金属の回収方法
【課題】 金属製錬工程で熔錬炉から排出される排ガスダストから金属成分を効率よく回収することができる金属の回収方法を提供する。
【解決手段】 金属の回収方法は、金属製錬用の第1熔錬炉の排ガス煙道を介して回収した排ガスダストを、第1熔錬炉とは異なる金属製錬用の第2熔錬炉の排ガス煙道の第1煙道に供給し、第1煙道の下流側に接続された第2煙道におけるガス流速を、第1煙道におけるガス流速よりも低下させる。
【解決手段】 金属の回収方法は、金属製錬用の第1熔錬炉の排ガス煙道を介して回収した排ガスダストを、第1熔錬炉とは異なる金属製錬用の第2熔錬炉の排ガス煙道の第1煙道に供給し、第1煙道の下流側に接続された第2煙道におけるガス流速を、第1煙道におけるガス流速よりも低下させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の製錬工程において、熔錬炉から排出される排気ガス中に、金属粉、金属化合物粉などの金属成分が排ガスダストに混在することがある。例えば、銅製錬の転炉から排出される排ガスダストには、銅が5〜25重量%含まれていることがある。この排ガスダストから必要な成分と不要な成分とを分離することによって、各成分を回収することができる。例えば、特許文献1は、重力による沈降を利用した湿式の分級装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−231333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金属製錬に供される出発原料に含まれる不純物濃度の上昇に伴い、効率よく不純物(金属成分)を回収することが望まれている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、金属製錬工程で熔錬炉から排出される排ガスダストから金属成分を効率よく回収することができる金属の回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る銅の回収方法は、金属製錬用の第1熔錬炉の排ガス煙道を介して回収した排ガスダストを、第1熔錬炉とは異なる金属製錬用の第2熔錬炉の排ガス煙道の第1煙道に供給し、第1煙道の下流側に接続された第2煙道におけるガス流速を、第1煙道におけるガス流速よりも低下させることを特徴とするものである。本発明に係る銅の回収方法によれば、金属製錬工程で熔錬炉から排出される排ガスダストから金属成分を効率よく回収することができる。
【0007】
第1熔錬炉は、銅製錬用の転炉としてもよい。第2熔錬炉は、銅製錬用の転炉としてもよい。排ガスダストは、粒径77μm以下のビスマス含有粒子を含んでいてもよい。第2煙道において回収される排ガスダストは、比重5.6(g/cm3)より小さい粒子であってもよい。第2煙道内のガス流速を3m/s〜8m/sに調整してもよい。
【0008】
第2煙道は、第1煙道の天井部に接続され、第2煙道の延伸方向よりも鉛直上方側に傾斜していてもよい。第1煙道は、水平に設置されていてもよい。第2煙道は、鉛直上方に延びていてもよい。第2煙道を流動するガス中に含まれるダストを集塵機で回収してもよい。排ガスダストを第1煙道に供給する際に、圧縮空気を動力源としてもよい。前記排ガスダストを前記第1煙道に供給する際に、前記排ガスダスト中水分を2mass%以下にしてもよい。第1煙道の底部に落下した排ガスダストを回収してもよい。前記第2煙道を流動するガスの流速を調整するための流速調整手段をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る金属の回収方法によれば、金属製錬工程で熔錬炉から排出される排気ガスから金属成分を効率よく回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る銅の回収方法を処理フローで表わした図である。
【図2】排ガス煙道の概略構成を説明するための模式図である。
【図3】図2のA−A線で切断した断面を示した説明図である。
【図4】第2煙道におけるガス流速を調整する機器が備わっている例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための実施形態について説明する。
【0012】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る銅の回収方法を処理フローで表わした図である。図1を参照して、受入ホッパー10に排ガスダストを供給する。受入ホッパー10に供給される排ガスダストは、後述する排ガス煙道60に接続されている熔錬炉とは異なる熔錬炉から排出された排気ガスに含まれる排ガスダストである。例えば、別の金属製錬所の熔錬炉から排出された排ガスダストなどであってもよい。なお、本実施形態においては銅製錬の転炉の排ガス煙道を用いているため、他の銅製錬所の転炉からの排ガスダストを用いることが好ましい。排ガスダスト中の成分が類似するからである。
【0013】
受入ホッパー10に供給された排ガスダストは、振動篩20に供給される。振動篩20は、振動を利用して、所定範囲外の粒径を有する排ガスダストなどを回収する。振動篩20を通過した排ガスダストは、リフトタンク30に供給される。リフトタンク30は、排ガスダストを貯留する。ポンプ40は、圧縮空気を動力源として、リフトタンク30に貯留されている排ガスダストを排ガス煙道60に吹き込む。なお、排ガスダストの供給開始および供給停止は、電磁弁50などで制御することができる。
【0014】
排ガス煙道60は、金属製錬用の熔錬炉から排出される排気ガスを回収するための煙道である。本実施形態においては、排ガス煙道60は、一例として、銅製錬の転炉からの排気ガスを回収するための煙道である。排ガス煙道60には、転炉70a〜70dからの煙道が接続されている。なお、本実施形態においては排ガス煙道60に複数の転炉が接続されているが、1つの転炉が接続されていてもよい。
【0015】
排ガス煙道60は、他の煙道を介して電気集塵機80に接続されている。電気集塵機80は吸引力を発生する。それにより、排ガス煙道60を流動する排気ガスは、電気集塵機80によって吸引される。電気集塵機80に回収された排気ガスは、所定の処理に供される。
【0016】
続いて、排ガス煙道60の詳細について説明する。図2は、排ガス煙道60の概略構成を説明するための模式図であり、排ガス煙道60を鉛直上方から見た図である。図3は、図2のA−A線で切断した断面を示した説明図である。排ガス煙道60は、転炉70a〜70dから排出される排気ガスが流れ込む第1煙道61と、第1煙道61の天井部に一端が接続して第1煙道61から排気ガスが流れ込む第2煙道62〜64とを備えている。
【0017】
一例として、第1煙道61は、水平方向に排気ガスが流動するように形成されている。第1煙道61の側部には転炉70a〜70dに接続される接続孔71a〜71dが設けられている。転炉70a〜70dから排出される排気ガスは、接続孔71a〜71dから第1煙道61に流入する。
【0018】
第2煙道62の一端は、第1煙道61上の接続孔71aと接続孔71bとの間の通路の天井部に接続されている。第2煙道63の一端は、第1煙道61上の接続孔71cと接続孔71dとの間の通路の天井部に接続されている。第2煙道64の一端は、第1煙道61上の接続孔71bと接続孔71cとの間の通路の天井部に接続されている。第2煙道62〜64の他端は、合流部65において合流している。合流部65には煙道66が接続されている。第2煙道62〜64を流れる排気ガスは、合流部65で合流した後、煙道66を通り、電気集塵機80に吸引される。
【0019】
一例として、第2煙道62,63は、内径2.1m、長さ25.7mの煙道である。ただし、第2煙道62,63の一部、具体的には、第1煙道61の天井部側から排ガスの流れる方向に17.7mの区間は、内径2.6mとなっている。また、第2煙道64は、内径2.6m、長さ17.7mの煙道である。さらに、煙道66は内径3.0mであり、合流した排気ガス中のダスト煙道内部で堆積しないように流速を計算して構成されている。第2煙道62〜64は、略円管である。第1煙道61の断面積は、6.26m2程度である。
【0020】
排ガス煙道60においては、第1煙道61の断面積よりも、第2煙道62〜64の合計の断面積の方が大きいことから、第1煙道61を流動する排気ガスの流速よりも、第2煙道62〜64を流動する排気ガスの流速よりも小さくなる。この場合、第1煙道61を流動してきた排気ガス中の排ガスダストのうち、同一の比重に対し、粒径が比較的大きいものは第2煙道62〜64に流入する際に第1煙道61に落下し、粒径が比較的小さい粒子は第2煙道62〜64に回収される。また、第1煙道61を流動してきた排気ガス中の排ガスダストのうち、同一の粒径に対して、比重が比較的大きいものは第2煙道62〜64に流入する際に第1煙道61に落下し、比重が比較的小さい粒子は第2煙道62〜64に回収される。
【0021】
第1煙道61の底部にフローコンベア67を設置することによって、第1煙道61内に落下して堆積する金属成分を容易に回収することができる。一方で、第2煙道62〜64に回収された金属成分は電気集塵機80で回収することができる。以上のように、排ガス煙道60を用いることによって、粒径および比重をパラメータとして、金属成分を効率よく分離することができる。
【0022】
なお、図2の例では、第1煙道61が水平方向に設置され、第2煙道62〜64が第1煙道61に対して傾斜して設置されているが、それに限られない。第1煙道61を流動する排気ガスのガス流速よりも第2煙道62〜64を流動する排気ガスのガス流速が小さくなれば、粒径または比重の大きい金属成分を落下させることができる。したがって、第1煙道と第2煙道とは、同方向に延伸していてもよい。例えば、第1煙道の下流側に1本の第2煙道を同方向に延伸させ、第2煙道の断面積を第1煙道の断面積よりも大きくしてもよい。
【0023】
ただし、第2煙道は、第1煙道の天井部に接続され、第2煙道の延伸方向よりも鉛直上方側に傾斜していることが好ましい。第2煙道に流入する粒径または比重の大きい金属成分を効率よく第1煙道に落下させることができるからである。第2煙道は、鉛直上方に延びていることが好ましい。第2煙道に流入する粒径または比重の大きい金属成分をより効率よく第1煙道に落下させることができるからである。なお、第1煙道は、水平に延伸していなくてもよく、水平方向から傾斜していてもよい。
【0024】
なお、第2煙道62〜64から第1煙道61に落下する金属成分および電気集塵機80で回収される金属成分は、当該金属成分の粒径および比重と第2煙道62〜64を流動する排気ガスのガス流速とに基づいて決定される。したがって、第2煙道62〜64における回収の対象とする金属成分と、排気ガス中の当該金属成分の粒径および比重とに応じて、第2煙道62〜64を流動する排気ガスのガス流速を決定すればよい。なお、電気集塵機80で回収される金属成分は、ビスマス、鉛、銀などである。
【0025】
一例として、第2煙道62〜64におけるガス流速を3m/s〜8m/sに調整することによって、比重5.080g/cm3かつ粒径0.3μm〜粒径77μmの粒子を第2煙道62〜64に吸引させて電気集塵機80で回収することができる。具体的には、第2煙道62〜64におけるガス流速を3m/s〜8m/sに調整することによって、比重5.080g/cm3、粒径0.3μm〜粒径77μmのビスマス含有粒子を第2煙道62〜64に吸引させて電気集塵機80で回収することができ、粒径10μm以上の硫化銅、メタル銅など(例えば比重5.6g/cm3以上)を第1煙道61に落下させることができる。
【0026】
本実施形態によれば、排ガス煙道60を用いることによって、粒径または比重の大きい金属成分と、粒径または比重の小さい金属成分とを効率よく分離することができる。また、ガス流速を適宜選択することによって、所望の金属成分を選択的に回収することができる。特に、第2煙道62〜64のガス流速を3m/s〜8m/sに調整することによって、ビスマス含有粒子を排ガスダストから効率よく分離して回収することができる。一方で、粒径の大きい金属成分に銅成分が含まれていれば、第1煙道61での銅の回収率を向上させることができる。なお、受入ホッパー10に供給される排ガスダストの水分は、2mass%以下であることが好ましい。2mass%を超えると、リフトタンク30内で排ガスダストが詰まりやすくなることがあるからである。
【0027】
(他の例)
図4は、第2煙道62〜64におけるガス流速を調整する機器が備わっている例を説明するための図である。図4に示すように、第2煙道62〜64のそれぞれに、ガス流速を調整するための弁68が備わっていてもよい。弁68は、第2煙道62〜64の断面積を調整するための弁である。弁68を利用し第2煙道62〜64の断面積を調整することによって、第2煙道62〜64のガス流速を調整することができる。それにより、第1煙道61で回収する金属成分と電気集塵機80で回収する金属成分とを選択することができる。なお、いずれかの弁68を閉じてガスが流動する第2煙道の数を調整することによって、第2煙道におけるガス流速を調整してもよい。
【実施例】
【0028】
一例として、排ガス煙道60を用いて排ガスダスト中の特定の金属成分を回収する例について説明する。表1は、排ガス煙道60に流入した排気ガス中の金属成分の一例を示す。排ガス煙道60に流入した排気ガスには、リフトタンク30から排ガス煙道60に吹き込まれた排ガスダストと、転炉70a〜70dから排ガス煙道60に流入した排ガスダストとが含まれる。なお、表1において「吹込み無し」は、リフトタンク30からの排ガスダストが排ガス煙道60に吹き込まれていない場合の各成分を示す。また、「g/t」は、排気ガスの重量に対する対象物質の重量である。
【表1】
【0029】
表1の「吹込み有り」の場合において、第1煙道61におけるガス流速を10.6m/sに調整し、第2煙道62〜64におけるガス流速を4.2m/sに調整した。排気ガス中の各成分の分配率を表2に示す。表2において、「排ガス煙道」は、第1煙道61に落下した成分を表し、「電気集塵機」は、電気集塵機80で回収された成分を表す。表2に示すように、排気ガス中の特定の金属成分を排ガス煙道内で回収することができた。
【表2】
【0030】
以上の結果から、金属製錬用の熔錬炉から回収した排ガスダストを、当該熔錬炉とは異なる金属製錬用の他の熔錬炉の排ガス煙道の第1煙道61に吹込み、第2煙道62〜64におけるガス流速を、第1煙道61におけるガス流速よりも低下させることによって、比重の小さい金属成分を第2煙道62〜64に吸引して電気集塵機80で回収できることがわかった。一方で、第1煙道61において比重の大きい金属成分を回収できることがわかった。一例として、第2煙道62〜64におけるガス流速を3m/s〜8m/sの範囲内の値とすることによって、ビスマスを電気集塵機80で効率よく回収できた。
【0031】
なお、排ガスダストの粒径および比重と第2煙道62〜64におけるガス流速とに応じて、上記分配比は変化する。したがって、排ガスダスト中に含まれる金属成分の粒径および比重に応じて第2煙道62〜64におけるガス流速を調整することによって、第2煙道62〜64で回収される金属成分を適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 受入ホッパー
20 振動篩
30 リフトタンク
40 ポンプ
50 電磁弁
60 排ガス煙道
61 第1煙道
62〜64 第2煙道
65 合流部
66 煙道
67 フローコンベア
70 転炉
71 接続孔
80 電気集塵機
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の製錬工程において、熔錬炉から排出される排気ガス中に、金属粉、金属化合物粉などの金属成分が排ガスダストに混在することがある。例えば、銅製錬の転炉から排出される排ガスダストには、銅が5〜25重量%含まれていることがある。この排ガスダストから必要な成分と不要な成分とを分離することによって、各成分を回収することができる。例えば、特許文献1は、重力による沈降を利用した湿式の分級装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−231333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金属製錬に供される出発原料に含まれる不純物濃度の上昇に伴い、効率よく不純物(金属成分)を回収することが望まれている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、金属製錬工程で熔錬炉から排出される排ガスダストから金属成分を効率よく回収することができる金属の回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る銅の回収方法は、金属製錬用の第1熔錬炉の排ガス煙道を介して回収した排ガスダストを、第1熔錬炉とは異なる金属製錬用の第2熔錬炉の排ガス煙道の第1煙道に供給し、第1煙道の下流側に接続された第2煙道におけるガス流速を、第1煙道におけるガス流速よりも低下させることを特徴とするものである。本発明に係る銅の回収方法によれば、金属製錬工程で熔錬炉から排出される排ガスダストから金属成分を効率よく回収することができる。
【0007】
第1熔錬炉は、銅製錬用の転炉としてもよい。第2熔錬炉は、銅製錬用の転炉としてもよい。排ガスダストは、粒径77μm以下のビスマス含有粒子を含んでいてもよい。第2煙道において回収される排ガスダストは、比重5.6(g/cm3)より小さい粒子であってもよい。第2煙道内のガス流速を3m/s〜8m/sに調整してもよい。
【0008】
第2煙道は、第1煙道の天井部に接続され、第2煙道の延伸方向よりも鉛直上方側に傾斜していてもよい。第1煙道は、水平に設置されていてもよい。第2煙道は、鉛直上方に延びていてもよい。第2煙道を流動するガス中に含まれるダストを集塵機で回収してもよい。排ガスダストを第1煙道に供給する際に、圧縮空気を動力源としてもよい。前記排ガスダストを前記第1煙道に供給する際に、前記排ガスダスト中水分を2mass%以下にしてもよい。第1煙道の底部に落下した排ガスダストを回収してもよい。前記第2煙道を流動するガスの流速を調整するための流速調整手段をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る金属の回収方法によれば、金属製錬工程で熔錬炉から排出される排気ガスから金属成分を効率よく回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る銅の回収方法を処理フローで表わした図である。
【図2】排ガス煙道の概略構成を説明するための模式図である。
【図3】図2のA−A線で切断した断面を示した説明図である。
【図4】第2煙道におけるガス流速を調整する機器が備わっている例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための実施形態について説明する。
【0012】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る銅の回収方法を処理フローで表わした図である。図1を参照して、受入ホッパー10に排ガスダストを供給する。受入ホッパー10に供給される排ガスダストは、後述する排ガス煙道60に接続されている熔錬炉とは異なる熔錬炉から排出された排気ガスに含まれる排ガスダストである。例えば、別の金属製錬所の熔錬炉から排出された排ガスダストなどであってもよい。なお、本実施形態においては銅製錬の転炉の排ガス煙道を用いているため、他の銅製錬所の転炉からの排ガスダストを用いることが好ましい。排ガスダスト中の成分が類似するからである。
【0013】
受入ホッパー10に供給された排ガスダストは、振動篩20に供給される。振動篩20は、振動を利用して、所定範囲外の粒径を有する排ガスダストなどを回収する。振動篩20を通過した排ガスダストは、リフトタンク30に供給される。リフトタンク30は、排ガスダストを貯留する。ポンプ40は、圧縮空気を動力源として、リフトタンク30に貯留されている排ガスダストを排ガス煙道60に吹き込む。なお、排ガスダストの供給開始および供給停止は、電磁弁50などで制御することができる。
【0014】
排ガス煙道60は、金属製錬用の熔錬炉から排出される排気ガスを回収するための煙道である。本実施形態においては、排ガス煙道60は、一例として、銅製錬の転炉からの排気ガスを回収するための煙道である。排ガス煙道60には、転炉70a〜70dからの煙道が接続されている。なお、本実施形態においては排ガス煙道60に複数の転炉が接続されているが、1つの転炉が接続されていてもよい。
【0015】
排ガス煙道60は、他の煙道を介して電気集塵機80に接続されている。電気集塵機80は吸引力を発生する。それにより、排ガス煙道60を流動する排気ガスは、電気集塵機80によって吸引される。電気集塵機80に回収された排気ガスは、所定の処理に供される。
【0016】
続いて、排ガス煙道60の詳細について説明する。図2は、排ガス煙道60の概略構成を説明するための模式図であり、排ガス煙道60を鉛直上方から見た図である。図3は、図2のA−A線で切断した断面を示した説明図である。排ガス煙道60は、転炉70a〜70dから排出される排気ガスが流れ込む第1煙道61と、第1煙道61の天井部に一端が接続して第1煙道61から排気ガスが流れ込む第2煙道62〜64とを備えている。
【0017】
一例として、第1煙道61は、水平方向に排気ガスが流動するように形成されている。第1煙道61の側部には転炉70a〜70dに接続される接続孔71a〜71dが設けられている。転炉70a〜70dから排出される排気ガスは、接続孔71a〜71dから第1煙道61に流入する。
【0018】
第2煙道62の一端は、第1煙道61上の接続孔71aと接続孔71bとの間の通路の天井部に接続されている。第2煙道63の一端は、第1煙道61上の接続孔71cと接続孔71dとの間の通路の天井部に接続されている。第2煙道64の一端は、第1煙道61上の接続孔71bと接続孔71cとの間の通路の天井部に接続されている。第2煙道62〜64の他端は、合流部65において合流している。合流部65には煙道66が接続されている。第2煙道62〜64を流れる排気ガスは、合流部65で合流した後、煙道66を通り、電気集塵機80に吸引される。
【0019】
一例として、第2煙道62,63は、内径2.1m、長さ25.7mの煙道である。ただし、第2煙道62,63の一部、具体的には、第1煙道61の天井部側から排ガスの流れる方向に17.7mの区間は、内径2.6mとなっている。また、第2煙道64は、内径2.6m、長さ17.7mの煙道である。さらに、煙道66は内径3.0mであり、合流した排気ガス中のダスト煙道内部で堆積しないように流速を計算して構成されている。第2煙道62〜64は、略円管である。第1煙道61の断面積は、6.26m2程度である。
【0020】
排ガス煙道60においては、第1煙道61の断面積よりも、第2煙道62〜64の合計の断面積の方が大きいことから、第1煙道61を流動する排気ガスの流速よりも、第2煙道62〜64を流動する排気ガスの流速よりも小さくなる。この場合、第1煙道61を流動してきた排気ガス中の排ガスダストのうち、同一の比重に対し、粒径が比較的大きいものは第2煙道62〜64に流入する際に第1煙道61に落下し、粒径が比較的小さい粒子は第2煙道62〜64に回収される。また、第1煙道61を流動してきた排気ガス中の排ガスダストのうち、同一の粒径に対して、比重が比較的大きいものは第2煙道62〜64に流入する際に第1煙道61に落下し、比重が比較的小さい粒子は第2煙道62〜64に回収される。
【0021】
第1煙道61の底部にフローコンベア67を設置することによって、第1煙道61内に落下して堆積する金属成分を容易に回収することができる。一方で、第2煙道62〜64に回収された金属成分は電気集塵機80で回収することができる。以上のように、排ガス煙道60を用いることによって、粒径および比重をパラメータとして、金属成分を効率よく分離することができる。
【0022】
なお、図2の例では、第1煙道61が水平方向に設置され、第2煙道62〜64が第1煙道61に対して傾斜して設置されているが、それに限られない。第1煙道61を流動する排気ガスのガス流速よりも第2煙道62〜64を流動する排気ガスのガス流速が小さくなれば、粒径または比重の大きい金属成分を落下させることができる。したがって、第1煙道と第2煙道とは、同方向に延伸していてもよい。例えば、第1煙道の下流側に1本の第2煙道を同方向に延伸させ、第2煙道の断面積を第1煙道の断面積よりも大きくしてもよい。
【0023】
ただし、第2煙道は、第1煙道の天井部に接続され、第2煙道の延伸方向よりも鉛直上方側に傾斜していることが好ましい。第2煙道に流入する粒径または比重の大きい金属成分を効率よく第1煙道に落下させることができるからである。第2煙道は、鉛直上方に延びていることが好ましい。第2煙道に流入する粒径または比重の大きい金属成分をより効率よく第1煙道に落下させることができるからである。なお、第1煙道は、水平に延伸していなくてもよく、水平方向から傾斜していてもよい。
【0024】
なお、第2煙道62〜64から第1煙道61に落下する金属成分および電気集塵機80で回収される金属成分は、当該金属成分の粒径および比重と第2煙道62〜64を流動する排気ガスのガス流速とに基づいて決定される。したがって、第2煙道62〜64における回収の対象とする金属成分と、排気ガス中の当該金属成分の粒径および比重とに応じて、第2煙道62〜64を流動する排気ガスのガス流速を決定すればよい。なお、電気集塵機80で回収される金属成分は、ビスマス、鉛、銀などである。
【0025】
一例として、第2煙道62〜64におけるガス流速を3m/s〜8m/sに調整することによって、比重5.080g/cm3かつ粒径0.3μm〜粒径77μmの粒子を第2煙道62〜64に吸引させて電気集塵機80で回収することができる。具体的には、第2煙道62〜64におけるガス流速を3m/s〜8m/sに調整することによって、比重5.080g/cm3、粒径0.3μm〜粒径77μmのビスマス含有粒子を第2煙道62〜64に吸引させて電気集塵機80で回収することができ、粒径10μm以上の硫化銅、メタル銅など(例えば比重5.6g/cm3以上)を第1煙道61に落下させることができる。
【0026】
本実施形態によれば、排ガス煙道60を用いることによって、粒径または比重の大きい金属成分と、粒径または比重の小さい金属成分とを効率よく分離することができる。また、ガス流速を適宜選択することによって、所望の金属成分を選択的に回収することができる。特に、第2煙道62〜64のガス流速を3m/s〜8m/sに調整することによって、ビスマス含有粒子を排ガスダストから効率よく分離して回収することができる。一方で、粒径の大きい金属成分に銅成分が含まれていれば、第1煙道61での銅の回収率を向上させることができる。なお、受入ホッパー10に供給される排ガスダストの水分は、2mass%以下であることが好ましい。2mass%を超えると、リフトタンク30内で排ガスダストが詰まりやすくなることがあるからである。
【0027】
(他の例)
図4は、第2煙道62〜64におけるガス流速を調整する機器が備わっている例を説明するための図である。図4に示すように、第2煙道62〜64のそれぞれに、ガス流速を調整するための弁68が備わっていてもよい。弁68は、第2煙道62〜64の断面積を調整するための弁である。弁68を利用し第2煙道62〜64の断面積を調整することによって、第2煙道62〜64のガス流速を調整することができる。それにより、第1煙道61で回収する金属成分と電気集塵機80で回収する金属成分とを選択することができる。なお、いずれかの弁68を閉じてガスが流動する第2煙道の数を調整することによって、第2煙道におけるガス流速を調整してもよい。
【実施例】
【0028】
一例として、排ガス煙道60を用いて排ガスダスト中の特定の金属成分を回収する例について説明する。表1は、排ガス煙道60に流入した排気ガス中の金属成分の一例を示す。排ガス煙道60に流入した排気ガスには、リフトタンク30から排ガス煙道60に吹き込まれた排ガスダストと、転炉70a〜70dから排ガス煙道60に流入した排ガスダストとが含まれる。なお、表1において「吹込み無し」は、リフトタンク30からの排ガスダストが排ガス煙道60に吹き込まれていない場合の各成分を示す。また、「g/t」は、排気ガスの重量に対する対象物質の重量である。
【表1】
【0029】
表1の「吹込み有り」の場合において、第1煙道61におけるガス流速を10.6m/sに調整し、第2煙道62〜64におけるガス流速を4.2m/sに調整した。排気ガス中の各成分の分配率を表2に示す。表2において、「排ガス煙道」は、第1煙道61に落下した成分を表し、「電気集塵機」は、電気集塵機80で回収された成分を表す。表2に示すように、排気ガス中の特定の金属成分を排ガス煙道内で回収することができた。
【表2】
【0030】
以上の結果から、金属製錬用の熔錬炉から回収した排ガスダストを、当該熔錬炉とは異なる金属製錬用の他の熔錬炉の排ガス煙道の第1煙道61に吹込み、第2煙道62〜64におけるガス流速を、第1煙道61におけるガス流速よりも低下させることによって、比重の小さい金属成分を第2煙道62〜64に吸引して電気集塵機80で回収できることがわかった。一方で、第1煙道61において比重の大きい金属成分を回収できることがわかった。一例として、第2煙道62〜64におけるガス流速を3m/s〜8m/sの範囲内の値とすることによって、ビスマスを電気集塵機80で効率よく回収できた。
【0031】
なお、排ガスダストの粒径および比重と第2煙道62〜64におけるガス流速とに応じて、上記分配比は変化する。したがって、排ガスダスト中に含まれる金属成分の粒径および比重に応じて第2煙道62〜64におけるガス流速を調整することによって、第2煙道62〜64で回収される金属成分を適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 受入ホッパー
20 振動篩
30 リフトタンク
40 ポンプ
50 電磁弁
60 排ガス煙道
61 第1煙道
62〜64 第2煙道
65 合流部
66 煙道
67 フローコンベア
70 転炉
71 接続孔
80 電気集塵機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製錬用の第1熔錬炉の排ガス煙道を介して回収した排ガスダストを、前記第1熔錬炉とは異なる金属製錬用の第2熔錬炉の排ガス煙道の第1煙道に供給し、
前記第1煙道の下流側に接続された第2煙道におけるガス流速を、前記第1煙道におけるガス流速よりも低下させることを特徴とする金属の回収方法。
【請求項2】
前記第1熔錬炉は、銅製錬用の転炉であることを特徴とする請求項1記載の金属の回収方法。
【請求項3】
前記第2熔錬炉は、銅製錬用の転炉であることを特徴とする請求項1または2記載の金属の回収方法。
【請求項4】
前記排ガスダストは、粒径77μm以下のビスマス含有粒子を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項5】
前記第2煙道において回収される排ガスダストは、比重5.6(g/cm3)より小さい粒子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項6】
前記第2煙道内のガス流速を3m/s〜8m/sに調整することを特徴とする請求項4記載の金属の回収方法。
【請求項7】
前記第2煙道は、前記第1煙道の天井部に接続され、前記第2煙道の延伸方向よりも鉛直上方側に傾斜することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項8】
前記第1煙道は、水平に設置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項9】
前記第2煙道は、鉛直上方に延びていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項10】
前記第2煙道を流動するガス中に含まれるダストを集塵機で回収することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項11】
前記排ガスダストを前記第1煙道に供給する際に、圧縮空気を動力源とすることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項12】
前記排ガスダストを前記第1煙道に供給する際に、前記排ガスダスト中水分を2mass%以下にすることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項13】
前記第1煙道の底部に落下した排ガスダストを回収することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項14】
前記第2煙道を流動するガスの流速を調整するための流速調整手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項1】
金属製錬用の第1熔錬炉の排ガス煙道を介して回収した排ガスダストを、前記第1熔錬炉とは異なる金属製錬用の第2熔錬炉の排ガス煙道の第1煙道に供給し、
前記第1煙道の下流側に接続された第2煙道におけるガス流速を、前記第1煙道におけるガス流速よりも低下させることを特徴とする金属の回収方法。
【請求項2】
前記第1熔錬炉は、銅製錬用の転炉であることを特徴とする請求項1記載の金属の回収方法。
【請求項3】
前記第2熔錬炉は、銅製錬用の転炉であることを特徴とする請求項1または2記載の金属の回収方法。
【請求項4】
前記排ガスダストは、粒径77μm以下のビスマス含有粒子を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項5】
前記第2煙道において回収される排ガスダストは、比重5.6(g/cm3)より小さい粒子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項6】
前記第2煙道内のガス流速を3m/s〜8m/sに調整することを特徴とする請求項4記載の金属の回収方法。
【請求項7】
前記第2煙道は、前記第1煙道の天井部に接続され、前記第2煙道の延伸方向よりも鉛直上方側に傾斜することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項8】
前記第1煙道は、水平に設置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項9】
前記第2煙道は、鉛直上方に延びていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項10】
前記第2煙道を流動するガス中に含まれるダストを集塵機で回収することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項11】
前記排ガスダストを前記第1煙道に供給する際に、圧縮空気を動力源とすることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項12】
前記排ガスダストを前記第1煙道に供給する際に、前記排ガスダスト中水分を2mass%以下にすることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項13】
前記第1煙道の底部に落下した排ガスダストを回収することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の金属の回収方法。
【請求項14】
前記第2煙道を流動するガスの流速を調整するための流速調整手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の金属の回収方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2012−246546(P2012−246546A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120516(P2011−120516)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(500483219)パンパシフィック・カッパー株式会社 (109)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(500483219)パンパシフィック・カッパー株式会社 (109)
【Fターム(参考)】
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