説明

金属合金触媒組成物

【課題】様々な反応生成物を製造するのに有用で、コスト効果的な金属合金結合触媒の製造および使用方法を提供する。
【解決手段】スルホン化イオン交換に少なくとも2種の金属からなる金属合金を含む不均一触媒組成物であり、触媒は触媒の乾燥重量を基準にして0.1〜25パーセントの金属合金を含み、かつ金属合金が1〜250nmの金属クラスターサイズを有し、0.1〜0.9立方センチメートル/グラムの全ポロシティーおよび10〜100平方メートル/グラムの表面積を有するマクロポーラスビーズの形態である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属合金ドープされた触媒の製造およびその使用方法に関する。特に、本発明は、従来使用されていた触媒と比較して同等の収率および選択性を提供する、コスト効果的な金属合金ドープされたイオン交換樹脂触媒の製造および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルドール縮合反応は、1つのカルボニル化合物のα炭素の、別のカルボニル炭素への付加により、β−ヒドロキシカルボニル化合物を提供する、カルボニル化合物(アルデヒドまたはケトン)の二量体化を伴う。酸性触媒の存在下での2つのケトンの縮合の場合には、脱水が通常起こり、その後、二量体化して、α,β−不飽和ケトンを提供し;従来の技術を使用する二重結合の還元が使用されて、飽和ケトン付加物を提供することができる。
【0003】
従来のモノスルホン化イオン交換樹脂触媒の使用と比較して、アセトンの縮合反応からのメチルイソブチルケトンの収率を増大させる試みの1つは米国特許第6,977,314号に開示されている。米国特許第6,977,314号は、触媒1グラムあたり少なくとも5.0ミリ当量のスルホン酸基を有し、パラジウムのような金属を結合したポリスルホン化イオン交換樹脂の使用を開示する。選択されるこの金属は個々に使用され、かつ高価な物質である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,977,314号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
触媒寿命、選択性および収率を維持しかつコスト効果性を改良しつつ、金属合金ドーピングの使用を採用する方法が必要とされる。
本発明は、様々な反応生成物を製造するのに有用なコスト効果的な金属合金結合触媒を提供することにより、先行技術の欠点を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(a)イオン交換樹脂;および
(b)触媒の乾燥重量を基準にして、金属合金;
を含む不均一触媒組成物であって、当該触媒組成物が化学反応において反応物質と反応する、不均一触媒組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書を通じて使用される場合、文脈が他のことを明らかに示さない限りは、以下の用語は以下の意味を有する:
用語「架橋されたポリマーマトリックス」とは、都合良く官能化されて、ポリスルホン化、モノスルホン化または部分スルホン化芳香環を提供する架橋されたポリマー基体、および都合良く官能化されて、アミン官能基を有する芳香環を提供する架橋されたポリマー基体をいい;典型的には、架橋されたポリマーマトリックスは、芳香環がスルホン化条件にかけられて本発明の方法に有用な触媒を提供する架橋されたスチレン系ポリマーである。
【0008】
用語「イオン交換樹脂」とは、イオン交換官能基を有する架橋されたポリマーマトリックスをいう。
用語「コポリマー」とは、位置異性体をはじめとする2種以上の異なるモノマーの単位を含むポリマー組成物をいう。
用語「架橋されたコポリマー」とは、全モノマー重量を基準にして少なくとも1重量パーセント(%)のポリビニル不飽和モノマーを含むモノマーもしくはモノマーの混合物から重合されたポリマーもしくはコポリマーを示す。
【0009】
用語「マクロポーラス」とは、BET技術(ステフェンブルナウアー、ポールハッジエメットおよびエドワードテラー(Stephen Brunauer, Paul Hugh Emmett,and Edward Teller)1938による刊行物に基づく)で測定される場合に、0.1m/gより高く、2000m/gより低い表面積を生じさせる物質を示す。本発明の典型的なマクロポーラス樹脂触媒は1m/g〜200m/gの範囲の表面積を有する。
【0010】
用語「(メタ)アクリル酸アルキル」とは、対応するアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルのいずれかをいい;同様に用語「(メタ)アクリル」とはアクリル酸もしくはメタクリル酸、および対応する誘導体、例えば、エステルもしくはアミドのいずれかをいう。
用語「ドープされた」とは、ポリマー担体への金属種の添加をいう。
用語「含浸された」とは、ポリマー担体内に錯体形成されうるもしくはポリマー担体内の金属構造としてであり得る金属をいう。
【0011】
用語「金属合金」は「金属ナノクラスター」または「金属ナノ合金」と同義語である。本明細書において定義される場合、金属合金は単独でナノメートルサイズのクラスターで一緒になった2種類以上の金属である。金属合金のナノメートルクラスターサイズは1〜250nmの範囲である。さらに、それは、2種類以上の元素を、(1)固体として、(2)金属間化合物として、または(3)金属相の混合物として;含む金属生成物である。
【0012】
言及される全てのパーセンテージは、他のことを特定していない限りは、関連するポリマーまたは組成物の全重量に基づいた重量パーセント(%)で表される。以下の略語が本明細書において使用される:g=グラム;μm=ミクロン;cm=センチメートル;mm=ミリメートル;m=メートル;nm=ナノメートル;ml=ミリリットル;meq/g=ミリ当量/グラム;L=リットル;1bar圧力=10パスカルもしくは10Pa;1bar=1MPa;LHSV(Linear hourly space velocity)=液体空間速度(h−1)=液体の流速(ml/h)/カラム中の触媒の体積(ml);アスペクト比=長さ/幅。
他に特定されない限りは、示される範囲は包括的に読まれ、かつ組み合わせ可能であり、並びに温度は摂氏度(℃)単位である。
【0013】
本発明において有用な1ステージ反応における、反応プロセスおよびその逐次的組み合わせの非限定的な例には、異性化、水和、アルドール縮合、脱水、水素化分解、硝酸塩還元、炭素−炭素カップリング(すなわち、ヘックアンドスズキ反応)、酸化、ヒドロホルミル化、アルケン、ケトン、アルコール、アルキンおよび酸の選択的還元が挙げられる。本発明の触媒される反応によって製造される生成物には、これらに限定されないが、過酸化水素、1,4−ブタンジオール、酢酸ビニル、アルキルフェノール、メチルイソブチルケトン(MIBK)、天然洗浄剤アルコールが挙げられる。
【0014】
本発明の反応プロセスにおいて有用な金属合金ドープされた不均一触媒は、スルホン化官能基を有するイオン交換樹脂であり;すなわち、触媒部位を担持する架橋されたポリマーマトリックスは、芳香環あたり0を超えるスルホン酸基を有する芳香環を含む。典型的には、芳香環の少なくとも10%、あるいは少なくとも15%、さらにあるいは少なくとも20%が、芳香環あたり1を超えるスルホン酸基を含む。イオン交換樹脂は強塩基アニオン交換樹脂または強酸カチオン交換樹脂であることができる。あるいは、本発明の反応プロセスにおいて有用な金属合金ドープされた不均一触媒はアミン官能基を有するイオン交換樹脂であり、すなわち触媒部位を担持する架橋されたポリマーマトリックスは、芳香環にアミン基を有する芳香環を含む。
【0015】
本発明の方法において有用な金属合金ドープされた不均一触媒はゲルまたはマクロポーラスビーズ、フィルム、プレート、膜もしくは繊維の形態であることができる。本発明の好適な金属合金ドープされた不均一触媒は10μm〜1000μm、あるいは500μm〜1000μm、さらにあるいは750μm〜1000μmの平均粒子直径を有し;イオン交換樹脂の乾燥重量を基準にして、1.0〜7.0meq/g、あるいは5.1〜6.5meq/g、さらにあるいは5.2〜6.0meq/gのスルホン酸基含量を有し;典型的には、0〜2000,あるいは0.1〜2000、さらにあるいは1〜700、さらにあるいは10〜600平方メートル/グラム(m/g)の表面積;および、0.1〜0.9、あるいは0.2〜0.7、さらにあるいは0.25〜0.5立方センチメートル孔/グラムポリマー(cm/g)の全ポロシティーを有し;典型的には、全触媒組成物の0.5〜80%、5〜30%、10〜20%の樹脂中架橋剤割合;80〜30%、あるいは70〜40%、さらにあるいは55〜45%の水分保持容量;0.5〜7.0meq/Kg、あるいは1〜6meq/Kg、さらにあるいは2〜5meq/Kgの重量容量;50〜2,500オングストローム単位、あるいは150〜1000オングストローム単位の平均孔直径を有する。ポロシティーは、IUPAC(国際純正応用化学連合)用語体系に従って、次のように定義される:マイクロポロシティー=20オングストローム単位未満の孔;メソポロシティー=20〜500オングストローム単位の孔;マクロポロシティー=500オングストローム単位を超える孔。
【0016】
本発明の触媒はイオン交換樹脂の乾燥重量を基準にして、0.1〜25%、あるいは0.5〜15%、さらにあるいは1.0〜10.0%の金属合金を結合している。理想的には、金属合金はイオン交換樹脂粒子のシェル上に結合されうるか、または粒子全体に一様に分散されうる。金属合金自体に関しては、それは、0.5〜100%の金属、あるいは80〜100%の金属、さらにあるいは90〜100%の金属構成成分を含んでなる。本発明の金属合金組成物は1〜150nm、あるいは1〜50nm、さらにあるいは1〜10nmの金属クラスターサイズで存在する。
【0017】
金属合金ドープされたイオン交換樹脂は典型的には、架橋されたマクロポーラスコポリマー、例えば、米国特許第4,382,124号に記載されたものから製造され、その文献においては、ポロシティーはポロゲン(「相エキステンダー(phase extender)」または「沈殿剤」とも称される)、すなわち、モノマーのための溶媒であるがポリマーについての非溶媒の存在下での懸濁重合によってコポリマービーズに導入される。
【0018】
典型的な架橋されたマクロポーラスコポリマー製造は、例えば、懸濁助剤(例えば、分散剤、保護コロイドおよび緩衝剤)を含む連続水性相溶液の製造と、その後の、1〜85%のポリビニル芳香族モノマー、フリーラジカル開始剤および典型的にモノマー1部あたり、0.2〜5、あるいは0.3〜3、あるいは0.4〜1部のポロゲン(例えば、トルエン、キシレン、(C−C10)−アルカノール、(C−C12)−飽和炭化水素もしくはポリアルキレングリコール)を含むモノマー混合物との混合を含むことができる。モノマーおよびポロゲンの混合物は、次いで、高温で重合され、次いで、このポロゲンは生じたポリマービーズから様々な手段によって実質的に除去され;例えば、トルエン、キシレンおよび(C−C10)アルコールは蒸留または溶媒洗浄によって除去されることができ、ポリアルキレングリコールは水洗浄によって除去されることができる。得られるマクロポーラスコポリマーは、次いで、脱水とその後の乾燥のような従来の手段によって単離される。
【0019】
架橋コポリマーの製造において使用されうる好適なポリビニル芳香族モノマーには、例えば、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレンおよびジビニルキシレンからなる群から選択される1種以上のモノマーが挙げられ;上記架橋剤のそれぞれの様々な位置異性体のいずれも好適であると理解され;あるいはポリビニル芳香族モノマーはジビニルベンゼンである。典型的には、架橋されたコポリマーは1〜85%、あるいは5〜55%、あるいは10〜25%のポリビニル芳香族モノマー単位を含む。
【0020】
場合によっては、非芳香族架橋性モノマー、例えば、エチレングリコールジアクリラート、エチレングリコールジメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、トリメチロールプロパントリメタクリラート、ジエチレングリコールジビニルエーテルおよびトリビニルシクロヘキサンも、ポリビニル芳香族架橋剤に加えて使用されうる。使用される場合には、非芳香族架橋性モノマーは、典型的には、重合単位として、マクロポーラスコポリマーを形成するのに使用される全モノマー重量を基準にして0〜10%、あるいは0〜5%、あるいは0〜2%のマクロポーラスポリマーを含む。
【0021】
架橋されたコポリマーの製造に使用されうる好適なモノ不飽和ビニル芳香族モノマーには、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、(C−C)アルキル−置換スチレン、ハロ−置換スチレン(例えば、ジブロモスチレンおよびトリブロモスチレン)、ビニルナフタレンおよびビニルアントラセンが挙げられ;あるいは、モノ不飽和ビニル芳香族モノマーは、スチレンおよび(C−C)アルキル置換スチレンからなる群の1種以上から選択される。好適な(C−C)アルキル置換スチレンに含まれるのは、例えば、エチルビニルベンゼン、ビニルトルエン、ジエチルスチレン、エチルメチルスチレンおよびジメチルスチレンであり;上記ビニル芳香族モノマーのそれぞれの様々な位置異性体のいずれも好適であることが理解される。
あるいは、コポリマーは15〜99%、あるいは75〜90%のモノ不飽和ビニル芳香族モノマー単位を含む。
【0022】
場合によっては、脂肪族不飽和モノマーのような非芳香族モノ不飽和ビニルモノマー、例えば、塩化ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸アルキルが、ビニル芳香族モノマーに加えて使用されうる。使用される場合には、非芳香族モノ不飽和ビニルモノマーは、典型的には、重合単位として、マクロポーラスコポリマーを形成するのに使用される全モノマー重量を基準にして、マクロポーラスコポリマーの0〜10%、あるいは0〜5%、あるいは0〜2%を構成する。
【0023】
マクロポーラスコポリマーを製造するのに有用なポロゲンには、疎水性ポロゲン、例えば、(C−C10)芳香族炭化水素および(C−C12)飽和炭化水素;並びに親水性ポロゲン、例えば、(C−C10)アルカノールおよびポリアルキレングリコールが挙げられる。好適な(C−C10)芳香族炭化水素には、例えば、トルエン、エチルベンゼン、オルト−キシレン、メタ−キシレンおよびパラ−キシレンの1種以上が挙げられ;上記炭化水素のそれぞれの様々な位置異性体のいずれもが好適であることが理解される。あるいは、芳香族炭化水素は、トルエンまたはキシレンまたはキシレンの混合物、またはトルエンとキシレンとの混合物である。好適な(C−C12)飽和炭化水素には、例えば、ヘキサン、ヘプタンおよびイソオクタンの1種以上が挙げられ;あるいは、飽和炭化水素はイソオクタンである。好適な(C−C10)アルカノールには、例えば、イソブチルアルコール、tert−アミルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、メチルイソブチルカルビノール(4−メチル−2−ペンタノール)、ヘキサノールおよびオクタノールの1種以上が挙げられ;あるいはアルカノールは(C−C)アルカノール、例えば、メチルイソブチルカルビノールおよびオクタノールの1種以上から選択される。
【0024】
コポリマーを製造するのに有用な重合開始剤には、モノマー可溶性開始剤、例えば、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、および関連する開始剤;例えば、ベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンペルオキシド、テトラリンペルオキシド、アセチルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、tert−ブチルペルオクトアート(tert−ブチルペルオキシ−2−エチルへキサノアートとしても知られている)、tert−アミルペルオクトアート、tert−ブチルペルベンゾアート、tert−ブチルジペルフタラート、ジシクロヘキシルペルオキシジカルボナート、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボナート、およびメチルエチルケトンペルオキシドが挙げられる。また、有用なのには、アゾ開始剤、例えば、アゾジイソブチロニトリル、アゾジイソブチルアミド、2,2’−アゾ−ビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾ−ビス(α−メチルブチロニトリル)およびジメチル−、ジエチル−もしくはジブチル−アゾビス(メチルバレラート)がある。好ましいペルオキシド開始剤には、ジアシルペルオキシド、例えば、ベンゾイルペルオキシド、およびペルオキシエステル、例えば、tert−ブチルペルオクトアートおよびtert−ブチルペルベンゾアートがあり;あるいは、開始剤はベンゾイルペルオキシドである。ペルオキシド開始剤の典型的な使用量は、ビニルモノマーの全重量を基準にして、0.3%〜5%、あるいは0.5%〜3%、あるいは0.7%〜2%である。
【0025】
あるいは、架橋されたコポリマーは、本発明の方法において使用されるイオン交換樹脂触媒のための基体として使用するために、ジビニルベンゼンコポリマー、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、ジビニルベンゼン−エチルビニルベンゼンコポリマーおよびスチレン−エチルビニルベンゼン−ジビニルベンゼンコポリマーからなる群から選択される。
【0026】
これら架橋されたコポリマーは、当業者に知られたポリスルホン化のための従来のプロセス、例えば、三酸化硫黄(SO)、または発煙硫酸(三酸化硫黄を含む濃硫酸)でのスルホン化、およびクロロスルホン化に従って強酸官能基で官能化されることができ;あるいは、モノスルホン化カチオン交換樹脂ポリマーは従来のポリスルホン化条件にかけられて、カチオン交換樹脂触媒を提供することもできる。
【0027】
あるいは、これら架橋されたコポリマーは、当業者に知られた従来のプロセスに従って、強−または弱−塩基官能基で官能化されることができ、例えば、樹脂に結合したモノ−、ジ−もしくはトリ−アルキルアミン基である。このアミン置換基は1、2または3のものであることができたが、この構造は、−CH、−(CH−CH(n>0および、n=1〜n=8であることができた)、−[(CH−CH)−O−]−(CH−CH)(p>1)、−CHCHOH、N−メチルグルカミン、ジエチレンアミン、トリエチレンアミン官能基であることができた。
【0028】
金属合金ドープされたイオン交換樹脂触媒においては、典型的には、以下の2つの方法のうちの1つで所望の金属合金が結合される:a)2種以上の金属を混合することによりイオン交換ポリマー内でナノ合金を形成し、イオン交換ポリマー構造内で合金を形成する;またはb)イオン交換ポリマー金属酸化物のナノメートル規模の複合物質を使用し、金属合金触媒金属を担体表面上に担持させ、次いで還元する。合金形成における金属の選択は重要な考慮事項である。
【0029】
典型的には、溶液を、次の二種以上の組み合わせと接触させることにより、金属合金ドープされたイオン交換樹脂触媒が形成される:バッチまたはカラムモードにおけるイオン交換樹脂との金属塩または金属錯体。例として、この触媒は2種類の金属塩、または1種類の金属塩および金属錯体、または2種類の金属錯体を含んでなることができる。さらに、金属合金は金属合金塩の形態で提供されうる。この場合、金属添加されたカチオン交換樹脂は次いですすがれて、残留する塩または酸をなくする。使用される金属合金塩の量は、その金属または金属イオンが最終的にイオン交換樹脂の0.1〜20%結合、あるいは約0.5〜10%結合、あるいは約1.0〜5.0%結合の範囲の量で存在するように選択され、従来の分析試験方法によって決定されうる。
【0030】
本発明の方法において有用な触媒の部分として使用するのに好適な金属イオンには、例えば、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、金(Au)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ケイ素(Si)、銀(Ag)、鉛(Pb)、スズ(Sn)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、水銀(Hg)、アンチモン(Sb)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、ジルコニウム(Zr)、オスミウム(Os)、およびヒ素(As)が挙げられる。2種以上の個々の金属または金属錯体が合金組成物において使用されうることが本発明によって意図される。例えば、合金は二元金属または三元金属であることができる。さらに、複数金属の3種より多い個々の金属もしくは錯体は合金組成物中に使用されうる。本発明の金属合金の好適な例には、これに限定されないが、Ni−Pt、Pd−Pt、Ni−Cu、Ni−Ag、Ni−Au、Cu−Pd、Cu−Pt、Pd−Ag、Pd−Au、Pt−Au、Pt−Au、Fe−Co、Fe−Ni、Co−Ni、Fe−Ag、Fe−Ag、Co−Ag、Co−Pd、Co−Rh、Co−Pd、Co−Rh、Ni−Rh、Cu−Ru、Fe−Pt、Co−Pt、Fe−Au、Co−Au、W−Au、Ni−Al、Cu−Zn、Ni−Zn、Ni−Pd、Ni−Pt、Pd−Pt、Ni−Au、Cu−Pd、Cu−Pt、Pd−Au、Pt−Au、Co−Ni、Co−Pt、Ru−Pd、Ru−Pt、Rh−Pt、Re−Ir、Mo−Pt、Fe−Zn、およびCu−Znが挙げられる。本発明の特に有用な組み合わせには、これに限定されないが、Pd−Au、Pd−Ag、Fe−Co、Fe−Ni、Fe−Zn、Ni−Cu、Ni−Al、Cu−Cr、Cu−Zn、Ni−ZnおよびFe−Cuが挙げられる。
【0031】
イオン交換樹脂は様々な方法によって金属合金と結合されうる。一例は、例えば、所望の水準の金属合金が樹脂によって保持されるまでカチオン交換樹脂のカラムに金属合金塩の水溶液を通過させることにより、カチオン交換樹脂が金属合金と結合され、これはついで、水で徹底的に洗浄されて、残留する塩および結合プロセス中に発生した酸を除去する場合である。
【0032】
別の実施形態においては、本発明の触媒はホウ素還元性樹脂を使用して製造される。このような樹脂の例は、米国特許第4,311,811号に開示されている。このような樹脂は、還元されうる2種以上の金属を含む溶液と接触させられる。この溶液と樹脂とを接触させる場合に、金属塩が樹脂構造に入り、ゼロ価の金属合金に還元される。樹脂に結合している金属は、乾燥樹脂基準で0.01重量%〜55重量%、あるいは5〜25、あるいは8〜15である。
【0033】
あるいは、触媒は、金属イオンを含むイオン交換樹脂を還元し、金属合金を触媒中に堆積させることにより製造される。この場合には、金属結合樹脂は、金属結合樹脂を水素に(典型的には、室温で、ヒドラジンおよび低分圧の水素、例えば1bar未満を用いて)曝露することによる「活性化」(ゼロ価の状態の金属への還元)にかけられることができる。典型的な還元反応は、例えば、反応における還元剤として水素、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、エチレングリコールを使用する。この樹脂は、次いで、熱処理されうる。
【0034】
あるいは、この活性化は室温で、40℃〜200℃で、好ましくは60℃〜150℃で、および最も好ましくは80〜100℃で、並びに/または約2〜50barの水素圧で行われることができる。還元された形態の金属合金を含む結合された触媒は、次いで、触媒される反応、例えば、縮合反応などにおいて望まれるように使用されうる。あるいは、金属添加された樹脂(金属はイオンの形態)は、縮合反応における使用の直前に、還元された金属形態に「活性化」されることができる。Pd、Pt、Rh、IrまたはRuが、触媒の金属合金成分において使用される場合には、例えば、金属添加された樹脂は、縮合反応に使用される前に、還元された金属形態に活性化されうる。いくつかの例においては、触媒が結合した樹脂は炭化されうる。炭化とは、触媒が還元条件下で熱分解され、600〜1000℃の温度に加熱され、結果的に炭素質ビーズ構造を生じさせることを意味する。
【0035】
本発明の触媒は様々な触媒される反応において使用されうる。このような縮合反応には、例えば、異性化、水和、アルドール縮合、脱水、水素化分解、硝酸塩還元、炭素−炭素カップリング(すなわち、ヘックアンドスズキ反応)、酸化、ヒドロホルミル化、アルケン、ケトン、アルコール、芳香族およびアルキン反応の選択的還元が挙げられる。
【0036】
理想的には、反応プロセス中に、反応温度は、50℃〜800℃、あるいは75℃〜600℃、あるいは75℃〜175℃に維持される。圧力は、1〜150bar、あるいは20〜100bar、あるいは30〜80barで維持される。LHSV(液体空間速度)は0.1〜20h−1、あるいは2〜20h−1、あるいは5〜20h−1の範囲である。反応システム内の反応器配置は、当業者に知られているいずれのものであって良い。このような配置には、これに限定されないが、充填カラム、混合反応器、連続攪拌反応器(CSTR)、ループ反応器、および流動ビーズ(moving beads)反応器が挙げられる。さらに、このシステムを通る、気体、液体またはこの2つの組み合わせの流れが存在することができる。反応はバッチでまたは連続的に行われうる。
【0037】
非限定的な例として、ある実施形態においては、金属合金ドープされたスルホン化樹脂触媒は、容器に収容されたビーズの物理的形態であり、このビーズは触媒の床を形成する。ケトン反応物質、例えば、アセトンの供給流れが、水素の存在下(別の供給流れとして)で、ケトンの縮合反応が起こるのに充分な時間および温度で、触媒床と接触させられる。反応生成物(飽和ケトン付加物)、副生成物(不飽和ケトン付加物)および存在しうる未反応であったケトン反応物質を含む凝縮した液体流れは触媒床から分離され、従来の分離手段(例えば、蒸留)によって、所望のケトン付加物がその液体流れから回収される。当業者は以下のような好適な条件を選択することができるであろう;(1)バッチ操作、例えば、水素の存在下で、触媒床が液体流れと接触させられ、次いで、所望の反応が起こった後で液体流れが触媒から除去される;または(2)より好ましい連続操作、例えば、液体流れが連続的にカラム反応器の一端に、所望の反応が起こるのに充分な触媒床における滞留時間を可能にする速度で(水素と共に)供給され、床の他方の末端から連続的に取り出された凝縮された液体流れを使用する。同様に、反応装置、床を通過する反応物質流れの方向についての上向流または下向流の選択、反応時間および温度、具体的な反応物質、およびケトン付加物を回収する用法は、本明細書において提供される手引きに基づいて容易に選択され、当業者が利用可能な知識である。
【0038】
典型的には、カラム反応器内側の温度および圧力は、触媒床においてケトン反応物質がその沸点にあるように選択される。ケトン反応物質の様々な温度/圧力が使用されて、縮合反応が触媒床の液体相において起こるような反応温度および条件の所望の組み合わせを提供する。触媒床に関して気相条件を提供するように条件が変えられうるが、この条件は縮合反応が液相において行われるようなものであることが好ましい。
【0039】
本発明の金属合金ドープされたスルホン化樹脂触媒は、ケトン反応物質と水素とがバッチ反応条件下でもしくは連続反応条件下で接触させられる縮合反応において使用されることができる。本発明のある実施形態においては、この方法は、ケトン反応物質の導入がリボイラー段階のすぐ上でカラム反応器の底である触媒蒸留プロセスをベースにした連続方法であり;この場合、生成物フラクションまたは流れが、さらなる処理のために、蒸留装置のリボイラー部分から連続的に抜き出される(触媒蒸留プロセスのさらなる一般的および具体的な詳細については、米国特許第6,008,416号を参照)。あるいは、縮合反応を受けるケトン反応物質は触媒床を通って下向きに供給され、水素の流れは同じ方向で反応領域を通過する。しかし、並流および対向流水素流れ、フラッディング(flooding)プロセスおよび気相プロセスのような反応物質供給流れの導入の他のバリエーションが使用されることができる。
【0040】
連続プロセスについては、反応物質の量に対して、使用される触媒の量は典型的には、単位時間あたりの触媒の体積に対する反応物質の液体流速またはLHSV(液体空間速度)によって示されるような、この反応のスループット速度に関連する。典型的には、高いLHSVは、装置利用および生成物の生成を最大化するのに望ましいが;この目的を満足させるために、原料の変換率(%)および所望の生成物への選択性(%)に対してバランスをとらなければならない。LHSVが低すぎると、所望の生成物の生産速度(空間収率)は小さくなり、この方法は経済的でない場合がある。LHSVが高すぎる場合には、触媒活性は、所望の水準の変換率を提供するには不充分である場合がある(この方法は「速度論的に限定される」こととなる)。LHSVの好適な値は、0.5〜10hr−1、あるいは1〜8h−1、あるいは2.5〜6h−1の典型的な範囲であり得る。
【0041】
典型的には、ケトン反応物質は触媒の存在下で、110〜170℃の温度で、および1〜100barの水素の圧力で水素と接触させられる。本発明の触媒される縮合反応を行うのに好適な温度は110〜170℃、あるいは120〜160℃、あるいは130〜150℃である。一般に、ケトン反応物質と水素との反応領域は1〜100bar、あるいは5〜60bar、あるいは10〜40barの水素圧力に維持される。典型的には、縮合反応は、0.1〜1、あるいは0.15〜0.5の水素/ケトン反応物質モル比で行われる。
【0042】
本発明の別の実施形態においては、この方法は、ケトン反応物質の反応器カラムへの導入が、触媒蒸留装置のリボイラーセクション段階(上述のと類似)であるバッチのものであり得る。この方法は、次いで、ケトン付加物の所望の生成物組成がリボイラーセクションにおいて達成させられる場合に、停止させられうる。あるいは、縮合は、特定の期間の間バッチオートクレーブ反応器において行われることができ、次いで、冷却し、所望のケトン付加物の回収を、蒸留によって、または別の従来の手段によって行うことができる。
【実施例1】
【0043】
ロームアンドハースカンパニーから市販されている強酸カチオン性イオン交換樹脂(アンバーリスト;Amberlyst(商標)35樹脂)50gが、50/50(重量/重量)ニッケルおよび亜鉛塩溶液を含む溶液20mlと混合される。樹脂と混合する前に、この水溶液のpHがHNOで1.2に調節される。樹脂−液体スラリーは反応器中で機械攪拌で4時間混合される。4時間後、過剰な液体が除去され、樹脂はブフナー乾燥され、50℃で24時間オーブン乾燥される。樹脂は次いで、カラム反応器に充填され、窒素でパージされる。パージ後に、水素/アルゴン(15/85)混合物のガス混合物が150ml/分の流速で、350psiの圧力で、550℃に加熱されて通される。この物質は3時間熱分解されて、室温まで冷却され、窒素でパージされ、さらなる使用のために包装される。
【実施例2】
【0044】
上記触媒30mlが充填床カラム反応器に充填される。シクロヘキセンおよび水素混合物がカラムを通される。水素の流速は通常の条件で250ml/分であり、シクロヘキセンの流速は1ml/分である。カラムに使用される圧力は400psiであり、110℃の温度である。カラムの後で得られる生成物はシクロヘキサンに対する99%の選択性を達成した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)イオン交換樹脂;および
(b)触媒の乾燥重量を基準にして、金属合金;
を含む触媒組成物。
【請求項2】
金属合金が以下から選択される金属の少なくとも2種を含む、請求項1に記載の触媒組成物:
パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、金(Au)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ケイ素(Si)、銀(Ag)、鉛(Pb)、スズ(Sn)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、水銀(Hg)、アンチモン(Sb)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、ジルコニウム(Zr)、オスミウム(Os)、およびヒ素(As)。
【請求項3】
触媒中に金属合金を堆積させるための少なくとも2種の金属を含むスルホン化イオン交換樹脂を触媒が含む、請求項2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
少なくとも2種の金属のうちの少なくとも1種が複数の金属の錯体である、請求項2に記載の触媒組成物。
【請求項5】
触媒が、触媒の乾燥重量を基準にして0.1〜25パーセントの金属合金を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項6】
金属合金が1〜250nmの金属クラスターサイズを有する、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項7】
触媒が、触媒の乾燥重量を基準にして、0.1〜0.9立方センチメートル/グラムの全ポロシティーおよび10〜100平方メートル/グラムの表面積を有するマクロポーラスビーズの形態である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項8】
触媒がゲルビーズの形態である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項9】
触媒が、50〜700オングストロームの全孔直径を有し、触媒の乾燥重量を基準にして、350〜1900平方メートル/グラムの表面積を有するポリマー吸着剤ビーズの形態である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項10】
触媒が熱分解される、請求項1に記載の触媒組成物。

【公開番号】特開2011−136329(P2011−136329A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−230635(P2010−230635)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】