説明

金属の搬送装置及び搬送方法

【課題】不定形形状の金属スクラップの搬送を長時間メンテナンスを行わなくても運転できる装置を提供すること。
【解決手段】不定形形状の金属10を約7°の傾斜を付けた鉄板状の送り装置11に載せて、その送り装置11を前後に移動することにより、不定形形状の金属が慣性の法則に従い、傾斜の低い側へ移動することを利用して搬送する装置である。送り装置11には厚い板の高Mn鋼を使用しているために磨耗や変形がなく、送り装置11を前後に摺動する駆動装置15に問題がない限り連続稼動することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の搬送装置及び搬送方法に関するものである。特に金属スクラップや金属スクラップ板を一定サイズに切断したもの等、不定形形状の金属を搬送する搬送装置及び搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の不定形の形状の金属を搬送する装置は、ゴム材ベルト式コンベア(下記、特許文献1)、又は金属材のコンベア(チップコンベア)が用いられてきた。
【0003】
しかし、従来のベルト式コンベア装置では、搬送する製品が不定形形状の金属スクラップ等の場合は、金属スクラップの鋭利な部分でゴム式ベルトを傷つけてしまい長時間の運転はできなかった。
【0004】
また、金属性のコンベア(チップコンベア)では重量物の金属スクラップが繰り返し載ることにより、変形が進みこれも長時間の運転には適していなかった。

【特許文献1】特開平7−267315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、不定形形状の金属スクラップの搬送を長時間メンテナンスを行わなくても運転できる搬送装置及び搬送方法を提供することを課題とする。
【0006】
本発明は、関連する課題として、簡単な設備で自由な方向に曲げて搬送できる搬送装置及び搬送方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる課題に対し、不定形形状の金属を載せて送るための金属の搬送装置であって、傾斜をつけた鉄板状の送り手段を備えることと、該鉄板状の送り手段を前後に移動する駆動手段(15)を備えることと、該駆動手段が、不定形形状の金属を、慣性の法則に従い、傾斜の低い側へ移動させることとを特徴とする、金属の搬送装置を提供する。
【0008】
前記鉄板状の送り手段の傾斜は、水平に対して5度〜10度であることが有利である。送り手段(送り装置)の傾斜が5度以下であると、不定形形状の中で滑りの悪い接地面積の多いものや重量物は、接触抵抗に負けて傾斜の下方へ搬送することができないからであり、逆に、送り手段(送り装置)の角度が10度以上になると、転がりのよい不定形形状のものは転がり落ちてしまい危険であるからである。また、そもそも搬送距離を確保するためには高さ(落差)が必要となるからである。
【0009】
前記鉄板状の送り手段の傾斜は、水平に対して約7度であることがさらに有利である。これは、金属スクラップ鋼板を搬送するのに適した角度であることを発明者が実験により確認しているからである。
【0010】
前記鉄板状の送り手段は、高Mn鋼を含む厚い板であることができ、この場合、磨耗や変形が少なくなる。
【0011】
前記鉄板状の送り手段は、末広がりであることができ、この場合、不定形形状の金属が着荷点において一箇所に山になって溜まることを防ぐことができ、着荷点における不定形形状の金属を何度も繰り返し移動することなく作業できるようにする。
【0012】
前記鉄板状の送り手段は、曲がり付けた搬送経路をなすことができ、この場合、直線方向だけでなく、任意の方向に搬送することができ、直線的でなく曲って配置されたプロセスラインを経るようにすることも可能になる。
【0013】
本発明の搬送装置は、不定形形状の金属を搬送する搬送量を、前記駆動手段(15)が前記鉄板状の送り手段(11)を前後に移動する回数(例えば、1分間あたりの摺動回数)により任意に設定できるようにする搬送量制御手段を備えることができ、この場合、搬送量の調節が可能となる。搬送量制御手段(図示しない)自体は、駆動手段(モーター15)と図示しない公知の無段変速機を組み合わせることやモーター自体の回転数を変更することにより当業者が明らかに実施可能であり、本明細書では詳述しない。
【0014】
本発明では、搬送ないし送り込みの対象となる前記不定形形状の金属が、大きな金属片であることができる。さらに、鉄板状以外の送り手段によっては長時間の運転が困難な程度に十分大きな不定形形状の金属片であることができる。
【0015】
本発明はまた、不定形形状の金属を載せて送るための、傾斜をつけた鉄板状の送り装置による、金属の搬送方法であって、該鉄板状の送り装置を駆動装置により前後に移動させ、不定形形状の金属を、慣性の法則に従い、傾斜の低い側へ移動させることを特徴とする、金属の搬送方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ベルトコンベア式に比べて連続稼動が容易になるという利点がある。
テーブル(送り手段)11を用いた搬送のため、回転式のコンベアにしばしば発生する引っかかり、噛み込み等のトラブルがなくなった。また、相対的に各部品の消耗が極めて少なくなった。
さらに、送り装置(送り手段)として厚い板の高Mn(マンガン)鋼を使用したため、磨耗や変形がほとんどなく、送り装置を前後に摺動する駆動装置に問題がない限り永久に連続稼動することが可能になった。
また、送り手段を前後に移動させる揺動式であるため、バイプレーション、またはユーラスモーターを使用した振動コンベアのような振動音を伴わない、という利点もある。
また、送り装置(送り手段)を末広がりにして、不定形形状の金属が着荷点において一箇所に山になって溜まることを防ぐことにより、着荷点における不定形形状の金属を何度も繰り返し移動することなく作業ができ、作業効率の改善となった。
また、電動機15の回転数を変更すること等により、送り装置(送り手段)を前後に移動する(揺動する)回数を任意に変更して、金属スクラップ鋼板リサイクルの前工程における切断装置等の生産量に応じて搬送量を任意に設定変更することができるようになり、搬送によるつまりや無駄がなくなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
最良の形態では、送り手段(テーブル式送り装置)11の材質に高マンガン系耐磨耗鋼板を使用することにより、テーブル重量を1/2とし、かつ搬送される金属片の摺動による磨耗にも耐えうるものとしている。具体的には、送り手段11の高マンガン系耐磨耗鋼板の硬さをHB(プリネル)500とし、被搬送金属はSS400、SPCC等硬さHB(プリネル)120(引張強さを基にした推定値)として実施した。
また、駆動源15には低速でも大きなトルクを発生する油圧モーターを採用して、揺動速度の無段変速を可能とし、かつ安全で確実な搬送ができるようした。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明装置の1実施例を上から見た図及び断面図である。
10は、不定形形状の金属であり、本実施例の搬送対象である。
11は、鉄板(テーブル)状の送り装置(送り手段)であり、材質は上記のとおりである。底板11a、シュートランプ11b、ガードレール11cからなる。
12は、搬送装置のフレーム(架台)である。なお、図1では、網掛け部分が本実施例における非可動部分であり、白抜き部分が可動部分である。
13は、ベアリングの例としての配置を示しており、送り手段とフレームの摺動を可能にする。
14は、偏芯軸であり、駆動装置15と協働して送り手段11の揺動を可能とする。
15は、駆動装置(図示しない公知の無段変速機及び油圧モーター)であり、図示しない配線と速度制御盤を有する。
16は、金属16が揺動により移動する方向を示している。
【0019】
図1の構成は、不定形形状の金属10を約7°の傾斜を付けた鉄板状の送り装置11に載せて、その送り装置11を前後に移動することにより、不定形形状の金属10が慣性の法則に従い、傾斜の低い側へ移動することを利用して搬送する装置である。送り装置11には厚い板の高Mn鋼を使用しているために磨耗や変形がなく、送り装置11を前後に摺動する駆動装置15に問題がない限り連続稼動することができる。
【実施例2】
【0020】
図2の実施例は、従来の搬送装置であるベルト式コンベアやチップコンベアが直線方向のみの搬送方向であり、搬送方向を変化させる(曲げる)ためにコンベアを2台重ねる必要があった点を克服し、搬送部を曲げることにより1台のみで自由な方向に搬送することができるようにして曲がったプロセスラインへの適応を可能とした本発明に関するものである。
本実施例は、鉄板状の送り手段11(すなわち、曲がったガードレール11bつきの架台ないし受皿部11)を曲り付けた例である。これにより矢印16の方向に、金属を方向転換することができ、直線的でない移動も可能となり、曲がったプロセスラインにも対応することができる。また、受皿部11の両端へ金属を片寄ってでも分散させることができる。
なお、水平に対して傾斜が7度である場合は、搬送方向に対して曲げ角度45度までは実験的に搬送することを確認できており、曲げを角度45度の部分を2箇所設けることにより、搬送方向を90度直角に変更することもできる。
【実施例3】
【0021】
図3の実施例では、駆動装置15のモーター15aと無段変速機15bを分けて記載し、図1には示していないロッド18の形状、スプリング19の配置、受皿部11等の金属スクラップに最適化した形状を示している。図1のベアリング13を固定する部品等についてもより具体的な形状を示している。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、金属スクラップ等の搬送・リサイクル現場等において、定形/不定形の大きな金属類を搬送する用途に利用可能である。
油圧モーターからなる駆動部15の構成部品や架台11の強度を見合ったものにすれば基本的に搬送距離に制限はなく、より広範な産業用途にも対応可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態を示した説明図である。(実施例1)
【図2】本発明の又別の実施形態を示した説明図である。(実施例2)
【図3】本発明の又別の実施形態を示した説明図である。(実施例3)
【符号の説明】
【0024】
10 不定形形状の金属
11 鉄板状の送り装置(架台ないし受け皿部とも呼ぶ)
12 搬送装置のフレーム
13 ベアリング
14 偏芯軸
15 駆動装置(図示しない公知の無段変速機及びモーター)
15a モーター
15b 無段変速機
18 ロッド
19 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不定形形状の金属を載せて送るための金属の搬送装置であって、
傾斜をつけた鉄板状の送り手段を備えることと、
該鉄板状の送り手段を前後に移動する駆動手段を備えることと、
該駆動手段が、不定形形状の金属を、慣性の法則に従い、傾斜の低い側へ移動させることとを特徴とする、金属の搬送装置。
【請求項2】
前記鉄板状の送り手段の傾斜が、水平に対して5度〜10度であることを特徴とする、請求項1に記載の、金属の搬送装置。
【請求項3】
前記鉄板状の送り手段の傾斜が、水平に対して約7度であることを特徴とする、請求項2に記載の、金属の搬送装置。
【請求項4】
前記鉄板状の送り手段が、高Mn鋼を含む厚い板であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の、金属の搬送装置。
【請求項5】
前記鉄板状の送り手段が、末広がりであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の、金属の搬送装置。
【請求項6】
前記鉄板状の送り手段が、曲がり付けた搬送経路をなす、請求項1から5のいずれか一項に記載の、金属の搬送装置。
【請求項7】
不定形形状の金属を搬送する搬送量を、前記駆動手段が前記鉄板状の送り手段を前後に移動する回数(例えば、1分間あたりの摺動回数)により設定できるようにする搬送量制御手段を備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の、金属の搬送装置。
【請求項8】
前記不定形形状の金属が、鉄板状以外の送り手段によっては長時間の運転が困難な程度に十分大きな不定形形状の金属片である、請求項1から7のいずれか一項に記載の、金属の搬送装置。
【請求項9】
不定形形状の金属を載せて送るための、傾斜をつけた鉄板状の送り装置による、金属の搬送方法であって、
該鉄板状の送り装置を駆動装置により前後に移動させ、
不定形形状の金属を、慣性の法則に従い、傾斜の低い側へ移動させることを特徴とする、金属の搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−83999(P2009−83999A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257007(P2007−257007)
【出願日】平成19年9月30日(2007.9.30)
【出願人】(507325390)能村機械株式会社 (2)
【出願人】(507325404)株式会社丸誠商会 (2)
【Fターム(参考)】