前の初濃度とから、Pd(II)及びPt(IV)の溶出率を求めた。結果は表2に併せて示しているが、吸着したPd(II)は80%以上溶出することが可能であり、Pt(IV)の溶出率は1%未満であった。
【0082】
実施例5[PTA再利用性]
実施例2において、溶出後ろ過に用いたメンブレンフィルターをサンプル瓶に入れ、乾燥した。その後、メンブレンフィルター上のポリチオアミドのみを別のサンプル瓶に回収し、秤量した。このポリチオアミドを用いて、実施例1及び実施例2に準じ、0.1mM Pd(II)メタノール溶液を用いてPd(II)の吸着率及び溶出率を求めた。なお、本操作を繰り返した。その結果、表3に示すように、少なくとも5回の繰り返し使用においてはPd(II)に対し95%以上の吸着率及び85%以上の溶出率が得られた。なお,一部の結果において溶出率が100%を越える場合が認められたが,これは溶出工程において一部ポリチオアミド上に残存したパラジウムの溶出,測定誤差などによるものである。
【0083】
【表3】
【0084】
比較例[DPPP溶液による溶出]
実施例1に準じてポリチオアミドにPd(II)を吸着させ、実施例2に準じてPd(II)を溶出させる際、比較として予めDPPPを溶解したメタノール溶液を用いて溶出した。溶出に用いた溶液は、塩酸を0.02Mとなるように添加したメタノール溶液10mlに、DPPP2.1mg、4.2mg、8.4mgを溶解させて調製した。結果は表4に示したように、いずれもDPPP2.1mgを粉末として添加して使用した実施例2の結果に比べ著しく低い溶出率が得られた。
【0085】
【表4】
【0086】
以上のことから、本実施例によれば、パラジウムに対して他の重金属が共存する有機溶液においても、パラジウムのみを定量的に吸着捕集でき、かつ、りん化合物により定量的に溶出分離回収することができる。特に、パラジウムと同じ白金族金属のニッケルおよび白金についてはこれらが高濃度共存する有機溶液からもパラジウムのみをほぼ定量的にかつ選択的に分離回収できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリチオアミドにより溶液中のパラジウムを吸着し、りん化合物により前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出する、新規な金属の分離回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大学などの研究機関から排出される有機廃液中には有機溶媒のほかに合成触媒である遷移金属錯体や貴金属、希土類元素などが含まれている場合が少なくない。それらの多くは焼却・熱分解などで処理されているが、有価金属の存在はその過程で難処理化を引き起こすだけでなく、有価金属の多くが焼却灰や飛灰に移行することからリサイクル、省資源の観点から見てもきわめて非効率的である。
【0003】
現在、廃水処理には種々のキレート樹脂やイオン交換樹脂、高分子凝集剤などの機能性高分子が用いられている。
【0004】
なお、発明者は、本発明に関連する技術内容を開示している(非特許文献1〜8参照。)。これらのうち非特許文献7,8は、特許法第30条第1項を適用できるものと考えられる。
【非特許文献1】佐藤恵美,河合自立,加賀谷重浩,神原貴樹,長谷川淳,1PB076ポリチオアミドの重金属吸着特性,日本化学会第79春季年会,平成13年3月
【非特許文献2】佐藤恵美,加賀谷重浩,神原貴樹,長谷川淳,2PC-106ポリチオアミドを用いた有機廃液中の重金属の沈殿回収,日本化学会第81春季年会,平成14年3月
【非特許文献3】加賀谷重浩,真草嶺郁美,佐藤恵美,神原貴樹,長谷川淳,P-18廃液中の有価金属の選択的回収剤の開発,富山工業高等専門学校第9回エコテクノロジーに関するアジア国際シンポジウム−富山(ASET9),平成14年12月
【非特許文献4】加賀谷重浩,真草嶺郁美,佐藤恵美,神原貴樹,長谷川淳,1PB-133ポリチオアミドによる有機廃液中のパラジウム及びニッケルの回収,日本化学会第83春季年会,平成15年3月
【非特許文献5】S. Kagaya, E. Sato, I. Masore, K. Hasegawa, and T. Kanbara, Polythioamide as a Collector for Valuable Metals from Aqueous and Organic Solutions, Chemistry Letters, Vol. 32, No. 7, pp. 622 - 623(平成15年7月)
【非特許文献6】加賀谷重浩,河合信宏,真草嶺郁美,佐藤恵美,神原貴樹,長谷川淳,P-92ポリチオアミドに吸着したパラジウムの溶出:有機廃液中パラジウムの分離・回収への応用,富山工業高等専門学校第10回エコテクノロジーに関するアジア国際シンポジウム−富山(ASET10),平成15年11月
【非特許文献7】加賀谷重浩,田中絵梨佳,河合信宏,真草嶺郁美,佐藤恵美,神原貴樹,長谷川淳,ニッケル及び白金を含む溶液からのパラジウムの分離,日本分析化学会中部支部「分析中部ゆめ21」若手交流会第4回高山フォーラム,平成16年11月26日・27日
【非特許文献8】加賀谷重浩,田中絵梨佳,河合信宏,真草嶺郁美,佐藤恵美,神原貴樹,長谷川淳,Paper#25ニッケル及び白金を含む有機溶液からのパラジウムの分離,富山工業高等専門学校第11回エコテクノロジーに関するアジア国際シンポジウム−富山(ASET11),平成16年12月3日・4日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特定の有価金属もしくは有害重金属に対して効果的に選択分離できる材料は限られている。特に、含有する有機溶媒に対して耐性を有し、かつ有価金属に対して選択的分離機能を持つものはほとんど見られない。このため、これらの課題を解決する、新規な金属の分離回収方法の開発が望まれている。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、新規な金属の分離回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の金属の分離回収方法は、一般式化15で表されるポリチオアミドの群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、溶液中のパラジウムを吸着し、一般式化20および一般式化24で表されるりん化合物の群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出する。
【0008】
ここで、限定されるわけではないが、溶液中での、パラジウムに対する他の金属のモル比は1〜1000の範囲内にあることが好ましい。限定されるわけではないが、他の金属はニッケルまたは白金であることが好ましい。限定されるわけではないが、ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出するには、ポリチオアミドが存する溶液に、りん化合物を添加することが好ましい。
【0009】
本発明の金属の分離回収方法は、一般式化16で表されるポリチオアミドの群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、溶液中のパラジウムを吸着し、一般式化21および一般式化25で表されるりん化合物の群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出する。
【0010】
ここで、限定されるわけではないが、溶液中での、パラジウムに対する他の金属のモル比は1〜1000の範囲内にあることが好ましい。限定されるわけではないが、他の金属はニッケルまたは白金であることが好ましい。限定されるわけではないが、ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出するには、ポリチオアミドが存する溶液に、りん化合物を添加することが好ましい。
【0011】
本発明の金属の分離回収方法は、化学式化27で表されるポリチオアミドにより、溶液中のパラジウムを吸着し、化学式化28で表されるりん化合物により、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出する。
【0012】
ここで、限定されるわけではないが、溶液中での、パラジウムに対する他の金属のモル比は1〜1000の範囲内にあることが好ましい。限定されるわけではないが、他の金属はニッケルまたは白金であることが好ましい。限定されるわけではないが、ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出するには、ポリチオアミドが存する溶液に、りん化合物を添加することが好ましい。限定されるわけではないが、ポリチオアミドを再利用することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
【0014】
本発明は、一般式化15で表されるポリチオアミドの群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、溶液中のパラジウムを吸着し、一般式化20および一般式化24で表されるりん化合物の群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出するので、新規な金属の分離回収方法を提供することができる。
【0015】
本発明は、一般式化16で表されるポリチオアミドの群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、溶液中のパラジウムを吸着し、一般式化21および一般式化25で表されるりん化合物の群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出するので、新規な金属の分離回収方法を提供することができる。
【0016】
本発明は、化学式化27で表されるポリチオアミドにより、溶液中のパラジウムを吸着し、化学式化28で表されるりん化合物により、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出するので、新規な金属の分離回収方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、金属の分離回収方法にかかる発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0018】
本発明の金属の分離回収方法は、ポリチオアミドにより、溶液中のパラジウムを吸着し、りん化合物により、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出する方法である。以下に、本発明の金属の分離回収方法を具体的に説明する。
【0019】
最初に、ポリチオアミドにより、溶液中のパラジウムを吸着する方法を説明する。
【0020】
ポリチオアミドは、化学式化15で表すことができる。
【0021】
【化15】
【0022】
ここで、R1,R2は二官能性の芳香族ユニット、二官能性の複素環ユニット、または二官能性の脂肪族炭化水素ユニットを示す。二官能性の芳香族ユニットは、二官能性のフェニレン、ナフチレン、フェナントリレン、アントリレン、またはビフェニルを示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。二官能性の複素環ユニットは、二官能性のピリジルジイル、チエニレン、フリレン、ピロリレン、またはキノリンジイルを示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。二官能性の脂肪族炭化水素ユニットは、炭素数が2〜10の直鎖状または分岐状の二官能性の脂肪族炭化水素を示す。炭化水素の炭素−炭素結合間に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子、またはリン原子のヘテロ原子を有していても良い。炭化水素の炭素−炭素結合間にフェニレンまたはナフチレンの二官能性の芳香族ユニットを有していても良い。
【0023】
ここで、R3は水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族置換基、または複素環置換基を示す。脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜8の直鎖状または分岐状脂肪族置換基を示す。芳香族置換基は、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、またはビフェニル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。複素環置換基は、ピリジル基、チエニル基、またはフリル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。
【0024】
また、R2とR3が脂肪族炭化水素ユニットから形成されている場合、結合して環状化合物を形成していても良い。
【0025】
ポリチオアミドは、具体的には化学式化16で表すことができる。
【0026】
【化16】
【0027】
ここで、R1,R2は化学式化17に示す二官能性のユニットが挙げられる。また、nは2〜10の整数を表す。
【0028】
【化17】
【0029】
ここで、R3は水素原子または化学式化18に示す置換基が挙げられる。また、nは0〜7の整数を表す。
【0030】
【化18】
【0031】
また、R2とR3が結合している場合、環状構造を形成した化学式化19に示すユニットが挙げられる。
【0032】
【化19】
【0033】
本発明の金属の分離回収方法は、パラジウム以外の他の金属が共存する場合に適用することができる。他の金属としては、ニッケル、白金、亜鉛、コバルト、カドミウム、鉛、マンガン,またはクロムを挙げることができる。
【0034】
溶液中での、パラジウムに対する他の金属のモル比は1〜1000の範囲内にあることが好ましい。また、パラジウムに対する他の金属のモル比は10〜100の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0035】
パラジウムに対する他の金属のモル比が1以上であると、パラジウムと他の金属との分離における効率が向上し、他の金属が混入することなくパラジウムのみを分離回収できるという利点がある。モル比が10以上であると、この効果がより顕著になる。
【0036】
パラジウムに対する他の金属のモル比が1000以下であると、パラジウムの吸着率の低下を防ぐことができ、他の金属の混入を実用範囲で抑制して、パラジウムを分離回収できるという利点がある。モル比が100以下であると、この効果がより顕著になる。
【0037】
パラジウムを吸着する方法において、溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール,ブチルアルコール,アセトニトリル,アセトン,ジクロロメタン,クロロホルム,酢酸エチル,酢酸ブチルなどを採用することができる。
【0038】
パラジウムの吸着において他の金属の同時吸着(すなわちパラジウムの分離回収に対する妨害)を抑制するために酸性化合物またはアルカリ性化合物を添加する。酸性化合物の添加はニッケル,亜鉛、コバルト、カドミウム、鉛、マンガン,またはクロムの同時吸着を抑制するのに有効であり、アルカリ性化合物の添加は白金の同時吸着を抑制するのに有効である。
【0039】
酸性化合物としては、塩酸、硫酸,硝酸、ギ酸などを採用することができる。
【0040】
酸性化合物の濃度は0.001〜0.1Mの範囲内にあることが好ましい。濃度が0.001〜0.1Mの範囲内にあると、パラジウムに対する他の金属のモル比が1〜1000の範囲で同時吸着を抑制するのに有効であるという利点がある。
【0041】
アルカリ性化合物としては、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシドなどを採用することができる。
【0042】
アルカリ性化合物の濃度は0.01〜0.1Mの範囲内にあることが好ましい。濃度が0.01〜0.1Mの範囲内にあると、パラジウムに対する他の金属のモル比が1〜1000の範囲で同時吸着を抑制するのに有効であるという利点がある。
【0043】
ポリチオアミドによる、溶液中のパラジウムの吸着は、チオアミド基のチオカルボニルユニットの配位結合能力に起因する。
【0044】
つぎに、りん化合物により、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出する方法について説明する。
【0045】
りん化合物は、化学式化20で表すことができる。
【0046】
【化20】
【0047】
ここで、R1は二官能性の芳香族ユニット、二官能性の複素環ユニット、または二官能性の脂肪族炭化水素ユニットを示す。二官能性の芳香族ユニットは、二官能性のフェニレン、ナフチレン、フェナントリレン、アントリレン、ビフェニル、またはビナフチルを示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。二官能性の複素環ユニットは、二官能性のピリジルジイル、チエニレン、ビピリジンジイル、キサンテンジイル、またはフリレンを示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。二官能性の脂肪族炭化水素ユニットは、炭素数が1〜8の直鎖状または分岐状の二官能性の脂肪族炭化水素を示す。
ここで、R2,R3,R4,R5は芳香族置換基、複素環置換基、脂肪族炭化水素基、または脂肪族炭化水素基を有するアルコキシ基を示す。芳香族置換基は、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、またはビフェニル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。複素環置換基は、ピリジル基、チエニル基、またはフリル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜8の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基を示す。
また、R2,R3,R4,R5は各化合物において同一であっても異なっていてもよい。
【0048】
前記りん化合物は、具体的には化学式化21で表すことができる。
【0049】
【化21】
【0050】
ここで、R1は化学式化22に示す二官能性のユニットが挙げられる。また、nは2〜10の整数を表す。
【0051】
【化22】
【0052】
ここで、R2,R3,R4,R5は化学式化23に示す置換基が挙げられる。R2,R3,R4,R5は各化合物において同一であっても異なっていてもよい。また、nは0〜7の整数を表す。
【0053】
【化23】
【0054】
また、りん化合物は、化学式化24で表すことができる。
【0055】
【化24】
【0056】
ここで、R1,R2,R3は芳香族置換基、複素環置換基、脂肪族炭化水素基、または脂肪族炭化水素基を有するアルコキシ基を示す。芳香族置換基は、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、またはビフェニル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。複素環置換基は、ピリジル基、チエニル基、またはフリル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜8の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基を示す。
また、R1,R2,R3は各化合物において同一であっても異なっていてもよい。
【0057】
前記りん化合物は、具体的には化学式化25で表すことができる。
【0058】
【化25】
【0059】
ここで、R1,R2,R3は化学式化26に示す置換基が挙げられる。R1,R2,R3は各化合物において同一であっても異なっていてもよい。また、nは0〜7の整数を表す。
【0060】
【化26】
【0061】
ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出する方法において、ポリチオアミドが存する溶液に、りん化合物を添加することが好ましい。その理由は、リン化合物の配位結合能力によってパラジウムをポリチオアミドから解離及び抽出できるためである。
【0062】
パラジウムを溶出する方法において、溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、クロロホルムなどを採用することができる。
【0063】
パラジウムを溶出する方法においては、酸性化合物を添加することにより、反応を最適化することができる。
【0064】
酸性化合物としては、塩酸、硫酸,硝酸、ギ酸などを採用することができる。
【0065】
酸性化合物の濃度は0.001〜0.1Mの範囲内にあることが好ましい。濃度が0.001〜0.1Mの範囲内にあると、他の金属の混入を実用範囲で抑制して、ポリチオアミドに吸着したパラジウムを実用範囲で溶出できるという利点がある。
【0066】
ポリチオアミドに吸着したパラジウムの溶出において、リン化合物の配位結合能力によってパラジウムはポリチオアミドから解離及び抽出される。
【0067】
ポリチオアミドの再利用の回数は100回以下の範囲内にあることが好ましい。再利用の回数が100回以下であると、パラジウムを高効率で分離回収でき、ポリチオアミドをパラジウム捕集剤として実用範囲で再生利用できるという利点がある。
【0068】
以上のことから、本発明を実施するための最良の形態によれば、一般式化15で表されるポリチオアミドの群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、溶液中のパラジウムを吸着し、一般式化20および一般式化24で表されるりん化合物の群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出するので、新規な金属の分離回収方法を提供することができる。
【0069】
また、本発明を実施するための最良の形態によれば、一般式化16で表されるポリチオアミドの群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、溶液中のパラジウムを吸着し、一般式化21および一般式化25で表されるりん化合物の群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出するので、新規な金属の分離回収方法を提供することができる。
【0070】
また、本発明を実施するための最良の形態によれば、化学式化27で表されるポリチオアミドにより、溶液中のパラジウムを吸着し、化学式化28で表されるりん化合物により、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出するので、新規な金属の分離回収方法を提供することができる。
【0071】
なお、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【実施例】
【0072】
つぎに、本発明にかかる実施例について具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではないことはもちろんである。
【0073】
参考例[ポリチオアミドの合成]
窒素雰囲気下にした50mlシュレンク管にヘキサメチレンジアミン0.2589g(2 mmol)と硫黄0.1601g(5mmol)を入れ、DMAc(脱水)10mlを添加し、室温で10分間溶解させた。この反応溶液にテレフタルアルデヒド0.2708g(2mmol)を加え、115℃で6時間攪拌した。反応溶液を300mlのメタノールが入った三角フラスコに添加し、洗浄した。生成した沈殿物を吸引ろ過により回収した後、DMAc10mlに再溶解させ、再び300mlのメタノールで洗浄した。その後、吸引ろ過により回収した沈殿物をDMF5mlに溶解させた。この溶液をガラスフィルターに通し、未反応の硫黄を除去した後、このDMF溶液を約3mlまで濃縮した。濃縮後、このDMF溶液をメタノール300mlに再沈殿させ、吸引ろ過により沈殿物を回収した。この沈殿物をDMF5mlに再溶解させ、約3mlまで濃縮した後、メタノール300mlに再沈殿させた。生成した沈殿物を吸引ろ過により回収した後、真空下で乾燥させ、目的のポリチオアミド化27を得た。目的の化合物は、黄色で収量0.3991g、収率71.7%で得られた。
【0074】
【化27】
【0075】
実施例1[Pd−Ni混合系吸着]
塩化パラジウム(II)溶液及び塩化ニッケル(II)溶液をメタノールに添加し、0.1mM Pd(II)−0.1mM Ni(II)混合溶液、0.1mM Pd(II)−1.0mM Ni(II)混合溶液及び0.1mM Pd(II)−10.0mM Ni(II)混合溶液を調製した。なお、各溶液には塩酸を0.02Mとなるように添加した。各溶液5mlをサンプル瓶に分取し、ポリチオアミド5mgをそれぞれ添加して室温で15時間撹拌した。その後、孔径0.2μmのメンブレンフィルターを用いてろ過し、ろ液中のPd(II)及びNi(II)の濃度を黒鉛炉原子吸光分析にて測定し、それぞれの残存濃度を求めた。残存濃度と撹拌前の初濃度とから、Pd(II)及びNi(II)の吸着率を求めた。結果は表1に示すように、いずれの溶液からもPd(II)のみを定量的に吸着できた。
【0076】
【表1】
【0077】
実施例2[Pd−Ni混合系溶出]
実施例1において、吸着後、メンブレンフィルターに捕集されたPd(II)を吸着したポリチオアミドをメンブレンフィルターごとサンプル瓶に入れ、塩酸を0.02Mとなるように添加したメタノール溶液10mlを加えた後、DPPP(化28)粉末2.1mgを添加し、室温で6時間撹拌した。その後、メンブレンフィルターでろ過し、ろ液中のPd(II)及びNi(II)濃度を黒鉛炉原子吸光分析にて測定した。得られた濃度と撹拌前の初濃度とから、Pd(II)及びNi(II)の溶出率を求めた。結果は表1に併せて示しているが、吸着されたPd(II)を90%以上溶出できた。
【0078】
【化28】
【0079】
実施例3[Pd−Pt混合系吸着]
塩化パラジウム(II)溶液及びヘキサクロロ白金(IV)酸ナトリウム溶液をメタノールに添加し、0.1mM Pd(II)−0.1mM Pt(IV)混合溶液、0.1mM Pd(II)−1.0mM Pt(IV)混合溶液及び0.1mM Pd(II)−10.0mM Pt(IV)混合溶液を調製した。なお、各溶液にはナトリウムメトキシドを0.05Mとなるように添加した。各溶液5mlをサンプル瓶に分取し、ポリチオアミド5mgをそれぞれ添加して室温で15時間撹拌した。その後、孔径0.2μmのメンブレンフィルターを用いてろ過し、ろ液中のPd(II)及びPt(IV)の濃度を黒鉛炉原子吸光分析にて測定し、それぞれの残存濃度を求めた。残存濃度と撹拌前の初濃度とから、Pd(II)及びPt(IV)の吸着率を求めた。結果は表2に示すように、Pt(IV)共存下においてもPd(II)を80%以上吸着でき、かつPt(IV)の吸着率は4%未満であった。
【0080】
【表2】
【0081】
実施例4[Pd−Pt混合系溶出]
実施例3において、吸着後、メンブレンフィルターに捕集されたPd(II)を吸着したポリチオアミドをメンブレンフィルターごとサンプル瓶に入れ、塩酸を0.02Mとなるように添加したメタノール溶液10mlを加えた後、DPPP粉末2.1mgを添加し、室温で6時間撹拌した。その後、メンブレンフィルターでろ過し、ろ液中のPd(II)及びPt(IV)濃度を黒鉛炉原子吸光分析にて測定した。得られた濃度と撹拌前の初濃度とから、Pd(II)及びPt(IV)の溶出率を求めた。結果は表2に併せて示しているが、吸着したPd(II)は80%以上溶出することが可能であり、Pt(IV)の溶出率は1%未満であった。
【0082】
実施例5[PTA再利用性]
実施例2において、溶出後ろ過に用いたメンブレンフィルターをサンプル瓶に入れ、乾燥した。その後、メンブレンフィルター上のポリチオアミドのみを別のサンプル瓶に回収し、秤量した。このポリチオアミドを用いて、実施例1及び実施例2に準じ、0.1mM Pd(II)メタノール溶液を用いてPd(II)の吸着率及び溶出率を求めた。なお、本操作を繰り返した。その結果、表3に示すように、少なくとも5回の繰り返し使用においてはPd(II)に対し95%以上の吸着率及び85%以上の溶出率が得られた。なお,一部の結果において溶出率が100%を越える場合が認められたが,これは溶出工程において一部ポリチオアミド上に残存したパラジウムの溶出,測定誤差などによるものである。
【0083】
【表3】
【0084】
比較例[DPPP溶液による溶出]
実施例1に準じてポリチオアミドにPd(II)を吸着させ、実施例2に準じてPd(II)を溶出させる際、比較として予めDPPPを溶解したメタノール溶液を用いて溶出した。溶出に用いた溶液は、塩酸を0.02Mとなるように添加したメタノール溶液10mlに、DPPP2.1mg、4.2mg、8.4mgを溶解させて調製した。結果は表4に示したように、いずれもDPPP2.1mgを粉末として添加して使用した実施例2の結果に比べ著しく低い溶出率が得られた。
【0085】
【表4】
【0086】
以上のことから、本実施例によれば、パラジウムに対して他の重金属が共存する有機溶液においても、パラジウムのみを定量的に吸着捕集でき、かつ、りん化合物により定量的に溶出分離回収することができる。特に、パラジウムと同じ白金族金属のニッケルおよび白金についてはこれらが高濃度共存する有機溶液からもパラジウムのみをほぼ定量的にかつ選択的に分離回収できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式化1で表されるポリチオアミドの群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、溶液中のパラジウムを吸着し、
一般式化2および一般式化3で表されるりん化合物の群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出する、金属の分離回収方法。
【化1】
ここで、R1,R2は二官能性の芳香族ユニット、二官能性の複素環ユニット、または二官能性の脂肪族炭化水素ユニットを示す。二官能性の芳香族ユニットは、二官能性のフェニレン、ナフチレン、フェナントリレン、アントリレン、またはビフェニルを示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。二官能性の複素環ユニットは、二官能性のピリジルジイル、チエニレン、フリレン、ピロリレン、またはキノリンジイルを示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。二官能性の脂肪族炭化水素ユニットは、炭素数が2〜10の直鎖状または分岐状の二官能性の脂肪族炭化水素を示す。炭化水素の炭素−炭素結合間に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子、またはリン原子のヘテロ原子を有していても良い。炭化水素の炭素−炭素結合間にフェニレンまたはナフチレンの二官能性の芳香族ユニットを有していても良い。
ここで、R3は水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族置換基、または複素環置換基を示す。脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜8の直鎖状または分岐状脂肪族置換基を示す。芳香族置換基は、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、またはビフェニル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。複素環置換基は、ピリジル基、チエニル基、またはフリル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。
また、R2とR3が脂肪族炭化水素ユニットから形成されている場合、結合して環状化合物を形成していても良い。
【化2】
ここで、R1は二官能性の芳香族ユニット、二官能性の複素環ユニット、または二官能性の脂肪族炭化水素ユニットを示す。二官能性の芳香族ユニットは、二官能性のフェニレン、ナフチレン、フェナントリレン、アントリレン、ビフェニル、またはビナフチルを示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。二官能性の複素環ユニットは、二官能性のピリジルジイル、チエニレン、ビピリジンジイル、キサンテンジイル、またはフリレンを示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。二官能性の脂肪族炭化水素ユニットは、炭素数が1〜8の直鎖状または分岐状の二官能性の脂肪族炭化水素を示す。
ここで、R2,R3,R4,R5は芳香族置換基、複素環置換基、脂肪族炭化水素基、または脂肪族炭化水素基を有するアルコキシ基を示す。芳香族置換基は、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、またはビフェニル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。複素環置換基は、ピリジル基、チエニル基、またはフリル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜8の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基を示す。
また、R2,R3,R4,R5は各化合物において同一であっても異なっていてもよい。
【化3】
ここで、R1,R2,R3は芳香族置換基、複素環置換基、脂肪族炭化水素基、または脂肪族炭化水素基を有するアルコキシ基を示す。芳香族置換基は、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、またはビフェニル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。複素環置換基は、ピリジル基、チエニル基、またはフリル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜8の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基を示す。
また、R1,R2,R3は各化合物において同一であっても異なっていてもよい。
【請求項2】
溶液中での、パラジウムに対する他の金属のモル比が1〜1000の範囲内にある、請求項1記載の金属の分離回収方法。
【請求項3】
他の金属はニッケルである、請求項2記載の金属の分離回収方法。
【請求項4】
他の金属は白金である、請求項2記載の金属の分離回収方法。
【請求項5】
ポリチオアミドが存する溶液に、りん化合物を添加する、請求項1記載の金属の分離回収方法。
【請求項6】
一般式化4で表されるポリチオアミドの群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、溶液中のパラジウムを吸着し、
一般式化8および一般式化11で表されるりん化合物の群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出する、金属の分離回収方法。
【化4】
ここで、R1,R2は化学式化5に示す二官能性のユニットが挙げられる。また、nは2〜10の整数を表す。
【化5】
ここで、R3は水素原子または化学式化6に示す置換基が挙げられる。また、nは0〜7の整数を表す。
【化6】
また、R2とR3が結合している場合、環状構造を形成した化学式化7に示すユニットが挙げられる。
【化7】
【化8】
ここで、R1は化学式化9に示す二官能性のユニットが挙げられる。また、nは2〜10の整数を表す。
【化9】
ここで、R2,R3,R4,R5は化学式化10に示す置換基が挙げられる。R2,R3,R4,R5は各化合物において同一であっても異なっていてもよい。また、nは0〜7の整数を表す。
【化10】
【化11】
ここで、R1,R2,R3は化学式化12に示す置換基が挙げられる。R1,R2,R3は各化合物において同一であっても異なっていてもよい。また、nは0〜7の整数を表す。
【化12】
【請求項7】
溶液中での、パラジウムに対する他の金属のモル比が1〜1000の範囲内にある、請求項6記載の金属の分離回収方法。
【請求項8】
他の金属はニッケルである、請求項7記載の金属の分離回収方法。
【請求項9】
他の金属は白金である、請求項7記載の金属の分離回収方法。
【請求項10】
ポリチオアミドが存する溶液に、りん化合物を添加する、請求項6記載の金属の分離回収方法。
【請求項11】
化学式化13で表されるポリチオアミドにより、溶液中のパラジウムを吸着し、
化学式化14で表されるりん化合物により、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出する、金属の分離回収方法。
【化13】
【化14】
【請求項12】
溶液中での、パラジウムに対する他の金属のモル比が1〜1000の範囲内にある、請求項11記載の金属の分離回収方法。
【請求項13】
他の金属はニッケルである、請求項12記載の金属の分離回収方法。
【請求項14】
他の金属は白金である、請求項12記載の金属の分離回収方法。
【請求項15】
ポリチオアミドが存する溶液に、りん化合物を添加する、請求項11記載の金属の分離回収方法。
【請求項16】
ポリチオアミドを再利用する、請求項11記載の金属の分離回収方法。
【請求項1】
一般式化1で表されるポリチオアミドの群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、溶液中のパラジウムを吸着し、
一般式化2および一般式化3で表されるりん化合物の群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出する、金属の分離回収方法。
【化1】
ここで、R1,R2は二官能性の芳香族ユニット、二官能性の複素環ユニット、または二官能性の脂肪族炭化水素ユニットを示す。二官能性の芳香族ユニットは、二官能性のフェニレン、ナフチレン、フェナントリレン、アントリレン、またはビフェニルを示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。二官能性の複素環ユニットは、二官能性のピリジルジイル、チエニレン、フリレン、ピロリレン、またはキノリンジイルを示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。二官能性の脂肪族炭化水素ユニットは、炭素数が2〜10の直鎖状または分岐状の二官能性の脂肪族炭化水素を示す。炭化水素の炭素−炭素結合間に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子、またはリン原子のヘテロ原子を有していても良い。炭化水素の炭素−炭素結合間にフェニレンまたはナフチレンの二官能性の芳香族ユニットを有していても良い。
ここで、R3は水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族置換基、または複素環置換基を示す。脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜8の直鎖状または分岐状脂肪族置換基を示す。芳香族置換基は、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、またはビフェニル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。複素環置換基は、ピリジル基、チエニル基、またはフリル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。
また、R2とR3が脂肪族炭化水素ユニットから形成されている場合、結合して環状化合物を形成していても良い。
【化2】
ここで、R1は二官能性の芳香族ユニット、二官能性の複素環ユニット、または二官能性の脂肪族炭化水素ユニットを示す。二官能性の芳香族ユニットは、二官能性のフェニレン、ナフチレン、フェナントリレン、アントリレン、ビフェニル、またはビナフチルを示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。二官能性の複素環ユニットは、二官能性のピリジルジイル、チエニレン、ビピリジンジイル、キサンテンジイル、またはフリレンを示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。二官能性の脂肪族炭化水素ユニットは、炭素数が1〜8の直鎖状または分岐状の二官能性の脂肪族炭化水素を示す。
ここで、R2,R3,R4,R5は芳香族置換基、複素環置換基、脂肪族炭化水素基、または脂肪族炭化水素基を有するアルコキシ基を示す。芳香族置換基は、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、またはビフェニル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。複素環置換基は、ピリジル基、チエニル基、またはフリル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜8の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基を示す。
また、R2,R3,R4,R5は各化合物において同一であっても異なっていてもよい。
【化3】
ここで、R1,R2,R3は芳香族置換基、複素環置換基、脂肪族炭化水素基、または脂肪族炭化水素基を有するアルコキシ基を示す。芳香族置換基は、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、またはビフェニル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。複素環置換基は、ピリジル基、チエニル基、またはフリル基を示す。水素原子の1つまたは2つをアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、エステル基、アシル基、またはアミド基に置き換えた置換基を有していても良い。脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜8の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基を示す。
また、R1,R2,R3は各化合物において同一であっても異なっていてもよい。
【請求項2】
溶液中での、パラジウムに対する他の金属のモル比が1〜1000の範囲内にある、請求項1記載の金属の分離回収方法。
【請求項3】
他の金属はニッケルである、請求項2記載の金属の分離回収方法。
【請求項4】
他の金属は白金である、請求項2記載の金属の分離回収方法。
【請求項5】
ポリチオアミドが存する溶液に、りん化合物を添加する、請求項1記載の金属の分離回収方法。
【請求項6】
一般式化4で表されるポリチオアミドの群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、溶液中のパラジウムを吸着し、
一般式化8および一般式化11で表されるりん化合物の群から選ばれるいずれか1種またはいずれか2種以上の組み合わせにより、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出する、金属の分離回収方法。
【化4】
ここで、R1,R2は化学式化5に示す二官能性のユニットが挙げられる。また、nは2〜10の整数を表す。
【化5】
ここで、R3は水素原子または化学式化6に示す置換基が挙げられる。また、nは0〜7の整数を表す。
【化6】
また、R2とR3が結合している場合、環状構造を形成した化学式化7に示すユニットが挙げられる。
【化7】
【化8】
ここで、R1は化学式化9に示す二官能性のユニットが挙げられる。また、nは2〜10の整数を表す。
【化9】
ここで、R2,R3,R4,R5は化学式化10に示す置換基が挙げられる。R2,R3,R4,R5は各化合物において同一であっても異なっていてもよい。また、nは0〜7の整数を表す。
【化10】
【化11】
ここで、R1,R2,R3は化学式化12に示す置換基が挙げられる。R1,R2,R3は各化合物において同一であっても異なっていてもよい。また、nは0〜7の整数を表す。
【化12】
【請求項7】
溶液中での、パラジウムに対する他の金属のモル比が1〜1000の範囲内にある、請求項6記載の金属の分離回収方法。
【請求項8】
他の金属はニッケルである、請求項7記載の金属の分離回収方法。
【請求項9】
他の金属は白金である、請求項7記載の金属の分離回収方法。
【請求項10】
ポリチオアミドが存する溶液に、りん化合物を添加する、請求項6記載の金属の分離回収方法。
【請求項11】
化学式化13で表されるポリチオアミドにより、溶液中のパラジウムを吸着し、
化学式化14で表されるりん化合物により、前記ポリチオアミドに吸着したパラジウムを溶出する、金属の分離回収方法。
【化13】
【化14】
【請求項12】
溶液中での、パラジウムに対する他の金属のモル比が1〜1000の範囲内にある、請求項11記載の金属の分離回収方法。
【請求項13】
他の金属はニッケルである、請求項12記載の金属の分離回収方法。
【請求項14】
他の金属は白金である、請求項12記載の金属の分離回収方法。
【請求項15】
ポリチオアミドが存する溶液に、りん化合物を添加する、請求項11記載の金属の分離回収方法。
【請求項16】
ポリチオアミドを再利用する、請求項11記載の金属の分離回収方法。
【公開番号】特開2006−328468(P2006−328468A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152663(P2005−152663)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年11月26日、27日 社団法人日本分析学会中部支部主催の「『分析中部・ゆめ21』岩手交流会 第4回高山フォーラム」において文書をもって発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年12月3日 特定非営利活動法人エコテクノロジー研究会発行の「Journal of Ecotechnology Research 第10巻 第4号(通巻24号)」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年12月4日、5日 独立行政法人国立高等専門学校機構富山工業高等専門学校主催の「11th Asian Symposium on Ecotechnology(第11回 エコテクノロジーに関するアジア国際シンポジウム)」において文書をもって発表
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(305060567)国立大学法人富山大学 (194)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年11月26日、27日 社団法人日本分析学会中部支部主催の「『分析中部・ゆめ21』岩手交流会 第4回高山フォーラム」において文書をもって発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年12月3日 特定非営利活動法人エコテクノロジー研究会発行の「Journal of Ecotechnology Research 第10巻 第4号(通巻24号)」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年12月4日、5日 独立行政法人国立高等専門学校機構富山工業高等専門学校主催の「11th Asian Symposium on Ecotechnology(第11回 エコテクノロジーに関するアジア国際シンポジウム)」において文書をもって発表
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(305060567)国立大学法人富山大学 (194)
【Fターム(参考)】
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