説明

金属イオン除去装置

【課題】 搭載スペースの省スペース化を図り、また、金属イオンの除去効率の向上を図ることを課題とする。
【解決手段】 コモンレール式燃料噴射システムにおいては、燃料タンクからエンジンへ燃料を供給する燃料供給システムに金属イオン除去フィルタ6が搭載されている。金属イオン除去フィルタ6は、供給配管の燃料流方向の上流端(燃料吸い込み口)に接続されている。具体的には、金属イオン除去フィルタ6が、燃料タンクの燃料貯留室に貯蔵されている燃料中に浸漬されている。そして、フィルタケース8のインレットポートおよびアウトレットポートには、燃料タンクの燃料貯留室に貯蔵されている燃料中に含まれる金属イオンを取り除くことが可能な多数のイオン交換樹脂ビーズ7、およびイオン交換樹脂不織布11、12が設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料に含まれる金属イオンを除去する金属イオン除去装置に関するもので、特に燃料フィルタまたは燃料タンクに対する金属イオン除去フィルタの搭載構造に係わる。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来より、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関(エンジン)に燃料を供給する燃料供給装置が知られている。
エンジンに供給する燃料中には、不純物として多様な金属成分(例えば極微量のNa、K等の金属イオン)が含まれる一方、潤滑剤としてオレイン酸等の脂肪酸が添加されている。このため、燃料中で、金属成分と燃料中成分との予期せぬ反応物が生成される可能性がある。例えば金属イオンと脂肪酸との間に塩反応が起こり、脂肪酸金属塩が生成される可能性がある。
【0003】
この脂肪酸金属塩は、一般的に燃料に対して不溶であるため、エンジンに燃料を噴射する燃料噴射装置(例えばインジェクタ)の摺動部等に析出して堆積すると、インジェクタの作動不良を引き起こすという問題がある。
そこで、燃料タンクと高圧燃料ポンプとの間の燃料供給流路中に金属イオン除去機構を搭載した構造が公知である(例えば、特許文献1及び2参照)。
金属イオン除去機構は、燃料タンクから高圧燃料ポンプに吸入される燃料が流れる燃料流路を形成する筒状のハウジングと、このハウジングの内部に取り付けられて、内部に多数のイオン交換樹脂粒子が充填されたカートリッジとを備えている。
【0004】
カートリッジは、燃料の流れ方向の両端が開放されたケース本体と、このケース本体の上流側の開口端を塞ぐように設置される第1メッシュと、ケース本体の下流側の開口端を塞ぐように設置される第2メッシュとを備えている。
2つの第1、第2メッシュは、カートリッジの内部に異物が侵入することを阻止すると共に、カートリッジの内部に充填された多数のイオン交換樹脂粒子がカートリッジから流出することを防止している。
なお、ケース本体や2つの第1、第2メッシュは、弾性変形がし難い非変形材料が使用されている。
【0005】
[従来の技術の不具合]
ところが、特許文献1及び2に記載の金属イオン除去機構において、カートリッジの内部に充填されるイオン交換樹脂粒子が燃料を吸収して膨潤する。イオン交換樹脂粒子は、燃料膨潤すると体積が増加する特性を持っている。
これにより、非変形材料により構成されるケース本体の内部および非変形材料により構成される2つの第1、第2メッシュ間にイオン交換樹脂粒子が充填されている場合には、イオン交換樹脂ビースの体積増加により隣設するイオン交換樹脂粒子間の隙間が詰められる。
【0006】
この結果、燃料が通過可能な流路断面積が減少するので、隣設するイオン交換樹脂粒子間の隙間を通過する燃料流の圧力損失が増大し、高圧燃料ポンプのポンプ効率に対するエネルギー損失が大きくなるという問題がある。
また、イオン交換樹脂粒子同士が衝突することにより、イオン交換樹脂粒子が破砕または破損する等の不具合が発生する懸念があるため、カートリッジの充填室内の容量(内容積)を大きくする必要がある。
しかし、充填室の容量を大型化したカートリッジを有する金属イオン除去機構を、搭載スペースに制約のある燃料フィルタの内部に搭載した場合、金属イオン除去機構の搭載スペースの確保が困難となる。
【0007】
一方、カートリッジの内部のイオン交換樹脂粒子の充填量を少なくして、燃料流の圧力損失を低減した場合には、充填室内でイオン交換粒子が移動可能となるので、この場合もイオン交換樹脂粒子同士が衝突して、イオン交換樹脂粒子が破砕または破損する等の不具合が発生する懸念がある。また、隣設するイオン交換樹脂粒子間の隙間が広くなるので、カートリッジの充填室内の容量に対して、イオン交換樹脂粒子の搭載量を十分に確保できなくなる。これにより、金属イオン除去機構による金属イオンを除去する性能、つまりイオン交換効率が低下するという問題がある。
省スペースにて、効率良く、金属イオン除去機構を搭載するためには、上記に述べた搭載スペースを必要としないイオン交換樹脂の搭載構造が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4311332号公報
【特許文献2】特開2010−138782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、搭載スペースの省スペース化を図ることのできる金属イオン除去装置を提供することにある。また、金属イオンの除去効率の向上を図ることのできる金属イオン除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明(金属イオン除去装置)は、燃料中に含まれる金属イオンを取り除くイオン交換体と、このイオン交換体を収容する収納室を形成する容器とを備えている。そして、容器は、容器の内部(収納室)から容器の外部へのイオン交換体の流出を防止し、燃料の通過を許容すると共に、燃料中に含まれる金属イオンを取り除くイオン交換不織布を有している。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、容器の収納室の内部に、燃料中に含まれる金属イオンを取り除くイオン交換体が収容されている。このイオン交換体は、容器の内部(収納室)から容器の外部への流出がイオン交換不織布により抑制(防止)されている。
これによって、容器の収納室に収容されるイオン交換体が燃料膨潤や熱膨張等により体積増加した場合であっても、イオン交換体の体積増加に対応してイオン交換不織布が伸縮変形し易い変形部材であるため、予めイオン交換体が体積増加する特性に合わせて容器の収納室内の容量(内容積)を大きくする必要はない。これにより、容器の収納室内の容量に対して、イオン交換体の搭載量を十分に確保できるので、金属イオンの除去効率の向上を図ることができる。
【0012】
したがって、容器全体の体格を小型化(コンパクト化)できるので、装置全体の搭載スペースを容易に確保することができる。これにより、装置全体の搭載スペースの省スペース化を図ることができるので、例えば車両に対する装置全体の搭載性を向上することができる。
また、容器の一部がイオン交換不織布で構成されているので、容器の収納室に収容されるイオン交換体だけでなく、イオン交換不織布自身も燃料中に含まれる金属イオンを取り除くフィルタ部材としての機能を備える。これにより、イオン交換体のみで燃料中に含まれる金属イオンを取り除くもの(従来の技術)と比べて、金属イオンの除去効率の向上を図ることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、容器に、内部に収納室が形成される筒状のケースを有している。
ケースには、収納室を流れる燃料の流れ方向の上流側または下流側に、収納室の上流端または下流端で開口する開口部が設けられている。
イオン交換不織布は、ケース本体の開口部を塞ぐように設置されている。
なお、ケースの材質(材料)としてイオン交換体の体積増加に対応して伸縮変形し難い非変形部材を使用した場合であっても、ケース本体の開口部を塞ぐようにイオン交換不織布を設置したことにより、予めイオン交換体が体積増加する特性に合わせてケース本体の収納室内の容量(内容積)を大きくする必要はない。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、燃料タンクから内燃機関へ燃料を供給する燃料供給システムに金属イオン除去装置(イオン交換不織布製の保持部を有する容器、およびこの容器の収納室に収容されるイオン交換体)が搭載されている。
この場合、燃料タンクから内燃機関に供給される燃料中に含まれる金属イオンをイオン交換体およびイオン交換不織布により取り除くことができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、燃料タンクに、内燃機関の燃料を貯蔵する燃料貯留室を有している。そして、燃料タンクの燃料貯留室の内部に容器が設置されている。
この場合、燃料タンクの燃料貯留室に貯留される燃料中に含まれる金属イオンをイオン交換体およびイオン交換不織布により取り除くことができる。
また、容器の収納室内の容量に対して、イオン交換体の搭載量を十分に確保した場合であっても、燃料タンクの燃料貯留室の内部に容器が設置されているので、燃料タンクの燃料貯留室から内燃機関に供給される燃料流、つまり燃料タンクから内燃機関への燃料供給に対する圧力損失および流路抵抗の増加を抑えることもできる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、燃料タンクに、内燃機関の燃料を貯蔵する燃料貯留室、および燃料給油口から燃料貯留室へ燃料を導く燃料給油流路を有している。そして、燃料給油流路の内部に容器が設置されている。
この場合、燃料給油流路を通って燃料タンク内に給油される燃料、燃料給油口から燃料貯留室へ向かう燃料中に含まれる金属イオンをイオン交換体およびイオン交換不織布により取り除くことができる。
また、容器の収納室内の容量に対して、イオン交換体の搭載量を十分に確保した場合であっても、燃料給油流路の内部に容器が設置されているので、燃料タンクの燃料貯留室から内燃機関に供給される燃料流、つまり燃料タンクから内燃機関への燃料供給に対する圧力損失および流路抵抗の増加を抑えることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、燃料供給システムに、燃料タンクから吸入した燃料を加圧して内燃機関側に向けて吐出する燃料ポンプと、燃料タンクと燃料ポンプとの間に設置されて、燃料タンクから燃料ポンプ側に向かう燃料中に含まれる異物を取り除く燃料フィルタとを備えている。そして、燃料タンクと燃料フィルタとの間に容器が設置されている。
この場合、燃料タンクから燃料フィルタへ向かう燃料中に含まれる金属イオンをイオン交換体およびイオン交換不織布により取り除くことができる。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、燃料供給システムに、燃料タンクから吸入した燃料を加圧して内燃機関側に向けて吐出する燃料ポンプと、燃料タンクと燃料ポンプとの間に設置されて、燃料タンクから燃料ポンプ側に向かう燃料中に含まれる異物を取り除くフィルタエレメントを有する燃料フィルタとを備えている。そして、燃料フィルタの内部に容器が設置されている。
ここで、燃料フィルタの内部において、フィルタエレメントよりも燃料流方向の上流側または下流側に金属イオン除去装置(容器、イオン交換体、イオン交換不織布)が設置される。
この場合、フィルタエレメントで濾過される前の燃料中に含まれる金属イオンをイオン交換体およびイオン交換不織布により取り除くことができる。
また、フィルタエレメントで濾過された後の燃料中に含まれる金属イオンをイオン交換体およびイオン交換不織布により取り除くことができる。
【0019】
請求項8に記載の発明(金属イオン除去装置)は、燃料中に含まれる金属イオンを取り除くイオン交換体と、このイオン交換体を収容する収納室を形成する袋体とを備えている。
袋体は、袋体の内部(収納室)から袋体の外部へのイオン交換体の流出を防止し、且つ燃料の通過を許容すると共に、燃料中に含まれる金属イオンを取り除くイオン交換不織布により構成されている。
【0020】
請求項8に記載の発明によれば、袋体の収納室の内部に、燃料中に含まれる金属イオンを取り除くイオン交換体が収容されている。このイオン交換体は、袋体の内部(収納室)から袋体の外部への流出が袋体により抑制(防止)されている。
そして、袋体の収納室に収容されるイオン交換体が燃料膨潤や熱膨張等により体積増加した場合であっても、イオン交換体の体積増加に対応してイオン交換不織布が伸縮変形し易い変形部材であるため、予めイオン交換体が体積増加する特性に合わせて袋体の収納室内の容量(内容積)を大きくする必要はない。これにより、袋体の収納室内の容量に対して、イオン交換体の搭載量を十分に確保できるので、金属イオンの除去効率の向上を図ることができる。
【0021】
したがって、袋体全体の体格を小型化(コンパクト化)できるので、装置全体の搭載スペースを容易に確保することができる。これにより、装置全体の搭載スペースの省スペース化を図ることができるので、例えば車両に対する装置全体の搭載性を向上することができる。
また、袋体の収納室に収容されるイオン交換体だけでなく、袋体自身も燃料中に含まれる金属イオンを取り除くフィルタ部材としての機能を備える。これにより、イオン交換体のみで燃料中に含まれる金属イオンを取り除くもの(従来の技術)と比べて、金属イオンの除去効率の向上を図ることができる。
【0022】
請求項9に記載の発明によれば、燃料タンクから内燃機関へ燃料を供給する燃料供給システムに金属イオン除去装置(イオン交換不織布製の袋体、およびこの袋体の収納室に収容されるイオン交換体)が搭載されている。
この場合、燃料タンクから内燃機関に供給される燃料中に含まれる金属イオンをイオン交換体およびイオン交換不織布製の袋体により取り除くことができる。
【0023】
請求項10に記載の発明によれば、燃料タンクに、内燃機関の燃料を貯蔵する燃料貯留室を有している。そして、燃料タンクの燃料貯留室に貯蔵されている燃料中に袋体が浸漬されている。
この場合、燃料タンクの燃料貯留室に貯留される燃料中に含まれる金属イオンをイオン交換不織布製の袋体およびイオン交換体により取り除くことができる。
また、袋体の収納室内の容量に対して、イオン交換体の搭載量を十分に確保した場合であっても、燃料タンクの燃料貯留室に貯蔵されている燃料中に袋体が浸漬されているので、燃料タンクの燃料貯留室から内燃機関に供給される燃料流、つまり燃料タンクから内燃機関への燃料供給に対する圧力損失および流路抵抗の増加を抑えることができる。
【0024】
請求項11に記載の発明によれば、イオン交換体として、容器または袋体の収納室の内部に充填される多粒子状のイオン交換樹脂を採用している。また、繊維状のイオン交換樹脂、あるいはイオン交換樹脂不織布、あるいはキレート樹脂を採用しても良い。
また、イオン交換体およびイオン交換不織布を、燃料中の金属イオンを捕捉する金属イオン捕捉材により形成しても良い。
なお、イオン交換不織布として、容器の一部(壁体)または袋体を構成するイオン交換樹脂不織布を採用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】コモンレール式燃料噴射システムを示した構成図である(実施例1)。
【図2】燃料タンクに対する金属イオン除去フィルタの搭載構造を示した模式図である(実施例1)。
【図3】(a)、(b)は金属イオン除去フィルタの主要構造を示した断面図である(実施例1)。
【図4】燃料フィルタに対する金属イオン除去フィルタの搭載構造を示した断面図である(実施例2)。
【図5】燃料フィルタに対する金属イオン除去フィルタの搭載構造を示した断面図である(実施例3)。
【図6】燃料フィルタに対する金属イオン除去フィルタの搭載構造を示した断面図である(実施例4)。
【図7】燃料タンクに対する金属イオン除去フィルタの搭載構造を示した模式図である(実施例5)。
【図8】燃料タンクに対する金属イオン除去フィルタの搭載構造を示した模式図である(実施例6)。
【図9】金属イオン除去フィルタを示した断面図である(実施例6)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明は、搭載スペースの省スペース化を図るという目的、更に、金属イオンの除去効率の向上を図るという目的を、容器の保持部の材質(材料)としてイオン交換不織布を使用することで実現した。また、袋体の材質(材料)としてイオン交換不織布を使用することで実現した。
【実施例1】
【0027】
[実施例1の構成]
図1ないし図3は本発明の実施例1を示したもので、図1はコモンレール式燃料噴射システムを示した図で、図2は燃料タンクに対する金属イオン除去フィルタの搭載構造を示した図である。
【0028】
本実施例の内燃機関の燃料供給装置は、複数の気筒(例えば4気筒)を有する多気筒ディーゼルエンジン等の内燃機関(エンジン)の燃料を貯蔵する貯蔵タンク(以下燃料タンク1と言う)と、燃料タンク1からエンジンへ燃料を供給する燃料供給システムとを備えている。
燃料供給システムは、自動車等の車両のエンジンルームに搭載されるもので、ディーゼルエンジン用の燃料噴射システムとして知られるコモンレール式燃料噴射システム(蓄圧式燃料噴射装置)によって構成されている。
【0029】
コモンレール式燃料噴射システムは、燃料タンク1から汲み上げた燃料中に含まれる異物を取り除く燃料フィルタ2と、この燃料フィルタ2から吸入した燃料を加圧して高圧化する高圧燃料ポンプ3と、この高圧燃料ポンプ3の吐出ポートから高圧燃料が導入されるコモンレール4と、このコモンレール4の各アウトレットポートから高圧燃料が分配供給される複数のインジェクタ5とを備え、コモンレール4の内部に貯蔵(蓄圧)された高圧燃料を各インジェクタ5を介してエンジンの各気筒毎の燃焼室内に噴射供給するように構成されている。
【0030】
そして、燃料タンク1と燃料フィルタ2との間には、燃料タンク1から燃料フィルタ2へ向かう燃料中に含まれる金属イオンを取り除く金属イオン除去フィルタ6が設置されている。
金属イオン除去フィルタ6は、多粒子状のイオン交換樹脂(以下複数のイオン交換樹脂ビーズ7と言う)、円筒状のフィルタケース(容器)8およびイオン交換樹脂不織布11、12を備えている。
なお、金属イオン除去フィルタ6の詳細は後述する。
【0031】
燃料タンク1には、内部に燃料給油流路14(図7参照)が形成されるインレットパイプを介して、内部に給油口が形成されるフィラーネックが接続されている。この燃料タンク1の内部には、燃料を貯留する燃料貯留室15が形成されている。
また、コモンレール式燃料噴射システムは、燃料タンク1から複数のインジェクタ5まで延びる燃料供給配管を備えている。この燃料供給配管は、燃料タンク1の燃料貯留室15から燃料フィルタ2を経て高圧燃料ポンプ3の吸入ポートまで延びる低圧燃料配管と、高圧燃料ポンプ3からコモンレール4を経て複数のインジェクタ5の各インレットまで延びる高圧燃料配管とを備えている。
【0032】
低圧燃料配管は、燃料タンク1から燃料フィルタ2のインレットに燃料を供給する供給配管21、および燃料フィルタ2のアウトレットから高圧燃料ポンプ3の吸入ポートに燃料を供給する供給配管22等を有している。
高圧燃料配管は、高圧燃料ポンプ3の吐出ポートからコモンレール4のインレットポートに燃料を供給する供給配管23、およびコモンレール4の各アウトレットポートから複数のインジェクタ5の各インレットに燃料を供給する供給配管24等を有している。
【0033】
ここで、エンジンとして、燃料が直接燃焼室内に噴射供給される直接噴射式のディーゼルエンジンが採用されている。
エンジンの各気筒毎の燃焼室には、吸気ポートおよび排気ポートがそれぞれ連通している。また、エンジンの吸気ポートには、インテークマニホールドおよび吸気管が接続されている。また、エンジンの排気ポートには、エキゾーストマニホールドおよび排気管が接続されている。
【0034】
燃料フィルタ2は、フィルタエレメント、およびこのフィルタエレメントを収容するフィルタケース等を有している。フィルタエレメントは、フィルタケース内に形成される内部空間に濾紙等の濾過材やハニカム状の濾過エレメントを設置したもので、燃料タンク1から流入する燃料中に含まれる不純物(塵芥、錆等の固形物、カーボン、ガム状物質のようなスラッジおよび水分等の異物)を濾過または捕捉して燃料から分離する。
【0035】
高圧燃料ポンプ3は、エンジン駆動式のサプライポンプであって、燃料フィルタ2を介して燃料タンク1から燃料を汲み上げるフィードポンプ、このフィードポンプから供給される燃料を吸入すると共に調量する電磁式燃料調量弁(電磁弁)、およびこの電磁弁から加圧室内に供給される燃料を高圧化してコモンレール4およびインジェクタ5へ圧送するポンプエレメント(プランジャ、シリンダ)等によって構成されている。
コモンレール4は、燃料の噴射圧力に相当する高圧燃料を蓄圧する蓄圧容器である。このコモンレール4には、プレッシャリミッタ(圧力レギュレータ)および燃料圧力センサ(コモンレール圧力センサ)が取り付けられている。なお、高圧燃料ポンプ3またはコモンレール4は、高圧燃料を発生する高圧発生部を構成する。
【0036】
エンジンには、各気筒毎の燃焼室内に燃料を噴射供給する複数のインジェクタ5がそれぞれ搭載されている。
各気筒毎のインジェクタ5は、燃料を噴射する噴孔を開閉するノズルニードル、このノズルニードルの噴孔閉弁方向に付勢するスプリング、およびニードルバルブを開閉動作させるアクチュエータ(ソレノイドアクチュエータまたはピエゾアクチュエータ)等によって構成されている。
【0037】
高圧燃料ポンプ3の電磁弁および複数のインジェクタ5の各アクチュエータへの供給電力は、ポンプ駆動回路、インジェクタ駆動回路を含んで構成されるエンジン制御ユニット(電子制御装置:以下ECU25と言う)によって制御されるように構成されている。
ECU25には、制御処理および演算処理を行うCPU、各種プログラムおよび制御データを保存する記憶装置(ROM、RAM等のメモリ)、入力回路(入力部)、出力回路(出力部)等の機能を含んで構成される周知の構造のマイクロコンピュータが内蔵されている。このマイクロコンピュータの出力部と高圧燃料ポンプ3の電磁弁との間には、ポンプ駆動回路が接続されている。また、マイクロコンピュータの出力部と複数のインジェクタ5の各アクチュエータとの間には、インジェクタ駆動回路が接続されている。
そして、コモンレール4に取り付けられたコモンレール圧力センサからのセンサ出力信号や、各種センサからのセンサ出力信号は、A/D変換回路でA/D変換された後に、マイクロコンピュータの入力部に入力されるように構成されている。
【0038】
ここで、マイクロコンピュータの入力部には、コモンレール圧力センサだけでなく、クランク角度センサ、アクセル開度センサ、冷却水温センサ、燃料温度センサおよび吸入空気温度センサ等が接続されている。また、マイクロコンピュータは、クランク角度センサより出力されるセンサ出力信号であるNEパルス信号の間隔時間を計測することによってエンジン回転速度(NE)を検出する回転速度検出手段としての機能も備えている。
また、ECU25は、図示しないイグニッションスイッチがオン(IG・ON)されると、コモンレール圧力センサや上記の各種センサからのセンサ出力信号とメモリ内に格納された制御プログラムとに基づいて、最適な燃料噴射特性を演算し、高圧燃料ポンプ3の電磁弁への供給電力(所謂ポンプ駆動信号)、および複数のインジェクタ5の各アクチュエータへの供給電力(所謂インジェクタ駆動信号)等を電子制御するように構成されている。
なお、最適な燃料噴射特性とは、エンジンの各気筒毎の燃焼室内への燃料噴射圧力(指令噴射圧力)、各インジェクタ5の燃料噴射開始時期(指令噴射時期)、各インジェクタ5の開弁期間(指令噴射量と指令噴射圧力とから求められる指令噴射期間)等の最適値のことである。
【0039】
次に、本実施例の金属イオン除去フィルタ(金属イオン除去装置)6の詳細構造を図2ないし図3に基づいて説明する。ここで、図3は金属イオン除去フィルタの主要構造を示した図である。
金属イオン除去フィルタ6は、燃料タンク1の燃料貯留室15内に設置されている。この金属イオン除去フィルタ6は、供給配管21の燃料流方向の上流端に接続されている。具体的には、金属イオン除去フィルタ6が、燃料タンク1の燃料貯留室15に貯蔵されている燃料中に浸漬されている。
【0040】
金属イオン除去フィルタ6は、燃料中に含まれる金属イオンを取り除く複数のイオン交換樹脂ビーズ7と、これらのイオン交換樹脂ビーズ7を収容するビーズ収納室31を有するフィルタケース8と、このフィルタケース8の上流側の開口部(入口ポート)を塞ぐように設置されるイオン交換樹脂不織布11と、フィルタケース8の下流側の開口部(出口ポート)を塞ぐように設置されるイオン交換樹脂不織布12とを備えている。
フィルタケース8は、複数のイオン交換樹脂ビーズ7の燃料膨潤や熱膨張等に伴う体積増加に対応して伸縮変形し難い非変形部材(合成樹脂)によって一体的に形成されている。このフィルタケース8の内部には、円柱形状のビーズ収納室31が形成されている。
【0041】
フィルタケース8には、燃料タンク1の燃料貯留室15に貯留されている燃料を吸い込むための燃料吸い込み口を形成するインレットポート(入口ポート)が、燃料流方向の上流端で開口している。
また、フィルタケース8には、供給配管21の燃料流方向の上流端に接続するアウトレットポート(出口ポート)が、燃料流方向の下流端で開口している。
そして、フィルタケース8は、重力方向(車両上下方向)の下方側から上方側へ向かって燃料が流れるように、燃料タンク1の燃料貯留室15内に設置されている。
なお、重力方向(車両上下方向)の上方側から下方側へ向かって燃料が流れるようにフィルタケース8の内部に設置しても良い。
また、水平方向(車両左右方向または車両前後方向)の一方側から他方側へ向かって燃料が流れるようにフィルタケース8の内部に設置しても良い。
また、フィルタケース8の内部を燃料が蛇行して流れるようにしても良い。
また、フィルタケース8の内部をU字状にターンして流れるようにしても良い。
【0042】
複数のイオン交換樹脂ビーズ7は、フィルタケース8のビーズ収納室31の内部に充填される。これらのイオン交換樹脂ビーズ7として、球面体状(球体状)、多面体状(多角錐状、立方体状または直方体状)、粉体状のイオン交換樹脂を収納するカプセル等の形態を採用しても良い。
複数のイオン交換樹脂ビーズ7は、燃料タンク1の燃料貯留室15からフィルタケース8のビーズ収納室31内に吸い込まれた燃料中に溶出している金属イオンを交換吸着等により捕捉する。つまり、イオン交換樹脂ビーズ7は、燃料中に含まれる金属成分(金属イオン)を燃料から分離除去することが可能な多粒子状物質である。
【0043】
イオン交換樹脂不織布11は、フィルタケース8のインレットポートを塞ぐように設けられている。例えばイオン交換樹脂不織布11の外周部分のみフィルタケース8の開口端縁に溶着(保持)固定されている。
イオン交換樹脂不織布12は、フィルタケース8のアウトレットポートを塞ぐように設けられている。例えばイオン交換樹脂不織布12の外周部分のみフィルタケース8の開口端縁に溶着(保持)固定されている。
イオン交換樹脂不織布11、12は、フィルタケース8の内部(ビーズ収納室31)からフィルタケース8の外部へのイオン交換樹脂ビーズ7の流出または飛散を防止する第1、第2保持部(フィルタケース8の上流側、下流側保持部)としての機能を備えている。 イオン交換樹脂不織布11、12は、燃料の通過(流通)を許容する第1、第2燃料透過部(フィルタケース8の上流側、下流側燃料透過部)としての機能を備えている。
【0044】
また、イオン交換樹脂不織布11、12は、自身を通過する燃料中に溶出している金属イオンを交換吸着等により捕捉する。つまり、イオン交換樹脂不織布11、12は、燃料中に含まれる金属成分(金属イオン)を燃料から分離除去することが可能な第1、第2イオン交換不織布(上流側、下流側イオン交換不織布)である。
また、イオン交換樹脂不織布11、12は、金属イオン交換機能を有する樹脂よりなる繊維から形成されている。
なお、金属イオン交換機能を有する樹脂よりなる1つの不織布シートを中間部で折り返して重ねたイオン交換樹脂不織布11、12を採用しても良い。また、2つ折りにされたイオン交換樹脂不織布11、12の外周を溶着して袋状に形成しても良い。
【0045】
[実施例1の作用]
次に、本実施例のコモンレール式燃料噴射システムに搭載される金属イオン除去装置(金属イオン除去フィルタ6)の作動を図1ないし図3に基づいて簡単に説明する。
【0046】
高圧燃料ポンプ3の駆動軸がエンジンにより駆動されて回転すると、駆動軸の回転に伴って高圧燃料ポンプ3に内蔵されたフィードポンプが回転する。これにより、燃料タンク1の燃料貯留室15に貯蔵されている燃料が、フィルタケース8のインレットポート(供給配管21の燃料吸い込み口)から吸い込まれて金属イオン除去フィルタ6の内部に流入する。
ここで、フィルタケース8のインレットポートに保持固定されたイオン交換樹脂不織布11を通過してフィルタケース8の内部に流入する。このとき、イオン交換樹脂不織布11を通過する燃料中に溶出している金属成分(金属イオン)が、イオン交換樹脂不織布11に交換吸着等により捕捉される。つまり、イオン交換樹脂不織布11のイオン除去能力により、燃料中に含まれる金属成分(金属イオン)が余剰燃料から分離除去される。
【0047】
そして、イオン交換樹脂不織布11を通過してフィルタケース8の内部に流入した燃料は、フィルタケース8の内部に充填された多数のイオン交換樹脂ビーズ7に接触する。
このとき、フィルタケース8の内部に流入した燃料中に溶出している金属成分(金属イオン)が、多数のイオン交換樹脂ビーズ7に交換吸着等により捕捉される。つまり、イオン交換樹脂ビーズ7のイオン除去能力により、燃料中に含まれる金属成分(金属イオン)が余剰燃料から分離除去される。
そして、イオン交換樹脂ビーズ7で金属成分(金属イオン)が分離除去された余剰燃料は、フィルタケース8のアウトレットポートに保持固定されたイオン交換樹脂不織布12を通過してフィルタケース8から流出する。このとき、イオン交換樹脂不織布12を通過する燃料中に溶出している金属成分(金属イオン)が、イオン交換樹脂不織布12に交換吸着等により捕捉される。つまり、イオン交換樹脂不織布12のイオン除去能力により、燃料中に含まれる金属成分(金属イオン)が余剰燃料から分離除去される。
【0048】
そして、金属イオン除去フィルタ6から流出した燃料は、供給配管21を経て、燃料フィルタ2に流入する。ここで、燃料フィルタ2を燃料が通過する際に、燃料中に含まれる異物が分離除去される。
そして、燃料フィルタ2で濾過されて清浄化された燃料は、供給配管22を経て高圧燃料ポンプ3の内部に流入する。
そして、高圧燃料ポンプ3は、燃料フィルタ2から供給配管22を経て流入した燃料を加圧室内で加圧して高圧化し、この高圧燃料を高圧燃料ポンプ3の吐出ポートから吐出して、コモンレール4に供給する。
高圧燃料ポンプ3の吐出ポートより吐出された高圧燃料は、供給配管23を経て、インレットポートからコモンレール4の内部(蓄圧室)に流入し、この蓄圧室内で一時的に蓄圧される。
【0049】
ここで、エンジンの複数の気筒(例えば第1〜第4気筒)の中で第1気筒に搭載されたインジェクタ5の噴射時期(噴射タイミング)になると、インジェクタ5のアクチュエータへの通電が開始される。これにより、エンジンの第1気筒に搭載されたインジェクタ5のノズルニードルが噴孔を開弁するため、エンジンの第1気筒の燃焼室内への燃料噴射が開始される。
そして、噴射タイミングから指令噴射期間が経過すると、インジェクタ5のアクチュエータへの通電が停止される。これにより、エンジンの第1気筒に搭載されたインジェクタ5のノズルニードルが噴孔を閉弁するため、エンジンの第1気筒の燃焼室内への燃料噴射が終了する。
また、エンジンの第1気筒を除く他の気筒(第2〜第4気筒)に搭載されたインジェクタ5にコモンレール4から高圧燃料が分配供給され、エンジンの第2〜第4気筒の燃焼室内に順次噴射供給される。これにより、エンジンが運転される。
【0050】
[実施例1の効果]
以上のように、本実施例のコモンレール式燃料噴射システムにおいては、燃料タンク1からエンジンへ燃料を供給する燃料供給システムに金属イオン除去装置(金属イオン除去フィルタ6)が搭載されている。
金属イオン除去フィルタ6は、供給配管21の燃料流方向の上流端(燃料吸い込み口)に接続されている。具体的には、金属イオン除去フィルタ6が、燃料タンク1の燃料貯留室15に貯蔵されている燃料中に浸漬されている。
【0051】
ここで、金属イオン除去フィルタ6は、燃料タンク1の燃料貯留室15に貯蔵されている燃料中に含まれる金属イオンを取り除く多数のイオン交換樹脂ビーズ7、これらのイオン交換樹脂ビーズ7を内蔵するフィルタケース8、および燃料タンク1の燃料貯留室15に貯蔵されている燃料中に含まれる金属イオンを取り除くイオン交換樹脂不織布11、12を備えている。
フィルタケース8のインレットポートおよびアウトレットポートには、イオン交換樹脂不織布11、12が設置(保持固定)されている。
そして、フィルタケース8のビーズ収納室31の内部に充填される多数のイオン交換樹脂ビーズ7は、フィルタケース8の内部(ビーズ収納室31)からフィルタケース8の外部への流出がイオン交換樹脂不織布11、12により抑制(防止)されている。
【0052】
これによって、フィルタケース8のビーズ収納室31に収容される複数のイオン交換樹脂ビーズ7が燃料膨潤や熱膨張(図3(b)参照)等により体積増加した場合であっても、イオン交換樹脂ビーズ7の体積増加に対応してイオン交換樹脂不織布11、12が伸縮変形し易い変形部材であるため、予めイオン交換樹脂ビーズ7が体積増加する特性に合わせてフィルタケース8のビーズ収納室31内の容量(内容積)を大きくする必要はない。これにより、フィルタケース8のビーズ収納室31内の容量に対して、イオン交換樹脂ビーズ7の搭載量を十分に確保できるので、金属イオンの除去効率の向上を図ることができる。
したがって、フィルタケース8全体の体格を小型化(コンパクト化)できるので、装置全体の搭載スペースを容易に確保することができる。これにより、金属イオン除去フィルタ6全体の搭載スペースの省スペース化を図ることができるので、例えば車両に対する金属イオン除去フィルタ6全体の搭載性を向上することができる。
【0053】
また、フィルタケース8の一部(壁体、フィルタケース8のインレットポートおよびアウトレットポートを塞ぐ蓋体)がイオン交換樹脂不織布11、12で構成されているので、フィルタケース8のビーズ収納室31に収容されるイオン交換樹脂ビーズ7だけでなく、イオン交換樹脂不織布11、12自身も燃料中に含まれる金属イオンを取り除くフィルタ部材としての機能を備える。これにより、イオン交換樹脂ビーズ7のみで燃料中に含まれる金属イオンを取り除くもの(従来の技術)と比べて、金属イオンの除去効率の向上を図ることができる。
【実施例2】
【0054】
図4は本発明の実施例2を示したもので、燃料フィルタに対する金属イオン除去フィルタの搭載構造を示した図である。
【0055】
本実施例の燃料フィルタ2は、金属イオン除去フィルタ6と、燃料中に含まれる異物を除去するフィルタエレメント41と、水集合室としてのセジメンタ42と、金属イオン除去フィルタ6およびフィルタエレメント41を収容する合成樹脂製のハウジング43とを備えている。
ハウジング43は、図示しない上部ケースと下部ケースとに2分割されている。ハウジング43は、下部ケース内にフィルタエレメント41およびセジメンタ42を収容した後に、上部ケースと下部ケースとの溶着面を溶着することで一体化される。
【0056】
ハウジング43には、供給配管21の燃料流方向の下流端に接続するインレットパイプ44と、供給配管21の燃料流方向の上流端に接続するアウトレットパイプ45とが形成されている。
燃料フィルタ2のハウジング43の内部を流れる燃料の経路は、燃料タンク1から燃料が導入される燃料導入流路46、イオン交換樹脂不織布11、ビーズ収納室31、イオン交換樹脂不織布12、セジメンタ42および高圧燃料ポンプ3へ燃料を導出する燃料導入流路47等により構成されている。
フィルタケース7内に形成されるビーズ収納室31は、ハウジング43の下部(セジメンタ42)へ燃料を導く燃料導入流路であり、ハウジング43と同軸的に配置されている。
【0057】
金属イオン除去フィルタ6は、実施例1と同様に、イオン交換樹脂ビーズ7、フィルタケース8およびイオン交換樹脂不織布11、12等によって構成されている。
フィルタエレメント41は、物質粒子を捕捉する物質粒子除去フィルタである。このフィルタエレメント41は、金属イオン除去フィルタ6に対して燃料流方向において下流側に配置されている。また、フィルタエレメント41は、燃料中に含まれる不純物(塵芥、錆等の固形物、カーボン、ガム状物質のようなスラッジおよび水分)を濾過または捕捉して燃料から分離除去する。
【0058】
燃料フィルタ2のハウジング43の下部には、燃料中の水分を燃料から分離する水分離機能を備えている。ハウジング43の内部の燃料と水との比重差を利用して金属イオン除去フィルタ6およびフィルタエレメント41の重力方向の下方側(図示下方)に沈降させることにより、ハウジング43の下部側の水集合部(セジメンタ42)に貯留している。 ハウジング43の底部から下方に延びるパイプ48には、セジメンタ42内に貯留されている水を外部へ排出させるドレーンバルブ49が設置されている。
【0059】
以上のように、本実施例のコモンレール式燃料噴射システムにおいては、燃料タンク1からエンジンへ燃料を供給する燃料供給システムに金属イオン除去装置(金属イオン除去フィルタ6)が搭載されている。
そして、燃料フィルタ2のハウジング43の内部には、燃料タンク1の燃料貯留室15から高圧燃料ポンプ3の吸入ポートへ向かう燃料中に含まれる金属イオンを取り除く金属イオン除去フィルタ6が収容(設置)されている。これにより、燃料タンク1の燃料貯留室15からハウジング43の内部に流入した燃料中に含まれる金属イオンがイオン交換樹脂ビーズ7およびイオン交換樹脂不織布11、12により取り除かれる。
したがって、実施例1と同様な作用、効果を達成することができる。
【実施例3】
【0060】
図5は本発明の実施例3を示したもので、燃料フィルタに対する金属イオン除去フィルタの搭載構造を示した図である。
【0061】
本実施例の金属イオン除去フィルタ6は、実施例1及び2と同様に、イオン交換樹脂ビーズ7、フィルタケース8およびイオン交換樹脂不織布11、12等によって構成されている。この金属イオン除去フィルタ6は、実施例2と異なり、フィルタエレメント41に対して外側に配置されている。
本実施例のコモンレール式燃料噴射システムにおいては、燃料フィルタ2のハウジング43の内部に金属イオン除去フィルタ6が収容(設置)されている。これにより、燃料タンク1の燃料貯留室15からハウジング43の内部に流入した燃料中に含まれる金属イオンがイオン交換樹脂ビーズ7およびイオン交換樹脂不織布11、12により取り除かれる。
したがって、実施例1及び2と同様な作用、効果を達成することができる。
【実施例4】
【0062】
図6は本発明の実施例4を示したもので、燃料フィルタに対する金属イオン除去フィルタの搭載構造を示した図である。
【0063】
本実施例の金属イオン除去フィルタ6は、実施例1〜3と同様に、イオン交換樹脂ビーズ7、フィルタケース8およびイオン交換樹脂不織布11、12等によって構成されている。この金属イオン除去フィルタ6は、実施例2と異なり、フィルタエレメント41に対して燃料流方向において下流側に配置されている。
本実施例のコモンレール式燃料噴射システムにおいては、燃料フィルタ2のハウジング43の内部に金属イオン除去フィルタ6が収容(設置)されている。これにより、燃料タンク1の燃料貯留室15からハウジング43の内部に流入した燃料中に含まれる金属イオンがイオン交換樹脂ビーズ7およびイオン交換樹脂不織布11、12により取り除かれる。
したがって、実施例1〜3と同様な作用、効果を達成することができる。
【実施例5】
【0064】
図7は本発明の実施例5を示したもので、燃料タンクに対する金属イオン除去フィルタの搭載構造を示した図である。
【0065】
本実施例の金属イオン除去フィルタ6は、実施例1〜4と同様に、イオン交換樹脂ビーズ7、フィルタケース8およびイオン交換樹脂不織布11、12等によって構成されている。
本実施例のコモンレール式燃料噴射システムにおいては、フィラーネックに形成される給油口から燃料タンク1の燃料貯留室15へ燃料を給油するための燃料給油流路(給油孔)14の内部に金属イオン除去フィルタ6が収容(設置)されている。これにより、給油口から燃料給油流路14に流入した燃料中に含まれる金属イオンがイオン交換樹脂ビーズ7およびイオン交換樹脂不織布11、12により取り除かれる。
したがって、実施例1〜4と同様な作用、効果を達成することができる。
また、フィルタケース8のビーズ収納室31内の容量に対して、イオン交換樹脂ビーズ7の搭載量を十分に確保した場合であっても、燃料給油流路14の内部にフィルタケース8が設置されているので、燃料タンク1の燃料貯留室15からエンジンに供給される燃料流、つまり燃料タンク1からエンジンへの燃料供給に対する圧力損失および流路抵抗の増加を抑えることができる。
【実施例6】
【0066】
図8および図9は本発明の実施例6を示したもので、図8は燃料タンクに対する金属イオン除去フィルタの搭載構造を示した図で、図9は金属イオン除去フィルタを示した図である。
【0067】
本実施例の金属イオン除去フィルタ6は、燃料中に含まれる金属イオンを取り除くことが可能な多数のイオン交換樹脂ビーズ7と、内部にイオン交換樹脂ビーズ7を収容する巾着袋(袋体)9を備えている。
巾着袋9は、燃料中に含まれる金属イオンを取り除くことが可能なイオン交換樹脂不織布13により構成されている。この巾着袋9は、内部にイオン交換樹脂ビーズ7を入れるための開口部を有している。この開口部は、締結紐10で締結されて、イオン交換樹脂ビーズ7の外部への流出または飛散が妨げられている。巾着袋9のビーズ収納室51には、多数のイオン交換樹脂ビーズ7が充填されている。
【0068】
そして、巾着袋9は、それ自体(巾着袋9を構成するイオン交換樹脂不織布13)が、巾着袋9の内部(ビーズ収納室51)からフィルタケース8の外部へのイオン交換樹脂ビーズ7の流出または飛散を防止する保持部としての機能を備えている。また、イオン交換樹脂不織布13は、燃料の通過(流通)を許容する燃料透過部としての機能を備えている。
なお、金属イオン交換機能を有する樹脂よりなる1つのイオン交換樹脂不織布シートを中間部で2つ折りにして、この2つ折りにされたイオン交換樹脂不織布シートの外周を溶着して巾着袋状に形成しても良い。
【0069】
本実施例のコモンレール式燃料噴射システムにおいては、燃料タンク1の燃料貯留室15に貯蔵されている燃料中に金属イオン除去フィルタ6を構成する巾着袋9が浸漬されている。これにより、燃料タンク1の燃料貯留室15に貯留している燃料中に含まれる金属イオンがイオン交換樹脂ビーズ7およびイオン交換樹脂不織布13よりなる巾着袋9により取り除かれる。
したがって、実施例1〜5と同様な作用、効果を達成することができる。
また、フィルタケース8のビーズ収納室31内の容量に対して、イオン交換樹脂ビーズ7の搭載量を十分に確保した場合であっても、燃料タンク1の燃料貯留室15に貯蔵されている燃料中にイオン交換樹脂不織布13よりなる巾着袋9が浸漬されているので、燃料タンク1の燃料貯留室15からエンジンに供給される燃料流、つまり燃料タンク1からエンジンへの燃料供給に対する圧力損失および流路抵抗の増加を抑えることができる。
【0070】
[変形例]
本実施例では、本発明のイオン交換体を、粒子状のイオン交換樹脂であるイオン交換樹脂ビーズ7によって構成しているが、本発明のイオン交換体を、粉体状または繊維状または膜状のイオン交換樹脂、あるいはイオン交換樹脂不織布、あるいはイオン交換粒子、あるいはイオン交換不織布、あるいはイオン交換膜によって構成しても良い。また、イオン交換体として、イオン交換樹脂の代わりにキレート樹脂または活性炭等の活性粒子を用いても良い。
【0071】
本実施例では、本発明のイオン交換不織布を、イオン交換樹脂不織布11〜13によって構成しているが、本発明のイオン交換不織布を、キレート樹脂不織布を用いても良い。 本実施例では、円筒状のフィルタケース8の軸線(筒)方向に燃料の出入り口が設けられているが、フィルタケース8の円周方向に燃料の出入り口が設けられていても良い。
巾着袋9の内部にイオン交換樹脂ビーズ7を入れた後に、巾着袋9の開口部を締結して閉じる締結紐10を、イオン交換樹脂不織布テープによって形成しても良い。
また、イオン交換樹脂ビーズ7を収容したイオン交換樹脂不織布13よりなる巾着袋9を、燃料給油流路14、供給配管21〜24、燃料フィルタ2等の内部に設置しても良い。また、燃料タンク1の上壁部から巾着袋9を吊り下げるようにして燃料タンク1の内部に設置しても良い。
【0072】
本実施例では、高圧燃料ポンプ3の内部に設置されたエンジン駆動式のフィードポンプ(低圧燃料ポンプ)を採用しているが、高圧燃料ポンプ3の外部に設置された、例えば燃料タンク1の燃料貯留室15内に設置されたモータ駆動式の電動燃料ポンプ(フィードポンプ、低圧燃料ポンプ)を採用しても良い。
また、金属イオン除去装置(金属イオン除去フィルタ6)を、燃料タンク1の燃料貯留室15に設置されるサブタンクの内部に収容される、サブタンク内から吸入した燃料を外部(内燃機関側)へ吐出する燃料ポンプおよびこの燃料ポンプの周囲に配置される円筒状のフィルタエレメント(燃料フィルタ)を有するポンプモジュールに設置しても良い。
【0073】
また、金属イオン除去装置(金属イオン除去フィルタ6)を、高圧燃料ポンプ3、コモンレール4または各インジェクタ5から燃料タンク1へ余剰燃料を戻すリターン配管に設置しても良い。
また、内燃機関(エンジン)として、多気筒ディーゼルエンジンの代わりに、多気筒ガソリンエンジンを用いても良い。また、単気筒エンジンに適用しても良い。また、発電機、圧縮機、送風機を駆動する駆動源としての内燃機関(エンジン)の燃料供給装置に適用しても良い。
ここで、燃料タンク1の燃料貯留室内に貯留される燃料は、ディーゼル油、ガソリンだけでなく、アルコール混合燃料等を用いても構わない。
【符号の説明】
【0074】
1 燃料タンク
2 燃料フィルタ
3 高圧燃料ポンプ
4 コモンレール
5 インジェクタ
6 金属イオン除去フィルタ(金属イオン除去装置)
7 イオン交換樹脂ビーズ(多粒子状のイオン交換体)
8 フィルタケース(容器)
9 イオン交換樹脂不織布製の巾着袋(袋体)
11 イオン交換樹脂不織布
12 イオン交換樹脂不織布
13 イオン交換樹脂不織布
14 燃料給油流路
15 燃料貯留室
21 供給配管
22 供給配管
23 供給配管
24 供給配管
31 フィルタケースのビーズ収納室
51 巾着袋のビーズ収納室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料中に含まれる金属イオンを取り除くイオン交換体(7)と、
このイオン交換体(7)を収容する収納室(31)を形成する容器(8)と
を備えた金属イオン除去装置(6)において、
前記容器(8)は、前記収納室(31)から前記容器(8)の外部への前記イオン交換体(7)の流出を防止し、燃料の通過を許容すると共に、燃料中に含まれる金属イオンを取り除くイオン交換不織布(11、12)を有していることを特徴とする金属イオン除去装置(6)。
【請求項2】
請求項1に記載の金属イオン除去装置(6)において、
前記容器は、内部に前記収納室(31)が形成される筒状のケース(8)を有し、
前記ケース(8)は、前記収納室(31)を流れる燃料の流れ方向の上流側または下流側に、前記収納室(31)の上流端または下流端で開口する開口部を有し、
前記イオン交換不織布(11、12)は、前記ケース(8)の開口部を塞ぐように設置されていることを特徴とする金属イオン除去装置(6)。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の金属イオン除去装置(6)において、
前記容器(8)は、燃料タンク(1)から内燃機関へ燃料を供給する燃料供給システムに搭載されていることを特徴とする金属イオン除去装置(6)。
【請求項4】
請求項3に記載の金属イオン除去装置(6)において、
前記燃料タンク(1)は、前記内燃機関の燃料を貯蔵する燃料貯留室(15)を有し、 前記容器(8)は、前記燃料貯留室(15)の内部に設置されていることを特徴とする金属イオン除去装置(6)。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の金属イオン除去装置(6)において、
前記燃料タンク(1)は、前記内燃機関の燃料を貯蔵する燃料貯留室(15)、および燃料給油口から前記燃料貯留室(15)へ燃料を導く燃料給油流路(14)を有し、
前記容器(8)は、前記燃料給油流路(14)の内部に設置されていることを特徴とする金属イオン除去装置(6)。
【請求項6】
請求項3ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載の金属イオン除去装置(6)において、
前記燃料供給システムは、
前記燃料タンク(1)から吸入した燃料を加圧して前記内燃機関側に向けて吐出する燃料ポンプ(3)と、
前記燃料タンク(1)と前記燃料ポンプ(3)との間に設置されて、前記燃料タンク(1)から前記燃料ポンプ(3)側に向かう燃料中に含まれる異物を取り除く燃料フィルタ(2)と
を備え、
前記容器(8)は、前記燃料タンク(1)と前記燃料フィルタ(2)との間に設置されていることを特徴とする金属イオン除去装置(6)。
【請求項7】
請求項3ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載の金属イオン除去装置(6)において、
前記燃料供給システムは、
前記燃料タンク(1)から吸入した燃料を加圧して前記内燃機関側に向けて吐出する燃料ポンプ(3)と、
前記燃料タンク(1)と前記燃料ポンプ(3)との間に設置されて、前記燃料タンク(1)から前記燃料ポンプ(3)側に向かう燃料中に含まれる異物を取り除くフィルタエレメントを有する燃料フィルタ(2)と
を備え、
前記容器(8)は、前記燃料フィルタ(2)の内部に設置されていることを特徴とする金属イオン除去装置(6)。
【請求項8】
燃料中に含まれる金属イオンを取り除くイオン交換体(7)と、
このイオン交換体(7)を収容する収納室(51)を形成する袋体(9)と
を備えた金属イオン除去装置(6)において、
前記袋体(9)は、前記収納室(51)から前記袋体(9)の外部への前記イオン交換体(7)の流出を防止し、且つ燃料の通過を許容すると共に、燃料中に含まれる金属イオンを取り除くイオン交換不織布(13)により構成されていることを特徴とする金属イオン除去装置(6)。
【請求項9】
請求項8に記載の金属イオン除去装置(6)において、
前記袋体(9)は、燃料タンク(1)から内燃機関へ燃料を供給する燃料供給システムに搭載されていることを特徴とする金属イオン除去装置(6)。
【請求項10】
請求項9に記載の金属イオン除去装置(6)において、
前記燃料タンク(1)は、前記内燃機関の燃料を貯蔵する燃料貯留室(15)を有し、 前記袋体(9)は、前記燃料貯留室(15)に貯蔵されている燃料中に浸漬されていることを特徴とする金属イオン除去装置(6)。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のうちのいずれか1つに記載の金属イオン除去装置(6)において、
前記イオン交換体とは、前記収納室(31、51)の内部に充填される多粒子状のイオン交換樹脂(7)のことであることを特徴とする金属イオン除去装置(6)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−237257(P2012−237257A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107436(P2011−107436)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】