説明

金属微粒子および金属微粒子の製造方法

【課題】粒子径がそろっているとともに、凝集が少なく、さらには粒径が任意に調整可能な金属微粒子を提供する。
【解決手段】
平均粒子径が10〜500nmの範囲にあり、粒子径変動係数(Cv値)が20%以下
であることを特徴とする球状金属微粒子。前記金属微粒子が、周期律表のIB族、IIB族
およびVIII族からなる群から選ばれる1種以上の金属からなることを特徴とする請求項1に記載の球状金属微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子径のバラツキの少ない、単分散な球状金属微粒子および該球状金属微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属微粒子、特に貴金属微粒子は、バルク金属には見られない微粒子に特有の性質を活かして、化学的に安定な金属顔料、カラーフィルター、導電性ペースト、化学反応の触媒、電磁波遮蔽用の導電性フィルム、選鉱精錬あるいは資源回収における金イオンの捕捉回収、コロイドの表面プラズマ共鳴を利用した非線形光学材料、化学反応触媒、タンパク質の染色、大腸癌や妊娠検査等の体外診断薬用イムノクロマト用発色試薬、組織染色試薬等の多種の用途に使用されている。
【0003】
このような用途に使用される金属微粒子には以下の点で改良が望まれていた。
たとえば、導電性フィルムに用いる場合は、金属微粒子が緻密に充填した膜を形成しなければ優れた導電性は得られず、また金属微粒子を調製する際に用いられるポリビニルピロリドン等の高分子安定化剤(保護剤ということがある)が金属微粒子表面に存在していると充分な導電性が得られず、必要に応じて高分子安定化剤を除去する操作が要求される場合があった。
【0004】
また、顔料などの着色剤として用いる場合は、金属微粒子の粒子の大きさにばらつきが大きいため、所望の色相、明度および彩度に調整できなかったり、ばらついたりするといった問題があった。
【0005】
さらに、各種触媒反応に用いられている金属微粒子担持触媒では、反応の種類、反応条件等によって最適な粒子径が存在し、また粒度分布がブロードであると、微細な粒子が存在し、凝集したり、さらには粒子成長して活性が低下することがあった。このため最適な粒子径に調整可能であるとともに、均一な粒子径分布を有する金属微粒子が求められていた。
【0006】
また透明導電性薄膜に用いる場合は、不均一な粒径分布により、例えば、粗大粒子が塗布液中で沈降したり、得られる薄膜の透明性が低下するといった問題があった。
従来、金属微粒子を製造する方法としては気相法と液相法が知られている。
【0007】
気相法には、例えばガス中蒸発法、スパッタリング法等が知られている。
ガス中蒸発法では、不活性ガスを導入した真空容器内で金属を蒸発させ、回収する方法である。この方法では高濃度の金属微粒子分散液を製造することが可能である利点を有するが、金属微粒子の粒径分布を制御することは困難であり、また、高額な特別の装置を必要とする問題もあった。
【0008】
一方、液相法としては、金属イオン含有溶液に紫外光を照射する方法、超音波を照射する方法あるいは還元剤を加えて金属イオンを還元することによって金属微粒子を得る方法がある。中でも、還元剤を用いる方法は、他の方法に比較して比較的粒径分布の狭い金属微粒子を製造することが可能であるといわれている。
【0009】
例えば、特開平7−204493号公報(特許文献1)、特開2003−262638号公報(特許文献2)には、塩化金酸をアスコルビン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等で還元する方法が記載されている。
【0010】
また、特開平10−188681号公報(特許文献3)には、複合金属微粒子の分散性を向上させるため、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の有機安定化剤の存在下、アルコール中で金属塩溶液に還元剤を加え、窒素ガス雰囲気下、90℃で5時間加熱して金属微粒子を得る方法が記載されている。
【特許文献1】特開平7−204493号公報
【特許文献2】特開2003−262638号公報
【特許文献3】特開平10−188681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献に記載された方法では、得られる金属微粒子は粒子径が不均一であったり、凝集したりした微粒子が得られることがあり、いずれの方法も均一な粒子径を有する所望の粒子径の金属微粒子を得ることが困難であった。
【0012】
このため、粒子径がそろっているとともに、凝集が少なく、さらには粒径が任意に調整可能な金属微粒子の出現が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等はこのような情況のもと鋭意検討した結果、従来公知の方法で金属塩を還元して、金属微粒子を調製する際に、立体障害の小さな二塩基もしくは三塩基酸を安定剤に使用し、還元剤を加えて還元して得た金属微粒子を高温で熟成した後、これをシードとして粒子成長させることによって凝集することなく均一な粒子径の金属微粒子が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
【0014】
(1)本発明に係る球状金属微粒子は平均粒子径が10〜500nmの範囲にあり、粒子
径変動係数(Cv値)が20%以下であることを特徴としている。
(2)前記金属微粒子が、周期律表のIB族、IIB族およびVIII族からなる群から選ばれる1種以上の金属からなる。
【0015】
(3)前記金属が、Au、Ag、Pd、Pt、Rh、Ru、Cuからなる群から選ばれる1種以上である。
(4)本発明に係る球状金属微粒子の製造方法は、
周期律表のIB族、IIB族およびVIII族からなる群から選ばれる1種以上の金属の塩の
極性溶媒溶液に、多価カルボン酸化合物と、必要に応じて還元剤とを添加して、金属シード粒子分散液を調製したのち(金属シード粒子調製工程)、
ついで、該金属シード粒子分散液に、周期律表のIB族、IIB族およびVIII族からなる
群から選ばれる1種以上の金属の塩の極性溶媒溶液、多価カルボン酸化合物と、必要に応じて還元剤とを添加して、金属シード粒子を成長させる(シード粒子成長工程)
ことを特徴としている。
【0016】
(5)本発明に係る球状金属微粒子の製造方法は、
周期律表のIB族、IIB族およびVIII族からなる群から選ばれる1種以上の金属の塩の
極性溶媒溶液に、多価カルボン酸化合物と、必要に応じて還元剤とを添加して、金属シード粒子分散液を調製したのち(金属シード粒子調製工程)、
ついで、該金属シード粒子分散液に、周期律表のIB族、IIB族およびVIII族からなる
群から選ばれる1種以上の金属の塩の極性溶媒溶液、多価カルボン酸化合物と、必要に応じて還元剤とを添加して、金属シード粒子を成長させる(シード粒子成長工程)
得られた金属微粒子に、さらに、周期律表のIB族、IIB族およびVIII族からなる群か
ら選ばれる1種以上の金属の塩の極性溶媒溶液と、多価カルボン酸化合物と、必要に応じ
て還元剤とを添加して、金属微粒子を成長させることを特徴としている。
【0017】
(6)多価カルボン酸化合物の炭素数が、2〜20の範囲にある。
(7)極性溶媒が電気伝導度が5μS/cm以下であり、有機物の含有量(TOC)が炭素と
して50ppb以下である純水である。
【0018】
(8)多価カルボン酸化合物として、マレイン酸、フタル酸、アルギン酸、シュウ酸、酒
石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコン酸、L-グルタミン酸、L-アスコルビン酸、クエン酸、およびこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩またはエステル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物を使用する。
【0019】
(9)多価カルボン酸化合物のモル数(MS)と前記金属塩中の金属のモル数(MMS)とのモル比(MS)/(MMS)が1.5〜10の範囲にある。
(10)シード粒子調製工程後および/またはシード粒子成長工程後、得られた分散液を50〜200℃の温度範囲で熟成する。
(11)前記金属シード粒子の平均粒子径が2〜10nmの範囲にある。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、平均粒子径が10〜500nmの範囲にあり、粒子径変動係数(Cv
値)が小さい金属微粒子および該金属微粒子の製造方法を提供することができる。このため、金属顔料、カラーフィルター、導電性ペースト、化学反応触媒、帯電防止あるいは電磁波遮蔽用の導電性フィルム、タンパク質の染色、大腸癌や妊娠検査等の体外診断薬用イムノクロマト用発色試薬、組織染色試薬等に好適に用いることのできる金属微粒子および該金属微粒子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明について、具体的に説明する。
球状金属微粒子
本発明に係る球状金属微粒子は、平均粒子径が10〜500nmの範囲にあり、粒子径変動係数(Cv値)が20%以下であることを特徴としている。
【0022】
球状とは真球に限られず、略球状であればよく、角が丸くなった多面体状であってもよく、サッカーボールのような形状であってもよく、さらには多少角張った面が存在していてもよい。
【0023】
またこのようなCv値を有する粒子は、粒子間での粒径のばらつきが小さい。
従来の金属微粒子では、このような粒径範囲であって、なおかつ球状であって、粒径のばらつきの少ないものは、本願出願前には知られていなかった。
【0024】
なお、特許文献1〜3に示された方法のように、従来の方法では、得られた金属微粒子は、凝集していたり、また、粒径のばらつきが大きく、粒径の大きさの制御も困難な場合があった。
【0025】
本発明に係る球状金属微粒子を構成する金属種として、周期律表のIB族、IIB族およ
びVIII族から選ばれる1種以上からなることが好ましい。具体的には、Cu、Ag、Au、
Zn、Cd、Hg、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt等が挙げられる。特に、Au、Ag、Pd、Pt、Rh、Ru、Cuから選ばれる1種以上が好ましい。2種以上の金属からなる場
合、合金であっても、複合金属であっても、よく、2種以上の金属の混合物であってもよ
く、また一部が合金化した混合物であってもよい。
【0026】
本発明に係る金属微粒子は、後述する製造方法から明らかなようにシード粒子とそれを被覆した被覆層から構成されるが、シード粒子と被覆層は同じ金属種からなるものであってよく異なる金属種からなるものであってもよい。さらに被覆層は、異なる2種以上金属
の被覆層が積層されていてもよい。
【0027】
また、球状金属微粒子の平均粒子径は前記した範囲で適宜選択されるが、好ましくは20〜300nmの範囲にあれば、平均粒径の制御が容易であるとともに、バラツキの少ない、しかも凝集の少ない球状粒子を得ることができる。
【0028】
球状金属微粒子の平均粒子径が10nm未満の場合は、後述する製造方法では、粒子径の制御が困難で、得られる金属微粒子の粒子径がばらつきCv値が大きくなる場合がある
。金属微粒子の平均粒子径が500nmを越えたものは、本発明の目的とするものでなく、また、すでに知られている。またこのような大きさのものは、バルク金属に近い特性を有するために、前記した用途、たとえばカラーフィルター、導電性ペースト、化学反応の触媒、電磁波遮蔽用の導電性フィルム、選鉱精錬あるいは資源回収における金イオンの捕捉回収、コロイドの表面プラズマ共鳴を利用した非線形光学材料、化学反応触媒、タンパク質の染色、大腸癌や妊娠検査等の体外診断薬用イムノクロマト用発色試薬、組織染色試薬等の用途には向かないことがある。
【0029】
球状金属微粒子の粒子径変動係数(Cv値)は20%以下、好ましくは10%以下、特
に好ましくは5%以下である。
すなわち、本発明に係る球状金属微粒子は、粒子径のばらつきが少ない。
【0030】
なお、球状金属微粒子の粒子径変動係数(Cv値)が20%を越えると、例えば、導電
性フィルムに用いた場合に緻密な膜の形成ができないために優れた導電性が得られないことがあり、顔料などの着色剤として用いた場合は、色相、明度および彩度が低下する傾向があり、触媒として用いた場合は活性および/または選択性、触媒寿命が低下することがある。また、イムノクロマトの発色剤として使用する場合、陽性反応の場合に感度が低下し、場合によっては偽陽性発色を生じることがある。
【0031】
このような前記粒子径変動係数(Cv値)は、金属微粒子の透過型電子顕微鏡写真(TEM)を撮影し、100個の粒子について粒子径を測定して平均粒子径(Dn)を求め、下記
式によって計算される。
Cv=(粒子径標準偏差(σ)/平均粒子径(Dn))×100
【0032】
【数1】

【0033】
球状金属微粒子の製造方法
本発明に係る球状金属微粒子の製造方法は、
周期律表のIB族、IIB族およびVIII族からなる群から選ばれる1種以上の金属の塩の
極性溶媒溶液に、多価カルボン酸化合物と、必要に応じて還元剤とを添加して、金属シード粒子分散液を調製したのち(金属シード粒子調製工程)、
ついで、該金属シード粒子分散液に、周期律表のIB族、IIB族およびVIII族からなる
群から選ばれる1種以上の金属の塩の極性溶媒溶液、多価カルボン酸化合物、および必要に応じて還元剤とを添加して、金属シード粒子を成長させる(シード粒子成長工程)。
【0034】
金属シード粒子調製工程
金属塩としては前記した金属の塩を用いることができ、具体的には、Cu、Ag、Au、
Zn、Cd、Hg、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt等の硝酸塩、塩化物、硫酸塩が上げられ、例えば、塩化金酸、塩化白金酸、ジニトロジアンミン白金、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、硝酸銀、硝酸銅、塩化銅、塩化ルテニウム、硝酸ルテニウム、硝酸ニッケル、硫酸鉄、塩化亜鉛、硝酸亜鉛等が用いられる。
【0035】
中でもAu、Ag、Pd、Ptから選ばれる1種または2種以上の金属はイオン化傾向が低いため、容易に還元されて微粒子が生成するので好適に用いることができ、これらの金属微粒子をシード粒子として用いると粒子径変動係数の小さな金属微粒子を得ることができる。
【0036】
使用される溶媒としては、上記塩を溶解する極性溶媒であれば特に制限されるものではないが、通常、水、アルコール、グリコール等の有機溶媒およびこれらの混合溶媒を用いることができる。溶媒が高分子アルコールの場合、金属塩の種類あるいは水の混合割合によっては溶解度が不十分となり均一な金属シード粒子、粒子径変動係数の小さい金属微粒子が得られないことがある。このためアルコールを使用する場合、2−プロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどが好適である。
【0037】
これらの溶媒の中でも、水、特に純水を使用することが好ましい。
溶媒として水を使用すると、多価カルボン酸化合物の溶解度を高くすることができるので、金属塩を還元した際に生成するシード用金属微粒子の表面に多価カルボン酸化合物が速やかにかつ充分に配位し、シード粒子の凝集を抑制することができるとともに、より均一なシード粒子を得ることができる。このため最終的に粒子径変動係数(Cv値)の小さい金属微粒子を得ることができる。
【0038】
このとき使用する水は電気伝導度が5μS/cm以下、さらには3μS/cm以下であることが好ましく、また有機物の含有量が炭素として50ppb以下、さらには25ppb以下であることが好ましい。
【0039】
使用する水の電気伝導度が大きいと、水中に存在する電解質成分(特に陽イオン)の影響を受け、多価カルボン酸化合物が金属塩以外の水中の他の陽イオンと錯体を生じ、安定化剤として機能しないばかりか、得られるシード粒子への配位も少なくなるので、シード粒子が凝集し、最終的に、CV値の高い金属微粒子が得られてしまうことがある。
【0040】
微量不純分が有機物の場合にも、水中に存在する有機物と金属塩が錯体を形成し、還元を十分に行うことができずに、同様にシード粒子が凝集し、CV値の低い金属微粒子が得られにくいことがある。
【0041】
水中に存在しうる電解質成分としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、炭酸ナトリム、硝酸ナトリム、硝酸カリウム等の塩、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の陽イオン、硝酸、硫酸、炭酸、塩化物、臭化物、ヨウ化物の陰イオン等が挙げられる。有機物としては、前記溶媒として用いる有機溶媒以外の有機物をいい、例えば、カビ、バクテリア、藻、糖類が挙げられる。
【0042】
本発明で使用される電解質成分および有機不純物の少ない水は、超純水として、市販されており、また、公知のイオン交換樹脂、吸着性樹脂の充填カラムに水を通液することで調製することができる。
【0043】
このとき、極性溶媒として、水とともに他の溶媒を混合して使用してもよく、混合溶媒中の水の割合は40重量%以上、さらには50重量%以上の範囲にあることが好ましい。なお、溶媒が水単独である場合がより望ましく、溶媒中の水の割合が40重量%未満の場合は、前記した多価カルボン酸化合物の溶解度が不充分となることがあり、また前記した本発明に用いる電解質以外の電解質の影響が顕著になり、より均一な金属シード粒子が得られないことがある。
【0044】
金属塩溶液の濃度は金属に換算して0.0001〜5重量%、さらには0.0005〜1
重量%、特に0.001〜0.1重量%の範囲にあることが好ましい。
金属塩溶液の濃度が少ないと、収率が低下したり、濃度が低すぎて生産効率が低く経済性が問題となることがあり、また多くとも、微粒子が凝集する傾向があり、均一に分散した金属シード粒子が得られない場合がある。前記範囲にあれば、凝集の少ないシード粒子を調製することができる。
【0045】
多価カルボン酸化合物は、二価、三価化合物が好適に用いられる。これは、炭素数2〜20、好ましくは3〜10の範囲にある多価カルボン酸化合物が望ましい。
二価カルボン酸化合物としては、マレイン酸、フタル酸、アルギン酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコン酸、L-グルタミン酸等およびこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、エステル化合物、アミド化合物等の化合物が挙げられる。
【0046】
三価カルボン酸化合物としては、L-アスコルビン酸、クエン酸等およびこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、エステル化合物、アミド化合物等の化合物が挙げられる。
これらの多価カルボン酸化合物は、カルボキシル基や水酸基等の極性の強い官能基を持つため金属イオンと配位しやすく、また、還元により析出する金属微粒子の表面に配位しやすいので、安定で分散性に優れたシード粒子を得ることができる。
【0047】
なかでも、L-アスコルビン酸、クエン酸、クエン酸ナトリウムは還元剤としても機能するので好適に用いることができる。
なお、従来より使用されていたポリビニルピロリドンやポリビニルアルコールなどの高分子系安定化剤は、金属微粒子の表面に多層吸着し、上層の分子による立体障害が大きく、金属の析出が金属粒子の表面に起きにくいため、後述の工程で均一に粒子成長をしない場合がある。
【0048】
このような多価カルボン酸化合物の使用量は、金属塩のモル数(Mm)と多価カルボン
酸化合物のモル数(Ms)との比(Ms)/(Mm)が1.5〜10、さらには2〜8の範
囲にあることが好ましい。
【0049】
多価カルボン酸化合物の使用量が前記モル比(Ms)/(Mm)が少ないと、金属微粒子表面への多価カルボン酸化合物の吸着量が不十分となり、還元時に粒子同士の凝集が生じやすく、最終的にCv値の低い金属微粒子が得られにくい。
【0050】
多価カルボン酸化合物の使用量が前記モル比(Ms)/(Mm)が多いと、過剰に存在する多価カルボン酸化合物の金属微粒子上への金属の析出によって粒子成長が阻害され、新たに金属微粒子が生成するとともに凝集する場合がある。
【0051】
多価カルボン酸化合物が還元剤としても機能する場合、必ずしも還元剤の添加は必要ないが、還元剤として機能しないものを使用する場合、必要に応じて、還元剤を添加してもよい。
【0052】
また、還元剤としては、前記金属塩を還元することができれば特に制限はなく、具体的
にはエタノール、メタノール、水素化ホウ素ナトリウム、α-グルコース、硫酸第一鉄、
塩化第一スズ等が挙げられる。
【0053】
還元剤の添加量は還元剤の種類によっても異なるが、アルコール以外の場合は、金属塩のモル数(Mm)と還元剤のモル数(Mr)との比(Mr)/(Mm)が1〜10、好ましくは2〜8の範囲にあることが望ましい。また、アルコールを還元剤として使用する場合、金属塩のモル数(Mm)と還元剤のモル数(Mr)との比(Mr)/(Mm)が1000〜100000、好ましくは10000〜50000の範囲にあることが好ましい。前記モル比(Mr)/(Mm)が少ないと、還元が十分に進まずに、均一な粒子が生成されない場合があり、またモル比(Mr)/(Mm)が多くとも、還元剤が多すぎて、不純物が増えることになるので、生成する金属シード粒子が凝集することがある。
【0054】
還元温度は、クエン酸、クエン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸以外の還元剤を用いる場合は0〜120℃、さらには5〜100℃の範囲にあることが好ましい。
別個に還元剤を添加せずに、クエン酸、クエン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸を還元剤としても代用する場合、還元温度は、60〜120℃、特に80〜100℃の範囲が好ましい。
【0055】
還元温度が低いと、還元に長時間を要したり、還元が不充分となることがあり、還元温度が高いと、還元速度が速く、所望の粒子径の金属シード粒子を再現性よく得ることが困難で、粒子径が大きく、粒子径変動係数も大きくなる傾向があり、最終的に得られる金属微粒子の粒子径変動係数も大きくなることがある。このため、上記下範囲にあれば、凝集が少なく、かつ粒径の制御も可能となる。
【0056】
金属塩溶液と多価カルボン酸化合物、および必要に応じて添加される還元剤の混合は、速やかに均一になるように混合することが望ましい。
還元剤の種類によっても異なるが、金属塩溶液が乱流状態となるように撹拌を行うことが望ましく、例えば攪拌速度が200〜1000rpm、さらには300〜800rpmの範囲で撹拌することが望ましい。攪拌速度が小さいと、金属塩全体の還元が同時に起きないためか、金属シード粒子の粒子径変動係数が大きくなる傾向がある。撹拌速度は大きくすると、あまり大きくしても、意味がないだけでなく、溶液の飛散したり、装置的にも効率的ではない。
【0057】
なお、シード粒子調製工程は、不活性ガスまたは還元性ガス雰囲気下、通常は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴンなどが挙げられる。還元性ガスとしては、水素が挙げられる。
【0058】
なお、本発明の金属微粒子の製造方法では、添加順序は特に制限はなく、金属塩溶液に安定化剤、還元剤(必要に応じて溶液)を混合してもよく、還元剤溶液に金属塩溶液、安定化剤を混合してもよい。
【0059】
熟成工程
得られた金属シード粒子分散液はついで、50〜200℃、さらには70〜150℃の温度範囲で熟成することが望ましい。このような熟成工程によって、シード粒子が均一となり、後段で成長させたときに、粒径のそろった球状金属微粒子を調製することが可能となる。また、熟成によって、未反応の金属塩も還元されるので粒径を均一にすることができる。
【0060】
なお熟成は、シード粒子調製後の分散液を、反応温度と同じ温度または加熱し、さらに攪拌を行ないながら一定時間保持する。
熟成温度が低いと、未反応の金属イオンや還元剤の影響で粒子の安定性が低くなることがある。
【0061】
熟成温度が高くても、粒子同士の融着が生じ均一な粒子が得られないことがある。
また、熟成時間は特に制限はないが、概ね1〜24時間である。
なお、熟成も、前記シード粒子調製工程と同様に、不活性ガスまたは還元性ガス雰囲気下、通常は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0062】
得られる金属シード粒子は平均粒子径が2〜20nm、さらには4〜10nmの範囲にある。金属シード粒子の平均粒子径を前記範囲内で調整するには、たとえば、金属塩の濃度、攪拌速度、熟成時間などを調整するとよく、具体的には、金属塩の濃度にもよるが、攪拌速度が400rpm以下では粒径の大きいものが得られ、攪拌速度が400rpmを越えると粒径の小さいものが得られる傾向がある。
【0063】
またシード粒子の大きさが上記範囲を外れると、粒子成長させて得られる粒子のCV値が大きくなる傾向がある。
粒子成長工程
ついで、得られた金属シード粒子分散液に、再び前記1種以上の金属の塩、安定化剤および必要に応じて還元剤を含む溶液を添加して、金属シード粒子を成長させて球状金属微粒子を調製する。なお、あらかじめ、イオン交換膜などを用いて、金属塩に由来するイオンを除去してもよい。
【0064】
金属シード粒子分散液は必要に応じて濃度を希釈または濃縮してもよい。希釈するには前記溶媒を加えればよく、濃縮するには溶媒を蒸発させたり、限外濾過膜法で濃縮することができる。金属シード粒子分散液の濃度は、金属シード粒子の粒子径によっても異なるが、金属として0.0001〜5重量%、さらには0.0005〜1重量%の範囲にあることが好ましい。
【0065】
金属シード粒子分散液の濃度が少なすぎると、シード粒子が少なく、粒子成長が起きずに新たな微粒子が生じることがあり、得られる金属微粒子の粒子径変動係数が大きくなる傾向がある。金属シード粒子分散液の濃度が多いと、シード粒子同士が凝集・成長して凝集粒子が混在することがある。
【0066】
粒子成長工程で添加される金属塩は、シード粒子を前記1種以上の金属の塩の中から所望の金属塩を添加することができる。このとき、金属種は金属シード粒子と同種であってもよく、異なっていてもよい。
【0067】
また、安定化剤、還元剤、および溶媒も前記と同様のものを用いることができる。金属シード粒子分散液に安定化剤・還元剤が残存している場合は、新たに添加する安定化剤・還元剤との合計のモル数と金属塩のモル数とが前記範囲になるようにすればよい。
【0068】
金属塩の添加量は所望の粒子径の金属微粒子が得られるように添加すればよいが、得られる金属微粒子の平均粒子径が金属シード粒子の粒子径の8倍以下、好ましくは4倍以下となるように添加することが好ましい。金属シード粒子の粒子径の8倍以下であれば、得られる金属微粒子のCv値が小さくすることができる。
【0069】
また、金属塩の添加速度は、金属シード粒子の粒子径、濃度および金属塩の種類等によって異なるが、金属塩を短時間に添加しすぎると、シード粒子表面に金属塩が均一に吸着せず、金属シード粒子の粒子成長不均一になると共に、新たな微小粒子が生成する場合がある。球状のそろった金属微粒子を調製する場合、ある程度時間をかけて添加することが
望ましい。
【0070】
さらに粒成長工程の後、得られた分散液を熟成してもよい。熟成条件は、シード粒子の熟成工程と同様である。
このような熟成工程によって、球状金属微粒子の大きさが均一になるとともに、より球状化し、しかも凝集の少ない微粒子を調製できる。
【0071】
以上のようにして得られた金属微粒子をシード粒子として、成長させてもよい。
すなわち、得られた金属微粒子に、さらに、周期律表のIB族、IIB族およびVIII族から
なる群から選ばれる1種以上の金属の塩の極性溶媒溶液と、多価カルボン酸化合物と、必要に応じて還元剤とを添加して、金属微粒子を成長させてもよい。金属塩、溶媒、多価カルボン酸化合物および還元剤、および還元条件としては前記と同様である。
【0072】
また、金属微粒子を成長させた後、同様に熟成工程を行ってもよい。
粒子成長は、シード粒子を1段で成長させるよりも、粒子成長−熟成工程を複数段繰り返して行うと、より粒径がそろった、球状係数の高い、凝集の少ない金属微粒子を調製することができる。また、粒子成長工程での成長量を制御すれば、任意の大きさに金属微粒子の平均粒子径を制御することができる。
【0073】
最終的に得られた球状金属微粒子の分散液は、残存塩や安定化剤、還元剤を除去したのち、必要に応じて、溶媒置換や乾燥されて使用される。
[実施例]
以下、実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0074】
[実施例1]
シード粒子の調製
超純水(電気伝導度:0.6μS/cm、有機物(TOC):10ppb)9.8Kgに
クエン酸3ナトリウム(関東化学(株)製:試薬特級)2.3gを溶解させ、この水溶液を、窒素雰囲気下、350rpmで攪拌しながら、これに、別途塩化金酸(和光純薬(株)
製:試薬特級)0.95gを超純水(電気伝導度:0.6μS/cm、有機物(TOC):
10ppb)94.05gに溶解させた水溶液を添加し、98℃で熟成を1時間することによって金シード粒子(M-1)を得た。
【0075】
この金シード粒子(M-1)をTEMで観察(図1)して求めた平均粒子径は10nm、C
v値は6%であった。
粒子成長
ついでこのこの金属シード粒子(M-1)分散液1000g(固形分:0.0046重量%)に超
純水(電気伝導度:0.6μS/cm、有機物(TOC):10ppb)8000gを加え
、クエン酸3ナトリウム(関東化学(株)製:試薬特級)2.07gを超純水(電気伝導度
:0.6μS/cm、有機物(TOC):10ppb)50gに溶解させた溶液を添加し、98℃に昇温し、窒素雰囲気下、350rpmで攪拌しながら、これに、別途塩化金酸(
和光純薬(株)製:試薬特級)0.95gを超純水(電気伝導度:0.6μS/cm、有機
物(TOC):10ppb)94.05gに溶解させた溶液を2時間で添加し、ついで、
95℃で1時間熟成してシード粒子上に金を析出させて、金微粒子(M-2)を得た。この金
微粒子(M-2)をTEMで観察(図2)して求めた平均粒子径は31nm、Cv値は8%であっ
た。
【0076】
[実施例2]
実施例1と同様に調製した金微粒子(M-2)分散液1000g(固形分:0.0054重量%)
と超純水(電気伝導度:0.6μS/cm、TOC:10ppb)8000gとを混合して
金微粒子分散液を調製した。
【0077】
この金微粒子分散液に、クエン酸3ナトリウム(関東化学(株)製:試薬特級)2.07gを超純水(電気伝導度:0.8μS/cm、TOC:10ppb)50gに溶解させた水
溶液を添加し、98℃に昇温し、窒素雰囲気下、350rpmで攪拌しながら、これに、別途塩化金酸(和光純薬(株)製:試薬特級)0.45gを超純水(電気伝導度:1.2μS/cm、TOC:10ppb)43gに溶解させた水溶液を2時間かけて添加して金をシ
ード粒子上に析出させ、ついで、98℃で1時間熟成して金微粒子(M-3)を得た。
【0078】
この金微粒子(M-3)をTEMで観察(図3)して求めた平均粒子径は40nm、Cv値
は10.6%であった。
[実施例3]
粒子成長(1段目)
実施例2と同様に調製した金微粒子(M-3)1000g(固形分:0.0029重量%)と超純
水(電気伝導度:0.6μS/cm、TOC:10ppb)8000gとを混合して金微粒子分散液を調製した。得られた金微粒子分散液に、クエン酸3ナトリウム(関東化学(株)
製:試薬特級)2gを超純水(電気伝導度:0.6μS/cm、TOC:10ppb)50gに溶解させた水溶液を添加し、98℃に昇温し、窒素雰囲気下、350rpmで攪拌しながら、これに、別途塩化金酸(和光純薬(株)製:試薬特級)0.9gを超純水(電気伝導
度:0.2μS/cm、TOC:5ppb)50gに溶解させた水溶液を、6時間かけて添加し、金を微粒子上に析出させ、100℃で1時間、熟成して金微粒子(M-4)を得た。
【0079】
粒子成長(2段目)
得られた金微粒子(M-4)1000g(固形分:0.0049重量%)と超純水(電気伝導度:0.3μS/cm、TOC:1ppb)8000gとを混合して、金微粒子(M-4)分散液を調
製し、該分散液にクエン酸3ナトリウム(関東化学(株)製:試薬特級)2gを超純水50gに溶解させた水溶液を添加し、98℃に昇温し、窒素雰囲気下、250rpmで攪拌しながら、これに、別途塩化金酸(和光純薬(株)製:試薬特級)0.9gを超純水(電気伝
導度:0.6μS/cm、TOC:10ppb)50gに溶解させた水溶液を、金を微粒子上に析出させ、6時間で添加し、ついで、100℃で1時間熟成して金微粒子(M-5)を得
た。
【0080】
この金微粒子(M-5)をTEMで観察(図4)して求めた平均粒子径は152nm、Cv値
は10.5%であった。
[実施例4]
シード粒子調製
超純水(電気伝導度0.9μS/cm、TOC:11ppb)10Kgにクエン酸3ナト
リウム(関東化学(株)製:試薬特級)3gを溶解させ、この水溶液を、窒素雰囲気下、350rpmで攪拌しながら、これに、別途塩化白金酸(和光純薬(株)製:試薬特級)1.2gを超純水(電気伝導度0.9μS/cm、TOC:11ppb)50gに溶解させた水溶液を添加し、90℃で加熱熟成1時間することによって白金シード粒子(M-6)を得た。
【0081】
この白金シード粒子(M-6)をTEMで観察して求めた平均粒子径は8nm、Cv値は7.3%であった。
粒子成長
ついでこのこの白金シード粒子(M-6)分散液1000g(固形分:0.0042重量%)と超
純水(電気伝導度0.9μS/cm、TOC:11ppb)8000gとを混合して分散液を調製した。該分散液に、クエン酸3ナトリウム(関東化学(株)製:試薬特級)3gを超純水(電気伝導度0.9μS/cm、TOC:11ppb)50gに溶解させた水溶液
を添加し、98℃に昇温し、窒素雰囲気下、350rpmで攪拌しながら、これに、別途塩化金酸(和光純薬(株)製:試薬特級)0.9gを超純水(電気伝導度0.9μS/cm、TOC:11ppb)50gに溶解させた水溶液を6時間で添加し、金を白金シード粒子上に析出させ、ついで、100℃で1時間熟成して白金-金微粒子(M-7)を得た。
【0082】
この白金-金微粒子(M-7)をTEMで観察(図5)して求めた平均粒子径は52nm、Cv値は12.5%であった。
[実施例5]
シード粒子調製
超純水(電気伝導度:0.6μS/cm、TOC:10ppb)4.8Kgにフタル酸ナトリウム(関東化学(株)製:試薬特級)2.5gを溶解させ、さらに還元剤としてエタノー
ル4.8Kg添加して調製した溶液を、窒素雰囲気下、350rpmで攪拌しながら、こ
れに、別途塩化金酸(和光純薬(株)製:試薬特級)0.95gを超純水(電気伝導度:0.6μS/cm、TOC:10ppb)95.05gに溶解させた水溶液を添加し、98℃
で加熱還元1時間することによって金シード粒子(M-8)を得た。
【0083】
この金シード粒子(M-8)をTEMで観察して求めた平均粒子径は7nm、Cv値は6%
であった。
粒子成長
ついでこのこの金属シード粒子(M-8)分散液1000g(固形分:0.0046重量%)に超
純水(電気伝導度:0.6μS/cm、TOC:10ppb)4000gを加え、フタル酸
ナトリウム(関東化学(株)製:試薬特級)2.5gを溶解させ、さらにエタノール4.8Kg添加し、この溶液を、窒素雰囲気下、350rpmで攪拌しながら、これに、別途塩化金酸(和光純薬(株)製:試薬特級)0.95gを超純水(電気伝導度:0.6μS/cm、TOC:10ppb)94.05gに溶解させた水溶液を2時間で添加し、金を金シード
粒子上に析出させ、ついで、95℃で1時間還元して金微粒子(M-9)を得た。
【0084】
この金微粒子(M-9)をTEMで観察(図6)して求めた平均粒子径は35nm、Cv値は13%であった。
[実施例6]
粒子成長
実施例1と同様に調製した金シード粒子(M-1)分散液1000g(固形分:0.0046重量
%)に、超純水(電気伝導度:0.7μS/cm、TOC:10ppb)8000gを加え
て金シード粒子分散液を調製した。
【0085】
得られた金シード粒子分散液に、クエン酸3ナトリウム(関東化学(株)製:試薬特級)20gを超純水(電気伝導度:0.6μS/cm、TOC:10ppb)50gに溶解させ
た水溶液を添加し、70℃に昇温し、窒素雰囲気下、250rpmで攪拌しながら、これに、別途硝酸銀(和光純薬(株)製:試薬特級)0.4gを超純水(電気伝導度:0.4μS/cm、TOC:10ppb)50gに溶解させた水溶液、および硝酸パラジウム(和光純薬(株)製:試薬特級)0.4gを超純水(電気伝導度0.7μS/cm、TOC:10ppb)5gに溶解させた水溶液を3時間で添加し、銀およびパラジウムを金シード粒子上に
析出させ、ついで、80℃で1時間熟成して銀-パラジウム-金微粒子(M-10)を得た。この金微粒子(M-10)をTEMで観察して求めた平均粒子径は70nm、Cv値は15%であり、黒色系の微粒子分散溶液であった。(組成は、銀:53.6重量%、パラジウム:36.7重量%、金:9.7重量%)
[実施例7]
実施例1と同様に調製した金シード粒子分散液(M-1)1000g(固形分0.0046重量%
)に超純水(電気伝導度:0.6μS/cm、TOC:10ppb) 8000gを加えて、金シード粒子分散液を調製した。
【0086】
該分散液に、クエン酸3ナトリウム(関東化学(株)製:試薬特級)3gを超純水(電気
伝導度:0.6μS/cm、TOC:10ppb)50gに溶解させた水溶液を添加し、98℃に昇温し、窒素雰囲気下、250rpmで攪拌しながら、これに、別途塩化金酸(和
光純薬(株)製:試薬特級)0.9gを超純水(電気伝導度:0.6μS/cm、TOC:
10ppb)50gに溶解させた水溶液を、6時間かけて添加し、金をシード粒子上に析
出させた。
【0087】
ついで、この金微粒子分散液をオートクレーブに移し、200℃で1時間熟成して金微粒子(M-11)を得た。この金微粒子(M-11)をTEMで観察して求めた平均粒子径は40nm、Cv値は5.5%であった。また、紫外可視分光光度計(日本分光(株)製:U-vest560)で吸光度を調べたところ、吸収ピークが528nmであり単分散している波形であった

【0088】
[比較例1]
超純水(電気伝導度:0.6μS/cm、TOC:10ppb)9.8Kgにクエン酸3
ナトリウム(関東化学(株)製:試薬特級)2.3gと、硫酸鉄(II)(関東化学(株)製:試
薬特級)6.8gを溶解させ、この水溶液を、50℃に昇温し、窒素雰囲気下、350r
pmで攪拌しながら、塩化金酸(和光純薬(株)製:試薬特級)0.95gを超純水(電気伝導度:0.6μS/cm、TOC:10ppb)94.05gに溶解させた水溶液を添加し
、金微粒子(MH-1)を得た。
【0089】
この金シード粒子(MH-1)をTEMで観察して(図7)、求めた平均粒子径は25nm、Cv値は25.2%であった。
[比較例2]
超純水(電気伝導度:0.6μS/cm、TOC:10ppb)5Kgにポリビニルピロ
リドン(関東化学(株)製:K30、試薬特級)3gを溶解させ、ついでエタノール5Kgを加え、この溶液を50℃に昇温し、窒素雰囲気下、350rpmで攪拌しながら、これに、塩化金酸(和光純薬(株)製:試薬特級)1gを超純水(電気伝導度:0.6μS/c
m、TOC:10ppb)50gに溶解させた溶液を添加し、98℃で加熱熟成1時間す
ることによって金シード粒子(MH-2)分散液を得た。
【0090】
この金シード粒子(MH-2)をTEMで観察して求めた平均粒子径は3nm、Cv値は4%であった。
ついでこのこの金シード粒子(MH-2)分散液1000g(固形分:0.0046重量%)に、超純水(電気伝導度0.6μS/cm、TOC:10ppb)4000gを加え、また、高分
子安定化剤(関東化学(株)製:ポリビニルピロリドンK30、試薬特級)3gを溶解させ、
ついでエタノール5kgを加え、この水溶液を50℃に昇温し、窒素雰囲気下、350rpmで
攪拌しながら、塩化金酸(和光純薬(株)製:試薬特級)1を超純水(電気伝導度0.6μ
S/cm、TOC:10ppb)50gに溶解させた水溶液を添加し、98℃で1時間熟成することによって金微粒子(MH-3)を得た。この金微粒子(MH-3)をTEMで観察して求めた平均粒子径は4nm、Cv値は6.5%であった。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】実施例1で調製した金属シード粒子の電子顕微鏡写真を示す。
【図2】実施例1で調製した金属微粒子の電子顕微鏡写真を示す。
【図3】実施例2で調製した金属微粒子の電子顕微鏡写真を示す。
【図4】実施例3で調製した金属微粒子の電子顕微鏡写真を示す。
【図5】実施例4で調製した金属微粒子の電子顕微鏡写真を示す。
【図6】実施例5で調製した金属微粒子の電子顕微鏡写真を示す。
【図7】比較例1で調製した金属微粒子の電子顕微鏡写真を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が10〜500nmの範囲にあり、粒子径変動係数(Cv値)が20%以下
であることを特徴とする球状金属微粒子。
【請求項2】
前記金属微粒子が、周期律表のIB族、IIB族およびVIII族からなる群から選ばれる1
種以上の金属からなることを特徴とする請求項1に記載の球状金属微粒子。
【請求項3】
前記金属が、Au、Ag、Pd、Pt、Rh、Ru、Cuからなる群から選ばれる1種以上で
あることを特徴とする請求項2に記載の球状金属微粒子。
【請求項4】
周期律表のIB族、IIB族およびVIII族からなる群から選ばれる1種以上の金属の塩の
極性溶媒溶液に、多価カルボン酸化合物と、必要に応じて還元剤とを添加して、金属シード粒子分散液を調製したのち(金属シード粒子調製工程)、
ついで、該金属シード粒子分散液に、周期律表のIB族、IIB族およびVIII族からなる
群から選ばれる1種以上の金属の塩の極性溶媒溶液、多価カルボン酸化合物と、必要に応じて還元剤とを添加して、金属シード粒子を成長させる(シード粒子成長工程)
ことを特徴とする球状金属微粒子の製造方法。
【請求項5】
周期律表のIB族、IIB族およびVIII族からなる群から選ばれる1種以上の金属の塩の
極性溶媒溶液に、多価カルボン酸化合物と、必要に応じて還元剤とを添加して、金属シード粒子分散液を調製したのち(金属シード粒子調製工程)、
ついで、該金属シード粒子分散液に、周期律表のIB族、IIB族およびVIII族からなる
群から選ばれる1種以上の金属の塩の極性溶媒溶液、多価カルボン酸化合物と、必要に応じて還元剤とを添加して、金属シード粒子を成長させる(シード粒子成長工程)
得られた金属微粒子に、さらに、周期律表のIB族、IIB族およびVIII族からなる群か
ら選ばれる1種以上の金属の塩の極性溶媒溶液と、多価カルボン酸化合物と、必要に応じて還元剤とを添加して、金属微粒子を成長させることを特徴とする球状金属微粒子の製造方法。
【請求項6】
多価カルボン酸化合物の炭素数が、2〜20の範囲にあることを特徴とする請求項4または5に記載の球状金属微粒子の製造方法。
【請求項7】
極性溶媒の電気伝導度が5μS/cm以下であり、有機物の含有量(TOC)が炭素として50ppb以下である純水であることを特徴とする請求項4または5に記載の球状金属微粒子の製造方法。
【請求項8】
多価カルボン酸化合物として、マレイン酸、フタル酸、アルギン酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコン酸、L-グルタミン酸、L-アスコルビン酸、クエン酸、およびこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩またはエステル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物を使用することを特徴とする請求項4または5に記載の
球状金属微粒子の製造方法。
【請求項9】
多価カルボン酸化合物のモル数(MS)と前記金属塩中の金属のモル数(MMS)とのモ
ル比(MS)/(MMS)が1.5〜10の範囲にあることを特徴とする請求項4または5
に記載の球状金属微粒子の製造方法。
【請求項10】
シード粒子調製工程後および/またはシード粒子成長工程後、得られた分散液を50〜200℃の温度範囲で熟成することを特徴とする請求項4または5に記載の球状金属微粒子の製造方法。
【請求項11】
前記金属シード粒子の平均粒子径が2〜10nmの範囲にあることを特徴とする請求項4または5に記載の球状金属微粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−152344(P2006−152344A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−342303(P2004−342303)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000190024)触媒化成工業株式会社 (458)
【Fターム(参考)】