説明

金属板材の接合方法

【課題】一の金属板材に他の金属板材が嵌め込まれ、両金属板材が拡散接合されること。
【解決手段】第1の金属板材1の上に第2の金属板材2を重ね合わせ、第1及び第2の金属板材1、2が同時に打ち抜き加工され、この打ち抜き加工された面に新生面10が創出されつつ、第2の金属板材2が第1の金属板材1に嵌め込まれる。そして、第2の金属板材2が第1の金属板材1に嵌め込まれた状態で加熱されるとき、第1及び第2の金属板材の異なる熱膨張率の差により、新生面10に圧縮力を生じさせ、さらなる新生面10が創出され、両金属板材の拡散接合をより確実なものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに熱膨張率の異なる二種の金属板材を接合する金属板材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属板材の接合のための拡散接合が、金属板材同士を変形することなく接合できるため、その特徴が活用され様々な分野で利用されている。
この拡散接合によれば、金属板材同士が重ね合わされ(密着させられ)、金属板材同士が加圧され、この加圧により酸化膜等が除去されて金属表面が露出された面(以下、本明細書では、このような面を「新生面」という。)が作られ、その新生面を接合面として、金属原子が互いに拡散され、金属板材同士が接合される。
【0003】
ここで、拡散接合の適用例について、特許文献1及び2を参照して、以下簡単に説明する。
特許文献1には、圧延機の入口側で、先行する鋼片の後端と、これに続く後行の鋼片の先端とを接合する際、先行する鋼片の後端と後行の鋼片の先端とが重ね合わせられ、その重ね合わせ領域で、それを表裏に挟む一対のせん断刃が相互に接近されて、各鋼片の端部を切り離しつつ、該せん断刃を含むブロックの押圧によって各鋼片のせん断面を拡散接合する接合方法が示されている。
【0004】
そして、特許文献2には、先行する熱間鋼材の後端と後行する熱間鋼材の先端とが重ね合わされ、非酸化性雰囲気中で切断され、切断部を同一水平面内まで戻した後、圧接され、重ね合わせた二つの熱間鋼材を挟んで上刃と下刃を設け、刃を重ね合わせた熱間鋼材の厚さに相当する距離だけ相対的に変位させ、もって、重ね合わせた二つの熱間鋼材が切断、圧接され、拡散接合を行う接合方法が示されている。
【0005】
しかし、特許文献1及び2に示された接合方法では、せん断刃の押圧力で、重ね合わされた鋼片のせん断中は、せん断面(新生面)に圧縮応力が働くが、せん断が終了する直前から、せん断面同士を押し合う圧縮応力がほとんど働かなくなる。その結果、当該接合方法では、拡散接合に必要な加圧(圧縮応力)が接合面に存在しなくなり、拡散接合のための新生面に負荷すべき圧縮応力が不足し、もって、好適な拡散接合がなされない。
【0006】
また、特許文献1及び2に示された方法は、圧縮応力を、接合面(新生面)に対して、例えば、特許文献2の図1のクランプロール31、31´を用いながら、主にリニア方向に(直線的に)働かせるものである。すなわち、当該方法では、圧縮応力を、ラジアル方向に(半径方向に)働かせるものではない。そのために、金属板材の面同士を拡散接合するような接合方法には、適用できない。
【特許文献1】特開平6−39405号公報
【特許文献2】特開平7−178416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、互いに熱膨張率の異なる二種の金属の板材が接合される場合(特に嵌合されて接合される場合)に、好適に拡散接合がなされる金属板材の接合方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、互いに熱膨張率の異なる第1の金属板材に第2の金属板材を重ね合わせ、重ね合わされた第1及び第2の金属板材を同時に打ち抜き加工を行い、第1の金属板材に第2の金属板材を嵌め込む。このとき、両金属板材に新生面を形成すると共に新生面同士を接触させることができる。そして、この打ち抜き加工面(新生面)を接合面として、第1及び第2の金属板材とが嵌め合わされた状態で、熱を加え、拡散接合に必要な圧縮応力(加圧のための力)が、第1及び第2の金属板材との熱膨張率の差により発生され、第1及び第2の金属板材の接合面に、その圧縮応力により拡散接合のさらなる新生面が創出され、両金属原子が良好に拡散されて、好適に圧縮接合が行われる。
なお、本発明の金属板材の接合方法の各種態様、並びにそれらの作用及び効果については、以下の、発明の態様の項において詳しく説明する。
(発明の態様)
【0009】
以下、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の各項において、(1)項、(3)項、及び(4)項の各々が、請求項1、請求項2、及び請求項3の各々に相当する。
【0010】
(1) 互いに熱膨張率の異なる第1の金属板材及び第2の金属板材を準備し、第1の金属板材の上に第2の金属板材を重ねる工程(以下、「工程A」という)と、
重ねられた第1の金属板材及び第2の金属板材を同時に打ち抜き加工し、第1の金属板材に第2の金属板材を嵌め合わせる工程(以下、「工程B」という)と、
第1の金属板材及び第2の金属板材の少なくともいずれかを加熱する工程(以下、「工程C」という)と、からなり、
第1の金属板材と第2の金属板材とを拡散接合することを特徴とする金属板材の接合方法。
【0011】
本項に記載の態様によれば、まず、工程Aで、第1の金属板材及び第2の金属板材が異なる熱膨張率を有しており、そのため、第1及び第2の金属板材は、工程Cの加熱時に、基本的に熱膨張する割合が異なる。第1及び第2の金属板材は、板状であり、同一の厚さを持つことが好ましい。また、第1及び第2の金属板材の少なくとも重ね合わせ面が密着するように、一定の平坦度を有することが好ましい。
【0012】
工程Bでは、重ね合わされた第1及び第2の金属板材が同時に打ち抜き加工され、第1の金属板材に第2の金属板材が嵌合される。すなわち、工程Bにより、両金属基板の打ち抜き加工面が、即時、拡散接合に必要な新生面(接合面)となるため、接合面が、非酸化状態のまま拡散接合を開始することができ、これにより、両金属基板間で金属原子が拡散するのに好適な状態が創出される。また、同工程により、第1の金属板材の任意の位置に、第2の金属部材を嵌め込む(埋め込む)ことができ、第1の金属板材の物性に、他の第2の金属部材の物性を任意に付加することができる。例えば、本項の態様によれば、磁性金属板材の一部を非磁性に、又は、絶縁性金属板材の一部を導電性にすることができる。
【0013】
(2) 互いに異なる熱膨張率を有する第1金属板材に第2の金属板材が重ね合わせられ、
重ね合わせられた第1及び第2の金属板材が、上パンチと、下パンチと、これら上パンチ及び下パンチが一軸方向に変位可能なキャビティを有する上ダイスと、下ダイスと、により挟持され、
上パンチと下パンチが、一軸方向に変位されることにより、重ね合わされた第1の金属板材及び第2の金属板材が同時に打ち抜き加工されながら、第1の金属板材に、第2の金属板材が嵌め込まれ、
この第2の金属板材が嵌め込まれた第1の金属板材及び該第2の金属板材の少なくともいずれかが加熱され、
第1の金属板材と第2の金属板材とが拡散接合されることを特徴とする金属板材の接合方法。
【0014】
本項に記載の態様は、(1)の態様を実施する構成をより具体化したものであり、特に、第1及び第2の金属板材の打ち抜き加工を、プレス加工機に備わる、ダイスと上下パンチを使用して行うことを規定したものである。
本項に記載の態様では、上パンチと下パンチが、一軸方向(ここでは下方)に変位されて、重ね合わされた第1及び第2の金属板材が打ち抜き加工され、実質的に打ち抜き加工と同時に、第1の金属板材の部分に第2の金属板材が嵌め込まれる。このとき、(1)の場合と同様にして打ち抜き加工時に出来る打ち抜き加工面が新生面となり、拡散接合が行われるための二種の金属の金属原子が拡散され易い接合面が創出される。
【0015】
本項に記載の態様において、プレス加工機の打ち抜き加工時の雰囲気は、特に問われない。それは、第1及び第2の金属板材が実質的に同時に打ち抜き加工され、即時、第1の金属板材に第2の金属板材が嵌め込まれるので(以下、本明細書で、第1の金属板材に第2の金属板材が嵌め込まれた金属板材を「二種金属板材」という。)、接合開始時に、拡散接合に必要な非酸化状態の新生面がすぐ利用できるからである。プレス機は、本発明では、打ち抜き加工時に第2の金属板材の厚さ分が変位し終わったときに、上下パンチを寸止めする必要があり、その変位について正確な制御が特に必要とされるため、サーボプレス機を用いることが好ましい。
【0016】
(3) 前記第1の金属板材及び第2の金属板材の少なくともいずれかを加熱する工程において、前記第1の金属板材及び第2の金属板材の両方を加熱する場合は、第2の金属板材の熱膨張率を、第1の金属板材の熱膨張率よりも大きくし、一方、第2の金属板材を加熱する場合は、第2の金属板材の熱膨張率を0より大きくすることを特徴とする(1)又は(2)に記載の金属板材の接合方法。
本項に記載の態様では、(1)又は(2)の態様で、第1金属板材と第2の金属板材とが異なる熱膨張率を有すると規定されているところ、さらに、両熱膨張率の大小関係を規定したものである。これは、工程Cで、特に、第1の金属板材及び第2の金属板材の両方が加熱される場合(全体加熱の場合)は、第1の金属板材に嵌め込まれた第2の金属板材と、母材となる第1の金属板材とが熱膨張し、第1の金属板材に嵌め込まれた第2の金属板材について拡散接合が好適に行われた後、自然冷却により熱収縮する。このように、第1及び第2の金属板材は、熱膨張された後、自然冷却により熱収縮するとしても、非可逆的であり、熱履歴により、元の形状まで戻ることはないが、嵌合部材の第2の金属板材が、母部材の第1の金属板材よりも熱膨張するよう設定しておけば、当該熱収縮が多少あっても、第1の金属板材の嵌合孔から、第2の金属板材が欠落することを防止することができる。一方、第2の金属板材を加熱する場合は、第2の金属板材の熱膨張率を0より大きくしておけば足り、同様に、第1の金属板材の嵌合孔から、第2の金属板材が欠落することを防止することができる。
【0017】
(4)工程Cにおいて、加熱により第1の金属板材と第2の金属板材の接合面に圧縮応力を発生させることを特徴とする(1)から(3)のいずれかの項に記載の金属板材の接合方法。
(4)に記載の態様においては、第1及び第2の金属板材は、異なる熱膨張率を有するため、加熱により熱膨張する割合が異なり、第1の金属板材に第2の金属板材が嵌め込まれているため、両金属板材が熱膨張することにより、接合面(新生面)で互いを押圧する圧縮応力が発生する。これにより、さらなる新生面が創出され、拡散接合をより好適に行うようにすることができる。
【0018】
(5)前記加熱は、第1の金属板材に嵌め込まれた第2の金属板材を全体加熱するか、又は、第1の金属板材に嵌め込まれた第2の金属板材の、第2の金属板材を局所加熱することを特徴とする(1)から(4)のいずれかの項に記載の金属板材の接合方法
本項に記載の態様では、第2の金属板材が嵌め込まれた第1の金属板材及び第1の金属板材が加熱されるようにするには、第2の金属板材が嵌め込まれた第1の金属板材(二種金属板材)を、プレス加工機から取り除き、加熱炉の中で全体加熱する。又は、当該プレス加工機に配置したまま、上下パンチ及びダイスのプレス圧を解放し、二種金属板材の第2の金属板材を局所加熱する。当該全体加熱のときは、(3)に記載の態様の熱膨張率の関係を満たすようにすることが望ましい。
【0019】
(6)第1の金属板材に嵌め込まれた第2の金属板材の、第2の金属板材を局所加熱するときは、第2の金属板材を上下で挟持して、通電し、抵抗加熱により第2の金属板材を熱膨張させることを特徴とする(5)に記載の金属板材の接合方法。
本項に記載の態様は、第2の金属板材を局部加熱するに際し、いわゆる抵抗加熱を利用したものである。この局部加熱によれば、第1の金属板材を特に熱膨張させる必要はない。
【0020】
(7) 第1の金属板材の物性に、これと異なる第2の金属板材の物性が付与されることを特徴とする(1)から(6)のいずれかの項に記載の金属板材接合方法。
(8) 第1の金属板材が磁性金属からなり、かつ、第2の金属板材が非磁性金属からなることを特徴とする(1)から(7)のいずれかの項に記載の金属板材接合方法。
(9) 第1の金属板材が電磁鋼板であり、かつ、第2の金属板材がステンレス鋼板であることを特徴とする(1)から(8)のいずれかの項に記載の金属板材接合方法。
【0021】
(7)から(9)にいずれかの項の態様は、本発明にかかる金属板材接合方法を好適に適用(利用)できる例を示すものである。特に、(9)の項の態様によれば、モーターや電動機の回転動作のために必要な磁束の流れを好適に形成することができるローター用の二種金属板材が作製される(後述の実施例参照)。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、重ね合わされた一の金属板材と他の金属板材とが同時に打ち込み加工されて、一の金属板材に他の金属板材が嵌め込まれ、その状態で、加熱、熱膨張され、両金属板材が、好適に接合される金属板材の接合方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る金属板材の接合方法の、実施の形態を、図1から図5を参照して説明する。図1から図5は、本発明を実施する形態、すなわち本発明の金属板材の接合方法を用いて二種の金属板材からなる二種金属板材を作製する形態の一例であって、図中、同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成は図に示す従来のものと同様である。
【0024】
以下、本発明の金属板材の接合方法に係る実施形態について説明する。
初めの準備工程(不図示)は、第1の金属板材1と第2の金属板材2を準備し、金属板材1の上に金属板材2を重ね合わせる。この実施形態では、第2の金属板材2の熱膨張率α2が、第1の金属板材1の熱膨張率α1よりも大きく設定する。
【0025】
次に、図1(a)で示されるように、重ね合わされた第1の金属板材1と第2の金属板材2は、サーボプレス加工機に備えられた、上パンチ5と、下パンチ7と、これら上パンチ5及び下パンチ7が一軸方向に変位可能なキャビティを有する上ダイス9と下ダイス10とにより挟持され固定される。
【0026】
次に、図1(b)に示されるように、重ねあわされた第1の金属板材1及び第2の金属板材2が、上パンチ5と下パンチ7により、第2の金属板材2の厚み分だけ、一軸方向かつ下方に変位され、第1及び第2の金属板材1、2が、同時に打ち抜き加工され、第1の金属板材1の当該打ち抜き加工により形成された孔に、第2の金属板材2が嵌め込まれる。
【0027】
このとき、打ち抜き加工時に、第1の金属板材1及び第2の金属板材1、2の両側面(打ち抜き加工面)に、新生面10が作製される。ここで、この実施形態では、サーボプレス加工機が、特許文献2で示されているように非酸化雰囲気に配置されていなくてもよい。第1及び第2の金属板材1、2が、同時に打ち抜き加工され、即時、第1及び第2の金属板材1、2の新生面10が接し合う前に、新生面10が大気中に基本的に触れることなく、拡散接合にとって好適な接合状態をもたらすことができるからである。
【0028】
ここで、使用されるプレス加工機に、サーボプレス加工機を用いることととしているが、このサーボプレス加工機によれば、上パンチ5と下パンチ7により、第2の金属板材2の厚み分、正確に一軸方向かつ下方に変位されるように制御するために、上下パンチのスピードや位置さらに、被プレス体への加圧力などの精緻な制御及び条件設定が可能であり、当該実施形態のように、第2の金属板材2が第1の金属板材1に嵌め込まれた位置で、ちょうど、上パンチ5と下パンチ7の変位を止めることができる。
【0029】
この段階で、図1(c)で示されたような、第1の金属板材1に第2の金属板材2が嵌め込まれた金属板材(二種金属板材)が作製されるが、この後、本実施形態では、第1の金属板材1と第2の金属板材2との熱膨張率の差を利用して、拡散接合に必要な圧力(圧縮応力)が接合面に加えられるようにするため、二種金属板材が加熱される。この加熱の方法には、図1(d)に示されているような二種金属板材のうち第2の金属板材2に対してのみ局部加熱する方法(局部加熱法)と、図1(d´)に示されているような二種金属板材全体を加熱する方法(全体加熱法)とがある。局部加熱法は、図1(d)のように、第1の金属板材1に第2の金属板材2が嵌め込まれた後、上ダイス9及び下ダイス11の二種金属板材に対するプレス圧を解放し、サーボプレス機の中で、第2の金属板材2を局部加熱することが好ましい。また、局部加熱法は、図3に示されるように、第2の金属板材2を通電棒で上下に挟持し、抵抗加熱により、行うようにしてもよい。一方、全体加熱法は、サーボプレス機から、二種金属板材を取り除き、二種金属板材を加熱炉に入れ、同時に全体加熱することが好ましい。全体加熱法によれば、多量に二種金属板材を加熱することができ、量産に好適である。
【0030】
ここで、図2を参照して、上記の局部加熱法と全体加熱法を実施するのに際し、第1の金属板材1の熱膨張係数α1と第2の金属板材2の熱膨張係数α2について、満たすべき条件について説明する。まず、局部加熱法においては、金属板材2が熱膨張率α2を有するようにすれば足り、そのとき、金属板材1の熱膨張率α1が0であっても構わない。一方、全体加熱法においては、α1とα2に差を設け、α2>α1となるようにする。かかる条件の下、第1及び第2の金属板材2の接合面に、ラジアル方向の圧縮応力が働き、さらなる新生面10が創出され、もって、このさらなる新生面10において金属原子が拡散されて、拡散接合がおこなわれる。
【0031】
図4は、さらに、本発明で得られた二種金属板材を積層して使う場合の一例である。本発明の方法により二種金属板材を作製し、図4に示されているように、例えば、熱硬化性の接着剤を用いて互いに貼り合わされ、加熱されて積層接合されるようにする。このように積層された二種金属板材は鉄損が少ないため、以下の実施例で述べられるような、例えば、モーターのローター用の電磁鋼板に好適に使用される。
【実施例】
【0032】
以下、本発明に係る製品の実施例として、永久磁石埋め込み型のローター22を含むモーター20を、図5を参照して説明する。同図を参照すると、モーター20は、リング状のローター22と、その内周に回転中央方向に向かう突起状部が一定距離を置いて均等に配置されているステーター24と、を含む。突起状部には巻き線(不図示)が巻かれており、一定の電流がそれぞれの巻き線に流されて、一つ一つの突起状部が、それぞれ電磁石を構成する。
【0033】
リング状のローター基板22(第1の金属板材1に相当)は、積層された電磁鋼板26からなり、その中に、ステーター24の上記凸部と同じ間隔で、凸部に対向するような位置に、NSとNSのペア長尺状の永久磁石28、SNとSNのペアの長尺状の永久磁石29(NSの永久磁石とは、N極がラジアル方向外側に向くものを指し、SNの永久磁石とは、S極がラジアル方向外側に向くものを指す。)が、放射線状(ラジアル方向)に埋め込まれている(ステーター24の当該凸部には図示しないがそれぞれの凸部が電磁石を構成するように巻線が施されており、一定の電流を流すことで、磁極が順に(時計周り又は反時計周りに)入れ替わるようにされている。
【0034】
そして、上記NSとNSのペアの永久磁石28の間と、SNとSNのペアの永久磁石29の間に第1ブリッジ部が形成され、NSとNSのペアの永久磁石28と、SNとSNのペアの永久磁石29の中間部に第2ブリッジ部が形成されている。これらの第1及び第2ブリッジ部には、オーステナイト系ステンレス鋼板32(第2の金属板材2に相当)が、ラジアル方向に向かって(半径方向に若しくは放射線状に)嵌め込まれている。このオーステナイト系ステンレス鋼板32によって、前記永久磁石のN極からS極への磁場40(40で示される磁束線は仮想線)の内、モーター20の回転力に寄与しないような磁路(磁束)の乱れを防ぐことができ、もって、オーステナイト系ステンレス鋼板32が、電磁鋼板26の磁路(磁束の流れ)を好適に形成されるのに使用される。
【0035】
この実施例では、電磁鋼板26の上にオーステナイト系ステンレス鋼板32が重ね合わされ、電磁鋼板26とオーステナイト系ステンレス鋼板32とを同時に打ち抜き加工され、電磁鋼板26にオーステナイト系ステンレス鋼板32が嵌め合わされ、加熱され、拡散接合が行われることにより二種金属板材が作製された。
【0036】
ここで、電磁鋼板26の熱膨張率α1は、1.2×10−5/Kであり、オーステナイト系ステンレス鋼板32の熱膨張率α2は、2×10−5/Kであり、二種金属板材が、加熱されたときに、熱膨張率α1とα2(α1<α2)との差から、オーステナイト系ステンレス鋼板32と電磁鋼板26との間に働く圧縮応力により、新生面10で、オーステナイト系ステンレス鋼板32と電磁鋼板26とが加圧されて、さらなる新生面が創出されながら、両板材が好適に拡散接合された。そして、オーステナイト系ステンレス鋼板32と電磁鋼板26が自然冷却後、強固に接合された。さらに、この二種金属板材は、図5(b)に示されるように、複数枚の第1の金属板材(電磁鋼板)26a〜26eと、それら個々に嵌め込まれた第2の金属板材(オーステナイト系ステンレス鋼板)31a〜31dからなる複合金属板材を互いに接着剤で接合、積層され、ローター基板22が作製された。
【0037】
このように、例えば、永久磁石埋め込み型のローター22において、第1の金属板材1である電磁鋼板に第2の金属板材2であるオーステナイト系ステンレス鋼板を嵌め込む場合のように、ある物性を持つ金属板材の任意の箇所に他の物性を持つ金属板材を嵌め込み、二種の金属板材同士を拡散接合する場合に、本発明が好適に適用される。
【0038】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の金属板材の接合方法は、ある金属板材に他の金属板材を嵌め込まれながら金属接合が行われる場合に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の金属板材の接合方法を概念的に説明するためのフロー図である。
【図2】本発明の金属板材の接合方法において、第2の金属板材2が嵌め込まれた第1の金属板材1の概念的な断面図である。
【図3】第2の金属板材2を抵抗加熱により局部的に加熱する方法を説明するための概念的な断面図である。
【図4】本発明の金属板材の接合方法により製造された二種金属板材が、さらに積層かつ接合されて利用されることを説明するための概念的な断面図である。
【図5】本発明の金属板材の接合方法により製造された二種金属板材の実施例を説明するための一部概念図である。
【符号の説明】
【0041】
1: 第1の金属板材、2:第2の金属板材、5:上パンチ、7:下パンチ、9:上ダイス、11:下ダイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに熱膨張率の異なる第1の金属板材及び第2の金属板材を準備し、第1の金属板材の上に第2の金属板材を重ねる工程と、
重ねられた第1の金属板材及び第2の金属板材を同時に打ち抜き加工し、第1の金属板材に第2の金属板材を嵌め合わせる工程と、
第1の金属板材及び第2の金属板材の少なくともいずれかを加熱する工程と、からなり、
第1の金属板材と第2の金属板材とを拡散接合することを特徴とする金属板材の接合方法。
【請求項2】
前記第1の金属板材及び第2の金属板材の少なくともいずれかを加熱する工程において、
第2の金属板材を加熱する場合は、第2の金属板材の熱膨張率を、0より大きくし、
一方、前記第1の金属板材及び第2の金属板材の両方を加熱する場合は、第2の金属板材の熱膨張率を、第1の金属板材の熱膨張率よりも大きくすることを特徴とする請求項1に記載の金属板材の接合方法。
【請求項3】
前記第1の金属板材及び第2の金属板材の少なくともいずれかを加熱する工程において、加熱により第1の金属板材と第2の金属板材の接合面に圧縮応力を発生させることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属板材の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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