説明

金属ナノ粒子及び金属ナノ粒子の製造方法

【課題】低温焼結性に優れた金属ナノ粒子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】貴金属粒子又は貴金属合金粒子からなるコアと、これを覆う銅層からなる金属ナノ粒子において、平均粒径20〜60nm、標準偏差10%以下であり、更に、保護剤として、有機アミン化合物が結合してなる金属ナノ粒子である。この金属ナノ粒子は、溶媒に、前記溶媒に不溶な銅化合物及び貴金属化合物を添加すると共に、有機アミン化合物からなる保護剤、及び、還元剤を添加し、更に、超音波を印加することにより、製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性インク・導電性ペーストを構成する金属ナノ粒子及びその製造方法に関する。詳しくは、低温焼結性に優れた金属ナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器の配線回路の形成法として導電性インク・導電性ペーストを利用したものが知られている。この方法は、導電性インクをプリンター等により所望の形状の配線パターンで塗布し、焼成することで配線回路を形成するものであり、複雑・微細な配線パターンを容易に形成することができる方法である。ここで用いられる導電性インク・導電性ペーストは、銅等の導電性金属の金属ナノ粒子を適宜の溶媒に分散してなる。
【0003】
金属ナノ粒子の製造においては、原料金属を蒸発させて気相中に放出し金属ナノ粒子を回収する気相反応法が古くから知られているが、生産効率の観点から工業的生産には適さない。そこで、効率的に金属ナノ粒子を生産する製造方法として、ポリオール法等の液相反応法が近年から有効であるとされている。このポリオール法に基づく金属ナノ粒子の製造方法は、溶媒であるポリオールに酸化銅、硫酸銅等の金属塩を溶解させ、これに還元剤とポリビニルピロリドンやポリエチレンイミン等の高分子化合物を保護剤として添加し、金属イオンを還元させると同時に保護剤を金属原子に結合・保護させて金属ナノ粒子を形成させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4428138号明細書
【特許文献2】特許第4449676号明細書
【0005】
ところで、導電性インク等による配線回路形成においては、上記の通り、基板に導電性インクを塗布して焼成する。焼成過程において、インク中の金属ナノ粒子が焼結して導電材料として機能しうる密度を得るが、このときの焼成温度は、低いほど好ましい。しかし、従来の金属ナノ粒子を使用する導電性インクは、焼結温度が十分低いものとはいえず、250〜300℃程度の加熱が必要であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、低温焼結性に優れた金属ナノ粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題について検討を行い、これを解決する金属ナノ粒子の構成として、その粒径及び粒径分布の適正化、更に、保護剤の最適化を行った。即ち、本発明は、貴金属粒子又は貴金属合金粒子からなるコアと、これを覆う銅層とからなる金属ナノ粒子において、平均粒径20〜60nm、標準偏差10%以下であり、更に、保護剤として、下記式の有機アミン化合物が結合してなる金属ナノ粒子である。
【0008】
【化1】

(Rはアルキル基である。nが2以上の場合には異なるアルキル基の場合がある。)
【0009】
本発明者等によると、導電性インク中の金属ナノ粒子の焼結は、その粒径を微細化すると共に、粒径の揃った状態とすると低温で進行する傾向がある。そこで、本発明は、平均粒径を20〜60nmとし、標準偏差を10%以下とするものである。粒径については、より好ましくは30〜50nmである。
【0010】
また、本発明は、粒子性状に加えて、保護剤の種類を規定する。従来のポリオール法による金属ナノ粒子は、保護剤としてPVP等の高分子有機化合物が用いられてきた。このような高分子有機化合物は、金属ナノ粒子の焼結の障害となり、焼結温度を上昇させるおそれがある。本発明は、この点を鑑みて保護剤を、焼結を阻害する炭素を発生しにくく、300℃以下で気化・分解する有機アミン化合物とした。
【0011】
そして、本発明に係る金属ナノ粒子は、貴金属又はその合金からなる粒子をコアとし、これを覆う銅層とが複合する構造を有する。かかる複合構造を採用するのは、適宜のコア粒子を複合化することでこれが金属ナノ粒子形成のための核として作用し、均一な粒径の粒子形成に寄与するからである。ここで、表面に露出する外層を銅で構成するのは、導電性インクのような導電材料としての有用性を重視したことによる。また、コア粒子を貴金属又はその合金で構成するのは、貴金属の触媒的作用は金属ナノ粒子形成の核として好適だからであり、貴金属は化学的に安定な金属であり、銅の導電材料としての作用を阻害し難いからである。
【0012】
コア粒子として貴金属合金を含めるのは、金属ナノ粒子形成の過程で貴金属が銅と合金化する場合を考慮するものである。但し、この合金化とはいわゆる化学量論組成の合金に限定されるものではなく、部分的に貴金属原子が銅に固溶した状態での合金化を含むものである。また、この貴金属又は貴金属合金は非酸化状態であり酸化物を含むものは好ましくない。酸化物は金属ナノ粒子の焼結性に悪影響を及ぼすおそれがあり、また、焼結後の電気特性に好ましくないからである。更に、本発明に係る金属ナノ粒子は、コアである貴金属粒子又は貴金属合金粒子が銅に完全に覆われている状態のものが好ましい。貴金属といえどもナノ粒子表面に露出すると焼結性に影響が生じる。
【0013】
金属ナノ粒子中の貴金属含有率は、モル比で1/100〜5/100とするのが好ましい。1/100未満では適切な粒径の金属ナノ粒子が形成されない。また、5/100を超えると、貴金属が完全に覆われた状態を維持するのが困難となる。
【0014】
次に、本発明に係る金属ナノ粒子の製造方法について説明する。本発明に係る方法は、基本的に上記先行技術で挙げたポリオール法による工程に類似する。即ち、溶媒に銅原料と、ナノ粒子形成の核となる貴金属原料を添加し、還元剤及び保護剤を添加する。本発明においては、銅原料及び貴金属原料として溶媒に不溶な金属化合物を適用し、更に、超音波を印加することを特徴とする。
【0015】
金属原料として、溶媒に不溶な金属化合物を使用するのは、製造される金属ナノ粒子の微細化及び粒径の均一化を図るためである。従来のポリオール法では、溶媒に可溶な原料を添加し、反応開始の時点から溶媒中に金属イオン(貴金属イオン、銅イオン)が存在し、還元剤の添加と共に核形成及び粒成長が進行する。このとき、生産効率を確保するため原料濃度を高くした場合、還元反応の進行が速すぎ粒径が粗大となる傾向がある。また、従来法では、かかる還元反応の速さを考慮して、保護性能の高いPVP等の高分子有機化合物を用いて、粒子形成と同時に粒子を囲い込み粗大粒の発生を抑制している。但し、PVP等の高分子有機化合物の使用が、その後の導電性インクとしての特性に好ましくないことは上記の通りである。
【0016】
そこで、本発明は、微細な金属ナノ粒子形成のための還元反応の制御を目的として、金属原料として溶媒に不溶な金属化合物を適用し、超音波を印加する。即ち、溶媒に前記溶媒に不溶な銅化合物及び貴金属化合物を添加すると共に、下記式の有機アミン化合物からなる保護剤、及び、還元剤を添加し、更に、超音波を印加することにより、前記銅化合物及び前記貴金属化合物から銅イオン及び貴金属イオンを溶出させると共に、これらを還元する工程を含む金属ナノ粒子の製造方法である。
【0017】
【化2】

(Rはアルキル基である。nが2以上の場合には異なるアルキル基の場合がある。)
【0018】
ここで、原料となる金属化合物は、そのままの状態では金属イオンを発生させるものではないが、超音波の疎密波によるキャビテーションバブルが金属化合物表面に生じる。このキャビテーションバブル内の気体相中は高温高圧環境にあり、溶媒に不溶な金属化合物であってもその領域では溶解し金属イオンを放出する。そして、貴金属イオンの還元と銅イオンの還元により金属ナノ粒子が生成される。このような反応系内で均一に生じる固液間反応に基づき、本発明に係る方法で生成される金属ナノ粒子は微細かつ粒径の揃ったものとなる。
【0019】
また、上記の固液間反応は、キャビテーションバブル発生→金属化合物溶解→金属イオン還元→新たな化合物表面の露出、の繰り返しにより順次進行するものである。従って、反応系内の金属イオンは、常に適正な量に調整されているため、保護剤の量を低減させることができ、保護作用の低い保護剤を使用することもできる。更に、超音波により発生するキャビテーションバブルは、還元性ラジカルを発生させることから、還元剤の量も低減することができる。そして、これらの作用により、金属原料の濃度を高濃度としても、粗大な金属粒子の生成を抑制することができ、効率的な製造が可能となる。
【0020】
以下、本発明に係る方法につき、より詳細に説明する。溶媒としては、従来から金属ナノ粒子形成で一般的に用いられる溶媒を適用することができる。例えば、水、アルコール、ポリオール、アルデヒド、ケトン類等の極性溶媒や、非極性溶媒としてトルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、キシレン等が挙げられる。
【0021】
溶媒に添加する金属原料である銅化合物及び貴金属化合物について、これらは溶媒に不溶であることを要する。溶媒に不溶であるとは、常温の定常状態で溶媒に溶解しない(25℃における溶解度0.01mol/L以下)ことを意味する。また、貴金属化合物としては、Pd、Pt、Ru、Ir、Rhのいずれかの貴金属の化合物である。尚、複数の貴金属化合物を組み合わせて添加しても良い(例えば、Pd化合物とRh化合物を複合的に添加しても良い)。
【0022】
具体的には、銅化合物及び貴金属化合物は、アセチルアセトナト錯体、ギ酸錯体、酢酸錯体、アンミン錯体、キレート錯体、が適用できる。尚、銅原料に関しては、前記錯体の他、エチレンジアミン銅(II)、シクロヘキサン酪酸銅(II)、 ステアリン酸銅(II)、炭酸銅等の有機金属化合物も適用できる。そして、貴金属化合物は、銅化合物に対してモル比で1/100〜5/100添加することが好ましい。尚、銅化合物については、溶媒に対してモル比で1/10〜10/10添加するのが好ましい。本発明は、銅原料の濃度を比較的高くして、効率的な製造を可能とする。
【0023】
そして、保護剤としては、上記の通り、有機アミン化合物を添加する。好ましい有機アミン化合物は、ドデシルアミン、ブチルアミン、トリメチルアミン、オレイルアミンである。保護剤の添加量は、銅化合物に対してモル比で3倍以下とするのが好ましい。
【0024】
還元剤については、アスコルビン酸、クエン酸、シュウ酸、酢酸の適用が好ましい。また、還元剤の添加量は、銅化合物に対してモル比で1〜2倍、溶媒に対してモル比で1/10〜4/10とするのが好ましい。尚、上記のように、超音波によるキャビテーションバブルを利用する本発明では、還元剤の添加量が低減されている。
【0025】
超音波の印加条件は、周波数15kHz〜200kHzとし、出力を20W〜200Wとするのが好ましい。また、超音波を印加して反応を進行させる際の反応系の温度は10℃〜60℃の範囲が好ましく、反応時間は、10分〜5時間とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明に係る金属ナノ粒子は、低温で焼結可能であり、配線材料として好適な銅被膜を形成することができる。
【0027】
また、本発明に係る金属ナノ粒子の製造方法は、超音波の作用により保護剤及び還元剤の使用量を低減することができる。そのため、銅微粒子製造工程で使用した反応液を、そのまま導電性インク、ペーストの原料として使用することが可能となる。特に、保護剤の使用量の低減は有効であり、保護剤であるアミン化合物の含有量が銅化合物に対してモル比で3倍以下、溶媒に対してモル比で1/10以下である金属ナノ粒子溶液とすることで、高品質の銅被膜を形成するための導電性インク、ペースト原料として使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第2実施形態で製造した銅微粒子のSEM写真。
【図2】第2実施形態で製造した銅微粒子のX線回折分析結果。
【図3】第2実施形態で製造した銅微粒子(試料No.1、2)のTG−DTA分析結果。
【図4】第3実施形態で測定した銅微粒子(試料No.3、4)のXANES。
【図5】第3実施形態で測定した銅微粒子(試料No.3、4)のEXAFSから得られた動径分布関数。
【図6】第4実施形態で製造した銅被膜(Pd錯体使用)のX線回折分析結果。
【図7】第4実施形態で製造した銅被膜(Rh錯体使用)のX線回折分析結果。
【発明を実施するための形態】
【0029】
第1実施形態:溶媒としてエタノール100mLに、銅原料として銅アセチルアセトナト錯体(Cu(acac))を0.05M、貴金属原料としてパラジウムアセチルアセトナト錯体(Pd(acac))を1.5×10−3M添加した(銅原料:Pd原料を100:3とした)。これに保護剤として0.1Mのドデシルアミン及び還元剤としてL−アスコルビン酸0.2Mを更に添加して、超音波を印加した。超音波の印加条件は、周波数97.0kHz、出力100Wとした。反応は、液温を40℃に保持し、3時間処理した。
【0030】
上記処理により得られた銅微粒子を濾過し、SEM観察を行いその粒径及び分布を検討したところ、平均粒径43.5nmであり、標準偏差8.86%であった。
【0031】
第2実施形態:ここでは、第1実施形態と同様、銅原料として銅アセチルアセトナト錯体(Cu(acac))、貴金属原料としてパラジウムアセチルアセトナト錯体(Pd(acac))を用いつつ、パラジウムアセチルアセトナト錯体の添加量を変化させて銅微粒子を製造した。パラジウムアセチルアセトナト錯体の添加量は、添加無し、5.0×10−4M(銅原料:Pd原料=100:1)、2.5×10−3M(銅原料:Pd原料=100:5)とした。これ以外の製造条件(銅アセチルアセトナト錯体濃度、超音波条件等)は、第1実施形態と同様とした。そして、得られた銅微粒子について粒径及び分布を検討した。その結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
上記結果から、貴金属原料(パラジウム錯体)を添加しない場合、粒径が粗くばらつき(標準偏差)の大きい銅粒子が得られることがわかる。これは、溶媒不溶の金属原料及び超音波印加という本願発明の特徴をもっても、核となる貴金属原料の存在は不可欠であることを示す。一方、貴金属原料を添加することで、粒径が細かく揃った銅微粒子が生成されることが確認された。
【0034】
図1及び図2は、製造された銅微粒子のSEM写真及びX線回折分析の結果を示す。製造した銅微粒子は、球形の揃った形状を示す。また、X線回折の結果では、銅の回折パターンのみが検出されている。これは、銅微粒子表面にはPdが露出されている可能性はきわめて低く、Pdをコアとする複合構造を有することを示す。
【0035】
また、図3は、NO.1及びNO.2の銅微粒子についてTG−DTA分析を行ったときの結果を示す。この図から、パラジウム錯体を使用して製造した銅微粒子は、210℃近傍での質量減が生じている。一方、パラジウム錯体の添加のない銅微粒子は、質量減が300℃以上で生じる。TG−DTA分析において質量減を示す温度は、微粒子の焼結温度そのものではないが、これに強く関連する。即ち、パラジウム錯体を使用して微細化された銅微粒子は、焼結温度の低減を図ることが期待できる。
【0036】
第3実施形態:ここでは、第2実施形態で製造した銅微粒子(No.3〜No.4)についての構造解析を行った。構造解析は、X線吸収微細構造(XAFS)測定により行った。XAFS測定は、佐賀県立九州シンクロトロン光研究センター所有のビームラインBL−15において、Si(311)二結晶モノクロメーターを用い、PdK吸収端から広域X線吸収微細構造(EXAFS)領域まで範囲のX線吸収スペクトルを測定した。測定は室温において行った。
【0037】
図4は、XAFS測定によるX線吸収端近傍構造(XANES)を示す。各スペクトルは、それぞれのピークトップ強度で規格化を行っている。図4から、No.3(Cu:Pd=100:3)、No.4(Cu:Pd=100:5)の銅微粒子におけるスペクトルは、ほぼ同じ形状を示しており、24360eV及び24381eV付近にピークが見られることから、標準サンプルとして測定されたPd金属粉末に近い挙動を示す。但し、これらの試料のスペクトルはPd金属のスペクトルに比べブロードであり、PdがCu相に部分的或いは全体的に固溶している可能性あると推察される。また、標準試料であるPdO粉末のスペクトルと比較すると、これらの銅微粒子中のPdは酸化していないと示唆される。
【0038】
図5は、XAFS測定による広域X線吸収微細構造(EXAFS)を基にフーリエ変換して得られる動径分布関数を示す。図5から、No.3(Cu:Pd=100:3)、No.4(Cu:Pd=100:5)の銅微粒子はほぼ類似した分布関数を示す。そして、いずれの銅微粒子もPd金属粉末、PdO粉末とは異なる分布関数を示すことがわかる。即ち、これらの試料ではPd金属粉末のPd−Pd結合距離より小さく、PdOのPd−O結合距離より大きい位置にピークを有する。これらの試料における、メインピークのシフトはPd−Cu結合を示していると推察される。以上の結果から、本実施形態における銅微粒子では、非酸化のPdが内部に存在し、少なくとも部分的にCuとの合金化が生じているものと考えられる。
【0039】
第4実施形態:ここでは第2実施形態のNO.2及びNO.3の銅微粒子を用いて焼結性の確認を行うこととした。この試験は、第2実施形態と同様にして銅微粒子を製造し、反応液の沈殿物(銅微粒子)を採取してガラス基板上に塗布し、電気炉で窒素雰囲気中加熱焼成して、生成した膜の外観観察及びXRD分析を行い膜の酸化の有無を確認するものである。尚、焼成条件は、窒素雰囲気とし、温度150℃、加熱時間を10分間とした。
【0040】
図6は、XRD分析の結果を示す。この図から、各試料を焼成した膜は銅からなるものであり、酸化銅のピークが見られなかったことから、膜の酸化は無いものと考えられる。また、膜の外観については、銅粒子の異常粒成長などは観察されなく、粒子径が整った非常にきれいな膜であった。以上から、本実施形態に係る銅微粒子は150℃の比較的低温でも焼成可能であることが確認された。
【0041】
本実施形態では、更に、貴金属原料としてロジウムを適用して銅微粒子を製造し、その焼結性についても確認した。ロジウム錯体として、ロジウムアセチルアセトナト錯体(Rh(acac))を用い、その添加量を銅原料に対して1/100に設定した。その他の製造条件は第1実施形態と同様とした。
【0042】
図7は、製造された微粒子を上記と同様に焼結した後のXRD分析の結果を示す。この図から、ロジウムを使用した試料についても、酸化銅のピークが見られなかった。そこで、この銅微粒子について、焼成時間を60分とした膜についてのXRD分析を行ったところ、ここでも酸化銅のピークはみられなかった。このロジウムを適用して製造される銅微粒子は、酸化に対して高い耐性を有するものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明したように、本発明に係る金属ナノ粒子は、低温焼結性に優れ、比較的低温で銅被膜を形成することができる。また、本発明に係る金属ナノ粒子製造方法は、溶媒に不溶な金属原料を用い、超音波の作用を利用するものであり、これにより微細且つ均一粒径の金属ナノ粒子を効率的に製造することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属粒子又は貴金属合金粒子からなるコアと、これを覆う銅層とからなる金属ナノ粒子において、
平均粒径20〜60nm、標準偏差10%以下であり、
更に、保護剤として、下記式の有機アミン化合物が結合してなる金属ナノ粒子。
【化1】

(Rはアルキル基である。nが2以上の場合には異なるアルキル基の場合がある。)
【請求項2】
貴金属は、Pd、Pt、Ru、Ir、Rhの少なくともいずれか1の貴金属である請求項1記載の金属ナノ粒子。
【請求項3】
金属ナノ粒子中の貴金属含有量が、モル比で1/100〜5/100である請求項1又は請求項2記載の金属ナノ粒子。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の金属ナノ粒子の製造方法であって、
溶媒に、前記溶媒に不溶な銅化合物及び貴金属化合物を添加すると共に、下記式の有機アミン化合物からなる保護剤、及び、還元剤を添加し、
更に、超音波を印加することにより、
前記銅化合物及び前記貴金属化合物から銅イオン及び貴金属イオンを溶出させると共に、これらを還元する工程を含む金属ナノ粒子の製造方法。
【化2】

(Rはアルキル基である。nが2以上の場合には異なるアルキル基の場合がある。)
【請求項5】
貴金属化合物は、Pd、Pt、Ru、Ir、Rhの少なくともいずれか1の貴金属の化合物である請求項4記載の方法。
【請求項6】
銅化合物及び/又は貴金属化合物は、アセチルアセトナト錯体、ギ酸錯体、酢酸錯体、アンミン錯体、キレート錯体である請求項4又は請求項5記載の方法。
【請求項7】
貴金属化合物を、銅化合物に対してモル比で1/100〜5/100添加する請求項4〜請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
還元剤は、アスコルビン酸、クエン酸、シュウ酸、酢酸のいずれかである請求項4〜請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
超音波の印加条件として、周波数15kHz〜200kHz、出力20W〜200Wとする請求項4〜請求項8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の金属ナノ粒子を含む溶液であって、
保護剤である有機アミン化合物の含有量が溶媒に対してモル比で1/10以下である金属ナノ粒子溶液。


【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−184506(P2012−184506A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−32358(P2012−32358)
【出願日】平成24年2月17日(2012.2.17)
【出願人】(509352945)田中貴金属工業株式会社 (99)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】