説明

金属多孔体の異物検出装置およびその装置による異物検出工程を経た金属多孔体

【課題】三次元網目状金属多孔体に付着した異物を連続的に効率よく、容易に、かつ、確実に検出し、その異物の対処が容易にできる装置を提供すると共に、その装置を使用して検査することにより異物付着の無い高品位の金属多孔体を提供することを目的とする。
【解決手段】シート状の三次元網目状の金属多孔体の供給部とこの三次元網目状の金属多孔体の巻取り部とを有し、この間に三次元網目状の金属多孔体をはさみ片面側に発光手段とその反対面にこの透過光を検出する光学検出手段を有する光学検査部を1つもしくは2つ有する三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。光学検査部と三次元網目状の金属多孔体ワーク巻取り部との間に平面部を有し、該平面部に異物検出箇所を明示するマーキング手段を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に用いられる電池用電極、粉塵・油などのフィルタ材に使用される金属多孔体に付着した異物を検出するための装置、及び、その装置を用いて検査した金属多孔体に関する。
【背景技術】
【0002】
電池用電極やフィルタ材料などに使用される金属多孔体は、シート状の三次元網目状樹脂発泡体に導電処理を施し、これに電気めっきした後、焙焼・還元することで得られるフープ材が主に使用されている。
これらの金属多孔体は、スポンジ状の形態を持つため、単位体積あたりの表面積が大きなことが、電池やフィルタ材として使用する際、良好な特性を生み出す。
この金属多孔体に対し、近年、より高い性能が要求されてきている。そのひとつに金属多孔体表面に異物が付着することを抑制することがある。
金属多孔体の表面に異物が付着していると、二次電池の場合には出力低下に繋がる恐れが有り、また、フィルタ材として使用する場合には、付着していた異物が脱落することによりフィルタ材としての機能が確保できなくなる恐れがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
三次元網目状金属多孔体は表面が凹凸構造をなしており、しかもそれがシート状の製品の厚さ方向まで網目状に形成されている。
従って、生産の工程などでこの表面に異物が付着しても、人間の目では容易に判別できないため、精度良く異物を検出・除去するには、製品を最終的に使用する寸法の小片に切断し、顕微鏡や拡大鏡で1枚1枚観察して、検査することが行われていた。
しかし、この方法では連続したフープ上の製品を早い段階で切断する必要があり、生産性が低下するだけではなく、人による目視確認に頼るため、検出ミスなどの問題が発生することがあった。
本発明は上記の問題点を解決し、三次元網目状金属多孔体に付着した異物を連続的に効率よく、容易に、かつ、確実に検出し、その異物の対処が容易にできる装置を提供すると共に、その装置を使用して検査することにより異物付着の無い高品位の金属多孔体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
金属多孔体上に付着した異物は、金属多孔体が凹凸構造であるため、そのまだら模様の中に隠れてしまい検出が難しいが、光学式であれば、他の検出原理に比べ検出素子を小さくできるので微小な異物と金属多孔体の模様との分離が可能となる。但し、反射光を利用して異物を検出しようとすると、金属多孔体表面の凹凸との分離が難しく、特に、多孔体であるので、表面から光を当てた場合、孔の中に埋没した異物を分離して検出できない。しかし、多孔体が金属でかつ三次元に網目状に形成されているため、光が金属骨格に当たり、散乱しながら透過する機能を利用して、ワークの反対面から光をあて、その透過光の影の部分を見ることにより、容易に異物が分離検出できることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明は以下のとおりである。
【0005】
(1)シート状の三次元網目状の金属多孔体の供給部とこの三次元網目状の金属多孔体の巻取り部とを有し、この間に三次元網目状の金属多孔体をはさみ片面側に発光手段とその反対面にこの透過光を検出する光学検出手段を有する光学検査部を1つもしくは2つ有することを特徴とする三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
(2)前記供給部のシート状の三次元網目状の金属多孔体がロール状に捲回されていることを特徴とする前記(1)に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
(3)前記光学検査部と三次元網目状の金属多孔体巻取り部との間に平面部を有することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
【0006】
(4)前記平面部に異物検出箇所を金属多孔体上に明示するマーキング手段が形成されていることを特徴とする前記(3)に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
(5)前記マーキング手段は異物検出箇所を三次元網目状の金属多孔体走行方向に伸びる2本の線ではさむ位置に存在するように明示することを特徴とする前記(4)に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
(6)前記マーキング手段は異物検出箇所を三次元網目状の金属多孔体走行方向に伸びる1本の線で示し、その線の幅方向の一定距離範囲内に存在するように明示することを特徴とする前記(4)に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
(7)前記マーキング手段は三次元網目状の金属多孔体に開口箇所を設けることにより異物検出箇所を明示する手段であることを特徴とする前記(4)に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
(8)前記マーキング手段は三次元網目状の金属多孔体に光遮蔽部材を貼り付けることにより異物検出箇所を明示する手段であることを特徴とする前記(4)に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
(9)前記光遮蔽部材が前記三次元網目状の金属多孔体と同一組成からなる金属多孔体であることを特徴とする前記(8)に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
【0007】
(10)前記平面部に前記三次元網目状の金属多孔体の切断手段が形成されていることを特徴とする前記(3)〜(9)のいずれかに記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
(11)前記平面部に切断手段で切断された三次元網目状の金属多孔体を接合する接合手段が形成されていることを特徴とする前記(10)に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
【0008】
(12)前記三次元網目状の金属多孔体供給部にテンションコントロール装置を有することを特徴とする前記(1)〜(11)のいずれかに記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
(13)前記三次元網目状の金属多孔体の巻取り速度を制御することにより速度の制御を行う速度制御機構を有することを特徴とする前記(1)〜(12)のいずれかに記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
(14)前記速度制御機構が、三次元網目状の金属多孔体上もしくは三次元網目状の金属多孔体が走行するローラー上に接する回転計により検出された三次元網目状の金属多孔体の速度に基づき制御されることを特徴とする前記(13)に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
(15)前記速度制御機構が、三次元網目状の金属多孔体巻取り部の三次元網目状の金属多孔体径と三次元網目状の金属多孔体の回転速度により検出された三次元網目状の金属多孔体の速度に基づき制御されることを特徴とする前記(13)に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
【0009】
(16)前記平面部の下面の一部に平面状の照明装置を有していることを特徴とする前記(3)〜(15)のいずれかに記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
(17)前記平面状の照明装置の光量が高さ250mmの位置で測定して、200Lux以上1600Lux以下であることを特徴とする前記(16)に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
(18)前記(1)から(17)のいずれかに記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置による異物検出工程を経た二次電池用金属多孔体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、三次元網目状の金属多孔体に付着した異物を連続的に効率よく、容易に、かつ、確実に検出し、その異物の対処が容易にできると共に、この装置を使用して検査することにより異物付着の無い高品位の金属多孔体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置は、シート状の三次元網目状の金属多孔体(以下、ワークとも称す)の供給部とこのワークの巻取り部とを有し、この間にワークをはさみ片面側に発光手段とその反対面にこの透過光を検出する光学検出手段を有する光学検査部を1つもしくは2つ有する。多孔体が金属でかつ三次元に網目状に形成されているため、光が金属骨格に当たり、散乱しながら透過する機能を利用して、ワークの反対面から光をあて、その透過光の影の部分を見ることにより、容易に異物を分離検出することができる。尚、光学検査部を2つ持つ構造では、発光手段をワークの両面に配置し、ワークの両面に光学検査手段を配置することにより、ワークの両面からの異物検出が可能となるため、より精度の高い異物検出が可能となる。
ワーク供給部におけるシート状の三次元網目状の金属多孔体は、生産工程で得られるロール状に捲回したものを用いることができる。
【0012】
三次元網目状の金属多孔体としては、ニッケル、鉄、銅、クロム、アルミニウムなどを主成分とする金属体で、多孔率は92%以上、透光率の面から望ましくは95%以上であり、厚さ0.4mm〜2.2mmのものが好ましい。
【0013】
異物を検出するための光学検査部としては、光学検査手段としてカメラのような2次元撮像素子を使用する場合は、発光手段としてLED等を使用した面発光照明を断続的にストロボ状に発光させて画像を取り込み、異物を検出することができる。この方式により、発光部の発熱量を抑え、かつ、必要な光量を確保することができる。
また、光学検査手段としてラインセンサのような1次元のものを用いることができる。この場合、発光手段としては、棒状のハロゲンランプ等を使用することが好ましい。ハロゲンランプは、高輝度が得られかつ高寿命であるため、この用途に適している。
【0014】
光学検査部では、カメラのような2次元撮像素子や、ラインセンサのような1次元のものを用い、透過光の暗い箇所の面積を積算し、異物を検出する。通常の金属多孔体では、まだら状の光が透過するが、そのまだら模様の面積以上の暗い固まりがあると、そこに異物が付着していると判定することで、異物を検出することができる。異物の付着箇所がワークの上面、内部、下面いずれの場合も透過光を検出することにより、多少のピントのずれが生じることがあるが、異物の検出が可能となる。
【0015】
光学検査部で検知した情報を元にその異物を目視で特定する場合、平面に走行するワークを斜め方向から見ることにより、その異物が特定しやすい。このため、光学検査部の後段に平面部を設けることが好ましい。また、平面部を設けることにより、検知した異物の特定とその異物の除去等の対処の容易に繋がる。
【0016】
光学検査部で異物を検出したとき、その異物の存在箇所をマーキングすることにより、異物の位置の特定が容易になり、異物除去等の対処が容易になる。
多孔体の厚み方向の内部に異物が存在する場合も、表面に存在する場合も、透過光で異物を検出すると、ほぼ同じようにカメラ等で影の検出ができる。内部に異物が存在する場合にも、表面に付着している場合と同様にマーキングは多孔体の表面(ワークの上面)に行なうことが好ましい。
【0017】
マーキングする方法としては、どのような方法でも良いが、例えば、マジック等のマーカーを使用して2本線もしくは1本線でマーキングする方法、マジック等のマーカーを使用しないで開口箇所を設けたり、光遮光部材を貼り付けたりする等の方法が挙げられ、それらのいずれも用いることができる。
【0018】
マジック等のマーカーを使用してマーキングする際、図4に示すようにワークの走行方向に伸びる2本の線でその異物の存在する箇所を挟むようにマーキングすることにより、異物の位置がより明確になるだけでなく、線を引く作業はマーカーを上下するだけで良い為設備が簡素化できる。ワークの端部においては、2本の線を印字できない場合もあるので、その際は、片側に1本だけの線を印字するようにすることもできる。
【0019】
また、マーキングの線は、図5に示すようにワークの走行方向に伸びる1本の線で示し、その線の幅方向の一定距離範囲内に異物が存在するようにすることもできる。1本の線で示す場合は、ワークの進行方向に対して異物の上、下のどちらに示してもよいが、ワークの端部においては印字できない場合は、反対側に印字するようにすることもできる。この場合、異物の位置表示性は低下するが、線を1本引くだけで良いため、マーカーの構造は簡素化され、設備の小型化が可能になる。
2本の線、1本の線でマーキングする際の線の長さは10〜120mmが好ましく、より好ましくは15〜30mmである。印字する線の長さが短すぎる場合、印字無しとなる恐れがあり、長すぎる場合は目視確認領域が拡大するので好ましくない。
【0020】
マジック等のマーカーを使用しない方法として、異物を検出した場合、異物の位置を示すマーキングとして穴あけパンチ等を用いて開口箇所(穴)を設ける加工をワークに施すことができる。この場合、この穴の有無の情報を元に、その後の工程で異物付着個所の自動除去等の加工を容易に行うことができる。
開口の形状は円形であることが好ましい。四角形等の角を有する穴は、穴の隅部(角部)と多孔体の孔の重なり具合が悪い場合には、この箇所からワークが破断しやすくなり、好ましくない。また、穴径は8mm〜35mmの間であることが望ましい。8mm未満では後段で機械が検出する場合に、判別が困難であり、35mmを超えると穴を開けた個所の強度が低下し、ワークが破断するトラブルが発生する。
【0021】
開口箇所は、異物と重なる箇所でも良いが、後段で検査員が異物を確認する場合は、異物の周辺であることが好ましい。穴が異物と重なった場合、異物が穴により除去されてしまうため、検査員はカメラの後段の平坦部で確認除去作業を行う時、その異物を見つけることができない。そのため、無くなってしまった異物を見つけようとして、多大の時間を要することがある。従って、後段で検査員が異物を確認する場合には、異物と穴を重ねない方が作業効率が向上する。
また、開口箇所は、幅方向の一定の位置(複数であっても可)に設けることにより、穴の位置が限定され、次工程でセンサーで穴を検出する場合など検出が容易となるため好ましい。
【0022】
また、異物を検出した場合、その周辺に光遮蔽部材を貼り付けても、この部材の有無の情報を元に、その後の工程で異物付着個所の自動除去等の加工を容易に行うことができる。この際、光遮蔽部材がワークと同一の組成からなる材料であれば、後工程で除去できず混入しても、このワークが使用される製品の特性に悪影響を与えることが無い。更に、金属多孔体であれば、ワークと金属多孔体同士の界面接触となり、上面から軽く圧縮するだけで、両者が自己接着し、特殊な接着剤等を使用しなくても貼り付けが可能である。
光遮蔽部材の大きさは、開口箇所を設ける際の、穴の大きさと同様な大きさのものを用いることができる。
また、光遮蔽部材を貼り付ける位置は、開口箇所を設ける際と同様に、異物の周辺で、幅方向に一定の位置であることが好ましい。
【0023】
異物が検出された場合、その除去方法としては、異物部分を切断除去することにより、より確実に異物を除去することができる。そのため、この平面部にワーク切断手段を設けることが効果的である。
マーカーを用いた場合には、後段で検査員がマーカーを頼りに異物を目視で確認し、異物のみを摘出することができる。また、大きな異物がある場合は、検査員がワーク切断手段を使用し、ワークそのものを手動で切断して、除去することができる。
一方、開口箇所を設ける場合や光遮蔽部材を貼りつける場合は、マーカーの場合と同様に検査員が手動で異物を除去することもできるが、後段で機械的に検出が容易であるため、機械を用いて自動切断が可能となる。
切断手段としては、金属多孔体を切断できるものであれば、特に限定されるものではなく、上下に刃を持つ押し切りカッター方式や下面に樹脂板を敷いている上を円盤状の刃が回転しながら幅方向に移動し切断する方法等、いずれの方法でも、多孔率の大きな多孔体金属であるため、容易に切断することができる。
【0024】
また、接合手段を設け、上記の切断を行った後、切断手段により切断されたワークを接続することにより、連続して検査が可能となる。尚、接合手段はローラーによる圧着接合法が望ましい。この場合、金属多孔体同士の接合となるため、ワークの進行方向に対し垂直に圧力をかけるだけで、接着剤等を使用しなくても容易に接合ができる。
【0025】
ワーク供給部には、テンションコントロール装置を設けることが好ましい。テンションコントロール装置を設置することによりワークのたるみが発生しなくなるため、ワークのたるみに起因する光学検査部の誤検知が減少する。尚、テンションコントロール装置には、メカニカルな構造による一定張力方式とパウダーブレーキなどを使用した可変張力方式があるが、巻取り部での安定巻取りのためには、可変張力方式を使用する方が望ましい。
【0026】
光学的に異物検査を行う場合、光学検査装置が設置された箇所を通過する速度が変化すると、異物の検出精度が低下するだけでなく、検出した異物の位置を示す精度も大幅に低下する。従って、ワーク巻取り速度を制御することによりワークの速度の制御を行う速度制御機構を設け、ワークの速度を一定に保つことが好ましい。ワークの速度を一定に保つことは本発明の装置の機能確保の面で有効である。
【0027】
速度制御機構は、ワークの速度を検出し、ワークの巻取り速度を制御する。
速度の検出方法としては、金属多孔体は光の反射特性が一定でないため、光学法による非接触法等に比べ、接触式で速度を検出する方式の方がより精度良く測定できる。接触式で速度を検出する方式としては、ワーク上もしくはワークが走行するローラー上に接する回転計により速度を検出する方式が好ましく、検出された速度に基づきワークの巻取り速度を制御する。速度計がワークに当接する位置に設置されている場合には、ワークの走行速度を直接検知するので、より精度良く速度を制御することができる。また、ワークと共に回転するローラーに回転計を当てることにより、安定して回転が計測できるだけではなく、金属多孔体に直接当接する場合には、金属多孔体がやすりの様な働きをして、回転計の表面を磨耗させるが、そのような劣化が起こりにくいという効果もある。 設備の構成上、接触式の計測器が使用できない場合、ワークの巻取り部のワーク径に基づきワークの回転速度からワークの走行速度を計算する方法が設備構成上有効である。
【0028】
異物及び/又はマーキングされた箇所を目視で確認する際は、マーキングされていても、金属多孔体の表面に付着した小さな異物をワークが流れている状態で目視確認することは容易ではないが、ワークを平面状に走行させ、その進行方向斜め前から見ると容易に見つけることができることを見出した。
更に、目視で確認する際に、ワークの平面部の目視する側と反対の側の一部に平面状の照明装置を置くと、特殊な形状を持つ異物がより鮮明に目視で確認することができる。尚、平面状の照明装置は前記ワークの幅よりも広いことが望ましい。平面状の照明装置としては、蛍光灯等が挙げられる。また、ワーク走行中にワークと照明装置の距離が変動すると異物を確認する能力が低下するので、一定の距離で変動しないことが望ましい。従って、照明装置の上面に沿ってワークが走行することが望ましい。
【0029】
この照明装置の光量は、見つけようとする異物の大きさにもよるが、平面状の照明装置上にワークが乗っていない状態で、照明装置からの距離250mmの位置で測定した場合、200Lux以上1600Lux以下であることが望ましい。尚、この250mmの位置は、目視検査する作業者の目の位置に相当する。
200Lux以下では、ワークを透過する光量が不足し、照明装置を設置した効果が無い。また逆に、1600Lux以上では、金属多孔体の中を散乱しながら透過してきた光が異物周囲から回り込み、逆に異物が見えなくなる。
【0030】
異物を目視で確認するには、ワークに対して最適な角度があるが、平面部の高さが30cm以下の時、目視確認者の目線にくらべ低くなり目視角度大きくなりすぎ、150cm以上の場合は小さくなりすぎて、目視者が目視角度を調製しても、目視確認が困難となる。
【0031】
この装置を使用して付着異物を検出し、異物を除去した金属多孔体は、異物を確実に除去できるので、異物の付着していると特性が劣化する二次電池用の材料として使用すると効果的である。
【実施例】
【0032】
実施例1
図1は本発明の第1の実施例を示す概略構成図である。
ニッケル成分からなる金属多孔体(多孔率97%、厚さ1.4mm、幅160mm)は、図中左側の供給部に設置されたステンレス金属製のリールに捲回されており、図においては反時計周りに回転しながら、シート状の金属多孔体を送り出している。
この金属多孔体は、その後、搬送用のローラーやワーク押さえローラーを経由し、平面部を通過する。
この平面部において、ワークの下には発光手段として光源(LED)を設置し、ワーク上部には光学検出手段としてカメラを設置している。
このカメラでは、透過光の暗い箇所の面積を積算しており、通常の金属多孔体では、まだら状の光が透過するが、そのまだら模様の面積以上の暗い固まりがあると、そこに異物が付着していると判定する。
この様に異物が検出されると、光源とカメラから構成される光学検査部の後段に配置された市販のマジックからなるマーキングペンで、その異物の周辺に異物の存在を示す印字を行う。
【0033】
印字の方法は、図4に示すように2本の線で挟むように印字するが、ワークの端部においては、2本の線を印字できない場合もあるので、その際は、内側に1本だけの線を印字した。
この様に、マーキングされたワークは、その後段の作業者により異物が除去される。
この際、本実施例では、作業者が目視で確認する位置のワークの反対側に平面状の照明装置を設置し、ワークを平面状に走行させ、その進行方向斜めから確認した。
【0034】
この照明装置の光量は、照明装置から距離250mmの位置で測定した光量が、700Luxであった。また、作業者は、目の位置が照明装置から250mmとなるようにして異物を確認した。
【0035】
この様に、供給部の後段に平坦部を設け、そこに作業者を配置し、ワークを流しながら異物の目視確認とその異物の除去作業を行った。
異物は除去するだけではなく、異物が付着したワーク周辺を切断除去することも可能であり、本実施例では、作業者は手動で切断作業を行っている。
また、切断除去した後、その後のワークは除去部を除いて接続し、継続して巻取り部に巻き取っても良いし、接続作業を行うことなく、切断毎に新たな巻取り用のリールに巻きつけることもできる。本実施例では、切断除去した場合には、切断部の前後を重ね合わせ、その箇所を圧着用のローラーで圧縮することにより、接続し、継続して巻取り部に巻き取った。
一般に、金属多孔体はマジックテープ(登録商標)のような自己接続性が有り、重ね合わせ部を圧縮するだけで接着剤を用いることなく接続が可能となる。
【0036】
本実施例では、カメラによる異物検出、マーキングペンによる印字をコントローラーにより自動的に行っているが、コントローラーでは、更に速度計の情報を元にワーク走行速度の制御も行っている。
速度計は、ワーク抑え用のローラーに当接するように配置し、ワークの速度を12m/分とした。
【0037】
本実施例の発明では、ワークが走行する平坦部の高さを70cmとした。
異物を目視確認するには、ワークに対し一定の角度で見ると容易に見つけることができるが、平坦部の高さが30cm以下や150cm以上であると、作業者は目線の調整を行っても適正な目線の角度を確保できず目視認知性が低下する。
【0038】
実施例2
図2は、本発明の第2の実施例を示す概略構成図である。
本発明の基本的な構成は、第1の実施例と同じである。
主に異なる点とその作用または補足説明は以下である。
1)供給部のリール回転方向と繰り出し位置が異なる:
この様に、供給部及び巻取り部のリール繰り出し位置や回転方向は、なんら本発明に制限を加えるものではない。
2)光学検出部がラインセンサで形成されている:
カメラのような2次元撮像素子を使用せず、1次元のラインセンサを使用しても、ワークが連続的に走行しているので、異物の大きさを計算上認知することができる。
3)ラインセンサと照明が2セットあり上下から検知している:
ワークの上面、下面の両面から付着した異物の検出が可能となる。
4)マーキング装置が穴あけパンチ:
穴あけパンチでマーキングした場合、マーキングした後、実施例1と同様に検査作業者が異物を除去することもできるが、このワークの後工程でこのパンチ穴の情報を元に自動的に切断除去するなどの加工が可能となる。従って、ここでは、検査作業者による異物除去は行わず巻取りを行い、その後工程で光センサーで穴を検出し、その情報をもとに異物の除去を行った。ここでは、第1の実施例で示した目視検査作業者は、異物を除去しなくても良いので、補助的な役割をするだけで良い。
尚、マーキング用の穴は、図6に示すように異物に対し、走行方向で横になる位置に直径20mmの穴を空けた。
但し、異物と穴が重なることを避けるために、異物が図中中心より下にあるときは上に空け、上側にあるときは下側に空けた。
5)速度計がワークに当接する位置に設置されている:
【0039】
実施例3
図3は、本発明の第3の実施例を示す概略構成図である。
本発明の基本的な構成は、第2の実施例と同じである。
主に異なる点は以下である。
1)供給部にテンションコントロール機構が付いている:
このテンションコントロールは、機械的なブレーキ機構を付与することにより行った。また、この制御はコントローラーにより実施している。このようにテンションコントロールを行うことにより、ワークのたるみが無くなる。ワークのたるみが発生すると、光学検知部での透過光量が変動し、誤検知を発生することがあるが、これが防止できた。
2)マーキングは光遮蔽部材として遮光片を貼り付けて行う:
穴あけパンチでマーキングした場合と同様に、異物を除去しなくても、このワークの後工程でこの遮光片の情報を元に自動的に切断除去するなどの加工が可能となる。
ここでは、遮光片として、ワークと同一素材で作られた直径30mmの円形のシートを貼り付けるようにした。
この様に同一の素材を使用すると、仮にこの遮光片がワークに貼り付けられたまま流出しても、後工程で大きな問題となることが無い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の異物検出装置の概略構成を示す概略構成図。
【図2】本発明の他の異物検出装置の概略構成を示す概略構成図。
【図3】本発明の更に他の異物検出装置の概略構成を示す概略構成図。
【図4】本発明のマジックによるマーキングで、2本線で挟んで異物の位置を明示する場合の説明図。
【図5】本発明のマジックによるマーキングで、1本線で異物の位置を明示する場合の説明図。
【図6】本発明の開口箇所を設けることによりマーキングを行う場合の説明図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の三次元網目状の金属多孔体の供給部とこの三次元網目状の金属多孔体の巻取り部とを有し、この間に三次元網目状の金属多孔体をはさみ片面側に発光手段とその反対面にこの透過光を検出する光学検出手段を有する光学検査部を1つもしくは2つ有することを特徴とする三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項2】
前記供給部のシート状の三次元網目状の金属多孔体がロール状に捲回されていることを特徴とする請求項1に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項3】
前記光学検査部と三次元網目状の金属多孔体巻取り部との間に平面部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項4】
前記平面部に異物検出箇所を金属多孔体上に明示するマーキング手段が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項5】
前記マーキング手段は異物検出箇所を三次元網目状の金属多孔体走行方向に伸びる2本の線ではさむ位置に存在するように明示することを特徴とする請求項4に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項6】
前記マーキング手段は異物検出箇所を三次元網目状の金属多孔体走行方向に伸びる1本の線で示し、その線の幅方向の一定距離範囲内に存在するように明示することを特徴とする請求項4に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項7】
前記マーキング手段は三次元網目状の金属多孔体に開口箇所を設けることにより異物検出箇所を明示する手段であることを特徴とする請求項4に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項8】
前記マーキング手段は三次元網目状の金属多孔体に光遮蔽部材を貼り付けることにより異物検出箇所を明示する手段であることを特徴とする請求項4に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項9】
前記光遮蔽部材が前記三次元網目状の金属多孔体と同一組成からなる金属多孔体であることを特徴とする請求項8に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項10】
前記平面部に前記三次元網目状の金属多孔体の切断手段が形成されていることを特徴とする請求項3〜9のいずれかに記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項11】
前記平面部に切断手段で切断された三次元網目状の金属多孔体を接合する接合手段が形成されていることを特徴とする請求項10に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項12】
前記三次元網目状の金属多孔体供給部にテンションコントロール装置を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項13】
前記三次元網目状の金属多孔体の巻取り速度を制御することにより速度の制御を行う速度制御機構を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項14】
前記速度制御機構が、三次元網目状の金属多孔体上もしくは三次元網目状の金属多孔体が走行するローラー上に接する回転計により検出された三次元網目状の金属多孔体の速度に基づき制御されることを特徴とする請求項13に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項15】
前記速度制御機構が、三次元網目状の金属多孔体巻取り部の三次元網目状の金属多孔体径と三次元網目状の金属多孔体の回転速度により検出された三次元網目状の金属多孔体の速度に基づき制御されることを特徴とする請求項13に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項16】
前記平面部の下面の一部に平面状の照明装置を有していることを特徴とする請求項3〜15のいずれかに記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項17】
前記平面状の照明装置の光量が高さ250mmの位置で測定して、200Lux以上1600Lux以下であることを特徴とする請求項16に記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項18】
請求項1から17のいずれかに記載の三次元網目状の金属多孔体の異物検出装置による異物検出工程を経たことを特徴とする二次電池用金属多孔体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−170197(P2008−170197A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1937(P2007−1937)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(591174368)富山住友電工株式会社 (50)
【Fターム(参考)】