説明

金属ナノ構造を製造する方法

(a)クロモニック材料を含有する水性組成物を(b)溶液中の金属塩または金属粒子の懸濁液と混合することによって、金属ナノ構造を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロモニック材料を使用して金属ナノ構造を製造する方法に関し、他の態様では、クロモニックマトリックスおよび金属ナノ構造を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、電子および光学デバイス、生体物質の標識化、磁気記録媒体、および量子コンピューティングなどの様々な技術用途のためにナノスケール範囲(つまり、0.1〜100nm範囲)の金属構造を開発する研究活動が高まってきている。
【0003】
例えば、金属ナノワイヤー、ナノロッド、ナノチューブ、およびナノリボンなどの金属ナノ構造を合成/製造する多くのアプローチが開発されている。現在のアプローチとしては、例えば、金属増幅プロセスによる多孔性膜の孔への金属の無電解めっきにより、金属ナノワイヤーを作製する方法(例えば、バービック(Barbic)ら,J.Appl.Phys.,91,9341頁(2002年)参照)、および気体反応物を金属溶媒のナノサイズの液滴に溶解し、続いて単結晶ワイヤーを核生成し、成長させることを含む、蒸気−液体−固体(VLS)プロセスによって金属ナノワイヤー/ナノチューブを作製する方法(例えば、ディング(Ding)ら,J.Phys.Chem.B108,12280頁(2004年)参照)が挙げられる。しかしながら、残る課題は、特に大規模で、金属ナノ構造のサイズおよび形状、ならびにその配向および分布を制御することである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記を鑑みて、金属ナノ構造のサイズおよび形、ならびに比較的大きな領域にわたるその配向および分布の制御を提供するナノ構造を製造する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
簡潔には、一態様において、本発明は、金属ナノ構造を製造する方法を提供する。この方法は、(a)クロモニック材料を含有する水性組成物を(b)溶液中の金属塩または金属粒子の懸濁液と混合する工程を含む。
【0006】
本明細書で使用される、「クロモニック材料」(または「クロモニック化合物」)とは、種々の親水性基によって囲まれた疎水性コアが存在することを一般に特徴とする、大きな多環分子を意味する(例えば、アトウッド(Attwood),T.K.,リドン(Lydon),J.E.,Molec.Crystals Liq.Crystals,108,349頁(1984年)参照)。疎水性コアは、芳香族および/または非芳香族環を含有し得る。溶液中の場合には、これらのクロモニック材料は、長距離秩序によって特徴付けられるネマチック秩序へと凝集する傾向がある。
【0007】
本発明は、(a)クロモニック材料を含有する水性組成物を基材の表面に適用する工程と;(b)金属塩を含有する溶液と被覆面を接触させる工程とを含む、金属ナノ構造を製造する方法も提供する。
【0008】
本発明の方法は、比較的均一なサイズおよび形状を有する金属ナノ構造を作製することを可能にする。この方法はさらに、比較的大きな領域にわたって、金属ナノ構造の比較的均一な分布および長距離配向または秩序を可能にする。
【0009】
このように、本発明の方法は、金属ナノ構造を製造するための改善された方法の当技術分野での要求を満たす。
【0010】
他の態様において、本発明は、クロモニックマトリックスおよび金属ナノ構造を含む物品を提供する。本明細書で使用される「クロモニックマトリックス」とは、ネマチック秩序へと凝集するクロモニック材料を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
あらゆるクロモニック材料が、本発明の方法において有用であり得る。クロモニック相を形成する化合物は、当技術分野で公知であり、例えば、クサントス(xanthos)(例えば、アゾ染料およびシアニン染料)およびペリレンが挙げられる(例えば、カワサキ(Kawasaki)ら,Langmuir 16,5409頁(2000年)、またはリドン(Lydon),J.,Colloid and Interface Science,8,480頁(2004年)参照)。有用なクロモニック材料の代表的な例としては、ジおよびモノ−パラジウムオルガニル、スルファモイル−置換銅フタロシアニン、およびヘキサアリールトリフェニレンが挙げられる。
【0012】
好ましいクロモニック材料としては、以下の一般構造:
【化1】

(式中、R2はそれぞれ独立して、電子供与基、電子吸引基、および電子中性基からなる群から選択され、
3は、置換および非置換芳香族複素環ならびに置換および非置換複素環からなる群から選択され、その環が、R3の環における窒素原子を介してトリアジン基に結合している)
のうちの1つによって示される材料が挙げられる。
【0013】
上述のように、クロモニック化合物は中性であるが、両性イオンまたはプロトン互変異性体などの他の形で存在することができる(例えば、水素原子がカルボキシル基のうちの1つから解離し、トリアジン環における窒素原子のうちの1つと会合する場合)。クロモニック化合物は、例えばカルボン酸塩などの塩であることもできる。
【0014】
上記の一般構造は、カルボキシル基が、化合物のトリアジン主鎖へのアミノ結合に対してパラであり(式I)、カルボキシ基が、トリアジン主鎖へのアミノ結合に対してメタである(式II)配向を示す。カルボキシ基は、パラ配向とメタ配向の組み合わせであることもできる(図示せず)。好ましくは、配向はパラである。
【0015】
好ましくは、各R2は、水素または置換または非置換アルキル基である。さらに好ましくは、R2は独立して、水素、非置換アルキル基、ヒドロキシまたはハロゲン化物官能基で置換されたアルキル基、およびエーテル、エステル、もしくはスルホニルを含むアルキル基からなる群から選択される。最も好ましくは、R2は水素である。
【0016】
3は、限定されないが、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、ピラゾール、トリアゾール、トリアジン、キノリン、およびイソキノリンから誘導される芳香族複素環であることができる。好ましくは、R3は、ピリジンまたはイミダゾールから誘導される芳香族複素環を含む。芳香族複素環R3の置換基は、限定されないが、置換および非置換アルキル、カルボキシ、アミノ、アルコキシ、チオ、シアノ、アミド、スルホニル、ヒドロキシ、ハロゲン化物、パーフルオロアルキル、アリール、エーテル、およびエステルからなる群から選択される。好ましくは、R3の置換基は、アルキル、スルホニル、カルボキシ、ハロゲン化物、パーフルオロアルキル、アリール、エーテル、ならびにヒドロキシ、スルホニル、カルボキシ、ハロゲン化物、パーフルオロアルキル、アリール、またはエーテルで置換されたアルキルからなる群から選択される。R3が置換ピリジンである場合、置換基は好ましくは、4位に位置する。R3が置換イミダゾールである場合、置換基は好ましくは、3位に位置する。
【0017】
3の代表的な例としては、以下に示される、4−(ジメチルアミノ)ピリジニウム−1−イル、3−メチルイミダゾリウム−1−イル、4−(ピロリジン−1−イル)ピリジニウム−1−イル、4−イソプロピルピリジニウム−1−イル、4−[(2−ヒドロキシエチル)メチルアミノ]ピリジニウム−1−イル、4−(3−ヒドロキシプロピル)ピリジニウム−1−イル、4−メチルピリジニウム−1−イル、キノリニウム−1−イル、4−t−ブチルピリジニウム−1−イル、および4−(2−スルホエチル)ピリジニウム−1−イルが挙げられる。
【化2】

【0018】
3は、以下の一般構造:
【化3】

(式中、R4は、水素または置換もしくは非置換アルキル基である)
によって表すこともできる。さらに好ましくは、R4は、水素、非置換アルキル基、ならびにヒドロキシ、エーテル、エステル、スルホネート、またはハロゲン化物官能基で置換されたアルキル基からなる群から選択される。最も好ましくは、R4は、プロピルスルホン酸、メチル、およびオレイルからなる群から選択される。
【0019】
3は、例えば、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、およびピペラジンなどの複素環から選択することもできる。
【0020】
本発明の方法で使用するのに好ましいクロモニック化合物は、以下の構造:
【化4】

(式中、X-は、対イオンである)
のうちの1つによって表すことができる。好ましくは、X-は、HSO4-、Cl-、CH3COO-、およびCF3COO-からなる群から選択される。
【0021】
式IIIは、その両性イオン形での化合物を示す。したがって、ピリジン窒素は正電荷を有し、カルボキシ官能基のうちの1つは負電荷(COO-)を有する。
【0022】
化合物は、どちらのカルボキシ官能基も負電荷を有し、かつ正電荷が、トリアジン基中の窒素のうちの1つおよびピリジン基の窒素によって保持されるような、他の互変異性型で存在することもできる。
【0023】
米国特許第5,948,487号明細書(サホウアニ(Sahouani)ら)に記載のように、式Iを有するトリアジン誘導体は水溶液として調製することができる。上記の式Iで示されるトリアジン分子の一般的な合成経路は、2段階プロセスを伴う。塩化シアヌルを4−アミノ安息香酸で処理し、4−{[4−(4−カルボキシアニリノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン−2−イル]アミノ}安息香酸を生成する。この中間体を置換または非置換窒素含有複素環で処理する。複素環の窒素原子が、トリアジンの塩素原子と置き換わり、相当する塩化物塩が形成される。上記の式IIIで示されるような両性イオン誘導体は、水酸化アンモニウムに塩化物塩を溶解し、陰イオン交換カラムにそれを通し、塩化物を水酸化物で置換し、続いて溶媒を除去することによって調製される。上記の式IIで示されるような他の構造は、4−アミノ安息香酸の代わりに3−アミノ安息香酸を使用することによって得られる。
【0024】
クロモニック材料は、水溶液(好ましくは、アルカリ性水溶液)に溶解した場合に、クロモニック相または集合を形成することができる。クロモニック相または集合は、当技術分野でよく知られており(例えば、Handbook of Liquid Crystals,Volume 2B,Chapter XVIII,Chromonics,John Lydon,981−1007頁,1998年参照)、平らな多環芳香族分子のスタック(stack)からなる。その分子は、親水性基によって囲まれた疎水性コアからなる。スタックは、多くのモフォロジーをとるが、一般に層のスタックによって生じるカラムを形成する傾向によって特徴付けられる。濃度が高くなるにしたがって成長する、分子の規則スタックが形成される。
【0025】
好ましくは、クロモニック材料は、1種または複数種のpH調整化合物および界面活性剤の存在下で水溶液に入れられる。pH調整化合物を添加することによって、クロモニック材料が水溶液にさらに可溶性となることが可能となる。適切なpH調整化合物としては、例えば、水酸化アンモニウムまたは種々のアミンなどの公知の塩基が挙げられる。界面活性剤を水溶液に添加して、基材の表面上への溶液の湿潤を促進することができる。適切な界面活性剤としては、イオン性および非イオン性界面活性剤(好ましくは、非イオン性)が挙げられる。粘度調整剤(例えば、ポリエチレングリコール)および/または結合剤(例えば、低分子量加水分解デンプン)などの任意の添加剤も添加することができる。
【0026】
一般に、クロモニック材料は、温度約40℃未満で(さらに一般的には室温で)水溶液に溶解される。しかしながら、得られる金属ナノ構造の形状およびサイズを温度を変化させることによってある程度まで制御することができることは当業者であれば理解されよう。
【0027】
水溶液の成分それぞれの相対濃度は、得られるナノ構造の所望の配向およびその目的の用途によって異なる。しかしながら、一般に、クロモニック材料を溶液に添加して、溶液に対して約4〜約20(好ましくは、約4〜約8)重量%の範囲の濃度が達成される。
【0028】
クロモニック材料を含有する水性組成物を金属粒子の懸濁液と混合する。一般に、得られた混合物中の金属粒子の濃度は、全固形物に対して約1〜約35重量%の範囲である。
【0029】
好ましい金属粒子としては、貴金属粒子が挙げられる。さらに好ましい金属粒子としては、銀粒子、金粒子、白金粒子、およびその混合物および合金が挙げられる。例えば鉄を含む粒子などの非貴金属粒子も使用することができる。
【0030】
好ましくは、金属粒子は、アルキルチオール、アルキルグリコールチオール、アルキルアミン、またはグリコールアミンで表面改質される。
【0031】
得られた混合物は基材の表面に適用される。適切な基材としては、混合物の適用を受けるあらゆる固体材料(例えば、ガラスまたはポリマーフィルム)が挙げられる。
【0032】
混合物は、クロモニック材料の規則配置を提供する有用な手段によって、例えば線巻コーティングロッドまたは押出ダイ法などのコーティング技術などによって、適用することができる。好ましくは、ずり配向または磁気配向が、適用中または適用後に混合物に適用される。混合物に剪断力または磁気力をかけることによって、クロモニック材料の整列が促進され、そのため乾燥すると、配向構造またはマトリックスが得られる。
【0033】
被覆層の乾燥は、水性コーティングを乾燥させるのに適した手段を使用して達成することができる。有用な乾燥方法は、コーティングに損傷を与えない、またはコーティングまたは適用中に付与される被覆層の配向を著しく乱さない。
【0034】
乾燥後、金属ナノ構造のみが基材上に残るように、クロモニック材料が除去される。例えば分解温度に加熱することによる(例えば、約300℃より高い温度に加熱することによる)手段などのいずれかの手段を用いて、クロモニック材料を除去することができる。代替方法としては、基材がガラスである場合には、クロモニック材料は、塩基性溶液で除去することができる。
【0035】
代替方法として、クロモニック材料を含有する水性組成物は、溶液中の金属塩と混合される。好ましい金属塩としては、貴金属塩が挙げられる。さらに好ましい金属塩としては、銀塩(例えば、硝酸銀、酢酸銀等)、金塩(例えば、金チオリンゴ酸ナトリウム、塩化金、等)、白金塩(例えば、硝酸白金、塩化白金等)、およびその混合物が挙げられる。最も好ましい金属塩としては、硝酸銀、酢酸銀、金チオリンゴ酸ナトリウム、塩化金、およびその混合物が挙げられる。
【0036】
一般に、金属塩は、得られた混合物中に、混合物に対して約50重量%未満の濃度で存在する。
【0037】
得られた混合物は、上述のように基材の表面に適用される(好ましくは、適用中または適用後にずり配向または磁気配向を適用して)。
【0038】
混合物を基材の表面に適用する前または後のいずれかで、当技術分野で公知の還元方法によって、金属塩を還元することができる。例えば、還元は、還元剤(例えば、トリス(ジメチルアミノ)ボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、または水素化ホウ素アンモニウム)、電子ビーム(eビーム)処理または紫外線(UV)光を使用することによって行うことができる。
【0039】
金属塩を還元した後、被覆層を乾燥させて、上述のように金属ナノ構造のみが基材上に残るようにクロモニック材料が除去される。
【0040】
クロモニック材料を含有する水性組成物は、溶液中の金属塩と混合する前に、基材の表面に適用することもできる(好ましくは、適用中または適用後にずり配向または磁気配向を適用して)。クロモニック材料を含有する水性組成物を基材の表面に適用した後、それを金属塩を含有する溶液と接触させる(例えば、溶液に浸漬する)。好ましい金属塩は、上記の好ましい金属塩と同じである。次いで、金属塩は還元され、クロモニック材料は任意に、上述のように除去される。
【0041】
記載の方法を使用して、例えばナノワイヤーなどのナノ構造およびナノ構造の規則性アレイ(つまり、比較的均一なサイズおよび形状のナノ構造(例えば、球状ナノ粒子)が実質的に均等な間隔にある、アレイ)を製造することができる。本発明の方法は、例えば電磁干渉(EMI)フィルターなどの用途に有利である、大きな領域にわたるナノ構造の作製を促進することができる。
【実施例】
【0042】
本発明の目的および利点は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらの実施例に記載の特定の材料およびその量、ならびに他の条件および詳細は、本発明を過度に限定するものと解釈すべきではない。
【0043】
別段の指定がない限り、すべての試薬および化合物は、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WI)から入手された、または入手することができる。
【0044】
本明細書において、
「精製水」とは、ニュージャージー州ギブスタウンのEMDケミカルズ社(EMD Chemicals,Inc.,Gibbstown,NJ)から商品名「OMNISOLVE」で市販の水を意味し;
「APG325」とは、オハイオ州シンシナティーのコグニス社(Cognis Corp.USA,Cincinnati,OH)から市販の界面活性剤、アルキルポリグルコシドの70重量%水溶液を意味し;
「ICB3003」とは、イリノイ州ジケーターのA.E.スタレー・マニュファクチャリング社(A.E.Staley Manufacturing Co.,Decatur,IL)から入手されたデンプンを意味する。
【0045】
実施例1
クロモニック集合における銀ナノ粒子の製造
精製水(4.0g)、エチレンジアミン(0.09g)、式IIIのクロモニック化合物(1.0g)、グルコース(0.3g)、およびAPG325(0.01g)の混合物をフラスコ中で約15分間磁気攪拌した。精製水(4.0g)、ポリ(アクリル酸)(分子量90,000のポリ(アクリル酸)の25重量%水溶液0.16g)、水酸化アンモニウム(30重量%水溶液0.42g)、および硝酸銀(0.03g)の異なる混合物を約15分間磁気攪拌した。2つの混合物を共に15分間攪拌することによってフラスコ中で合わせ、コーティング用の混合物を得た。#3巻線コーティングロッドを使用して、ガラス顕微鏡スライド上にこの混合物をコーティングした。次いで、密閉ガラス広口瓶に被覆ガラススライドを2分間入れることによって、トリス(ジメチルアミノ)ボラン蒸気にコーティングをさらした。スライドを広口瓶から取り出した後、コーティングを空気中で室温にて少なくとも5分間乾燥させた。
【0046】
実施例2
クロモニック集合における銀ナノ粒子の製造
精製水(4.0g)、式IIIのクロモニック化合物(1.0g)、APG325(10重量%水溶液0.1g)、および水酸化アンモニウム(30重量%水溶液0.3g)の混合物をフラスコ中で約15分間磁気攪拌した。精製水(4.0g)、水酸化アンモニウム(30重量%水溶液1.0g)、および酸化銀(0.2g)の異なる混合物をフラスコ中で約15分間磁気攪拌した。2つの混合物を共に15分間攪拌することによってフラスコ中で合わせ、コーティング用の混合物を得た。#3巻線コーティングロッドを使用して、ガラス顕微鏡スライド上にこの混合物をコーティングした。次いで、密閉ガラス広口瓶に被覆ガラススライドを2分間入れることによって、トリス(ジメチルアミノ)ボラン蒸気にコーティングをさらした。スライドを広口瓶から取り出した後、コーティングを空気中で室温にて少なくとも5分間乾燥させた。
【0047】
実施例3
クロモニック集合における銀ナノワイヤーの製造
精製水(8.0g)、水酸化アンモニウム(30重量%水溶液1.3g)、式IIIのクロモニック化合物(1.0g)、APG325(0.01g)、および安息香酸銀(0.2g)の混合物をフラスコ中で約20分間磁気攪拌した。#5巻線コーティングロッドを使用して、ガラス顕微鏡スライド上にこの混合物をコーティングした。次いで、密閉ガラス広口瓶に被覆ガラススライドを2分間入れることによって、トリス(ジメチルアミノ)ボラン蒸気にコーティングをさらした。スライドを広口瓶から取り出した後、コーティングを空気中で室温にて少なくとも5分間乾燥させた。次いで、300kVで操作されるModel H9000電子顕微鏡(カリフォルニア州プレザントンの株式会社日立ハイテクノロジーズ(Hitachi High Technologies America,Inc.,Pleasanton,CA)から市販されている)を使用して透過型電子顕微鏡法によって、そのコーティングを調べた。銀ナノワイヤーの透過型電子顕微鏡写真を図1および2に示す。図1は、コーティングの平面図(ナノワイヤーの全長を示す)であり、銀ナノワイヤーは濃い部分である。図2は、コーティングの側面図(ナノワイヤーの末端を示す)であり、銀ナノワイヤーは濃い部分である。
【0048】
実施例4
クロモニック集合における銀ナノワイヤーの製造
精製水(8.0g)、水酸化リチウム(0.08g)、式IIIのクロモニック化合物(1.0g)、APG325(10重量%水溶液0.3g)、M200加水分解デンプン(0.03g,アイオワ州マスカティーンのグレイン・プロセッシング社(Grain Processing Corp.,Muscatine,IA)から市販されている)、硝酸銀(0.21g)、および水酸化アンモニウム(30重量%水溶液0.075g)の混合物をフラスコ中で約30分間磁気攪拌した。#3巻線コーティングロッドを使用して、この混合物をガラス顕微鏡スライド上にコーティングし、その後、エタノール中の水素化ホウ素カリウムの10重量%溶液を慎重に、ピペットによってコーティングの表面に適用した。約5分後、エタノールでガラススライドをすすぎ、空気中で室温にて乾燥させた。
【0049】
実施例5
クロモニック集合における金ナノ粒子の製造
精製水(9.0g)、水酸化アンモニウム(30重量%水溶液0.25g)、APG325(10重量%水溶液3滴)および式IIIのクロモニック化合物(1.0g)の混合物をフラスコ中で約15分間磁気攪拌した。この混合物に、金チオリンゴ酸ナトリウム(0.1g)を添加した。混合物をさらに15分間攪拌し、次いで、#5巻線コーティングロッドを使用して、ガラス顕微鏡スライド上にコーティングした。次いで、密閉ガラス広口瓶に被覆ガラススライドを2分間入れることによって、トリス(ジメチルアミノ)ボラン蒸気にコーティングをさらした。スライドを広口瓶から取り出した後、コーティングを空気中で室温にて少なくとも5分間乾燥させた。精製水中に被覆ガラススライドを浸漬し、次いで攪拌することによって、コーティングを溶解した。Model ZEN3600粒径分析器(マサチューセッツ州サウスボローのマルバーン・インストルメンツ社(Malvern Instruments,Southborough,MA)から市販されている)を使用して、得られた金ナノ粒子の懸濁液の小さな試料を動的光散乱法によって分析し、平均粒径約5ナノメートルを有することが判明した。その小さな試料をさらに、300kVで操作されるModel H9000電子顕微鏡(カリフォルニア州プレザントンの株式会社日立ハイテクノロジーズ(Hitachi High Technologies America,Inc.,Pleasanton,CA)から市販されている)を使用して透過型電子顕微鏡法によって分析し、それによって、実質的に球状である金ナノ粒子(濃い部分として)が示された。透過型電子顕微鏡写真を図3に示す。
【0050】
実施例6
銀ナノワイヤーの製造
精製水(9.0g)、水酸化アンモニウム(30重量%水溶液0.25g)、APG325(0.01g)、ICB3003(0.3g)、および式IIIのクロモニック化合物(1.0g)の混合物を約15分間磁気攪拌した。#3巻線コーティングロッドを使用して、ガラス顕微鏡スライド上に混合物をコーティングした。コーティングを空気中で室温にて約30分間乾燥させ、次いで被覆ガラススライドを過塩素酸銀の40重量%水溶液に約2分間浸漬した。次いで、被覆ガラススライドをエタノールですすぎ、次いで、エタノール中の水素化ホウ素カリウムの3重量%溶液に約1分間浸漬した。次いで、被覆ガラススライドを逐次、エタノール、および10重量%水酸化アンモニウム水溶液ですすいだ。水酸化アンモニウム水溶液ですすぐことによって、クロモニック集合が除去された。次いで、ガラススライドを空気中で室温にて約5分間乾燥させ、その後に、Model DM4000M顕微鏡(イリノイ州バノックバーンのライカマイクロシステムズ社(Leica Microsystems,Inc.,Bannockburn,IL)から市販されている)を1000倍率で使用して、光学顕微鏡法によって調べた。銀ナノワイヤーの光学顕微鏡写真を図4に示す。図4において、銀ナノワイヤーは、薄い部分として見ることができる。
【0051】
本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、本発明に種々の変更および改変を加えることができることは、当業者には明らかであるだろう。本発明は、本明細書に記載の例示的な実施形態および実施例によって過度に限定されるものではなく、かかる実施例および実施形態は、本明細書の冒頭に記載の特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図される本発明の範囲で、単なる一例として示されていることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】銀ナノワイヤーを含むコーティングの平面図を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図2】銀ナノワイヤーを含むコーティングの側面図を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図3】金ナノ粒子を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図4】銀ナノワイヤーを示す光学顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)クロモニック材料を含有する水性組成物を(b)溶液中の金属塩、または金属粒子の懸濁液と混合する工程を含む、金属ナノ構造を製造する方法。
【請求項2】
前記クロモニック材料が、以下の一般構造:
【化1】

(式中、R2はそれぞれ独立して、電子供与基、電子吸引基、および電子中性基からなる群から選択され、
3は、置換および非置換芳香族複素環ならびに置換および非置換複素環からなる群から選択され、前記環が、R3の環における窒素原子を介してトリアジン基に結合している)のうちの1つによって表される化合物、およびその両性イオン、プロトン互変異性体、並びにそれらの塩からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記R2がそれぞれ独立して、水素、非置換アルキル基、ヒドロキシまたはハロゲン化物官能基で置換されたアルキル基、およびエーテル、エステル、もしくはスルホニルを含有するアルキル基からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記R3が、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、ピラゾール、トリアゾール、トリアジン、キノリン、およびイソキノリンからなる群から誘導される芳香族複素環を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記R3が、ピリジンまたはイミダゾールから誘導される芳香族複素環を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記R3が、ピリジニウム−1−イル、4−(ジメチルアミノ)ピリジニウム−1−イル、3−メチルイミダゾリウム−1−イル、4−(ピロリジン−1−イル)ピリジニウム−1−イル、4−イソプロピルピリジニウム−1−イル、4−[(2−ヒドロキシエチル)メチルアミノ]ピリジニウム−1−イル、4−(3−ヒドロキシプロピル)ピリジニウム−1−イル、4−メチルピリジニウム−1−イル、キノリニウム−1−イル、4−t−ブチルピリジニウム−1−イル、および3−(2−スルホエチル)ピリジニウム−1−イルからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記クロモニック材料が、以下の一般構造:
【化2】

、およびその両性イオン、プロトン互変異性体並びにそれらの塩によって表される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記クロモニック材料が、以下の構造:
【化3】

(式中、X-が対イオンである)
のうちの1つによって表される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記X-が、HSO4-、Cl-、CH3COO-、およびCF3COO-からなる対イオンの群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
クロモニック材料を含有する前記水性組成物が、溶液中の金属塩と混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記金属塩を還元することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
基材の表面に混合物を適用することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記混合物の適用中または適用後、ずり配向または磁気配向をかけることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記クロモニック材料を除去することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記金属塩が、貴金属塩である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記金属塩が、銀塩、金塩、白金塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記金属塩が、硝酸銀、酢酸銀、金チオリンゴ酸ナトリウム、塩化金、およびそれらの混合物およびそれらの合金からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
クロモニック材料を含有する前記水性組成物が、金属粒子の懸濁液と混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
基材の表面に混合物を適用することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記混合物の適用中または適用後、ずり配向または磁気配向をかけることをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記クロモニック材料を除去することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記金属粒子が、表面改質された金属粒子である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記金属粒子が、貴金属粒子である、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記金属粒子が、銀粒子、金粒子、白金粒子、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記金属粒子が、鉄を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
(a)基材の表面に、クロモニック材料を含有する水性組成物を適用する工程と、(b)被覆表面を金属塩を含有する溶液と接触させて配置する工程とを含む、金属ナノ構造を製造する方法。
【請求項27】
クロモニック材料を含有する前記水性組成物の適用中または適用後、ずり配向または磁気配向をかけることをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記金属塩を還元することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記クロモニック材料を除去することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
クロモニックマトリックスと金属ナノ構造とを含む物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−522032(P2008−522032A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543439(P2007−543439)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/042447
【国際公開番号】WO2007/008249
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】