説明

金属ウラニウムの連続式電解精錬装置

【課題】スクレーピングが不要で、電解を中断することなく連続的に、高純度の金属ウラニウム析出物と電解中に発生する転移金属を効率的に回収する金属ウラニウム連続式電解精錬装置の提供。
【解決手段】放熱板10の下部に固定され、かつ、多数の黒鉛陰極22を装着させた陰極部20と、陰極部20と対向して周囲を囲み、回転可能に前記放熱板10の下部に固定される、使用済核燃料を受容する陽極部30と、該陰極部20と陽極部30とを浸漬する電解質を充填した電解槽40と、陰極部20の下部で黒鉛陰極22に電着された後、脱離する金属ウラニウムを収集し外部に引き出す金属ウラニウム回収部50と、電解槽40の下部に連結され、陽極部30から導出して電解槽40の下部に沈澱・収集された転移金属スラッジを引き出す転移金属回収部60とを包含して構成される連続式電解精錬装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ウラニウムの電解精錬装置に関する。より詳細には、ウラニウム析出物と、電解過程で発生する転移金属を回収する際、電解工程を中断させることなく、連続的に転移金属を回収することができる金属ウラニウムの連続式電解精錬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、従来の核燃料として使用された金属ウラニウムの電解精錬装置は、三塩化ウラニウムが溶融している約500℃の溶融塩中において、使用済金属核燃料の切片を受容する陽極バスケットと、純粋ウラニウムが電着される鉄系陰極によって構成される。
【0003】
前記従来の金属ウラニウム電解精錬装置を利用して、金属ウラニウムを精錬するとき、電流を印加すると溶融塩中の三塩化ウラニウムが還元されて陰極に電着される。また、前記電解反応で分離された塩素イオンは、電気的に陽極で金属ウラニウムを選択的に溶解させる。このような金属ウラニウム電解精錬の過程を繰り返すことによって純粋な金属ウラニウムを分離することができる。
しかし、前記従来の金属ウラニウム電解精錬装置を利用した金属ウラニウムの電解精錬の過程は、陰極に電着された金属ウラニウムを周期的に回収するためには電解反応を中断しなければならないとともに、電着物の回収に長い時間と手間がかかり連続操業が不可能であるため短時間で多量の電着物を回収することができない問題がある。
【0004】
このような問題を解決し、高速で純粋金属ウラニウムを分離しようとする多様な電解精錬装置が報告されている。
米国特許第5,650,053号(1997.7.22)の開示技術によれば、約500℃の溶融塩中において、使用済金属核燃料の切片を多孔板の陽極バスケット中に盛り入れた、数個の陽極バスケットを、チューブ形態でなる陰極の内・外部に位置させ、陽極バスケットを回転させながら電源を印加すると、陽極バスケット中の金属ウラニウムが溶出して陰極に電着する。米国特許第5,650,053号の精錬装置は、陰極に電着された金属ウラニウムを、陽極バスケットの外部に付着されているセラミック板でスクレーピング(scraping)して、陽極バスケットの下部に備えられている収集部に集める。
【0005】
しかし、前記精錬装置は、陰極に電着された金属ウラニウムの一部だけが脱離し、残る電着物が陰極の表面に付着したまま、脱離をより難しくする緻密な組織に変化する。
したがって、陽極に設けられているセラミック板によっては、組織が緻密化された電着物を掻き下ろすことができないため、一定時間が経過すると、電解精錬操作を中止し、電流を逆に印加して電着物を陽極に逆戻りさせる逆電着により電着物を剥離するストリッピング(stripping)を行うことによって、陰極表面を清浄化した後、再び初めから各電着ステップの操作を実施することになる。
しかし、このような逆電着操作は、大量の電力を消耗するとともに電着性能も非常に非効率的であり、さらに、装置が複雑になる問題がある。その上、陽極バスケットの下部に備えられている収集部から電着物を回収するためには電解反応工程を中断しなければならず、電極モジュール全体を持ち上げなければならない問題がある。
また、金属ウラニウム電着物の回収槽が陽極バスケットの下部に位置するため、不可避的に陽極から発生する未溶解転移元素の粒子がウラニウムに混入し、高純度ウラニウム電着物を得ることに限界を有する問題がある。
【0006】
また、日本国特許出願公開公報特開平第10−332880号(1998.12.18)もやはり、金属核燃料成分を500℃のカドミウムに溶解し、さらに鉄系陰極に電着させ、機械的なスクレーピング工程によってウラニウム電着物を回収した後、電着物に包含された塩を分離するために、回収されたウラニウム電着物を別途のウラニウム‐塩の分離槽へ移送して処理する精錬装置を開示している。
したがって、前記精錬装置は、ウラニウム電着物を回収するために、電解反応工程を中断する必要のない連続的な操業が可能であり、処理速度を増大させることができる。
【0007】
しかし、この精錬装置もやはり鉄系陰極を使用するため、機械的なスクレーピング工程を必要とする問題がある。
さらに、電着物を移送させるためにポンプを使用することになるが、電着物は多量の塩及びカドミウムが混在した状態で同時に移送されるので、この混合物から金属ウラニウム電着物を回収するためには追加的な蒸留工程が必要になる問題がある。
【0008】
一方、日本国特許出願公開公報特開平第10−53889号は、陰極に電着されたウラニウムを容易に回収するために、一部分を溶融塩に浸したドラム型の陰極を使用し、これを回転させてスクレーパーでウラニウム電着物を分離させ、陰極ドラムの表面に析出したウラニウム面にアルゴンガスを噴射して、残留する塩を除去する精錬装置を開示する。
【0009】
しかし、この精錬装置もやはり連続的なアルゴンの供給が必要であり、やはり機械的なスクレーピング工程を必要とするため、従来の装置が有している問題を根本的に解決するものではない。
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,650,053号
【特許文献2】日本国特許出願公開公報特開平第10−332880号
【特許文献3】日本国特許出願公開公報特開平第10−53889号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記問題を解決するための本発明の目的は、スクレーピング工程の必要がなく、電解工程を中断することなしに、連続的に高純度のウラニウム析出物と、電解工程中に発生する転移金属を回収することができる金属ウラニウムの連続式電解精錬装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の技術的課題を達成するために、本発明の金属ウラニウムの連続式電解精錬装置は、放熱板の下部に固定される、多数の黒鉛陰極を装着させた陰極部と、前記陰極部と対向してその周囲を囲みながら回転可能に前記放熱板の下部に固定される使用済核燃料を受容する陽極部と、前記陰極部と前記陽極部とを受容し、前記陰極部と前記陽極部とを浸けることができるように電解質が充填された電解槽と、前記電解槽内部の前記陰極部の下部において、前記多数の黒鉛陰極に電着された後、脱離する金属ウラニウムを収集し、前記電解槽の外部に導出する金属ウラニウム回収部と、前記電解槽の下部に連結され、前記陽極部から導出して前記電解槽の下部に沈澱・収集された転移金属のスラッジを導出する転移金属回収部とを包含する。
【0013】
前記陰極部は、前記多数の黒鉛陰極の中心軸に配設されるスクリュー型攪拌機をさらに包含する。
前記陽極部は、前記陰極部の周囲を囲む円筒型に形成され、その外周板と内周板との間に使用済核燃料を受容する円筒型バスケットであることを特徴とする。
【0014】
前記円筒型バスケットの外周板と内周板には多数の排出孔が形成され、前記排出孔は、円筒型バスケットの縦方向に沿って延設するとともに、円周に沿って一定の間隔で並列される。
また、前記排出孔は、前記円筒型バスケットの水平断面の円中心線(L)に対し傾斜状に形成され、前記円筒型バスケットの傾斜角は円中心線(L)と45度の傾斜角を有するように形成されることが好ましい。
【0015】
前記円筒型バスケットの内周板は、フィルター状に形成され、100乃至325メッシュ範囲の網目であることが好ましい。
また、前記円筒型バスケットは、陽極フレームの円周に沿って個別に分離される複数の円弧状バスケットの組合せで形成される。
【0016】
前記ウラニウム回収部は、前記電解槽内部の前記陰極部の下部に配設されるウラニウム回収槽、及び、前記電解槽の下部を貫通して前記回収槽に連結され、前記回収槽に収集された金属ウラニウムを導出する第1フレキシブル スクリューコンベヤーを包含する。
前記回収槽及び前記第1フレキシブル スクリューコンベヤーの移送管の内部には、予め設定されたレベルのカドミウムプールが形成される。
また、前記第1フレキシブル スクリューコンベヤーの移送管の内部には、前記カドミウムプールのレベルを感知・測定するための第1レベルセンサーが設置される。
前記転移金属回収部は、前記電解槽の下部に連結され、収集された前記転移金属を導出する第2フレキシブル スクリューコンベヤーを包含する。
前記電解槽及び前記第2フレキシブル スクリューコンベヤーの移送管の内部には、予め設定されたレベルのカドミウムプールが形成される。
また、前記第2フレキシブル スクリューコンベヤーの移送管の内部には、カドミウムプールのレベルを感知・測定するための第2レベルセンサーが設置される。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、黒鉛陰極と、回転する円筒型陽極とを利用することにより電解精錬工程における従来の機械的なスクレーピングの工程なしに、連続的に金属ウラニウムを回収することができる電解精錬装置を提供する。
また、本発明の電界精錬装置によれば、黒鉛陰極から自重によって脱離する金属ウラニウム電着物と、回転可能に装着される円筒型の陽極によって分離・収集される転移金属をそれぞれのフレキシブル スクリューコンベヤーによって連続的に回収することができる。
さらに、カドミウムプールを利用してウラニウム電着物に存在する残留溶融塩を除去することにより、超ウラニウム元素の汚染を防止し、高純度のウラニウムを回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照しながら本願発明の金属ウラニウムの連続式電解精錬装置を詳細に説明する。ただし、本願発明の請求項に記載する範囲内で多様な形態に変形して実施することができるため、本願発明の技術的範囲は、本実施例に限定されるものではない。
図1は、本願発明の1実施例による金属ウラニウムの連続式電解精錬装置を図示した断面模式図であり、図2は、図1を立体的に図示した部分切開斜視図である。
まず、図1及び図2を参照して説明する。本実施例の金属ウラニウム連続式電解精錬装置は、放熱板(10)の下部に固定される陰極部(20)と、使用済核燃料(35)を受容し、陰極部(20)の周囲を囲みながら回転するように放熱板(10)の下部に固定される陽極部(30)と、さらに陰極部(20)と陽極部(30)とを受容し、陰極部(20)と陽極部(30)とを浸けることができるように電解質を充填した電解槽(40)と、陰極部(20)の下部で電着された後、脱離する金属ウラニウムを収集して電解槽(40)の外部に導出するウラニウム回収部(50)と、前記電解槽(40)の下部で収集されたスラッジ状の転移金属を導出する転移金属回収部(60)とによって構成される。
【0019】
図3は、図2の陰極部(20)を分離してその詳細を拡大して図示した斜視図である。
前記陰極部(20)は、連結部材(24)によって放熱板(10)の下部に離隔・固定される円板型の固定板(21)と、固定板(21)の下部に連結・結合される多数本の棒状の黒鉛陰極(22)と、黒鉛陰極(22)の中心に位置して固定板(21)の中心を囲んで回転するように固定されるスクリュー型攪拌機(23)によって構成される。
黒鉛陰極(22)は、それぞれ電解質によって、使用済核燃料が溶融された溶融塩からウラニウムの電解反応で陰極群側に電着された金属ウラニウムをその自重によって脱落し易くなるようにする。
また、黒鉛陰極(22)は、その周囲を囲んで形成される陽極部(30)との対向面積を増加させるように、固定板(21)の円周縁に沿って均等な間隔で配設されることが好ましい。
前記スクリュー型攪拌機(23)は、放熱板(10)の上側に装着される第1モータ(26)の駆動によって、電解槽(40)内部の溶融塩を攪拌するように形成されたスクリュー型であり、黒鉛陰極(22)の中心で軸回転し、電解槽(40)に充填されている溶融塩を下から上に掬い上げて流動させながら攪拌する。
この時、スクリュー型攪拌機(23)は、溶融塩を攪拌するときに乱流が発生しないように、後述する陽極部(30)と連動させて構成することが好ましい。
【0020】
図4は、図2の陽極部(30)を分離して図示した分解斜視図である。
前記陽極部(30)は、放熱板(10)の下部で回転できるように固定される陽極フレーム(31)と、前記陽極フレーム(31)に固定される円筒型バスケット(32)によって構成される。
前記陽極フレーム(31)は、放熱板(10)の上側に配設される第2モータ(36)の駆動によって、陰極部(20)の周りを回転するように放熱板(10)の下部に固定される。
前記円筒型バスケット(32)は、陰極部(20)の周りを囲み、黒鉛陰極(22)と対向するような円筒型をなす。
また、前記円筒型バスケット(32)は、その内部に使用済核燃料(35)を受容するための受容空間が形成されるように、一定の間隔を有して離隔・配設される外周板(32a)と内周板(32b)とによって構成される。
さらに、円筒型バスケット(32)は、陽極フレーム(31)の円周方向に沿って配置される複数の円弧状バスケット(33)に分割されて形成されることが好ましい。したがって、本実施例における円筒型バスケット(32)は、それぞれ4分円の円弧状バスケット(33)の組合せでなることを例示している(図3、4参照)。
したがって、前記各円弧状バスケット(33)は、陽極フレーム(31)に別途の締結部材なしに係合させることにより、個別の円弧状バスケット(33)を容易に取り替えることができる。
即ち、前記のように、4分円の円弧状バスケット(33)のそれぞれのうち、受容した使用済核燃料(35)が電解質によって完全に溶解されている円弧状バスケット(33)のみを個別的に交換することができる。したがって、陽極部(30)の全体を電解槽の外部に引き出すことなしに、電解精錬工程を連続的に実施することができる。
以下の説明において、円筒型バスケット(32)は、これを構成する複数の円弧状バスケット(33)を含めて通称される。
円筒型バスケット(32)には、外周板(32a)と内周板(32b)の縦方向に沿って長く、円周方向に並列状に配される複数の排出孔(32c)が形成される。
【0021】
図5は、図4の円筒型バスケット(32)に設けられる排出孔(32c)の形状を上方から見た部分断面図である。
前記排出孔(32c)は、円筒型バスケット(32)の外周板(32a)と内周板(32b)とにそれぞれ同一の間隔で形成される。前記排出孔(32c)は、陽極部(30)が回転する時、陽極部(30)の内側から外側に向けて溶融塩が流動するように形成される。
このために、排出孔(32c)は、各円筒型バスケット(32)の断面中心線(L)(図5の1点鎖線)を基準にして傾けて形成される。本実施例においては、図5のように、円筒型バスケット(32)の中心線(L)を基準にして45度の傾斜角を形成する。即ち、陽極部(30)の回転方向とは反対方向に溶融塩の流動経路が傾斜角を有して形成されるようにする。
したがって、使用済核燃料の電解反応過程において、電解質によって未だ溶解されていない円筒型バスケット(32)内部に残存する所定のサイズ以下の転移金属を含有するスラッジが、溶融塩の攪拌流動によって外周板(32a)の排出孔(32c)を通じて排出される。
ここで、円筒型バスケット(32)の内周板(32b)は、陽極部(30)の内部へ転移金属スラッジが逆流入することを防止するために、一定メッシュ以下のフィルターで構成される。この時、内周板(32b)は、略100乃至325メッシュのステンレス網で形成されることが好ましい。
【0022】
図6は、図1の金属ウラニウムの連続式電解精錬装置内の溶融・流動物質の流れを示す部分切開斜視図である。
図6の電解槽(40)内部の溶融塩は、陽極部(30)及びこれと一緒に連動されるスクリュー型攪拌機(23)によって、乱流が発生しない状態で流動しながら攪拌される。
陽極部(30)は、回転しながら内部の陰極部(20)側の溶融塩を外部に流動させることによって、円筒型バスケット(32)内に受容されている使用済核燃料(35)をより容易に溶解させるとともに、未溶解の状態で残存する転移金属を含有するスラッジを排出孔(32c)を通じて外部に排出させる。
この時、排出された転移金属スラッジは、溶融塩との比重差によって電解槽(40)の下部に沈澱・収集される。
スクリュー型攪拌機(23)は、前記黒鉛陰極(22)の下部でスクリュー回転し、流入した溶融塩を上部に向けて流動させることにより、溶融塩内に溶解している金属ウラニウムをより容易に多数の黒鉛陰極(22)に電着させる機能を果たす。
【0023】
図7は、図1の金属ウラニウムの連続式電解精錬装置内のカドミウムプールのレベルを図示した部分切開斜視図である。
図7の金属ウラニウム回収部(50)は、陰極部(20)の下部に配設される回収槽(51)と、回収槽(51)の下部に収集された金属ウラニウムを電解槽(40)の外部に導出する第1フレキシブル スクリューコンベヤー(52)を包含する。
【0024】
回収槽(51)は、陰極部(20)の下部にじょうご状に形成される。この回収槽(51)の内部には黒鉛陰極(22)に電着された後、自重によって脱離する金属ウラニウム電着物が収集される。
前記第1フレキシブル スクリューコンベヤー(52)は、回収槽(51)の下部に収集された金属ウラニウム電着物を、スクリューコンベヤーの作動によって、連続的に引き出すことになる。
【0025】
また、図7の転移金属の回収部(60)は、電解槽(40)の最下部と連結される第2フレキシブル スクリューコンベヤー(61)を包含する。第2フレキシブルスクリューコンベヤ(61)は、電解槽(40)の下部に沈澱・収集された転移金属のスラッジをスクリューコンベヤーの作動によって連続的に引き出すことになる。
さらに、前記第2フレキシブル スクリューコンベヤー(61)は、転移金属スラッジを回収する用途以外にも、溶融塩を交換する時の移送手段として利用することもできる。
【0026】
しかし、前記第1フレキシブル スクリューコンベヤー(52)と、第2フレキシブル スクリューコンベヤー(61)とによって導出される金属ウラニウム電着物及び転移金属スラッジには、約20%乃至30%の残留溶融塩が包含されている。
この残留溶融塩内には、三塩化ウラニウムと超ウラニウム(transuranium)塩化物が混在しているが、超ウラニウム塩化物は一般的に三塩化ウラニウムより低い蒸気圧を有している。
したがって、残留溶融塩の蒸留段階において、超ウラニウム塩化物は三塩化ウラニウムより濃度が高くなるので、高温にて金属ウラニウム電着物と反応することにより超ウラニウム金属相を形成し、回収されたウラニウムの放射性準位を高めるようになる。これはウラニウムを中間貯蔵するか低準位の廃棄物化する場合に、大きな問題点として指摘されている。
【0027】
このため、金属ウラニウム回収部(50)の回収槽(51)と、第1フレキシブル スクリューコンベヤー(52)の移送管の内部に、所定のレベルに設定されたレベルH1のカドミウムプール(54)を形成する。
カドミウムプール(54)を形成するカドミウムは、密度が7g/cmであってウラニウムの19g/cmより低く、ウラニウム金属の液体カドミウム内での溶解度は、500℃において2.3wt%である。したがって、黒鉛陰極(22)から脱離された金属ウラニウム電着物はカドミウムプール(54)の下部に沈澱する。また、500℃でのLiCl−KCl共融塩の密度は、1.6g/cmであり、9wt%UCl3を含有する塩の場合も、〜1.9g/cm程度であって液体カドミウムに比べて非常に低い。加えて、液体カドミウムに対する溶融塩の溶解度も非常に低いため、金属ウラニウム電着物内に包含された溶融塩は、液体カドミウムの上部に浮上することになる。このようにして、カドミウムプール(54)の内部で金属ウラニウム電着物と溶融塩が分離されるようになる。
【0028】
また、第1フレキシブル スクリューコンベヤー(52)によって電解槽(40)の外部に導出された金属ウラニウム電着物内には、なお少量のカドミウムが混在している。
しかし、このカドミウムは溶融塩に比べて沸点が低いので、蒸留工程で塩より容易に除去することができ、超ウラニウム塩も、その大部分が第1フレキシブル スクリューコンベヤーによって金属ウラニウム電着物を導出する段階で溶融塩とともに除去される。
したがって、カドミウムを除去する工程の以後には、高純度の金属ウラニウム電着物が得られることになる。
【0029】
また、第1フレキシブル スクリューコンベヤー(52)移送管の内部には、カドミウムプール(54)のレベルを感知・測定することができる第1レベルセンサー(53)が設置される。
この第1レベルセンサー(53)は、溶融塩とカドミウムとの間の空間伝導度の差異を利用してカドミウムプール(54)のレベルを感知・測定することにより、金属ウラニウム電着物の連続回収によるカドミウムの損失が発生する場合、適当量を必要に従って補充することができる。
なお、カドミウムは、蒸留工程において、金属ウラニウムの電着物から分離させて再使用することができる。
【0030】
また、転移金属の回収部(60)の第2フレキシブル スクリューコンベヤー(61)の移送管の内部と、電解槽(40)の下部にもやはりカドミウムプール(63)が形成されるとともに、第2フレキシブル スクリューコンベヤー(61)の移送管の内部には、カドミウムプール(63)のレベルH2を感知・測定するための第2レベルセンサー(62)が設置される。
したがって、転移金属スラッジの場合においても、その密度が、液体カドミウムより高いので、転移金属は、前記電解槽(40)の下部に沈澱し、前述の金属ウラニウム電解物と同様な原理による過程を通じて純粋な転移金属を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の1実施例による金属ウラニウムの連続式電解精錬装置を図示した断面模式図である。
【図2】図1を立体的に図示した部分切開斜視図である。
【図3】図2の陰極部を分離、詳細を拡大して図示した斜視図である。
【図4】図2の陽極部を分離して図示した分解斜視図である。
【図5】図4の円筒型バスケットの排出孔の形状及び陽極部の回転方向と溶融塩の流動経路を図示した部分断面図である。
【図6】図1の金属ウラニウムの連続式電解精錬装置内の溶融物質の移動経路を示す部分切開斜視図である。
【図7】図1の金属ウラニウムの連続式電解精錬装置内のカドミウムプールのレベルを図示した部分切開斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
10・・・放熱板
20・・・陰極部
21・・・固定板
22・・・(多数の)黒鉛陰極
23・・・スクリュー型攪拌機
24・・・連結部材
30・・・陽極部
31・・・陽極フレーム
32・・・円筒型バスケット
33・・・複数の円弧状バスケット
35・・・使用済核燃料
40・・・電解槽
50・・・金属ウラニウム回収部
51・・・金属ウラニウム回収槽
52・・・第1フレキシブル スクリューコンベヤー
53・・・第1レベルセンサー
54・・・カドミウムプール
60・・・転移金属回収部
61・・・第2フレキシブル スクリューコンベヤー
62・・・第2レベルセンサー
63・・・カドミウムプール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱板(10)の下部に固定され、多数の黒鉛陰極(22)を装着させた陰極部(20)と、
前記陰極部(20)と対向してその周囲を囲みながら、回転可能に前記放熱板(10)の下部に固定される使用済核燃料を受容する陽極部(30)と、
前記陰極部(20)と前記陽極部(30)とを受容し、前記陰極部(20)と前記陽極部(30)とを浸けることができるように電解質が充填された電解槽(40)と、
前記電解槽(40)内部の前記陰極部(20)の下部において、前記多数の黒鉛陰極(22)に電着された後、脱離する金属ウラニウムを収集し、前記電解槽(40)の外部に導出する金属ウラニウム回収部(50)と、
前記電解槽(40)の下部に連結され、前記陽極部(30)から導出して前記電解槽(40)の下部に沈殿・収集された転移金属のスラッジを導出する転移金属回収部(60)とを包含してなることを特徴とする金属ウラニウムの連続式電解精錬装置。
【請求項2】
前記陰極部(20)が、前記多数の黒鉛陰極(22)の中心軸に配設されるスクリュー型攪拌機をさらに包含することを特徴とする請求項1に記載の金属ウラニウムの連続式電解精錬装置。
【請求項3】
前記陽極部(30)が、前記陰極部(20)の周囲を囲む円筒型に形成されるとともにその外周板と内周板との間に使用済核燃料(35)を受容する円筒型バスケット(32)であることを特徴とする請求項1に記載の金属ウラニウムの連続式電解精錬装置。
【請求項4】
前記円筒型バスケット(32)の外周板と内周板には多数の排出孔が形成され、
前記排出孔は、前記円筒型バスケット(32)の縦方向に沿って延設するとともに、円周に沿って一定の間隔で並列されることを特徴とする請求項3に記載の金属ウラニウムの連続式電解精錬装置。
【請求項5】
前記排出孔が、前記円筒型バスケット(32)の水平断面の円中心線(L)に対し、傾斜状に形成されることを特徴とする請求項4に記載の金属ウラニウムの連続式電解精錬装置。
【請求項6】
前記排出孔が、前記円筒型バスケット(32)の水平断面の円中心線(L)と45度の傾斜角を有するように形成されることを特徴とする請求項5に記載の金属ウラニウムの連続式電解精錬装置。
【請求項7】
前記円筒型バスケット(32)の内周板が、100乃至325メッシュの網目を有するフィルター状であることを特徴とする請求項3に記載の金属ウラニウムの連続式電解精錬装置。
【請求項8】
前記円筒型バスケット(32)が、陽極フレーム(31)の円周に沿って個別に分離される複数の円弧型バスケット(33)の組合せでなることを特徴とする請求項3に記載の金属ウラニウムの連続式電解精錬装置。
【請求項9】
前記金属ウラニウム回収部(50)が、前記電解槽(40)内部の前記陰極部(20)の下部に配設される金属ウラニウム回収槽(51)と、
前記電解槽(40)の下部を貫通して前記回収槽(51)に連結され、前記回収槽(51)に収集された金属ウラニウムを導出する第1フレキシブル スクリューコンベヤー(52)を包含することを特徴とする請求項1に記載の金属ウラニウムの連続式電解精錬装置。
【請求項10】
前記金属ウラニウム回収槽(51)及び前記第1フレキシブル スクリューコンベヤー(52)の移送管の内部には、予め設定されたレベルのカドミウムプールが形成されることを特徴とする請求項9に記載の金属ウラニウムの連続式電解精錬装置。
【請求項11】
前記第1フレキシブル スクリューコンベヤー(52)の移送管の内部には、さらに、カドミウムプールのレベルを感知・測定するための第1レベルセンサー(53)が設置されることを特徴とする請求項10に記載の金属ウラニウムの連続式電解精錬装置。
【請求項12】
前記転移金属回収部(60)が、前記電解槽(40)の下部に連結され、沈殿・収集された前記転移金属を導出する第2フレキシブル スクリューコンベヤー(61)を包含することを特徴とする請求項1に記載の金属ウラニウムの連続式電解精錬装置。
【請求項13】
前記電解槽(40)と、前記第2フレキシブル スクリューコンベヤー(61)の移送管の内部には、予め設定されたレベルのカドミウムプールが形成されることを特徴とする請求項12に記載の金属ウラニウムの連続式電解精錬装置。
【請求項14】
前記第2フレキシブル スクリューコンベヤー(61)の移送管の内部には、さらに、カドミウムプールのレベルを感知・測定するための第2レベルセンサー(62)が設置されることを特徴とする請求項13に記載の金属ウラニウムの連続式電解精錬装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−297627(P2008−297627A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210360(P2007−210360)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(507272603)韓国原子力研究院 (6)
【出願人】(502326554)韓国水力原子力株式会社 (4)
【Fターム(参考)】