金属の回収方法とその装置
【課題】重金属等を含む廃液等の被処理液から、それらを有価物である金属として回収する方法と装置に関し、被処理液から回収対象金属のみを有価物である金属として回収することができ、且つ回収対象金属以外の不純物を含有する可能性が少なく、回収率が高く回収対象金属の純度が高い回収方法と装置を提供することを課題とする。
【解決手段】回収すべき金属がイオン状態で含有されている被処理液をリアクター本体内に流入するとともに、該リアクター本体内に回収すべき金属よりもイオン化傾向が大きい平均粒径0.1〜8mmの金属粒子を添加し、該金属粒子を流動させ、イオン化傾向の差異により前記被処理液中に含有される金属を前記金属粒子の表面に析出させ、その後、剥離手段によって前記金属粒子から前記析出した金属を剥離して回収することを特徴とする。
【解決手段】回収すべき金属がイオン状態で含有されている被処理液をリアクター本体内に流入するとともに、該リアクター本体内に回収すべき金属よりもイオン化傾向が大きい平均粒径0.1〜8mmの金属粒子を添加し、該金属粒子を流動させ、イオン化傾向の差異により前記被処理液中に含有される金属を前記金属粒子の表面に析出させ、その後、剥離手段によって前記金属粒子から前記析出した金属を剥離して回収することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の回収方法とその装置、さらに詳しくは、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Sn(錫)、In(インジウム)、Ga(ガリウム)等の重金属を含む廃液等の被処理液から、それらを有価物である金属単体あるいは合金として回収する方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、産業廃液には種々の金属が含有されていることがあり、それらを有価物である金属単体として回収することが試みられている。たとえば、メッキ工場廃液にはNi、Cu、Zn等が含有され、半導体製造工場廃液には、Cu、Ga等が含有され、液晶製造工場廃液にはIn等が含有され、これらを金属単体あるいは合金として回収できれば、それらの金属を再利用すること等も可能となる。
【0003】
重金属類を回収する廃液の処理技術として、従来では薬剤を用いた凝集沈殿処理、共沈処理等が一般に採用されており、濃度が低い場合には吸着剤を用いて金属類を除去することも行なわれている。また廃メッキ液からの金属回収では、鉄スクラップを廃メッキ液に投入し、Cu等の回収対象金属をセメンテーション法で回収する方法がある。たとえば共沈処理を利用する技術として下記特許文献1に係る発明がある。
【0004】
【特許文献1】特開2002−126758号公報
【0005】
しかしながら、薬剤を用いた凝集沈殿処理では、水酸化物の沈殿物がスラッジとして発生するという問題点がある。また鉄スクラップを廃メッキ液に投入し、セメンテーション法によりCu等を析出させる方法では、析出したCuが鉄スクラップ表面を覆った時点で析出反応が終了し、鉄をCuでコーティングしたものが回収されることとなり、目的とする金属のみを回収対象金属として回収することができない。また回収率が低く純度も低いものしか得られないという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、廃液等の被処理液から目的とする金属のみを有価物である金属単体あるいは合金として回収することができ、且つ回収対象金属以外の不純物を含有する可能性が少なく、回収率が高く回収対象金属の純度が高い回収方法と装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、金属の回収方法に係る請求項1記載の発明は、回収すべき金属がイオン状態で含有されている被処理液をリアクター本体内に流入するとともに、該リアクター本体内に回収すべき金属よりもイオン化傾向が大きい平均粒径0.1〜8mmの金属粒子を添加し、該金属粒子を流動させ、イオン化傾向の差異により前記被処理液中に含有される金属を前記金属粒子の表面に析出させ、その後、剥離手段によって前記金属粒子から前記析出した金属を剥離して回収することを特徴とする。
【0008】
また請求項2記載の発明は、請求項1記載の金属の回収方法において、金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、超音波によって金属粒子を振動させる手段であることを特徴とする。さらに請求項3記載の発明は、請求項1記載の金属の回収方法において、金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、電磁石12によって金属粒子を攪拌し相互に衝突させる手段であることを特徴とする。さらに請求項4記載の発明は、請求項1記載の金属の回収方法において、金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、リアクター本体内に筒状部25を設け、該筒状部25内に気体を吹き込んで金属粒子を攪拌する手段であることを特徴とする。
【0009】
さらに請求項5記載の発明は、請求項1記載の金属の回収方法において、金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、エアジェット又はウオータージェットによって金属粒子を攪拌する手段であることを特徴とする。さらに請求項6記載の発明は、請求項1記載の金属の回収方法において、金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、リアクター本体内の被処理液及び金属粒子を循環させて輸送させる流路32及びポンプ33を前記リアクター本体1の外部に設け、前記被処理液及び金属粒子を循環、輸送させることによって前記金属粒子を攪拌する手段であることを特徴とする。
【0010】
さらに請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の金属の回収方法において、金属粒子の平均粒径が0.5〜6mmであることを特徴とする。さらに請求項8記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の金属の回収方法において、金属粒子の平均粒径が1.0〜2.0mmであることを特徴とする。さらに請求項9記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の金属の回収方法において、金属粒子がアルミニウムであって、該金属粒子の平均粒径が1.5〜5.5mmであることを特徴とする。さらに請求項10記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の金属の回収方法において、金属粒子が亜鉛であって、該金属粒子の平均粒径が1.5〜4.0mmであることを特徴とする。
【0011】
さらに請求項11記載の発明は、請求項1乃至10のいずれかに記載の金属の回収方法において、被処理液がリアクター本体の下部から流入し、リアクター本体の上部から流出するように構成されていることを特徴とする。さらに請求項12記載の発明は、請求項11記載の金属の回収方法において、リアクター本体の断面積が上方に向かって増加するように、前記リアクター本体が構成されていることを特徴とする。さらに請求項13記載の発明は、請求項1乃至12のいずれかに記載の金属の回収方法において、複数段のリアクター本体によって、異なる2種以上の金属粒子で2種以上の金属を選択的に回収することを特徴とする。さらに請求項14記載の発明は、請求項1乃至13記載の金属の回収方法において、剥離された回収すべき金属をフィルターで回収することを特徴とする。
【0012】
さらに金属の回収装置に係る請求項15記載の発明は、回収すべき金属がイオン状態で含有されている被処理液を流入するとともに、平均粒径0.1〜8mmの金属粒子を添加して、イオン化傾向の差異により前記被処理液中に含有される金属を前記金属粒子の表面に析出させる金属析出反応を行なうためのリアクター本体と、前記析出した金属を回収すべく、前記金属粒子から剥離させるための剥離手段とを具備することを特徴とする。
【0013】
さらに請求項16記載の発明は、請求項15記載の金属の回収装置において、金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、超音波によって金属粒子を振動させる手段であることを特徴とする。さらに請求項17記載の発明は、請求項15記載の金属の回収装置において、金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、電磁石12によって金属粒子を攪拌し相互に衝突させる手段であることを特徴とする。さらに請求項18記載の発明は、請求項15記載の金属の回収装置において、金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、リアクター本体内に筒状部25を設け、該筒状部25内に気体を吹き込んで金属粒子を攪拌する手段であることを特徴とする。
【0014】
さらに請求項19記載の発明は、請求項15記載の金属の回収装置において、金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、エアジェット又はウオータージェットによって金属粒子を攪拌する手段であることを特徴とする。さらに請求項20記載の発明は、請求項15記載の金属の回収装置において、金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、リアクター本体内の被処理液及び金属粒子を循環させて輸送させる流路32及びポンプ33を前記リアクター本体の外部に設け、前記被処理液及び金属粒子を循環、輸送させることによって前記金属粒子を攪拌する手段であることを特徴とする。
【0015】
さらに請求項21記載の発明は、請求項15乃至20のいずれかに記載の金属の回収装置において、リアクター本体の下部に被処理液の流入部を有し、リアクター本体の上部に液流出部を有するとともに、前記流入部から被処理液がリアクター本体内に流入し、前記液流出部から流出するように構成されていることを特徴とする。さらに請求項22記載の発明は、請求項21記載の金属の回収装置において、リアクター本体の断面積が上方に向かって増加するように、前記リアクター本体が構成されていることを特徴とする。
【0016】
さらに請求項23記載の発明は、請求項15乃至22のいずれかに記載の金属の回収装置において、複数段のリアクター本体が配設されていることを特徴とする。さらに請求項24記載の発明は、請求項15乃至23のいずれかに記載の金属の回収装置において、リアクター本体の後段に剥離された回収すべき金属を回収するためのフィルターが配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上述のように、回収すべき金属を含有する廃液等の被処理液をリアクター本体内に流入するとともに、該リアクター本体内に平均粒径0.1〜8mmの金属粒子を添加し、該金属粒子を流動させ、イオン化傾向の差異により前記廃液中に含有される金属を前記金属粒子の表面に析出させ、その後、剥離手段によって前記金属粒子から前記析出した金属を剥離して回収する方法であるため、平均粒径0.1〜8mmの金属粒子を用いることで従来の鉄のスクラップを用いる方法に比べて反応のための金属の総表面積が増加し、析出反応速度が向上し、またある程度成長した析出金属を剥離手段で剥離させることで常に新しい金属表面を露出させ反応速度を維持することができるので、金属の回収効率を高めることができるという効果がある。
【0018】
また、被処理液をリアクター本体下部から流入し、リアクター本体上部から流出するとともに、リアクター本体の断面積が上方に向かって増加するようにリアクター本体を構成した場合には、リアクター本体内での被処理液の上向流の速度が徐々に減少し、上記のような金属析出反応等により粒径が減少した金属粒子は、断面積が増加していくリアクター本体の上部において、不用意に溢流することなくリアクター本体内に保持することができる。
【0019】
また被処理液はリアクター本体の下部側から流入し、リアクター本体内を通過する際に、上記回収の対象となる金属が上記金属粒子に析出されることから、リアクター本体の上部へ向かうほど被処理液中の回収対象金属の濃度が低下し、また上述のように金属粒子の粒径が減少するので、リアクター本体の上部ほど微細な金属粒子が存在し、さらに被処理液の上向流の速度が徐々に減少することで金属粒子の数が増加すると認められることから、リアクター本体の上部ほど金属粒子の総表面積は大きくなり、その結果、金属析出反応の反応速度が向上して、回収対象金属の濃度がより低濃度となるリアクター本体の上部においても、回収対象金属を効率よく回収処理することができるという効果がある。
【0020】
さらに複数段のリアクター本体を設け、その後段にフィルターを設けた場合には、対象となる被処理液に2種以上の金属が含有されているような場合、たとえば1段目のリアクター本体である種の金属を析出させて1段目のフィルターでその金属を回収し、2段目のリアクター本体では他の金属を析出させて2段目のフィルターで該他の金属を回収するようなことが可能となり、異なる2種以上の金属粒子を用いて被処理液から2種以上の金属を選択的に回収することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面に従って説明する。
(実施形態1)
本実施形態の金属の回収装置は、図1に示すように、縦長のリアクター本体1を具備したものである。本実施形態では被処理液として廃液を対象とする場合について説明する。前記リアクター本体1は、同図に示すように、リアクター上部2、リアクター中間部3、及びリアクター下部4からなり、それぞれ連設部5、6を介して連設されている。リアクター上部2、リアクター中間部3、及びリアクター下部4のそれぞれは同幅に形成されているが、リアクター上部2の断面積はリアクター中間部3の断面積より大きく形成され、リアクター中間部3の断面積はリアクター下部4の断面積より大きく形成されている。この結果、全体としてリアクター本体1の断面積が上方に向かって不連続的に増加するように構成されている。尚、連設部5、6は、上向きに幅広なテーパ状に形成されている。
【0022】
リアクター下部4の下側には、処理対象である廃液を流入するための略円錐形の流入用チャンバー7が設けられ、さらにその下部に流入管8が設けられている。流入管8には、図示しないが、逆止弁が設けられている。またリアクター上部2の上側には、上部チャンバー9が設けられ、その側部に、回収されたフレーク状や微粒子状の金属を排出するための排出管10が設けられている。上部チャンバー9は、このような排出管10によって回収された金属を排出するための部分であるとともに、回収対象金属とイオン化傾向の相違に基づいていわゆるセメンテーション反応(金属析出反応)を生じさせるための、回収対象金属よりもイオン化傾向が大きい金属粒子を投入する部分でもある。実際には、投入される金属と回収される金属とのセメンテーション反応は、前記リアクター本体1の全体で生じることとなる。
【0023】
そして、流入管8から流入された廃液が排出管10に至るまでの間に、その廃液が垂直方向に上昇しつつ金属粒子による流動床を形成するように構成されている。さらに、廃液中に含有されている金属であって、前記セメンテーション反応により前記投入された金属粒子に析出した回収対象金属を剥離させる剥離手段としての超音波発振体11a、11b、11cが、リアクター上部2、リアクター中間部3、及びリアクター下部4にそれぞれ設けられている。
【0024】
本実施形態では、投入する金属粒子として亜鉛(Zn)の粒子が用いられる。また対象となる廃液としては、たとえば銅(Cu)、スズ(Sn)等の金属イオンを含有する金属表面処理工場廃液等が用いられる。この場合には、Cu、Snが金属として回収されることになる。投入する金属粒子の平均粒径は、0.1〜8mmの金属粒子を用いることができるが、本実施形態では平均粒径が2mmのものが用いられる。尚、平均粒径は、画像解析法あるいはJIS Z 8801ふるい分け試験法等により測定される。
【0025】
そして、このような構成からなる金属の回収装置によって金属を回収する方法について説明すると、先ず処理対象である廃液を流入管8から流入用チャンバー7を介してリアクター本体1内に流入する。その一方で、上部チャンバー9からセメンテーション反応を生じさせるための金属粒子(Zn粒子)を投入する。リアクター本体1内においては、流入された廃液が垂直方向に上昇する一方で、その廃液と、上部チャンバー9から投入された金属粒子とが流動床を形成するように流動状態となる。
【0026】
そして廃液中に含有されているCu、Sn等の金属と、投入された金属粒子であるZnとのイオン化傾向の相違に基づく、いわゆるセメンテーション反応を生じさせる。これをより詳細に説明すると、各金属イオンの還元反応は次式(1)〜(3)のとおりであり、各金属イオンの標準電極電位(E°)をそれぞれに示している。
【0027】
Zn2++2e→Zn …(1) −0.76V
Cu2++2e→Cu …(2) +0.34V
Sn2++2e→Sn …(3) −0.14V
【0028】
上記(1)〜(3)からも明らかように、Cu2+、Sn2+に比べて、Zn2+の標準還元電位が最も小さい。換言すれば、Cu、Snに比べて、Znのイオン化傾向が最も大きいことになる。そのため、上記のような流動状態となった状態で、イオン化傾向の大きいZnがZn2+となって(上記(1)式と逆の反応)廃液中に溶出し、それとともに廃液中に含有されていたCu2+、Sn2+がCu、Snとなって、Znの粒子の表面上に析出する。
【0029】
そして、このようなセメンテーション反応によってCu、Snの各金属をZn粒子の表面上に析出させた後、超音波発振体11a、11b、11cを作動させる。この超音波発振体11a、11b、11cを作動させることによって、該超音波発振体11a、11b、11cから発振される超音波が、前記Cu、Snを析出したZn粒子に振動力及び攪拌力を付与し、それによって析出したCu、Snの各金属がZn粒子から強制的に剥離されることとなる。この場合、超音波発振体11a、11b、11cは、連続的に作動させることも可能であるが、連続的に作動させると超音波発振体が発熱し、超音波発振体を長時間作動させることが困難になるおそれがある。また超音波発振体を連続的に作動させると、析出した金属(Cu、Sn)が成長してある程度の大きさになる前に順次剥離され、その結果、ある程度の大きさの析出金属が得られないおそれがある。この点、超音波発振体を
間欠的に作動させると、析出する金属がある程度大きくなるまで不用意に剥離されるおそれが少ないので、剥離した金属の分離が容易になる。従って、超音波発振体11a、11b、11cの作動は間欠的に行なうのが好ましい。この場合の間欠的な作動は、たとえば2秒ON、8秒OFF等によって行なう。
【0030】
このようにして剥離されたCu、Snは、上部チャンバー9から排出管10を経てリアクター本体1の外部に排出され、回収対象金属(本実施形態の場合は、CuとSnの合金)として回収されることとなるのである。この場合において、本実施形態では、回収対象金属を析出させるために投入される金属として、粒子状のものを用いているので、たとえば亜鉛のスクラップを投入するような場合に比べると、セメンテーション反応を生じさせるための金属(Zn)の表面積が増加し、Cu、Snの析出反応の速度が向上することとなる。
【0031】
そして、ある程度成長した金属の析出が認められた後に、上記のような超音波の振動による強制的な剥離によって、常に新しい金属表面(Zn粒子の表面)を露出させ、反応速度を維持することができる。また、従来行われていた亜鉛のスクラップを投入するような方法に比べると、剥離した回収対象金属中にはCu、Sn以外の不純物が非常に少ないものとなる。
【0032】
また、Znからなる金属粒子はリアクター本体1内で流動し、上記のようなセメンテーション反応によってZn2+が溶出するので、上部チャンバー9に投入された金属粒子の投入初期時における粒径は、時間の経過とともにどうしても減少することになる。この結果、本来であれば廃液がほぼ同じ上向流の速度でリアクター本体1内を上昇するので、上部に向かうほど粒径が減少して小さくなった金属粒子がリアクター本体1から不用意に溢流するおそれがある。
【0033】
しかしながら、本実施形態においては、リアクター本体1の断面積が上方へ向かうほど不連続的に大きくなるように形成されているため、リアクター本体1内での廃液の上向流の速度は徐々に減少し、従って上記のようにセメンテーション反応等により粒径が減少した金属粒子は、断面積が増加していくリアクター本体1の上部において、不用意に溢流することなくリアクター本体1内に保持される可能性が高くなる。
【0034】
また、廃液はリアクター本体1の下部側から流入し、リアクター本体1内を通過する際に、セメンテーション反応によりZnからなる金属粒子に、回収対象となるCu、Sn等の金属を析出させることから、リアクター本体1の上部へ向かうほど、廃液中の回収対象金属の濃度が低下する。
【0035】
しかしながら、本実施形態では、リアクター本体1の上部ほど微細な金属粒子が存在し、また廃液の上向流の速度が徐々に減少することで金属粒子の数が増加すると認められることから、リアクター本体1の上部ほど金属粒子の総表面積は大きくなる。この結果、セメンテーション反応の反応速度(回収対象金属析出の効率)が向上することから、回収対象金属の濃度がより低濃度となるリアクター本体1の上部においても、回収対象金属を効率よく回収処理することが可能となるのである。
【0036】
(実施形態2)
本実施形態は、リアクター本体1の構造が上記実施形態1と相違する。すなわち、本実施形態では、図2に示すようにリアクター本体1の周面全体が上向きにテーパ状となるように形成され、リアクター本体1の断面積が連続的に上方に向かって増加するように構成されている。この点で、リアクター本体1の断面積が不連続的に上方に向かって増加している実施形態1の場合と相違している。
【0037】
不連続的ではなく、断面積が連続的に上方に向かって増加するように構成されているので、本実施形態においては実施形態1のようにリアクター上部2、リアクター中間部3、リアクター下部4のように区分して構成されてはいない。
【0038】
しかし、超音波発振体11a、11b、11cが、リアクター本体1の上部から下部にかけての3箇所に設けられている点は実施形態1と共通している。従って、本実施形態においても、実施形態1と同様に、超音波発振体11a、11b、11cから発振される超音波によって、金属粒子に析出している回収対象金属を強制的に剥離することができる効果が得られる。
【0039】
また、不連続的であるか連続的であるかの相違はあるものの、断面積が上方に向かって増加するように構成されている点では実施形態1とは共通しているので、本実施形態においても、粒径が減少した微細な金属粒子をリアクター本体1の上部で保持し、不用意に溢流するのを防止する効果、及び回収対象金属の濃度が低濃度であるリアクター本体1の上部において回収対象金属を効率よく回収処理できる効果が生じることとなるのである。
【0040】
(実施形態3)
本実施形態のリアクター本体1は、縦長のものである点で上記実施形態1、2と共通するが、図3及び図4に示すように上下において断面積が同じとなるように形成されており、この点で断面積が上方に向かって増加するように構成されている上記実施形態1、2と相違している。
【0041】
本実施形態においても、上記実施形態1と同様に、リアクター本体1の下部側に流入用チャンバー7が設けられているとともに、リアクター本体1の上部側に上部チャンバー9が設けられているが、その形状は、略円錐形に形成されていた実施形態1と相違する。すなわち、上部チャンバー9は、図3及び図4に示すように浅い円筒状に形成されており、流入用チャンバー7は、図5及び図6に示すように、中央筒部20と、該中央筒部20に連通して左右に設けられた側筒部21、21とからなる形状に形成されている。
【0042】
本実施形態においては、流入管8、8は、前記流入用チャンバー7の側筒部21、21の先端側にそれぞれ設けられている。そして、流入用チャンバー7の側筒部21、21には邪魔板22、23が2条ずつ縦方向に設けられており、流入管8、8から流入される被処理液が、これらの邪魔板22、23によって流れが乱されるように構成されている。
【0043】
また上部チャンバー9は、図4に示すように内筒9a及び外筒9bで構成されており、同図のように内筒9aがリアクター本体1の上部に外嵌合されることによって、上部チャンバー9がリアクター本体1に取り付けられている。また排出管10は、上部チャンバー9の下部であって、前記内筒9aと外筒9bとの間の位置に取り付けられている。
このように構成されている結果、リアクター本体1の内部を上向きに流通する被処理液は、内筒9aの上部開口部から、外筒9bと内筒9a間に溢流し、前記排出管10から外部に排出されることとなる。
【0044】
また、セメンテーション反応を生じさせるための金属粒子は、内筒9aの上部開口部から投入されることとなる。そして、流入用チャンバー7の流入管8から流入された廃液が上部チャンバー9の排出管10に至るまでの間に被処理液が垂直方向に上昇しつつ金属粒子による流動床を形成するように構成され、投入される金属と回収対象金属とのセメンテーション反応がリアクター本体1の全体で生じる点は、上記実施形態1、2と共通する。
【0045】
さらに本実施形態においても、廃液中に含有されている金属であって、セメンテーション反応により金属粒子に析出した回収対象金属を剥離させる剥離手段として、超音波発振体が採用されている。すなわち本実施形態においては、4個の超音波発振体11a、11b、11c、11dが、リアクター本体1の外周面に取り付けられている。この4個の超音波発振体11a、11b、11c、11dは、いずれも水平面に対して約45度の角度をなしてリアクター本体1に取り付けられているが、そのうちの2個の超音波発振体11a、11cは同じ向きに取り付けられており、他の2個の超音波発振体11b、11dは反対方向を向くように取り付けられている。
【0046】
本実施形態においても、被処理液として廃液が用いられ、その廃液としては、たとえば上記実施形態1と同様のCu、Sn等の金属イオンを含有する金属表面処理工場廃液等が用いられる。この場合には、実施形態1と同様に投入する金属粒子としてZnの粒子が用いられ、Cu、Snが金属として回収されることになる。
【0047】
そして、本実施形態の金属の回収装置によって金属を回収する場合には、先ず廃液を流入管8から流入用チャンバー7を介してリアクター本体1内に流入する。この場合において、流入用チャンバー7は、上述のように中央筒部20と側筒部21、21とで構成され、側筒部21、21には邪魔板22、23が2条ずつ縦方向に設けられているため、側筒部21に対して横向きに取り付けられている流入管8、8から流入する廃液は、横方向に一気に流入するのではなく、縦方向に設けられた邪魔板22、23に沿って側筒部21内を上下に交互に流れながら中央筒部20内に流入し、その中央筒部20からリアクター本体1に向かって上向きに流通することとなる。従って、流入管8、8から流入される廃液は、邪魔板22、23によって流れが乱され、偏流を生じさせずにリアクター本体1内を上向きに流通し易い状態となる。また必要があれば、流入チャンバー7内に、たとえば円筒状のかごにガラスあるいはセラミック製のボールを入れたものを設置することができ、これによって、より確実に偏流を防ぐことが可能となる。
【0048】
廃液中に含有されているCu、Sn等の金属と、投入される金属粒子であるZnとのイオン化傾向の相違に基づく、いわゆるセメンテーション反応の作用、超音波発振体による攪拌及び金属の剥離の作用等は上記実施形態と同じであり、その詳細な説明は省略する。
【0049】
(実施形態4)
本実施形態では、析出した回収対象金属を金属粒子から剥離する手段として、上記実施形態1乃至3の超音波発振体によって発振される超音波で振動させる手段に代えて、電磁石を用いて攪拌する手段を採用している。すなわち、本実施形態においては、図8に示すような電磁石12を具備したスライドボード13が、図7に示すようにリアクター本体1の側方に設けられたガイドレール14に昇降自在に装着されている。スライドボード13は、図8に示すように中央に空間部15を有し、その空間部15内にリアクター本体1を挿入して該リアクター本体1を包囲するように配設されている。尚、図8においては、リアクター本体1は図示されていない。また本実施形態では、リアクター本体1は水平断面が長方形状となるように形成されており、この点で断面が円形、すなわちリアクター本体1が円筒状に形成されていた上記実施形態1乃至3と相違している。
【0050】
そして、図7の矢印16で示すように、上下に交互に移動させることによって、リアクター本体1内の金属粒子を攪拌するとともに、多数の金属粒子を相互に衝突させ、それによって金属粒子から析出金属を強制的に剥離するのである。電磁石12は、たとえば2秒などの一定間隔で交番で印加しており、またスライドボード13の上下の移動は、間欠的若しくは連続的に行なう。金属粒子から析出した回収対象金属を剥離する手段が異なるものの、本実施形態においても、回収対象金属を金属粒子から好適に剥離して回収することができる。尚、本実施形態の場合に用いられる金属粒子は、磁性体である鉄粒子が用いられる。
【0051】
尚、鉄(Fe)イオンの還元反応と標準電極電位は次のとおりである。
Fe2++2e→Fe …(4) −0.44V
これに対して、CuやSnの還元反応や標準電極電位は、上記(2)、(3)式のとおりであり、標準電極電位の数値がFeはCuやSnよりも小さく、従って、Feのイオン化傾向はCuやSnのイオン化傾向よりも大きいため、本実施形態においてもCuやSnを含有する廃液に適用することが可能となる。
【0052】
(実施形態5)
本実施形態では、図9に示すように、リアクターが2個配設されており、その点で1個のみからなる実施形態1乃至4の場合と相違する。すなわち、本実施形態では、1段目の
リアクター本体1aの後段側であって2段目のリアクター本体1bの前段側にフィルター17が設けられ、さらに2段目のリアクター本体1bの後段側にフィルター18が設けられている。フィルターとしては、例えば、カートリッジフィルター、ドラムフィルター等が用いられる。また、フィルターに代えて、ベルトプレス、フィルタープレス等の固液分離手段を用いることも可能である。
【0053】
本実施形態においては、たとえば対象となる廃液にCuとSnが含有されている場合、1段目のリアクター本体1aにはFe粒子を投入し、そのFe粒子にCuを析出させて1段目のフィルター17でCuを回収し、2段目のリアクター本体1bにはZn粒子を投入し、そのZn粒子にSnを析出させて2段目のフィルター18でSnを回収するようなことが可能となる。
【0054】
この場合、上記(2)、(3)、(4)式で示されている標準電極電位の数値から、Cu、SnともにFeよりもイオン化傾向が小さいが、そのイオン化傾向の差は、FeとSnとの差よりもFeとCuとの差の方がはるかに大きく、従って1段目のリアクター本体1aにおいては、Cuが優先的にFe粒子に析出することとなる。一方、上記(1)式で示されている標準電極電位の数値から、Znのイオン化傾向はCu、Snのイオン化傾向よりも大きく、従って2段目のリアクター本体1bにおいては、Cu、SnともにZn粒子に析出するはずであるが、Cuはすでに1段目のリアクター本体1aのFe粒子に析出しているので、2段目のリアクター本体1bにおいては、Snが主としてZn粒子に析出することとなるのである。ただし1段目のリアクター本体1aでFe粒子に析出しなかったCuの残留分は、2段目のリアクター本体1bでZn粒子に析出する。
【0055】
このように、本実施形態では、異なる2種の金属粒子を用いて廃液から2種の金属を選択的に回収することができるという利点がある。
【0056】
(実施形態6)
本実施形態では、図10に示すようにリアクターが3個配設されており、その点で1個のみからなる実施形態1乃至4や2個配設されていた実施形態5の場合と相違する。本実施形態では、これら3個のリアクター本体1a、リアクター本体1b、リアクター本体1cの後段側にフィルター17、フィルター18、フィルター19が設けられている。本実施形態では、上記実施形態5と同様に1段目のリアクター本体1aでFe粒子が投入され、2段目のリアクター本体1bでZn粒子が投入されるが、3段目のリアクター本体1cではアルミニウム(Al)粒子が投入される。
【0057】
本実施形態を、上記実施形態5と同様にCuとSnが含有されている廃液に適用すると、
1段目のリアクター本体1aでは実施形態5と同様にFe粒子にCuが析出されて1段目のフィルター17でCuが回収され、2段目のリアクター本体1bにおいても実施形態5と同様にZn粒子にSnが析出されて2段目のフィルター18でSnが回収される。
【0058】
しかしながら、3段目のリアクター本体1cにおいては、実施形態5からは予期できない作用が生じる。すなわち、上記のように1段目のリアクター本体1aでセメンテーション反応により溶出したFeと、2段目のリアクター本体1bでセメンテーション反応により溶出したZnは、3段目のリアクター本体1cに投入されるAl粒子に析出する。
【0059】
この点をより詳細に説明すると、Alイオンの還元反応と標準電極電位は次式(5)で示される。
Al3++3e→Al …(5) −1.66V
1段目のリアクター本体1aで投入されたFe粒子と、2段目のリアクター本体1bで投入されたZn粒子は、上述のように回収対象金属よりもイオン化傾向の大きい金属からなるが、(1)、(4)、(5)式で示される標準電極電位の数値の比較から、Alのイオン化傾向は、Fe、Znのイオン化傾向よりさらに大きいことは明らかである。従って、
1段目のリアクター本体1aで溶出したFeと、2段目のリアクター本体1bで溶出したZnは、ともに3段目のリアクター本体1cでAl粒子に析出されることとなるのである。
そして、Al粒子によってFe−Znの合金として回収することが可能となる。
【0060】
従って、1段目のリアクター本体1aと2段目のリアクター本体1bでそれぞれ溶出したFeとZnとを、後段で凝集沈殿させる等の作業が不要となり、スラッジ発生量を抑制することが可能となる。尚、3段目のリアクター本体1cではAlが溶出するが、3価のAlは2価のZnやFeより少ない溶出量で済み、Alの比重も軽く、スラッジ重量を減少させることができることから、スラッジ発生量が増大することはない。
【0061】
(実施形態7)
本実施形態では、析出した回収対象金属を金属粒子から剥離する手段として、上記実施形態1乃至3の超音波発振体によって発振される超音波で振動させる手段、及び実施形態4の電磁石を用いて攪拌する手段に代えて、空気のような気体を吹き込んで攪拌する、いわゆるエアリフト作用を利用した手段を採用している。すなわち、本実施形態においては、図11に示すように、リアクター本体1の略中央に筒状部25が具備されており、その筒状部25の下部に気体流入パイプ26が接続されている。この気体流入パイプ26の一端側開口部である気体流入口27は前記リアクター本体1の外側に臨出され、気体流入パイプ26の他端側開口部28は前記筒状部25と連通状態とされている。また、筒状部25の下部開口部29の下方には、邪魔板30が設けられている。
【0062】
本実施形態においては、上記実施形態3と同様にリアクター本体1が略円筒状に形成されており、また上記実施形態1乃至3と同様にリアクター本体1の下部に流入用チャンバー7が設けられ、上部には上部チャンバーが設けられている。ただし図11には、排出管10は図示しているが、上部チャンバーは図示していない。本実施形態では、投入する金属粒子としてAl又はZnの粒子が用いられる。また対象となる廃液としては、インジウム(In)イオンを含有するフラット・パネル・ディスプレイ(FPD)製造工場廃液等が用いられる。この場合には、Inが金属として回収されることになる。
【0063】
投入する金属粒子の平均粒径は上述のように0.1〜8mmの金属粒子を用いることができるが、金属粒子がAlの場合には1.5〜5.5mmのものが好ましく、Znの場合には1.5〜4.0mmのものが好ましい。Zn粒子の場合は4.0mmを超えると、またAl粒子の場合は5.5mmを超えると、それらの粒子を流動させるのに必要な流速が大きくなるとともに気体吹込量が多くなるからである。一方、セメンテーション反応によって徐々に金属粒子の粒径が小さくなることから、当初の金属粒子の粒径が小さいと、処理液とともにリアクター本体1から金属粒子が流出する可能性があることは上述のとおりであるが、この観点から、Zn粒子やAl粒子の場合は1.5mm以上であることが好ましい。
【0064】
そして、本実施形態の金属の回収装置によって金属を回収する方法について説明すると、上記各実施形態と同様に先ず流入用チャンバー7を介して廃液をリアクター本体1内に流入し、上部チャンバーから金属粒子を投入する。また気体流入パイプ26を介して筒状部25へ気体を流入させる。これによって筒状部25内の気体と水の混合部分の比重が低下し、気体とともに液体が上部へ押し上げられる。
【0065】
このように、筒状部25へ気体を流入させ上向きに流通させることで、筒状部25内の被処理液も上向きに流通することとなる。このように被処理液は筒状部25の内部を流通するが、筒状部25の内部と外部とで圧力差が生じるため、被処理液の流通速度も筒状部25の内部と外部とで異なることとなり、その結果、リアクター本体1内で金属粒子が攪拌され、金属粒子の表面上に析出したInが剥離されることとなるのである。
【0066】
この場合において、本実施形態における回収対象金属であるInは、スポンジ状で析出するため、上記実施形態1等のCu、Snに比べるとZn等の金属粒子への密着性が悪く、従って上記実施形態1乃至3のような超音波振動によって強制的に剥離する手段や、実施形態4のような電磁石を用いて強制的に剥離する手段を採用しなくても、本実施形態のように単にエアリフト作用を利用した攪拌手段であっても、Inを金属粒子から比較的容易に剥離させることができる。すなわち、簡易且つ低エネルギーな手段を有する装置で、Inを回収することが可能である。
【0067】
そして廃液中に含有されているInと、投入された金属粒子であるZn又はAlとのイオン化傾向の相違に基づく、いわゆるセメンテーション反応を生じさせる。これをより詳細に説明すると、Inイオンの還元反応は次式のとおりであり、標準電極電位(E°)も示している。
In3++3e→In …(6) −0.34V
【0068】
上記(1)、(5)、(6)式からも明らかように、In3+に比べて、Zn2+やAl3+の標準準還元電位が小さい。換言すれば、Inに比べて、ZnやAlのイオン化傾向が大きいことになる。そのため、上記のようなエアリフト作用を利用した攪拌により、イオン化傾向の大きいZnやAlがZn2+或いはAl3+となって廃液中に溶出し、それとともに廃液中に含有されていたIn3+がInとなって、ZnやAlの粒子の表面上に析出する。このようなセメンテーション反応によってInをZn粒子或いはAl粒子の表面上に析出させた後、上記のようなエアリフト作用を利用した攪拌によって析出したInがZn粒子或いはAl粒子から剥離され、剥離されたInは、排出管10を経てリアクター本体1の外部に排出され、回収されることとなるのである。
【0069】
尚、本実施形態では、筒状部25の下部開口部29の下方に邪魔板30が設けられているため、流入用チャンバー7から流入する廃液の水流が直接筒状部25に流入することがなく、邪魔板30に当たり、筒状部25内の被処理液の流通速度が極端に速くなるのが好適に阻止されることとなる。
【0070】
(実施形態8)
本実施形態では、回収対象金属を金属粒子から剥離する手段として、エアジェット攪拌又はウオータージェット攪拌を採用し、この点で上記実施形態1乃至7と相違している。すなわち、本実施形態においては、図12に示すように、ジェット攪拌用噴出具31をリアクター本体1の周面部に取り付け、そのジェット攪拌用噴出具31から空気又は水が噴出されてリアクター本体1内に微細な気泡が発生するように構成されている。すなわち、エアジェット攪拌とは空気等の気体を噴出させて微細な気泡を発生させることを意味し、ウオータージェット攪拌とは水等の液体を噴出させて微細な気泡を発生させることを意味する。
【0071】
リアクター本体1の形状や流入用チャンバー7、排出管10が設けられている構成は上記実施形態7と同じであるため、その説明は省略する。また投入する金属粒子や対象となる廃液の種類、さらにはセメンテーション反応の作用等も上記実施形態7と同じであるため、その詳細な説明は省略する。本実施形態においては、上記ジェット攪拌用噴出具31から空気のような気体又は水(たとえば処理液)が噴出されてリアクター本体1内に乱流が発生し、その乱流によってリアクター本体1内の金属粒子が攪拌され、それによって金属粒子の表面上に析出したInが剥離されることとなるのである。
【0072】
本実施形態においても、析出金属であるInがZn等の金属粒子への密着性が悪いものであるため、上記実施形態1乃至3のような超音波振動によって強制的に剥離する手段や、実施形態4のような電磁石を用いて強制的に剥離する手段を採用しなくても、単にエアジェット又はウオータージェット攪拌を行なうだけの手段によって、Inを金属粒子から比較的容易に剥離させることができる。すなわち、簡易且つ低エネルギーな撹拌手段を有する装置で、Inを回収することが可能である。
【0073】
(実施形態9)
本実施形態では、回収対象金属を金属粒子から剥離する手段として、固液輸送ポンプ攪拌による手段を採用し、この点で上記実施形態1乃至8と相違している。すなわち、本実施形態においては、図13に示すようにリアクター本体1内の被処理液及び金属粒子を循環させて輸送させる流路32とポンプ33とをリアクター本体1の外部に設け、被処理液及び金属粒子を、前記ポンプ33により前記流路32及びリアクター本体1で循環、輸送させることによって前記金属粒子を攪拌する手段を採用している。
【0074】
リアクター本体1の形状や流入用チャンバー7、排出管10が設けられている構成は上記実施形態7、8と同じであるため、その説明は省略する。また投入する金属粒子や対象となる廃液の種類、さらにはセメンテーション反応の作用等も上記実施形態7、8と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0075】
本実施形態においては、ポンプ33によって被処理液が金属粒子とともにリアクター本体1から流路32へ流出され、その流路32を循環して再度リアクター本体1へ返送されることになり、その結果、リアクター本体1内の金属粒子が攪拌され、それによって金属粒子の表面上に析出したInが剥離されることとなる。
【0076】
本実施形態においても、析出金属であるInがZn等の金属粒子への密着性が悪いものであるため、上記実施形態1乃至3のような超音波振動によって強制的に剥離する手段や、実施形態4のような電磁石を用いて強制的に剥離する手段を採用しなくても、ポンプ33や流路32を用いて単に固液輸送ポンプ攪拌するだけの手段によって、Inを金属粒子から比較的容易に剥離させることができる。すなわち、簡易且つ低エネルギーな手段を有する装置で、Inを回収することが可能である。
【0077】
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態では、廃液(被処理液)としてCu、Snのイオンを含有する金属表面処理工場の廃液に適用する場合について説明したが、対象となる廃液の種類はこれに限定されるものではなく、メッキ工場廃液、半導体製造工場廃液、液晶製造工場廃液等に適用することも可能である。また被処理液として、本発明においては廃液を用いることを主眼としているが、廃液以外の被処理液、たとえば、金属含有固形廃棄物に酸等の薬品を接触させて回収すべき金属を溶解してイオン化して得られた水溶液に適用可能である。
従って、回収の対象となる金属の種類も該実施形態のCu、Sn、Inに限らず、たとえば、Ni、Ga、Zn等を回収対象金属とすることも可能であり、回収対象金属の種類は問わない。
【0078】
また、該実施形態では、金属粒子の平均粒径を約2mmとしてが、金属粒子の平均粒径は該実施形態に限定されるものではなく、要は0.1〜8mmであればよい。0.1mm未満であると、セメンテーション反応が必ずしも好適に行なわれるとは限らず、また金属粒子から剥離した回収対象金属の回収が容易に行なえない可能性があり、また8mmを超えると、リアクター本体内で保持しうる金属粒子の数が減少し、結果的に金属粒子の総表面積が減少して析出反応の効率が低下するおそれがあり、また金属粒子を流動させるために流速を上げる必要が生じ、必要な反応時間を保持するためにリアクターを大型化(リアクター高さを高く)する必要があるからである。この観点からは、0.5〜6mmであることがより好ましい。さらに、リアクター本体内での流動性、反応性を良好にし、リアクター本体内での保持を容易にするためには、1.0〜2.0mmの範囲であることが、さらに好ましい。尚、金属粒子の平均粒径は、前述の通り、画像解析法、JIS Z 8801ふるい分け試験法等にて測定される。画像解析法による平均粒径の測定は、例えば、日機装株式会社製のミリトラックJPAが用いられる。また、JISのふるい分け法では、平均粒径1〜2mmの範囲とする場合は、例えば、呼び寸法2000μmふるい下で、1000μmふるい上となる金属粒子を用いる。
【0079】
さらに、金属粒子の均一度は、5より小さいのが、処理効率や運転制御等の観点から好ましい。ここで金属粒子の均一度とは、粒度分布測定或いはふるい分け等によって形成される透過率曲線(ある粒径より小さい粒子の質量の全試料質量に対する百分率、すなわち透過率をある粒径に対して描いた曲線、ふるい下累積曲線ともいう)において、ふるい下60%粒径をふるい下10%粒径で割った値をいう。粒度分布の幅を表すものである。
【0080】
さらに、また、該実施形態では、金属粒子は、金属単体を利用したが、合金であってもよい。合金としては、鉄−アルミニウム合金、カルシウム−シリコン合金等を用いることができる。
【0081】
さらに、上記実施形態1、2では、リアクター本体1の断面積が上部に向かうほど大きくなるように形成したため、上記のような好ましい効果が得られたが、このようにリアクター本体1を形成することは本発明に必須の条件ではない。実施形態3、7、8、9のようにリアクター本体1の断面積が同じで全体が略円筒状になるように形成することも可能である。
【0082】
さらに、金属粒子から析出金属を剥離する手段も、上記実施形態1乃至9の各手段に限定されるものではなく、これら以外の手段であってもよい。
【実施例】
【0083】
金属粒子としてZnを用い、試験用の模擬被処理液として硫酸銅溶液を用いた。試験用装置として図14に示すように、中央に超音波発振体11を具備させたリアクター本体1の他、2台のタンク34、35、2台のポンプ36、37、バグフィルター38及びこれらを接続する流路39、40、41を設けた装置を用いた。
【0084】
硫酸銅溶液のpHは5、初期濃度は65.5mg/L、処理液量は70Lとし、平均粒径0.05mm、1mm、2mm、5mm、10mmの金属粒子について、被処理液を図14に示す試験装置を循環するように供給して試験を行なった。試験結果を表1乃至5、及び図15に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【0089】
【表5】
【0090】
表1乃至5及び図15からも明らかなように、平均粒径1mm、2mm、5mmの金属粒子を採用した場合には、0.05mm、10mmの金属粒子を採用した場合に比べると
析出金属である銅(Cu)の除去率が良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】一実施形態としての金属の回収装置の概略正面図。
【図2】他実施形態の金属の回収装置の概略正面図。
【図3】他実施形態の金属の回収装置の概略斜視図。
【図4】他実施形態の金属の回収装置の概略断面図。
【図5】他実施形態の金属の回収装置における流入用チャンバーの概略平面図。
【図6】図5のA−A線格段断面図。
【図7】他実施形態の金属の回収装置の概略正面図。
【図8】図7の実施形態に使用される電磁石を具備したスライドボードの概略平面図。
【図9】他実施形態の金属の回収装置の概略ブロック図。
【図10】他実施形態の金属の回収装置の概略ブロック図。
【図11】他実施形態の金属の回収装置の概略正面図。
【図12】他実施形態の金属の回収装置の概略正面図。
【図13】他実施形態の金属の回収装置の概略正面図。
【図14】実施例の試験装置を示す概略ブロック図。
【図15】試験結果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0092】
1、1a、1b、1c…リアクター本体
11a、11b、11c、11d…超音波発振体
12…電磁石 17、18、19…フィルター
25…筒状部 32…流路
33…ポンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の回収方法とその装置、さらに詳しくは、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Sn(錫)、In(インジウム)、Ga(ガリウム)等の重金属を含む廃液等の被処理液から、それらを有価物である金属単体あるいは合金として回収する方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、産業廃液には種々の金属が含有されていることがあり、それらを有価物である金属単体として回収することが試みられている。たとえば、メッキ工場廃液にはNi、Cu、Zn等が含有され、半導体製造工場廃液には、Cu、Ga等が含有され、液晶製造工場廃液にはIn等が含有され、これらを金属単体あるいは合金として回収できれば、それらの金属を再利用すること等も可能となる。
【0003】
重金属類を回収する廃液の処理技術として、従来では薬剤を用いた凝集沈殿処理、共沈処理等が一般に採用されており、濃度が低い場合には吸着剤を用いて金属類を除去することも行なわれている。また廃メッキ液からの金属回収では、鉄スクラップを廃メッキ液に投入し、Cu等の回収対象金属をセメンテーション法で回収する方法がある。たとえば共沈処理を利用する技術として下記特許文献1に係る発明がある。
【0004】
【特許文献1】特開2002−126758号公報
【0005】
しかしながら、薬剤を用いた凝集沈殿処理では、水酸化物の沈殿物がスラッジとして発生するという問題点がある。また鉄スクラップを廃メッキ液に投入し、セメンテーション法によりCu等を析出させる方法では、析出したCuが鉄スクラップ表面を覆った時点で析出反応が終了し、鉄をCuでコーティングしたものが回収されることとなり、目的とする金属のみを回収対象金属として回収することができない。また回収率が低く純度も低いものしか得られないという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、廃液等の被処理液から目的とする金属のみを有価物である金属単体あるいは合金として回収することができ、且つ回収対象金属以外の不純物を含有する可能性が少なく、回収率が高く回収対象金属の純度が高い回収方法と装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、金属の回収方法に係る請求項1記載の発明は、回収すべき金属がイオン状態で含有されている被処理液をリアクター本体内に流入するとともに、該リアクター本体内に回収すべき金属よりもイオン化傾向が大きい平均粒径0.1〜8mmの金属粒子を添加し、該金属粒子を流動させ、イオン化傾向の差異により前記被処理液中に含有される金属を前記金属粒子の表面に析出させ、その後、剥離手段によって前記金属粒子から前記析出した金属を剥離して回収することを特徴とする。
【0008】
また請求項2記載の発明は、請求項1記載の金属の回収方法において、金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、超音波によって金属粒子を振動させる手段であることを特徴とする。さらに請求項3記載の発明は、請求項1記載の金属の回収方法において、金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、電磁石12によって金属粒子を攪拌し相互に衝突させる手段であることを特徴とする。さらに請求項4記載の発明は、請求項1記載の金属の回収方法において、金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、リアクター本体内に筒状部25を設け、該筒状部25内に気体を吹き込んで金属粒子を攪拌する手段であることを特徴とする。
【0009】
さらに請求項5記載の発明は、請求項1記載の金属の回収方法において、金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、エアジェット又はウオータージェットによって金属粒子を攪拌する手段であることを特徴とする。さらに請求項6記載の発明は、請求項1記載の金属の回収方法において、金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、リアクター本体内の被処理液及び金属粒子を循環させて輸送させる流路32及びポンプ33を前記リアクター本体1の外部に設け、前記被処理液及び金属粒子を循環、輸送させることによって前記金属粒子を攪拌する手段であることを特徴とする。
【0010】
さらに請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の金属の回収方法において、金属粒子の平均粒径が0.5〜6mmであることを特徴とする。さらに請求項8記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の金属の回収方法において、金属粒子の平均粒径が1.0〜2.0mmであることを特徴とする。さらに請求項9記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の金属の回収方法において、金属粒子がアルミニウムであって、該金属粒子の平均粒径が1.5〜5.5mmであることを特徴とする。さらに請求項10記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の金属の回収方法において、金属粒子が亜鉛であって、該金属粒子の平均粒径が1.5〜4.0mmであることを特徴とする。
【0011】
さらに請求項11記載の発明は、請求項1乃至10のいずれかに記載の金属の回収方法において、被処理液がリアクター本体の下部から流入し、リアクター本体の上部から流出するように構成されていることを特徴とする。さらに請求項12記載の発明は、請求項11記載の金属の回収方法において、リアクター本体の断面積が上方に向かって増加するように、前記リアクター本体が構成されていることを特徴とする。さらに請求項13記載の発明は、請求項1乃至12のいずれかに記載の金属の回収方法において、複数段のリアクター本体によって、異なる2種以上の金属粒子で2種以上の金属を選択的に回収することを特徴とする。さらに請求項14記載の発明は、請求項1乃至13記載の金属の回収方法において、剥離された回収すべき金属をフィルターで回収することを特徴とする。
【0012】
さらに金属の回収装置に係る請求項15記載の発明は、回収すべき金属がイオン状態で含有されている被処理液を流入するとともに、平均粒径0.1〜8mmの金属粒子を添加して、イオン化傾向の差異により前記被処理液中に含有される金属を前記金属粒子の表面に析出させる金属析出反応を行なうためのリアクター本体と、前記析出した金属を回収すべく、前記金属粒子から剥離させるための剥離手段とを具備することを特徴とする。
【0013】
さらに請求項16記載の発明は、請求項15記載の金属の回収装置において、金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、超音波によって金属粒子を振動させる手段であることを特徴とする。さらに請求項17記載の発明は、請求項15記載の金属の回収装置において、金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、電磁石12によって金属粒子を攪拌し相互に衝突させる手段であることを特徴とする。さらに請求項18記載の発明は、請求項15記載の金属の回収装置において、金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、リアクター本体内に筒状部25を設け、該筒状部25内に気体を吹き込んで金属粒子を攪拌する手段であることを特徴とする。
【0014】
さらに請求項19記載の発明は、請求項15記載の金属の回収装置において、金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、エアジェット又はウオータージェットによって金属粒子を攪拌する手段であることを特徴とする。さらに請求項20記載の発明は、請求項15記載の金属の回収装置において、金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、リアクター本体内の被処理液及び金属粒子を循環させて輸送させる流路32及びポンプ33を前記リアクター本体の外部に設け、前記被処理液及び金属粒子を循環、輸送させることによって前記金属粒子を攪拌する手段であることを特徴とする。
【0015】
さらに請求項21記載の発明は、請求項15乃至20のいずれかに記載の金属の回収装置において、リアクター本体の下部に被処理液の流入部を有し、リアクター本体の上部に液流出部を有するとともに、前記流入部から被処理液がリアクター本体内に流入し、前記液流出部から流出するように構成されていることを特徴とする。さらに請求項22記載の発明は、請求項21記載の金属の回収装置において、リアクター本体の断面積が上方に向かって増加するように、前記リアクター本体が構成されていることを特徴とする。
【0016】
さらに請求項23記載の発明は、請求項15乃至22のいずれかに記載の金属の回収装置において、複数段のリアクター本体が配設されていることを特徴とする。さらに請求項24記載の発明は、請求項15乃至23のいずれかに記載の金属の回収装置において、リアクター本体の後段に剥離された回収すべき金属を回収するためのフィルターが配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上述のように、回収すべき金属を含有する廃液等の被処理液をリアクター本体内に流入するとともに、該リアクター本体内に平均粒径0.1〜8mmの金属粒子を添加し、該金属粒子を流動させ、イオン化傾向の差異により前記廃液中に含有される金属を前記金属粒子の表面に析出させ、その後、剥離手段によって前記金属粒子から前記析出した金属を剥離して回収する方法であるため、平均粒径0.1〜8mmの金属粒子を用いることで従来の鉄のスクラップを用いる方法に比べて反応のための金属の総表面積が増加し、析出反応速度が向上し、またある程度成長した析出金属を剥離手段で剥離させることで常に新しい金属表面を露出させ反応速度を維持することができるので、金属の回収効率を高めることができるという効果がある。
【0018】
また、被処理液をリアクター本体下部から流入し、リアクター本体上部から流出するとともに、リアクター本体の断面積が上方に向かって増加するようにリアクター本体を構成した場合には、リアクター本体内での被処理液の上向流の速度が徐々に減少し、上記のような金属析出反応等により粒径が減少した金属粒子は、断面積が増加していくリアクター本体の上部において、不用意に溢流することなくリアクター本体内に保持することができる。
【0019】
また被処理液はリアクター本体の下部側から流入し、リアクター本体内を通過する際に、上記回収の対象となる金属が上記金属粒子に析出されることから、リアクター本体の上部へ向かうほど被処理液中の回収対象金属の濃度が低下し、また上述のように金属粒子の粒径が減少するので、リアクター本体の上部ほど微細な金属粒子が存在し、さらに被処理液の上向流の速度が徐々に減少することで金属粒子の数が増加すると認められることから、リアクター本体の上部ほど金属粒子の総表面積は大きくなり、その結果、金属析出反応の反応速度が向上して、回収対象金属の濃度がより低濃度となるリアクター本体の上部においても、回収対象金属を効率よく回収処理することができるという効果がある。
【0020】
さらに複数段のリアクター本体を設け、その後段にフィルターを設けた場合には、対象となる被処理液に2種以上の金属が含有されているような場合、たとえば1段目のリアクター本体である種の金属を析出させて1段目のフィルターでその金属を回収し、2段目のリアクター本体では他の金属を析出させて2段目のフィルターで該他の金属を回収するようなことが可能となり、異なる2種以上の金属粒子を用いて被処理液から2種以上の金属を選択的に回収することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面に従って説明する。
(実施形態1)
本実施形態の金属の回収装置は、図1に示すように、縦長のリアクター本体1を具備したものである。本実施形態では被処理液として廃液を対象とする場合について説明する。前記リアクター本体1は、同図に示すように、リアクター上部2、リアクター中間部3、及びリアクター下部4からなり、それぞれ連設部5、6を介して連設されている。リアクター上部2、リアクター中間部3、及びリアクター下部4のそれぞれは同幅に形成されているが、リアクター上部2の断面積はリアクター中間部3の断面積より大きく形成され、リアクター中間部3の断面積はリアクター下部4の断面積より大きく形成されている。この結果、全体としてリアクター本体1の断面積が上方に向かって不連続的に増加するように構成されている。尚、連設部5、6は、上向きに幅広なテーパ状に形成されている。
【0022】
リアクター下部4の下側には、処理対象である廃液を流入するための略円錐形の流入用チャンバー7が設けられ、さらにその下部に流入管8が設けられている。流入管8には、図示しないが、逆止弁が設けられている。またリアクター上部2の上側には、上部チャンバー9が設けられ、その側部に、回収されたフレーク状や微粒子状の金属を排出するための排出管10が設けられている。上部チャンバー9は、このような排出管10によって回収された金属を排出するための部分であるとともに、回収対象金属とイオン化傾向の相違に基づいていわゆるセメンテーション反応(金属析出反応)を生じさせるための、回収対象金属よりもイオン化傾向が大きい金属粒子を投入する部分でもある。実際には、投入される金属と回収される金属とのセメンテーション反応は、前記リアクター本体1の全体で生じることとなる。
【0023】
そして、流入管8から流入された廃液が排出管10に至るまでの間に、その廃液が垂直方向に上昇しつつ金属粒子による流動床を形成するように構成されている。さらに、廃液中に含有されている金属であって、前記セメンテーション反応により前記投入された金属粒子に析出した回収対象金属を剥離させる剥離手段としての超音波発振体11a、11b、11cが、リアクター上部2、リアクター中間部3、及びリアクター下部4にそれぞれ設けられている。
【0024】
本実施形態では、投入する金属粒子として亜鉛(Zn)の粒子が用いられる。また対象となる廃液としては、たとえば銅(Cu)、スズ(Sn)等の金属イオンを含有する金属表面処理工場廃液等が用いられる。この場合には、Cu、Snが金属として回収されることになる。投入する金属粒子の平均粒径は、0.1〜8mmの金属粒子を用いることができるが、本実施形態では平均粒径が2mmのものが用いられる。尚、平均粒径は、画像解析法あるいはJIS Z 8801ふるい分け試験法等により測定される。
【0025】
そして、このような構成からなる金属の回収装置によって金属を回収する方法について説明すると、先ず処理対象である廃液を流入管8から流入用チャンバー7を介してリアクター本体1内に流入する。その一方で、上部チャンバー9からセメンテーション反応を生じさせるための金属粒子(Zn粒子)を投入する。リアクター本体1内においては、流入された廃液が垂直方向に上昇する一方で、その廃液と、上部チャンバー9から投入された金属粒子とが流動床を形成するように流動状態となる。
【0026】
そして廃液中に含有されているCu、Sn等の金属と、投入された金属粒子であるZnとのイオン化傾向の相違に基づく、いわゆるセメンテーション反応を生じさせる。これをより詳細に説明すると、各金属イオンの還元反応は次式(1)〜(3)のとおりであり、各金属イオンの標準電極電位(E°)をそれぞれに示している。
【0027】
Zn2++2e→Zn …(1) −0.76V
Cu2++2e→Cu …(2) +0.34V
Sn2++2e→Sn …(3) −0.14V
【0028】
上記(1)〜(3)からも明らかように、Cu2+、Sn2+に比べて、Zn2+の標準還元電位が最も小さい。換言すれば、Cu、Snに比べて、Znのイオン化傾向が最も大きいことになる。そのため、上記のような流動状態となった状態で、イオン化傾向の大きいZnがZn2+となって(上記(1)式と逆の反応)廃液中に溶出し、それとともに廃液中に含有されていたCu2+、Sn2+がCu、Snとなって、Znの粒子の表面上に析出する。
【0029】
そして、このようなセメンテーション反応によってCu、Snの各金属をZn粒子の表面上に析出させた後、超音波発振体11a、11b、11cを作動させる。この超音波発振体11a、11b、11cを作動させることによって、該超音波発振体11a、11b、11cから発振される超音波が、前記Cu、Snを析出したZn粒子に振動力及び攪拌力を付与し、それによって析出したCu、Snの各金属がZn粒子から強制的に剥離されることとなる。この場合、超音波発振体11a、11b、11cは、連続的に作動させることも可能であるが、連続的に作動させると超音波発振体が発熱し、超音波発振体を長時間作動させることが困難になるおそれがある。また超音波発振体を連続的に作動させると、析出した金属(Cu、Sn)が成長してある程度の大きさになる前に順次剥離され、その結果、ある程度の大きさの析出金属が得られないおそれがある。この点、超音波発振体を
間欠的に作動させると、析出する金属がある程度大きくなるまで不用意に剥離されるおそれが少ないので、剥離した金属の分離が容易になる。従って、超音波発振体11a、11b、11cの作動は間欠的に行なうのが好ましい。この場合の間欠的な作動は、たとえば2秒ON、8秒OFF等によって行なう。
【0030】
このようにして剥離されたCu、Snは、上部チャンバー9から排出管10を経てリアクター本体1の外部に排出され、回収対象金属(本実施形態の場合は、CuとSnの合金)として回収されることとなるのである。この場合において、本実施形態では、回収対象金属を析出させるために投入される金属として、粒子状のものを用いているので、たとえば亜鉛のスクラップを投入するような場合に比べると、セメンテーション反応を生じさせるための金属(Zn)の表面積が増加し、Cu、Snの析出反応の速度が向上することとなる。
【0031】
そして、ある程度成長した金属の析出が認められた後に、上記のような超音波の振動による強制的な剥離によって、常に新しい金属表面(Zn粒子の表面)を露出させ、反応速度を維持することができる。また、従来行われていた亜鉛のスクラップを投入するような方法に比べると、剥離した回収対象金属中にはCu、Sn以外の不純物が非常に少ないものとなる。
【0032】
また、Znからなる金属粒子はリアクター本体1内で流動し、上記のようなセメンテーション反応によってZn2+が溶出するので、上部チャンバー9に投入された金属粒子の投入初期時における粒径は、時間の経過とともにどうしても減少することになる。この結果、本来であれば廃液がほぼ同じ上向流の速度でリアクター本体1内を上昇するので、上部に向かうほど粒径が減少して小さくなった金属粒子がリアクター本体1から不用意に溢流するおそれがある。
【0033】
しかしながら、本実施形態においては、リアクター本体1の断面積が上方へ向かうほど不連続的に大きくなるように形成されているため、リアクター本体1内での廃液の上向流の速度は徐々に減少し、従って上記のようにセメンテーション反応等により粒径が減少した金属粒子は、断面積が増加していくリアクター本体1の上部において、不用意に溢流することなくリアクター本体1内に保持される可能性が高くなる。
【0034】
また、廃液はリアクター本体1の下部側から流入し、リアクター本体1内を通過する際に、セメンテーション反応によりZnからなる金属粒子に、回収対象となるCu、Sn等の金属を析出させることから、リアクター本体1の上部へ向かうほど、廃液中の回収対象金属の濃度が低下する。
【0035】
しかしながら、本実施形態では、リアクター本体1の上部ほど微細な金属粒子が存在し、また廃液の上向流の速度が徐々に減少することで金属粒子の数が増加すると認められることから、リアクター本体1の上部ほど金属粒子の総表面積は大きくなる。この結果、セメンテーション反応の反応速度(回収対象金属析出の効率)が向上することから、回収対象金属の濃度がより低濃度となるリアクター本体1の上部においても、回収対象金属を効率よく回収処理することが可能となるのである。
【0036】
(実施形態2)
本実施形態は、リアクター本体1の構造が上記実施形態1と相違する。すなわち、本実施形態では、図2に示すようにリアクター本体1の周面全体が上向きにテーパ状となるように形成され、リアクター本体1の断面積が連続的に上方に向かって増加するように構成されている。この点で、リアクター本体1の断面積が不連続的に上方に向かって増加している実施形態1の場合と相違している。
【0037】
不連続的ではなく、断面積が連続的に上方に向かって増加するように構成されているので、本実施形態においては実施形態1のようにリアクター上部2、リアクター中間部3、リアクター下部4のように区分して構成されてはいない。
【0038】
しかし、超音波発振体11a、11b、11cが、リアクター本体1の上部から下部にかけての3箇所に設けられている点は実施形態1と共通している。従って、本実施形態においても、実施形態1と同様に、超音波発振体11a、11b、11cから発振される超音波によって、金属粒子に析出している回収対象金属を強制的に剥離することができる効果が得られる。
【0039】
また、不連続的であるか連続的であるかの相違はあるものの、断面積が上方に向かって増加するように構成されている点では実施形態1とは共通しているので、本実施形態においても、粒径が減少した微細な金属粒子をリアクター本体1の上部で保持し、不用意に溢流するのを防止する効果、及び回収対象金属の濃度が低濃度であるリアクター本体1の上部において回収対象金属を効率よく回収処理できる効果が生じることとなるのである。
【0040】
(実施形態3)
本実施形態のリアクター本体1は、縦長のものである点で上記実施形態1、2と共通するが、図3及び図4に示すように上下において断面積が同じとなるように形成されており、この点で断面積が上方に向かって増加するように構成されている上記実施形態1、2と相違している。
【0041】
本実施形態においても、上記実施形態1と同様に、リアクター本体1の下部側に流入用チャンバー7が設けられているとともに、リアクター本体1の上部側に上部チャンバー9が設けられているが、その形状は、略円錐形に形成されていた実施形態1と相違する。すなわち、上部チャンバー9は、図3及び図4に示すように浅い円筒状に形成されており、流入用チャンバー7は、図5及び図6に示すように、中央筒部20と、該中央筒部20に連通して左右に設けられた側筒部21、21とからなる形状に形成されている。
【0042】
本実施形態においては、流入管8、8は、前記流入用チャンバー7の側筒部21、21の先端側にそれぞれ設けられている。そして、流入用チャンバー7の側筒部21、21には邪魔板22、23が2条ずつ縦方向に設けられており、流入管8、8から流入される被処理液が、これらの邪魔板22、23によって流れが乱されるように構成されている。
【0043】
また上部チャンバー9は、図4に示すように内筒9a及び外筒9bで構成されており、同図のように内筒9aがリアクター本体1の上部に外嵌合されることによって、上部チャンバー9がリアクター本体1に取り付けられている。また排出管10は、上部チャンバー9の下部であって、前記内筒9aと外筒9bとの間の位置に取り付けられている。
このように構成されている結果、リアクター本体1の内部を上向きに流通する被処理液は、内筒9aの上部開口部から、外筒9bと内筒9a間に溢流し、前記排出管10から外部に排出されることとなる。
【0044】
また、セメンテーション反応を生じさせるための金属粒子は、内筒9aの上部開口部から投入されることとなる。そして、流入用チャンバー7の流入管8から流入された廃液が上部チャンバー9の排出管10に至るまでの間に被処理液が垂直方向に上昇しつつ金属粒子による流動床を形成するように構成され、投入される金属と回収対象金属とのセメンテーション反応がリアクター本体1の全体で生じる点は、上記実施形態1、2と共通する。
【0045】
さらに本実施形態においても、廃液中に含有されている金属であって、セメンテーション反応により金属粒子に析出した回収対象金属を剥離させる剥離手段として、超音波発振体が採用されている。すなわち本実施形態においては、4個の超音波発振体11a、11b、11c、11dが、リアクター本体1の外周面に取り付けられている。この4個の超音波発振体11a、11b、11c、11dは、いずれも水平面に対して約45度の角度をなしてリアクター本体1に取り付けられているが、そのうちの2個の超音波発振体11a、11cは同じ向きに取り付けられており、他の2個の超音波発振体11b、11dは反対方向を向くように取り付けられている。
【0046】
本実施形態においても、被処理液として廃液が用いられ、その廃液としては、たとえば上記実施形態1と同様のCu、Sn等の金属イオンを含有する金属表面処理工場廃液等が用いられる。この場合には、実施形態1と同様に投入する金属粒子としてZnの粒子が用いられ、Cu、Snが金属として回収されることになる。
【0047】
そして、本実施形態の金属の回収装置によって金属を回収する場合には、先ず廃液を流入管8から流入用チャンバー7を介してリアクター本体1内に流入する。この場合において、流入用チャンバー7は、上述のように中央筒部20と側筒部21、21とで構成され、側筒部21、21には邪魔板22、23が2条ずつ縦方向に設けられているため、側筒部21に対して横向きに取り付けられている流入管8、8から流入する廃液は、横方向に一気に流入するのではなく、縦方向に設けられた邪魔板22、23に沿って側筒部21内を上下に交互に流れながら中央筒部20内に流入し、その中央筒部20からリアクター本体1に向かって上向きに流通することとなる。従って、流入管8、8から流入される廃液は、邪魔板22、23によって流れが乱され、偏流を生じさせずにリアクター本体1内を上向きに流通し易い状態となる。また必要があれば、流入チャンバー7内に、たとえば円筒状のかごにガラスあるいはセラミック製のボールを入れたものを設置することができ、これによって、より確実に偏流を防ぐことが可能となる。
【0048】
廃液中に含有されているCu、Sn等の金属と、投入される金属粒子であるZnとのイオン化傾向の相違に基づく、いわゆるセメンテーション反応の作用、超音波発振体による攪拌及び金属の剥離の作用等は上記実施形態と同じであり、その詳細な説明は省略する。
【0049】
(実施形態4)
本実施形態では、析出した回収対象金属を金属粒子から剥離する手段として、上記実施形態1乃至3の超音波発振体によって発振される超音波で振動させる手段に代えて、電磁石を用いて攪拌する手段を採用している。すなわち、本実施形態においては、図8に示すような電磁石12を具備したスライドボード13が、図7に示すようにリアクター本体1の側方に設けられたガイドレール14に昇降自在に装着されている。スライドボード13は、図8に示すように中央に空間部15を有し、その空間部15内にリアクター本体1を挿入して該リアクター本体1を包囲するように配設されている。尚、図8においては、リアクター本体1は図示されていない。また本実施形態では、リアクター本体1は水平断面が長方形状となるように形成されており、この点で断面が円形、すなわちリアクター本体1が円筒状に形成されていた上記実施形態1乃至3と相違している。
【0050】
そして、図7の矢印16で示すように、上下に交互に移動させることによって、リアクター本体1内の金属粒子を攪拌するとともに、多数の金属粒子を相互に衝突させ、それによって金属粒子から析出金属を強制的に剥離するのである。電磁石12は、たとえば2秒などの一定間隔で交番で印加しており、またスライドボード13の上下の移動は、間欠的若しくは連続的に行なう。金属粒子から析出した回収対象金属を剥離する手段が異なるものの、本実施形態においても、回収対象金属を金属粒子から好適に剥離して回収することができる。尚、本実施形態の場合に用いられる金属粒子は、磁性体である鉄粒子が用いられる。
【0051】
尚、鉄(Fe)イオンの還元反応と標準電極電位は次のとおりである。
Fe2++2e→Fe …(4) −0.44V
これに対して、CuやSnの還元反応や標準電極電位は、上記(2)、(3)式のとおりであり、標準電極電位の数値がFeはCuやSnよりも小さく、従って、Feのイオン化傾向はCuやSnのイオン化傾向よりも大きいため、本実施形態においてもCuやSnを含有する廃液に適用することが可能となる。
【0052】
(実施形態5)
本実施形態では、図9に示すように、リアクターが2個配設されており、その点で1個のみからなる実施形態1乃至4の場合と相違する。すなわち、本実施形態では、1段目の
リアクター本体1aの後段側であって2段目のリアクター本体1bの前段側にフィルター17が設けられ、さらに2段目のリアクター本体1bの後段側にフィルター18が設けられている。フィルターとしては、例えば、カートリッジフィルター、ドラムフィルター等が用いられる。また、フィルターに代えて、ベルトプレス、フィルタープレス等の固液分離手段を用いることも可能である。
【0053】
本実施形態においては、たとえば対象となる廃液にCuとSnが含有されている場合、1段目のリアクター本体1aにはFe粒子を投入し、そのFe粒子にCuを析出させて1段目のフィルター17でCuを回収し、2段目のリアクター本体1bにはZn粒子を投入し、そのZn粒子にSnを析出させて2段目のフィルター18でSnを回収するようなことが可能となる。
【0054】
この場合、上記(2)、(3)、(4)式で示されている標準電極電位の数値から、Cu、SnともにFeよりもイオン化傾向が小さいが、そのイオン化傾向の差は、FeとSnとの差よりもFeとCuとの差の方がはるかに大きく、従って1段目のリアクター本体1aにおいては、Cuが優先的にFe粒子に析出することとなる。一方、上記(1)式で示されている標準電極電位の数値から、Znのイオン化傾向はCu、Snのイオン化傾向よりも大きく、従って2段目のリアクター本体1bにおいては、Cu、SnともにZn粒子に析出するはずであるが、Cuはすでに1段目のリアクター本体1aのFe粒子に析出しているので、2段目のリアクター本体1bにおいては、Snが主としてZn粒子に析出することとなるのである。ただし1段目のリアクター本体1aでFe粒子に析出しなかったCuの残留分は、2段目のリアクター本体1bでZn粒子に析出する。
【0055】
このように、本実施形態では、異なる2種の金属粒子を用いて廃液から2種の金属を選択的に回収することができるという利点がある。
【0056】
(実施形態6)
本実施形態では、図10に示すようにリアクターが3個配設されており、その点で1個のみからなる実施形態1乃至4や2個配設されていた実施形態5の場合と相違する。本実施形態では、これら3個のリアクター本体1a、リアクター本体1b、リアクター本体1cの後段側にフィルター17、フィルター18、フィルター19が設けられている。本実施形態では、上記実施形態5と同様に1段目のリアクター本体1aでFe粒子が投入され、2段目のリアクター本体1bでZn粒子が投入されるが、3段目のリアクター本体1cではアルミニウム(Al)粒子が投入される。
【0057】
本実施形態を、上記実施形態5と同様にCuとSnが含有されている廃液に適用すると、
1段目のリアクター本体1aでは実施形態5と同様にFe粒子にCuが析出されて1段目のフィルター17でCuが回収され、2段目のリアクター本体1bにおいても実施形態5と同様にZn粒子にSnが析出されて2段目のフィルター18でSnが回収される。
【0058】
しかしながら、3段目のリアクター本体1cにおいては、実施形態5からは予期できない作用が生じる。すなわち、上記のように1段目のリアクター本体1aでセメンテーション反応により溶出したFeと、2段目のリアクター本体1bでセメンテーション反応により溶出したZnは、3段目のリアクター本体1cに投入されるAl粒子に析出する。
【0059】
この点をより詳細に説明すると、Alイオンの還元反応と標準電極電位は次式(5)で示される。
Al3++3e→Al …(5) −1.66V
1段目のリアクター本体1aで投入されたFe粒子と、2段目のリアクター本体1bで投入されたZn粒子は、上述のように回収対象金属よりもイオン化傾向の大きい金属からなるが、(1)、(4)、(5)式で示される標準電極電位の数値の比較から、Alのイオン化傾向は、Fe、Znのイオン化傾向よりさらに大きいことは明らかである。従って、
1段目のリアクター本体1aで溶出したFeと、2段目のリアクター本体1bで溶出したZnは、ともに3段目のリアクター本体1cでAl粒子に析出されることとなるのである。
そして、Al粒子によってFe−Znの合金として回収することが可能となる。
【0060】
従って、1段目のリアクター本体1aと2段目のリアクター本体1bでそれぞれ溶出したFeとZnとを、後段で凝集沈殿させる等の作業が不要となり、スラッジ発生量を抑制することが可能となる。尚、3段目のリアクター本体1cではAlが溶出するが、3価のAlは2価のZnやFeより少ない溶出量で済み、Alの比重も軽く、スラッジ重量を減少させることができることから、スラッジ発生量が増大することはない。
【0061】
(実施形態7)
本実施形態では、析出した回収対象金属を金属粒子から剥離する手段として、上記実施形態1乃至3の超音波発振体によって発振される超音波で振動させる手段、及び実施形態4の電磁石を用いて攪拌する手段に代えて、空気のような気体を吹き込んで攪拌する、いわゆるエアリフト作用を利用した手段を採用している。すなわち、本実施形態においては、図11に示すように、リアクター本体1の略中央に筒状部25が具備されており、その筒状部25の下部に気体流入パイプ26が接続されている。この気体流入パイプ26の一端側開口部である気体流入口27は前記リアクター本体1の外側に臨出され、気体流入パイプ26の他端側開口部28は前記筒状部25と連通状態とされている。また、筒状部25の下部開口部29の下方には、邪魔板30が設けられている。
【0062】
本実施形態においては、上記実施形態3と同様にリアクター本体1が略円筒状に形成されており、また上記実施形態1乃至3と同様にリアクター本体1の下部に流入用チャンバー7が設けられ、上部には上部チャンバーが設けられている。ただし図11には、排出管10は図示しているが、上部チャンバーは図示していない。本実施形態では、投入する金属粒子としてAl又はZnの粒子が用いられる。また対象となる廃液としては、インジウム(In)イオンを含有するフラット・パネル・ディスプレイ(FPD)製造工場廃液等が用いられる。この場合には、Inが金属として回収されることになる。
【0063】
投入する金属粒子の平均粒径は上述のように0.1〜8mmの金属粒子を用いることができるが、金属粒子がAlの場合には1.5〜5.5mmのものが好ましく、Znの場合には1.5〜4.0mmのものが好ましい。Zn粒子の場合は4.0mmを超えると、またAl粒子の場合は5.5mmを超えると、それらの粒子を流動させるのに必要な流速が大きくなるとともに気体吹込量が多くなるからである。一方、セメンテーション反応によって徐々に金属粒子の粒径が小さくなることから、当初の金属粒子の粒径が小さいと、処理液とともにリアクター本体1から金属粒子が流出する可能性があることは上述のとおりであるが、この観点から、Zn粒子やAl粒子の場合は1.5mm以上であることが好ましい。
【0064】
そして、本実施形態の金属の回収装置によって金属を回収する方法について説明すると、上記各実施形態と同様に先ず流入用チャンバー7を介して廃液をリアクター本体1内に流入し、上部チャンバーから金属粒子を投入する。また気体流入パイプ26を介して筒状部25へ気体を流入させる。これによって筒状部25内の気体と水の混合部分の比重が低下し、気体とともに液体が上部へ押し上げられる。
【0065】
このように、筒状部25へ気体を流入させ上向きに流通させることで、筒状部25内の被処理液も上向きに流通することとなる。このように被処理液は筒状部25の内部を流通するが、筒状部25の内部と外部とで圧力差が生じるため、被処理液の流通速度も筒状部25の内部と外部とで異なることとなり、その結果、リアクター本体1内で金属粒子が攪拌され、金属粒子の表面上に析出したInが剥離されることとなるのである。
【0066】
この場合において、本実施形態における回収対象金属であるInは、スポンジ状で析出するため、上記実施形態1等のCu、Snに比べるとZn等の金属粒子への密着性が悪く、従って上記実施形態1乃至3のような超音波振動によって強制的に剥離する手段や、実施形態4のような電磁石を用いて強制的に剥離する手段を採用しなくても、本実施形態のように単にエアリフト作用を利用した攪拌手段であっても、Inを金属粒子から比較的容易に剥離させることができる。すなわち、簡易且つ低エネルギーな手段を有する装置で、Inを回収することが可能である。
【0067】
そして廃液中に含有されているInと、投入された金属粒子であるZn又はAlとのイオン化傾向の相違に基づく、いわゆるセメンテーション反応を生じさせる。これをより詳細に説明すると、Inイオンの還元反応は次式のとおりであり、標準電極電位(E°)も示している。
In3++3e→In …(6) −0.34V
【0068】
上記(1)、(5)、(6)式からも明らかように、In3+に比べて、Zn2+やAl3+の標準準還元電位が小さい。換言すれば、Inに比べて、ZnやAlのイオン化傾向が大きいことになる。そのため、上記のようなエアリフト作用を利用した攪拌により、イオン化傾向の大きいZnやAlがZn2+或いはAl3+となって廃液中に溶出し、それとともに廃液中に含有されていたIn3+がInとなって、ZnやAlの粒子の表面上に析出する。このようなセメンテーション反応によってInをZn粒子或いはAl粒子の表面上に析出させた後、上記のようなエアリフト作用を利用した攪拌によって析出したInがZn粒子或いはAl粒子から剥離され、剥離されたInは、排出管10を経てリアクター本体1の外部に排出され、回収されることとなるのである。
【0069】
尚、本実施形態では、筒状部25の下部開口部29の下方に邪魔板30が設けられているため、流入用チャンバー7から流入する廃液の水流が直接筒状部25に流入することがなく、邪魔板30に当たり、筒状部25内の被処理液の流通速度が極端に速くなるのが好適に阻止されることとなる。
【0070】
(実施形態8)
本実施形態では、回収対象金属を金属粒子から剥離する手段として、エアジェット攪拌又はウオータージェット攪拌を採用し、この点で上記実施形態1乃至7と相違している。すなわち、本実施形態においては、図12に示すように、ジェット攪拌用噴出具31をリアクター本体1の周面部に取り付け、そのジェット攪拌用噴出具31から空気又は水が噴出されてリアクター本体1内に微細な気泡が発生するように構成されている。すなわち、エアジェット攪拌とは空気等の気体を噴出させて微細な気泡を発生させることを意味し、ウオータージェット攪拌とは水等の液体を噴出させて微細な気泡を発生させることを意味する。
【0071】
リアクター本体1の形状や流入用チャンバー7、排出管10が設けられている構成は上記実施形態7と同じであるため、その説明は省略する。また投入する金属粒子や対象となる廃液の種類、さらにはセメンテーション反応の作用等も上記実施形態7と同じであるため、その詳細な説明は省略する。本実施形態においては、上記ジェット攪拌用噴出具31から空気のような気体又は水(たとえば処理液)が噴出されてリアクター本体1内に乱流が発生し、その乱流によってリアクター本体1内の金属粒子が攪拌され、それによって金属粒子の表面上に析出したInが剥離されることとなるのである。
【0072】
本実施形態においても、析出金属であるInがZn等の金属粒子への密着性が悪いものであるため、上記実施形態1乃至3のような超音波振動によって強制的に剥離する手段や、実施形態4のような電磁石を用いて強制的に剥離する手段を採用しなくても、単にエアジェット又はウオータージェット攪拌を行なうだけの手段によって、Inを金属粒子から比較的容易に剥離させることができる。すなわち、簡易且つ低エネルギーな撹拌手段を有する装置で、Inを回収することが可能である。
【0073】
(実施形態9)
本実施形態では、回収対象金属を金属粒子から剥離する手段として、固液輸送ポンプ攪拌による手段を採用し、この点で上記実施形態1乃至8と相違している。すなわち、本実施形態においては、図13に示すようにリアクター本体1内の被処理液及び金属粒子を循環させて輸送させる流路32とポンプ33とをリアクター本体1の外部に設け、被処理液及び金属粒子を、前記ポンプ33により前記流路32及びリアクター本体1で循環、輸送させることによって前記金属粒子を攪拌する手段を採用している。
【0074】
リアクター本体1の形状や流入用チャンバー7、排出管10が設けられている構成は上記実施形態7、8と同じであるため、その説明は省略する。また投入する金属粒子や対象となる廃液の種類、さらにはセメンテーション反応の作用等も上記実施形態7、8と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0075】
本実施形態においては、ポンプ33によって被処理液が金属粒子とともにリアクター本体1から流路32へ流出され、その流路32を循環して再度リアクター本体1へ返送されることになり、その結果、リアクター本体1内の金属粒子が攪拌され、それによって金属粒子の表面上に析出したInが剥離されることとなる。
【0076】
本実施形態においても、析出金属であるInがZn等の金属粒子への密着性が悪いものであるため、上記実施形態1乃至3のような超音波振動によって強制的に剥離する手段や、実施形態4のような電磁石を用いて強制的に剥離する手段を採用しなくても、ポンプ33や流路32を用いて単に固液輸送ポンプ攪拌するだけの手段によって、Inを金属粒子から比較的容易に剥離させることができる。すなわち、簡易且つ低エネルギーな手段を有する装置で、Inを回収することが可能である。
【0077】
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態では、廃液(被処理液)としてCu、Snのイオンを含有する金属表面処理工場の廃液に適用する場合について説明したが、対象となる廃液の種類はこれに限定されるものではなく、メッキ工場廃液、半導体製造工場廃液、液晶製造工場廃液等に適用することも可能である。また被処理液として、本発明においては廃液を用いることを主眼としているが、廃液以外の被処理液、たとえば、金属含有固形廃棄物に酸等の薬品を接触させて回収すべき金属を溶解してイオン化して得られた水溶液に適用可能である。
従って、回収の対象となる金属の種類も該実施形態のCu、Sn、Inに限らず、たとえば、Ni、Ga、Zn等を回収対象金属とすることも可能であり、回収対象金属の種類は問わない。
【0078】
また、該実施形態では、金属粒子の平均粒径を約2mmとしてが、金属粒子の平均粒径は該実施形態に限定されるものではなく、要は0.1〜8mmであればよい。0.1mm未満であると、セメンテーション反応が必ずしも好適に行なわれるとは限らず、また金属粒子から剥離した回収対象金属の回収が容易に行なえない可能性があり、また8mmを超えると、リアクター本体内で保持しうる金属粒子の数が減少し、結果的に金属粒子の総表面積が減少して析出反応の効率が低下するおそれがあり、また金属粒子を流動させるために流速を上げる必要が生じ、必要な反応時間を保持するためにリアクターを大型化(リアクター高さを高く)する必要があるからである。この観点からは、0.5〜6mmであることがより好ましい。さらに、リアクター本体内での流動性、反応性を良好にし、リアクター本体内での保持を容易にするためには、1.0〜2.0mmの範囲であることが、さらに好ましい。尚、金属粒子の平均粒径は、前述の通り、画像解析法、JIS Z 8801ふるい分け試験法等にて測定される。画像解析法による平均粒径の測定は、例えば、日機装株式会社製のミリトラックJPAが用いられる。また、JISのふるい分け法では、平均粒径1〜2mmの範囲とする場合は、例えば、呼び寸法2000μmふるい下で、1000μmふるい上となる金属粒子を用いる。
【0079】
さらに、金属粒子の均一度は、5より小さいのが、処理効率や運転制御等の観点から好ましい。ここで金属粒子の均一度とは、粒度分布測定或いはふるい分け等によって形成される透過率曲線(ある粒径より小さい粒子の質量の全試料質量に対する百分率、すなわち透過率をある粒径に対して描いた曲線、ふるい下累積曲線ともいう)において、ふるい下60%粒径をふるい下10%粒径で割った値をいう。粒度分布の幅を表すものである。
【0080】
さらに、また、該実施形態では、金属粒子は、金属単体を利用したが、合金であってもよい。合金としては、鉄−アルミニウム合金、カルシウム−シリコン合金等を用いることができる。
【0081】
さらに、上記実施形態1、2では、リアクター本体1の断面積が上部に向かうほど大きくなるように形成したため、上記のような好ましい効果が得られたが、このようにリアクター本体1を形成することは本発明に必須の条件ではない。実施形態3、7、8、9のようにリアクター本体1の断面積が同じで全体が略円筒状になるように形成することも可能である。
【0082】
さらに、金属粒子から析出金属を剥離する手段も、上記実施形態1乃至9の各手段に限定されるものではなく、これら以外の手段であってもよい。
【実施例】
【0083】
金属粒子としてZnを用い、試験用の模擬被処理液として硫酸銅溶液を用いた。試験用装置として図14に示すように、中央に超音波発振体11を具備させたリアクター本体1の他、2台のタンク34、35、2台のポンプ36、37、バグフィルター38及びこれらを接続する流路39、40、41を設けた装置を用いた。
【0084】
硫酸銅溶液のpHは5、初期濃度は65.5mg/L、処理液量は70Lとし、平均粒径0.05mm、1mm、2mm、5mm、10mmの金属粒子について、被処理液を図14に示す試験装置を循環するように供給して試験を行なった。試験結果を表1乃至5、及び図15に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【0089】
【表5】
【0090】
表1乃至5及び図15からも明らかなように、平均粒径1mm、2mm、5mmの金属粒子を採用した場合には、0.05mm、10mmの金属粒子を採用した場合に比べると
析出金属である銅(Cu)の除去率が良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】一実施形態としての金属の回収装置の概略正面図。
【図2】他実施形態の金属の回収装置の概略正面図。
【図3】他実施形態の金属の回収装置の概略斜視図。
【図4】他実施形態の金属の回収装置の概略断面図。
【図5】他実施形態の金属の回収装置における流入用チャンバーの概略平面図。
【図6】図5のA−A線格段断面図。
【図7】他実施形態の金属の回収装置の概略正面図。
【図8】図7の実施形態に使用される電磁石を具備したスライドボードの概略平面図。
【図9】他実施形態の金属の回収装置の概略ブロック図。
【図10】他実施形態の金属の回収装置の概略ブロック図。
【図11】他実施形態の金属の回収装置の概略正面図。
【図12】他実施形態の金属の回収装置の概略正面図。
【図13】他実施形態の金属の回収装置の概略正面図。
【図14】実施例の試験装置を示す概略ブロック図。
【図15】試験結果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0092】
1、1a、1b、1c…リアクター本体
11a、11b、11c、11d…超音波発振体
12…電磁石 17、18、19…フィルター
25…筒状部 32…流路
33…ポンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収すべき金属がイオン状態で含有されている被処理液をリアクター本体内に流入するとともに、該リアクター本体内に回収すべき金属よりもイオン化傾向が大きい平均粒径0.1〜8mmの金属粒子を添加し、該金属粒子を流動させ、イオン化傾向の差異により前記被処理液中に含有される金属を前記金属粒子の表面に析出させ、その後、剥離手段によって前記金属粒子から前記析出した金属を剥離して回収することを特徴とする金属の回収方法。
【請求項2】
金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、超音波によって金属粒子を振動させる手段である請求項1記載の金属の回収方法。
【請求項3】
金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、電磁石(12)によって金属粒子を攪拌し相互に衝突させる手段である請求項1記載の金属の回収方法。
【請求項4】
金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、リアクター本体内に筒状部(25)を設け、該筒状部(25)内に気体を吹き込んで金属粒子を攪拌する手段である請求項1記載の金属の回収方法。
【請求項5】
金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、エアジェット又はウオータージェットによって金属粒子を攪拌する手段である請求項1記載の金属の回収方法。
【請求項6】
金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、リアクター本体1内の被処理液及び金属粒子を循環させて輸送させる流路(32)及びポンプ(33)を前記リアクター本体の外部に設け、前記被処理液及び金属粒子を循環、輸送させることによって前記金属粒子を攪拌する手段である請求項1記載の金属の回収方法。
【請求項7】
金属粒子の平均粒径が0.5〜6mmである請求項1乃至6のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項8】
金属粒子の平均粒径が1.0〜2.0mmである請求項1乃至6のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項9】
金属粒子がアルミニウムであって、該金属粒子の平均粒径が1.5〜5.5mmである請求項1乃至6のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項10】
金属粒子が亜鉛であって、該金属粒子の平均粒径が1.5〜4.0mmである請求項1乃至6のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項11】
被処理液がリアクター本体の下部から流入し、リアクター本体の上部から流出するように構成されている請求項1乃至10のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項12】
リアクター本体の断面積が上方に向かって増加するように、前記リアクター本体が構成されている請求項11記載の金属の回収方法。
【請求項13】
複数段のリアクター本体によって、異なる2種以上の金属粒子で2種以上の金属を選択的に回収する請求項1乃至12のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項14】
剥離された回収すべき金属をフィルターで回収する請求項1乃至13記載の金属の回収方法。
【請求項15】
回収すべき金属がイオン状態で含有されている被処理液を流入するとともに、平均粒径0.1〜8mmの金属粒子を添加して、イオン化傾向の差異により前記被処理液中に含有される金属を前記金属粒子の表面に析出させる金属析出反応を行なうためのリアクター本体と、前記析出した金属を回収すべく、前記金属粒子から剥離させるための剥離手段とを具備することを特徴とする金属の回収装置。
【請求項16】
金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、超音波によって金属粒子を振動させる手段である請求項15記載の金属の回収装置。
【請求項17】
金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、電磁石(12)によって金属粒子を攪拌し相互に衝突させる手段である請求項15記載の金属の回収装置。
【請求項18】
金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、リアクター本体内に筒状部(25)を設け、該筒状部(25)内に気体を吹き込んで金属粒子を攪拌する手段である請求項15記載の金属の回収装置。
【請求項19】
金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、エアジェット又はウオータージェットによって金属粒子を攪拌する手段である請求項15記載の金属の回収装置。
【請求項20】
金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、リアクター本体内の被処理液及び金属粒子を循環させて輸送させる流路(32)及びポンプ(33)を前記リアクター本体の外部に設け、前記被処理液及び金属粒子を循環、輸送させることによって前記金属粒子を攪拌する手段である請求項15記載の金属の回収装置。
【請求項21】
リアクター本体の下部に被処理液の流入部を有し、リアクター本体の上部に液流出部を有するとともに、前記流入部から被処理液がリアクター本体内に流入し、前記液流出部から流出するように構成されている請求項15乃至20のいずれかに記載の金属の回収装置。
【請求項22】
リアクター本体の断面積が上方に向かって増加するように、前記リアクター本体が構成されている請求項21記載の金属の回収装置。
【請求項23】
複数段のリアクター本体が配設されている請求項15乃至22のいずれかに記載の金属の回収装置。
【請求項24】
リアクター本体の後段に剥離された回収すべき金属を回収するためのフィルターが配設されている請求項15乃至23のいずれかに記載の金属の回収装置。
【請求項1】
回収すべき金属がイオン状態で含有されている被処理液をリアクター本体内に流入するとともに、該リアクター本体内に回収すべき金属よりもイオン化傾向が大きい平均粒径0.1〜8mmの金属粒子を添加し、該金属粒子を流動させ、イオン化傾向の差異により前記被処理液中に含有される金属を前記金属粒子の表面に析出させ、その後、剥離手段によって前記金属粒子から前記析出した金属を剥離して回収することを特徴とする金属の回収方法。
【請求項2】
金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、超音波によって金属粒子を振動させる手段である請求項1記載の金属の回収方法。
【請求項3】
金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、電磁石(12)によって金属粒子を攪拌し相互に衝突させる手段である請求項1記載の金属の回収方法。
【請求項4】
金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、リアクター本体内に筒状部(25)を設け、該筒状部(25)内に気体を吹き込んで金属粒子を攪拌する手段である請求項1記載の金属の回収方法。
【請求項5】
金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、エアジェット又はウオータージェットによって金属粒子を攪拌する手段である請求項1記載の金属の回収方法。
【請求項6】
金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、リアクター本体1内の被処理液及び金属粒子を循環させて輸送させる流路(32)及びポンプ(33)を前記リアクター本体の外部に設け、前記被処理液及び金属粒子を循環、輸送させることによって前記金属粒子を攪拌する手段である請求項1記載の金属の回収方法。
【請求項7】
金属粒子の平均粒径が0.5〜6mmである請求項1乃至6のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項8】
金属粒子の平均粒径が1.0〜2.0mmである請求項1乃至6のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項9】
金属粒子がアルミニウムであって、該金属粒子の平均粒径が1.5〜5.5mmである請求項1乃至6のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項10】
金属粒子が亜鉛であって、該金属粒子の平均粒径が1.5〜4.0mmである請求項1乃至6のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項11】
被処理液がリアクター本体の下部から流入し、リアクター本体の上部から流出するように構成されている請求項1乃至10のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項12】
リアクター本体の断面積が上方に向かって増加するように、前記リアクター本体が構成されている請求項11記載の金属の回収方法。
【請求項13】
複数段のリアクター本体によって、異なる2種以上の金属粒子で2種以上の金属を選択的に回収する請求項1乃至12のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項14】
剥離された回収すべき金属をフィルターで回収する請求項1乃至13記載の金属の回収方法。
【請求項15】
回収すべき金属がイオン状態で含有されている被処理液を流入するとともに、平均粒径0.1〜8mmの金属粒子を添加して、イオン化傾向の差異により前記被処理液中に含有される金属を前記金属粒子の表面に析出させる金属析出反応を行なうためのリアクター本体と、前記析出した金属を回収すべく、前記金属粒子から剥離させるための剥離手段とを具備することを特徴とする金属の回収装置。
【請求項16】
金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、超音波によって金属粒子を振動させる手段である請求項15記載の金属の回収装置。
【請求項17】
金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、電磁石(12)によって金属粒子を攪拌し相互に衝突させる手段である請求項15記載の金属の回収装置。
【請求項18】
金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、リアクター本体内に筒状部(25)を設け、該筒状部(25)内に気体を吹き込んで金属粒子を攪拌する手段である請求項15記載の金属の回収装置。
【請求項19】
金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、エアジェット又はウオータージェットによって金属粒子を攪拌する手段である請求項15記載の金属の回収装置。
【請求項20】
金属粒子から該金属粒子に析出した金属を剥離する手段が、リアクター本体内の被処理液及び金属粒子を循環させて輸送させる流路(32)及びポンプ(33)を前記リアクター本体の外部に設け、前記被処理液及び金属粒子を循環、輸送させることによって前記金属粒子を攪拌する手段である請求項15記載の金属の回収装置。
【請求項21】
リアクター本体の下部に被処理液の流入部を有し、リアクター本体の上部に液流出部を有するとともに、前記流入部から被処理液がリアクター本体内に流入し、前記液流出部から流出するように構成されている請求項15乃至20のいずれかに記載の金属の回収装置。
【請求項22】
リアクター本体の断面積が上方に向かって増加するように、前記リアクター本体が構成されている請求項21記載の金属の回収装置。
【請求項23】
複数段のリアクター本体が配設されている請求項15乃至22のいずれかに記載の金属の回収装置。
【請求項24】
リアクター本体の後段に剥離された回収すべき金属を回収するためのフィルターが配設されている請求項15乃至23のいずれかに記載の金属の回収装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−39788(P2007−39788A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55074(P2006−55074)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】
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