説明

金属容器の製造方法、溝加工ツールおよび金属容器

【課題】胴部から上部に縮径する肩部を介して、縮径した開口部を備えた金属製の容器本体の胴部外周に、複数本の環状溝を形成する金属容器の製造方法を提供する。
【解決手段】円筒状の胴部と、その胴部の下端を閉じる底部と、その胴部の上端から縮径するように延びる首部と、その首部の上端の口部とを備えた金属製の容器本体Cを成形し、前記容器本体Cを胴部の軸を中心にして回転させると共に、外周に複数の環状突起14aを有し、回転自在に支持された成形駒14を前記胴部に当接させて、前記胴部側面に複数の環状溝を形成する金属容器の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属容器の製造方法、溝加工ツールおよび金属容器に関する。詳しくは、金属製の容器本体の外周に複数本の環状溝を形成する金属容器の製造方法、金属製の容器本体の外周に複数本の環状溝を形成するための溝加工ツール、および金属容器に関する。
【背景技術】
【0002】
金属容器は様々な用途に用いられており、その形状、大きさも様々なものが製造されている。特に、近年、円筒状の金属容器であって、容器本体の上部に縮径する肩部を介して縮径した開口部を備えた金属容器が多く製造されている。そのような金属容器として、上端にカール部を備えたエアゾール缶、上端にネジ部を備えた金属缶(飲料缶、フェルトペン等)が挙げられる。
【0003】
このような金属製の容器本体の外周への加工方法としては、図9aに示すような加工方法がある。図9aの方法は、ネッキングマシンによりすでにネッキング加工、カール加工が施された容器本体の胴部外周に、環状溝を形成する加工方法を示すものであり、容器本体100の胴部外周に当接され、支持杆101によって回転自在に支持される1つの環状突起103を備えた成形駒102を用いた方法である。この方法は、ネッキングマシンに固定された容器本体100の胴部外周で成形駒102を公転させながら、当接させることにより、成形駒102自身は自転し、成形駒102と容器本体100の胴部外周との間の摩擦により環状溝104が形成される方法である。同様な作用を有する装置が、スカート部成形ロールとして特許文献1に開示されている。
また、金属製の容器本体の外周への他の加工方法としては、図9bに示すような加工方法がある。図9bの方法は、ネッキング加工、カール加工前の有底筒状の容器本体の外周に、環状溝を形成する加工方法を示すものであり、有底筒状の容器本体100を内側から支持するために、容器本体内に挿入されるマンドレル105と、支持杆101によって回転自在に支持される成形駒102とを用いる方法である。この方法は、容器本体100の外周から成形駒102を押圧させることにより容器本体100の外周に環状溝を形成させる方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−154426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図9aあるいは文献1の方法においては、図9bのように容器本体内にマンドレルを挿入して、容器本体を支持しながら成形することはできない。そのため、図9aの方法で、容器本体100の外周に、例えば溝5〜10本を幅広く1回の成形工程で成形するためには、環状突起数が多く、かつ成形駒102の幅(Y)を大きくした成形駒102を用いなければならない。しかし、その場合、加工時に容器本体100と成形駒102との間の摩擦が大きくなりすぎて、加工部位の近辺が撓んだり、加工部位以外が変形したりする欠点がある。また、容器本体100の開口部と容器本体100の胴部外周に形成される溝の下端との距離(X)が大きくなりすぎると、溝成形が不安定になり、均一な環状溝104の形成ができないという欠点がある。このため、図9aあるいは特許文献1の方法では、一般的に一個の環状突起のみを有し、成形駒102の幅(Y)が小さい成形駒102が使用されると共に、容器本体100の開口部からの形成される溝の下端の距離(X)も短く構成されていた。すなわち、成形駒102を用いる図9aの方法では、一回の成形工程で成形できる環状溝の本数、および、容器本体100のカール部上端から環状溝下端までの距離(X)が、X=約20mm、Y=約10mmと限られていた。
【0006】
一方、図9bの方法は、成形駒102の押圧による容器本体100の変形を吸収させるため、ネッキング加工、カール加工前の有底筒状の容器本体内に、弾力性を有するマンドレル105を挿入して成形する方法である。この成形方法では、複数の環状突起を有する一種類の成形駒102で、かつ一度に5〜10本の溝を容器本体100の外周に幅広く成形することができるが、ネッキング加工、カール加工とは別の工程で、専用機を用いて溝の成形を行う必要がある。また溝加工後に、ネッキングマシンによるネッキング加工で肩部、首部等を絞り加工する必要があり、製造工程数も多く製造コストも高くなるという欠点がある。
【0007】
本発明は、一回の成形工程で、容器本体の外周に複数本の環状溝を幅広く均一に成形することができる金属容器の製造方法、溝加工ツールおよび金属容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の金属容器の製造方法は、円筒状の胴部と、その胴部の下端を閉じる底部と、その胴部の上端から縮径するように延びる肩部と、その肩部上端の口部とを備えた金属製の容器本体を成形し、前記容器本体を胴部の軸を中心にして回転させると共に、外周に複数の環状突起を有し、回転自在に支持された成形駒を前記胴部に当接させて、前記胴部側面に複数の環状溝を形成することを特徴としている。
【0009】
このような金属容器の製造方法であって、2個以上の成形駒を、高さが異なるようにして前記胴部に当接させるものが好ましい。そのような方法として、前記成形駒をそれぞれ長さの異なる複数の支持杆の先端に支持させる方法が挙げられる。さらに、前記成形駒をそれぞれ長さの異なる3種類の支持杆の先端に取り付けてもよい。特に、3種類の支持杆をそれぞれ一対、合計6本の支持杆を容器本体の周りに、それぞれの支持杆が相対するように配置し、6本の支持杆に支持される6個の成形駒により、前記胴部側面に複数の環状溝を形成するのが好ましい。前記成形駒が、カム機構により前記胴部に対して接近又は離隔できるようにしてもよい。
【0010】
本発明の溝加工ツールは、斜面を有する円錐台状の基部材と、その基部材に対して上下移動自在に設けられ、上部で金属容器を支持する軸部材と、その軸部材の周りに設けられる複数本の支持杆と、それぞれの支持杆に設けられる外周に複数の環状突起が形成された複数個の成形駒と、それぞれの支持杆の下端に設けられ、斜面を転がる複数個のローラとを有しており、前記支持杆は、略中心部を中心に回転自在に軸部材に取り付けられており、前記支持杆の下端に設けられる複数個のローラは、略同一平面上に並んでおり、前記支持杆に設けられる成形駒の一部は、他の成形駒と高さが異なるように取り付けられており、隣り合う支持杆の下端が引っ張り合うように、バネ等で付勢されていることを特徴としている。このような溝加工ツールであって、前記成形駒がそれぞれ長さの異なる複数の支持杆の先端に支持されているものが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る金属容器の製造方法によれば、一回の成形工程で金属容器の外周に複数本の環状溝を幅広く均一に形成することができる効果を奏する。また円筒状の胴部と、その胴部の下端を閉じる底部と、その胴部の上端から縮径するように延びる肩部と、その肩部上端の口部とを備えた金属製の容器本体を成形(ネッキング加工)した後に、複数の環状溝を成形するため、製造工程数が少なく製造コストが安価な金属容器の製造方法、溝加工ツールおよび金属容器を提供できる効果がある。
【0012】
このような金属容器の製造方法であって、2個以上の成形駒を高さが異なるようにして前記胴部に同時に当接させる場合、互いの成形駒で容器本体を保持(支持)しながら容器本体を変形させることなく多数の環状溝を形成することができる。前記成形駒をそれぞれ長さの異なる複数の支持杆の先端に支持させた場合、金属容器の胴部の任意の部位に複数の環状溝を形成させることができる。本発明において、前記3種類の支持杆がそれぞれ一対あり、合計6本の支持杆が容器本体の周りに、それぞれの支持杆が相対するように配置しており、6本の支持杆に支持される6個の成形駒により、前記胴部側面に複数の環状溝を形成する場合、容器本体を成形駒によって均等に保持(支持)しながら、溝加工を行うことができるため、安定した成形が可能となる。なお、前記成形駒をカム機構により前記胴部に対して接近又は離隔することもできる。
【0013】
本発明の溝加工ツールは、斜面を有する円錐台状の基部材と、その基部材に対して上下移動自在に設けられ、上部で金属容器を支持する軸部材と、その軸部材の周りに設けられる複数本の支持杆と、それぞれの支持杆に設けられる外周に複数の環状突起が形成された複数個の成形駒と、それぞれの支持杆の下端に設けられ、斜面を転がる複数個のローラとを有しており、前記支持杆は、略中心部を中心に回転自在に軸部材に取り付けられており、前記支持杆の下端に設けられる複数個のローラは、略同一平面上に並んでおり、前記支持杆に設けられる成形駒の一部は、他の成形駒と高さが異なるように取り付けられており、隣り合う支持杆の下端が引っ張り合うようにバネで付勢されているため、金属製の容器本体を軸部材に支持させ、そのまま軸部材を下方に押し下げることにより、それと同時に、支持杆も押し下げられる。そのとき、支持杆のローラは軸部材から離れるようにして基部材の斜面を転がるため、成形駒が軸部材に向かうようにして、支持杆は略中心部を中心に回転する。これにより成形駒が容器本体の胴部と当接する。その後、軸部材をモータ等により回転させることにより、成形駒の環状突起が摩擦により容器本体の胴部に環状溝を形成させる。このように、金属製の容器本体の胴部に環状溝を正確に、かつ、容易に形成させることができる。このような溝加工ツールであって、前記成形駒がそれぞれ長さの異なる複数の支持杆の先端に支持されている場合、多数の環状溝を容器本体の胴部に形成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の溝加工ツールの一実施形態を示す側面図である。
【図2】図1の溝加工ツールを用いて金属容器(エアゾール缶)に溝加工を施している状態を示す側面図である。
【図3】図2の溝加工ツールの平面図である。
【図4】本発明の金属缶(エアゾール缶)の製造方法を含んだ工程図である。
【図5】図1の溝加工ツールを備えたネッキングマシンの側面図である。
【図6】図6a、図6bは、それぞれ本発明の製造方法によって製造された金属缶(エアゾール缶)の一形態を示す側面図である。
【図7】図7は、本発明の製造方法によって製造された金属缶の他の形態(フェルトペン用金属缶)を示す側面図である。
【図8】図1の溝加工ツールを用いて図7の金属缶(フェルトペン用金属缶)に溝加工を施している状態を示す側面図である。
【図9】図9a、図9bは、従来の技術を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1の溝加工ツール10は、円筒状の容器本体Cの胴部に環状溝を加工するためのものであり、円錐台状の基部材11と、その基部材11に対して上下移動自在に設けられた軸部材12と、この軸部材12の周りに設けられた支持杆13と、この支持杆13の先端に設けられる成形駒14と、この支持杆13の下端に設けられるローラ15と、隣り合う支持杆13の下端を引っ張るバネ16とを有している。軸部材12と成形駒14とは、軸部材12が上下移動するのに応じて成形駒14が半径方向に移動するようにカム機構を構成している。なお、円錐台状の基部材11は、上面11aと、テーパー状の斜面11bとを備えており、上面11aには中心孔が形成されている。
【0016】
軸部材12は、柱状の軸本体17と、その軸本体の中部から放射状に延びる腕部18とからなる。軸本体17の下部は、前記基部材11の中心孔内に挿入され、軸本体17の上部は、溝加工を行うときに容器本体Cを受ける中子19が設けられている。また、軸本体17の下部には、軸本体17が中心孔から抜け落ちないようにロック機構が設けられているのが好ましい(図示せず)。中子19は、容器本体C内に挿入される挿入部19aと、その下端に形成されたフランジ部19bとからなり、挿入部19aとフランジ部19bとの間の段部にて容器本体Cの先端開口部を支持する。腕部18は、6本等間隔に設けられており、軸本体17から水平に延びる水平部18aと、その先端に設けられた上方に向いた垂直部18bとを有している。
【0017】
支持杆13は、中間部が軸部材の腕部17に対して、取り付けピン17aを中心に回転自在に取り付けられている。また、支持杆13の上端には成形駒14が支持杆13の軸を中心に対して回転自在に取り付けられており、下端にはローラ15が支持杆13の軸に対して垂直な軸を中心に対して回転自在に取り付けられている。
また、図3に示すように、軸部材12には、6本の支持杆13が環状に取り付けられている。さらに、支持杆13は、長さが異なる3種類(支持杆(長)13a、支持杆(中)13b、支持杆(短)13c)が、軸部材の腕部17に、2本ずつ相対するように、かつ、支持杆13の下端が略同一平面上に並ぶように(図1参照)取り付けられている。支持杆13の長さは、容器本体Cの胴部に形成される環状溝の溝数によって適宜に変えることができるが、例えば、支持杆(長)13aの長さは、80〜130mm、特に、100〜110mmが好ましい。支持杆(中)13bの長さは、70〜120mm、特に、90〜100mmが好ましい。支持杆(短)13cの長さは、60〜110mm、特に、80〜90mmが好ましい。
【0018】
成形駒14は、円筒状のものであり、外周に複数本の環状突起14aが形成されている。本実施形態では、3本の環状突起が設けられている。成形駒14の幅(L)は、8〜12mm、好ましくは10mmであり、また環状突起の数は、容器本体と環状突起とを摩擦させることにより、近辺が撓んだり、加工部位以外が変形したりしないように、3〜9本、特に3〜6本が好ましい。さらに、成形駒14は自転自在にして支持杆13の上端に取り付けられている。しかし、それぞれ相対する成形駒14が長手方向に対する位置(高さ)が異なるようにして取り付けられていれば、特に支持杆の上端でなくてもよい。特に、それぞれの成形駒14の位置が、それぞれ支持杆13の軸を同じにした場合、環状突起14aが等間隔で並ぶように設けるのが好ましい。これにより容器本体の胴部に形成される多数の環状溝を等間隔に形成させることができる。
【0019】
ローラ15は、円筒状のものであり、外周が基部材11の斜面11bに対して転がるようにして、支持杆13の下端に取り付けられている。バネ16は、図3に示すように、それぞれ隣り合う支持杆13の下端と引っ張りあうように6本設けられている。溝加工ツール10はこのように構成されているため、外力を受けていない場合、図1に示すように、引っ張りバネ16により6本の支持杆13の下端が互いに引き寄せられ、支持杆13の下端により形成される円が最小となり、軸部材12は上に移動する。このとき、ローラ15も下端が縮小すると共に、基部材11の斜面11bを上に向かって転がる。それにより、それぞれの支持杆13は腕部18を中心に下端が軸部材12に向かうように、上端が軸部材12から離れるようにして回転する。つまり、溝加工ツール10は、上部が開いた状態となる。
【0020】
この状態で、溝加工ツール10の上部から容器本体Cを支持杆13の間に入れ、さらに、容器本体C内に中子18を挿入して、容器本体Cの開口部を中子19のフランジ部19bに当接させ、さらに、軸部材12を基部材11内に押し込むように押圧する。これにより、図2に示すように、軸部材12が下降し、それと共に、ローラ15も基部材11の斜面11bを下方に転がる。このとき、それぞれの支持杆13は腕部18を中心に下端が軸部材12から離れるように、上端が軸部材12に向かうように回転(揺動)する。つまり、支持杆13の下端による円が拡径し、反対に支持杆13の上端による円が縮径して、成形駒の環状突起14aが容器本体Cの胴部と当接、あるいは胴部を押圧し、容器本体Cを保持する。
【0021】
ついで、容器本体Cを保持させながら、溝加工ツール10全体を回転させると、支持杆13は容器本体Cの周りを成形駒14と共に回転(公転)し、成形駒の環状突起14aと容器本体Cの外周との間の摩擦により容器本体Cの胴部外周に溝が形成される。このとき成形駒14は回転自在に構成されているため、成形駒14は容器本体Cの胴部上を回転(自転)しながら環状溝を形成する。また、相対する成形駒14は、それぞれ容器本体の胴部を挟んでいるため、容器本体Cを保持し、容器本体Cのずれや外れを防止する。このように3つの位置(高さ)にある成形駒14により、容器本体Cの外周に溝加工を施しているため、容器本体Cの広い部位に、溝加工を一度で成形することができる。
【0022】
次に、本発明の溝加工ツールを用いた金属缶の製造方法を示す。図4に示す工程は、エアゾール製品の製造工程であり、金属スラグからエアゾール製品に至るまでの製造工程を示す。本発明の溝加工ツールによる工程は、工程(i)に該当する。工程(a)(b)(c)は、有底筒状体Aの成形工程であり、金属スラグからインパクト成形により有底筒状体Aに成形される。ついで、有底筒状体Aの外面の洗浄および外面塗装(工程(d))、さらには、有底筒状体Aの内面の洗浄および内面塗装(工程(e))が施される。その後、有底筒状体Aにネッキング加工が施され(工程(f)(g))、さらには、上端にカール加工(工程(h))が施される。これにより、円筒状の胴部と、その胴部の下端を閉じる底部と、その胴部の上端から縮径するように延びる首部と、その首部の上端の口部とを備えた金属製の容器本体Cが成形される。そして、容器本体Cの成形後、胴部の上部に複数の環状溝Gが形成され(工程(i))、金属缶が成形される。最後に、金属缶の外面の洗浄および外面塗装が再度行われ(工程(j))、製品として出荷される。この実施形態では、容器本体の製造方法として、インパクト成形によって成形される一体成形型の容器本体を開示したが、底部と円筒状の胴部とからなるツーピース型の容器本体を用いても良い。
【0023】
本発明の溝加工ツール10を図4の製造工程に使用する場合、例えば、図5に示すように、ネッキングマシン30に溝加工ツール10を組み入れることができる。このネッキングマシン30は、水平方向に往復運動可能な円板状の往復可動盤31と、間欠回転盤32とからなる。往復可動盤31には、開口絞り金型33a、33bと、先端シェービングツール34と、カーリング成形ツール35と、本発明の溝加工ツール10とが等間隔で、環状に設けられている。また、溝加工ツール10には、ツール自体が回転できるように、モーター等の駆動装置(図示せず)が設けられている。さらに、往復可動盤31は、カム機構等によって上下の往復運動が行われる。
【0024】
間欠回転盤32には、容器保持具36a〜eが、容器本体の絞り率等に対応して、環状に複数個、適宜間隔の角度で設けられており、往復可動盤31を間欠回転盤32に接近させたとき、金型33a、33b、先端シェービングツール34、カーリング成形ツール35、溝加工ツール10が、それぞれの容器保持具36a〜eに保持された有底筒状体Aあるいは容器本体Cを加工できるように構成されている。つまり、容器保持具36a〜eは、各加工ステーションとして適宜間隔の角度で設けられている。また、このとき、間欠回転盤32は間欠的に回転し、容器保持具36に保持された有底筒状体Aまたは容器本体Cは随時次の加工を施すことができる。その数および間欠回転の角度は、容器本体の絞り率等に対応して、往復可動盤31に設けるツール数との組み合わせで適宜設定することができる。そして、このネッキングマシン30は、図5の工程(f)〜工程(i)までを行うものであり、工程(e)が完了した有底筒状体Aを、金型33aに対応する間欠回転盤の容器保持具36aに順次載せていくことにより、最終工程(j)の前工程である工程(i)において、間欠回転盤32の容器保持具36eに容器本体Cが保持され、溝加工ツール10により溝加工が施され、連続的に金属容器が製造される。
【0025】
次にこの溝加工ツール10によって成形される金属容器を説明する。図6a、bのエアゾール缶40a、40bは、円筒状の胴部41と、その胴部の下端を閉じる底部42と、その胴部上端から縮径するテーパー状の肩部43と、その肩部43の上端に形成されるカール部44とからなっており、胴部上端外周から下方に向かって9本の環状溝45が形成されている。図6aのエアゾール缶40aは、胴部41と肩部43との間が湾曲状に連続しているのに対し、図6bのエアゾール缶40bは、胴部41と肩部43との間が屈曲している点で相違している。他の構成は、実質的に同じものである。このような金属容器の胴部41の環状溝45は、金属容器を把持するときの滑り止めになり、また、装飾性を向上させる。本発明に係る金属容器の製造方法、溝加工ツールにより製造されたこれらのエアゾール缶40a、40bにおいて、複数本の環状溝45がカール部44から50mm(A≧17mm(カール部から胴部上端の距離))以上離れたところまで加工され、かつその加工幅は32mm以上可能となった。
【0026】
上記の実施形態は、エアゾール容器を製造する方法を開示したが、金属製の容器であればその容器種類は特に限定されない。図8に示すように、この金属缶40cに対しても、同様に本発明に係る溝加工ツール10によって溝加工を施すことができる。図7は、溝加工が施されたフェルトペンに用いる金属缶40cを示す。この金属缶40cは、円筒状の胴部41と、その胴部の下端を閉じる底部42と、その胴部上端から縮径するテーパー状の肩部43と、その肩部の上端に形成される口部46とからなっており、口部外周にネジ部47が形成されており、胴部上端外周から下方に向かって9本の環状溝45が形成されている。そして、金属缶40cの口部46に、ペン先48が取り付けられてフェルトペンとなる。本発明に係る金属容器の製造方法、溝加工ツールにより製造されたこれらの金属缶40cにおいては、同様に環状溝45は、口部46の端面46から、50mm(A≧15mm(口部から胴部上端))以上離れたところまで加工され、かつその加工幅は32mm以上可能となった。
【符号の説明】
【0027】
A 有底筒状体
C 容器本体
10 溝加工ツール
11 基部材
11a 上面
11b 斜面
11c 中心孔
12 軸部材
13 支持杆
14 成形駒
14a 環状突起
15 ローラ
16 バネ
17 軸本体
18 腕部
18a 水平部
18b 垂直部
19 中子
19a 挿入部
19b フランジ部
30 ネッキングマシン
31 往復可動盤
32 間欠回転盤
33a、33b 開口絞り金型
34 先端シェービングツール
35 カーリング成形ツール
36a〜e 容器保持具
40a、b エアゾール缶
42 底部
43 肩部
44 カール部
45 環状溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の胴部と、その胴部の下端を閉じる底部と、その胴部の上端から縮径するように延びる肩部と、その肩部上端の口部とを備えた金属製の容器本体を成形し、前記容器本体を胴部の軸を中心にして回転させると共に、外周に複数の環状突起を有し、回転自在に支持された成形駒を前記胴部に当接させて、前記胴部側面に複数の環状溝を形成する、金属容器の製造方法。
【請求項2】
2個以上の成形駒を、高さが異なるようにして前記胴部に当接させる、請求項1記載の金属容器の製造方法。
【請求項3】
前記成形駒が、それぞれ長さの異なる複数の支持杆の先端に支持されている、請求項2記載の金属容器の製造方法。
【請求項4】
前記成形駒が、それぞれ長さの異なる3種類の支持杆の先端に取り付けられている、請求項3記載の金属容器の製造方法。
【請求項5】
前記3種類の支持杆がそれぞれ一対あり、合計6本の支持杆が容器本体の周りに、それぞれの支持杆が相対するように配置されており、
6本の支持杆に支持される6個の成形駒により、前記胴部側面に複数の環状溝を形成する、請求項4記載の金属容器の製造方法。
【請求項6】
前記成形駒が、カム機構により前記胴部に対して接近又は離隔できる、請求項1記載の金属容器の製造方法。
【請求項7】
斜面を有する円錐台状の基部材と、その基部材に対して上下移動自在に設けられ、上部で金属容器を支持する軸部材と、その軸部材の周りに設けられる複数本の支持杆と、それぞれの支持杆に設けられ、外周に複数の環状突起が形成された複数個の成形駒と、それぞれの支持杆の下端に設けられ、斜面を転がる複数個のローラとを有しており、前記支持杆は、略中心部を中心に回転自在に軸部材に取り付けられており、前記支持杆の下端に設けられる複数個のローラは、略同一平面上に並んでおり、前記支持杆に設けられる成形駒の一部は、他の成形駒と高さが異なるように取り付けられており、隣り合う支持杆の下端が引っ張り合うように付勢されている、溝加工ツール。
【請求項8】
前記成形駒が、それぞれ長さの異なる複数の支持杆の先端に支持されている、
請求項7記載の溝加工ツール。
【請求項9】
請求項1〜6記載の金属容器の製造方法で造られたことを特徴とする金属容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−62707(P2011−62707A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213183(P2009−213183)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000238614)武内プレス工業株式会社 (72)
【Fターム(参考)】