説明

金属平板含有組成物及び熱線遮蔽材

【課題】金属平板の安定性が向上し、光によるプラズモン反射低減を防止できる金属平板含有組成物、及び反射波長選択性及び反射帯域選択性が高く、可視光線透過性及び電波透過性に優れ、更に耐光性にも優れている熱線遮蔽材の提供。
【解決手段】銀、金、銅、及びこれらの合金のいずれかの金属ナノ平板と銀相互作用電位EAgが−300mV〜−1mV未満である複素環化合物を少なくとも含有する金属ナノ平板含有組成物および該組成物を含有する熱線遮蔽材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱線反射膜、赤外線反射膜、可視光反射膜、熱線吸収膜、赤外線吸収膜、選択反射膜等に好適な金属平板含有組成物、並びに熱線を選択的に反射及び吸収する熱線遮蔽材に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子は、光の波長よりそのサイズが小さいことより、低散乱な材料として注目されている。これらの中でも、金属ナノ粒子は、導電性、熱伝導性、屈折率、触媒活性等の特徴を有することから様々な分野で研究が行われている。
前記金属ナノ粒子は、表面積が高いため腐食やマイグレーションが問題となる場合が多く、例えば特許文献1には、Agのナノワイヤーの腐食防止剤として芳香族トリアゾール化合物等が有効であることが開示されている。
また、特許文献2には、マイグレーション防止剤としてベンゾトリアゾール系化合物が有効であることが開示されている。
しかし、これらの先行技術文献には、導電材料としてAgを用いた場合に絶縁の原因となるAgのマイグレーションや腐食に対する解決を示したものであり、本発明のように電気を通さない耐光性に対しての安定性については開示も示唆もされていない。
また、特許文献3には、貴金属コロイドと樹脂を混合することにより、貴金属のプラズモン吸収を用いた塗料について開示されている。この特許文献3では、貴金属コロイドに特別な耐光性改良剤等を用いておらず、貴金属ナノ粒子のプラズモンが耐光性に対して不安定であることは開示も示唆もされていない。
【0003】
したがって金属平板の安定性が向上し、光によるプラズモン反射低減を防止できる金属平板含有組成物、及び反射波長選択性及び反射帯域選択性が高く、可視光線透過性及び電波透過性に優れ、更に耐光性にも優れている熱線遮蔽材の提供が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開2007/0074316号明細書
【特許文献2】特開2009−146678号公報
【特許文献3】特許第3894803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、金属平板の安定性が向上し、光によるプラズモン反射低減を防止でき、例えば熱線反射膜、赤外線反射膜、可視光反射膜、熱線吸収膜、赤外線吸収膜、選択反射膜等に好適に用いられる金属平板含有組成物、及び反射波長選択性及び反射帯域選択性が高く、可視光線透過性及び電波透過性に優れ、更に耐光性にも優れている熱線遮蔽材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため本発明者らが、プラズモン反射を利用した反射膜について検討した結果、貴金属もナノレベル粒子(金属ナノ平板も含む)の場合には耐光性が悪化することを知見した。この貴金属ナノ粒子の耐光性の悪化原因については、比表面積の増加による表面エネルギーの増加により不安定性が増加してしまうためであると考えられる。しかしこの場合、組成物中に樹脂を大量添加することにより貴金属を保護することは困難であるため、本発明者らが更に鋭意検討を重ねた結果、金属ナノ平板に銀相互作用電位EAgが−1mV以下である複素環化合物を含有させることにより、金属ナノ平板の安定性が向上し、光によるプラズモン反射低減を防止でき、耐光性が良好となることを知見した。
【0007】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 金属平板、及び銀相互作用電位EAgが−1mV未満である複素環化合物を少なくとも含有することを特徴とする金属平板含有組成物である。
<2> 複素環化合物の銀相互作用電位EAgが−300mV以上−1mV未満である前記<1>に記載の金属平板含有組成物である。
<3> 金属平板が、銀、金、銅、及びこれらの合金のいずれかを含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の金属平板含有組成物である。
<4> 金属平板が、銀を含有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の金属平板含有組成物である。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の金属平板含有組成物を含有することを特徴とする熱線反射膜である。
<6> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の金属平板含有組成物を含有することを特徴とする赤外線反射膜である。
<7> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の金属平板含有組成物を含有することを特徴とする熱線吸収膜である。
<8> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の金属平板含有組成物を含有することを特徴とする赤外線吸収膜である。
<9> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の金属平板含有組成物を含有することを特徴とする選択反射膜である。
<10> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の金属平板含有組成物を含有することを特徴とする熱線遮蔽材である。
<11> 基板と、該基板上に金属平板含有組成物からなる金属平板含有層とを有し、金属平板の主平面が、前記基板平面に対して0°〜±30°の範囲で面配向している前記<10>に記載の熱線遮蔽材である。
<12> 熱線遮蔽材を上から見た時の基板の面積Aに対する金属平板の面積の合計値Bの割合である面積率〔(B/A)×100〕が、15%以上である前記<11>に記載の熱線遮蔽材である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、金属平板の安定性が向上し、光によるプラズモン反射低減を防止でき、例えば熱線反射膜、赤外線反射膜、可視光反射膜、熱線吸収膜、赤外線吸収膜、選択反射膜等に好適に用いられる金属平板含有組成物、及び反射波長選択性及び反射帯域選択性が高く、可視光線透過性及び電波透過性に優れ、更に耐光性にも優れている熱線遮蔽材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】図1Aは、金属平板の形状の一例を示した概略斜視図であって、略円盤形状の平板粒子を示す。
【図1B】図1Bは、金属平板の形状の一例を示した概略斜視図であって、略六角形状の平板粒子を示す。
【図2A】図2Aは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板を含む金属粒子含有層の存在状態を示した概略断面図であって、最も理想的な存在状態を示す。
【図2B】図2Bは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板を含む金属粒子含有層の存在状態を示した概略断面図であって、基板の平面と平板粒子の平面とのなす角度(θ)を説明する図を示す。
【図2C】図2Cは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板を含む金属粒子含有層の存在状態を示した概略断面図であって、金属粒子含有層の熱線遮蔽材の深さ方向における存在領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(金属平板含有組成物)
本発明の金属平板含有組成物は、金属平板、及び銀相互作用電位EAgが−1mV未満である複素環化合物を少なくとも含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0011】
<金属平板>
一般に、ナノ粒子は、0次元(略球状)、1次元(略棒状)、2次元(略平板状)、3次元(バルク状)があり、平板状粒子とは、2次元の略平板状の粒子を意味する。プラズモン反射を考える上で、前記平板状粒子の中でも三角平板状、六角平板状、及びこれらの角が取れた略円盤状の平板状粒子が好ましい。
また、反射特性を得るためには平板状粒子であることが必要である。0次元粒子、1次元粒子、及び3次元粒子の場合には平面状に配置されても、十分な反射性能を得ることができず各々の形状に合ったプラズモン吸収を示すのみである。2次元粒子を平面状に配置した場合にのみ、本発明の特徴である反射性能を示すことができる。
【0012】
前記金属平板としては、2つの主平面からなる粒子(図1A及び図1B参照)であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、略六角形状、略円盤形状、略三角形状などが挙げられる。これらの中でも、可視光透過率が高い点で、略六角形状、略円盤形状であることが特に好ましい。
前記略円盤形状としては、透過型電子顕微鏡(TEM)で金属平板を主平面の上方から観察した際に、角が無く、丸い形状であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記略六角形状としては、透過型電子顕微鏡(TEM)で金属平板を主平面の上方から観察した際に、略六角形状であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、六角形状の角が鋭角のものでも、鈍っているものでもよいが、可視光域の吸収を軽減し得る点で、角が鈍っているものであることが好ましい。角の鈍りの程度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0013】
前記金属平板の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば銀、金、銅、又はこれらの合金などが挙げられる。これらの中でも、熱線(近赤外線)の反射率が高い点、及び可視光吸収が無いことから、銀が特に好ましい。
【0014】
前記略六角形状又は略円盤形状の金属平板の割合は、金属粒子の全個数に対して、60個数%以上であることが好ましく、65個数%以上がより好ましく、70個数%以上が更に好ましい。前記金属平板の割合が、60個数%未満であると、可視光線透過率が低くなってしまうことがある。
【0015】
[平均粒子径及び平均粒子径の粒度分布]
前記金属平板の平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、70nm〜500nmが好ましく、100nm〜400nmがより好ましい。前記平均粒子径が、70nm未満であると、金属平板の吸収の寄与が反射より大きくなるため十分な熱線反射能が得られなくなることがあり、500nmを超えると、ヘイズ(散乱)が大きくなり、基板の透明性が損なわれてしまうことがある。
ここで、前記平均粒子径とは、TEMで粒子を観察して得た像から任意に選んだ200個の平板粒子の主平面直径(最大長さ)の平均値を意味する。
前記金属粒子含有層中に平均粒子径が異なる2種以上の金属粒子を含有することができ、この場合、金属粒子の平均粒子径のピークが2つ以上、即ち2つの平均粒子径を有していてもよい。
【0016】
本発明の熱線遮蔽材において、金属平板の粒度分布における変動係数は、30%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。前記変動係数が、30%を超えると、熱線遮蔽材における熱線の反射波長域がブロードになってしまうことがある。
ここで、前記金属平板の粒度分布における変動係数は、例えば前記の通り得た平均値の算出に用いた200個の金属平板の粒子径の分布範囲をプロットし、粒度分布の標準偏差を求め、前記の通り得た主平面直径(最大長さ)の平均値(平均粒子径)で割った値(%)である
【0017】
[アスペクト比]
前記金属平板のアスペクト比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、可視光域長波長側から近赤外光領域での反射率が高くなる点から、2以上であることが好ましく、2〜80であることがより好ましく、4〜60が更に好ましい。前記アスペクト比が、2未満であると、反射率が小さくなったり、ヘイズが大きくなってしまうことがある。
前記アスペクト比は、金属平板の平均粒子径(L)を金属平板の平均粒子厚み(d)で除算した値(L/d)を意味する。平均粒子厚みは、金属平板の主平面間距離に相当し、例えば、図1A及び図1Bに示す通りであり、原子間力顕微鏡(AFM)により測定することができる。
前記AFMによる平均粒子厚みの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス基板に金属平板を含有する粒子分散液を滴下し、乾燥させて、粒子1個の厚みを測定する方法などが挙げられる。
【0018】
[金属平板の合成方法]
前記金属平板の製造方法としては、略六角形状又は略円盤形状を合成し得るものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化学還元法、光化学還元法、電気化学還元法等の液相法などが挙げられる。これらの中でも、形状とサイズ制御性の点で、化学還元法、光化学還元法などの液相法が特に好ましい。六角形又は三角形状の金属平板を合成後、例えば硝酸、亜硫酸ナトリウム、Br、Cl等のハロゲンイオンなどの銀を溶解する溶解種によるエッチング処理、又は加熱によるエージング処理を行うことにより、六角形又は三角形状の金属平板の角を鈍らせて、略六角形状又は略円盤形状の金属平板を得てもよい。
【0019】
前記金属平板の合成方法としては、前記の他、予めフィルムやガラスなどの透明基材の表面に種晶を固定後、平板状に金属粒子(例えばAg)を結晶成長させてもよい。
【0020】
本発明の熱線遮蔽材において、金属平板は、所望の特性を付与するために、更なる処理を施してもよい。前記更なる処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高屈折率シェル層の形成、分散剤、酸化防止剤等の各種添加剤を添加することなどが挙げられる。
【0021】
−高屈折率シェル層の形成−
前記金属平板は、可視光域透明性を更に高めるために、可視光域透明性が高い高屈折率材料で被覆されてもよいし、本発明の金属平板含有層の上下の一方、好ましくは両方に高屈折率材料層が含まれていることが好ましい。
前記高屈折率材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばTiO、BaTiO、ZnO、SnO、ZrO、NbOなどが挙げられる。
【0022】
前記被覆する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Langmuir、2000年、16巻、p.2731−2735に報告されているようにテトラブトキシチタンを加水分解することにより銀の金属平板の表面にTiO層を形成する方法であってもよい。
【0023】
また、前記金属平板に直接、高屈折率金属酸化物層シェルを形成することが困難な場合は、前記の通り金属平板を合成した後、適宜SiOやポリマーのシェル層を形成し、更に、このシェル層上に前記金属酸化物層を形成してもよい。TiOを高屈折率金属酸化物層の材料として用いる場合には、TiOが光触媒活性を有することから、金属平板を分散するマトリクスを劣化させてしまう懸念があるため、目的に応じて金属平板にTiO層を形成した後、適宜SiO層を形成してもよい。
【0024】
−各種添加物の添加−
本発明の金属平板含有組成物において、金属平板は、該金属平板を構成する銀などの金属の酸化を防止するために、メルカプトテトラゾール、アスコルビン酸等の酸化防止剤を吸着していてもよい。また、酸化防止を目的として、Ni等の酸化犠牲層が金属平板の表面に形成されていてもよい。また、酸素を遮断することを目的として、SiOなどの金属酸化物膜で被覆されていてもよい。
【0025】
前記金属平板は、分散性付与を目的として、N元素、S元素、P元素を含む低分子量分散剤、例えば4級アンモニウム塩、アミン類、高分子量分散剤などの分散剤を添加してもよい。
【0026】
<複素環化合物>
前記複素環化合物としては、銀相互作用電位EAgが−1mV未満であることが必要であり、−300mV以上−1mV未満であることが好ましく、−70mV〜−300mVであることが好ましい。
前記銀相互作用電位EAgが、−1mV以上であると、耐光性への効果が現れないことがあり、−300mV未満であると、得られる効果が小さくなってしまうことがある。
【0027】
ここで、前記銀相互作用電位EAgは、以下の銀相互作用電位測定により求めることができる。
まず、複素環化合物の濃度0.00100M、重炭酸カリウム濃度0.0200M、及び炭酸カリウム濃度0.0267Mの溶液50mlを調製し、1M硝酸又は水酸化ナトリウムによりpHを10.0に調整する。磁気攪拌しながら、20℃〜25℃の温度で、0.00500M硝酸銀1mLを添加する。カロメル電極を用いた電気化学的方法を用いて、添加15分間後の電位を測定する。ここで求まった電位のmV単位の値が銀相互作用電位である。
【0028】
ここで、前記複素環化合物とは、ヘテロ原子を1個以上持つ環状化合物を意味する。該ヘテロ原子とは、炭素原子、又は水素原子以外の原子を意味する。前記複素環化合物のヘテロ原子数はいくつでもよい。なお、ヘテロ原子は複素環の環系の構成部分を形成する原子のみを意味し、環系に対して外部に位置していたり、少なくとも一つの非共役単結合により環系から分離していたり、環系のさらなる置換基の一部分であるような原子は意味しない。
【0029】
前記ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、又はホウ素原子が好ましく、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、又はセレン原子がより好ましく、窒素原子、硫黄原子、又は酸素原子が更に好ましく、窒素原子又は硫黄原子が特に好ましい。
【0030】
前記複素環化合物における複素環の環員数はいずれでもよいが、好ましくは3〜8員環であり、更に好ましくは5〜7員環であり、特に好ましくは5又は6員環である。
【0031】
前記複素環としては、飽和であっても不飽和であってもよいが、好ましくは少なくとも1つの不飽和の部分を有する場合であり、更に好ましくは少なくとも2つの不飽和の部分を有する場合である。別の言い方をすると、前記複素環としては、芳香族、擬似芳香族、及び非芳香族のいずれでもよいが、好ましくは芳香族複素環、及び擬似芳香族複素環であり、更に好ましくは芳香族複素環である。
【0032】
前記複素環としては、例えばピロール環、チオフェン環、フラン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、1,2,4−トリアゾール環、1,2,3−トリアゾール環、テトラゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,3,4−チアトリアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、及び、これらにベンゾ縮環したインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、キノキサリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、アクリジン環、プリン環、4,4’−ビピリジン環、1,2−ビス(4−ピリジル)エタン環、4,4‘−トリメチレンジピリジン環、又はこれらが一部又は全部飽和したピロリジン環、ピロリン環、イミダゾリン環などが挙げられる。
【0033】
代表的な複素環の例を以下に示す。
【化1】

【0034】
ベンゼン環が縮環した複素環として、例えば以下のものが挙げられる。
【化2】

【0035】
一部又は全部飽和した複素環として、例えば以下のものが挙げられる。
【化3】

【0036】
その他に、以下の複素環も可能である。
【化4】

【0037】
これらの複素環には、いかなる置換基が置換していても縮環していてもよく、置換基としては前述のWが挙げられる。また、複素環に含まれる3級窒素原子が置換されて4級窒素となってもよい。なお、複素環の別の互変異性構造を書くことができるどのような場合も、化学的に等価である。
【0038】
前記複素環の中でも、(aa−1)、(aa−3)、(aa−19)〜(aa−20)、(ab−12)、(ab−25)が特に好ましい。
【0039】
前記複素環化合物において、特定の部分を「基」と称した場合には、該部分はそれ自体が置換されていなくても、一種以上の(可能な最多数までの)置換基で置換されていてもよいことを意味する。例えば、「アルキル基」とは置換又は無置換のアルキル基を意味する。また、前記複素環化合物に使用できる置換基は、置換の有無にかかわらず、どのような置換基でもよい。
【0040】
このような置換基をWとすると、Wで示される置換基としては、いかなるものでもよく、特に制限は無いが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基と言ってもよい)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH))、ホスファト基(−OPO(OH))、スルファト基(−OSOH)、その他の公知の置換基、などが挙げられる。
【0041】
更に詳しくは、Wは、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)はこのような概念のアルキル基を表すが、更にアルケニル基、アルキニル基も含むこととする。]、アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、複素環基(好ましくは5又は6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、ベンゼン環等と縮合していてもよく、更に好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族の複素環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル、なお、1−メチル−2−ピリジニオ、1−メチル−2−キノリニオのようなカチオン性の複素環基でもよい。)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ、2−ピリジルアミノ)、アンモニオ基(好ましくはアンモニオ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキル、アリール、ヘテロ環が置換したアンモニオ基、例えば、トリメチルアンモニオ、トリエチルアンモニオ、ジフェニルメチルアンモニオ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2−ピリジルカルボニル、2−フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、ホスホノ基、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)、ヒドラジノ基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のヒドラジノ基、例えば、トリメチルヒドラジノ)、ウレイド基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のウレイド基、例えばN,N−ジメチルウレイド)、を表す。
【0042】
また、2つのWが共同して環(芳香族、又は非芳香族の炭化水素環、又は複素環。これらは、更に組み合わされて多環縮合環を形成することができる。例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、フェナジン環、が挙げられる。)を形成することもできる。
【0043】
上記の置換基Wの中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていてもよい。そのような置換基の例としては、−CONHSO−基(スルホニルカルバモイル基、カルボニルスルファモイル基)、−CONHCO−基(カルボニルカルバモイル基)、−SONHSO−基(スルフォニルスルファモイル基)、が挙げられる。
【0044】
より具体的には、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(例えば、アセチルアミノスルホニル)、アリールカルボニルアミノスルホニル基(例えば、ベンゾイルアミノスルホニル基)、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(例えば、メチルスルホニルアミノカルボニル)、アリールスルホニルアミノカルボニル基(例えば、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル)が挙げられる。
【0045】
次に、上記で詳細に述べた前記複素環化合物の中で特に好ましい具体例を示す。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化5】

【0046】
【化6】

これらの中でも、得られる効果が高い点から、at−20、at−21が特に好ましい。
【0047】
前記複素環化合物を金属平板含有組成物に含有させる方法としては、以下の方法が好ましいが、これらに限定されるものではない。
(1)金属平板含有組成物への複素環化合物溶液添加
金属平板含有組成物の塗布前に金属平板含有組成物に複素環化合物溶液を添加してもよい。この際、複素環化合物溶液を添加してからの混合時間は、1分間以上60分間以下が好ましく、2分間以上30分間以下が更に好ましい。混合時の分散物温度は、20℃以上80℃以下が好ましく、30℃以上60℃以下がより好ましい。
(2)金属平板含有組成物の塗布時に複素環化合物溶液と同時添加、又は別層で複素環化合物溶液同時塗布、又は分散物塗布後に複素環化合物溶液塗布
金属平板含有組成物の塗布時に複素環化合物を水、又はメタノールなどの溶媒に溶解した液体を同時に塗布してもよい。この際、塗布直前に金属平板含有組成物と複素環化合物溶液が混合されてもよく、別々の層で塗布されてもよい。また、金属平板含有組成物の塗布後に化合物溶液を塗布してもよい。
(3)分散液塗布物を複素環化合物溶液に浸漬
更に、金属平板含有組成物塗布後に金属平板含有組成物塗布試料を複素環化合物溶液に浸漬させることで含有させてもよい。この場合の浸漬時間は、1分間以上60分間以下が好ましく、2分間以上30分間以下が更に好ましい。浸漬時の溶液温度は、10℃以上60℃以下が好ましく、20℃以上50℃以下が更に好ましい。この際の複素環化合物溶液の濃度は、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.5質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0048】
前記複素環化合物の添加量は、金属平板含有組成物中の金属1モル当たり1×10−5〜1モルが好ましく、5×10−5〜1×10−1モルが更に好ましく、1×10−4〜5×10−2モルが特に好ましい。
【0049】
本発明の金属平板含有組成物には、必要に応じて、各種の添加剤、例えば、界面活性剤、重合性化合物、酸化防止剤、硫化防止剤、腐食防止剤、粘度調整剤、防腐剤などを含有することができる。
【0050】
本発明の金属平板含有組成物は、金属平板の安定性が向上し、光によるプラズモン反射低減を防止でき、例えば熱線反射膜、赤外線反射膜、可視光反射膜、熱線吸収膜、赤外線吸収膜、選択反射膜等に好適に用いることができるが、反射波長選択性及び反射帯域選択性が高く、可視光線透過性及び電波透過性に優れ、更に耐光性にも優れているので、以下に説明する熱線遮蔽材として好適に用いることができる。
【0051】
(熱線遮蔽材)
本発明の熱線遮蔽材は、本発明の前記金属平板含有組成物を含有してなり、更に必要に応じてその他の構成を有してなる。
【0052】
前記熱線遮蔽材としては、基板と、該基板上に本発明の前記金属平板含有組成物からなる金属平板含有層とを有し、必要に応じてその他の部材を有してなるものが好ましい。
【0053】
<金属平板含有層>
前記金属平板含有層は、本発明の前記金属平板含有組成物からなる層であって、基板上に形成されるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記金属平板含有層は、本発明の前記金属平板含有組成物を基板上に塗布することにより形成することができる。前記塗布としては、例えばスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコート、バーコート、ダイコートなどが挙げられる。
【0054】
<基板>
前記基板としては、光学的に透明な基板であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、可視光線透過率が70%以上のもの、好ましくは80%以上のもの、又は近赤外線域の透過率が高いものが挙げられる。
前記基板の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、白板ガラス、青板ガラス等のガラス材料、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、などが挙げられる。
【0055】
<その他の部材>
<<保護層>>
本発明の熱線遮蔽材において、基板との密着性を向上させたり、機械強度的に保護するため、保護層を有することが好ましい。
前記保護層は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、バインダー、界面活性剤、及び粘度調整剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0056】
−バインダー−
前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、可視光透明性や日射透明性が高い方が好ましく、例えば、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。なお、バインダーが熱線を吸収すると、金属平板による反射効果が弱まってしまうことから、熱線源と金属平板との間に中間層を形成する場合は、780nm〜1,500nmの領域に吸収を持たない材料を選択したり、保護層の厚みを薄くすることが好ましい。
【0057】
[面配向]
本発明の熱線遮蔽材において、金属平板は、その主平面が基板の表面に対して所定の範囲で面配向することを一態様とする。
前記金属平板は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱線反射率を高める点で基板平面に対して略水平に偏在していることが好ましい。
前記面配向としては、金属平板の主平面と、基板の表面とが、所定の範囲内で略平行になっている態様であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、面配向の角度は、0°〜±30°が好ましく、0°〜±20°がより好ましく、0°〜±5°が更に好ましい。
【0058】
ここで、図2A〜図2Cは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板を含む金属粒子含有層の存在状態を示した概略断面図である。図2Aは、金属粒子含有層2中における金属平板3の最も理想的な存在状態を示す。図2Bは、基板1の平面と金属平板3の平面とのなす角度(±θ)を説明する図である。図2Cは、金属粒子含有層2の熱線遮蔽材の深さ方向における存在領域を示すものである。
図2Bにおいて、基板1の表面と、金属平板3の主平面又は主平面の延長線とのなす角度(±θ)は、前記の面配向における所定の範囲に対応する。即ち、面配向とは、熱線遮蔽材の断面を観察した際、図2Bに示す傾角(±θ)が小さい状態をいい、特に、図2Aは、基板1の表面と金属平板3の主平面とが接している状態、即ち、θが0°である状態を示す。基板1の表面に対する金属平板3の主平面の面配向の角度、即ち図2Bにおけるθが±30°を超えると、熱線遮蔽材の所定の波長(例えば、可視光域長波長側から近赤外光領域)の反射率が低下してしまったり、ヘイズが大きくなってしまう。
【0059】
[面配向の評価]
前記基板の表面に対して金属平板の主平面が面配向しているかどうかの評価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、適当な断面切片を作製し、この切片における基板及び金属平板を観察して評価する方法であってもよい。具体的には、熱線遮蔽材を、ミクロトーム、集束イオンビーム(FIB)を用いて熱線遮蔽材の断面サンプル又は断面切片サンプルを作製し、これを、各種顕微鏡(例えば、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)等)を用いて観察して得た画像から評価する方法などが挙げられる。
【0060】
前記熱線遮蔽材において、金属平板を被覆するバインダーが水で膨潤する場合は、液体窒素で凍結した状態の試料を、ミクロトームに装着されたダイヤモンドカッター切断することで、前記断面サンプル又は断面切片サンプルを作製してもよい。また、熱線遮蔽材において金属平板を被覆するバインダーが水で膨潤しない場合は、前記断面サンプル又は断面切片サンプルを作製してもよい。
【0061】
前記の通り作製した断面サンプル又は断面切片サンプルの観察としては、サンプルにおいて基板の表面に対して金属平板の主平面が面配向しているかどうかを確認し得るものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、FE−SEM、TEM、光学顕微鏡などを用いた観察が挙げられる。前記断面サンプルの場合は、FE−SEMにより、前記断面切片サンプルの場合は、TEMにより観察を行ってもよい。FE−SEMで評価する場合は、金属平板の形状と傾角(図2Bの±θ)が明瞭に判断できる空間分解能を有することが好ましい。
【0062】
[金属平板の存在範囲]
本発明の熱線遮蔽材において、図2Cに示すように、金属粒子含有層2における金属平板3を構成する金属のプラズモン共鳴波長をλとし、金属粒子含有層2における媒質の屈折率をnとするとき、前記金属粒子含有層2が、熱線遮蔽材の水平面からの深さ方向において、(λ/n)/4の範囲で存在することが好ましい。この範囲外であると、熱線遮蔽材の表面と裏面のそれぞれの空気界面での反射波の位相が強めあう効果が小さくなってしまい、可視光透過率及び熱線最大反射率が低下してしまうことがある。
【0063】
前記金属粒子含有層における金属平板を構成する金属のプラズモン共鳴波長λは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱線反射性能を付与する点で、400nm〜2,500nmであることが好ましく、可視光域のヘイズ(散乱性)を低くする点から、700nm〜2,500nmであることがより好ましい。
前記金属粒子含有層における媒質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゼラチンやセルロース等の天然高分子などの高分子、二酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機物などが挙げられる。
前記媒質の屈折率nは、1.4〜1.7であることが好ましい。
【0064】
[金属平板の面積率]
前記熱線遮蔽材を上から見た時の基板の面積Aに対する金属平板の面積の合計値Bの割合である面積率〔(B/A)×100〕が、15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。前記面積率が、15%未満であると、熱線の最大反射率が低下してしまい、遮熱効果が十分に得られないことがある。
ここで、前記面積率は、例えば熱線遮蔽材を上からSEM観察で得られた画像や、AFM(原子間力顕微鏡)観察で得られた画像を画像処理することにより測定することができる。
【0065】
[金属平板の平均粒子間距離]
前記金属粒子含有層における水平方向に隣接する金属平板の平均粒子間距離は、可視光線透過率及び熱線の最大反射率の点から金属平板の平均粒子径の1/10以上であることが好ましい。
前記金属平板の水平方向の平均粒子間距離が、前記金属平板の平均粒子径の1/10未満となると、熱線の最大反射率が低下してしまう。また、水平方向の平均粒子間距離は、可視光線透過率の点で、不均一(ランダム)であることが好ましい。ランダムでない場合、即ち、均一であると、可視光線の吸収が起こり、透過率が低下してしまうことがある。
【0066】
ここで、前記金属平板の水平方向の平均粒子間距離とは、隣り合う2つの粒子の粒子間距離の平均値を意味する。また、前記平均粒子間距離がランダムであるとは、「100個以上の金属平板が含まれるSEM画像を二値化した際の輝度値の2次元自己相関を取ったときに、原点以外に有意な極大点を持たない」ことを意味する。
【0067】
[隣接する金属粒子含有層間距離]
本発明の熱線遮蔽材において、金属平板は、図2A〜図2Cに示すように、金属平板を含む金属粒子含有層の形態で配置される。
前記金属粒子含有層としては、図2A〜図2Cに示すように、単層で構成されてもよく、複数の金属粒子含有層で構成されてもよい。複数の金属粒子含有層で構成される場合、遮熱性能を付与したい波長帯域に応じた遮蔽性能を付与することが可能となる。
【0068】
本発明の熱線反射材の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基板上に、金属平板を有する分散液を、ディップコーター、ダイコーター、スリットコーター、バーコーター、グラビアコーター等による塗布や、LB膜法、自己組織化法、スプレー塗布などの方法で面配向させる方法が挙げられる。
【0069】
また、金属平板の基板表面への吸着性や面配向性を高めるために、静電的な相互作用を利用して、面配向させる方法であってもよい。具体的には、金属平板の表面が負に帯電している場合(例えば、クエン酸等の負帯電性の媒質に分散した状態)は、基板の表面を正に帯電(例えば、アミノ基等で基板表面を修飾)させておき、静電的に面配向性を高めることにより、面配向させる方法であってもよい。また、金属平板の表面が親水性である場合は、基板の表面をブロックコポリマーやμコンタクトスタンプ法などにより、親疎水の海島構造を形成しておき、親疎水性相互作用を利用して面配向性と金属平板の粒子間距離とを制御してもよい。
なお、面配向を促進するために、金属平板を塗布後、カレンダーローラーやラミローラー等の圧着ローラーを通すことにより促進させてもよい。
【0070】
本発明の熱線遮蔽材の日射反射率は、600nm〜2,000nmの範囲(好ましくは700nm〜1,600nm)で最大値を有することが、熱線反射率の効率を上げることができる点で好ましい。
本発明の熱線遮蔽材の可視光線透過率は、60%以上であることが好ましい。前記可視光線透過率が、60%未満であると、例えば自動車用ガラスや建物用ガラスとして用いた時に、外部が見にくくなることがある。
本発明の熱線遮蔽材のヘイズは、20%以下であることが好ましい。前記ヘイズが20%を超えると、例えば自動車用ガラスや建物用ガラスとして用いた時に、外部が見にくくなったり、安全上好ましくないことがある。
【0071】
本発明の熱線遮蔽材の使用態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、乗り物用ガラスやフィルム、建材用ガラスやフィルム、農業用フィルムなどが挙げられる。これらの中でも、省エネルギー効果の点で、乗り物用ガラスやフィルム、建材用ガラスやフィルムであることが好ましい。
なお、本発明において、熱線(近赤外線)とは、太陽光に約50%含まれる近赤外線(780nm〜2,500nm)を意味する。
【0072】
前記ガラスの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記のようにして製造した熱線遮蔽材に、更に接着層を形成し、自動車等の乗り物用ガラスや建材用ガラスに貼合せたり、合わせガラスに用いるPVBやEVA中間膜に挟み込んで用いることができる。また、粒子/バインダー層のみをPVBやEVA中間膜に転写し、基材を剥離除去した状態で使用してもよい。
【実施例】
【0073】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例で用いた複素環化合物の銀相互作用電位EAgは、以下のようにして測定した。
【0074】
<複素環化合物の銀相互作用電位EAg>
前記銀相互作用電位EAgは、以下の銀相互作用電位測定により求めることができる。
まず、複素環化合物の濃度0.00100M、重炭酸カリウム濃度0.0200M、及び炭酸カリウム濃度0.0267Mの溶液50mLを調製し、1M硝酸又は水酸化ナトリウムによりpHを10.0に調整する。磁気攪拌しながら、20℃〜25℃の温度で、0.00500M硝酸銀1mLを添加した。カロメル電極を用いた電気化学的方法を用いて、添加15分間後の電位を測定した。ここで求まった電位のmV単位の値が銀相互作用電位である。
【0075】
(製造例1)
−銀平板粒子の合成−
2.5mMのクエン酸ナトリウム水溶液50mLに0.5g/Lのポリスチレンスルホン酸水溶液を2.5mL添加し、35℃まで加熱した。この溶液に10mMの水素化ほう素ナトリウム水溶液を3mL添加し、0.5mMの硝酸銀水溶液50mLを20mL/minで攪拌しながら添加した。この溶液を30分間攪拌し、種溶液を作製した(平板核粒子の合成工程)。
次に、2.5mMのクエン酸ナトリウム水溶液132.7mLにイオン交換水87.1mLを添加し、35℃まで加熱した。この溶液に10mMのアスコルビン酸水溶液を2mL添加し、前記種溶液を42.4mL添加し、0.5mMの硝酸銀水溶液79.6mLを10mL/minで攪拌しながら添加した(平板粒子の第1成長工程)。
次に、上記溶液を30分間攪拌した後、0.35Mのヒドロキノンスルホン酸カリウム水溶液を71.1mL添加し、7質量%ゼラチン水溶液を200g添加した。この溶液に、0.25Mの亜硫酸ナトリウム水溶液107mLと0.47Mの硝酸銀水溶液107mLを混合してできた白色沈殿物混合液を添加した。前記白色沈殿物混合液を添加した後すぐに0.17MのNaOH水溶液72mLを添加した。このときpHが10を超えないように添加速度を調節しながらNaOH水溶液を添加した。これを300分間攪拌し、銀平板粒子分散液を得た(平板粒子の第2成長工程)。
【0076】
得られた銀平板粒子分散液中には、銀の六角平板粒子が生成していることを確認した。また、得られた銀平板粒子について、以下のようにして、諸特性を測定した。結果を表1に示す。
【0077】
(製造例2)
−金属ナノロッドの作製−
「ACSNANO Vol.3.No.1.p21−26」を参考にして、銀ナノロッドを作製した。得られた銀ナノロッドの長軸長さは250nm、短軸長さは42nm、アスペクト比(長軸長さ)/短軸長さ)は6であった。
【0078】
<<金属粒子の評価>>
−平均粒子径及び変動係数−
銀平板粒子の平均粒子径は、観察したSEM画像から任意に抽出した200個の粒子の形状を、略六角形状又は略円盤形状の粒子をA、涙型などの不定形形状の粒子をBとして画像解析を行い、Aに該当する粒子200個の円相当径をデジタルノギスで測定し、その平均値を平均粒子径とし、平均粒子径の標準偏差を平均粒子径で割った変動係数(%)を求めた。
【0079】
−平均粒子厚み−
得られた銀平板粒子を含む分散液を、ガラス基板上に滴下して乾燥し、銀平板粒子1個の厚みを、原子間力顕微鏡(AFM)(NanocuteII、セイコーインスツル社製)を用いて測定した。なお、AFMを用いた測定条件としては、自己検知型センサー、DFMモード、測定範囲は5μm、走査速度は180秒/1フレーム、データ点数は256×256とした。
【0080】
−アスペクト比−
得られた銀平板粒子の平均粒子径及び平均粒子厚みから、平均粒子径を平均粒子厚みで除算して、アスペクト比(平均粒子径/平均粒子厚み)を算出した。
【0081】
【表1】

*表1中、ロッドの平均粒子径は長軸の長さ、平均厚みは径の直径を示し、アスペクト比は両者の商を示す。
【0082】
(実施例1)
<試料No.104>
−熱線遮蔽材の作製−
製造例1の銀平板粒子分散液16mLに1NのNaOHを0.75mL添加し、イオン交換水24mL添加し、遠心分離器(コクサン社製、H−200N、アンブルローターBN)で5,000rpm、5分間遠心分離を行い、銀六角平板粒子を沈殿させた。遠心分離後の上澄み液を捨て、水を5mL添加し、沈殿した銀六角平板粒子を再分散させた。この分散液に2質量%の下記構造式で表される化合物W−1の水メタノール溶液を1.6mL添加し、塗布液を作製した。この塗布液をワイヤー塗布バーNo.14を用いてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布し、乾燥させて、表面に銀六角平板粒子が固定されたフィルムを得た。
【化7】

得られたサンプルはPETフィルム上に銀六角平板粒子が凝集なく固定されていた。以上により、試料No.104の熱線遮蔽材を作製した。
【0083】
<試料No.101>
−熱線遮蔽材の作製−
試料No.104において、製造例1の銀平板粒子分散液の代わりに製造例2の銀ナノロッド分散液を用いた以外は、試料No.104と同様にして、試料No.101の熱線遮蔽材を作製した。
【0084】
<試料No.102>
−熱線遮蔽材の作製−
試料No.101において、製造例2の銀ナノロッド分散液の銀1モルに対し下記構造式で表される比較化合物Aを、3.0×10−3モル添加した以外は、試料No.101と同様にして、試料No.102の熱線遮蔽材を作製した。
【化8】

【0085】
<試料No.103>
−熱線遮蔽材の作製−
試料No.101において、製造例2の銀ナノロッド分散液の銀1モルに対し下記構造式で表される化合物at−12を、3.0×10−3モル添加した以外は、試料No.101と同様にして、試料No.103の熱線遮蔽材を作製した。
【化9】

【0086】
<試料No.105>
−熱線遮蔽材の作製−
試料No.104において、製造例1の銀平板粒子分散液の銀1モルに対し上記構造式で表される比較化合物Aを、3.0×10−3モル添加した以外は、試料No.104と同様にして、試料No.105の熱線遮蔽材を作製した。
【0087】
<試料No.106>
−熱線遮蔽材の作製−
試料No.104において、製造例1の銀平板粒子分散液の銀1モルに対し下記構造式で表される比較化合物Bを、3.0×10−3モル添加した以外は、試料No.104と同様にして、試料No.106の熱線遮蔽材を作製した。
【化10】

【0088】
(試料No.107)
−熱線遮蔽材の作製−
試料No.104において、製造例1の銀平板粒子分散液の銀1モルに対し上記構造式で表される化合物at−12を、3.0×10−3モル添加した以外は、試料No.104と同様にして、試料No.107の熱線遮蔽材を作製した。
【0089】
<試料No.108>
−熱線遮蔽材の作製−
試料No.104において、製造例1の銀平板粒子分散液の銀1モルに対し下記構造式で表される化合物at−20を、3.0×10−3モル添加した以外は、試料No.104と同様にして、試料No.108の熱線遮蔽材を作製した。
【化11】

【0090】
<試料No.109>
−熱線遮蔽材の作製−
試料No.104において、製造例1の銀平板粒子分散液の銀1モルに対し下記構造式で表される化合物at−21を、3.0×10−3モル添加した以外は、試料No.104と同様にして、試料No.109の熱線遮蔽材を作製した。
【化12】

【0091】
<試料No.110>
−熱線遮蔽材の作製−
試料No.104において、製造例1の銀平板粒子分散液の銀1モルに対し下記構造式で表される化合物at−11を、3.0×10−3モル添加した以外は、試料No.104と同様にして、試料No.110の熱線遮蔽材を作製した。
【化13】

【0092】
<試料No.111>
−熱線遮蔽材の作製−
試料No.104において、製造例1の銀平板粒子分散液の銀1モルに対し下記構造式で表される化合物at−19を、3.0×10−3モル添加した以外は、試料No.104と同様にして、試料No.111の熱線遮蔽材を作製した。
【化14】

【0093】
次に、得られた各熱線遮蔽材について、以下のようにして諸特性を評価した。結果を表1に示す。
【0094】
<<熱線遮蔽材の評価>>
−可視光透過スペクトル及び熱線反射スペクトル−
得られた各熱線遮蔽材の透過スペクトル及び反射スペクトルは、自動車用ガラスの評価規格であるJISに準じて評価した。
透過及び反射スペクトルは、紫外;可視近赤外分光機(日本分光株式会社製、V−670)を用いて評価した。評価には、絶対反射率測定ユニット(ARV−474、日本分光株式会社製)を用い、入射光は45°偏光板を通し、無偏光と見なせる入射光とした。
【0095】
−赤外線最大反射率・可視光線透過率−
熱線最大反射率は、JIS−R3106:1998「板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射取得率の試験方法」に記載の方法で測定し、算定され、初期の300nm〜2,100nmまで測定した後、最大の反射率を取る波長及び反射率を赤外線最大反射率とした。スガ試験機株式会社製、スーパーキセノンウエザーメーター SX−75を用い180W/m、ブラックパネル温度63℃、湿度25%RHの条件で4週間照射後の最大の反射率を取る波長及び反射率を赤外線最大反射率とした。
また、可視光線透過率は、380nm〜780nmまで測定した各波長毎の透過率を、各波長の分光視感度により補正した値を可視光線透過率とした。
おり、銀六角平板粒子のPETフィルム表面に占める面積率は45%であることが分かった。
【0096】
<面積率>
得られた各熱線遮蔽材について、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して得たSEM画像を2値化し、熱線遮蔽材を上から見た時の基板の面積Aに対する金属平板の面積の合計値Bの割合である面積率〔(B/A)×100〕を求めた。
【0097】
<面配向(金属平板の傾き角)>
得られた各熱線遮蔽材をエポキシ樹脂で包埋処理した後、液体窒素で凍結した状態で剃刀で割断し、熱線遮蔽材の垂直方向断面試料を作製した。この垂直方向断面試料を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、100個の金属平板について、基板の水平面に対する傾角を平均値として算出した。
【0098】
−ヘイズ値の測定−
ヘイズメーター(NDH−5000、日本電色工業株式会社製)を用いて、各熱線遮蔽材のヘイズ値(%)を測定した。
【0099】
【表2−1】

【表2−2】

【0100】
表2の結果から、本発明の熱線遮蔽材は、比較例に比べて赤外反射率が高く、Xe経時での赤外線反射率の減衰が少ないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の金属平板含有組成物は、金属平板の安定性が向上し、光によるプラズモン反射低減を防止でき、例えば熱線反射膜、赤外線反射膜、可視光反射膜、熱線吸収膜、赤外線吸収膜、選択反射膜等に好適に用いることができる。
また、本発明の熱線遮蔽材は、反射波長選択性及び反射帯域選択性が高く、可視光線透過性及び電波透過性に優れており、更に耐光性にも優れているので、例えば自動車、バス等の乗り物用ガラス、建材用ガラス、農業用フィルムなど、熱線の透過を防止することの求められる種々の部材として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 基板
2 金属粒子含有層
3 金属平板
θ 基板の平面と金属平板の平面とのなす角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属平板、及び銀相互作用電位EAgが−1mV未満である複素環化合物を少なくとも含有することを特徴とする金属平板含有組成物。
【請求項2】
複素環化合物の銀相互作用電位EAgが−300mV以上−1mV未満である請求項1に記載の金属平板含有組成物。
【請求項3】
金属平板が、銀、金、銅、及びこれらの合金のいずれかを含有する請求項1から2のいずれかに記載の金属平板含有組成物。
【請求項4】
金属平板が、銀を含有する請求項1から3のいずれかに記載の金属平板含有組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の金属平板含有組成物を含有することを特徴とする熱線遮蔽材。

【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図1A】
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【図1B】
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【公開番号】特開2011−221149(P2011−221149A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88187(P2010−88187)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】