説明

金属帯の渦流探傷方法

【課題】金属帯に波形の形状不良や耳伸びが発生した場合でも割れなどの欠陥を精度よく渦流探傷することのできる金属帯の渦流探傷方法を提供する。
【解決手段】鋼帯の表層部に発生した渦電流による誘起電圧を渦流探傷センサの二次コイルに発生させて信号処理装置に供給し、信号処理装置に供給された誘起電圧の電圧差の時間的変化を表す探傷信号の周波数スペクトルが二次コイルのコイル間隔を2倍した値に所定値を加えた値以下となるように探傷信号をフィルタリング処理した後、探傷信号の信号出力値Sfを予め定めた第1の閾値と比較し、信号出力値Sfが第1の閾値を超えているときに信号出力値Sfの最大差分値max.ΔSfを求め、探傷信号のフィルタリング処理前の最大信号出力値max.Sに対する最大差分値max.ΔSfの変化率Rを第2の閾値と比較し、変化率Rが第2の閾値を超えたときに金属帯の表層部に欠陥が発生したと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼帯などの金属帯を連続圧延処理する連続圧延ラインなどで用いられる金属帯の渦流探傷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼帯を連続圧延処理する連続圧延ラインでは、連続冷間圧延機で鋼帯を冷間圧延したときに割れなどの欠陥が鋼帯の表層部に発生することがあり、割れの発生した鋼帯が下流の焼鈍ライン等にそのまま通板されると割れの生じた部分が拡大し、鋼帯の破断に至ってしまうことから、鋼帯の表層部に割れなどの欠陥が発生した否かを渦流探傷装置により検査するようにしている。
【0003】
このような連続圧延ライン等に用いられる渦流探傷装置として、強磁性材からなるE型コアの中央磁極を一次コイルとし両側の各磁極を二次コイルとする複数の渦流探傷センサと、これらの渦流探傷センサから出力された信号を処理して探傷信号を得る信号処理装置と、この信号処理装置で得られた探傷信号から欠陥の有無を判定する判定装置とを備えてなるものが特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献1に記載された渦流探傷装置によると、ピット状の疵や二次コイルの配列方向と直角に伸びる疵だけでなく、二次コイルの配列方向と同一方向に伸びる疵も検出することが可能であるが、疵の種類や大きさ、被検査体の速度等により決定される周波数成分のみを通過させてノイズ成分を信号処理装置でフィルタリングしている。このため、鋼帯が長手方向に沿って波形に変形する形状不良が生じている場合には、鋼帯の形状不良による渦流探傷センサの出力変化をフィルタ回路で除去することができず、鋼帯を連続圧延処理する上で問題とならない鋼帯の形状不良を誤って欠陥と判定してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、波形の形状不良が鋼帯などの金属帯に生じている場合でも割れなどの欠陥のみを探傷可能な方法として、渦流探傷センサの一次コイルに交流電流を通電して金属帯の表層部に渦電流を発生させると共に渦電流による誘起電圧を渦流探傷センサの二次コイルに発生させて信号処理装置に供給し、信号処理装置に供給された誘起電圧の電圧差を求めた後、電圧差の時間的変化を表す探傷信号を生成し、次いで探傷信号の周波数スペクトルが二次コイルのコイル間隔を2倍した値に所定値を加えた値以下となるように探傷信号をフィルタリング処理した後、探傷信号の周波数成分を予め定めた閾値と比較して欠陥の有無を判定する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−89843号公報
【特許文献2】特開2007−248153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、冷間圧延が施された金属帯には、腹伸びあるいは中伸びと呼ばれる形状不良が金属帯の中央部に発生するだけでなく、耳伸びと呼ばれる形状不良も金属帯の幅方向端部に発生することがある。この耳伸びは金属帯の中央部に発生する腹伸びに比べて金属帯の長手方向に変形する長さが短いため、特許文献2に記載された渦流探傷方法では、金属帯の幅方向端部に発生した耳伸びを誤って欠陥と判定してしまう可能性があった。
本発明は上述した問題点に着目してなされたものであり、その目的は、金属帯に波形の形状不良や耳伸びが発生した場合でも割れなどの欠陥を精度よく渦流探傷することのできる金属帯の渦流探傷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、金属帯の表層部に発生した欠陥を渦流探傷装置により探傷する金属帯の渦流探傷方法であって、前記渦流探傷装置として、前記金属帯の幅方向に配列された複数個の渦流探傷センサと、該渦流探傷センサから出力された信号を処理して探傷信号を得る信号処理装置と、該信号処理装置で得られた探傷信号から前記欠陥の有無を判定する判定装置とを備えると共に、前記渦流探傷センサが前記鋼帯の長手方向に沿って配置されたE型コアと、該E型コアに形成された3つの磁極のうち前記E型コアの中央部に位置する磁極に巻回された一次コイルと、前記3つの磁極のうち前記E型コアの両端部に位置する磁極に巻回された2つの二次コイルとを有してなるものを用い、前記渦流探傷センサの一次コイルに交流電流を通電して前記金属帯の表層部に渦電流を発生させると共に該渦電流による誘起電圧を前記二次コイルに発生させて前記信号処理装置に供給し、前記信号処理装置に供給された誘起電圧の電圧差を求めた後、前記誘起電圧差の時間的変化を表す探傷信号を生成し、次いで前記探傷信号の周波数スペクトルが前記二次コイルのコイル間隔を2倍した値に所定値を加えた値以下となるように前記探傷信号をフィルタリング処理した後、前記探傷信号のフィルタリング処理後の信号出力値を予め定めた第1の閾値と比較し、該第1の閾値を前記信号出力値が超えているときに前記信号出力値の最大差分値を求め、次いで前記探傷信号のフィルタリング処理前の最大信号出力値に対する前記最大差分値の変化率を第2の閾値と比較し、該第2の閾値を前記変化率が超えたときに前記金属帯の表層部に欠陥が発生したと前記判定装置で判定することを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の金属帯の渦流探傷方法において、前記第1の閾値を前記信号出力値が超えているときにフィルタリング処理後の探傷信号をサンプリングし、サンプリングされた探傷信号の信号出力値を差分処理して前記最大差分値を求めることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の金属帯の渦流探傷方法において、前記最大差分値と前記最大信号出力値との比を算出して前記変化率を求めることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属帯の渦流探傷方法において、前記探傷信号をディジタル化してフーリエ変換した後、前記探傷信号の周波数スペクトルが前記二次コイルのコイル間隔を2倍した値に所定値を加えた値以下となるように前記探傷信号をフィルタリング処理することを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属帯の渦流探傷方法において、前記探傷信号をフィルタリング処理した後にフーリエ逆変換し、フーリエ逆変換された探傷信号をアナログ信号に変換してから前記探傷信号のフィルタリング処理後の信号出力値を前記第1の閾値と比較することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、金属帯に発生する波形の形状不良だけでなく金属帯の幅方向端部に発生する耳伸びと欠陥とを判別することが可能となるので、金属帯に波形の形状不良や耳伸びが発生した場合でも割れなどの欠陥を精度よく渦流探傷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る金属帯の渦流探傷方法を実施するときに用いられる渦流探傷装置の一例を示す図である。
【図2】図1に示す渦流探傷センサの詳細構成を示す図である。
【図3】図1に示す信号処理装置で得られる探傷信号の波形を示す図である。
【図4】図1に示す判定装置による欠陥判定を説明するためのフローチャートである。
【図5】鋼帯に割れが発生した場合と耳伸びが発生した場合の探傷信号の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜図5を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明に係る金属帯の渦流探傷方法を実施するときに用いられる渦流探傷装置の一例を示す図、図2は図1に示す渦流探傷センサの詳細構成を示す図である。図1に示される渦流探傷装置1は複数個の渦流探傷センサ2と、これらの渦流探傷センサ2から出力された信号を処理して探傷信号を得る信号処理装置3と、この信号処理装置3で得られた探傷信号から欠陥の有無を判定する判定装置4とを備え、渦流探傷センサ2は鋼帯Sの幅方向に配列されている。
【0014】
また、各渦流探傷センサ2は強磁性材からなるE型コア21(図2参照)を有し、このE型コア21は鋼帯Sの長手方向に沿って配置されている。さらに、各渦流探傷センサ2は一次コイル22を有し、この一次コイル22はE型コア21に形成された3つの磁極のうちE型コア21の中央部に位置する磁極に巻回されている。
【0015】
また、各渦流探傷センサ2は2つの二次コイル23a,23bを有し、これらの二次コイル23a,23bはE型コア21に形成された3つの磁極のうちE型コア21の両端部に位置する磁極にそれぞれ巻回されている。従って、図示しない電源装置から一次コイル22に交流電流を通電すると、図2に矢印で示すような渦電流が鋼帯Sの表層部に発生する。そして、鋼帯Sの表層部に渦電流が発生すると、この渦電流により誘起された電圧が二次コイル23a,23bに発生し、二次コイル23a,23bに発生した誘起電圧が各渦流探傷センサ2から出力される。
【0016】
信号処理装置3は差動増幅回路31を有し、渦流探傷センサ2の二次コイル23a,23bで発生した誘起電圧V1,V2は差動増幅回路31に供給され、誘起電圧V1,V2の電圧差ΔVを増幅した信号として差動増幅回路31から出力される。
さらに、信号処理装置3は位相検波回路32を有し、差動増幅回路31から出力された信号は位相検波回路32に供給され、電圧差ΔVの時間的変化を表す探傷信号(アナログ信号)として位相検波回路32から出力される。なお、位相検波回路32には、探傷信号の基準電圧を設定するために、一次コイル22に交流電流を通電する不図示の電源装置から交流電圧が供給されている。
【0017】
また、信号処理装置3はA/D変換回路33を有し、位相検波回路32から出力された探傷信号はA/D変換回路33に供給され、このA/D変換回路33でディジタル信号に変換される。
さらに、信号処理装置3は高速フーリエ変換回路(以下、FFT回路という)34を有し、A/D変換回路33でディジタル化された探傷信号はFFT回路34に供給され、このFFT回路34でフーリエ変換される。
【0018】
また、信号処理装置3はフィルタ回路35を有し、FFT回路34でフーリエ変換された探傷信号はフィルタ回路35に供給される。そして、探傷信号の周波数スペクトルが二次コイル23a,23bのコイル間隔を2倍した値に所定値を加えた値α以下となるようにフィルタ回路35でフィルタリング処理され、これにより、探傷信号の周波数成分のうちαの逆数であるβ未満の周波数成分がカットされる。
【0019】
さらに、信号処理装置3は高速フーリエ逆変換回路(以下、IFFT回路という)36を有し、フィルタ回路35でフィルタリング処理された探傷信号はIFFT回路36に供給され、このIFFT回路36でフーリエ逆変換される。
また、信号処理装置3はD/A変換回路37を有し、IFFT回路36でフーリエ逆変換された探傷信号はD/A変換回路37に供給され、このD/A変換回路37でアナログ信号に再変換される。そして、D/A変換回路37でアナログ信号に再変換された探傷信号(以下、フィルタリング処理後の探傷信号という)は判定装置4に供給される。
【0020】
図3は信号処理装置3の位相検波回路32から出力される探傷信号の波形を示す図であり、鋼帯Sの表層部に欠陥F(図2参照)が存在する場合には、図3に示すような探傷信号aが信号処理装置3の位相検波回路32から出力される。このときの探傷信号aはsinカーブのような波形を描き、図3の横軸を長さで表した場合、その波長は二次コイル23a,23bのコイル間隔を約2倍した値となる。
【0021】
一方、鋼帯Sに波形の形状不良部がある場合には、鋼帯Sの形状不良部が渦流探傷センサ2の直下を通過すると、図3に示すような探傷信号bが信号処理装置3の位相検波回路32から出力される。このときの探傷信号bは探傷信号aと比較して、波長が長いsinカーブのような波形を描き、図3の横軸を長さで表した場合、その波長は形状不良部の長さとほぼ同一となる。
したがって、FFT回路34でフーリエ変換された探傷信号の周波数スペクトルが二次コイル23a,23bのコイル間隔を2倍した値に所定値を加えた値α以下となるように探傷信号をフィルタ回路35でフィルタリング処理することで、探傷信号bの周波数成分をフィルタ回路35でカットすることができる。
【0022】
例えば、渦流探傷センサ2の二次コイル23a,23bのコイル間隔を50mm、判定装置4でサンプリングされる探傷信号のサンプリングピッチをコイル間隔の約10分の1である4mmに設定した場合、有害欠陥が含まれる探傷信号aの波長は約100mmとなる一方、鋼帯Sに波形の形状不良部が発生したときの探傷信号bの波長は140mm以上になることから、αの値として二次コイル23a,23bのコイル間隔の二倍の値に所定値を加えた120mmに設定する。ラインスピードを110m/minとすると、βの値は約17Hzとなり、探傷信号の周波数成分のうち17Hz未満の周波数成分がフィルタ回路35でカットされる。また、必要に応じて、ノイズ除去のために、ローパスフィルタを設定してもよく、本実施形態の場合、例えば22Hzを設定することで、ノイズ成分を除去することができる。
【0023】
なお、フィルタ回路35でカットする周波数成分の基準値を二次コイル23a,23bのコイル間隔を2倍した値に設定してしまうと、有害な欠陥に関連する周波数成分までカットされるおそれがあるため、本実施形態では、多少の余裕を持たせるために、二次コイル23a,23bのコイル間隔を2倍した値に所定値を加えた値αを基準値に設定し、αの逆数であるβ未満の周波数成分をフィルタ回路35でカットするようにしている。
【0024】
図4は判定装置4による欠陥判定を説明するためのフローチャートであり、信号処理装置3で得られた探傷信号が判定装置4に供給されると、判定装置4は鋼帯Sの表層部に割れなどの欠陥が存在するか否かを図4に示すフローチャートに従って判定する。
すなわち、まず、図4のステップS1において、判定装置4は探傷信号のフィルタリング後の信号出力値Sfを予め定めた第1の閾値α1と比較する。この閾値α1は明らかに割れなどの有害欠陥に起因する程度の信号出力が除外されるように適宜設定される。ここで、探傷信号の信号出力値Sfが第1の閾値α1より小さい場合(Sf≦α1)には、判定装置4は鋼帯Sの表層部に割れなどの有害な欠陥が存在しないと判定する(ステップS2)。
【0025】
一方、探傷信号の信号出力値Sfが第1の閾値α1を超えている場合(Sf>α1)には、判定装置4はフィルタリング処理後の探傷信号を一定間隔(例えば10データおき)でサンプリングする(ステップS3)。このときのサンプリング間隔は、割れに起因するような信号(波形)の立ち上がりを捕らえられるような間隔に過去の実績等を基に設定することが望ましい。
【0026】
次に、判定装置4はステップ3でサンプリングされた探傷信号の信号出力値Sfを差分処理する(ステップS4)。そして、信号出力値Sfの最大差分値max.ΔSfを求めるとともに、フィルタリング処理される前の探傷信号の最大信号出力値max.Sを求める(ステップS5)。ここで差分処理とは、n番目にサンプリングされた探傷信号出力とn+1番目にサンプリングされた探傷信号出力との差(ΔSf=Sfn+1−Sf)をとることである。
【0027】
ステップS5で最大差分値max.ΔSfと最大信号出力値max.Sを求めたならば、判定装置4は最大信号出力値max.Sに対する最大差分値max.ΔSfの変化率R(=max.ΔSf/max.S)を算出する(ステップS6)。そして、ステップS6で算出した変化率Rを予め定めた第2の閾値α2と比較する(ステップS7)。
ここで、変化率Rが第2の閾値α2を超えていない場合、すなわち信号変化が緩やかな場合、判定装置4は鋼帯Sの幅方向端部に耳伸びが発生したと判定する(ステップS8)。一方、変化率Rが第2の閾値α2を超えている場合、すなわち信号変化が急峻な場合には、判定装置4は鋼帯Sの表層部に割れが発生したと判定する(ステップS9)。
【0028】
図5は鋼帯Sに割れが発生した場合と耳伸びが発生した場合の探傷信号の波形を示す図であり、(a)は探傷信号をフィルタリング処理する前の探傷信号波形、(b)は探傷信号をフィルタリング処理した後の探傷信号波形、(c)はフィルタリング処理後に差分処理された探傷信号の波形をそれぞれ示している。
図5(a)、(b)に示される探傷信号の信号波形から明らかなように、探傷信号の信号出力をフィルタリング処理後に第1の閾値と比較しただけでは閾値を超える部分が割れによるものか耳伸びによるものかを判別することができないが、図5(c)に示されるように、フィルタリング処理後に差分処理を行うことで信号レベルの違いが見い出され、さらに、この信号波形から得られる変化率Rを第2の閾値と比較することで割れと耳伸びとを判別することが可能となる。
【0029】
上述のように、探傷信号をフィルタリング処理した後、探傷信号の信号出力値Sfを予め定めた第1の閾値と比較し、第1の閾値を信号出力値Sfが超えているときに変化率Rを算出し、この変化率Rを予め定めた第2の閾値と比較することで、鋼帯Sに発生する波形の形状不良だけでなく鋼帯Sの幅方向端部に発生する耳伸びと欠陥とを判別することが可能となる。したがって、鋼帯Sに波形の形状不良や耳伸びが発生した場合でも割れなどの欠陥を精度よく渦流探傷することができる。
【符号の説明】
【0030】
S…鋼帯
1…渦流探傷装置
2…渦流探傷センサ
3…信号処理装置
4…判定装置
21…E型コア
22…一次コイル
23a,23b…二次コイル
31…差動増幅回路
32…位相検波回路
33…A/D変換回路
34…FFT回路
35…フィルタ回路
36…IFFT回路
37…D/A変換回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属帯の表層部に発生した欠陥を渦流探傷装置により探傷する金属帯の渦流探傷方法であって、
前記渦流探傷装置として、前記金属帯の幅方向に配列された複数個の渦流探傷センサと、該渦流探傷センサから出力された信号を処理して探傷信号を得る信号処理装置と、該信号処理装置で得られた探傷信号から前記欠陥の有無を判定する判定装置とを備えると共に、前記渦流探傷センサが前記鋼帯の長手方向に沿って配置されたE型コアと、該E型コアに形成された3つの磁極のうち前記E型コアの中央部に位置する磁極に巻回された一次コイルと、前記3つの磁極のうち前記E型コアの両端部に位置する磁極に巻回された2つの二次コイルとを有してなるものを用い、
前記渦流探傷センサの一次コイルに交流電流を通電して前記金属帯の表層部に渦電流を発生させると共に該渦電流による誘起電圧を前記二次コイルに発生させて前記信号処理装置に供給し、前記信号処理装置に供給された誘起電圧の電圧差を求めた後、前記誘起電圧差の時間的変化を表す探傷信号を生成し、次いで前記探傷信号の周波数スペクトルが前記二次コイルのコイル間隔を2倍した値に所定値を加えた値以下となるように前記探傷信号をフィルタリング処理した後、前記探傷信号のフィルタリング処理後の信号出力値を予め定めた第1の閾値と比較し、該第1の閾値を前記信号出力値が超えているときに前記信号出力値の最大差分値を求め、次いで前記探傷信号のフィルタリング処理前の最大信号出力値に対する前記最大差分値の変化率を第2の閾値と比較し、該第2の閾値を前記変化率が超えたときに前記金属帯の表層部に欠陥が発生したと前記判定装置で判定することを特徴とする金属帯の渦流探傷方法。
【請求項2】
前記第1の閾値を前記信号出力値が超えているときにフィルタリング処理後の探傷信号をサンプリングし、サンプリングされた探傷信号の信号出力値を差分処理して前記最大差分値を求めることを特徴とする請求項1に記載の金属帯の渦流探傷方法。
【請求項3】
前記最大差分値と前記最大信号出力値との比を算出して前記変化率を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の金属帯の渦流探傷方法。
【請求項4】
前記探傷信号をディジタル化してフーリエ変換した後、前記探傷信号の周波数スペクトルが前記二次コイルのコイル間隔を2倍した値に所定値を加えた値以下となるように前記探傷信号をフィルタリング処理することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属帯の渦流探傷方法。
【請求項5】
前記探傷信号をフィルタリング処理した後にフーリエ逆変換し、フーリエ逆変換された探傷信号をアナログ信号に変換してから前記探傷信号のフィルタリング処理後の信号出力値を前記第1の閾値と比較することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属帯の渦流探傷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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