説明

金属板と圧電体との接着構造

【課題】圧電体と金属板との導電性及び接着性に優れた接着構造を提供すること。
【解決手段】金属板1と圧電体2の電極3とを導電性接着剤10で電気的導通性をもって接着した接着構造において、導電性接着剤10は平均粒径がナノレベルのカーボンブラック粒子12aを含み、そのカーボンブラック粒子を平均粒径1μm〜50μmの凝集体12としたものであり、カーボンブラック凝集体12は金属板1及び電極3の表面の凹凸に倣うように変形して挟み込まれている。カーボンブラック凝集体12は、金属板1と電極3の間で島状に複数箇所存在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電マイクロブロアの駆動体などに使用される圧電振動板のように、金属板と圧電体との接着構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯型電子機器の筐体内部で発生する熱を効果的に放出させるための送風用ブロア、あるいは燃料電池で発電するのに必要な酸素を供給するための送風用ブロアとして、圧電マイクロブロアが知られている(特許文献1参照)。圧電マイクロブロアは、電圧印加により屈曲振動する振動板を用いた一種のポンプであり、構造が簡単で、小型・薄型に構成でき、かつ低消費電力であるという利点がある。
【0003】
図1は圧電マイクロブロアに使用される振動板の一例を示す。図1において、金属製のダイヤフラム1の上に表裏面に電極3,4を持つ圧電体(圧電セラミック板)2が接着されている。一方の電極3とダイヤフラム1とは電気的に導通している。ダイヤフラム1と圧電体2の電極4間に所定の交流電圧を印加することにより、振動板全体が屈曲振動し、空気を送り出すことができる。なお、振動板としては、ダイヤフラム1の上に圧電体2を直接接着したものに限らず、ダイヤフラム1の上に別の金属板を接着し、その上に圧電体2を接着したものや、ダイヤフラム1の表裏両面に圧電体2を接着したものなど、種々の形態がある。
【0004】
図2(a)〜(c)は、圧電体2の電極3と金属板1(ダイヤフラム)との接着構造の例を示す。
【0005】
図2(a)は、導電性補助剤を有しない接着剤5を使用した例であり、圧電体2と金属板1間の接着厚みを極限まで薄層化し、電極3と金属板1との接触(オーミック接触)により導通を図るものである。
【0006】
図2(b)は、導電性補助剤としてカーボン球6を接着剤5中に添加し、カーボン球6を介して導電性を得るものである。カーボン球6の直径は例えば20μm程度であり、電極3と金属板1とは直接導通していない。
【0007】
図2(c)は導電性補助剤として平均粒径が数十nmのカーボンブラック7を接着剤5中に添加し、圧電体2の電極3と金属板1間の接触による導電性に加えて、カーボンブラック7を介して導電性を得るものである。
【0008】
図2(a)に示すように、導電性補助剤を有しない接着剤5を使用した場合には、接着後の湿中試験において接着剤が膨潤したとき、抵抗値が上昇する(導電性が低下する)という問題がある。図2(b)のようにカーボン球6を添加した接着剤5を使用した場合には、カーボン球6を起点とするクラックが圧電体2に発生しやすく、しかも接着剤が厚くなり、圧電体2の振動特性を悪化させるという問題がある。また、電極との接触が点接触になるため、又は最も大きな粒子がスペーサとなり小粒径の粒子が導通に寄与しないため、抵抗値が高くなるという問題がある。図2(c)のように微小粒径のカーボンブラック7を使用した場合には、カーボンブラック7の含有量によって接着剤の粘度・チクソ性への影響が大きく、作業性・塗布性に悪影響を及ぼすという問題がある。さらに、接着後の湿中試験において接着剤が膨潤したとき、抵抗値が上昇(導電性が低下)するという問題もある。
【0009】
特許文献2には、エネルギー貯蔵素子における活物質層と集電体との間を接着するのに用いられる導電性接着剤が開示されている。この接着剤は、導電材としての炭素粉末(例えばカーボンブラック)と、結着剤としての樹脂と、溶媒としての水を含有するペースト状の導電性接着剤であって、炭素粉末の一次粒子の重量平均粒子径が5nm〜100nmの範囲であり、炭素粉末の量が炭素粉末と樹脂の合計量に対して5〜50重量%の範囲であり、ペースト状導電性接着剤の含水率が70〜95重量%の範囲とされている。
【0010】
図2(d)に、特許文献2に示す導電性接着剤を使用した接着構造の一例を示す。図2(c)と同様に導電性補助剤としてカーボンブラック7を接着剤5中に添加したものであり、電極3と金属板1とは直接導通せず、カーボンブラック7を介して導電性を得ている。図2(c)より多量のカーボンブラック7が添加されているので、導電性は図2(c)より向上すると考えられる。
【0011】
しかしながら、5〜100nmのカーボンブラック7が樹脂中に5〜50重量%もの多量含有されていると、接着剤の粘度やチクソ性が飛躍的に増大し、塗布安定性(塗布量ばらつき、塗布後のレベリング性)に悪影響を及ぼす。そこで、特許文献2では、この問題をペーストに含水(70〜95重量%)させることで解決している。このため、水を使用しないような反応系(エポキシ樹脂等)では上記課題を解決できない。また、カーボンブラック7の含有量が多い分、樹脂量が相対的に少なくなるため、接着力が低下してしまう。さらに、溶媒として多量の水を含有するため、接着剤が硬化したときポーラス状となり、吸水により接着剤の膨潤が起きやすく、長期的な信頼性が欠けるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2008/069266
【特許文献2】特開2001−316655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、導電性及び接着性に優れた圧電体と金属板との接着構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため、本発明は、金属板と、前記金属板と対向する面に電極を有する圧電体と、導電補助剤としてカーボンブラックを含み、前記金属板と圧電体の電極とを電気的導通性をもって接着した導電性接着剤と、を有する接着構造において、前記カーボンブラックは、平均粒径がナノレベルのカーボンブラック粒子を平均粒径が1μm〜50μmのカーボンブラック凝集体としたものであり、前記カーボンブラック凝集体は前記金属板及び前記電極の表面の凹凸に倣うように変形して挟み込まれており、かつ前記金属板と前記電極の間で島状に複数箇所存在していることを特徴とする接着構造を提供する。
【0015】
本発明の導電性接着剤は、平均粒径がナノレベルのカーボンブラック粒子を含み、かつ当該カーボンブラックが平均粒径1μm〜50μmの凝集体となるように樹脂中に含有されたペースト状である。凝集体とは、カーボンブラックの一次粒子が分子間力等で結合し、平均粒径1μm以上の塊状になったものである。そのため、同量のカーボンブラックが分散状態で樹脂中に含まれる場合に比べて、接着剤の粘度やチクソ性に対する影響を小さくでき、作業性・塗布性が良好となる。凝集体自体には剛性がなく、金属板と圧電体とを加熱・加圧したとき、凝集体はそれらの凹凸に倣うように変形するので、圧電体へのダメージが少なく、かつ接着剤の厚み増加への影響がなく、導電性を付与できる。金属板と圧電体との導通性は、カーボンブラックを介した導通だけでなく、金属板と圧電体の電極との直接接触によっても得ることができるので、高い導通性(低い抵抗値)を得ることができる。
【0016】
本発明において平均粒径とは、例えば粒体のSEM画像をとり、得られた画像を2値化処理して粒体の面積を求め、その面積を円に換算したときの直径で求めることができる。1次粒子も2次粒子もSEM画像で撮像可能である。
【0017】
凝集体の粒径は、1μm未満になると、樹脂粘度が飛躍的に増大するので、下限サイズは1μmがよく、一方、上限サイズが50μmを超えると、凝集体の大きさが金属板及び電極の表面の凹凸より大きくなるため、接着剤の厚みを増大させる。そのため、上限サイズは50μmとするのがよい。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、カーボンブラックが分散状態ではなく、凝集体のまま硬化するので、従来のカーボンブラックを用いた導電性接着剤のように金属板と圧電体の電極とが全面で導通する(等方導電性)のではなく、島状に分散状態で導通させることができる(異方導通性)。つまり、金属板と電極との対向方向には導電性を有するが、平面方向には導電性がない。このような異方導電性構造のため、同量のカーボンブラックを分散状態で含有した場合に比べて、カーボンブラック同士の接触確率は飛躍的に向上し、高い導電性(低い抵抗値)を得ることができる。さらに、圧電体と金属板とを接着したとき、圧電体の周囲に導電性接着剤によるフィレットが形成されるが、そのフィレットの一部が圧電体の上面側電極まで回りこむと、短絡が発生するおそれがある。本発明にかかる導電性接着剤は異方導電性を持つことができるので、このような短絡を確実に防止することができる。
【0019】
本発明に係る導電性接着剤としては、無溶剤系又は溶剤系のいずれでもよいが、少なくとも水系の溶媒を用いた導電性接着剤は除外される。無溶剤系は、液状樹脂中にカーボンブラックを添加した導電性接着剤であり、溶剤系は、有機溶剤にポリマーを溶かし、その中にカーボンブラックを添加した導電性接着剤である。無溶剤系樹脂としては例えばエポキシ樹脂があり、溶剤系樹脂としては例えばアクリル樹脂などがある。いずれの場合も、硬化状態でポーラス状にならず、長期的な信頼性でみたときに、吸水による接着剤の膨潤が起きにくく、導電性が低下するという問題がない。
【0020】
導電性接着剤に含まれるカーボンブラックの平均粒径はナノレベル、例えば5nm〜300nmのカーボンブラックである。このカーボンブラックの一次粒子が樹脂中で平均粒径1μm〜50μmの凝集体となるように、樹脂に添加されている。そのため、カーボンブラックが樹脂中で目標とする粒径の凝集体となるように、適切な分散/混練処理を行うのが望ましい。
【0021】
金属板と圧電体の電極は、その間の距離が、凝集体の平均粒径より小さくなるように加圧するのが望ましい。つまり、金属板と圧電体との距離を、ペースト状態の導電性接着剤における凝集体の平均粒径より小さくする。これによって、大半の凝集体が金属板と圧電体の電極との間に挟み込まれ、確実な導通性を得ることができる。
【0022】
導電性接着剤に含まれる樹脂は、硬化状態での組織が緻密であり、耐候性、耐熱性が高く、接着後の湿中試験においても膨潤しにくい樹脂が好ましい。具体的には、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などがある。
【0023】
導電性接着剤中のカーボンブラックの量は、カーボンブラックと樹脂との合計量に対して1〜10重量%であるのが望ましい。このようにカーボンブラックの含有量が少ないので、接着剤の粘度やチクソ性が低くなり、作業性・塗布性が良好となると共に、カーボンブラックの含有量が少なくても、凝集体を作ることによって良好な導通性を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、平均粒径がナノレベルのカーボンブラック粒子を平均粒径1μm〜50μmのカーボンブラック凝集体とし、そのカーボンブラック凝集体を金属板及び電極の表面の凹凸に倣うように変形して挟み込んであるので、圧電体へのダメージが少なく、かつ接着剤の厚み増加への影響がなく、良好な導電性を付与できる。また、カーボンブラック凝集体が金属板と電極の間で島状に複数箇所存在しているので、異方導通性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】金属板に圧電体を接着した圧電振動板の一例の構造図である。
【図2】従来の接着構造を示す拡大断面図である。
【図3】本発明に係る接着構造の加熱・加圧前及び加熱・加圧後の断面図である。
【図4】(a)は凝集体サイズと接着剤粘度との関係を示す図、(b)は凝集体サイズと接着厚みとの関係を示す図である。
【図5】2枚の金属板を導電性接着剤を使用して接着した場合の導電性を評価するための図である。
【図6】分散カーボンブラックを添加した場合と、凝集カーボンブラックを添加した場合との粘度・チクソ性、直列抵抗の特性を比較した図である。
【図7】金属板に中間板を介して圧電体を接着した圧電振動板の他の例の構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図3は、本発明の第1実施形態に係る圧電振動板の接着構造を示し、(a)は加熱・加圧前、(b)は加熱・加圧後である。図1と同様に、ダイヤフラムなどの金属板1の上に、両面に電極3,4を持つ圧電体2を導電性接着剤10を介して接着したものである。導電性接着剤10は、例えばエポキシ樹脂のような無溶剤系樹脂11の中に、平均粒径5nm〜300nm(好ましくは5〜100nm)のカーボンブラック12aを添加したペースト状のものであり、カーボンブラック12aの添加量は、カーボンブラック12aと樹脂11との合計量に対して1〜10重量%とされている。カーボンブラック12aは樹脂11中に一次粒子として存在するのではなく、主には平均粒径1μm〜50μmの凝集体12となるように、樹脂11中に塊状で存在している。凝集体12とは、カーボンブラック12aの一次粒子が分子間力で結合し、1μm以上の大きさになったものである。
【0027】
加熱・加圧前の段階では、図3(a)に示すように、凝集体12は樹脂11中に浮遊した状態にあり、金属板1とも電極3とも接触していない。したがって、金属板1と電極3とは導通していない。導電性接着剤10中に含まれるカーボンブラック12aの含有量が少なく、樹脂11の量が多いので、接着剤の粘度・チクソ性を低くでき、作業性・塗布性が良好である。
【0028】
金属板1と圧電体2とを加熱・加圧すると、図3(b)のように凝集体12が金属板1及び電極3表面の凹凸に倣うように変形し、金属板1と電極3との間で凝集体12は挟み込まれる。そのため、金属板1と電極3とが確実に導通する。カーボンブラック12aは分散状態ではなく、凝集体12のまま硬化するので、金属板1と圧電体2の電極3とは島状に複数箇所で導通する(異方導通性)。このような異方導電性の導通構造のため、同量のカーボンブラック12aを分散状態で含有した場合に比べて、カーボンブラック12a同士の接触確率は飛躍的に向上し、高い導電性(低い抵抗値)を得ることができる。
【0029】
図3の(b)では、金属板1と圧電体2との間の距離dを凝集体12の平均粒径より小さくなるように加圧することで、凝集体12を介した金属板1と電極3との導通だけでなく、金属板1と電極3同士を直接接触させることもできる。そのため、両者の導電性が一層向上する。なお、金属板1と圧電体2の電極との間の距離dは、図3(b)の左右方向の所定長さを抜き取ったときに、金属板1の表面と圧電体2の電極3の表面で囲まれる領域(面積)を所定長さで割ったときの値で求めることができる。すなわち、金属板表面の断面曲線に対する中心線の位置と圧電体電極表面の断面曲線に対する中心線の位置との間隔のことである。
【0030】
図4は、凝集体のサイズと接着剤粘度との関係(a)と、凝集体のサイズと接着厚みとの関係(b)とを示す。なお、カーボンブラックの含有量を3.0重量%とした。図4の(a)から分かるように、凝集体の粒径が1μmより小さくなると、急激に接着剤の粘度が上昇するため、凝集体の粒径は1μm以上とするのがよい。一方、図4の(b)から分かるように、凝集体の粒径が大きくなると、それに伴って接着厚みも増すが、特に50μmを超えると、接着厚みの増加率が大きくなり、圧電体の振動が金属板に伝わりにくくなることで商品特性が劣化する。そのため、凝集体の平均粒径は1〜50μmが望ましい。
【0031】
図5は、2枚の金属板20,21を導電性接着剤22を使用して接着した場合の導電性を評価するための図である。評価に当たって、接着剤厚みバラツキを想定し、3μmの厚みになるように直径3μmの絶縁スペーサ23を間にして導電性接着剤22で接着し、金属板20,21間の直列抵抗を測定した。評価結果を表1に示す。なお、接着剤中の成分比率は、カーボンブラック3重量%、エポキシ樹脂97重量%とした。カーボンブラック(一次粒子)の平均粒径は50nm、凝集体の平均粒径は5μm、球形カーボンの粒径は3μmとした。
【0032】
【表1】

【0033】
表1から明らかなように、凝集カーボンブラック(本発明)を使用した場合には、カーボンブラックを含有しない場合に比べて直列抵抗が格段に低くなることは勿論、分散カーボンブラックや球形カーボンを使用した場合に比べても抵抗値を1/10以下に低減できた。つまり、導通性が格段に向上した。
【0034】
図6の(a),(b)は、分散カーボンブラックを添加した場合と、凝集カーボンブラックを添加した場合との粘度・チクソ性、直列抵抗の特性を比較した図である。(a)は、カーボンブラックの添加量と粘度・チクソ性との関係を示す図であり、凝集カーボンブラックでは分散カーボンブラックに比べて、カーボン添加量に対する粘度・チクソ性の変化が小さい。そのため、粘度・チクソ性の許容ラインL1を設定した場合、凝集カーボンブラックの方がカーボン添加量を多くできる。また、同じカーボン添加量で比較した場合、凝集カーボンブラックの方が粘度・チクソ性が低くなるので、接着剤塗布工程において、良好な塗布安定性(塗布量ばらつき、塗布後のレベリング性)が得られる。一方、(b)に示すように、カーボンブラックの添加量と直列抵抗とは反比例の関係にあり、所定の許容ラインL2を設定した場合、凝集カーボンブラックの方が少ない添加量で所望の抵抗値を得ることができる。つまり、同じ粘度,抵抗値を得ようとしたとき、凝集カーボンブラックの方が添加量を少なくできる。そのため、コストを低減できる。
【0035】
以上のように、本発明による接着構造の効果をまとめると、次の通りである。
(a)カーボンブラック凝集体が柔軟に変形するため、接着剤の厚み増加への影響が少ない。
(b)加圧接着時にカーボンブラック凝集体が柔軟に変形するため、圧電体へのダメージが少ない。
(c)カーボンブラックが凝集体(塊状)で存在するため、カーボンブラック同士の接触確率が飛躍的に向上し、同量のカーボンブラックが非凝集(一次粒子)の状態で存在する場合に比べて、高い導電効果(異方導電性)を得ることができる。
(d)接着状態において導電性接着剤が異方導電性を有するので、圧電体の周囲に形成されたフィレットの一部が表面側の電極まで回りこんでも、短絡を防止することができる。
(e)湿中試験での接着剤膨潤に対して、カーボンブラック凝集体の柔軟な変形によって対応できるので、導通信頼性が向上する。
(f)カーボンブラックの一次粒子が樹脂中へ分散している状態と比較して、樹脂流動性が高く、大幅に粘度・チクソ性への影響を抑えることができる。
【0036】
本発明に係る接着構造は、図1に示すようにダイヤフラム1の上に圧電体2を直接貼り付けた構造に限らず、図7に示すように、ダイヤフラム1の上に金属製の中間板8を貼り付け、その上に圧電体2を貼り付けた構造であってもよい。この場合には、本発明に係る導電性接着剤10が、ダイヤフラム1と中間板9との間、及び中間板9と圧電体2との間に介在することになるが、上述のように導電性接着剤10の導電性が高くかつ接着力も優れているので、圧電体2の電極3、中間板9、ダイヤフラム1間の良好な導電性と接着性とを確保できる。
【0037】
本発明に係る接着構造において、金属板及び圧電体の形状は任意であり、円板状、四角板状、あるいは円環状であってもよい。本発明にかかる圧電振動板は、空気のような圧縮性流体を輸送する圧電マイクロブロア以外に、圧電ファン、水のような非圧縮性流体を輸送する圧電マイクロポンプ、圧電スピーカー、圧電ブザー、圧電センサー等にも利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 ダイヤフラム(金属板)
2 圧電体
3,4 電極
10 導電性接着剤
11 無溶剤系樹脂
12 カーボンブラック凝集体
12a カーボンブラック粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と、前記金属板と対向する面に電極を有する圧電体と、導電補助剤としてカーボンブラックを含み、前記金属板と圧電体の電極とを電気的導通性をもって接着した導電性接着剤と、を有する接着構造において、
前記カーボンブラックは、平均粒径がナノレベルのカーボンブラック粒子を平均粒径が1μm〜50μmのカーボンブラック凝集体としたものであり、
前記カーボンブラック凝集体は前記金属板及び前記電極の表面の凹凸に倣うように変形して挟み込まれており、かつ前記金属板と前記電極の間で島状に複数箇所存在していることを特徴とする接着構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−179015(P2011−179015A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129234(P2011−129234)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【分割の表示】特願2011−514572(P2011−514572)の分割
【原出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】