説明

金属パターン積層基材の製造方法。

【課題】金属パターン積層基材を、生産性を低下させずに安定的に製造することができる製造方法を提供する。
【解決手段】基材上に積層された金属膜上に所定パターンのレジスト膜を印刷法により形成する工程(A)、金属膜をエッチングする工程(B)、及び前記レジスト膜をアルカリ水溶液で剥離除去する工程(C)を有する金属パターン積層基材の製造方法であって、前記工程(A)が、下記(a)成分と(b)成分を主成分として含む活性エネルギー線硬化型レジストインキ組成物を用いてレジスト膜を形成することを特徴とする、金属パターン積層基材の製造方法。
(a)成分;1分子中にエチレンオキシ基を3〜10個とエチレン性不飽和基を1個以上有するモノマー及び/またはオリゴマー
(b)成分;1分子中にカルボキシル基を1個以上有しかつ酸価が50以上200未満である樹脂

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に積層された金属膜をエッチングすることにより形成される金属パターン積層基材の製造方法に関する。詳しくは、導電性フィルム、電磁波遮蔽フィルムあるいは回路配線に用いることができる金属パターン積層基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性フィルムや電磁波遮蔽フィルムのメッシュ状金属パターン、あるいは回路配線の金属パターンを製造する方法として、基材上に積層された金属膜上に印刷法によりパターン状のレジスト膜を形成した後、エッチング処理、及びアルカリ水溶液によるレジスト膜の剥離処理を施して金属パターンを製造する方法が知られている(例えば特許文献1、2)。
【0003】
上記のレジスト膜の剥離処理としては、有機溶剤による剥離方法とアルカリ水溶液による剥離方法が一般的に知られているが、有機溶剤による剥離方法は多量の有機溶剤を使用するため健康面や環境面で問題となるため、アルカリ水溶液による剥離方法が多く用いられるようになってきている。
【0004】
レジスト膜のアルカリ水溶液による剥離方法としては、上記特許文献1、2に記載されているように、レジスト膜成分として、分子中にカルボキシル基を有する紫外線重合性のアクリルモノマーあるいはオリゴマーと、アルカリ可溶性樹脂とを主成分として含有させ、アルカリ水溶液でレジスト膜を溶解することにより剥離除去する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−192260号公報
【特許文献2】特開2002−129079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1、2のアルカリ水溶液によるレジスト膜剥離方法は、剥離性(レジスト膜の溶解性)に重点を置いたものであり、レジスト膜成分が溶出したアルカリ水溶液の剥離能力の低下やレジスト膜成分の再析出による問題については検討されていない。
【0007】
つまり、レジスト膜のアルカリ水溶液による剥離作業を長期間に渡って繰り返し実施した場合、アルカリ水溶液中のレジスト膜成分の溶出濃度が高くなり、それによって、アルカリ水溶液のレジスト膜剥離能力が低下するという問題、あるいはアルカリ水溶液中に溶出したレジスト膜成分が再析出するという問題が発生しやすくなるが、上記した特許文献1、2ではこれらの問題については検討されていない。
【0008】
アルカリ水溶液のレジスト膜剥離能力が低下すると、得られた金属パターンに不良品が発生する問題、あるいは処理のライン速度を下げて対応することによる生産性低下の問題が起こる。また、アルカリ水溶液中に溶出したレジスト膜成分が再析出すると、析出物が基材や金属パターンに付着するという問題が起こる。
【0009】
上記問題の対策として、アルカリ水溶液の交換サイクルを早める方法があるが、コストや環境負荷の増大により現実的ではない。他の方法としてアルカリ水溶液中に溶解したレジスト膜成分を濾過などにより除去する方法があるが、溶解したレジスト膜成分を上記問題が発生しないレベルまで十分に取り除くことは困難である。
【0010】
従って、本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、金属パターン積層基材を、生産性を低下させずに安定的に製造することができる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の発明によって基本的に達成された。
1)基材上に積層された金属膜上に所定パターンのレジスト膜を印刷法により形成する工程(A)、金属膜をエッチングする工程(B)、及び前記レジスト膜をアルカリ水溶液で剥離除去する工程(C)を有する金属パターン積層基材の製造方法であって、
前記工程(A)が、下記(a)成分と(b)成分を主成分として含む活性エネルギー線硬化型レジストインキ組成物を用いてレジスト膜を形成することを特徴とする、金属パターン積層基材の製造方法。
(a)成分;1分子中にエチレンオキシ基を3〜10個とエチレン性不飽和基を1個以上有するモノマー及び/またはオリゴマー
(b)成分;1分子中にカルボキシル基を1個以上有しかつ酸価が50以上200未満である樹脂
2)前記活性エネルギー線硬化型レジストインキ組成物の粘度が、剪断速度100(1/s)において0.03〜30Pa・sである、前記1)に記載の金属パターン積層基材の製造方法。
3)前記活性エネルギー線硬化型レジストインキ組成物が、更にチキソトロピック付与剤を含有する、前記1)または2)に記載の金属パターン積層基材の製造方法。
4)前記活性エネルギー線硬化型レジストインキ組成物が、該組成物の固形分総量100質量%に対して、(a)成分を20質量%以上、(b)成分を30質量%以上、(a)成分と(b)成分の合計量を60質量%以上含む、前記1)〜3)のいずれかに記載の金属パターン積層基材の製造方法。
5)前記工程(A)における印刷法がグラビア印刷法である、前記1)〜4)のいずれかに記載の金属パターン積層基材の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生産性を低下させずに安定的に良質の金属パターン積層基材を製造することができる。具体的には、本発明の特定成分を含むレジスト膜形成用の活性エネルギー線硬化型レジストインキ組成物を用いることにより、アルカリ水溶液によるレジスト膜の剥離工程において、レジスト膜の膨潤による剥離が促進され、それによってアルカリ水溶液中のレジスト膜の回収が容易になる。その結果、アルカリ水溶液中のレジスト膜成分の溶出濃度の上昇が抑制されるので、アルカリ水溶液中に溶解したレジスト膜成分の再析出やアルカリ水溶液のレジスト膜剥離能力の低下が起こらず、その結果、生産性を低下させずに安定的に良質の金属パターン積層基材を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明にかかる金属パターン積層基材の製造方法は、基材上に積層された金属膜上に所定パターンのレジスト膜を印刷法により形成する工程(A)、金属膜をエッチングする工程(B)、及び前記レジスト膜をアルカリ水溶液で剥離除去する工程(C)を有する。
【0014】
以下、上記した各工程について詳細に説明する。
【0015】
基材上に積層された金属膜上に所定パターンのレジスト膜を印刷法により形成する工程(A)(以下、単にレジスト膜形成工程(A)という)において、印刷法によって所定パターンのレジスト膜が形成されるが、ここで用いられる印刷法としては、例えば、凸版式印刷法、平版式印刷法、凹版式印刷法、孔版式印刷法等が挙げられる。これらの印刷法の中でも、凹版式印刷法やグラビア印刷法は、ロール・ツー・ロール方式で連続的にパターンを形成することができることから低コスト化が図られるので好ましい。特にグラビア印刷法が好ましい。
【0016】
金属膜上に形成されるレジスト膜の所定パターンとは、本発明の製造方法によって得られた金属パターン積層基材の用途に応じて適宜選択される。本発明の製造方法によって得られた金属パターン積層基材は、導電性フィルムや電磁波遮蔽フィルムとして好適であり、この用途の場合、金属パターンはメッシュ状パターンが一般的である。そのためレジスト膜の所定パターンとしては、メッシュ状に形成されることが好ましい態様である。
【0017】
上記メッシュ状パターンの形状としては、正方形、長方形、菱形等の四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形、円形、楕円形、あるいはこれらの複合形状やランダムメッシュが挙げられる。これらの中でも、四角形の格子状パターンが好ましく用いられる。
【0018】
本発明の製造方法によって得られた金属パターン積層基材の金属パターンがメッシュ状パターンの場合、金属パターンの線幅は3〜30μmの範囲が適当であり、5〜20μmの範囲が好ましく、特に5〜10μmの範囲が好ましい。また、メッシュ状パターンのピッチ(金属パターンの隣接する線同士の距離)は、50〜500μmの範囲が適当であり、80〜300μmの範囲が好ましい。
【0019】
上記したようなメッシュ状の金属パターンを得るためには、レジスト膜のパターンをメッシュ状パターンとし、該レジスト膜のメッシュ状パターンの線幅を、上記の金属パターンの線幅と同程度かやや大きく設計される。詳細には、得られる金属パターンの線幅の大きさ、金属膜の厚み、エッチング条件等によって、レジスト膜のパターンの線幅が適宜設定される。
【0020】
本発明にかかる金属パターン積層基材の製造方法は、レジスト膜形成工程(A)において、レジスト膜を形成するための活性エネルギー線硬化型レジストインキ組成物(以下、単にレジストインキ組成物という)に特徴を有する。
かかるレジストインキ組成物の特徴は、下記(a)成分と(b)成分を主成分として含むことにあり、特に(a)成分を含むことにある。
【0021】
(a)成分;1分子中にエチレンオキシ基を3〜10個とエチレン性不飽和基を1個以上有するモノマー及び/またはオリゴマー。
【0022】
(b)成分;1分子中にカルボキシル基を1個以上有しかつ酸価が50以上200未満である樹脂。
【0023】
本発明のレジストインキ組成物において、(a)成分と(b)成分を主成分として含むとは、(a)成分と(b)成分の合計量がレジストインキ組成物の固形分総量100質量%に対して50質量%以上含むことを意味し、更に(a)成分と(b)成分以外の全ての成分の個々の含有比率が(a)成分と(b)成分のそれぞれの含有比率より小さいことを意味する。但し、(a)成分と(b)成分以外の成分には有機溶媒は含まれない。
【0024】
本発明のレジストインキ組成物において、好ましくは(a)成分と(b)成分の合計量はレジストインキ組成物の固形分総量100質量%に対して60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。上限は100質量%であるが、好ましくは98質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下であり、更に好ましくは90質量%以下である。尚、レジストインキ組成物の固形分の中には、常温で液体のモノマーが含まれる。言い換えれば、レジストインキ組成物に含まれる、有機溶媒以外の成分を固形分として取り扱う。ここで有機溶媒とは、活性エネルギー線硬化型レジストインキ組成物中には含まれるものの、その後気散してレジスト膜形成工程(A)にて形成されるレジスト膜中には残存しない成分である。一方で上述の常温で液体のモノマーとは、活性エネルギー線硬化型レジストインキ組成物中に含まれ、かつレジスト膜形成工程(A)にて形成されるレジスト膜中にも、そのままの構造(モノマーのまま)もしくは重合することにより残存する成分である。
【0025】
上記した本発明のレジストインキ組成物を用いることにより、アルカリ水溶液によるレジスト膜の剥離工程(C)において、従来の溶解による剥離から膨潤による剥離が促進されるので、アルカリ水溶液中へのレジスト膜の溶出が抑制されるとともに、膨潤によって剥離されたレジスト膜はアルカリ水溶液中からの回収(例えば濾過による回収)が容易になる。その結果、アルカリ水溶液中のレジスト膜成分の溶出濃度の上昇が抑制されるので、水溶液中に溶解したレジスト膜成分の析出やアルカリ水溶液のレジスト膜剥離能力の低下が抑制される。
【0026】
本発明のレジストインキ組成物に含まれる(a)成分は、1分子中にエチレンオキシ基を3〜10個とエチレン性不飽和基を1個以上有するモノマー及び/またはオリゴマーである。1分子中に含まれるエチレンオキシ基の数は4〜8個であることが好ましい。
【0027】
(a)成分のエチレン性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。(a)成分としては、1分子中にエチレン性不飽和基を2〜10個有するものが好ましい。
【0028】
(a)成分は、具体的には1分子中にエチレンオキシ基(EO)を3〜10個有する単官能性(エチレン性不飽和基が1個のものを単官能性とする)もしくは多官能性(エチレン性不飽和基を2個以上有するものを多官能性とする)の(メタ)アクリルモノマーやオリゴマーを挙げることができる。なお1分子中にエチレンオキシ基(EO)を3〜10個有する多官能性のモノマー及び/またはオリゴマーは、エチレン性不飽和基が2個以上10個以下であることが好ましい。また、(a)成分としては、分子量が2000以下のものが好ましく、1500以下のものがより好ましく、特に1000以下のものが好ましい。
【0029】
本発明において、(a)成分としては、1分子中にエチレンオキシ基(EO)を3〜10個とエチレン性不飽和基を2〜10個有する多官能性のモノマーやオリゴマーが好ましく、以下に具体的な化合物を例示する。
【0030】
例えば好ましい(a)成分として、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO−PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO−PO変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO−PO変性ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、EO−PO変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO−PO変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO−PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
上記の例示化合物において、EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基を表す。
【0032】
上記の化合物の中でも、1分子中に4〜8個のエチレンオキシ基(EO)と2〜10個のエチレン性不飽和基を有する多官能性のモノマーやオリゴマーがより好ましく、更にこれらのモノマーが好ましい。
【0033】
1分子中に含まれるエチレンオキシ基(EO)が3個未満の場合は、アルカリ水溶液によるレジスト膜の剥離工程(C)においてレジスト膜の膨潤による剥離が促進されない。
【0034】
一方、1分子中に含まれるエチレンオキシ基(EO)が10個を越える場合は、アルカリ水溶液への溶解性が増大し、アルカリ水溶液中のレジスト膜成分の溶出濃度が上昇する。
【0035】
本発明のレジストインキ組成物に含まれる(b)成分は、1分子中にカルボキシル基を1個以上有しかつ酸価が50以上200未満の樹脂である。更に、(b)成分において、酸価が70以上150未満の樹脂が好ましい。
【0036】
(b)成分としては、アルカリ可溶性樹脂として知られている樹脂の中から、上記条件を満足する樹脂を用いることができる。例えば、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂などが挙げられる。
【0037】
酸価が50未満の樹脂を用いた場合は十分な剥離性が得られず、一方、酸価が200以上の樹脂を用いた場合は、レジスト膜の剥離工程(C)におけるアルカリ水溶液への溶解性が増大してアルカリ水溶液の劣化を助長する場合がある。また、酸価が200以上の樹脂を用いた場合は、有機溶媒への溶解性が悪化するためにレジストインキ組成物への添加が困難となる場合がある。酸価は、JISK2501(2003年)に定められた測定方法により測定することができる。
【0038】
上記(a)成分の含有量は、レジストインキ組成物の固形分総量100質量%に対して20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、特に30質量%以上が好ましい。上限は70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、特に50質量%以下が好ましい。(a)成分の含有量が20質量%未満になると、金属膜エッチング工程(B)における耐エッチング性が悪化する場合があり、70質量%より多くなると、アルカリ水溶液によるレジスト膜の剥離工程(C)におけるレジスト膜の剥離性が悪化する場合がある。
【0039】
上記(b)成分の含有量は、レジストインキ組成物の固形分総量100質量%に対して30質量%以上が好ましく、35質量%以上が好ましく、特に40質量%以上が好ましい。上限は、75質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、特に55質量%以下が好ましい。(b)成分の含有量が30質量%未満になると、アルカリ水溶液によるレジスト膜の剥離工程(C)におけるレジスト膜の剥離性が悪化する場合があり、75質量%より多くなると金属膜エッチング工程(B)における耐エッチング性が悪化する場合がある。
【0040】
上記の耐エッチング性とは、エッチング液によるレジスト膜の浸食耐性のことであり、レジスト膜の耐エッチング性が悪化すると、レジスト膜にピンホール等が発生し、そのピンホールから金属膜の溶解が広がり、本来のエッチング部分でない部分が溶解するという不都合が生じる。
【0041】
本発明にかかるレジストインキ組成物は、皮膜強度を調整するために(a)成分以外のモノマー及び/またはオリゴマーを含むことができる。かかる(a)成分以外の好適に使用されるモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサトリアクリレートなどが挙げられ、また、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類、エポキシ(メタ)アクリレート類などの多官能性モノマー、あるいは多官能性オリゴマーも用いることができる。
【0042】
上記した(a)成分以外のモノマー及び/またはオリゴマーの含有量は、(a)成分100質量部に対して30質量部以下の範囲で調整することが好ましく、20質量部以下の範囲で調整することがより好ましく、特に10質量部以下の範囲で調整することが好ましい。
【0043】
本発明にかかるレジストインキ組成物は、更にチキソトロピック付与剤を含有することが好ましい。ここで、チキソトロピック付与剤とは、レジストインキ組成物にチキソトロピック性を発現させるための物質である。チキソトロピック性とは、撹拌、振動、ズリ速度などの増加により、流体粘度が低下する現象を指す。詳しくは、成書「レオロジーの世界」(尾崎邦宏著、工業調査会(2004年発行)、p114)に記載されている。
【0044】
本発明のレジストインキ組成物に適度なチキソトロピー性を付与することによって流動性や曳糸性が改善され、その結果高精細なパターンを印刷することができる。
【0045】
本発明に用いることができるチキソトロピック付与剤としては、脂肪酸アミド系ワックス、酸化ポリオレフィン系ワックス、アクリル系ワックス等の有機系チキソトロピック付与剤、シリカ微粒子、カーボンブラック、ベントナイト、タルク、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機系チキソトロピック付与剤が挙げられる。
【0046】
チキソトロピック付与剤の含有量は、レジストインキ組成物の固形分総量100質量%に対して、1〜20質量%の範囲が適当であり、2〜15質量%の範囲が好ましい。
【0047】
本発明にかかるレジストインキ組成物は、更に着色剤を含むこともできる。着色剤としてはカーボンブラック、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、ビクトリアブルー、メチルバイオレット等の顔料及び染料が挙げられる。これらは単独あるいは混合して用いてもよい。
【0048】
本発明にかかるレジストインキ組成物は、更に光重合開始剤を含有することが好ましい。かかる光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォルメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などが挙げられ、これらの光重合開始剤を単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて使用してもよい。
【0049】
光重合開始剤の含有量は、(a)成分100質量部に対して、1〜30質量部の範囲が適当である。
【0050】
本発明にかかるレジストインキ組成物は、印刷に適した粘度に調整するため、有機溶媒を含有することが好ましい。
【0051】
かかる有機溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のアセテート類、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン等のケトン類、ブタノール、イソブチルアルコール、ペンタノ−ル、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられ、これらの有機溶媒は単独あるいは混合して使用することができる。
【0052】
上記の有機溶媒の含有量は、レジストインキ組成物100質量%に対して、5〜50質量%の範囲が適当であり、10〜40質量%の範囲が好ましく、15〜35質量%の範囲がより好ましい。
【0053】
本発明にかかるレジストインキ組成物の製造方法としては、特に限定されず、具体的には、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、ディスパー、ニーダー、ミキサー等を組み合わせて、前述の(a)成分や(b)成分などを混合することで製造することができる。
【0054】
本発明にかかるレジストインキ組成物の粘度(25℃の粘度)は、剪断速度100(1/s)において、0.03〜30Pa・sの範囲が好ましく、0.1〜10Pa・sの範囲がより好ましく、特に2〜10Pa・sの範囲が好ましい。剪断速度100(1/s)におけるレジストインキ組成物の粘度が30Pa・sを越えると、グラビア印刷機においてドクターブレードやロールによる計量が正しく行えなくなり、0.03Pa・sを下回ると、印刷後のパターンが広がりやすくなり、所望の細線パターンを印刷することが困難となる場合がある。
【0055】
また、レジストインキ組成物にチキソトロピック性を付与するという観点から、低剪断速度領域では高剪断速度領域の粘度に比べ高い方が好ましく、例えば剪断速度10(1/s)におけるレジストインキ組成物の粘度は、0.1〜100Pa・sの範囲が好ましく、0.5〜50Pa・sの範囲がより好ましく、特に2〜20Pa・sの範囲が好ましい。
【0056】
レジスト膜形成工程(A)において、上述したレジストインキ組成物が、基材上に積層された金属膜上に所定パターンに印刷されて、金属膜上に所定パターンのレジスト膜が形成される。このとき、レジストインキ組成物が金属膜上に印刷された後、活性エネルギー線を照射して硬化させることで、レジストインキ組成物をレジスト膜にすることが好ましい。
【0057】
また、前述したように、レジストインキ組成物が有機溶媒を含有する場合は、レジストインキ組成物を金属膜上に印刷した後、活性エネルギー線を照射する前に、加熱、乾燥することが好ましい。
【0058】
金属膜上に印刷されたレジストインキ組成物を硬化させるために照射される活性エネルギー線としては、紫外線、電子線および放射線(α線、β線、γ線など)等が挙げられ、実用的には、紫外線が簡便であり好ましい。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯などを用いることができる。また、活性エネルギー線を照射するときに、低酸素濃度下で照射を行うと、効率よく硬化させることができる。またさらに、電子線方式は、装置が高価で不活性気体下での操作が必要ではあるが、印刷されたレジストインキ組成物中に光重合開始剤や光増感剤などを含有させなくてもよい点で有利である。
【0059】
本発明において、レジストインキ組成物を硬化させる方法としては、紫外線を照射して硬化させる方法が、比較的簡単な装置で高い生産性が得られるので好ましい。
【0060】
レジスト膜形成工程(A)で金属膜上に形成されるレジスト膜の厚みは、0.1〜5μmの範囲が適当であり、0.2〜4μmの範囲が好ましく、0.2〜3μmの範囲がより好ましい。レジスト膜の厚みが0.1μmより小さいと耐エッチング性が悪化する場合があり、逆に5μmより大きくなるとレジスト膜のパターン再現性が低下したり、レジスト膜の剥離性が悪化する場合がある。また、レジスト膜の厚みが5μmより大きくなると、アルカリ水溶液によるレジスト膜の剥離工程(C)の処理負荷が大きくなるので好ましくない。
【0061】
レジスト膜形成工程(A)で、印刷法により金属膜上に所定パターンのレジスト膜が形成された後、金属膜をエッチングする工程(B)(以下、単にエッチング工程(B)という)で、レジスト膜で覆われていない部分の金属膜がエッチング処理(溶解除去)されて、金属パターンが形成される。
【0062】
エッチング工程(B)に用いられるエッチング処理方法としては、特に限定されないが、本発明ではケミカルエッチング法が好ましく用いられる。上記ケミカルエッチング法とは、レジスト膜で保護された金属膜部分以外の不要金属膜部分を、エッチング液で溶解し、除去する方法である。上記ケミカルエッチング法に用いられるエッチング液としては、塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液、アルカリエッチング液等がある。
【0063】
エッチング工程(B)におけるエッチング液の温度は20〜60℃の範囲が適当であり、25〜50℃の範囲が好ましい。処理時間は、20〜300秒の範囲が適当であり、30〜180秒の範囲が好ましい。
【0064】
エッチング工程(B)で金属膜がエッチングされて金属パターンが形成された後、レジスト膜をアルカリ水溶液で剥離除去する工程(C)(以下、単にレジスト膜剥離工程(C)という)で、金属パターン上のレジスト膜が剥離除去される。
【0065】
レジスト膜剥離工程(C)において、アルカリ水溶液でレジスト膜が剥離除去される。アルカリ水溶液としては、1〜5質量%の水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等が用いられる。アルカリ水溶液の温度は20〜60℃の範囲が適当であり、30〜55℃の範囲が好ましい。アルカリ水溶液での処理時間は、15〜300秒の範囲が適当であり、20〜180秒の範囲が好ましい。
レジスト膜剥離工程(C)で、金属パターン上のレジスト膜が剥離除去されて、所定の金属パターンが積層された金属パターン積層基材が得られる。
【0066】
本発明において、レジスト膜形成工程(A)では、金属膜が積層された基材が用いられる。かかる基材としては、プラスチックフィルムが好ましい。
上記プラスチックフィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂等が挙げられる。
【0067】
プラスチックフィルムの厚みとしては、20〜300μmの範囲が適当であるが、コストの観点及び前面フィルターの剛性を確保するという観点から50〜250μmの範囲が特に好ましい。
【0068】
上記プラスチックフィルムは、金属膜あるいは金属パターンとの密着性(接着強度)を強化するための易接着層が予め積層されたプラスチックフィルムであることが好ましい。つまり基材としては、易接着層を有するプラスチックフィルムを用いることが好ましい。
【0069】
かかる易接着層は、水溶性樹脂もしくは水分散性樹脂を用いたものが一般的に知られており、本発明においても好ましく用いられる。水溶性樹脂もしくは水分散性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が用いられる。易接着層には、更に架橋剤を含有させるのが好ましく、架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、メラミン化合物等が挙げられる。また、易接着層には、更に無機微粒子(例えばシリカ微粒子)を含有させるのが好ましい。
【0070】
易接着層の厚みは、5〜500nmの範囲が適当であり、10〜300nmの範囲が好ましく、20〜200nmの範囲がより好ましい。易接着層は、プラスチックフィルムを製造した後、製膜してもよいし、プラスチックフィルムの製造時にインラインで製膜してもよい。
【0071】
本発明において、基材上に積層される金属膜は特に限定されず、本発明の製造方法によって得られた金属パターン積層基材の用途に応じて適宜選択すればよい。本発明の製造方法によって得られた金属パターン積層基材は、導電性フィルムや電磁波遮蔽フィルムとして好適であり、この場合、導電性の高い金属を用いることが好ましい。
【0072】
かかる導電性の高い金属として、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀等が挙げられる。これらの金属は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせた合金としてあるいは上記金属と他の金属を組み合わせた合金として用いてもよい。
【0073】
本発明の製造方法によって得られた金属パターン積層基材を、導電性フィルムや電磁波遮蔽フィルムに適用する場合は、金属膜の金属としては、銅、アルミニウムが好ましく、特に銅が好ましい。
【0074】
金属膜の厚みは、0.5〜30μmの範囲が一般的である。本発明の製造方法によって得られた金属パターン積層基材を、導電性フィルムや電磁波遮蔽フィルムに適用する場合、金属膜の厚みは0.5〜15μmの範囲が好ましく、1〜10μmの範囲がより好ましく、更に1〜5μmの範囲が好ましい。
また、本発明にかかる金属膜は、異なる金属を多層に積層したものであってもよい。例えば、銅からなる主体金属膜と基材との間に、両者の密着性を向上させる目的で、ニッケル、クロム、ニクロム等の金属膜(厚み5〜100nm)を設けた2層構成が挙げられる。更に、上記の2層構成の最表面に、金属酸化物、金属窒化物、あるいは金属硫化物等の薄膜(厚み5〜100nm)を積層した3層構成であってもよい。
【0075】
基材上に金属膜を積層する方法としては、基材上に接着剤を介して金属箔を積層する方法、基材上にメッキ法で金属膜を積層する方法、あるいは基材上に気相製膜法で金属膜を積層する方法等が挙げられる。これらの中でも、本発明の製造方法によって得られた金属パターン積層基材を、導電性フィルムや電磁波遮蔽フィルムに適用する場合は、気相製膜法が好ましく用いられる。かかる気相製膜法としては、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着等が挙げられ、これらの1あるいは2以上の方法を組み合わせて用いることができる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0077】
以下の要領で各種レジストインキ組成物を製造した。
(製造例1)
(b)成分として東亞合成(株)製ARUFON−UC−3000(アクリル樹脂、酸価74)を34.4質量部量り取り、トリエチレングリコールジメチルエーテル21質量部に溶解させた。そこに、着色剤として三菱化学(株)製カーボンブラック#40を5質量部加えて三本ロールミルにて混合した。次に(a)成分として新中村化学工業(株)製A−BPE−4(EO変性アクリルモノマー;EO数が4個の2官能性モノマー)13.8質量部と共栄社化学(株)製ライトアクリレートTMP−6EO−3A(EO変性アクリルモノマー;EO数が6個の3官能性モノマー)13.8質量部を加え混合撹拌した。更にチキソトロピック付与剤として楠本化成(株)製ディスパロンDFA−220を7質量部と、光重合開始剤としてチバスペシャリティケミカル(株)製イルガキュア184を5質量部加えて混合撹拌した。
(製造例2)
(b)成分として荒川化学工業(株)製マルキードNo.32(マレイン酸樹脂、酸価140)を32.5質量部秤量し、トリエチレングリコールジメチルエーテル27.6質量部に溶解させた。そこに着色剤として三菱化学(株)製カーボンブラック#40を5質量部加えて三本ロールミルにて混合した。次に(a)成分として新中村化学工業(株)A−BPE−6(EO変性アクリルモノマー;EO数が6個の2官能性モノマー)13質量部と共栄社化学(株)ライトアクリレートTMP−6EO−3A(EO変性アクリルモノマー;EO数が6個の3官能性モノマー)13質量部を加え混合撹拌した。更にチキソトロピック付与剤として楠本化成(株)ディスパロンDFA−220を4質量部と、光重合開始剤としてチバスペシャリティケミカル(株)イルガキュア184を5質量部加えて混合撹拌した。
(製造例3)
製造例1の(a)成分を添加しなかった以外は、製造例1と同じ方法で製造した。
(製造例4)
製造例1の(a)成分に代えて、共栄社化学(株)製ライトアクリレートTMP−A(エチレンオキシ基を含まないアクリルモノマー)を27.6質量部添加した以外は、製造例1と同じ方法で製造した。
(製造例5)
製造例1の(a)成分に代えて、ジエチレングリコールジアクリレート(EO数が2個の2官能性アクリルモノマー)を27.6質量部添加した以外は、製造例1と同じ方法で製造した。
(製造例6)
製造例1の(a)成分に代えて、ポリエチレングリコールジアクリレート(EO数が12個の2官能性アクリル化合物)を27.6質量部添加した以外は、製造例1と同じ方法で製造した。
(製造例7)
製造例1の(b)成分に代えて、荒川化学工業(株)製のマルキードNo.5(マレイン酸樹脂、酸価25)を34.4質量部用いた以外は、製造例1と同じ方法で製造した。
(製造例8)
三菱化学(株)製カーボンブラック#40(着色剤)を6質量部、ビックケミ・ジャパン(株)製BYK−9077(分散剤)を2質量部、東洋紡(株)製バイロン885(ポリエステル樹脂、酸価2以下)のジエチレングリコールジメチルエーテル33質量%溶液を60質量部、及びジエチレングリコールジメチルエーテル22質量部を秤量し、ペイントシェーカーを用いて5時間分散して、レジストインキ組成物を製造した。
【0078】
(実施例1)
以下の要領で金属パターン積層基材を製造した。
【0079】
<金属膜が積層された基材の製造>
厚み100μmのPETフィルム(東レ(株)製 ルミラー(登録商標)U426)の片面に、金属膜としてニッケルのスパッタ膜(厚み20nm)と銅の真空蒸着膜(厚み2.5μm)をこの順に積層した。
【0080】
<レジスト膜形成工程(A)>
上記で製造された金属膜が積層された基材の金属膜の表面に、製造例1のレジストインキ組成物を乾燥膜厚(レジスト膜の膜厚)が0.5μmとなるように、格子パターン状にグラビア印刷機により印刷した。次に60℃の熱風により乾燥させ、高圧水銀UVランプ(120W/cm)の紫外線を積算光量200mW/cmにて照射して硬化させることで、レジスト膜を形成した。グラビア印刷機のグラビア版の格子パターンの形状は、正方形の格子状で、線幅が20μm、ピッチが300μmである。
【0081】
<エッチング工程(B)>
レジスト膜で覆われていない部分の金属膜を、30〜33℃の温度範囲に調節した塩化第2鉄水溶液(42° Be)でエッチングし格子状の金属パターンを形成した。
【0082】
<レジスト膜剥離工程(C)>
金属パターン上のレジスト膜を、50℃の温度範囲に調節した2質量%の水酸化ナトリウム水溶液で30秒間剥離し、格子状パターンの金属パターン積層基材を製造した。
【0083】
<測定及び評価>
上記の各工程における測定方法及び評価方法は以下の通りである。
(1)レジストインキ組成物の粘度
レオメーターGeminHRNano(BOLIN製)にて、25℃、剪断速度100(1/s)における粘度を測定した。
(2)レジスト膜のパターン再現性
レジスト膜形成工程(A)で金属膜上に形成されたパターン状のレジスト膜の線幅を測定し、その線幅でパターン再現性を評価した。線幅の測定はデジタルマイクロスコープ(KEYENCE社製VHX200)を使用し、5箇所の測定した結果を平均した(単位はμmで小数点以下は四捨五入した)。線幅は、グラビア版の線幅である20μmに近いほど良好である。
(3)レジスト膜の耐エッチング性
エッチング工程(B)でエッチング処理された後、レジスト膜の表面状態を観察して以下の基準で評価した。
○:ピンホールが無く表面状態が良好である。
×:ピンホールの発生がある。
(4)レジスト膜の剥離性
レジスト膜剥離工程(C)において、アルカリ水溶液でのレジスト膜の剥離性を以下の基準で評価した。
○:レジスト膜が完全に剥離されている。
×:レジスト膜の剥離が不完全で、レジスト膜が部分的に残存している。
(5)レジスト膜のアルカリ水溶液中への難溶解性(簡易試験)
レジスト膜形成工程(A)において、金属膜上に(パターン状ではない)連続したレジスト膜(乾燥厚み5μm)を形成して本試験用のサンプルを作製した。このサンプルの約2m分(レジスト膜総質量として10g)を、50℃に温度調節したアルカリ水溶液(2質量%の水酸化ナトリウム水溶液)1リットル中に浸漬、攪拌しながらレジスト膜を剥離処理した。剥離処理後、アルカリ水溶液中の浮遊物または沈殿物を濾過し乾燥して質量を測定した。このようにして得られた浮遊物または沈殿物の濾過物質量に基づいて、下記計算式によりアルカリ水溶液への溶出率を算出し、以下の基準で評価した。
【0084】
尚、上記(4)のレジスト膜の剥離性評価で、×レベルのサンプルについては、本試験は実施しなかった。
溶出率(%)=((レジスト膜総質量−濾過物質量)/レジスト膜総質量)×100
○:溶出率30%未満
×:溶出率30%以上
(実施例2)
実施例1のレジストインキ組成物を製造例2のレジストインキ組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして金属パターン積層基材を製造した。
(比較例1)
実施例1のレジストインキ組成物を製造例3のレジストインキ組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして金属パターン積層基材を製造した。
(比較例2)
実施例1のレジストインキ組成物を製造例4のレジストインキ組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして金属パターン積層基材を製造した。
(比較例3)
実施例1のレジストインキ組成物を製造例5のレジストインキ組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして金属パターン積層基材を製造した。
(比較例4)
実施例1のレジストインキ組成物を製造例6のレジストインキ組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして金属パターン積層基材を製造した。
(比較例5)
実施例1のレジストインキ組成物を製造例7のレジストインキ組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして金属パターン積層基材を製造した。
(比較例6)
実施例1のレジストインキ組成物を製造例8のレジストインキ組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして金属パターン積層基材を製造した。
<評価>
上記の実施例2及び比較例1〜6について、実施例1と同様に測定及び評価した結果を表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
表1の結果から、本発明の実施例は、レジスト膜のパターン再現性、レジスト膜の耐エッチング性、レジスト膜の剥離性、アルカリ水溶液中へのレジスト膜の難溶解性に優れていることが分かる。
【0087】
一方、比較例1は、(a)成分を含まないためレジスト膜の耐エッチング性が悪く、アルカリ水溶液中へのレジスト膜の難溶解性が劣っていた。
【0088】
比較例2は、(a)成分の代わりにエチレンオキシ基を有しないモノマーを含有させたが、レジスト膜の剥離性が悪化した。
【0089】
比較例3は、(a)成分の代わりにエチレンオキシ基を2個有するモノマーを含有させたが、依然レジスト膜の剥離性は悪かった。
【0090】
比較例4は、(a)成分の代わりにエチレンオキシ基を12個有するモノマーを含有させたが、アルカリ水溶液中へのレジスト膜の難溶解性が悪化した。
【0091】
比較例5は、(b)成分の代わりに酸価が2以下のポリエステル樹脂を含有させたが、レジスト膜の剥離性が悪化した。
【0092】
比較例6は、(a)成分を含まないのでレジスト膜の耐エッチング性が悪く、更に(b)成分を含まないのでレジスト膜の剥離性が悪い。また、低粘度でかつチキソトロピック付与剤を含有しないため、レジスト膜のパターン再現性が悪化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に積層された金属膜上に所定パターンのレジスト膜を印刷法により形成する工程(A)、金属膜をエッチングする工程(B)、及び前記レジスト膜をアルカリ水溶液で剥離除去する工程(C)を有する金属パターン積層基材の製造方法であって、
前記工程(A)が、下記(a)成分と(b)成分を主成分として含む活性エネルギー線硬化型レジストインキ組成物を用いてレジスト膜を形成することを特徴とする、金属パターン積層基材の製造方法。
(a)成分;1分子中にエチレンオキシ基を3〜10個とエチレン性不飽和基を1個以上有するモノマー及び/またはオリゴマー
(b)成分;1分子中にカルボキシル基を1個以上有しかつ酸価が50以上200未満である樹脂
【請求項2】
前記活性エネルギー線硬化型レジストインキ組成物の粘度が、剪断速度100(1/s)において0.03〜30Pa・sである、請求項1に記載の金属パターン積層基材の製造方法。
【請求項3】
前記活性エネルギー線硬化型レジストインキ組成物が、更にチキソトロピック付与剤を含有する、請求項1または2に記載の金属パターン積層基材の製造方法。
【請求項4】
前記活性エネルギー線硬化型レジストインキ組成物が、該組成物の固形分総量100質量%に対して、(a)成分を20質量%以上、(b)成分を30質量%以上、(a)成分と(b)成分の合計量を60質量%以上含む、請求項1〜3のいずれかに記載の金属パターン積層基材の製造方法。
【請求項5】
前記工程(A)における印刷法がグラビア印刷法である、請求項1〜4のいずれかに記載の金属パターン積層基材の製造方法。

【公開番号】特開2011−103414(P2011−103414A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258457(P2009−258457)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000222462)東レフィルム加工株式会社 (142)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】