説明

金属もしくは金属の化合物を含有するスラグから1種もしくは数種の金属を連続的もしくは不連続的に回収するための方法

本発明は、金属もしくは金属の化合物を含有するスラグから1種もしくは数種の金属を連続的もしくは不連続的に回収するための方法であって、金属含有の液化スラグを一次もしくは二次の溶解ユニット(1)中で加熱することによる方法に関する。スラグから殊に銅を回収するための改善された方法を提供するために、本発明では、金属を含有するスラグを交流電気炉として構成された一次もしくは二次の溶解ユニット(1)中で加熱し、次に溶融物を、該一次もしくは二次の溶解ユニット(1)から直流電気炉として構成された炉(2)に送り、この炉で、回収すべき金属の電着を行ない、この際、該一次もしくは二次の溶解ユニット(1)にケイ化カルシウム(CaSi)、炭化カルシウム(CaC)、フェロシリコン(FeSi)、アルミニウム(Al)及び/又は還元ガスの形の還元剤を装入及び/又は注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属もしくは金属の化合物を含有するスラグから1種もしくは数種の金属を連続的もしくは不連続的に回収するための方法であって、金属含有の液化スラグを一次もしくは二次の溶解ユニット中で加熱することによる前記方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅精鉱の溶融により銅マット及びスラグが生じる。該スラグには銅が溶解された形ならびに物理的に移ってきたマット懸垂物の形で含まれる。スラグを錬かんするための2つの重要な方法としては、急冷、破砕及び磨砕の後のスラグ浮遊選鉱法、ならびに液状スラグの乾式製錬還元法がある。
【0003】
乾式製錬的錬かんあるいは精鉱の溶融はたいてい3つの変法で行なわれる。つまり:
1) ACアーク炉でコークス及び電極を用いた還元、スラグ予熱ならびに沈降による方法。
2) 水平な円筒形の回転炉、例えばテニエンテ錬かん炉(Teniente-Schlackereinigungsofen)中で、還元剤の導入(Eindusung)による方法。
3) 垂直な転炉、例えばTBRC炉又はアイザスメルト炉、オアースメルト炉又は類似の方法での、還元剤の注入による方法。
【0004】
練かんには、懸垂した封入物(suspendierten Einschluesse)を遊離するために、該懸垂物の沈殿を可能にするために、かつ酸化銅の共還元を可能にするために磁鉄鉱の還元が必要である。
【0005】
最も頻繁に使用されるACアーク炉での銅の錬かんは、3〜8時間かかる還元時間及び沈降時間が必要とされるために比較的大きな炉を必要とする。これは、熱損失の影響が大きいという理由から、比較的高い比エネルギー消費の原因となる。アーク炉での錬かんは断続的もしくは半連続的な工程として実施される。温度調整におけるアーク炉の柔軟性が正確なスラグ予熱を可能にする。しかしながら、酸化銅の還元の生成物として生ずる分散した銅の金属懸垂物の形成は、小さな銅マット懸垂物の一部と一緒になって、相分離及び十分な銅の回収を制限する。
【0006】
金属含有のスラグ、特に溶解炉での鉄銅スラグからの金属の回収方法は、米国特許第4,110,107号明細書から公知である。溶融したスラグをアーク炉に入れ、そこで精錬を行う。溶解槽の底部に炭素を注入するために炭素噴射ユニットが使用される。スラグ生成剤、例えばCaOも同じくこの槽に入れられる。還元後に金属を炉から取り出す。
【0007】
スラグ溶融物から特にニッケル及びニッケル銅混合物を回収するための類似の方法が、米国特許第4,036,636号明細書から公知である。この方法では、スラグ中の磁鉄鉱が炭素含有の材料で還元される。その際、スラグの還元を行う間、機械的撹拌装置によりスラグを混合する。
【0008】
国際公開第01/49890A1号パンフレットからは、硫酸銅精鉱から直接の粗銅の製造方法が公知である。この方法では、銅は、微粉砕されそして冷却された銅マットから反応容器中で酸素富化下に回収される。この酸素富化は酸素が富化された空気の供給下に行なわれ、その際、酸素含量は少なくとも50%である。「ブリスター銅」とも呼ばれる粗銅は、精錬されていない気泡の多い銅である。銅は溶融した状態では、固体金属の時よりもガスに対してより高い溶解力を有する。凝固の際にこのガスは銅における小さなふくれ(英語: blister)として分離する。
【0009】
米国特許第4,060,409号明細書には、材料を溶融された状態で維持することを可能にする乾式製錬システムが示されている。該システムは材料を収容するための容器を有し、その際、容器内部に同じ大きさの一群のセルが形成されている。さらに、溶融した材料を撹拌できるようにするために多くの機械的撹拌装置が備えられている。
【0010】
米国特許第6,436,169号明細書には、銅溶解炉の運転方法が開示されており、密度3.0〜8.0を有し、その粒子の直径がその場合0.3〜15ミリメートルである、鉄80重量%以上を有する鉄を含む物質を添加している。鉄を含むこの物質は、鉄を含む銅スラグに添加される。次いで、FeからFeOへの還元が行われる。
【0011】
連続的な銅精錬のための装置が欧州特許第0487032B1号明細書から公知である。この装置は、マットとスラグの混合物を得るために銅精鉱の溶融と酸化のための溶解炉を備える。さらに、スラグからマットを分離するための分離炉が備えられている。転炉では、粗銅の回収のためにスラグから分離されたマットが酸化される。樋が溶解炉、分離炉及び転炉をつなぐ。転炉で生じた銅の精錬のためにアノード炉が備えられている。転炉とアノード炉との接続は粗銅用の樋で行なわれる。
【0012】
欧州特許第0487031号明細書には銅の連続溶融の方法が記載されている。この場合にも溶解炉、分離炉及び転炉が備えられており、これらは流れ接続手段によって相互に接続されている。さらにアノード炉が備えられており、このアノード炉は転炉と流路接続されている。銅精鉱は溶解炉に供給され、そこで粗製マットとスラグの混合物を得るために該精鉱の溶融及び酸化が行なわれる。次いで、この粗製マットとスラグの混合物は分離炉に供給され、この分離炉でスラグからの粗製マットの分離が行なわれる。次に、スラグから分離された粗製マットは転炉に送られ、そこでこの粗製マットが粗銅を得るために酸化される。粗銅は次にアノード炉に流入し、そこで銅が製造される。
【0013】
金属を含有するスラグから金属を回収するための公知方法はその効率に関してなお改善の必要がある。
【0014】
従って本発明の課題は、金属、特に銅、をスラグから回収するための改善された方法を提供することである。
【0015】
本発明によるこの課題の解決は、金属を含有するスラグを、交流電気炉として構成された一次もしくは二次の溶解ユニット中で加熱し、次に溶融物を、該一次もしくは二次の溶解ユニットから直流電気炉として構成された炉に送り、この炉で、回収すべき金属の電着を行ない、この際、該一次もしくは二次の溶解ユニットにケイ化カルシウム(CaSi)、炭化カルシウム(CaC)、フェロシリコン(FeSi)、アルミニウム(Al)及び/又は還元ガスの形の還元剤を表面上に添加するか及び/又は注入することを特徴とする。
【0016】
一次もしくは二次の溶解ユニットとしては、好ましくはアーク炉が使用される。
【0017】
回収すべき金属は、好ましくは、銅を含んだスラグ中に存在する銅(Cu)である。しかし、回収すべき金属が鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、白金(Pt)、クロム(Cr)又はニッケル(Ni)であることも可能である。
【0018】
交流電気炉として構成された一次もしくは二次の溶解ユニットでは、スラグないしは金属精鉱の初期還元もしくは酸化、及び金属マットもしくは合金、特に銅マットの分離を行うことができ、その際、直流電気炉として形成された第2の炉で、徹底的なスラグ還元及び懸垂物の除去が行なわれる。
【0019】
直流電気炉として構成された第2の炉では、金属の回収中に溶融物の電磁式撹拌を行なうこともできる。電磁式撹拌を生じさせるために、少なくとも1つの電磁石を該第2の炉中に存在する溶融物に作用させることができる。しかし、電磁式撹拌を生じさせるために、少なくとも1つの永久磁石が該第2の炉中に存在する溶融物に作用するようにしてもよい。この少なくとも1つの磁石は、好ましくは50〜1000ガウスの磁場を発生させ、その際、該磁場は、該第2の炉における溶融物の断面及び電極の領域の少なくとも一部分に及ぶ。
【0020】
一次もしくは二次の溶解ユニットに、上記加熱中にさらに還元剤としてコークスを添加することもできる。
【0021】
第2の炉における溶融物表面上に、ほぼ均一な厚さを有する炭素含有の材料の層が形成されるように炭素含有の材料、特にコークスを供給することができ、その際、アノードとして作用する該層は電気接続と接触している。さらに、第2の炉における溶融物下の底部領域で金属マットもしくは合金、特に銅マットから成る実質上均一な厚さを有する層が維持されるようにすることができ、その際は、カソードとして作用する該層は電気接続と接触している。
【0022】
つまり本発明によれば、2つのアーク炉での2段階のスラグ還元及び金属(特に銅)の除去が提案され、その際、特に良好な還元を可能にする上記の特定の還元剤が用意される。第1の炉である三相交流アーク炉はスラグの初期還元及び金属マット(銅マット)の分離に使用され、これに電磁式撹拌を伴ったDC還元溝型炉での徹底的なスラグ還元及び懸垂物の除去が続く。還元面への物質移動及び懸垂物の合体を改善する電磁式撹拌の使用は、スラグ電気分解及び界面動電現象とともに、効果的な錬かん及び金属、殊に銅の高い回収率を可能にする。
【0023】
図面に本発明の実施例を示す。
【0024】
図1には、直流炉の形の第2の炉が続く交流炉の形の一次もしくは二次の溶解ユニット1を示す。炉1に用意された銅スラグから成る溶融物は樋の形(角釜の形も可能である)の接続手段8を介して第2の炉2に導かれる。
【0025】
第1の炉1及び特にこの炉内に存在するスラグ溶融物に、交流電源11に接続されている黒鉛電極の形の2つの電極9及び10が沈められている。
【0026】
スラグは一次及び/又は二次の溶解ユニット1の種類に応じて、
−例えば、鉄合金法(例えばFeNi、FeMn、FeCr、FeNb及びTiO製法)の場合のような金属滴、
−硫化物もしくは酸化物の形の金属(この場合は、アイザスメルト炉、オアースメルト炉、オートクンプ炉又はTBRC炉が一次溶解装置として機能する)、
−酸化物の供給材料の加工により、例えば電気炉又は直立炉から生成物として生じる金属及び合金
を含有する。
【0027】
第2の炉2はスラグ15のためのスラグ入口16ならびにスラグ出口17を有する。第2の炉2内に板状に形成された2つの電極4及び5が存在する。これら2つの電極4、5は黒鉛接点電極6ないしは7の形の電気接続を介して直流電源12に接続されている。上方の水平に置かれた電極6は直流電源12のプラス極に接続されており、アノードとして使用される。相応して下方の、同じく水平に置かれた電極5は直流電源12のマイナス極に接続されており、従ってカソードとして使用される。電気分解法により銅が得られる。
【0028】
図2からわかるように、第2の炉2は溝型炉として構成されている。側面に、電気コイル13及び14が金属芯の周りに配置されており、それによって電磁石3が形成される。これらの磁石を用いて、第2の炉2中の溶融物を撹拌する電磁式撹拌が得られる。これについて下記を参照されたい。
【0029】
本質的な特徴は、金属含有スラグを交流電気炉1で加熱し、その溶融物を次に該炉1から直流電気炉として構成された炉2に送り、この炉で回収すべき金属の電着を行なうことであり、この金属は例えば硫化物もしくは酸化物として存在していてもよい。その際、炉1に、ケイ化カルシウム(CaSi)、炭化カルシウム(CaC)、フェロシリコン(FeSi)、アルミニウム(Al)及び/又は還元ガスの形の還元剤が表面上に加えられるか及び/又は注入される。
【0030】
還元の際にはそれ自体公知の方法が行なわれ、この方法は −コークスの添加の例では− 次のとおりと思われる: スラグ中の磁鉄鉱及び銅含有の酸化物がこの場合には黒鉛電極9、10の炭素及び添加されたコークスと次の式に従って反応する:
Fe+CO=3FeO+CO
CuO+CO=2Cu+CO
CO+C=2CO
酸化銅の還元は磁鉄鉱共還元によって制限される。この共還元の条件はこの反応の平衡によって次のように決定される:
(CuO)スラグ+3(FeO)スラグ<=>2(Cu)金属+(Feスラグ
溶解方法及び得られたマット品質に応じて溶融スラグ中の銅含量は2〜10%であり、磁鉄鉱含量は10〜20%である。
【0031】
ACアーク炉1でのスラグ処理の第1段階は、元のスラグ組成に応じて、単位エネルギー消費量50〜70kWh/tを必要とする7〜8%の値への磁鉄鉱還元及び0.8〜1.2%の銅含量に集約される。上記程度のスラグ還元によって還元時間を約50%短縮することが可能になり、これは炉の処理容量の倍増に相当する。スラグは、連続的にか又は一定の間隔で第2のDC還元溝型炉2(直流炉)に向かって出湯される。
【0032】
黒鉛電極6を直流電源12に接続させるスラグ表面上のコークス床4はアノードの機能を有し、黒鉛ブロック7と接触した液状マット5はDC還元溝型炉2におけるカソードである。
【0033】
炉の入口側に2つの永久磁石ブロックが炉容器の窓に、つまりスラグ層の半分の高さに配置される。不均一で水平な磁場と不均一で垂直な一定の電場の相互作用は、スラグに作用するローレンツ力の勾配を誘発する。
【0034】
交差した一定の電場と永久磁場における導電性液体、例えば液状スラグのそれぞれの要素体積 (elementaren Volumen)に作用するローレンツ力は該液体の比重を次のとおり明らかに変化させる:
γ=γ±j×B
式中: γ − 見かけ比重N/m
γ − 比重N/m
j − 液体中の電流密度A/m
B − 磁気誘導T。
【0035】
電流密度200〜2000A/m及び磁場強度0.005〜0.1テスラでの上記力を用いるとスラグ速度は、自然の対流速度と比較して1〜2桁大きい。該力はスラグを磁石の範囲内で強く回転させ、そのことによってコークス表面への磁鉄鉱の移動を改善しかつ還元が加速される。スラグ還元の高温(1200〜1300℃)下では、磁鉄鉱の還元及び銅含有の酸化物の共還元の際の反応は物質移動によって制御され、スラグの撹拌は還元速度を相当高める。
【0036】
さらにスラグの撹拌は、停滞する流体の形成を妨げかつスラグを均一にする。懸垂物を除去するために該方法の第1段階において、スラグを攪拌することは有利である。それによって懸垂物の衝突及び合体が起こりやすくなる。
【0037】
スラグが動くことによってマット懸垂物及び金属銅の衝突が起こりやすくなり、それによりこれらの合体及び沈降が改善される。溝型炉2の第2の部分ではスラグは強く動かされず、懸垂物の静かな沈降が可能になる。
【0038】
液状スラグのイオン構造に基づいて、直流によりスラグの電気分解が起こる。カソード還元及びアノード酸化が、次の反応に従って、磁鉄鉱還元、銅析出及び一酸化炭素の生成を電極上で生じさせる:
カソード: Fe3++e=Fe2+
Cu+e=Cu
アノード: SiO4−+2C=SiO+2[CO]+4e
2−+C=[CO]+2e
磁鉄鉱のカソード分解及び銅の析出は磁鉄鉱還元及び銅の除去の全体速度を高める。アノード生成物としてのCOの生成は磁鉄鉱還元の別の中心を成す。
【0039】
スラグの比重の見かけの変化の結果としての金属懸垂物に作用する付加的な力及び金属中の電流と磁場の相互作用は次のとおりである:
EMB=2πjBr
式中: FEBM − 浮力N、
j − 電流密度A/m
B − 磁場のインダクタンスT、
r − 懸垂物の半径m。
【0040】
電場と懸垂物表面の表面電荷の相互作用が金属滴を電気力線に沿って移動させ; 電気毛管運動現象として知られる移動速度はレビッチ式によって次のとおり記述される:
【0041】
【数1】

式中: vEM − 移動速度m/s、
ε − 表面電荷coul/m2
E − 電場強度V/m、
ηs − スラグ粘度Pa s、
κ − スラグの導電率/Ω/m、
w − 金属/スラグ界面の抵抗Ωm
【0042】
電荷密度に基づいて、上記式に従った金属又はマット懸垂物の移動速度は液滴半径とともに減少する。移動速度は、小さな懸垂物ほど重力による沈降よりも相当高くなる。
【0043】
交差する電場と磁場におけるスラグ処理は、錬かん工程を著しく集約的かつ効果的にする一連の現象を利用する。スラグの電磁式撹拌は物質移動を高め、そのことによりスラグ還元は加速されかつ懸垂物の合体が促進される。同時のスラグの電気分解は、磁鉄鉱及び酸化銅のカソード還元と付加的な還元剤としての一酸化炭素のアノード生成に作用する。懸垂物の電気毛管現象による移動は懸垂物の合体を促進しかつスラグからの懸垂物の除去をもたらす。
【実施例】
【0044】
自溶炉ユニット中の精鉱の溶融物から得られたスラグはCu4%及びFe15%を含有する。該スラグを3時間ごとに出湯させ、樋を介して9.5MVA三相交流アーク炉1に移す。スラグ生産量は30t/hであり、これは各サイクルごとに90tの処理に相当する。コークス消費量は約8kg/tに達し、エネルギー消費量は約70kWh/tに達し、これは平均電力消費6.3MWに相当する。1時間後に2時間にわたるアーク炉上へのスラグ出湯を開始する。銅含量1.1%及びFe7%を有するスラグは樋8を介して、長さ4m及び幅1mである室を有するDCアーク炉2に輸送される。半連続的な錬かんのためのこの還元溝型炉は図2に示すものである。スラグは2時間連続的に還元溝型炉2中を流れる。1mのスラグの高さの場合には平均滞留時間は約30分間である。炉の熱損失1GJ/hの場合には単位電流消費量は約35kWh/tであり、必要な電力消費は1MWである。電圧を100Vと見積もると、電流強度は10kAのオーダーである。コークス消費量は約2kg/tと見積もられる。仕上がったスラグはCu0.5%及び磁鉄鉱4%を含有する。総エネルギー消費量は105kWh/tに達し、コークス消費量は10kg/tに達する。
【0045】
本発明による方法はこの実施例によればつまりアーク炉における2段階の銅錬かんとして行なわれる。
【0046】
第1のアーク炉1へのスラグの周期的もしくは連続的な装入を行なうことができる。この炉1では黒鉛−ないしは炭素電極が溶融したスラグに挿入されており、これら電極を介して電流供給が行なわれる。スラグ表面上にコークス又は他の還元剤を添加する。練かん炉におけるスラグ温度の調整は電力消費の調整によって行なう。続いて銅マットと金属銅との形の得られた金属の出湯を行なう。
【0047】
DC溝型炉2の場合にも周期的もしくは連続的なスラグの出湯を行なうことができる。スラグ表面にてアノードとして機能するコーク層とカソードとして機能する液状マットとの間に直流を印加する。電磁石又は永久磁石によって生成された重畳され局所的に限定された磁場を、スラグを動かすために利用する。コークス層の膜厚を一定に保つためかつ黒鉛−もしくは炭素電極との有利な電気的な接点条件を維持するために、スラグ表面にコークスを加える。この場合にも精錬された仕上がったスラグの連続的もしくは周期的な出湯を行なうことができる。同じく、周期的に銅マットを又は金属銅と一緒に銅マットを出湯することができる。さらに銅マット(銅)層は炉底部に液状カソードとして保持し、その際、このカソードは黒鉛ブロックと接触している。電極は他の導電性材料から成ることもできる。
【0048】
銅スラグは、銅マットを得るための、もしくは直接的に粗銅を得るための、銅精鉱の溶解によって得られるスラグ、ならびに銅マットの転換によって得られるスラグであることができる。
【0049】
第1のアーク炉1としては、典型的なAC三相交流アーク炉又はDCアーク炉を使用することができる。
【0050】
永久磁石又は電磁石によって生成される磁場の誘導は好ましくは50〜1000ガウスの範囲内にあり、その際、持続的な磁場が、液状スラグの断面の一部分を、コークス床と接触した1つもしくは複数の電極の範囲内で覆う。
【0051】
電極としては、好ましくは黒鉛−もしくは炭素電極が使用される。電極の位置が流線を磁力線と交差させる。電極の最適なポジショニングによって、流線が磁力線に対して垂直に伸びるようになる。
【0052】
上述のとおり、液状金属ないしは金属マットの層はスラグ下でカソードの機能を有する黒鉛電極もしくは他の電極と接触しており; スラグ表面に接した炭素ないしはコークス層はアノードの機能を有する黒鉛電極もしくは他の電極と接触している。
【0053】
直流電流の強さは、錬かんユニットの大きさ、スラグ量及び温度に依存するが、好ましくは500〜50000Aの範囲である。
【0054】
この提案した方法は好ましくは銅の回収を意図したものであるが、他の金属、例えば鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、白金(Pt)、クロム(Cr)又はニッケル(Ni)に転用することもできる。
【0055】
2つのアーク炉における2段階のスラグ還元及び銅の除去によって、第1の三相交流アーク炉をスラグの初期還元と銅マットの分離に使用し、それに続いて電磁式撹拌を伴ったDC還元溝型炉での徹底的なスラグ還元及び懸垂物の除去を行うことができるということが達成される。還元面への物質移動及び懸垂物の合体を改善する電磁式撹拌の使用は、スラグ電気分解及び界面動電現象と一緒になって、効果的な錬かん及び銅の高い回収を可能にする。つまりこの提案した方法で、 −一般的に言って− 金属酸化物の還元も可能となる。一次溶解ユニットで精鉱の酸化物精錬も行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、三相交流アーク炉及びその後ろに接続されたDC還元溝型炉の形の一次ないしは二次の溶解ユニットの概略図を示す。
【図2】図2a及び図2bは、コークス床及び液状銅マットを電極として使用して徹底的なスラグ還元及び懸垂物の除去を行うためのDC還元溝型炉の正面断面図及び側面断面図を示す。
【符号の説明】
【0057】
1 一次もしくは二次の溶解ユニット(交流炉)
2 第2の炉(直流炉)
3 電磁石
4 電極(アノード)
5 電極(カソード)
6 電気接続(黒鉛電極)
7 電気接続(黒鉛電極)
8 接続手段
9 電極
10 電極
11 交流電源
12 直流電源
13 電気コイル
14 電気コイル
15 スラグ
16 スラグ入口
17 スラグ出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属もしくは金属の化合物を含有するスラグから1種もしくは数種の金属を連続的もしくは不連続的に回収するにあたって、金属含有の液化スラグを一次もしくは二次の溶解ユニット(1)中で加熱する方法において、
金属を含有するスラグを、交流電気炉として構成された一次もしくは二次の溶解ユニット(1)中で加熱し、次に溶融物を、該一次もしくは二次の溶解ユニット(1)から直流電気炉として構成された炉(2)に送り、この炉で、回収すべき金属の電着を行ない、この際、該一次もしくは二次の溶解ユニット(1)に、ケイ化カルシウム(CaSi)、炭化カルシウム(CaC)、フェロシリコン(FeSi)、アルミニウム(Al)及び/又は還元ガスの形の還元剤を表面上に加えるか及び/又は注入することを特徴とする、上記方法。
【請求項2】
一次もしくは二次の溶解ユニット(1)としてアーク炉を使用することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
回収すべき金属が、銅を含んだスラグ中に存在する銅(Cu)であることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
回収すべき金属がスラグ中に存在する鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、白金(Pt)、クロム(Cr)又はニッケル(Ni)であることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
交流電気炉として構成された一次もしくは二次の溶解ユニット(1)でスラグの初期還元及び金属マットもしくは合金、特に銅マットの分離を行ない、そして直流電気炉として構成された第2の炉(2)で徹底的なスラグ還元及び懸垂物の除去を行なうことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
直流電気炉として構成された第2の炉(2)で、金属の回収中に溶融物の電磁式撹拌を行なうことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
電磁式撹拌を生じさせるために、少なくとも1つの電磁石(3)を前記第2の炉(2)中に存在する溶融物に作用させることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
電磁式撹拌を生じさせるために、少なくとも1つの永久磁石を前記第2の炉(2)中に存在する溶融物に作用させることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの磁石が50〜1000ガウスの磁場を発生させ、かつ該磁場が、第2の炉(2)における溶融物の断面及び電極(4、5)の領域の少なくとも一部分に及ぶことを特徴とする請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
一次もしくは二次の溶解ユニット(1)に、加熱中にさらに還元剤としてコークスを添加することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
第2の炉(2)における溶融物表面上に、実質上均一な厚さを有する炭素含有材料の層が形成されるように炭素含有材料、特にコークスを供給し、その際、アノード(4)として作用する該層が電気接続(6)と接触していることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
第2の炉(2)における溶融物下の底部範囲で金属マット、特に銅マットから成る実質上均一な厚さを有する層を維持し、その際、カソード(5)として作用する該層が電気接続(7)と接触していることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2009−522450(P2009−522450A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549003(P2008−549003)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009249
【国際公開番号】WO2008/052690
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・デマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)
【Fターム(参考)】