説明

金属層を有する熱可塑性成形物品

金属層を有する少なくとも1つの表面を有する熱可塑性成形物品が開示され、その物品は、前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)反復単位と前記環状二量体の重量に対して、核磁気共鳴分析法で決定される環状二量体含有率1.1重量%以下;および固有粘度0.9〜約2.0dL/gを有する、ポリ(トリメチレンテレフタレート)成形用樹脂を含む。好ましくは、金属層はアルミニウムである。成形品は、ヘッドライト用べゼル、テールライト用べゼル、方向指示ライト用べゼルおよび車内ライト用べゼルなどの車両ライト用ベゼルを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(トリメチレンテレフタレート)成形用樹脂を含む熱可塑性成形物品に関し、その物品は金属層を有する少なくとも1つの表面を有する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリマーを含む成形物品は、光反射板の製造において、例えば自動車ヘッドライトのエクステンション部分、ベゼルおよび反射板において、屋内照明に、車内照明等に有用である。例えば、国際公開第2008/066988号パンフレットには、ベースコートを含有することなく直接金属被覆することができる、照明物品の製造において有用な熱可塑性ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)とポリ(エチレンテレフタレート)(PET)を含む組成物が開示されている。
【0003】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)ポリエステルは、他のポリエステル樹脂、つまりPBTと同様な物理的性質および加工性を提供することから、エンジニアリング樹脂用途で使用される、もう1つの魅力的な材料である。さらに、PTTは、再生可能資源材料から一部誘導される持続可能な製品であり得る。かかる1つのPTT再生可能資源材料は、E.I.du Pont de Nemours & Co.,Inc.Wilmington,DE,USAから入手可能なSorona(登録商標)ポリマーである。
【0004】
環状オリゴマー1.4〜1.8重量%を通常有するPETまたはPBTなどの類似のポリエステルと比較した場合に、PTTは、高い環状オリゴマー平衡濃度、樹脂重量に対して通常約2.5重量%を有する。PTTの最も豊富な環状オリゴマーは環状二量体である。PTT樹脂成形品が、通常の温度条件(80〜160℃)より高い温度条件にさらされた場合、PTTの環状二量体は、成形品の表面にブルーミングし、その結果、好ましくない外見上の欠陥が生じることが確認される。黒色部品(カーボンブラックを含有する)の表面は、環状二量体の結晶質粉末で白くなる。ポリマー組成物、特にポリエステル組成物およびポリエステル成分を有するポリマー組成物についての関連する問題は、加熱した場合の、「ガス放出物」と呼ばれる低分子量成分の放出である。これは、そのすべてがランプによって加熱される、ベゼル、ランプのハウジングまたはランプの反射板など、高温にしばしば、または絶えずさらされるポリマー部品における特有の問題である。
【0005】
ガス放出物は、「揮発性」または「凝縮性」として分類される。揮発性のガス放出物は、香味物質または臭気物質などの低分子量気体成分からなる。凝縮性ガス放出物とは、熱または周囲条件下にて発生し、かつ相対的により冷たい表面で凝縮する成分であって、曇りまたは膜として認められる油状、ワックス状または固形沈着物を形成する成分を意味する。この作用は、「フォギング(fogging)」としても知られる。
【0006】
凝縮性ガス放出物は、高度な表面完全性を持たなければならない構成部品において、および膜または沈着物が知覚されやすく、かつ光の良好な透過が重要である光学的部品において、特有の問題である。例えば、ヘッドランプの従来のベゼルは、ポリエステル、例えばPBTなどの熱可塑性物質で作られていることが多い。自動車のヘッドランプ組立品は、ハウジングと、ポリカーボネートから通常製造されている透明レンズカバーとの内部に密閉された、金属被覆反射板、ライト構成部品および電気コネクター、ヘッドランプ・アジャスター等を含む密閉システムである。この組立品内で、ベゼルは、内部の仕組みを隠すために電球および反射板の周囲に取り付けられたカバーである。ベゼルは、審美的/可視的部品であり、見栄えがよく見えるように設計される。高度の表面完全性が必要とされる。熱可塑性べゼルのいくつかの設計タイプがある:
金属被覆ベゼル:射出成形した後、ベゼルのポリマー面を金属コーティング、通常アルミニウムでめっきする。ポリマー面は、目に見える表面欠陥がなく、非常に高い光沢の表面を有することが必要とされる場合が多い。表面下塗り剤を使用することなく、スパッタリングまたは蒸着法などの真空めっき法を用いた、直接的な金属被覆プロセスが好ましい。
【0007】
非金属被覆ベゼル:かかるべゼルは、艶消し、または表面模様付きの外観を有し得る。
【0008】
組み合わせベゼル:金属被覆部品と非金属被覆部品との組み合わせ。
【0009】
ベゼルは、反射板と電球を取り囲み、透明レンズ/ヘッドランプカバーの後ろに密閉される。電球の熱または強い太陽光などの周囲条件のために長時間にわたって熱にさらされると、従来のポリエステル製ベゼルからの凝縮性ガス放出物は透明ヘッドランプカバー上で凝縮し、レンズ上の目に見える膜または付着物を形成し、見た目が悪いだけでなく光透過も減少させる。
【0010】
さらに、凝縮性ガス放出物は、ポリマー部品の成形において問題を引き起こす。ポリマー部品を射出成形によって製造する間、凝縮性ガス放出物種が例えば、型/ツール表面に徐々に放出されることによって、成形品に曇った表面欠陥の外観が生じ得る。かかる欠陥は、滑らかな、欠陥のない仕上げが望まれる、べゼルなどの部品において特に好ましくない。かかる欠陥は時に、暗色で成形された部品で目に見え、直接的な金属被覆工程後にさらに目に見えるようになり得る。連続的な成形作業中のこの欠陥の蓄積を防ぐために、製造者らは、ツールクリーニングのために成形機を定期的に停止しなければならない。この結果、時間をロスし、成形品のコストが高くなる。型/ツール上のかかる低分子量膜の形成は、金型付着物と呼ばれる。
【0011】
さらに、凝縮性ガス放出物種は、直接金属被覆されたポリマー表面上に欠陥をもたらす可能性がある。例えば、直接金属被覆された熱可塑性ベゼル上の金属コーティングの微小割れは時に、加熱された場合に起こることがある。凝縮性ガス放出物種は、これらの亀裂を通って金属被覆表面上に移動し、高光沢金属被覆表面の曇りまたは反射率の低下(「ヘーズ」)が生じる。
【0012】
国際公開第2004/106405号パンフレットには、0.3重量%未満の「環状二量体」含有率を有するPBT組成物を使用することを含む、ポリブチレンテレフタレート(PBT)組成物における凝縮性ガス放出物を低減する方法が開示されている。
【0013】
金属被覆層を有する熱可塑性成形品で使用するための、凝縮性ガス放出物および熱老化に由来するブルーミングのレベルが低減された、ポリエステル組成物またはポリエステル成分を有するポリマーが依然として必要とされている。
【0014】
米国特許第6441129号明細書(Duhら)には、増加した固相重合速度でPTTを製造するプロセスが開示されている。このプロセスによって提供されるPTTにおける環状オリゴマーの濃度は開示されていない。Duhは、J.Appl.Polymer Sci.,Vol 89,3188−3200(2003)に具体的な固相重合プロセスも開示している。
【0015】
米国特許第7332561号明細書には、環状二量体含有率1・5重量%以下を有する微粒子状のPTT組成物、およびその組成物を製造するプロセスが開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様は、
a)ポリ(トリメチレンテレフタレート)反復単位および末端基を含むポリ(トリメチレンテレフタレート)成形用樹脂であって、前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)反復単位と前記環状二量体の重量に対して、核磁気共鳴(NMR)分析法で決定される1.1重量%以下の環状二量体含有率;および範囲0.9〜2.0dL/gの固有粘度を有するポリ(トリメチレンテレフタレート)成形用樹脂;
b)金属層を有する少なくとも1つの表面;
を含む熱可塑性成形物品である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】環状二量体約2.7重量%を有する市販のPTT樹脂のNMRスペクトルの芳香族領域を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に開示される熱可塑性成形物品は、前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)反復単位と前記環状二量体の重量に対して、核磁気共鳴(NMR)分析法で決定される1.1重量%以下、好ましくは約0.65〜約1.1重量%、および約0.7〜約1.0重量%の環状二量体含有率;および固有粘度約0.9〜約2.0dL/g、好ましくは約0.9〜約1.30dL/g、約0.9〜約1.20dL/g;および約1.0〜約1.10dL/gを有する、「PTT成形用樹脂」と呼ばれるポリ(トリメチレンテレフタレート)樹脂組成物を必要とする。
【0019】
上記で定義される特性を有するPTT成形用樹脂は、以下に開示されるPTT粒子の固相重合によって製造することができる。固相重合プロセスによって提供されるPTT成形用樹脂は、(1)溶融試験時の環状二量体の形成率;(2)成形品表面への環状二量体のブルーミング;および(3)成形品を熱老化させた場合の環状二量体および他のオリゴマーのガス放出物;に関して、驚くべき、かつ意外な特性を示す。
【0020】
固相重合プロセスは、(a)ペレットサイズ3.0〜4.0g/100ペレットを有する複数のペレットの形状でポリ(トリメチレンテレフタレート)反復単位を含む初期ポリ(トリメチレンテレフタレート)樹脂を提供する工程であって、前記の初期ポリ(トリメチレンテレフタレート)樹脂組成物が、初期環状二量体含有率および1種または複数種の縮合触媒を有し;前記の初期ポリ(トリメチレンテレフタレート)樹脂組成物が、固有粘度0.50〜0.89dL/gを有する工程;(b)前記の複数の樹脂ペレットを縮合時間の間、縮合温度に加熱し、攪拌して、ポリ(トリメチレンテレフタレート)反復単位を有し、かつ核磁気共鳴分析法で決定される1.1重量%以下の低環状二量体含有率および範囲0.9〜2.0dL/gの固有粘度を有する前記高粘度PTT成形用樹脂を提供する工程であって、前記環状二量体含有率が、前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)反復単位と前記環状二量体の重量に対するものである、工程;を含む、低環状二量体含有率を有する高粘度PTT成形用樹脂を製造するプロセスである。
【0021】
固相重合プロセスにおいて有用な初期PTT樹脂組成物は、ポリ(トリメチレンテレフタレート)反復単位および末端基を含み、ペレットサイズ3.0〜4.0g/100ペレット;一実施形態では3.0〜3.4g/100ペレットを有する複数のペレットの形状をとる。初期PTT樹脂組成物は、一般に約2.5%であるが、約1.5〜約3.0重量%の範囲であり得る、初期環状二量体含有率を有する。種々の実施形態において、初期環状二量体含有率は、前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)反復単位と前記環状二量体の重量に対して、約2.0〜3.0重量%および約2.3〜約2.8重量%である。初期PTT樹脂組成物は、固有粘度0.50〜0.89dL/g、他の実施形態においては、固有粘度0.60〜0.89dL/g、0.63〜0.89dL/g、および0.63〜0.80dL/gを有する。
【0022】
初期PTT樹脂組成物として有用なPTTは、テレフタル酸または酸同等物および1,3−プロパンジオールの重縮合によって製造される種類のPTTであり;その1,3−プロパンジオールは好ましくは、再生可能資源から生化学的に得られる種類であり、すなわち「生物由来の」1,3−プロパンジオールである。
【0023】
上記で示されるように、初期PTT樹脂組成物は、支配的な量(predominant amount)のポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む。
【0024】
本発明で使用するのに適しているポリ(トリメチレンテレフタレート)は、当技術分野でよく知られており、好都合なことに、1,3−プロパンジオールとテレフタル酸またはテレフタル酸同等物との重縮合によって製造される。
【0025】
「テレフタル酸同等物」とは、当業者によって一般に認識されるように、高分子グリコール類およびジオール類との反応において実質的にテレフタル酸のように働く化合物を意味する。テレフタル酸同等物としては、例えば、エステル類(ジメチルテレフタレートなど)、および酸ハロゲン化物(例えば、酸塩化物)および無水物などのエステル形成誘導体が挙げられる。
【0026】
テレフタル酸およびテレフタル酸エステルが好ましく、ジメチルエステルがさらに好ましい。PTTを製造する方法が、例えば米国特許第6277947号明細書および権利者が共通の米国特許出願第11/638919号明細書(2006年12月14日出願、タイトル「Continuous Process for Producing Poly(trimethylene Terephthalate)」)で考察されている。
【0027】
1,3−プロパンジオールの特に好ましい資源は、再生可能な生体源を用いた発酵プロセスによるものである。再生可能な資源からの出発原料の説明的な例として、トウモロコシ供給原料などの生物学的および再生可能な資源から製造される供給原料を用いる、1,3−プロパンジオール(PDO)への生化学的経路が記述されている。例えば、グリセロールを1,3−プロパンジオールに転化することができる菌株は、クレブシエラ属(Klebsiella)、シトロバクター属(Citrobacter)、クロストリジウム属(Clostridium)、およびラクトバシラス属(Lactobacillus)の種で見出される。その技術は、先に組み込まれている米国特許第5633362号明細書を含むいくつかの特許公開に開示されており、参照により本明細書に組み込まれる。米国特許第5821092号明細書には特に、組換え生物を使用して、グリセロールから1,3−プロパンジオールを生物学的に製造するプロセスが開示されている。このプロセスでは、1,2−プロパンジオールに対して特異性を有する、異種pduジオールデヒドラターゼ遺伝子で形質転換された大腸菌(E.coli)が取り入れられる。形質転換された大腸菌(E.coli)は、炭素源としてのグリセロールの存在下で増殖され、1,3−プロパンジオールは増殖培地から単離される。細菌と酵母のどちらもグルコース(例えば、トウモロコシ糖)または他の炭水化物をグリセロールへと転化することができることから、これらの特許公開に開示されるプロセスは、1,3−プロパンジオールモノマーの迅速な、安価な、かつ環境的に信頼できる源を提供する。
【0028】
例えば、上記に記述かつ参照されたプロセスによって製造される生物由来の1,3−プロパンジオールは、1,3−プロパンジオールを製造するための供給原料を構成する、植物によって取り込まれた大気中の二酸化炭素からの炭素を含有する。このように、本発明の文脈で使用するのに好ましい生物由来の1,3−プロパンジオールは、再生可能な炭素のみ含有し、化石燃料ベースの炭素も石油ベースの炭素も含有しない。したがって、生物由来の1,3−プロパンジオールを用いた、それをベースとするPTTは、使用される1,3−プロパンジオールが減少している化石燃料を枯渇させず、分解すると炭素を放出して大気中に戻し、それがもう一度植物によって使用されることから、環境への影響は少ない。したがって、本発明の組成物は、石油をベースとするジオールを含む類似の組成物よりも自然であり、かつ環境への影響が少ないと特徴付けられる。
【0029】
生物由来の1,3−プロパンジオール、およびそれをベースとするPTTは、二重(dual)炭素同位体フィンガープリント法によって、石油化学資源または化石燃料炭素から製造される類似の化合物と区別される。この方法では有用なことに、生物圏(植物)成分の成長の源(あるいは、年月)によって、化学的に同一の物質を区別し、炭素物質を割り当てる。同位元素、14Cおよび13Cは、この問題に補足的な情報をもたらす。核半減期5730年を有する放射性炭素年代測定同位体(14C)は明瞭に、化石(「死んでいる」)と生物圏(「生きている」)供給原料の間に炭素試料を割り当てることを可能にする(Currie,L.A.“Source Apportionment of Atmospheric Particles,”Characterization of Environmental Particles,J.Buffle and H.P.van Leeuwen,Eds.,1 of Vol.I of the IUPAC Environmental Analytical Chemistry Series(Lewis Publishers,Inc)(1992)3−74)。放射性炭素年代測定における根本的な仮定は、大気中の14C濃度の定常性によって、生体における14Cの定常性が導かれることである。単離された試料を扱う場合に、試料の年齢は、以下の関係:
t=(−5730/0.693)ln(A/A0
【0030】
(式中、t=年齢であり、5730年は放射性炭素の半減期であり、AおよびA0はそれぞれ、試料と現代標準の14C比放射能である)によって、おおよそ導き出される(Hsieh,Y.,Soil Sci.Soc.Am J.,56,460,(1992))。しかしながら、1950年以後の大気圏内核実験および1850年以後の化石燃料の燃焼のために、14Cは、第2の地球化学的時間特性を獲得している。大気中CO2の、従って生物圏におけるその濃度は、1960年代中盤の核実験のピークには約2倍になった。以来、それは7〜10年のおおよその減衰「半減期」で、定常状態の宇宙線起源(大気中)の基線同位体比率(14C/12C)約1.2×10-12に徐々に戻っている。この半減期は、文字通りに解釈してはならない;それどころか、核時代開始以来の大気圏および生物圏14Cの変化を追跡するために、詳細な大気圏の核入力/崩壊関数を使用しなければならない。最近の生物圏炭素の年代測定の将来性を与えるのは、この後者の生物圏14C時間特性である。14Cは、加速器質量分析法(accelerator mass spectrometry(AMS))によって測定することができ、結果は、「現代炭素率」(fM)の単位で与えられる。fMは、それぞれシュウ酸標準物質HOxIおよびHOxIIとして知られる、米国の国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology(NIST))の標準参照物質(Standard Reference Material(SRM))4990Bおよび4990Cによって定義される。根本的な定義は、0.95×14C/12C同位体比×HOxIに関係する(西暦1950を基準とする)。これは、減衰補正された産業革命前の木にほぼ等しい。現在の生物圏(植物材料)については、fMおよそ1.1である。
【0031】
したがって、生物由来の1,3−プロパンジオール、および生物由来の1,3−プロパンジオールを含む組成物は、14C(fM)および二重炭素同位体フィンガープリント法に基づいて、その石油化学由来の相当物と完全に区別され、問題の新規の組成物が示される。これらの生成物を区別する能力は、これらの材料を商取引において追跡するのに有益である。例えば、「新しい」および「古い」炭素同位体プロファイルを含む生成物は、「古い」材料のみで作られた生成物と区別される。したがって、本発明の材料は、競合物を定義する目的で、貯蔵寿命を決定するために、特に環境への影響を評価するために、その固有のプロファイルに基づいて商取引において追跡することができる。
【0032】
好ましくは、PTTの製造において、反応物として、または反応物の成分として使用される1,3−プロパンジオールは、ガスクロマトグラフィー分析によって決定される、約99重量%を超える、さらに好ましくは約99.9%を超える純度を有する。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7038092号明細書に開示される、精製1,3−プロパンジオールが特に好ましい。
【0033】
精製1,3−プロパンジオールは好ましくは、以下の特性:
(1)紫外線吸収が220nmで約0.200未満、250nmで約0.075未満、および275nmで約0.075未満;および/または
(2)CIELAB「b*」色値(ASTM D6290)が約0.15未満、および270nmでの吸光度約0.075未満を有する組成;および/または
(3)過酸化物組成が約10ppm未満;および/または
(4)全有機不純物(1,3−プロパンジオール以外の有機化合物)の濃度が、ガスクロマトグラフィーによって測定されて約400ppm未満、さらに好ましくは約300ppm未満、またさらに好ましくは約150ppm未満;
を有する。
【0034】
本発明において有用なPTTは、単独での、またはブレンドでの、PTTホモポリマー(1,3−プロパンジオールおよびテレフタル酸および/または同等物から実質的に誘導される)およびコポリマーであることができる。本発明で使用されるPTTは、1,3−プロパンジオールおよびテレフタル酸(および/またはジメチルテレフタレートなどのその同等物)から誘導された反復単位を約70モル%以上含有する。
【0035】
一実施形態において、固相重合プロセスにおいて有用な初期ポリ(トリメチレンテレフタレート)樹脂およびPTT成形用樹脂はさらに、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、およびその誘導体、例えばこれらのカルボン酸のジメチル、ジエチル、またはジプロピルエステル;およびジオール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−、1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群から選択されるモノマーから形成される、ポリ(トリメチレンテレフタレート)以外の反復単位を0.1〜30モル%含む。
【0036】
さらに好ましくは、初期PTT樹脂およびPTT成形用樹脂は、1,3−プロパンジオールおよびテレフタル酸(または同等物)から誘導される反復単位を少なくとも約80モル%、または少なくとも約90モル%、または少なくとも約95モル%、または少なくとも約99モル%含有する。最も好ましいポリマーは、ポリ(トリメチレンテレフタレート)ホモポリマー(実質的に、1,3−プロパンジオールとテレフタル酸または等価物のみのポリマー)である。
【0037】
本明細書で使用されるPTT樹脂に関して、環状二量体は、次式(I)
【0038】
【化1】

【0039】
の二量体である。
【0040】
環状二量体含有率を決定するために、ソックスレー抽出法、高圧液体クロマトグラフィー、およびNMR分析法などの多くの代替方法が利用可能である。本明細書における目的のためには、溶解状態の樹脂試料の1H NMR分析法が選択されており、これが本明細書における特許請求の範囲すべての境界および限界を定義するための基礎である。分析では直接、末端基に存在するテレフタレートを含むポリマー反復単位におけるすべてのテレフタレート基の含有率と、異なる、別の領域における環状二量体のテレフタレート基とが測定される。図1は、環状二量体約2.7重量%を有する、E.I.du Pont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,DE,USA)から入手可能な、市販のPTT、Sorona(登録商標)Bright PTT樹脂のNMRスペクトルの芳香族領域を示す。環状二量体によるピークは約7.7ppmであり、8.1ppmのPTTテレフタレート反復単位と異なる。約7.27ppmでのピークは、重水素化クロロホルムである。
【0041】
初期PTT樹脂およびPTT成形用樹脂は、1種または複数種の縮合触媒を有する。一実施形態において、固相重合は、前記初期ポリ(トリメチレンテレフタレート)樹脂組成物の重量に対して約25〜約200ppmの1種または複数種の縮合触媒の存在下にて行われる。好ましい縮合触媒は、チタン(IV)ブトキシド、チタン(IV)プロポキシド、アンチモン(III)オキシド、ジブチルスズオキシド、ゲルマニウムオキシド、ジルコニウム(IV)ビス(ジエチルシトラト)ジプロポキシド、およびその組み合わせからなる群から選択される。
【0042】
複数の樹脂ペレットの縮合温度への加熱および攪拌は、樹脂ペレットが互いに貼り付かないようにするのに十分に均一かつ適切な加熱および攪拌を提供する公知の任意の手法で行われる。種々の実施形態において、回転乾燥器、流動床、および流動カラム反応器が、固相重合プロセスの実施に使用される。
【0043】
好ましくは、加熱および攪拌は回転乾燥器で行われ、縮合温度は約200〜約210℃である。好ましくは、加熱および攪拌は、減圧下で、すなわち気圧より低い圧力下で行われる。種々の実施形態において、約0.1〜約10mmHg、0.1〜1mmHg、および0.3〜0.8mmHgの減圧が、加熱および攪拌中に回転乾燥器にかけられる。
【0044】
PTT成形用樹脂は、それらが成形物品の物理的性質または表面特性に悪い影響を与えないという条件で、充填剤潤滑剤、流れ調整剤、熱安定剤、酸化防止剤、染料、顔料、紫外線安定剤等の添加剤も含むことができる。
【0045】
通常、充填剤は、顔料、補強剤、および他の充填剤など、熱可塑性組成物で一般に使用される任意の材料である。充填剤は、その上にコーティング、例えば、組成物のポリマーに対する充填剤の付着性を向上させるためのサイジングおよび/またはコーティングがされてもよいし、されていなくてもよい。充填剤は有機または無機である。有用な充填剤は、粘土、海泡石、タルク、珪灰石、マイカ、および炭酸カルシウムなどの鉱物;繊維、ミルドガラス、中実または中空ガラス球などの様々な形状のガラス;カーボンブラックまたは炭素繊維としての炭素;二酸化チタン;短繊維、フィブリルまたはフィブリド状のアラミド;酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウムなどの難燃剤;およびその2種類以上の組み合わせからなる群から選択される充填剤である。種々の実施形態において、樹脂組成物はさらに、樹脂組成物の全重量に対して、約1〜50重量%、約5〜約45重量%;および約10〜40重量%にて、1種または複数種の充填剤を含む。種々の実施形態において、充填剤は、珪灰石、マイカ、タルク、ガラス、特にガラス繊維、二酸化チタン、および炭酸カルシウムである。
【0046】
種々の実施形態に対して好ましい潤滑剤または離型剤は、ペンタエリトリトールテトラモンタネート、ブチレングリコールジモンタネート、カルシウムモンタネート、およびその混合物からなる群から選択される。
【0047】
本発明で使用されるPTT成形用樹脂は、溶融混合ブレンド状であり、ポリマー成分すべてが互いによく分散され、非ポリマー成分すべてが、ポリマーマトリックス中に均一に分散され、ポリマーマトリックスによって結合され、その結果ブレンドは、一体化された全体を形成する。ブレンドは、任意の溶融混合法を用いて、構成材料を合わせることによって得てもよい。一軸もしくは二軸スクリュー押出機、ブレンダー、ニーダー、バンバリーミキサー等の溶融混合機を使用して、構成材料を均一に混合し、樹脂組成物を得てもよい。あるいは、材料の一部を溶融混合機で混合してもよく、次いで、材料の残りを加え、均一になるまでさらに溶融混合してもよい。組成物の製造における混合順序は、当業者には理解されるように、個々の成分を1回限りで溶融してもよく、あるいは充填剤および/または他の成分を側方供給装置等から供給してもよいというような順番であり得る。
【0048】
PTT成形用樹脂は、例えば射出成形など、当業者に公知の方法を用いて物品へと形成されてもよい。かかる物品としては、電気および電子用途、機械装置部品、および自動車用途で使用される物品が挙げられる。
【0049】
当技術分野で公知のいずれかの手段によって、成形物品を金属被覆して、成形物品の一部、または領域全体に金属層を提供することができる。好ましくは、金属層は、成形物品の少なくとも1つの表面上に蒸着またはスパッタリング沈着することによって提供される。金属層に好ましい金属は、アルミニウム、クロム、およびステンレス鋼からなる群から選択される。アルミニウムがさらに好ましい金属層である。好ましくは、金属層は、1ミクロン未満、好ましくは、約500〜約1000オングストローム、さらに好ましくは約600〜約800オングストロームの厚さを有する金属の膜である。
【0050】
本発明の種々の実施形態は、テールライト用べゼル、ヘッドライト用べゼル、方向指示ライト用べゼルおよび車内ライト用べゼルからなる群から選択されるべゼルを含む、車両用金属被覆ベゼルなどの成形物品である。
【0051】
方法
固有粘度
50/50(重量%)トリフルオロ酢酸/塩化メチレンに19℃にて濃度0.4グラム/dLで溶解されたポリマーに関して、Viscotek Forced Flow粘度計Y900(Viscotek Corporation(Houston,Tex.))で測定された粘度を用いて、ASTM D 5225−92に基づく自動化された方法に従って、固有粘度(IV)を決定した。次いで、報告される固有値に達するように、測定された粘度を、ASTM D 4603−96によって決定された60/40(重量%)フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンにおける標準粘度と相関させた。
【0052】
NMRによる環状二量体含有率の決定
PTTのペレット4〜6個を260℃で溶融プレスし、5分間溶融し、続いて圧力10,000ポンドまで加圧して、薄膜(厚さ0.14mm)を形成し、容易に溶解するようにポリマーの表面積を増加させた。ポリマー(15mg)のプレス膜をCDCl3/TFA−d(5:1,1mL)混合物に加え、溶解した。溶液を5mm NMR管に移し、試料を調製してから1時間以内に分析した。陽子/フッ素/炭素プローブを備えたVarian INOVA 500MHz NMRで30℃にて、遅れ時間16秒でスキャンを64回行った。得られたスペクトルは、テレフタレート領域(8.1ppm)および環状二量体領域(7.65ppm)で積分された。環状二量体の重量%は、環状二量体領域の積分値を環状二量体領域とテレフタレート領域の積分値の合計で割り、100を掛けることによって計算される。
【0053】
260℃でのPTT組成物粒子の溶融試験
この溶融試験は、環状二量体含有率が上記で開示されるNMR法を用いて決定されることを除いては、米国特許第7,332,561号明細書の第15欄の方法8に定義される手順である。この試験は、溶融条件下で環状二量体を形成する性質(propensity)を測定する。PTTペレット試料(1.0g)をガラスアンプルに添加し、真空下で密閉した。アンプルをビスマス/スズ合金浴において260℃で30分間加熱した。室温(RT)に冷却した後、アンプルを折り、液体窒素を用いて、ポリマーから余分なガラスを除去した。
【0054】
ライト用べゼルのフォギング試験
フォギング試験法を用いて、窓および自動車ライト用べゼル組立品上に、視界を減らす凝縮膜を形成する成形品の傾向を決定した。成形ポリマーディスクを設定温度および期間にて容器内で加熱し、あらゆる揮発性成分を冷却ガラスディスク上に凝縮させた。フォギング凝縮物を有するガラスディスクの反射計値とフォギング凝縮物を含まない同じガラスディスクの反射計値の百分率の比として、フォギング値を計算した。
【0055】
試験装置は、デジタル温度制御多位置ホットプレートからなり、その上に個々の83mm×9.5mmアルミニウムディスクが置かれており、温度制御のための熱電対を設置するためにそれに穴が開けられた。50mm×3.3mmの射出成形ポリマー試験ディスクを含む直径63.5mm×高さ50mmの背の高い透湿性カップを各ホットプレート位置に置いた。76.2mm×3.175mm透明石英ガラスディスクを各透湿性カップ上に置き、続いて薄い濾紙、次いでアルミニウム製凝縮器ヘッド(90mm×32mm)を置いた。凝縮器ヘッドは、それを通して80℃にて冷却溶液がパイプで送られる、1つの中央ボアホールを有する。
【0056】
試験前および試験後のガラスディスクの測定は、測定角度60℃にて光沢計(Novo−Gloss)を使用して行った。各ディスクを互いに90℃回転した4つの位置で測定し、光沢度を記録した。ホットプレートを温度160℃に設定し、試験試料を20時間過熱した。クリーンな測定として同じ位置で光沢度を測定し、各位置についてF=(曝露されたディスクの光沢/クリーンなディスクの光沢)*100としてフォギング(%)を計算し、各試料で平均した。加熱後、試験試料を「ブルーミング」と呼ばれる白い表面沈着物の存在について目視検査した。
【0057】
材料
ポリ(トリメチレンテレフタレート)の固相重合プロセスを説明する。
PTT−A.チタン(IV)n−ブトキシド(100ppm)の存在下での1,3−プロパンジオールとジメチルテレフタレートの連続重合から得られ、寸法2.9±0.2×2.8±0.2×4.1±0.2mm、インヘレント粘度0.76dL/gおよびPTT環状二量体濃度2.5重量%を有する、33±2mg/ペレットのPTT樹脂(ペレット4682Kg,E.I.du Pont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,DE,USA))をデュアルコーン(dual cone)タンブル乾燥機(ABBE回転乾燥機、モデル24、Patterson(NJ,USA))に装入した。速度10℃/時で207℃まで加熱すると同時に、タンブル乾燥機を速度4回転/分で回転させた。真空下(0.41mmHg)で加熱を行った。乾燥機の温度を30時間、209±2℃に維持した。ペレットの温度が60℃に達するまで、乾燥機を真空下で冷却した;真空を窒素で破壊し、反応器を窒素正圧下にて充填した。乾燥機を速度21℃/時で冷却した。環状二量体濃度を冷却後に測定した。環状二量体濃度は、方法セクションで開示されるNMR分析で決定されて0.77重量%であり、固有粘度(IV)は1.25dL/gであり、方法セクションに記載のように測定された。
【0058】
PTT−B.チタン(IV)n−ブトキシド(100ppm)の存在下での1,3−プロパンジオールとジメチルテレフタレートの連続重合から得られ、寸法2.9±0.2×2.8±0.2×4.1±0.2mm、インヘレント粘度0.76dL/gおよびPTT環状二量体濃度2.5重量%を有する、33±2mg/ペレットのPTT樹脂(ペレット4682Kg,E.I.du Pont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,DE,USA))をデュアルコーンタンブル乾燥機(ABBE回転乾燥機、モデル24、Patterson(NJ,USA))に装入した。速度10℃/時で205℃まで加熱すると同時に、タンブル乾燥機を速度4回転/分で回転させた。乾燥機の温度を11時間、205±24℃に維持した。ペレットの温度が60℃に達するまで、乾燥機を真空下で冷却した;真空を窒素で破壊し、反応器を窒素正圧下にて充填した。乾燥機を速度25℃/時で冷却し、NMRで決定された環状二量体濃度0.82重量%および固有粘度(IV)1.14dL/gを有する固相重合ペレットが得られた。
【0059】
PTT−Cは、IV1.02dL/gおよび環状二量体2.7重量%を有する、E.I.du Pont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,DE,USA)から入手可能なSorona(登録商標)Bright PTT樹脂である。
【0060】
CaCO3は、Pfizer Inc.,Minerals Pigments and Metals Division(Easton,Pa)から入手可能なAlbagloss(登録商標)炭酸カルシウムである。
【0061】
C−Blackは、Clariant Corp.(Charlotte,NC28205,USA)から入手可能な、カーボンブラックとPBTの50:50(重量)ブレンドからなるカーボンブラックのカラーコンセントレートである。
【0062】
Licomont ET141は、Clariant Corp.(Charlotte,NC28205,USA)から入手可能なペンタエリトリトールテトラモンタネート離型潤滑剤である。
【0063】
TSPは、リン酸三ナトリウム(無水)である。
【0064】
TiO2は、Ticonaから入手可能なMillenium RCL4(登録商標)二酸化チタンである。
【0065】
BaSO4は、Sacht−Leben,Germanyによって提供された。
【実施例】
【0066】
実施例1〜6
環状二量体濃度0.77重量%および固有粘度(IV)1.25dL/gを有するPTT−Aを使用して、速度40〜50ポンド/時、スクリュー回転数300rpm、バレル温度270℃および溶融温度306〜314℃で二軸スクリュー押出機(W&P28/30押出機)を用いて、表1に示す樹脂組成物を調製し、配合ペレットを得た。
【0067】
一軸スクリュー射出成形機(可変トン数6オンス,HPM(Mount Gillian,OH,USA))を使用して、配合PTT−Aペレットを50mm×3.3m試験ディスクに成形した。成形装置を150トンで行った。溶融温度は270℃であった。プラークの金型温度およびサイクル時間はそれぞれ、90℃および30秒であった。
【0068】
上記で開示されるように、ライト用ベゼルのフォギング試験に試験ディスクをかけた。試験後の凝縮物(condensibles)光沢保持率(%);および残留物の外観を記録した。
【0069】
配合PTT−Aペレットを射出成形して、3インチ×6インチ×0.12インチのプラーク形状の物品が得られた。前処理することなく、真空蒸着システムにおいてプラークを金属被覆した。アルミニウムを膜厚約800オングストロームに被覆し、続いて約450オングストロームでヘキサメチルジシロキサンを上塗りした。表1に、金属被覆層の外観に関する注釈を示す。
【0070】
比較例C−1
本明細書に開示される固相処理を受けておらず、かつIV1.02dL/gおよび環状二量体2.7重量%を有する、PTT樹脂を含む表1に記載の成分を、50ポンド/時、300rpmおよび溶融温度294℃でバレル設定260℃を用いて、実施例1〜6と同様の手法で配合した。
【0071】
【表1】

【0072】
表1に示す結果から、環状二量体含有率1.1重量%以下、および固有粘度約0.9〜約2.0dL/を有する本発明の物品は、熱処理した場合に表面沈着物、またはブルーミングを示さず、;表面の予備処理をすることなく金属被覆した場合に望ましい外観を示す成形品をもたらすことが示されている。
【0073】
実施例7
速度100ポンド/時、スクリュー回転数450rpmおよびバレル温度271℃および溶融温度305℃にて二軸スクリュー押出機(Coperion ZSK−26(Ramsey,NJ,USA))を使用して、NMRで決定された環状二量体濃度0.82重量%および固有粘度(IV)1.14dL/gを有するPTT−B樹脂(98.7部)と、ET141潤滑剤(0.3部)と、C−black(1.0部)との混合物を配合して、配合ペレットを得た。
【0074】
一軸スクリュー射出成形機を使用して、配合PTT−Bペレットを3インチ×6インチ×0.12インチのプラークに成形した。その成形機は、直径36mmのスクリューおよびショットサイズ容量5オンスを有する、123トンの日精であった。プラークの型は、一個取り型のデザインであった。PTT−B樹脂の溶融温度は260〜265℃であり、金型鋼の温度は80℃であった。総サイクル時間はおよそ40秒であった。
【0075】
前処理することなく、真空蒸着システムにおいてプラークを金属被覆した。アルミニウムを膜厚約800オングストロームに被覆し、続いて約450オングストロームでヘキサメチルジシロキサンを上塗りした。
【0076】
比較例C−2
北アメリカにおいて多くのヘッドランプ用ベゼル用途で使用される、商業的に入手可能なグレードのポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)を使用して、比較試料を作製した。実施例7に示す装置と同じ装置において、E.I.du Pont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,DE,USA)から入手可能なCrastin(登録商標)CE2055BKB580 PBTを使用して、プラークを成形した。樹脂溶融温度は250〜255℃であり、金型温度は50℃であり、サイクル時間は40秒であった。
【0077】
実施例7と同じ手法でプラークを金属被覆した。
【0078】
オーブンにおいて空気雰囲気中で90分間、実施例7と比較例C2の金属被覆プラークの両方をそれぞれ150℃、165℃、および173℃で加熱した。この試験によって、金属被覆プラークの安定性の上限が実証された。不合格モードは一般に、曇り、フォギングまたはアルミニウム層の亀裂からの真珠光であった。熱処理の結果を表2に示す。
【0079】
【表2】

【0080】
この結果から、固有粘度(IV)1.14dL/g;および環状二量体含有率0.82重量%を有するPTT−Bペレットから実施例7で製造された金属被覆プラークは、金属被覆べゼルの製造に使用される従来のPBT樹脂と比較して、驚くべき、かつ予想外の向上した熱安定性を有することが示された。
【0081】
固有粘度(IV)1.14dL/g;および環状二量体含有率0.82重量%を有するPTT−Bペレットは、Crastin Ce 2055 BKB580を使用した比較例C−2と比較して、成形された場合および金属被覆された場合に、わずかに良い表面外観を示した。したがって、固有粘度(IV)1.14dL/g;および環状二量体含有率0.82重量%を有するPTT−Bペレットを使用した実施例7は、金属被覆ヘッドライト用べゼルのみならず、優れた表面外観、低いガス放出物および高温金属被覆性能が必要とされる他のライティング用途における使用でも、予想外に性能を向上させることを実証している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性成形物品であって、
a)ポリ(トリメチレンテレフタレート)反復単位および末端基を含むポリ(トリメチレンテレフタレート)成形用樹脂であって、前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)成形用樹脂が、前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)反復単位と前記環状二量体の重量に対して、核磁気共鳴分析法で決定される環状二量体含有率1.1重量%以下;および固有粘度0.9〜約2.0dL/gを有する、ポリ(トリメチレンテレフタレート)成形用樹脂;
b)金属層を有する少なくとも1つの表面;
を含む熱可塑性成形物品。
【請求項2】
前記金属層が、蒸着またはスパッタリング沈着によって提供される、請求項1に記載の熱可塑性成形物品。
【請求項3】
前記金属層が、アルミニウム、クロム、およびステンレス鋼からなる群から選択される、請求項1に記載の熱可塑性成形物品。
【請求項4】
前記金属層が、アルミニウムである、請求項1に記載の熱可塑性成形物品。
【請求項5】
ペンタエリトリトールテトラモンタネート(pentaerythritol tetramontanate)、ブチレングリコールジモンタネート(butylene glycol dimontanate)、カルシウムモンタネート(calcium montanate)、およびその混合物からなる群から選択される潤滑剤をさらに含む、請求項1に記載の熱可塑性成形物品。
【請求項6】
前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)成形用樹脂が、固有粘度約0.9〜約1.30dL/gを有する、請求項1に記載の熱可塑性成形物品。
【請求項7】
車両ライト用べゼル(bezel)である、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱可塑性成形物品。
【請求項8】
テールライト用べゼル、ヘッドライト用べゼル、車内ライト用べゼルからなる群から選択される、請求項7に記載のライト用べゼル。

【図1】
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【公表番号】特表2012−519755(P2012−519755A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553036(P2011−553036)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/025906
【国際公開番号】WO2010/101908
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】