説明

金属基材上にポリエーテルイミド被覆を製造する方法

本発明は、炭素鋼基材上にポリエーテルイミド被覆を製造する方法であって、i.有機溶剤を用意する工程、ii.二酸無水物を用意する工程、iii.モノ芳香族ジアミンである第一ジアミンを用意する工程、iv.第二ジアミンを用意する工程、v.該有機溶剤、該二酸無水物、該第一ジアミン及び該第二ジアミンを反応容器に入れ、反応混合物を形成する工程、vi.該反応混合物を不活性条件下で攪拌し、ポリアミド酸中間体を形成する工程、vii.該ポリアミド酸中間体を炭素鋼基材上に塗布する工程、viii. 該ポリアミド酸中間体を硬化させ、ポリエーテルイミド被覆を形成する工程を含んでなる、方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテルイミド被覆された炭素鋼基材、ポリアミド酸中間体、及び該ポリエーテルイミド被覆された炭素鋼基材及び該ポリアミド酸中間体の製造方法に関する。本発明は、さらにポリアミド酸中間体からポリエーテルイミド繊維を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属物体、例えば鉄筋、ワイヤ、ストリップ又はシート、を保護表面処理にかけ、鉄筋、ワイヤ、ストリップ又はシートの寿命を引き延ばす。この操作は、金属シートが非常に高い耐食性を示す必要がある自動車工業及び白物家電製品工業で特に重要である。
【0003】
過去においては亜鉛被覆が使用されていたが、これは、亜鉛被覆が湿分を金属と接触させない連続的な不浸透性金属バリヤーを与えるためである。湿分が直接接触しなければ、腐食は起きないはずである。しかし、亜鉛被覆は、外気に当たる用途では水及び大気中の汚染物質に露出されるために、時間と共に徐々に劣化する。バリヤー寿命は被覆厚さにも比例し、被覆が厚くなる程、金属基材を亜鉛で被覆するためのコストが増加する。
【0004】
金属を引っ掻いて裸の金属が露出すると、亜鉛被覆は優先的に酸化される。亜鉛が隣接して存在する場合、亜鉛が全て犠牲になるまで、金属中の鉄は酸化されない。しかし、亜鉛酸化の生成物は、高い表面積を有し、膨れを生じ、これが覆っている塗装面の外観に悪影響を及ぼす。
【0005】
上記のことを考え、金属基材を被覆する場合の耐食性を改良し、コストを下げるために、有機塗料が製造されている。被覆の厚さは、被覆性能に影響を及ぼし得る重要なパラメーターであることがわかっている。例えば、厚い被覆は、耐食性を増大させるが、シートの溶接性及び被覆の成型性を低下させる。
【0006】
エポキシ樹脂、例えばジグリシジルエーテルビスフェノールA(DGEBA)及びその誘導体、を基剤とする有機塗料を、耐食性被覆として金属基材上に直接堆積させている。この処理には、金属表面上に薄い酸化物被膜を形成することも関与しているが、この被膜は、被覆と基材との間の密着性を増加させることを意図している。酸化物被膜の存在にも関わらず、エポキシの特徴である反応性オキシラン(−CH−CH−O)基が硬化の際に大部分消失するために、被覆の密着性は不十分である。密着性が悪いために、耐食性の低下が観察されている。
【0007】
芳香族ポリエーテルイミドを基剤とする有機被覆は、優れた密着性及び高い温度耐性を示し、これがエレクトロニクス及び航空宇宙分野における高性能材料としての使用を促進している。この種のポリエーテルイミドは、重合体骨格に沿って規則正しく配置された芳香族基が存在するために、通常、高いガラス転移温度(Tg)及び高い分解温度を示すのが特徴である。その結果、これらの重合体は、高沸点プロトン性溶媒中に高温でのみ可溶であるので、処理するのが困難である。そのような溶剤は、m−クレゾール又はハロゲン化溶剤、例えばテトラクロロエチレン、を含んでなり、それらの多くは毒性であり、大工業的規模の製法では使用されない。
【0008】
これらのポリエーテルイミドの中には、半結晶性で、堅く、成型性が乏しいものがあり、そのようなポリエーテルイミド被覆を成形操作にかけると、亀裂の形成により、被覆の一体性及び耐食性の低下を引き起こすことが多い。
【発明の開示】
【0009】
従って、以前から公知の被覆よりも優れた特性を有する有機被覆が必要とされることは明らかである。
【0010】
本発明の一目的は、ポリエーテルイミド被覆の耐食性が改良されている、ポリエーテルイミド被覆された基材を提供することである。
【0011】
本発明の一目的は、ポリエーテルイミド被覆の被覆密着性が改良されている、ポリエーテルイミド被覆された基材を提供することである。
【0012】
本発明の一目的は、ポリエーテルイミド被覆の成型性が改良されている、ポリエーテルイミド被覆された基材を提供することである。
【0013】
本発明の第一の態様により、炭素鋼基材上にポリエーテルイミド被覆を製造する方法であって、
i.有機溶剤を用意する工程、
ii.二酸無水物を用意する工程、
iii.モノ芳香族ジアミンである第一ジアミンを用意する工程、
iv.第二ジアミンを用意する工程、
v.該有機溶剤、該二酸無水物、該第一ジアミン及び該第二ジアミンを反応容器に入れ、反応混合物を形成する工程、
vi.該反応混合物を不活性条件下で攪拌し、ポリアミド酸中間体を形成する工程、
vii.該ポリアミド酸中間体を該炭素鋼基材上に塗布する工程、
viii.該ポリアミド酸中間体を硬化させ、ポリエーテルイミド被覆を形成する工程
を含んでなる、方法を提供する。
【0014】
本発明により製造するポリエーテルイミドは、二酸無水物、第一ジアミン及び第二ジアミンを含んでなる。二酸無水物は堅い芳香族基を含み、これらの基がポリエーテルイミドに剛性を与え、耐食性を改良し、機械的特性を改良する。しかし、上記の型の二酸無水物を含んでなるポリエーテルイミド被覆は、典型的には半結晶性であり、たわみ性及び成型性が不十分である。従って、二酸無水物を第一ジアミン及び第二ジアミンと共重合させ、耐食性、たわみ性及び成型性が改良された無定型ポリエーテルイミド被覆を形成する必要がある。
【0015】
本発明の第二の態様により、上記製法の工程iii.を省略し、重合体骨格に沿ってたわみ性を増大させた第二ジアミンを使用する場合、耐食性、機械的特性、たわみ性及び成型性が改良されたポリエーテルイミドを製造することもできる。この方法では、ポリアミド酸中間体及びポリエーテルイミド被覆が二酸無水物及び第二ジアミンを含んでなる。好ましくは、第二ジアミンは、その重合体骨格に沿ってたわみ性のエーテル結合を含んでなり、より好ましくは、第二ジアミンは、脂肪族Jeffアミン、芳香族Jeffアミン又はそれらの誘導体である。
【0016】
ポリアミド酸中間体を、硬化させる前に基材上に塗布する工程が有利であるが、これは、この工程により、ポリアミド酸中間体を基材上に室温で塗布できる穏やかな溶剤を使用することができるためである。ポリアミド酸中間体を最初に硬化させてポリエーテルイミドを形成すると、ポリエーテルイミドを基材上に塗布するのに、高温及び毒性の高沸点プロトン性溶媒を使用する必要がある。従って、本発明は、加工性に関して重大な利点を提供する。
【0017】
好ましくは、ポリエーテルイミド被覆は、ポリエーテルジアミン、好ましくは芳香族ポリエーテルジアミンである第三のジアミンを含んでなるが、これは、芳香族基が耐食性の改良に貢献し、エーテル基がポリエーテルイミドの密着性及び成型性の改良に貢献するためである。エーテル基の存在は、酸素基が電子供与性Lewis塩基箇所として作用するので、被覆の密着性も改良することができる。好適な芳香族ポリエーテルイミドの例は、4,4’−(1,3−フェニレンジオキシ)ジアニリン(M1)であるが、これに限定するものではない。
【0018】
好ましくは、ポリエーテルイミド被覆は、置換されたモノ芳香族ジアミン、好ましくはメタ置換されたモノ芳香族ジアミンである第一ジアミンを含んでなるが、これは、メタ置換されたジアミン化合物が、中間相挙動及び被覆のたわみ性及び成型性の低下につながる分子間相互作用を妨害するためである。
【0019】
好ましくは、ポリエーテルイミド被覆は、m−フェニレンジアミン(MPA)である第一ジアミンを含んでなる。二酸無水物、MPA及び第二ジアミンの共重合により、たわみ性が高く、成型性が高い無定型ポリエーテルイミド構造が得られる。被覆の無定型性質は、重合体鎖の形態に不規則性を誘発するMPAによるところが大きい。MPAの存在は、ポリアミド酸中間体の、硬化の際のたわみ性及び流動特性を改良する熱−粘性挙動に対して好ましい影響を及ぼす。
【0020】
好ましくは、本発明の第一態様によるポリエーテルイミド被覆は、第二ジアミン、例えばモノ芳香族ジアミン、脂肪族ポリエーテルジアミン、芳香族ポリエーテルジアミン、脂肪族Jeffジアミン、芳香族Jeffジアミン、ジアミノ終端されたポリシロキサン又は芳香族ジアミンの金属塩を含んでなる。Jeffアミンは、ポリエーテル骨格の末端に付加した少なくとも一個の第一級アミノ基を含み、ポリエーテル骨格がプロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)、又は混合EO/POを基剤とする、ポリエーテル化合物として定義することができる。
【0021】
モノ芳香族ジアミン、例えばジアミノ安息香酸(DABA)、2,6−ジアミノピリジン(DAPY)又は3,5−ジアミノフェノール(DAPH)、を含んでなるポリエーテルイミドは、上記のジアミンがカルボン酸、ピリジン及びヒドロキシル官能基をそれぞれ与え、これらの基が、酸−塩基相互作用及び/又はH−結合を通して、炭素鋼基材と相互作用し得るので、ポリエーテルイミド被覆の密着性を改良するはずである。あるいは、脂肪族Jeffアミン、芳香族Jeffアミン、ジアミノ終端されたポリシロキサン、例えばアミノプロピル終端されたポリジメチルシロキサン(PDAS)又は芳香族ジアミンの金属塩、例えば二価アミノ安息香酸金属塩(DABM)、を含んでなるポリエーテルイミドは、重合体骨格に沿ってたわみ性のエーテル結合が存在するので、優れた成型性を示す。特に好適なJeffアミンとしては、O,O’−ビス(2−アミノプロピル)ポリプロピレングリコール−ブロック−ポリエチレングリコール−ブロック−ポリプロピレングリコール(J1)、4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン(J2)、分子量230を有するポリ(プロピレングリコール)ビス(2−アミノプロピルエーテル)(J3)、分子量400を有するポリ(プロピレングリコール)ビス(2−アミノプロピルエーテル)(J4)及び1,2−ビス(2−アミノエトキシエタン)(J5)がある。さらに、ポリエーテルイミド被覆の成型性は、エーテル基の数を増加させた単量体を選択することにより、及び/又は脂肪族ジアミンを選択することにより、さらに向上増大させることができる。脂肪族ジアミンの選択により、ポリアミド酸中間体のガラス転移温度(Tg)が下がり、これによって、該ポリアミド酸中間体を硬化させてポリエーテルイミドを形成する時に、より低い温度を使用することができる。
【0022】
好ましくは、ポリエーテルイミド被覆は、化学式
【化1】

を有する二酸無水物を含んでなる。
【0023】
上記の化学式を有する二酸無水物は、ポリエーテルイミドの耐食性及び機械的特性を改良する芳香族基を含んでなるのが有利である。本発明により使用する二酸無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BPTA)、4,4’−ビスフェノールA二酸無水物(BPADA)、4,4’オキシジフタル酸無水物(OPDA)及び4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(FDA)がある。二酸無水物、例えばBPDA、BPTA及びBPADA、は、ポリエーテルイミドの耐食性及び機械的特性を改良する非常に堅いビフェニル構造を含む。二酸無水物、例えばODPA、の共重合は、重合体骨格に沿ってエーテル基が存在するために、密着性及び成型性がより高いポリエーテルイミドを形成するはずであるのに対し、FDAの共重合は、基材と強く相互作用し得る極性が高いフッ素基が存在するために、優れた密着性を示すポリエーテルイミドを形成するはずである。
【0024】
好ましくは、ポリエーテルイミド被覆は、末端キャッパーを含んでなる。この末端キャッパーをポリアミド酸中間体と混合し、末端キャッパー/ポリアミド酸中間体混合物を形成し、この混合物を基材に塗布し、続いて硬化させる。末端キャッパーを取り入れることにより、得られるポリエーテルイミド内の多孔度が低下し、ポリエーテルイミド被覆の耐食性が改良されるので有利である。
【0025】
好ましくは、末端キャッパーは、アリールアミン誘導体又はアミン終端されたシラン/シロキサンであるが、これは、アリールアミン誘導体がカルボン酸、エステル、アミン又はヒドロキシル官能基を含んでなる場合、炭素鋼基材とポリエーテルイミド被覆との間の密着性を改良するはずである。他のアリールアミン誘導体は、フェノール、アセチレン又はシランを含んでなる。アミン終端されたシラン/シロキサンを使用することにより、たわみ性重合体鎖が存在するために、ポリエーテルイミド被覆の成型性を改良することもできる。好適な末端キャッパーとしては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、3−アミノ安息香酸(3−ABA)、3−アミノフェノール(3−ABP)及びアルキル3−アミノベンゾエート(3−ABE)がある。
【0026】
好ましくは、有機溶剤は、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)及び/又はエタノールを含んでなる。塩基性溶剤であるNMP、DMAC及びDMFを使用することにより、ポリアミド酸中間体副生物の形成を回避し、硬化の際のイミド形成反応の速度も加速する。エタノールの使用は、環境により好ましく、容易に入手できるので、好ましい。
【0027】
好ましくは、ポリアミド酸中間体は、100℃〜300℃の多段階加熱処理を使用して硬化させる。ポリアミド酸中間体を熱処理にかけることにより、靱性、硬度及び耐食性が改良された、対応するポリエーテルイミドが形成される。成型性の改良は、多段階手法を使用し、ポリアミド酸中間体を100℃で15分間、150℃で15分間、及び300℃で10分間の熱処理にかけて製造されたポリエーテルイミド被覆に観察される。赤外線加熱を使用する場合、ポリアミド酸中間体を100℃で1秒間〜10分間、150℃で1秒間〜10分間、及び300℃で1秒間〜10分間の熱処理にかける。多段階手法の使用は、硬化の際に急激な熱衝撃及び応力を重合体中に導入せず、溶剤気泡の形成を回避し、重合体鎖の内側に溶剤を閉じ込めないことからも、有益である。
【0028】
熱処理を、200℃〜300℃の一段階で行うこともできる。一段階手法の使用は、熱処理時間が30秒間〜15分間、好ましくは5分間以内になるので、製造業者にとってコスト的に有利である。
【0029】
好ましくは、ポリエーテルイミド被覆は、乾燥被膜厚さが1μm〜20μm、より好ましくは乾燥被膜厚さが1μm〜10μm、さらに好ましくは乾燥被膜厚さが2μm〜6μmである。より厚い被覆は耐食性が増大するのに対し、より薄い被覆は、溶接性及び成型性の観点から被覆性能が優れており、有利である。好ましくは、塗料は基材上にローラー塗り、浸し塗り又はスプレーにより塗布し、対流加熱、誘導加熱、直接加熱又は赤外線加熱を使用して乾燥及び/又は硬化させる。
【0030】
本発明のポリエーテルイミドの特徴である優れた密着性及び耐食性は、炭素鋼基材を前処理する必要が無く、その代わりに塗料を裸の炭素鋼基材上に直接塗布できることを意味している。優れた密着性及び耐食性は、1)炭素鋼表面上の酸化物及び水酸化物基とポリエーテルイミドの極性基との間の水素結合及び2)ポリエーテルイミドのプロトン化された窒素原子と炭素鋼表面上の鉄陽イオンとの間の酸−塩基相互作用の組合せにより達成される。
【0031】
好ましくは、炭素鋼基材を金属系及び/又は有機系塗料で前処理し、全体的な腐食保護特性を強化する。ポリエーテルイミド被覆は、ニッケル、亜鉛、酸化亜鉛及び亜鉛及びアルミニウムの合金の被覆で前処理した炭素鋼表面上で優れた耐食性を示す。優れた密着性は、シラン又はジルコニウムで予備被覆された金属系表面上でも観察されるが、これは、ポリエーテルイミドと前処理された基材表面との間に強い共有結合が形成されるためである。ポリエーテルイミドの極性基も、前処理された表面上のヒドロキシル基と水素結合することができる。
【0032】
好ましくは、ポリエーテルイミド被覆は、熱間圧延した炭素鋼基材又は冷間圧延した炭素鋼基材上に施す。有利なことに、ポリエーテルイミドが、酸−塩基相互作用及び/又はH−結合を通して効果的に相互作用し得るので、被覆の密着性が改良される。炭素鋼物体としては、鉄筋、ワイヤ、シート及び板がある。
【0033】
好ましくは、炭素鋼基材上にポリエーテルイミド被覆を施す方法を提供するが、その際、本発明の第一又は第二態様及び上記の実施態様により製造されたポリアミド酸中間体を、脂肪族ポリアミド酸及び/又は芳香族ポリアミド酸及び添加剤と混合し、ポリアミド酸混合物を形成する。ポリアミド酸混合物を基材上に塗布し、硬化させ、ポリエーテルイミドブレンドを形成するのが有利である。ポリエーテルイミドブレンドは、目的に合わせて調製し、耐食性、密着性及び成型性を改良することができる。添加剤は、湿潤剤、酸化防止剤及び緩衝剤、例えばPO−3、SiO及びMoOを含んでなる。
【0034】
本発明の第三態様では、本発明の第一態様又は本発明の第二態様のポリアミド酸中間体を提供する。本発明の第一態様によるポリアミド酸中間体は、二酸無水物、第一ジアミン及び第二ジアミンを含んでなるのに対し、本発明の第二態様によるポリアミド酸中間体は、二酸無水物及び第二ジアミンを含んでなる。ポリアミド酸中間体は、本発明の第一態様又は本発明の第二態様により製造し、上に開示する好ましい実施態様は、ポリアミド酸中間体にも同様に適用できる。ポリアミド酸中間体は、接着剤、複合材料用マトリックス樹脂、繊維、成形品、等を製造するための前駆物質として使用することができる。
【0035】
本発明の第四態様では、本発明の第三態様のポリアミド酸中間体を繊維に形成し、次いで硬化させる、ポリエーテルイミド繊維の製造方法を提供する。ポリアミド酸溶液を好ましくは濾過し、100℃で脱気してから、ポリアミド酸中間体を繊維の形態に紡糸する。そのような繊維は、約20mmの空気隙間で乾式ジェット‐湿式紡糸(dry−jet−wet−spinning)により製造することができる。濾過し、脱気したポリアミド酸中間体を、好ましくは直径約0.08mmの寸法になる6個までのオリフィスを備えた紡糸口金を通して押し出す。紡糸した繊維は、好ましくは水及びアルコールを含んでなる第一洗浄浴を通過させ、一様な微小構造を有する繊維を形成する。次いで、繊維は、エタノールを含んでなる第二洗浄浴に入る。次いで、紡糸された繊維を300℃以下の温度で硬化させることができる。
【0036】
本発明の第五態様では、本発明の第一態様又は本発明の第二態様の方法により製造されたポリエーテルイミド被覆された基材を提供する。本発明の第一態様によるポリエーテルイミド被覆は、二酸無水物、第一ジアミン及び第二ジアミンを含んでなるのに対し、本発明の第二態様によるポリエーテルイミド被覆は、二酸無水物及び第二ジアミンを含んでなる。上に開示する好ましい実施態様は、ポリエーテルイミド被覆された基材にも同様に適用できる。
【実施例】
【0037】
ここで本発明の実施態様を例により説明する。これらの例は、当業者が本発明を実行できるようにすることを意図しており、請求項に規定する本発明の範囲を制限するものではない。
【0038】
スキーム1は、ポリアミド酸中間体及びそのポリエーテルイミドを製造するための一般的な方法を示す。
【0039】
図1は、例1、2、3、4及び6によるポリエーテルイミドのTg及び無定型性質を示す示差走査熱量測定法(DSC)のグラフを示す。これらのポリエーテルイミド被覆に関するガラス転移温度を表1に示す。
【0040】
表1は、分子量、PDI、Tg、相対粘度(ηr)、10%重量損失における温度及び塩水噴霧試験(SST)に関する結果を示す。
【0041】
表2は、ポリエーテルイミドの耐食性を反映するインピーダンス(impendence)試験の結果を示す。
【0042】
電気化学的インピーダンス分光法(EIS)実験を、模擬食塩水媒体(3.5%NaCl溶液、pH6.7)を使用して行い、分極抵抗(R)とも呼ばれる電荷移動抵抗(Rct)、及び被覆を通した水拡散の尺度である総被覆キャパシタンスCcを評価した。Ccは、被膜キャパシタンス(C)及び二重層キャパシタンス(Cdl)及びRに逆比例する腐食速度の総計に等しい。インピーダンスのモジュラスIZIは、被膜のバリヤー特性を示す。高いIZI値は、バリヤー特性の改良を示す。実験装置は、作用電極(特性を評価すべき被覆された鋼基材)、参照電極(カロメル)及び対向電極(Ni)を含んでなる。作用電極面積は、面積12cmのディスクを露出するテフロンホルダーを使用して選択した。インピーダンス測定は、EG&G PARC 273Aポテンショスタット及びマイクロコンピュータを操作するZPLOTソフトウエア(Scribner Associates, Charlottesille, VA)により制御されるSolarton 1255周波数応答アナライザーを使用して行った。インピーダンス値は、10.0mHz〜65kHzの範囲にわたって10あたり5個の個別周波数で測定した。こうして得られた実験データは、ZSIM/CNLSソフトウエア(Scribner Associates)を使用するRandlesの等価回路モデルで適合させた。Randlesの等価回路は、唯一可能な表示という訳ではないが、修正電気化学的インターフェースを表示するのにしばしば使用されており、この場合、データの優れた適合性を示す。
【0043】
ポリ(アミド)酸(PAA)粘度は、SCHOTT粘度計で、Visco System AVS 470を使用し、25℃で測定した。固有相対粘度が0.2dL/g〜5dL/g、好ましくは0.4dL/g〜2dL/gにある場合、被膜は注型することができる。その上、高粘度は高分子量に関連付けることができる。従って、粘度は、分子量及び重合転化率を示す。
【0044】
気相クロマトグラフィー(GPC)分析を、NMP中LiBr溶液(5mmol/L)で満たした、shodexから入手したLF 804カラム中、60℃、0.5mL/分流量で行った。分析試料のPAA濃度は0.8mg/Lであった。
【0045】
熱重量分析(TGA)を、Perkin Elmer pyrisダイヤモンドDMAを使用して行い、示差走査熱量測定(DSC)を、Perkin Elmer PyrisサファイアDSCを使用して行い、動的機械的熱分析(DMTA)をPerkin Elmer pyrisダイヤモンドDMAを使用して行った。走査は、下記の設定で記録した。
−TGA 加熱速度10℃/分
温度範囲25℃〜600℃
−DSC 加熱/冷却速度20℃/分
温度範囲25℃〜450℃
プログラム 1)450℃に加熱 2)25℃に冷却 3)450℃に加熱
−DMTA 加熱速度2℃/分
温度範囲25℃〜300℃
振動周波数 1Hz
【0046】
分析は全て、窒素気流中で、ガラス板から剥離し、自由に直立しているポリエーテルイミドフィルムに対して行った。重合体の熱的安定性は、TGAにより評価した。5重量%及び10重量%損失に対する温度は、重合体の安定性に関する標準的な尺度である。ガラス転移温度(Tg)は、DSCで、及びより正確にはDMTAにより得られる。DMTAは、大きい温度範囲でポリエーテルイミド被覆の機械的特性を測定することにも使用される。
【0047】
塩水噴霧試験(ASTM B117標準)を使用し、被覆した、及び被覆していない金属試料の、高温で噴霧した時の耐食性を測定する。ポリエーテルイミド被覆した基材を閉じたチャンバー中に35℃で入れ、被覆された基材上に1.0〜2.0ml/80cm/時間の割合で落ちる5%塩溶液(pH6.5〜7.2)の連続的間接的噴霧(霧)に露出した。5%塩溶液の霧は、規定された割合で形成され、霧収集速度は、チャンバーの内側で、ml目盛りを付けたメスシリンダー中に最少2個の80平方cm漏斗を挿入配置して測定した。この噴霧状態を定常状態に維持する。試料を垂直から15〜30度の角度に配置する。試験の持続時間は可変である。サイズ76x127x0.8mmの試料を清浄にし、秤量し、チャンバー中で収集漏斗の近くに配置する。露出後、パネルを膨れ、剥離及び赤錆に関して厳密に観察する。
【0048】
例1 PI 16の合成
窒素入口を備えた100mLの一口フラスコを、窒素気流下で、ビートガンで10分間加熱し、フラスコから水及び酸素を除去する。次いで、フラスコに(3.5mmol、1.044g)の1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(98%)、(1.5mmol、0.165g)のm−フェニレンジアミン(99%)及び23.9gのNMPを入れる。次いで、この溶液に(5mmol、1.5166g)の4,4’−ビフタル酸無水物(97%)を加え、溶液をN下で8〜16時間攪拌し、ポリアミド酸中間体(PAA 16)を形成する。次いで、PAA 16を鋼基材上に直接塗布し、加熱炉中、250℃で5分間硬化させ、PI 16ポリエーテルイミド被覆された鋼製品を形成する。重合体強度の尺度である貯蔵モジュラスは、PI 16ポリエーテルイミドに関して4.4(Gpa)と記録された。
【0049】
例2 PI 16.1の合成
窒素入口を備えた100mLの一口フラスコを、窒素気流下で、ビートガンで10分間加熱し、フラスコから水及び酸素を除去する。次いで、フラスコに(3.5mmol、1.044g)の1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(98%)、(1.0mmol、0.165g)のm−フェニレンジアミン(99%)、(0.5mmol、0.076g)の3,5−ジアミノ安息香酸及び23.9gのNMPを入れる。次いで、この溶液に(5mmol、1.5166g)の4,4’−ビフタル酸無水物(97%)を加え、溶液をN下で8〜16時間攪拌し、ポリアミド酸中間体(PAA 16.1)を形成する。次いで、PAA 16.1を鋼基材上に直接塗布し、加熱炉中、250℃で5分間硬化させ、PI 16.1ポリエーテルイミド被覆された鋼製品を形成する。PI 16.1ポリエーテルイミドの貯蔵モジュラスは4.9(Gpa)であった。
【0050】
例3 PI 16.2の合成
窒素入口を備えた150mLの一口フラスコを、窒素気流下で、ビートガンで10分間加熱し、フラスコから水及び酸素を除去する。次いで、フラスコに(12mmol、3.58g)の1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(98%)、(5mmol、0.55g)のm−フェニレンジアミン(99%)、(3mmol、0.334g)の1,5−ジアミノピリジン及び100gのNMPを入れる。次いで、この溶液に(20mmol、6.0644g)の4,4’−ビフタル酸無水物(97%)を加え、溶液をN下で8〜16時間攪拌し、ポリアミド酸中間体(PAA 16.2)を形成する。次いで、PAA 16.2を鋼基材上に直接塗布し、加熱炉中、250℃で5分間硬化させ、PI 16.2ポリエーテルイミド被覆された鋼製品を形成する。PI 16.2ポリエーテルイミドの貯蔵モジュラスは8.7(Gpa)であった。
【0051】
例4 PI 16.3の合成
窒素入口を備えた100mLの一口フラスコを、窒素気流下で、ビートガンで10分間加熱し、フラスコから水及び酸素を除去する。次いで、フラスコに(3.5mmol、1.044g)の1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(98%)、(1.25mmol、0.135g)のm−フェニレンジアミン(99%)、(0.25mmol、0.238gm)のアミノプロピル終端されたポリジメチルシロキサン及び23.9gのNMPを入れる。次いで、この溶液に(5mmol、1.5166g)の4,4’−ビフタル酸無水物(97%)を加え、溶液をN下で8〜16時間攪拌し、ポリアミド酸中間体(PAA 16.3)を形成する。次いで、PAA 16.3を鋼基材上に直接塗布し、加熱炉中、250℃で5分間硬化させ、PI 16.3ポリエーテルイミド被覆された鋼製品を形成する。
【0052】
例5 PI 16.4の合成
Mn−ジアミノ安息香酸塩(DABM)の合成:2.1モル比のアミノ安息香酸及びMnOを100mlの水中で混合し、60℃に4時間加熱した。次いで、この混合物を濾過し、加熱炉中で24時間乾燥させた。
【0053】
窒素入口を備えた100mLの一口フラスコを、窒素気流下で、ビートガンで10分間加熱し、フラスコから水及び酸素を除去する。次いで、フラスコに(3.5mmol、1.044g)の1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(98%)、(1.3mmol、0.142g)のm−フェニレンジアミン(99%)、(0.2mmol、0.066g)のDABM及び23.9gのNMPを入れる。次いで、この溶液に(5mmol、1.5166g)の4,4’−ビフタル酸無水物(97%)を加え、溶液をN下で8〜16時間攪拌し、ポリアミド酸中間体(PAA 16.4)を形成する。次いで、PAA 16.4を鋼基材上に直接塗布し、加熱炉中、250℃で5分間硬化させ、PI 16.4ポリエーテルイミド被覆された鋼製品を形成する。
【0054】
例6 PI 16.5の合成
窒素入口を備えた100mLの一口フラスコを、窒素気流下で、ビートガンで10分間加熱し、フラスコから水及び酸素を除去する。次いで、フラスコに(5mmol、3gm)のO,O’−ビス(2−アミノプロピル)ポリプロピレングリコール−ブロック−ポリエチレングリコール−ブロック−ポリプロピレングリコール及び23.9gのNMPを入れる。次いで、この溶液に(5mmol、1.5166g)の4,4’−ビフタル酸無水物(97%)を加え、溶液をN下で8〜16時間攪拌し、ポリアミド酸中間体(PAA 16.5)を形成する。次いで、PAA 16.5を鋼基材上に直接塗布し、加熱炉中、250℃で5分間硬化させ、PI 16.5ポリエーテルイミド被覆された鋼製品を形成する。PI 16.5ポリエーテルイミドの貯蔵モジュラスは4.4(Gpa)であった。
【0055】
例7 PI 16 EC−1の合成
窒素入口を備えた100mLの一口フラスコを、窒素気流下で、ビートガンで10分間加熱し、フラスコから水及び酸素を除去する。次いで、フラスコに(1.8mmol、0.557g)の1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(98%)、(0.777mmol、0.85g)のm−フェニレンジアミン(99%)及び23.9gのNMPを入れる。次いで、この溶液に(3.29mmol、0.99g)の4,4’−ビフタル酸無水物(97%)を加え、溶液をN下で8〜16時間攪拌する。その後、この溶液に(0.71mmol、0.156g)のアミノプロピルトリエトキシシラン末端キャッパーを加えて混合物を形成し、これを一晩攪拌する。次いで、この混合物を鋼基材上に直接塗布し、加熱炉中、250℃で5分間硬化させ、PI 16 EC−1ポリエーテルイミド被覆された鋼製品を形成する。
【0056】
例8 PI 16 EC−2の合成
窒素入口を備えた100mLの一口フラスコを、窒素気流下で、ビートガンで10分間加熱し、フラスコから水及び酸素を除去する。次いで、フラスコに(1.8mmol、0.557g)の1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(98%)、(0.777mmol、0.85g)のm−フェニレンジアミン(99%)及び23.9gのNMPを入れる。次いで、この溶液に(3.29mmol、0.99g)の4,4’−ビフタル酸無水物(97%)を加え、溶液をN下で8〜16時間攪拌する。その後、この溶液に(0.71mmol、0.098g)の4−アミノ安息香酸末端キャッパーを加えて混合物を形成し、これを一晩攪拌する。次いで、この混合物を鋼基材上に直接塗布し、加熱炉中、250℃で5分間硬化させ、PI 16 EC−2ポリエーテルイミド被覆された鋼製品を形成する。
【0057】
例9 PI 16 EC−3の合成
窒素入口を備えた100mLの一口フラスコを、窒素気流下で、ビートガンで10分間加熱し、フラスコから水及び酸素を除去する。次いで、フラスコに(1.8mmol、0.557g)の1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(98%)、(0.777mmol、0.85g)のm−フェニレンジアミン(99%)及び23.9gのNMPを入れる。次いで、この溶液に(3.29mmol、0.99g)の4,4’−ビフタル酸無水物(97%)を加え、溶液をN下で8〜16時間攪拌する。その後、この溶液に(0.71mmol、0.107g)のメチル−3アミノベンゾエート末端キャッパーを加えて混合物を形成し、これを一晩攪拌する。次いで、この混合物を鋼基材上に直接塗布し、加熱炉中、250℃で5分間硬化させ、PI 16 EC−3ポリエーテルイミド被覆された鋼製品を形成する。
【0058】
例10 PI 16 EC−4の合成
窒素入口を備えた100mLの一口フラスコを、窒素気流下で、ビートガンで10分間加熱し、フラスコから水及び酸素を除去する。次いで、フラスコに(1.8mmol、0.557g)の1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(98%)、(0.777mmol、0.85g)のm−フェニレンジアミン(99%)及び23.9gのNMPを入れる。次いで、この溶液に(3.29mmol、0.99g)の4,4’−ビフタル酸無水物(97%)を加え、溶液をN下で8〜16時間攪拌する。その後、この溶液に(0.71mmol、0.076g)の3−アミノフェノール末端キャッパーを加えて混合物を形成し、これを一晩攪拌する。次いで、この混合物を鋼基材上に直接塗布し、加熱炉中、250℃で5分間硬化させ、PI 16 EC−4ポリエーテルイミド被覆された鋼製品を形成する。
【0059】
例11 BJ2の合成
窒素入口を備えた100mLの一口フラスコを、窒素気流下で、ビートガンで10分間加熱し、フラスコから水及び酸素を除去する。次いで、フラスコに(10mmol、2.203g)の4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン(J2)及び40gのNMPを入れて溶液を形成し、これを80℃で5分間攪拌した。この溶液に(10mmol、3.032g)の4,4’−ビフタル酸無水物(97%)を加え、攪拌を80℃でさらに2時間続行した。次いで、温度を120℃に増加し、さらに2時間攪拌してから、この溶液を鋼基材上に直接塗布し、加熱炉中、250℃で5分間硬化させ、BJ2ポリエーテルイミド被覆された鋼製品を形成する。
【0060】
例12 BJ2.1の合成
窒素入口を備えた100mLの一口フラスコを、窒素気流下で、ビートガンで10分間加熱し、フラスコから水及び酸素を除去する。次いで、フラスコに(10mmol、3.032g)の4,4’−ビフタル酸無水物(97%)及び40gの無水エタノールを入れて溶液を形成する。フラスコをコンデンサーに接続し、溶液を攪拌しながら1時間環流加熱する。次いで、この溶液に(10mmol、2.203g)の4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン(J2)を加え、これを60℃〜80℃で4時間攪拌してから、この溶液を鋼基材上に直接塗布し、加熱炉中、250℃で5分間硬化させ、BJ2.1ポリエーテルイミド被覆された鋼製品を形成する。
【0061】
例13 BJ3の合成
窒素入口を備えた100mLの一口フラスコを、窒素気流下で、ビートガンで10分間加熱し、フラスコから水及び酸素を除去する。次いで、フラスコに(10mmol、3.032g)の4,4’−ビフタル酸無水物(97%)及び40gの無水エタノールを入れて溶液を形成する。フラスコをコンデンサーに接続し、溶液を攪拌しながら1時間環流加熱する。次いで、この溶液に(10mmol、2.3g)の、分子量230を有するポリ(プロピレングリコール)ビス(2−アミノプロピル)エーテル(J3)を加え、次いでこれを60℃〜80℃で4時間攪拌してから、この溶液を鋼基材上に直接塗布し、加熱炉中、250℃で5分間硬化させ、BJ3ポリエーテルイミド被覆された鋼製品を形成する。
【0062】
例14 BJ4の合成
窒素入口を備えた100mLの一口フラスコを、窒素気流下で、ビートガンで10分間加熱し、フラスコから水及び酸素を除去する。次いで、フラスコに(10mmol、3.032g)の4,4’−ビフタル酸無水物(97%)及び40gの無水エタノールを入れて溶液を形成する。フラスコをコンデンサーに接続し、溶液を攪拌しながら1時間環流加熱する。次いで、この溶液に(10mmol、4g)の、分子量400を有するポリ(プロピレングリコール)ビス(2−アミノプロピル)エーテル(J4)を加え、次いでこれを60℃〜80℃で4時間攪拌する。次いで、この溶液を鋼基材上に直接塗布し、加熱炉中、250℃で5分間硬化させ、BJ4ポリエーテルイミド被覆された鋼製品を形成する。
【0063】
例15 BJ5の合成
窒素入口を備えた100mLの一口フラスコを、窒素気流下で、ビートガンで10分間加熱し、フラスコから水及び酸素を除去する。次いで、フラスコに(10mmol、3.032g)の4,4’−ビフタル酸無水物(97%)及び40gの無水エタノールを入れて溶液を形成する。フラスコをコンデンサーに接続し、溶液を攪拌しながら1時間環流加熱する。次いで、この溶液に(10mmol、1.48g)の、分子量148.20を有する1,2−ビス(2−アミノエトキシシラン(J5)を加え、次いでこれを60℃〜80℃で4時間攪拌してから、この溶液を鋼基材上に直接塗布し、加熱炉中、250℃で5分間硬化させ、BJ5ポリエーテルイミド被覆された鋼製品を形成する。
【0064】
例16 BJ5.2の合成
窒素入口を備えた100mLの一口フラスコを、窒素気流下で、ビートガンで10分間加熱し、フラスコから水及び酸素を除去する。次いで、フラスコに(7mmol、1.0374g)の1,2−ビス(2−アミノエトキシシラン(J5)及び(3mmol、0.3244g)のm−フェニレンジアミン(99%)及び40gのNMPを入れて溶液を形成し、これを80℃で5分間攪拌する。この溶液に(10mmol、3.032g)の4,4’−ビフタル酸無水物(97%)を加え、80℃で攪拌をさらに2時間続行する。次いで、温度を120℃に増加し、さらに2時間攪拌してから、この溶液を鋼基材上に直接塗布し、加熱炉中、250℃で5分間硬化させ、BJ5.2ポリエーテルイミド被覆された鋼製品を形成する。
【0065】
【化2】

【0066】

【0067】
【表1】

【0068】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素鋼基材上にポリエーテルイミド被覆を製造する方法であって、
i.有機溶剤を用意する工程と、
ii.二酸無水物を用意する工程と、
iii.モノ芳香族ジアミンである第一ジアミンを用意する工程と、
iv.第二ジアミンを用意する工程と、
v.前記有機溶剤、前記二酸無水物、前記第一ジアミン及び前記第二ジアミンを反応容器に入れ、反応混合物を形成する工程と、
vi.前記反応混合物を不活性条件下で攪拌して、ポリアミド酸中間体を形成する工程と、
vii.前記ポリアミド酸中間体を前記炭素鋼基材上に塗布する工程と、
viii.前記ポリアミド酸中間体を硬化させて、ポリエーテルイミド被覆を形成する工程と、
を含んでなる、方法。
【請求項2】
炭素鋼基材上にポリエーテルイミド被覆を製造する方法であって、
i.有機溶剤を用意する工程と、
ii.二酸無水物を用意する工程と、
iii.第二ジアミンを用意する工程と、
iv.前記有機溶剤、前記二酸無水物及び前記第二ジアミンを反応容器に入れて、反応混合物を形成する工程と、
v.前記反応混合物を不活性条件下で攪拌し、ポリアミド酸中間体を形成する工程と、
vi.前記ポリアミド酸中間体を前記炭素鋼基材上に塗布する工程と、
vii.前記ポリアミド酸中間体を硬化させて、ポリエーテルイミド被覆を形成する工程と、
を含んでなる、方法。
【請求項3】
前記第二ジアミンがJeffアミンである、請求項2に記載の炭素鋼基材上にポリエーテルイミド被覆を製造する方法。
【請求項4】
前記ポリエーテルイミド被覆が、ポリエーテルジアミン、好ましくは芳香族ポリエーテルジアミンである第三のジアミンを含んでなる、請求項1に記載の炭素鋼基材上にポリエーテルイミド被覆を製造する方法。
【請求項5】
前記ポリエーテルイミド被覆が、ポリエーテルジアミン、好ましくは芳香族ポリエーテルジアミンである第三のジアミンを含んでなる、請求項2又は3に記載の炭素鋼基材上にポリエーテルイミド被覆を製造する方法。
【請求項6】
前記第一ジアミンが、置換されたモノ芳香族ジアミン、好ましくはメタ置換されたモノ芳香族ジアミンである、請求項1又は4に記載の炭素鋼基材上にポリエーテルイミド被覆を製造する方法。
【請求項7】
前記メタ置換されたモノ芳香族ジアミンがm−フェニレンジアミンである、請求項6に記載の炭素鋼基材上にポリエーテルイミド被覆を製造する方法。
【請求項8】
前記第二ジアミンが、モノ芳香族ジアミン、脂肪族ポリエーテルジアミン、芳香族ポリエーテルジアミン、脂肪族Jeffジアミン、芳香族Jeffジアミン、ジアミノ終端されたポリシロキサン又は芳香族ジアミンの金属塩を含んでなる、請求項1、4、6及び7のいずれか一項に記載の炭素鋼基材上にポリエーテルイミド被覆を製造する方法。
【請求項9】
末端キャッパーを前記ポリアミド酸中間体と混合し、末端キャッパー/ポリアミド酸中間体混合物を形成し、前記混合物を前記基材上に塗布し、続いて硬化させる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の炭素鋼基材上にポリエーテルイミド被覆を製造する方法。
【請求項10】
前記末端キャッパーが、アリールアミン誘導体又はアミン終端されたシラン又はシロキサンである、請求項9に記載の炭素鋼基材上にポリエーテルイミド被覆を製造する方法。
【請求項11】
前記ポリアミド酸中間体を、100℃〜300℃の多段階加熱処理を使用して硬化させる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の炭素鋼基材上にポリエーテルイミド被覆を製造する方法。
【請求項12】
前記ポリエーテルイミド被覆が、硬化後に、1μm〜20μm、好ましくは1μm〜10μm、より好ましくは2μm〜6μmの乾燥被膜厚さを有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の炭素鋼基材上にポリエーテルイミド被覆を製造する方法。
【請求項13】
前記炭素鋼基材が金属系塗料及び/又は有機系塗料で前処理される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の炭素鋼基材上にポリエーテルイミド被覆を製造する方法。
【請求項14】
前記炭素鋼基材が、鉄筋、ワイヤ、シート又は板である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の炭素鋼基材上にポリエーテルイミド被覆を製造する方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法により製造されたポリアミド酸中間体を、脂肪族ポリアミド酸及び/又は芳香族ポリアミド酸及び添加剤と混合して、ポリアミド酸混合物を形成する、炭素鋼基材上にポリエーテルイミド被覆を製造する方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載のポリアミド酸中間体。
【請求項17】
請求項16に記載のポリアミド酸中間体を繊維に形成し、次いで硬化させる、ポリエーテルイミド繊維の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法により得られるポリエーテルイミド被覆された金属基材。

【公表番号】特表2013−506017(P2013−506017A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530173(P2012−530173)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005848
【国際公開番号】WO2011/035920
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(505008419)タタ、スティール、ネダーランド、テクノロジー、ベスローテン、フェンノートシャップ (15)
【氏名又は名称原語表記】TATA STEEL NEDERLAND TECHNOLOGY BV
【出願人】(511307605)タタ、スティール、リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】TATA STEEL LIMITED
【Fターム(参考)】